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明細書 :N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(DOODA)とTADGA(N,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミド)を併用するAm,CmとSm,Eu,Gdとの相互分離法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5526434号 (P5526434)
公開番号 特開2011-169888 (P2011-169888A)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成23年9月1日(2011.9.1)
発明の名称または考案の名称 N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(DOODA)とTADGA(N,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミド)を併用するAm,CmとSm,Eu,Gdとの相互分離法
国際特許分類 G21F   9/06        (2006.01)
G21C  19/46        (2006.01)
FI G21F 9/06 581H
G21C 19/46 K
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2010-266977 (P2010-266977)
出願日 平成22年11月30日(2010.11.30)
優先権出願番号 2010009919
優先日 平成22年1月20日(2010.1.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年6月27日(2013.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】佐々木 祐二
【氏名】森田 泰治
【氏名】北辻 章浩
【氏名】木村 貴海
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2010-271243(JP,A)
特開2005-349294(JP,A)
特開2002-001007(JP,A)
調査した分野 G21F 9/06
G21C 19/46
特許請求の範囲 【請求項1】
抽出剤として一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドを用い、マスキング剤として一般式:(OCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミドを用いることを特徴とする、高レベル放射性廃液からの3価のランタノイド及びアクチノイドの抽出分離方法。
【請求項2】
N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドは、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド、N,N,N’,N’-テトラデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド、N,N,N’,N’-テトラドデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド、N,N,N’,N’-テトラエチルヘキシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
N,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミドは、N,N,N’,N’-テトラメチル-ジグリコールアミド、N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド、N,N,N’,N’-テトラプロピル-ジグリコールアミドから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
N,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミドは、3~5Mの硝酸溶液中2~20mMの濃度であり、N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドはドデカン中0.2~0.3Mの濃度で用いられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤として0.3M N,N,N’,N’-テトラドデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドを用い、マスキング剤として0.005M N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミドを用い、4M硝酸水溶液を溶媒として用いる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
硝酸水溶液を溶媒とする高レベル放射性廃液に、一般式:(OCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミドをマスキング剤として添加し、
