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明細書 :ペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒とその製造方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4649616号 (P4649616)
公開番号 特開2008-012472 (P2008-012472A)
登録日 平成22年12月24日(2010.12.24)
発行日 平成23年3月16日(2011.3.16)
公開日 平成20年1月24日(2008.1.24)
発明の名称または考案の名称 ペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒とその製造方法。
国際特許分類 B01J  23/02        (2006.01)
B01D  53/86        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  37/16        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
C02F   1/72        (2006.01)
FI B01J 23/02 ZABM
B01D 53/36 J
B01J 35/02 J
B01J 23/02 A
B01J 37/16
C01G 23/00 B
C02F 1/72 101
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2006-187852 (P2006-187852)
出願日 平成18年7月7日(2006.7.7)
審査請求日 平成19年9月27日(2007.9.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】豊田 昌宏
【氏名】山形 祐一
審査官 【審査官】岡田 隆介
参考文献・文献 特開2005-109390(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
B01D 53/86、53/94
WPI
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
Science Direct
特許請求の範囲 【請求項1】
ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物と炭素前駆体を混合し、この混合物を不活性ガス雰囲気下で焼成温度8 0 0 ~ 1 0 0 0 ℃で焼成して該金属酸化物に酸素欠陥与え還元状態にすることを特徴とするペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒の製造方法。
【請求項2】
ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物として強誘電特性を示すチタン酸ストロンチウム( S r T i O 3),チタン酸鉛( P b T i O 3),ジルコン酸バリウム( B a Z r O 3),スズ酸バリウム( B a S n O 3),ジルコン酸鉛( P b Z r O 3) ジルコン酸ストロンチウム( S r Z r O 3)の何れか一つを用い、炭素前駆体として木炭、ポリビニルアルコール、ヒドロキシルプロピルセルロース、ポリビニルクロライドの何れか一つを用い、不活性ガスとしてチッ素: N 2 あるいはアルゴン:A rを用いることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,紫外あるいは,可視光照射の下で,光触媒機能を発現するペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒とその製造方法に関するものである.
材料種としては,ABO3型の結晶構造を有するペロブスカイト型構造,それに類する構造を有する酸化物を基本構造として,その材料を半導体化することで,光触媒機能を付与した.光触媒機能を有する材料は,有害排気ガス,あるいは環境汚染水の分解による環境浄化に関し用いられる.
【背景技術】
【0002】
環境問題の深刻化に伴い,その対策のための環境浄化,汚染物質を検出する分析手法など様々な研究がなされている.浄化の手法として光触媒は,紫外光などの光を照射するだけで強力な酸化力を有した活性な酸素種 (O2-,OHラジカル) を発生し,それらが各種の有機物を二酸化炭素や水まで分解する可能性を有すことから,大気浄化や浄水などに幅広く利用されている.そして近年,その高効率化,実用化への研究開発がすすめられている.申請者は,これまで,酸化チタン (TiO2) に炭素を被覆することにより,表面の多孔質炭素上に分解対象物を吸着させ,それが濃縮されることにより分解効率が高くなるといった研究結果を報告してきた.また,炭素前駆体であるポリビニルアルコール (PVA) と混合焼成することにより,炭素被覆と共に酸化チタンの還元相を合成し,それが可視光でも光触媒能を発現することも報告してきた.この結果から,還元剤となる材料と酸化チタンを共に焼成することで,酸素欠陥が導入され還元相を有する酸化チタン光触媒が得られることを明らかとした.
強誘電体であるチタン酸バリウム (BaTiO3) は,高い比誘電率を有し,積層セラミックコンデンサ等の電子部品に多量に用いられている.また,この材料は容易に半導体化させうることから,サーミスタといった電子部品にも利用されている.このチタン酸バリウムを用いたセラミックコンデンサは,電子機器への多量使用に伴う製造量増加により,製造工程でのシート成形後の余剰品が多量に排出することとなり,それが埋め立て廃棄物として処理されている.この廃棄物として処理されているチタン酸バリウムが,容易に半導体化できることから,還元剤と共に焼成することにより,チタン酸バリウムに酸素欠陥を導入し半導体化させ,バンドギャップエネルギーを下げることにより還元相BaTiO3を合成し,それが光触媒能を発現することが可能であると考えた.
【0003】
酸化チタン光触媒としては,アナターゼ相,あるいはルチル相,あるいは両者の混合相を有するTiO2が,バンドギャップが小さくその光触媒能が大きいことが報告され,使用されている.また,その光触媒能の向上のために,N(チッ素),S(硫黄)を酸化チタンにドープした材料についても,合成が報告され,ドープによる光触媒能の効果が向上することが報告されている.しかしながら,ドープにはイオン注入などの大型の装置を必要とし高額になること,また,必ずしも注入したことにより,光触媒能が,倍以上に向上するまでには至っていない.
