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明細書 :環状ビナフチル構造を有する化合物、分子接合素子、ホスト‐ゲスト混合物及び超分子連鎖構造

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5561758号 (P5561758)
公開番号 特開2011-020942 (P2011-020942A)
登録日 平成26年6月20日(2014.6.20)
発行日 平成26年7月30日(2014.7.30)
公開日 平成23年2月3日(2011.2.3)
発明の名称または考案の名称 環状ビナフチル構造を有する化合物、分子接合素子、ホスト‐ゲスト混合物及び超分子連鎖構造
国際特許分類 C07F   5/02        (2006.01)
C07F  15/00        (2006.01)
FI C07F 5/02 CSPC
C07F 15/00 E
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2009-165875 (P2009-165875)
出願日 平成21年7月14日(2009.7.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者名:日本質量分析学会、刊行物名:第57回質量分析総合討論会(2009)講演要旨集、発行日:平成21年5月1日
特許法第30条第1項適用 研究集会名:第76回日本分析化学会有機微量分析研究懇談会 第80回計測自動制御学会力学量計測部会 第26回合同シンポジウム、主催者:日本分析化学会 有機微量分析研究懇談会、 開催日:平成21年6月4日
特許法第30条第1項適用 発行者名:The American Chemical Society、刊行物名:Journal of the American Chemical Socciety(Web),Vol.131,No.5、発行日:2009年1月15日
特許法第30条第1項適用 発行者名:社団法人 日本化学会、刊行物名:日本化学会第89春季年会(2009)講演予稿集 DVD-ROM、発行日:平成21年3月13日
審査請求日 平成24年5月11日(2012.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】397022911
【氏名又は名称】学校法人甲南学園
発明者または考案者 【氏名】檀上 博史
【氏名】平田 和也
【氏名】山口 健太郎
【氏名】東屋 功
【氏名】吉開 成棋
個別代理人の代理人 【識別番号】110000947、【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
審査官 【審査官】坂崎 恵美子
参考文献・文献 特開2003-073319(JP,A)
特開2005-028363(JP,A)
特開平02-218683(JP,A)
The Journal of Organic Chemistry,2006年,Vol.71,p.6474-6484
ADVANCED SYNTHESIS & CATALYSIS,2007年,Vol.349,p.343-349
調査した分野 C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(2)
【化1】
JP0005561758B2_000005t.gif
式(2)中、Zは、B、Al、Ga(III)、In(III)及びTa(III)から選択される3価の電子配置をとり得る原子、またはSi、Ge(IV),Sn(IV)、Ti(IV)及びZn(IV)から選択される4価の電子配置をとり得る原子に記す構造を基本骨格とすることを特徴とする環状ビナフチル構造を有する化合物。
【請求項2】
ZはB、Al、Ga(III)、In(III)及びTa(III)から選択される3価の電子配置をとり得る原子となされた請求項1に記載の環状ビナフチル構造を有する化合物。
【請求項3】
2,2´,3,3´-テトラヒドロキシ-1,1´-ビナフチルがホウ素で結合された環状スピロボラート3量体である請求項1記載の環状ビナフチル構造を有する化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の環状ビナフチル構造を有する化合物からなる分子接合素子と、当該分子接合素子におけるZの原子と会合し易い正電荷又は中性電荷を有するゲスト化合物を媒体中に混在させてなり、当該分子接合素子と、ゲスト化合物とが媒体中で溶解することで、分子接合素子とゲスト化合物とが一次元的且つ交互に連鎖した連鎖会合体を形成するようになされたことを特徴とするホスト‐ゲスト混合物。
