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明細書 :燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5467215号 (P5467215)
公開番号 特開2011-113910 (P2011-113910A)
登録日 平成26年2月7日(2014.2.7)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成23年6月9日(2011.6.9)
発明の名称または考案の名称 燃料電池
国際特許分類 H01M   8/02        (2006.01)
C23C  22/34        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 8/02 B
H01M 8/02 Y
C23C 22/34
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2009-271410 (P2009-271410)
出願日 平成21年11月30日(2009.11.30)
審査請求日 平成24年9月11日(2012.9.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
発明者または考案者 【氏名】衣本太郎
【氏名】長野敬太
【氏名】山本裕司
審査官 【審査官】岸 智之
参考文献・文献 特開2006-210037(JP,A)
特開2007-048753(JP,A)
特開2007-173230(JP,A)
調査した分野 H01M 8/02
C23C 22/34
H01M 8/10
特許請求の範囲 【請求項1】
複極板としてカーボン製複極板又はアルミニウム製複極板を用いこの複極板の表面に、無機の導電性金属酸化物としてフッ化スズ酸アンモニウム水溶液、フッ化スズ水溶液の何れか一つ、又はこれらの一つとホウ酸水溶液との混合液を用いて液相析出法により大気下の常温で反応させ酸化スズを析出被覆すること特徴とする燃料電池の複極板の表面処理法。
【請求項2】
アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面を、0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の何れか一つ、又はこれらの一つと0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のホウ酸水溶液との混合溶液を用いて液相析出法により大気下の常温で反応させ酸化スズを析出被覆することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池の複極板の表面処理法。
【請求項3】
アルミニウム製複極板の表面を、予めスズで被覆した後に、0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はッ化スズ水溶液の何れか一つ、又はこれらの一つと0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のホウ酸水溶液との混合溶液を用いて液相析出法により大気下の常温で反応させ酸化スズを析出被覆することを特徴とする請求項2に記載の燃料電池の複極板の表面処理法。
【請求項4】
アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面に液相析出法により酸化スズ又は酸化チタンを被覆した複極板を有する燃料電池。
【請求項5】
アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面にスズを被覆しその上に液相析出法により酸化スズ又は酸化チタンを被覆した複極板を有する燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複極板の燃料電池(燃料電池及び可逆燃料電池を含み以下単に燃料電池と称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の複極板は、1)発電に使用されるガスの供給と排出、2)水の供給と排出、3)集電体の役割を果たす燃料電池の必須部品である。
現時点で燃料電池用の複極板にはカーボン製,アルミニウム製,ステンレス製があり、それぞれの特長に応じて実用あるいは検討されている。
カーボン製複極板は、既に家庭用燃料電池(エネファーム)の多くに実装されている。
アルミニウム製複極板は軽量であるため、自動車用や宇宙船用燃料電池への使用が期待されている。
しかし、ステンレス製も含め全ての複極板の実用上の耐久性は不十分である。例えばカーボン製の場合、発電中に表面の化学的性状が変化して上記1)と2)の性能が低下し、電池の性能を著しく低くする。
アルミニウム製は発電中に腐食し、表面に酸化物皮膜が生成することで導電性が低下し、上記3)の機能が低下して電池性能が低下する。
ステンレス製の物は発電中腐食し、その流出成分が電池内に混入し、電池性能が著しく低下することが知られている。これらの内、後記アルミニウム製とステンレス製に関する二つの事実は他の研究者により既に報告されている。
他方カーボン製複極板の劣化については、関係する研究者らが初めて見出した事実である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、発電中の化学的な劣化(腐食)を抑制して、従来材料を上回る耐久性を有し、電池性能を大幅に向上させる燃料電池の複極板の表面処理法及びこの製法で得た複極板を有する燃料電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の特徴とする構成は、次の(1)のとおりである。
(1)、複極板の表面に、無機の導電性金属酸化物を液相析出法により大気下の常温で反応させ析出被覆すること特徴とする燃料電池の複極板の表面処理法。
(2)、複極板としてカーボン製複極板又はアルミニウム製複極板を用い、無機の導電性金属水溶液としてフッ化スズ酸アンモニウム水溶液、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液、フッ化スズ水溶液の何れか一つ又はこれ等の何れか一つとホウ酸水溶液との混合液を用いることを特徴とする前記(1)に記載の燃料電池の複極板の表面処理法。
(3)、アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面を、0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のフッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の何れか一つ又はこれ等の何れか一つと0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のホウ酸水溶液との混合溶液に浸漬、静置して酸化スズを析出被覆することを特徴とする前記(2)に記載の燃料電池の複極板の表面処理法。
(4)、アルミニウム製複極板の表面を、予めスズで被覆した後に、0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の何れか一つ又はこれ等の何れか一つと0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3濃度のホウ酸水溶液との混合溶液に浸漬、静置させて酸化スズを析出被覆することを特徴とする前記(2)に記載の燃料電池の複極板の表面処理法。
これら処理法においてフッ化スズ酸アンモニウム水溶液、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液、フッ化スズ水溶液の好ましい濃度は、0.1 mol dm-3である。
(5)、アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面に酸化スズ又は酸化チタンを被覆した複極板を有する燃料電池。
(6)、アルミニウム製複極板又はカーボン製複極板の表面にスズを被覆しその上に酸化スズ又は酸化チタンを被覆した複極板を有する燃料電池。
