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明細書 :加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5103631号 (P5103631)
公開番号 特開2011-200944 (P2011-200944A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月19日(2012.12.19)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
発明の名称または考案の名称 加工方法
国際特許分類 H01L  21/306       (2006.01)
B24B   1/00        (2006.01)
FI H01L 21/306 M
B24B 1/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2010-068021 (P2010-068021)
出願日 平成22年3月24日(2010.3.24)
審査請求日 平成24年6月22日(2012.6.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】久保田 章亀
【氏名】峠 睦
個別代理人の代理人 【識別番号】100114627、【弁理士】、【氏名又は名称】有吉 修一朗
審査官 【審査官】日比野 隆治
参考文献・文献 特開2006-024910(JP,A)
特開2002-219635(JP,A)
特開2009-117782(JP,A)
調査した分野 H01L 21/306
H01L 21/304
B24B 1/00
B24B 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
アルカリ溶液中に配置された被加工物の表面に、同被加工物のバンドギャップよりも大きなエネルギーを有する紫外光を照射すると共に、前記紫外光が照射された前記被加工物の表面に合成石英若しくはサファイアで構成された加工部材を接触させた状態で前記被加工物と前記加工部材を相対的に変位させる工程を備える加工方法であって、
前記紫外光は前記加工部材を介して前記被加工物に照射する
加工方法。
【請求項2】
前記アルカリ溶液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液、アルカリ電解水若しくは水酸化カルシウム溶液のうち少なくとも1つを含んでいる
請求項1に記載の加工方法。
【請求項3】
前記被加工物は、シリコンカーバイド、窒化ケイ素、GaN、ダイヤモンド、サファイア、AlNのうちいずれか1つからなる
請求項1または請求項2に記載の加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は加工方法に関する。詳しくは、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)等の難加工性の高機能材料表面を高能率かつ高精度に加工することができる加工方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代パワー半導体素子材料として、ワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、サファイア及び窒化アルミニウム(AlN)などの材料が注目されている。
【0003】
例えば、シリコンカーバイド(SiC)はSi半導体と比べてバンドギャップが3倍であり、絶縁破壊電界強度が約7倍である等優れた物性値を有しており、現在のSiパワーデバイスに比べて低損失、高周波特性、高温動作性といった点で優れている。
【0004】
しかし、SiCはダイヤモンドに次ぐ高硬度を有しており、熱的にも化学的にも極めて安定しているために加工が難しく、従来のシリコン加工技術をそのまま適用することが困難である。
【0005】
なお、従来のSiC基板の加工技術としては、SiC単結晶から切り出した基板に対してダイヤモンド砥粒を用いた機械研磨で平面度を出し、その後表面の加工変質層を除去するためにCMP(Chemical Mechanical Polishing)や高温水素アニールが行われている。
【0006】
しかし、こうしたSiC基板の加工技術では、仕上がり面の表面にわずかなダメージが残っており、エピタキシャル成長用基板として充分な表面を得ることが困難であった。そのため、ダメージの無いSiC基板表面を高能率に実現することができる加工技術の開発が強く求められていた。
【0007】
こうした求めに応じて、酸化剤の溶液中に被加工物を配し、定盤若しくは加工ヘッドに磁場により拘束し、空間的に制御された遷移金属の磁性微粒子を、被加工物の被加工面に極低荷重のもとで接触させるとともに、被加工面と磁性微粒子とを相対的に変位させ、磁性微粒子の触媒作用により、磁性微粒子表面上で生成した酸化力を持つ活性種と被加工物の表面原子との化学反応で生成した化合物を除去、あるいは溶出させることによって被加工物を加工する加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2008-71857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、加工速度が充分では無く、更なる加工速度の向上が求められていた。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、高い加工速度を実現することが可能である加工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る加工方法では、アルカリ溶液中に配置された被加工物の表面に、同被加工物のバンドギャップよりも大きなエネルギーを有する光を照射すると共に、前記光が照射された前記被加工物の表面に加工部材を接触させた状態で前記被加工物と前記加工部材を相対的に変位させる工程を備える。
【0012】
ここで、被加工物のバンドギャップよりも大きなエネルギーを有する光を照射することによって、被加工物の表面を励起させ、被加工物の表面での酸化還元反応を誘発することができる。そして、被加工物の表面で酸化還元反応が生じることで、被加工物の表面が改質し、母材よりも軟質な層を形成することができる。例えば、被加工物がSiC基板の場合には被加工物より軟質な層としてSiOx層を形成することができ、被加工物がGaN基板の場合には軟質な層としてGa層を形成することができるといった具合である。
【0013】
また、被加工物がアルカリ溶液中に配置されていることによって、被加工物の表面に形成された軟質な層を化学的に除去することができる。更に、被加工物の表面に加工部材を接触させた状態で被加工物と加工部材を相対的に変位させることによって、被加工物の表面に形成された軟質な層を機械的(物理的)に除去することができる。
即ち、被加工物の表面に形成された軟質な層については、(1)アルカリ溶液によって化学的に除去され、若しくは、(2)加工部材によって機械的に除去され、若しくは、(3)アルカリ溶液によって化学的に除去されると共に加工部材によって機械的に除去されることとなる。
【0014】
なお、被加工物に照射する光について、被加工物の直上若しくは直下から照射した場合には、光が被加工物に均等に照射されることとなり、被加工物の表面に形成される軟質な層についても均一に形成することができ、加工領域の表面粗さを改善し、より平滑な加工面を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用した加工方法では、高い加工速度を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用した加工方法の一例を実施するための加工装置を説明するための模式図である。
【図2】本発明を適用した加工方法の一例を説明するための模式図である。
【図3】各種加工方法による加工レートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と称する。)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態