【請求項5】
請求項3記載の環状ビナフチル構造を有する化合物からなる分子接合素子と、[Ir(2,2´:6´,2´´‐terpyridine)](PFからなるゲスト化合物とを媒体中に混在させてなる請求項4に記載のホスト-ゲスト化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、種々のゲスト化合物を張り合わせて配列する「のり」のような性質を有する分子接合素子の創製及びこの分子接合素子の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子化合物の新しい領域として超分子ポリマーが注目を集めている。この超分子ポリマーは、重合反応による共有結合を必要とせず、溶液などの媒体中で自発的に秩序だった集合状態を構築する。そのため、一般的な重合反応の条件下では使用が困難な各種機能性官能基や骨格を使用することができる。
【0003】
又、この種超分子ポリマーは、重合が平衡過程であるため原理的に自己修復能を有するといった利点や、熱などの外部刺激に対して柔軟な応答性を示すといった利点を有する。これらのことから、高分子化合物を高度に機能化する場合、従来の共有結合に基づく高分子化合物よりも、超分子ポリマーを利用した系が有利な面も指摘されている。
【0004】
ところで、自発的な凝集様式を持たない機能性分子の高次配列化を行う場合、従来法ではこれらを直接的に共有結合で結びつけたり、相互作用部位として新たに官能基を導入したりするなど、目的分子の化学修飾が不可欠であった。
【0005】
最近の超分子ポリマーの開発研究では、ホスト-ゲスト相互作用が可能な分子を適当な架橋鎖で結びつけることで、繰り返しの分子認識による重合を行っている。これらの研究の中には高い重合度を達成している例もある(例えば、下記非特許文献1参照。)。
【0006】
単に「ポリマーを形成する」という観点からは、前記非特許文献1に記載されたような架橋鎖を用いる方法は非常に優れているといえる。
【0007】
しかしながら、これらの手法では分子認識分子の適切な位置に置換基を導入することが要求される。中でも環状多量体構造のホスト分子などを用いる場合には、多数ある等価な置換基の一箇所にのみ修飾を施さなければならない。このような合成は比較的難易度が高く収率が低く抑えられてしまう場合も少なくない(例えば、下記非特許文献2参照。)。
【0008】
ポリマーに対する機能性官能基の導入を考えた場合にも、ポリマーの主鎖若しくは側鎖を修飾する必要がある。加えて、機能性分子間に秩序だった相互作用を期待することは困難であり、その連携に基づく新たな機能創発には結びつきにくいと考えられる。
【0009】
一方、結晶中や薄膜中で自己組織化する化合物については、その凝集様式に由来する各種物性が報告されている。しかしながら、化合物自体の結晶性や成膜時の配向性の問題などからその配列制御は困難な場合が多い。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】Science,278,1601(1997)
【非特許文献2】Angew.Chem.,Int.Ed.,47,4504(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、ゲスト化合物に対しほとんどないしは全く手を加えることなく、当該ゲスト化合物を配列化することができる環状ビナフチル構造を有する化合物及び前記化合物からなる分子接合素子を提供することを目的とする。併せて本発明は、前記分子接合素子の利用としてのホスト‐ゲスト混合物及び超分子連鎖構造を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の環状ビナフチル構造を有する化合物(以下、「本発明化合物」と称する。)は、下記一般式(1)
【0013】
【化1】
JP0005561758B2_000002t.gif
に記す1,1´‐ビナフチル単位構造(以下、「ビナフチル単位」と称する。)を複数個、その1,1´結合部位を中心方向に向けて環状に配置した構造を基本骨格とすることを特徴とする。以下、まず本発明化合物について詳細に説明する。
【0014】
本発明化合物は、ビナフチル単位を複数個「環状に配置」した構造を基本骨格とする。即ち、本発明化合物は、ビナフチル単位複数個を環状に結びつけた環状分子といえる。
【0015】
ところで、前記ビナフチル単位は、1位同士で結合したナフタレン環が互いにねじれた立体配置をとる。そのため、このビナフチル単位を複数個、その1,1´結合部位を中心方向に向けて環状に配置した構造を基本骨格とする本発明化合物も、隣接するナフタレン環が互いにねじれた立体配置をとる。その結果、本発明化合物は、カリックスアレーン様のお椀型キャビティを表裏2面に配した形状の環状分子となる。