【発明の効果】
【0005】
本発明の前記「燃料電池の複極板の表面処理法」は、常温、大気圧下での反応を利用するので、大型の装置を必要とせず、真空雰囲気が不要であることから従来の方法に比べ、低コスト化と装置の小型化が可能である。
また、従来の方法よりも作製時の消費電力が飛躍的に低く抑えることができる。また、複極板が有するガス供給用の流路の形状に追従して被覆できる利点は、従来法と比べて優れた長所である。
また、アルミニウム基板に液相析出法を用いる場合、基板の溶解が問題になるが、用いる溶液の構成、前処理方法を検討することで克服し、複極板の耐久性が一段と向上した。
前記のように複極板の耐久性が向上するので、燃料電池の耐久性も向上する。また、自動車用、船用、鉄道用および宇宙船用などの移動体用だけでなく、宇宙基地、住居用燃料電池さらには可逆燃料電池用の複極板に最適である。さらに、それ自身を水の電気分解用の電極として使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明者は、複極板の素材、特にカーボン製とアルミニウム製複極板の耐久性の向上を目的として、耐久性と導電性を有する酸化スズを材料表面に被覆させることを発想した。
そして、無機金属水溶液を用いる“液相析出法”と呼ばれる大気下の常温で反応させる手法を用いて、フッ化スズ酸アンモニウム水溶液あるいはフッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズの何れか一つ又はこれらの一つとホウ酸水溶液を用いてカーボン製複極板とアルミニウム製複極板の表面上を酸化スズで被覆する方法を確立した。
これにより得た複極板は、既に耐久性が飛躍的に向上することを実証している。
また本発明法によれば、理論上どのような無機の導電性金属酸化物でも被覆させることが可能である。
【0007】
さらに開発材料は、可逆燃料電池の複極板として有用であることも実証している。可逆燃料電池とは、水素と酸素を反応させ水と電力を得る反応と、その逆の水の電気分解により水素と酸素を得る反応を一つの電池内で行うもので、特に宇宙船や宇宙基地での利用が望まれている。
この場合、複極板には単なる燃料電池用部材として用いる場合よりも高い耐久性が要求される。現在、可逆燃料電池用複極板には、チタン材料に金や白金などを被覆した高価な材料が用いられているが、より低コストかつ軽量で耐久性の高い複極板が求められており、本発明はそれらに適している。また、開発した複極板の耐久性は現時点で80℃のみで実証しているが、より高温で動作する燃料電池および可逆燃料電池に対しても適応可能と見込まれる。
【0008】
而して本発明において、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の濃度を0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3にすることによって析出反応速度を制御し、これ等単味で又はホウ酸水溶液の適正範囲との関係で、前記含フッ素金属塩溶液とホウ酸水溶液の最適濃度は、それぞれ0.1 mol dm-3と0.1 mol dm-3である。複極板表面への酸化スズ、酸化チタンの析出被覆が図1及び図2の電子顕微鏡像に示すように良好に生成され、電子伝達性も良好であり、耐久性も図3(二酸化炭素生成量)及び図4(接触角変化状態)に示すように良好である。従ってこの範囲を逸脱するとこの効果は顕著に得られない。
本発明において、ホウ酸水溶液の濃度を0.01 mol dm-3 ~ 5.0 mol dm-3にすることによって析出反応速度を制御し、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の濃度との関係で、前記含フッ素金属塩溶液とホウ酸水溶液の最適濃度は、それぞれ0.1 mol dm-3と0.1 mol dm-3である。複極板表面への酸化スズ、酸化チタンの析出被覆が良好に生成され、電子伝達性も良好であり、耐久性も良好である。従ってこの範囲を逸脱するとこの効果は顕著に得られない。
本発明において、フッ化チタン酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ酸アンモニウム水溶液又はフッ化スズ水溶液の一つ:Aとホウ酸水溶液:Bの混合(配合)割合A/Bは、100/0~50/50好ましくは90/10~50/50である。斯くすることによって表12にも例示したように(意義)、前述の濃度との関係で、複極板表面への酸化スズ、酸化チタンの析出被覆が適度の生成速度でなされ、その表面性状特に平滑程度が良好であり、耐久性及び電子伝達性も良好である。
本発明において、アルミニウム製複極板の表面の液相析出法処理前に予めスズで被覆することによってアルミニウム複極板の溶出の抑制と酸化スズ析出速度を制御し、耐久性を格段に向上させ、且つ電子伝達性が優れている。
【実施例】
【0009】
本発明の前記液相析出法による複極板への被覆方法の実施例と、被覆した複極板とその耐久性の実施例を紹介する。
表1~表6に、酸化スズを被覆する方法とその結果を燃料電池の複極板として実装した効果を紹介する。
【0010】
【表1】
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【0011】
【表2】
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【0012】
【表3】
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【0013】
【表4】
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【0014】
【表5】
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【0015】
【表6】
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表7~表11に、酸化チタンを被覆する方法とその結果を燃料電池の複極板として実装した効果を紹介する。
【0016】
【表7】
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【0017】
【表8】
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【0018】
【表9】
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【0019】
【表10】
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【0020】
【表11】
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表12に具体例16の酸化スズ被覆アルミニウム複極板と比較例4、5、6、10、11のアルミニウム製複極板との耐久性、重量変化例を示す。
【0021】
【表12】
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【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の燃料電池は、前記の優れた効果を呈し、移動体用、家庭用および宇宙用燃料電池、可逆燃料電池、アルミニウム製品、カーボン製品への金属酸化物による表面処理、電気分解用電極などの電極として幅広い用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】酸化スズ被覆カーボン製複極板表面の電子顕微鏡像の一例を示す。
【図2】酸化スズ被覆アルミニウム製複極板表面の電子顕微鏡像の一例を示す。
【図3】カーボン製複極板と酸化スズ被覆カーボン製複極板の耐久性、二酸化炭素生成量の比較を示すグラフである。
【図4】カーボン製複極板と酸化スズ被覆カーボン製複極板の耐久性、接触角変化の比較を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3