【0018】
<1.第1の実施の形態>
図1は本発明を適用した加工方法の一例を実施するための加工装置を説明するための模式図であり、ここで示す加工装置(ポリッシング装置)1は、水酸化カリウム溶液(0.1mol/リットル)2を入れた加工槽3と、SiC基板8を保持する試料ホルダー4と、紫外光を照射するための紫外光光源5を有している。なお、SiC基板は被加工物の一例である。

【0019】
加工槽3の底部3aは合成石英定盤で構成されており、この合成石英定盤の上面(図1上の上面)によって被加工物が研磨されることとなる。また、加工槽3の側壁3bは例えばフッ素樹脂や塩化ビニル樹脂といった耐薬品性に優れた樹脂系材料により形成されている。なお、合成石英定盤は加工部材の一例である。

【0020】
ここで、本実施の形態では、加工槽3の底部3aが合成石英で形成されている場合を例に挙げて説明を行っているが、紫外光光源5から照射される紫外光が底部3aの上面に到達する程度の透過率である材料であれば充分であり、必ずしも合成石英で形成される必要は無く、例えば、サファイア等で形成されていても構わない。

【0021】
また、合成石英定盤3aの中心部には、モーター6と接続された回転軸7aと連結されており、モーター6によって加工槽3が図1中符号Aで示す方向に回転可能に構成されている。

【0022】
ここで、本実施の形態では、加工槽3に入れられるアルカリ溶液として、水酸化カリウム(KOH)溶液を用いた場合を例に挙げて説明を行っているが、アルカリ溶液は後述する様に、被加工物の表面に生成された改質層部分を化学的に除去することができれば充分であり、必ずしも水酸化カリウム溶液である必要はなく、水酸化カリウム(KOH)溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液、アルカリ電解水若しくは水酸化カルシウム(Ca(OH))溶液のうち少なくとも1つを含んでいれば良い。即ち、被加工物や加工条件等の組み合わせに応じてアルカリ溶液は種々の材料に変更可能である。

【0023】
また、試料ホルダー4は、加工槽3の回転軸7aに対して偏心した回転軸7bを中心として図1中符号Bで示す方向に回転可能に構成されており、SiC基板8を保持した状態で上方からSiC基板8と合成石英定盤3aが接触するような位置まで下降する。

【0024】
ここで、本実施の形態では、試料ホルダー4に保持される被加工物としてSiC基板8を例に挙げて説明を行っているが、被加工物はSiC基板に限定されるものではなく、窒化ケイ素、GaN、ダイヤモンド、サファイア、AlN等からなる基板であっても構わない。

【0025】
また、紫外光光源5は、合成石英定盤3aの上面に紫外光を照射することができる様に構成されており、即ち、SiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域に紫外光を照射することができる様に構成されている。なお、紫外光光源5はSiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域の真下に配置され、紫外光光源5から真上に紫外光を照射できる様に構成されている。

【0026】
ここで、SiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域に紫外光を照射することができるのであれば、必ずしも紫外光光源5がSiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域の真下に配置される必要は無い。但し、紫外光光源5がSiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域の真下に配置され、真上に紫外光を照射できる様に構成することで、SiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域に均等に紫外光を照射することができることとなるために、紫外光光源5はSiC基板8と合成石英定盤3aが接触する領域の真下に配置された方が好ましい。

【0027】
なお、本実施の形態では、SiC基板8に照射する光が紫外光である場合を例に挙げて説明を行っているが、SiC基板8のバンドギャップよりも大きなエネルギーを有する光であればよい。