【0016】
又、本発明化合物は、ビナフチル単位を複数個、その1,1´結合部位を中心方向に向けて環状に配置した構造を「基本骨格」とする。
【0017】
ここで、「基本骨格」とは、本発明化合物中のナフチル基に存在する各水素基の一ないし複数が、他の置換基によって置換されていても良いことを意味する。これは、ナフチル基に替わって、ベンゼン環が3個以上の複数個連結した構造のアントラセン、テトラセン及びペンタセン等のアセン類などが配置されているものも本発明化合物に含まれることも意味する。
【0018】
本発明化合物においては、複数のビナフチル単位が環状に配置されて、お椀型キャビティを表裏2面に配した形状の環状分子を形成するのであれば、各ビナフチル単位を結びつける結合手段について特に限定されるものではない。
【0019】
もっとも本発明化合物は、前記ビナフチル誘導体を複数個環状に配置するにあたり、各ビナフチル単位における1,1´結合部位を中心方向に向ける必要がある。そのため、本発明化合物を製造するにあたっては、ビナフチル単位における各ナフタレン環の2位(2´位)及び/又は3位(3´位)に対し、結合のための官能基(例えば、水酸基、ハロゲン基及びカルボシル基等から選ばれた少なくとも1種以上)が修飾されているビナフチル誘導体を用いることが好ましい。
【0020】
このようなビナフチル誘導体の好適な例としては、各ナフタレン環2位及び3位が全て水酸基によって修飾された2,2´,3,3´‐テトラヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチルを挙げることができる。
【0021】
そして、この2,2´,3,3´‐テトラヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチルは、B、Al、Ga(III)、In(III)及びTa(III)などの3価の電子配置をとり得る原子やSi、Ge(IV),Sn(IV)、Ti(IV)及びZn(IV)などの4価の電子配置をとり得る原子の酸化物や水酸化物、或いはアルコキシド等で処理することにより下記一般式(2)
【0022】
【化2】
JP0005561758B2_000003t.gif
に記す構造を基本骨格とする環状ビナフチル構造(3量体)となる。
【0023】
ここで、前記一般式(2)に記す環状ビナフチル構造におけるZを、B、Al、Ga(III)、In(III)及びTa(III)などの3価の電子配置をとり得る原子とすると、化合物全体として電気的にマイナス3の電荷が生じる。そのため、このような化合物を後述する分子接合素子として用いた場合、正電荷を有するゲスト化合物を取り込むのに有利となる。
【0024】
一方、前記一般式(2)に記す環状ビナフチル構造におけるZを、Si、Ge(IV),Sn(IV)、Ti(IV)及びZn(IV)などの4価の電子配置をとり得る原子とすると、化合物全体として電気的に中性となる。そのため、このような化合物を後述する分子接合素子として用いた場合、中性電荷のゲスト化合物を取り込むのに有利となる。
【0025】
具体的な例として、2,2´,3,3´‐テトラヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチルをホウ酸で処理することによる本発明化合物(環状スピロボラート3量体)の合成を下記一般式(3)に記す。
【0026】
【化3】
JP0005561758B2_000004t.gif

【0027】
前記環状スピロボラート3量体を形作るスピロボラート結合は、その形成が容易であり、且つ極めて剛直であることから、超分子化合物を調製するにあたっては非常に有用である。
【0028】
自己組織化による超分子化合物生成では、一般的に溶液中で熱力学的に最も安定な構造へ収束する必要がある。そのため、その反応は活発な平衡系であり、形成された超分子は単離・生成に不向きなものが少なくない。
【0029】
このような機能性材料としての超分子化合物の利用を見据えた場合、常温・常圧空気中で安定に取り扱えることは非常に有利な特性となる。
【0030】
この点につき、前記スピロボラート結合の形成は、高温条件では平衡系、室温では非可逆系として反応設計が可能なことから、複数のビナフチル誘導体を結びつける上で非常に好適な手法となる。
【0031】
続いて、本発明の分子接合素子について詳細に説明する。
【0032】
本発明の分子接合素子は、前記本発明化合物からなることを特徴とする。
【0033】