一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドのドデカン溶液を抽出溶媒として用いる、高レベル放射性廃液からの3価のランタノイド及びアクチノイドの抽出分離方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、3価のランタノイド、アクチノイドの相互分離法に関し、特に、N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(DOODA)とTADGA(N,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミド)を併用するAm,CmとSm,Eu,Gdとの相互分離法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力分野では、使用済み燃料溶解液中のU,Puを分離した後に発生する高レベル廃液中のAm,Cmなどの長半減期核種を分離し核変換する研究が進められている。このような研究は、地層処分時の環境中の長期的危険性の排除、ガラス固化体の減容化にとって重要である。一方、この分離を行うと、溶解液中に共存するランタノイドが随伴して分離されてくる。これは、3価のアクチノイドであるAm,Cmと同族元素であるランタノイドの化学的性質が酷似するためである。しかしながら、ランタノイド元素は一般に中性子吸収量が高く、これが共存する条件でAm,Cmの核変換は困難になる。従って、このような3価のアクチノイド、ランタノイドの相互分離が精力的に進められてきた。
【0003】
これまで、2つの方法が採用されている。一つはジエチレントリアミン-N,N,N’,N”,N”-5酢酸(DTPA)などの錯形成剤を用いて相互分離する方法と、窒素やイオウ原子を抽出剤構造に組み込んでそのより強いアクチノイド抽出性を利用する相互分離法である(非特許文献1-5)。
【0004】
しかし、前者はDTPAが水に溶解しにくく(溶解量は50mM程度)、pH領域(pH2かそれ以上の条件)にするためにpH緩衝剤(通常、金属塩)を使用する必要があり、更に高いイオン濃度の条件が必要になり、これらが使用後処分における二次廃棄物となるという問題がある。
【0005】
窒素やイオウ原子を組み込んだ抽出剤は化学的安定性に欠け分解しやすいこと、比較的安定なものはドデカンに溶解しにくく、再処理や核種分離で求められるプロセス条件で利用しにくいという問題がある。これら化合物はいずれも複雑な構造を持ち、合成は容易ではない。さらに、高レベル放射性廃液は硝酸水溶液であり、溶媒抽出に用いる有機溶剤として毒性が低く安定なドデカンが好適であるが、これまで提案されている抽出剤はドデカン中での安定性に劣り、使用することができなかった。
【0006】
日本で研究開発が進められている先進湿式分離プロセスでは、テトラオクチルジグリコールアミド(以下「TODGA」と略す)の利用が検討されている(特許文献1~2及び非特許文献6)。TODGAは、高レベル放射性廃液から微量のアクチニド(Am(III)及びCm(III))を回収するために有用である。TODGAは容易に合成することができ、高い抽出性を示し、燃焼後に灰化するために、高レベル放射性廃液から放射性金属イオンを分離するために有用である。TODGAは、反応性が高いため、Pd(II)及びZr(IV)などの共存金属イオンまでも抽出してしまい、これらの金属キレートは第三相形成の要因となり、目的とする元素の分離が困難である。よって、これらの金属は、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(以下「HEDTA」と称す)及びシュウ酸などのマスキング剤を用いて水相中に安定化させなければならない。
【0007】
したがって、ドデカン中で安定であり、アクチニド元素に対する分配比が回収するのに十分高く、さらにアクチニド元素と分離する共存元素の分配比が低い抽出剤が必要とされている。
【0008】
一方、硝酸水溶液から高濃度の金属元素を分離する際に、酸性度及び金属濃度が高い条件では溶媒抽出の過程で第三相が生成されてしまい、大きな障害となっている。そこで、第三相の生成を抑制するために、抽出剤を溶解する希釈剤にモノアミドやリン酸トリブチル(TBP)を改質剤として添加する方法や、ニトロベンゼン、オクタノールなど極性の高い溶媒を用いる方法がある。しかし、混合溶媒系では複数の有機物が存在し、特にTBPは金属イオンとの反応性が高く、分配比の精密な評価が難しい上に、リンを含むため二次廃棄物発生の原因となる。極性溶媒では、ドデカンに比較して毒性及び危険性が高く、取り扱いに注意が必要な上に、水相への分配が生じ、分配比が変動する。本発明者らは、第三相の生成を抑制するために、N,N,N’,N’-テトラドデシル-1,3,-オキサペンタンジアミド(以下「TDDGA」と略す)またはより長いアルキル基を有するジグリコールアミド(以下「DGA」と略す)を含むドデカン抽出剤を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2005-221461号公報
【特許文献2】特開2003-32269号公報
【特許文献3】特開2005-114448号公報
【0010】

【非特許文献1】A. Apichaibukol, Y. Sasaki and Y. Morita, Solv. Extr. Ion Exch. 22, 997-1011 (2004)
【非特許文献2】Y. Zhu, J. Chen, and R.Jiao, Solv. Extra, Ion Exch. 14, 61 (1996).
【非特許文献3】M. Watanabe, R. Mirvaliev, S. Tachimori, K. Takeshita, Y. Nakano, K. Morikawa, T. Chikazawa, and R. Mori, Chem. Lett. 31, 1230 (2002).