この他にも,硫化物系の材料として硫化亜鉛(ZnS),硫化カドミウム(CdS)が良好な光触媒能を有することが報告されているが,水に溶けやすい為,実用に至っていない.この他にもパイロクロア系金属酸化物として,パイロクロア系の酸化物としてCe2Ti2O7(酸化セリウム)の光触媒能についても近年報告がなされている.しかしながら,合成された試料単独での光触媒能は特に発現されず,Ce2Ti2O7を酸化させ,他の半導体試料と組み合わせることにより,初めて光触媒機能を発現させるなど必ずしも,優れた光触媒機能を有していない.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では,TiO2酸化チタン光触媒と同様の光触媒能を有し,また,廃棄物とされている材料等から新規な光触媒を安価に作製する.
本発明では,これまで,絶縁体材料で導電性がなく,半導体的性質を示さなかった材料において,新たに半導体化を試み,これまでに本材料で報告されていなかった,新たな光触媒を提供する.
これまで,還元剤となる炭素前駆体と酸化チタンを始めとする金属酸化物を不活性雰囲気下で混合焼成することで,金属酸化物が還元され,還元相の金属酸化物が合成されることを報告してきた.本申請では,廃棄物として処理されているBaTiO3の有効利用について考え,積層セラミックコンデンサの原料であるチタン酸バリウムを,還元材との焼成により半導体化させ,チタン酸バリウムの還元相の合成を試みた.得られた還元相BaTiO3において,これまで,絶縁体であることからBaTiO3セラミックスでは認められなかった導電性が認められ,また,バンドギャップエネルギーも測定することができた.
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題を解決するためになされたものでありその特徴とするところは、次の(1)~(3)にある。
(1)酸素欠陥を有する還元状態のペロブスカイト型構造を有する金属酸化物(ABO3-x)であることを特徴とするペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒。
(2)ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物と炭素前駆体を混合し、不活性ガス雰囲気下で焼成して該金属酸化物に酸素欠陥与え還元状態にすることを特徴とするペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒の製造方法。
(3)ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物として強誘電特性を示すチタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸鉛(PbTiO3),ジルコン酸バリウム(BaZrO3),スズ酸 バリウム(BaSnO3),ジルコン酸鉛(PbZrO3)ジルコン酸ストロンチウム (SrZrO3)等を用い、炭素前駆体として木炭、ポリビニルアルコール、ヒドロキシルプロピルセルロース、ポリビニルクロライド等を用い、不活性ガスとしてチッ素:N2あるいは,アルゴン:Ar等を用い、焼成温度を800~1000℃にすることを特徴とするに上記(2)に記載のペロブスカイト型誘電体酸化物還元相光触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明において、原材料とするペロブスカイト型構造を有する金属酸化物として例えばBaTiO3は,セラミックスコンデンサの材料として多量に使用されているものであり,シート成形後に使用されていない多くの部分は,廃棄物として埋め立て材料としてのみ使用されていただけである.本発明の新規光触媒の創製により,廃棄物の有効利用が可能となる.
炭素前駆体として,PVAを使用した場合,PVAは,プラスティク材料として数多く使用されており,その廃棄物が本申請材料の半導体化の際の前駆体として使用することが可能である.この点も資源の有効利用となる.
半導体化により,材料は白色から褐色に変化することから,可視光下でも光の吸収特性を発現することが考えられ,可視光下での光触媒能の発現が可能となる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の特徴とする実施形態(態様)を次の1)~4)に紹介する。
1).BaTiO3に代表されるペロブスカイト型構造を有する金属酸化物を市販の木炭と言った炭素材料もしくは,ポリビニルアルコール(PVA)ヒドロキシルプロピルセルロース(HPC)ポリビニルクロライド(PVC)と言った炭素前駆体を混合し,チッ素:N2あるいは,アルゴン:Arと言った不活性ガス雰囲気下で焼成することにより,炭素材料,あるいは炭素前駆体が燃焼されるに伴い,記載金属酸化物中の酸素が消費されることにより,該金属酸化物が酸素欠陥を有する,すなわち化学量論的には,非化学量論状態になることにより,還元状態になった該金属酸化物(ABO3-x)を得,それに紫外光,もしくは可視光を照射することにより,絶縁体材料である材料に光触媒機能を新たに付与すること,さらに前記金属酸化物還元相を得ることを特徴とする.
【0008】
2).ABO3で代表される上記1)の金属酸化物から得られた,Aサイトが他の金属元素:Cで置換された固溶体(A,C)BO3-x.この金属固溶体を上記1)と同様の手法を用いることにより,この固溶体が非化学量論状態になることにより,還元状態になった該金属酸化物(A,C)BO3-xを得,それに紫外光,もしくは可視光を照射することにより,絶縁体材料である材料に光触媒機能を新たに付与すること,さらに前記金属酸化物還元相を得ることを特徴とする.