【0028】
以下、上記の様に構成された加工装置1を用いた加工方法についての説明を行う。即ち、本発明を適用した加工方法の一例について説明を行う。
先ず、SiC基板8に紫外光を照射することで、図2(A)で示す様に、SiC基板8よりも軟質な層9が形成される。具体的には、SiC基板8に紫外光を照射することで、SiC基板8の表層にSiO層9が形成される。

【0029】
即ち、SiC基板8に紫外光を照射することで、SiC基板8の表面が励起され、そのことによってSiC基板8の表面で酸化還元反応が誘発されることとなる。そして、SiC基板8の表面で酸化還元反応が生じることによりSiC基板8の表面が改質され、上述した様に、SiC基板8の表面に軟質な層(SiO層)9が形成されるのである。

【0030】
SiC基板8の表層に形成されたSiO層9は、水酸化カリウム溶液による化学的なエッチング作用によって除去されると共に(図2(B)参照)、合成石英定盤3aにより機械的に除去されることとなる(図2(C)参照)。

【0031】
本実施の形態における加工方法では、SiC基板8の表面に軟質なSiO層9を形成し、化学的及び機械的に除去することによって、高能率であると共に高精度な加工が実現できることとなる。

【0032】
図3は各種加工方法による加工レートを示す模式図である。

【0033】
先ず、図3中符号Aは、SiC基板を過酸化水素水(H)中に配置し、鉄(Fe)製の加工部材をSiC基板に接触させた状態で往復運動させた場合の加工レートである。
即ち、加工部材(Fe)が過酸化水素水(H)と反応して生成されるOHラジカル(OH・;ヒドロキシルラジカル)と過酸化水素水(H)中の溶存酸素によってSiC基板の表面を酸化してSiO層を生成した上で、加工部材を往復させることでSiO層を除去する場合の加工レートを示したものが、図3中符号Aである。なお、こうした技術は上述の特許文献1に記載がなされている。

【0034】
また、図3中符号Bは、SiC基板を過酸化水素水(H)中に配置し、SiC基板に紫外光を照射すると共に、石英をSiC基板に接触させた状態で往復運動させた場合の加工レートである。
即ち、紫外光の影響で過酸化水素水(H)が分解されて生成されるOHラジカルと過酸化水素水(H)中の溶存酸素によってSiC基板の表面を酸化してSiO層を生成した上で、石英を往復させることでSiO層を除去する場合の加工レートを示したものが、図3中符号Bである。

【0035】
これに対して、図3中符号Cは、本実施の形態における加工方法での加工レートを示している。

【0036】
図3からも明らかな様に、本実施の形態の加工レートは極めて高いことが分かる。

【0037】
表1は本実施の形態における加工方法で加工した場合の表面粗さと、紫外光を照射せずその他の条件は本実施の形態における加工方法と同様の方法で加工した場合の表面粗さを示したものである。

【0038】
【表1】
JP0005103631B2_000002t.gif

【0039】
表1からも明らかな様に、本実施の形態における加工方法では、加工レートの向上のみならず、表面粗さの改善をも実現することができる。

【0040】
<2.第2の実施の形態>
上記した第1の実施の形態では、紫外光によってのみSiO層を形成していたが、紫外光と共にOHラジカルによってSiO層を形成するようにしても良い。
即ち、加工槽3の中に水酸化カリウム溶液2と共に過酸化水素水(H)を入れておいても良い。

【0041】
過酸化水素水(H)を含む溶液に紫外光が照射されると、極めて強力な酸化力を有するOHラジカルが生成されることとなる(式1参照)。

【0042】
(式1)
+UV(紫外光)→2OH・

【0043】
そして、こうして生成されたOHラジカルとSiC基板8の表面の凸部が反応することで、SiC基板8の表面が酸化され、SiO層9が形成されることとなる(式2参照)。

【0044】
(式2)
SiC+4OH・+O→SiO+2HO+CO

【0045】
なお、SiC基板8に紫外光を照射することで、SiC基板8の表面が励起されてSiO層9が形成される点については、上記した第1の実施の形態と同様である。

【0046】
そして、紫外光を照射することによって、更に、OHラジカルの作用によってSiC基板8の表面に形成されたSiO層9は、水酸化カリウム溶液による化学的なエッチング作用によって除去されると共に(図2(B)参照)、合成石英定盤3aにより機械的に除去されることとなる(図2(C)参照)。この点についても、上記した第1の実施の形態と同様である。

【0047】
本実施の形態における加工方法についても、上記した第1の実施の形態と同様に、高能率であると共に高精度な加工が実現できることとなり、更に、表面粗さの改善をも実現することができる。
【符号の説明】
【0048】
1加工装置
2水酸化カリウム溶液
3加工槽
3a合成石英定盤
3b側壁
4試料ホルダー
5紫外光光源
6モーター
7a回転軸
7b回転軸
8SiC基板
9SiO
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2