前述のように本発明化合物は、カリックスアレーン様のお椀型キャビティを表裏2面に配した形状の環状分子である。
【0034】
そして、このような構造を有する本発明の分子接合素子は、任意のゲスト化合物を表裏2面のお椀型キャビティで認識することができ、その結果、あたかも「のり」のように当該ゲスト化合物を連続的に貼り合わせるようにして超分子連鎖構造(鎖状高次構造体)を与える。
【0035】
即ち、本発明の分子接合素子によれば、任意のゲスト化合物を配列させて超分子ポリマーを形成することができる上、場合によっては、配列したゲスト化合物を互いに極めて近い位置に引き寄せることもできる。
【0036】
これにより、同一分子間では元来顕著な分子相互作用をもたない種々の機能性分子について、これらを溶液、結晶或いは薄膜などの媒体中で互いに接触ないし近接した状態で連鎖させ、連続的な分子間相互作用を誘起することができる。
【0037】
本発明の分子接合素子においては、基本骨格としての環状ビナフチル構造に対して更に置換基を導入することにより、その機能性を一層向上することができる。
【0038】
例えば、図4(a)~(c)に示すような長鎖飽和アルキル基(ブチル基、オクチル基及びドデシル基など)を置換基として導入すれば、当該分子接合素子並びにこれによって形成される超分子ポリマーの有機溶媒(クロロホルム、酢酸エチル、トルエンなど)への溶解性を向上することができる。これにより薄膜作成など様々な材料成形法が適用可能となる。
【0039】
逆に、図5(a)~(c)に示すような水溶性置換基(オリゴエチレングリコール鎖やカルボキシル基など)を導入すれば、当該分子接合素子並びにこれによって形成される超分子ポリマーの水への溶解性を向上することができる。
【0040】
ところで、本発明の接合素子が認識して会合体を形成し得るゲスト分子は、当該接合素子におけるお椀型キャビティの大きさにある程度応じた大きさのものとなる。この点につき、図6(a)~(e)に示すようなπ共役系置換基(フェニル基、ナフチル基など)を導入すれば、当該分子接合素子のお椀型キャビティの大きさが増すことができ、その結果、より大きなゲスト化合物を取り込むことが可能となる。
【0041】
更に、図7(a)及び(b)に示すような末端アルケニル基(4-ブテニル基(ホモアリル基)など)を置換基として導入すれば、Grubbs触媒によるオレフィンメタセシスで超分子ポリマー中の分子接合素子を共有結合で結ぶことができ、その機械的強度を向上することができる。
【0042】
加えて、図8(a)~(d)に示すような金属に対して配位能を有する置換基(ピリジル基、シアノ基、アミノ基及びホスフィノ基など)を導入すれば、金属の存在下、これの置換基が金属に配位することで、超分子ポリマー同士が横方向に相互作用を持つようになる。その結果、3次元ネットワークを構築することが可能となる。
【0043】
その他、図9(a)~(c)に示すようなアミド、イミド及びウレアなども置換基として導入することにより、それに応じた特性を分子接合素子に付与することが期待できる。
【0044】
これら種々の置換基を導入するにあたっては、原則として、環状ビナフチル構造のいずれの位置に導入しても良い。一般的には、修飾の容易さ等の観点から、環状ビナフチル構造における各ナフタレン環4位及び/又は6位(特に6位)の位置(ナフタレン環以外のアレン類の場合は相当する位置)に導入される。
【0045】
又、環状ビナフチル構造に対し、これら種々の置換基を導入するにあたっては、直接環状ビナフチル構造に導入しても良いし、環状ビナフチル構造を形成する前のビナフチル誘導体に予め導入しても良い。
【0046】
本発明のホスト-ゲスト混合物は、溶液、結晶或いは薄膜などの媒体中において、前記本発明の分子接合素子と任意のゲスト化合物を混在させたことを特徴とするものである。この場合、前記分子接合素子とゲスト化合物は、必ずしも連鎖していなくても良い。
【0047】
一方、本発明の超分子連鎖構造は、本発明の分子接合素子と任意のゲスト化合物が一次元的且つ交互に連鎖した構造を有することを特徴とするものである。即ち、前記分子接合素子とゲスト化合物が連鎖会合体を形成したものである。
【0048】
なお、前記本発明の超分子連鎖構造においては、機械的強度や耐久性等を向上するために、分子接合素子同士を共有結合的に固定化しても良い。この場合、分子接合素子として、環状ビナフチル構造におけるナフタレン環4位及び/又は6位の位置に末端アルケニル基などの反応性官能基を導入したものを用い、連鎖会合体の形成後にこれらを反応させ、共有結合的につなぎ合わせる手段が好適に用いられる。
【0049】