【非特許文献4】A. Geist, C. Hill, G. Modolo, M.R.St.J. Foreman, M. Weigl, K. Gompper, M.J.Hudson, and C. Madic, Solv. Extr. Ion Exch. 24, 463(2006)
【非特許文献5】T. Matsumura, and K. Takeshita, J. Nucl.Sci.Technol., 43, 824-827 (2006)
【非特許文献6】小山智造、青瀬晋一、小泉務、再処理システムに関する要素技術開発-先進湿式再処理技術-、2004, http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/gihou/pdf2/n24b-09.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を抽出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意研究の結果、一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA」と略す)を抽出剤として用い、一般式:(OCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-ジグリコールアミド(以下この化合物を「TADGA」と略す)をマスキング剤として用いることによって、3価のランタノイドとアクチノイドを溶媒抽出により相互分離することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明において抽出剤として用いるDOODAとしては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-オクチル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-デシル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラドデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-ドデシル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラエチルヘキシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-エチルヘキシル」と略す)を好ましく挙げることができる。代表的なDOODA-ドデシルは以下の構造式を有する。
【0014】
【化1】
JP0005526434B2_000002t.gif

【0015】
本発明で用いるDOODAは、長いアルキル鎖を有し、疎水性が高いためドデカンによく溶解し、空気中で安定に存在する。さらに3価、4価及び5価のアクチニド(以下、An(III)、(IV)、(VI)と称することもある)と強く錯形成する4座配位能力を有する中性配位子である。また、炭素、水素、酸素、窒素からなる化合物であり、二次廃棄物の発生量を低減することができる。
【0016】
本発明で抽出剤として用いるDOODAは、3,6-ジオキサオクタン二酢酸を塩化チオニルを代表とする塩素化物を利用し、塩素化反応させて酸塩化物などの中間生成物を生成させ、その後、トリエチルアミンを代表とする塩素回収剤などの存在下でジ-n-ドデシルアミンなどの二級アミン化合物を氷点下で冷却しながら添加して緩やかに反応させ、得られた生成物を水、水酸化ナトリウム及び塩酸溶液で洗浄し、シリカゲルカラムに繰り返し通して単離精製することによって製造することができる。DOODAのアルキル基は、二級アミン化合物により変えることができる。例えば、DOODA-オクチルはジ-n-オクチルアミンを用いるが、DOODA-デシルはジデシルアミンを用い、DOODA-ドデシルはジドデシルアミンを用い、DOODA-エチルヘキシルはジエチルヘキシルアミンを用いて、製造することができる。
【0017】
塩素化反応は、アルゴン雰囲気で、塩化チオニルなどの試薬を攪拌しながら2~3時間かけてゆっくり加え、酢酸エチルなどの溶媒中で行うことができる。なお、余分な塩化チオニル(沸点79℃)は緩やかに加温することで蒸発させることが好ましい。
【0018】
二級アミン化合物の使用量は、塩素化により得られた化合物100質量部に対して、120質量部とすることが好ましい。上記使用量を超えると、反応液内に未反応残分が多く生じるようになり、精製が困難になり、経済性の点からも不都合である。
【0019】
なお、3,6-ジオキサオクタン二酢酸は、トリエチレングリコール(CHOC(OH))100質量部に対して、約5倍当量の濃硝酸(市販品の1/2濃度)を用いて温度70~90℃で2時間程度加熱還流を行い、再結晶化させて精製することにより得ることができる。
【0020】
