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明細書 :膨張化炭素繊維含有複合材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4719875号 (P4719875)
公開番号 特開2006-249546 (P2006-249546A)
登録日 平成23年4月15日(2011.4.15)
発行日 平成23年7月6日(2011.7.6)
公開日 平成18年9月21日(2006.9.21)
発明の名称または考案の名称 膨張化炭素繊維含有複合材料及びその製造方法
国際特許分類 C08J   5/04        (2006.01)
C08L  61/10        (2006.01)
C08K   9/02        (2006.01)
FI C08J 5/04 CEZ
C08L 61/10
C08K 9/02
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2005-070399 (P2005-070399)
出願日 平成17年3月14日(2005.3.14)
審査請求日 平成18年9月20日(2006.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】豊田 昌宏
審査官 【審査官】大熊 幸治
参考文献・文献 特開平11-157820(JP,A)
特開2001-207376(JP,A)
特開2003-147643(JP,A)
特開平7-102112(JP,A)
特表平8-508534(JP,A)
調査した分野 C08J 5/00- 5/24
B29B 11/16
B29B 15/08- 15/14
C01B 31/00- 31/36
特許請求の範囲 【請求項1】
ノボラック系フェノール樹脂をマトリックスとしこのマトリックス中に、5~10μmの膨張化炭素繊維をサイジング処理し摩砕した1μm以下のフィブリル繊維を2~6W%分散含有してなることを特徴とする膨張化炭素繊維複合材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーおよび材料科学の技術分野に属し、特に膨張化炭素繊維をナノメーターサイズの微小繊維にして含有させた新規な膨張化炭素繊維含有複合材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維複合材料は、炭素繊維が持つ高強度、高弾性等の優れた力学的特性を利用して種々の樹脂をマトリックスとして複合材料とし、産業分野から航空宇宙分野まで幅広く利用されている。炭素繊維を複合材料として使用した場合、その分散性が悪く、非常に大量に使用しなければならず、コストがかかることが指摘されてきた。そこで開繊をされた炭素繊維を用いて分散性を上げる等の工夫もなされてきた。
【0003】
一方、カーボンナノチューブは、金属的な性質から半導体としての性質を含む多様で優れた電気特性を有し、また、大きな力学的特性、表面積から電気電子材料から高性能樹脂補強材に至るまで種々の分野において次世代材料として注目を集め実用化研究が、世界各地で進められている。しかしながら、カーボンナノチューブは、合成時に、例えば、アーク放電から合成された物はすすを多く含むなど純度が低く、精製の必要があるとされていながら、フラーレンのように精製が不可能で、純度100%の物を得ることは難しく、そのままマトリックス部材に添加を行った場合、不純物も添加することになり、複合部材とした後、その不純物の存在により、強度の著しい向上が望めない事も指摘されている。また、カーボンナノチューブのアスペクト比は小さく、カーボンナノチューブが必ずしも優れた複合部材得るために適した材料でないことも指摘されている。
この他に、カーボンナノチューブは、ポリマー(高分子)と親和性が悪く、これが新しい複合材料開発の障害になっている。そこで、カーボンナノチューブの表面を化学処理して、他の物質との親和性を改良する試みがなされているが、その処理によって、カーボンナノチューブの特性が低下する問題が生じている。