そして、本発明のホスト-ゲスト混合物及び超分子連鎖構造は、ゲスト化合物の有する特性により様々な機能を獲得する。
【0050】
例えば、図10(a)~(f)に示すような中性若しくはカチオン性金属錯体をゲスト化合物とすれば、金属間の電子・電荷移動などが生じ、これにより導電性、光電特性などを獲得する(図中Xは対イオンを表す。図11及び図12において同じ。)。
【0051】
又、図11(a)~(d)に示すようなビスピリジニウムカチオンをゲスト化合物とすれば、電子移動や励起子的な光学特性や光学的に様々な吸光特性を獲得する。
【0052】
更に、図12(a)及び(b)に示すようなフラーレンや金属内包フラーレンをゲスト化合物として連鎖会合体に取り込めば、フラーレンの有する導電性や光電特性などに由来する新たな物性を獲得する(図中Yは、金属イオンを表す。)。
【発明の効果】
【0053】
本発明化合物及びこの化合物からなる分子接合素子は、カリックスアレーン様のお椀型キャビティを表裏2面に配した形状の環状分子であり、ゲスト化合物に対しほとんどないしは全く手を加えることなく、当該ゲスト化合物を配列化することができる。
【0054】
即ち、このような構造を有する本発明の分子接合素子は、任意のゲスト化合物を表裏2面のお椀型キャビティで認識することができ、その結果、あたかも「のり」のように当該ゲスト化合物を連続的に貼り合わせるようにして、鎖状高次構造体を与える。
【0055】
そして、本発明の分子接合素子によれば、任意のゲスト化合物を配列させて超分子ポリマーを形成することができる上、配列したゲスト化合物を互いに極めて近い位置に引き寄せることも可能となる。これにより、同一分子間では元来顕著な分子間相互作用をもたない種々の機能性分子について、これらを溶液、結晶或いは薄膜などの媒体中で互いに接触ないし近接した状態で連鎖させ、連続的な分子間相互作用を誘起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の分子接合素子の創製を模式的に示す図である。
【図2】図2は、分子接合素子の一例として、環状スピロボラート3量体の立体構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明の分子接合素子によりゲスト分子が配列する状態を模式的に示す図である。
【図4】図4は、分子接合素子に導入し得る置換基(長鎖飽和アルキル基)を例示列挙する図である。
【図5】図5は、分子接合素子に導入し得る置換基(水溶性置換基)を例示列挙する図である。
【図6】図6は、分子接合素子に導入し得る置換基(π共役系置換基)を例示列挙する図である。
【図7】図7は、分子接合素子に導入し得る置換基(末端アルケニル基)を例示列挙する図である。
【図8】図8は、分子接合素子に導入し得る置換基(金属に対して配位能を有する置換基)を例示列挙する図である。
【図9】図9は、分子接合素子に導入し得るその他の置換基を例示列挙する図である。
【図10】図10は、本発明の分子接合素子と連鎖会合体を形成し得るゲスト化合物(中性若しくはカチオン性金属錯体)を例示列挙する図である。
【図11】図11は、本発明の分子接合素子と連鎖会合体を形成し得るゲスト化合物(ビスピリジニウムカチオン)を例示列挙する図である。
【図12】図12は、本発明の分子接合素子と連鎖会合体を形成し得るゲスト化合物(フラーレン誘導体)を例示列挙する図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の一実施形態を図面に沿って説明するが、本発明はこの図面に記載された一実施形態に限定されるものではない。

【0058】
図1は、本発明の分子接合素子1の創製を模式的に示す図である。この図に示すように、1,1´‐ビナフチル単位構造2は、ねじれて重なった2本の棒状ユニット2´に見立てることができる。この棒状ユニット2´を複数個(本実施形態においては3個)、その1,1´結合部位を中心方向に向けて環状に結合することにより(1´)、カリックスアレーン様のお椀型キャビティを表裏2面に配した形状を有する分子接合素子1となる。

【0059】
図2は、このような分子接合素子1の一例として、環状スピロボラート3量体5の立体構造を示す図である。

【0060】
図3は、本発明の分子接合素子1によりゲスト化合物3が配列する状態を模式的に示す図である。図3に示すように、本発明の分子接合素子1がゲスト化合物3を表裏2面で認識して一次元的に貼り合わせることにより、分子接合素子1とゲスト化合物3が一次元的且つ交互に連鎖した超分子連鎖構造4が得られる。
【実施例1】
【0061】
<分子接合素子の合成>