【0009】
3).ABO3で代表される上記1)の金属酸化物から得られた,Bサイトが他の金属元素:Dで置換された固溶体A(B,D)O3-x.この金属固溶体を上記1)と同様の手法を用いることにより,この固溶体が非化学量論状態になることにより,還元状態になった該金属酸化物A(B,D)O3-xを得,それに紫外光,もしくは可視光を照射することにより,絶縁体材料である材料に光触媒機能を新たに付与すること,さらに前記金属酸化物還元相を得ることを特徴とする.
【0010】
4).ABO3で代表される上記1)の金属酸化物から得られた,AおよびBサイトが他の金属元素:CおよびDで置換された固溶体(A,C) (B,D)O3-x.この金属固溶体を上記1)と同様の手法を用いることにより,この固溶体が非化学量論状態になることにより,還元状態になた該金属酸化物(A,C) (B,D)O3-xを得,それに紫外光,もしくは可視光を照射することにより,絶縁体材料である材料に光触媒機能を新たに付与すること,さらに前記金属酸化物還元相を得ることを特徴とする.
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例(具体例)を以下に詳細に説明する。
【0012】
<試料の作成>
還元相BaTiO3の合成に用いた試料とその比率及び処理条件を表1(Table 1)に示す.
【0013】
【表1】
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ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物としてチタン酸バリウムBaTiO3 (キシダ化学(株)) と,還元剤である炭素前駆体として木炭 (市販品) ,またはPVA (和光純薬(株),和光一級,KLF2913) を予め,めのう乳鉢で粉末状に摩砕し、これらを表1(Table 1)に示す種々の比率で混合した後,電気炉 (株式会社モトヤマ,MTS8161059) を用いて焼成した.その条件は,予め炉芯管内の酸素を除去するため5分間Arガスを流した後, Arガス雰囲気下,ガス流量100 ml / min,昇温速度4℃ / min,900 ℃で1時間の熱処理を行い,その後自然放冷により降温することで行った.
【0014】
【表2】
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*:余分な木炭が付着していると考えられるため,超音波または遠心分離処理を施した.
実験には,合成した各試料との比較のため純粋なBaTiO3を参考資料とした.また,超音波処理を施した試料はUS,遠心分離処理を施した試料はCFとし,それぞれの処理を施すことにより,付着した余分な木炭の除去を試みた.
【0015】
試料のバンドギャップエネルギー測定
<試料の薄膜電極の調製>
合成した各試料ペースト状とし,調製した各試料のペーストを,ガラス棒を用いてITOガラス基盤の導電面に薄く塗布し,熱処理を行うことにより,各試料の薄膜電極を調製した.
【0016】
【表3】
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【0017】
【表4】
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表3(Table 3)に示したように,純粋なチタン酸バリウムは絶縁体であるため電流が流れず,バンドギャップエネルギーを算出できなかった.しかしながら,表1(Table 1)の条件により調製したいずれの試料でも,算出値にばらつきはあるものの,導電性が認められバンドギャップエネルギーが算出された.超音波処理及び遠心分離処理を施したUS-BTC,CF-BTCのいずれの試料でも良好な導電性が認められた。<
【0018】
<紫外線照射によるMB(:メチレンブルー溶液)の光分解>
光触媒能を確認するためのMBの分解は,予めMB を飽和吸着させた後,試料を加えた各MB溶液をブラックボックスに配置・撹拌させ,強度870μW/cm2のUV光を照射することにより行った.紫外光照射に伴うMB の退色挙動は,任意時間に各試料溶液を採取し,波長665 nmの吸光度を吸光光度計にて測定し,その濃度変化の観察から行った.また,紫外光照射による飽和吸着後のMBの分解挙動は,初期濃度に対する相対濃度 (c / c0) で表し,その対数ln (c / c0 ) を照射時間に対してプロットすると,数1より直線に近似することが可能である.
【0019】
【数1】
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そこで,その直線の傾きkを分解速度定数として用い,その傾きを比較することにより各試料の光触媒能を比較,検討した.この数1より,全試料の分解速度定数を算出し表5(Table 5)に示した.
【0020】
【表5】
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純粋なチタン酸バリウムを投入したMB溶液は,分解挙動が認められなかったにもかかわらず,速度定数は求められなかったが,他の試料ではUV光照射に伴いMB溶液の濃度が減少し,分解が行われていることが明らかとなった.
BT-PVAは分解速度定数が18.69×10-3と,最も大きくなっておりMB溶液の分解効率が高いことが明らかとなった.
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の製造方法による光触媒は,有害排気ガス,あるいは環境汚染水の分解効能を有し環境浄化に寄与すること多大なものがありこの種産業上の利用可能性が極めて高い.