【特許文献1】特開2001-207376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のカーボンナノチューブの問題に鑑み、膨張化炭素繊維は、ピッチ系あるいはPAN系の炭素繊維を出発原料としているため、不純物を含まず、純度100%の繊維を用いることができ、不純物の混入による強度の低下の恐れはないこと。また、繊維径はナノメータサイズまで微小化されるにもかかわらず、繊維長さは、カーボンナノチューブに比べて、マイクロメーターからミリメートルサイズと長く、アスペクト比が大きくなることから、複合材料としたときにより大きな強度の増大を望むことができること。さらに、フィブリル状に微小化する際、熱処理課程を経ているため、表面の一部に酸素官能基が導入されていることが予測され、ポリマーとの馴染みも改善されていること、等の膨張化炭素繊維の特徴を利用して、新規の高性能な膨張化炭素繊維複合材料と製造方法を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つは、マトリックス中にナノメートルサイズにまでフィブリル状(小繊維)化した膨張化炭素繊維を分散含有してなることを特徴とする膨張化炭素繊維複合材料である。
本発明の他の一つはその小繊維膨張化炭素繊維を用いた複合材料を製造する方法であり、その特徴は炭素繊維を化学的あるいは電気化学的に処理して炭素繊維層間化合物あるいはその残余化合物を合成し、これを熱処理して前記フィブリル状繊維とし、これを溶融マトリックスと混合して金型内に流し込み成形したことを特徴とする膨張化炭素繊維複合材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
即ち本発明は、膨張化炭素繊維のナノメーターサイズのフィブリル状繊維をマトリックスとの割合で通常1~12W%程度、好ましくは2~6W%程度をマトリックス中に分散して成形したものであり、これにより微少量のフィブリル状繊維で力学的などに優れた膨張化炭素繊維由来の複合材料である。
また本発明の膨張化炭素繊維複合材料の製法は、炭素繊維を化学的あるいは電気化学的に処理して炭素繊維層間化合物あるいはその残余化合物を合成し、これを熱処理して前記フィブリル状繊維とし、この微少量を溶融マトリックスと混合して金型内に流し込み成形することにより、力学的などに優れた膨張化炭素繊維由来の複合材料を確実に得るものである。
例えば後述する実施例の製造方法と得られた膨張化炭素繊維複合材料の各試料の破壊挙動は、三点曲げ試験で、Ph(Ph: フェノール樹脂) /ExCFs(ExCFs: Exfoliated Carbon Fibers 膨張化炭素繊維)において、Ph /ExCFs:Eは、Ph /ExCFs:Aに比し、曲げ応力値は53%~180増加し、曲げ弾性率は30%~190%増加した。EP/ExCFsにおいては、EP/ExCFs:DはEP/ExCFs:Aに比し、曲げ応力値が最大で200%増加し、曲げ弾性率は最大で170%増加した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の膨張化炭素繊維複合材料は、強度、特に圧縮強度、曲げ強度などの基本特性が極めて優れ、卓越した補強効果を示す炭素繊維の有する力学的特性を充分に活かした複合材料である。
而して、本発明の膨張化炭素繊維複合材料に使用する原料の炭素繊維は、ピッチ系、PAN系あるいは気相成長系由来の炭素繊維などが好ましい。炭素繊維の多くは、黒鉛と同様にsp2+π結合からなる構造を有しており、例えば、ピッチ系の炭素繊維で、高温で熱処理されたものは、非常に高い結晶性を有し、それに由来する高い結合性が、強度および弾性に影響を与えている。また、一般にPANあるいはピッチ系の炭素繊維では、原料前駆体の設計と不融化処理技術およびその後の熱処理温度が強度、弾性率の向上に大きく影響を与えており、出発炭素繊維原料の優れた特性は、膨張化後のフィブリル状の微小繊維になっても失われることなく、しかも微少量の配合割合で力学的特性を充分に活かしきれる。(参照:微小繊維の透過電子顕微鏡写真、黒鉛のc軸方向の積み重なりが認められる)