30ml二口ナスフラスコにrac‐2,2´,3,3´‐テトラヒドロキシ‐1,1´‐ビナフチル(637mg、2.00mmol)とホウ酸(124mg、2mmol)を入れ、窒素下でN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF 20ml)に溶解した。これを撹拌しながら12時間加熱還流し、得られた褐色溶液を室温まで冷却後、約3mlになるまで減圧下で濃縮した。これを100ml三角フラスコ内で激しく撹拌したジエチルエーテル(50ml)に滴下した。これにより生じた白色または淡褐色沈殿を桐山ろうとで濾取し、得られた粉末をジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥した。これを約3mlのDMFに溶解し、ジエチルエーテルを用いた蒸気拡散法による再結晶を行い、環状スピロボラート3量体を794mg(0.57mmol、85%収率)で淡黄色結晶として得た。
【実施例1】
【0062】
<ゲスト化合物>
ゲスト化合物として、蛍光性金属錯体である[Ir(2,2´:6´,2´´‐terpyridine)](PF(以下、「Ir(III)錯体」と称する。)を用いた。
【実施例1】
【0063】
<ホスト-ゲスト混合物の作成>
5mlサンプル管に、得られた環状スピロボラート3量体(1.40mg、1.00μmol)及びIr(III)錯体(1.00mg、1.00μmol)を入れ、DMF1mlに溶解することで、オレンジ液体状のホスト-ゲスト混合物を得た。
【実施例1】
【0064】
このIr(III)錯体をゲスト分子として使用したホスト-ゲスト混合物につき、DOSY NMRやESI、及びMALDI‐TOF等を用いて解析した。
【実施例1】
【0065】
その結果、結晶構造では、分子接合素子たる環状スピロボラート3量体が、そのお椀型のキャビティによってゲスト化合物たるIr(III)錯体を連続的に認識し、一次元連鎖構造を形成していることが確認された。
【実施例1】
【0066】
そして、この一次元連鎖構造中、隣接するIr(III)錯体は、環状スピロボラート3量体の中心にある穴を貫通してファンデルワールス接触していることが確認された。
【実施例1】
【0067】
一方、溶液中では、環状スピロボラート3量体とIr(III)錯体との混合物(ホスト-ゲスト混合物)は、それぞれの成分単独のときと比較して小さな拡散係数を有することが確認された。これは溶液中で連鎖会合体を形成していることを示す。
【実施例1】
【0068】
更に、このホスト-ゲスト混合物は、刺激応答性ゲル化挙動を示し、下限臨界溶液温度以上では速やかにゲル化し、当該温度以下に冷却すると溶液状態に戻るといった可逆的な相転移をすることも見出された。
【実施例1】
【0069】
その他、注目すべき事柄として、分子接合素子たる環状スピロボラート3量体の添加により、Ir(III)錯体はその蛍光特性を失うと共にその吸光が長波長へとシフトした点を挙げることができる。
【実施例1】
【0070】
この混合溶液の色調(オレンジ)は、Ir(III)錯体の結晶状態のものに近いことから、分子接合素子共存下でのIr(III)錯体は結晶中と類似の環境、即ち、隣接分子間が極めて小さい状態であると判断することができる。
【実施例1】
【0071】
このような深色移動に関する詳細は現在のところ確認していないが、J吸収帯の出現の可能性も考えられ、いずれにしてもホスト-ゲスト混合物の特殊な凝集状態に由来すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のような手法で個々のゲスト化合物の機能を高次に集積化することは、現存の分子集合体の物性研究と相まって、未知なる機能開拓へと繋がる可能性を秘めている。
【0073】
又、本発明の重要な利点として、これらの分子集合がゲスト化合物単独での自発的な挙動ではなく、分子接合素子の介在によってはじめて引き起こされるという点が挙げられる。
【0074】
即ち、分子接合素子の働きを調節することで、集合状態であるナノ構造体の物性・機能を自在に制御することが可能となる。それは分子接合素子の設計に基づく集合状態の多様化や、動的挙動制御による高次構造体の構造・機能のスイッチングなど、ナノ材料創製において幅広い選択肢を与える。
【符号の説明】
【0075】
1 分子接合素子
2 1,1´‐ビナフチル単位構造
3 ゲスト化合物
4 超分子連鎖構造
5 環状ビナフチル構造を有する化合物(環状スピロボラート3量体)
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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