本発明において、DOODAは、使用済みウラン燃料再処理後の高レベル放射性廃液など各種廃水から、ウラン、プルトニウム、ネプツニウム(3,4,6価)、アメリシウム等のアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出分離する抽出剤として用いることができ、特に、An(III)、(IV)、(VI)の抽出に好適である。中でも、DOODA-オクチル、DOODA-デシル及びDOODA-ドデシルは、それぞれオクチル基、デシル基及びドデシル基を有するため、高レベル放射性廃液からの放射性元素抽出に用いられる希釈剤であるn-ドデカンに良く溶ける。また、DOODAは、使用済みウラン燃料の溶解に用いられる硝酸溶液中のU、Pu、Am、Tcなどのアクチニド元素及びランタニド元素をn-ドデカンに抽出する際に比較的高い分配比を持ち、その他の元素、特にPd、Zr、Cs、Srに対して高い分配比を持たないため、目的とする放射性元素の抽出分離に適する。さらに、DOODAを構成する元素は、炭素、水素、酸素及び窒素だけであるため、毒性がなく、焼却処分が可能である。
【0021】
本発明でマスキング剤として用いるTADGAとしては、N,N,N’,N’-テトラメチル-ジグリコールアミド、N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド、N,N,N’,N’-テトラプロピル-ジグリコールアミドを好ましく挙げることができる。これらマスキング剤は構造内に有するアルキル基が短いため、親水性が高く水中に高い溶解度を持つ。
【0022】
本発明でマスキング剤として用いるTADGAは、ジグリコール酸を、塩化チオニルを代表とする塩素化物を利用して塩素化反応させて酸塩化物などの中間生成物を生成させ、その後、トリエチルアミンを代表とする塩素回収剤などの存在下でジ-n-エチルアミンなどの二級アミン化合物を氷点下で冷却しながら添加して緩やかに反応させ、得られた生成物を蒸留分離やシリカゲルカラムに繰り返し通して単離精製することによって製造することができる。TADGAのアルキル基は、二級アミン化合物により変えることができる。例えば、TMDGAはジ-n-メチルアミンを用いるが、TEDGAはジエチルアミンを用い、TPDGAはジプロピルアミンを用いて、製造することができる。
【0023】
塩素化反応は、アルゴン雰囲気で、塩化チオニルなどの試薬を攪拌しながら2~3時間かけてゆっくり加え、酢酸エチルなどの溶媒中で行うことができる。なお、余分な塩化チオニル(沸点79℃)は緩やかに加温することで蒸発させることが好ましい。
【0024】
二級アミン化合物の使用量は、塩素化により得られた化合物100質量部に対して、120質量部とすることが好ましい。上記使用量を超えると、反応液内に未反応残分が多く生じるようになり、精製が困難になり、経済性の点からも不都合である。
【0025】
本発明においては、通常の溶媒抽出分離方法の手順を用いることができるが、抽出剤としてDOODAを用い、マスキング剤としてTADGAを用いることが特徴である。すなわち、DOODAをn-ドデカン(溶剤)に溶解し、一方、高レベル放射性廃液を含む硝酸溶液にTADGAを溶解する。両者を混合し、室温ないしは25℃程度で、10~20分間振とうさせる(液—液混合法)。溶剤としては、あらゆる溶媒が利用できるが、安全性の観点やプロセスでの使用実績からn-ドデカンがもっとも好ましい。
【0026】
DOODAの使用量は、溶液の濃度がモル濃度で0.1~0.3Mとなるようにするのが、溶液の調製やAnを分離回収する点で好ましいが、放射性廃液中の濃度の高いAnの定量的な回収についてはそれより高い濃度でも使用可能である。TADGAは、1~6Mの酸濃度を有する高レベル放射性廃液に対して5mM以上含むことが好ましく、1M以下とすることができる。
【0027】
DOODAと処理対象である高レベル放射性廃液との混合比は、処理対象である金属の含有量によっても異なるが、1:2の化学反応を起こす事が把握されていることもあり、一般的には容積比で0.01:1~1:0.01(=水相:有機相容積)の範囲内とするのが好ましい。
【0028】
本発明のDOODA-TADGAを併用する抽出分離方法が高レベル廃液中の3価のランタノイド、アクチノイドの相互分離に好ましい理由は以下の通りである。
(1)オクチル基、デシル基、ドデシル基を含むDOODAは、ドデカン(有機相)に良く溶ける。ドデカンは使用済み燃料再処理に利用実績のある、抽出剤の希釈剤である。
(2)メチル基、エチル基、プロピル基を含むTADGAは、硝酸(水相)によく溶解する。硝酸溶液は使用済みウラン燃料の溶解に用いられ、使用済み燃料再処理に利用実績がある。
(3)TADGAは高い硝酸溶液で、強いマスキング効果を発揮するため、pH緩衝剤を利用する必要がない。従って、二次廃棄物の原因となる化学試薬を使用しない。