この原料炭素繊維の電気化学的処理は、炭素繊維層間化合物あるいは残余化合物を合成するものである。層状構造を有する黒鉛および炭素繊維は、結晶学的に面内方向を示すa軸方向、b軸方向は強い共有結合で結びついているが、面外方向を表すc軸方向は、弱いファンデアワールス力で結合しているのみで、その層間に簡単に非常に多くの原子、分子、イオンなどを取り込んで化合物(層間化合物)を作る。この層間化合物の合成方法には、化学的に合成する湿式法、電気化学法等がある。
前記炭素繊維の層間化合物の合成処理方法は、化学的にする方法例と電気化学的に処理する方法例があり各々の例は次のとおりである。
化学的処理は、例えば、濃硫酸中に硝酸あるいは過マンガン酸カリなどの酸化剤を添加すると硫酸分子が黒鉛層間にインターカレションし、黒鉛層間化合物が合成される。(化学的酸化法)
電気化学的処理は、例えば、ホスト黒鉛を酸電解質中(硝酸あるいは硫酸等)で電気化学的に酸化しても黒鉛層間化合物が合成される。(電気化学的酸化法)
そして得られた前記層間化合物あるいは残余化合物は、熱分解した後、径が1μm以下のナノメーターサイズの小繊維形状となる。これは、弱いファンデアワールス結合で結びついている層間に挿入された原子、分子、イオンなどが、熱処理によって分解され、その分解物が層外に出て行くとき、その層間を壊して、ナノメーターサイズの小繊維形状形態を変える。
又本発明の膨張化炭素繊維複合材料に使用するマトリックスは、樹脂、金属もしくは炭素を用いる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、液晶樹脂もしくは導電性樹脂を選定することが好ましい。
炭素をマトリックスとする複合材料、すなわちC-Cコンポジット(炭素炭素繊維複合材料)は、その耐熱性(熱的安定性)、対薬品性等から航空宇宙材料への用途が広がっている、炭素の出発原料としては、フェノール樹脂が、熱処理により、黒鉛化しやすい易黒鉛化性材料なることから、出発マトリックスとして適している。
金属のマトリックスとしては、軽量、錆びない、加工性に優れると言った点からアルミニウムが注目を集めている。炭素繊維にアルミニウムを含ませ、アルミニウム含浸炭素繊維複合材料が炭素繊維の性能を兼ね備えた先端複合材料として、産業機械や自動車の部材を中心に用途の拡大が期待されている。
本発明の複合材料の成形法は、例えば、前記小繊維形状の膨張化炭素繊維を溶融マトリックスと混合させて金型に流入させ、そのまま加圧成型を行ってもよく。あるいは溶融マトリックス中に分散させ、そのまま熱固化させたものでもよい。さらに、小繊維形状の膨張化炭素繊維を溶融マトリックスと混合させて金型に流入し、溶融マトリックスの固形前に金型表面を表面と平行移動させることによってマトリックス中の小繊維形状の膨張化炭素繊維の配向を制御することができる。
繊維を配向させることによって、異方性の強い黒鉛材料の一方向に対してより強くすることも可能となる。
【実施例1】
【0008】
以下の実施例に代表的な膨張化炭素繊維複合材料例とその製造法例を記述する。
< 膨張化炭素繊維(ExCFs)の作製>
例えば、13mol/dm3硝酸電解質中で、陽極に10cmに切りそろえた炭素繊維、対極に白金板、参照電極に銀塩化銀を使用し、0.5A定電流で3600Cまで電気分解を行った。電気分解されたサンプルは24時間風乾させ、1000℃に保持した電気炉で急速加熱し膨張化させた。
< 膨張化炭素繊維のサイジング処理>
本発明において膨張化炭素繊維のサイジング処理とは、マトリックス中での繊維の抜け(すべり)を良くするために,膨張化炭素繊維表面上に樹脂をコートすることによって改善を図ることを言う.
通常,炭素繊維を製造する場合は,5~10マイクロメートルの繊維を6000~1200本を集,束にして使用している. その際,繊維がバラバラにならないようにすることをサイジング処理と言う。ここでのサイジング処理は,膨張化によりバラバラにしたものをそのまま複合材に用いた場合, 破壊時の抜け(すべり)が良くないため,それを改善するように行ったものある。
<膨張化炭素繊維のサイジング処理例>
サイジング剤にエポキシ樹脂、固化剤に脂肪族ポリアミン(DETA)を選択した。エポキシ樹脂を適量計量し、固化剤を樹脂に対し11w% になるように計量し混合した後、エタノールとアセトン(4:1)の混合溶液で、エポキシ樹脂が10w%になるように希釈した。そのエポキシ樹脂溶液に膨張化炭素繊維を混合し、超音波洗浄器を用いて、10分間超音波分散を行い、その後、吸引濾過にて繊維を取り出した。取り出した繊維は、45℃保持乾燥器中にて3日間乾燥させ、サイジング処理が施されている小繊維形状の膨張化炭素繊維として取り出した。
< 膨張化炭素繊維複合材料の製造>
<ノボラック系フェノール樹脂を用いた膨張化炭素繊維複合材料化>
予め充分に磨砕したノボラック系フェノール樹脂120gと所定の含有率になるように、先の操作で合成したサイジング剤を施した膨張化炭素繊維を繊維の塊がなくなるまで摩砕混合させた。この摩砕混合物の試料A~Eを60℃ に保持された真空乾燥機中にて48h乾燥を行った。試料約17gを金型に投入し、100kgf/cm2×2minでプレスし押し固めた後、167℃に昇温、500kgf/cm2×3minhold、100kgf/cm2×10minholdの二段階加圧により成型を行った。上記各成型体の詳細を表1の試料Ph/ExCFs:B~Eに示す。試料Ph/ExCFs:Aはサイジング剤を施した膨張化炭素繊維を混合していない比較例である。
<エポキシ樹脂を用いた膨張化炭素繊維複合材料>
前記ノボラック系フェノール樹脂の代わりにエポキシ樹脂を用いて摩砕混合させたものの詳細を表1のEP(EP:エポキシ樹脂))/ExCFs:B~Dに示す。これは樹脂モールド中に当該摩砕混合物を流し込み、真空乾燥機の温度を30℃に設定し常圧で1週間硬化させたものを、複合材料として取り出した。試料EP/ExCFs:Aはサイジング剤を施した膨張化炭素繊維を混合していない比較例である。
< 膨張化炭素繊維複合材料の力学特性試験>
先の操作で得られた膨張化炭素繊維複材料はダイアモンドカッターを用いて4×4×54mmに加工し、三点曲げ試験を行った。

【0009】
【表1】
JP0004719875B2_000002t.gif
<得られた結果>
三点曲げ試験での各試料の破壊挙動は、Ph /ExCFsにおいて、Ph /ExCFs:Eは、Ph /ExCFs:Aに比し、曲げ応力値は53%~180増加し、曲げ弾性率は30%~190%増加した。EP/ExCFsにおいては、EP/ExCFs:DはEP/ExCFs:Aに比し、曲げ応力値が最大で200%増加し、曲げ弾性率は最大で170%増加した。
【産業上の利用可能性】
【0010】
即ち本発明は、炭素繊維の化学的あるいは電気化学的処理により、層間化合物を経由して熱処理を行って得たナノメーターサイズのフィブリル状繊維を微少量、樹脂や金属或いは炭素などのマトリックス中に分散することにより、炭素繊維由来の力学的に及び電気的に優れた複合材料を得るものであり、その利用分野は、次の通りであり産業上幅広く活用されるものである。
(1)、金属等に比べ比重が小さく(1.7~2.0)、軽い。
(2)、弾性率が高く(200~650Gpa)、高剛性である。
(3)、強度が高い(3000Mpa~6000Mpa)。
(4)、疲労強度が高い。
(5)、耐摩耗性、湿潤性に優れている。
(6)、耐震減衰性に優れている。
(7)、熱膨張係数が小さく(0~-1.1×10-6K)、寸法安定性が良い。
(8)、熱伝導性がある(10~44W/mオーム・k)
(9)、不活性雰囲気で耐熱性に優れている。
(10)、耐薬品性に優れている。
(11)、錆びない。
(12)、生体適合性に優れている。
(13)、導電性がある(17~5μオーム・m)。
(14)、電磁波シールド性がある。
(15)、X線の透過性が良い。
(16)、異方性材料であり、目的に応じて適正な構造体設計ができ
このように本発明の炭素繊維は、その優れた特性により、航空・宇宙、建築・土木、車輌、船舶などさまざまな分野に先端材料として使用可能であり、その用途は広大である。