(4)DOODA、TADGAともにアミドを合成する一般的な方法で入手可能である。即ち、DOODAは3,6-ジオキサオクタン二酢酸と二級アミン化合物を氷点下で冷却しながら添加して緩やかに反応させて合成する事ができ、TADGAはジグリコール酸とジ-n-エチルアミンのような二級アミンと反応させ、合成できる。
(5)DOODA、TADGAともに加水分解や熱的に不安定な点は見られず、化学的に安定である。
(6)DOODAは有機相で3価のランタノイド及びアクチノイドに対して強い親和性を有する。TADGAは水相で3価のランタノイド及びアクチノイドに対して強い親和性を有し、特にSm、Eu、Gdとよく反応する。よって、DOODA及びTADGAを硝酸-ドデカン系に用いると、Am、Cm分配比とSm、Eu、Gd分配比との比(分離比)4以上を達成できる分離比4以上が達成できると、5回の多段抽出を行うことにより目的元素が99.9%、共存元素が0.1%の組成比を達成できる。すなわち、目的元素の分離回収が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の高レベル放射性廃棄物から3価のランタノイド及びアクチノイドを抽出分離する方法は、下記利点を有する。
(1)水によく溶解し、pHコントロールの不要なマスキング剤を使用すること
(2)3価のランタノイドまたはアクチノイドに高い選択性を有する抽出剤を使用すること
(3)硝酸-ドデカン溶媒抽出系を用い、対象元素同士の分離比4以上を達成すること
(4)化学的安定性が高い抽出剤及びマスキング剤を使用すること
(5)合成または入手が容易な化合物を抽出剤及びマスキング剤として使用すること
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1により得られた、TEDGA濃度と金属分配比との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2により得られた、アクチノイド系列元素及びランタノイド系列元素の分配比を示すグラフである。

【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
抽出剤としてDOODAを用い、マスキング剤としてTEDGA(N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド)を用いて、高レベル放射性廃液からのランタノイド及びアクチノイドの抽出分離を行った。
【0032】
有機相として0.2M DOODA-ドデシルのn-ドデカン溶液を用い、水相としてエチル基を持つTEDGA(N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド)を含む4M硝酸水溶液を用いて、ランタノイドの溶媒抽出実験を行った。
【0033】
溶媒抽出実験は、金属イオンとTEDGA(N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド)を含む硝酸水溶液と0.2M DOODA/ドデカン溶液とを等量(容積比)混合、振とうし、振とう後の水相及び有機相の金属の分配比を測定することにより行った。結果を図1に示す。図1において、縦軸は各種金属の分配比、横軸は水相のTEDGA濃度を示す。なお、分配比は有機相の金属濃度を水相の金属濃度で割った比である。
【0034】
いずれの分配比もTEDGA濃度増加と共に減少しているが、その減少割合に2つのパターンがあることがわかる。すなわち、La,Nd,Am,Cmは分配比が低く、Sm,Eu,Gdは分配比が高い。よって、本方法により、La,Nd,Am,Cmの群と、Sm,Eu,Gdの群とに相互分離することが可能となることがわかる。
【0035】
得られた分配比の一例(条件:0.2M DOODA/ドデカン、10mM TEDGA/4M HNO)を表1に示す。1回の抽出分離によりSm,Eu,Gdの群の分配比3が得られれば、本方法を5回繰り返すことによって、最終的な分配比は3×3×3×3×3=243となる。一方、La,Nd,Am,Cmの群の分配比0.3も5回の繰り返しにより、0.3×0.3×0.3×0.3×0.3=0.00243となる。また、Amの分配比は5を超えており、Cmの分配比も2を越えており、抽出の段数を増やすことでAmと同様にCmも回収できる。したがって、本条件でAm,CmとSm,Eu,Gdとの定量的な分離は可能である。
【0036】
【表1】
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【0037】
[実施例2A]
有機相としてDOODA-ドデシルを溶解したn-ドデカン溶液を用い、水相としてエチル基を持つTEDGA(N,N,N’,N’-テトラエチル-ジグリコールアミド)を含む各種濃度の硝酸水溶液を用いて、ランタノイドとAm,Cmの溶媒抽出実験を行った。溶媒抽出実験は、金属イオンとTEDGAを含む硝酸水溶液(水相)と既知濃度のDOODA-ドデシル/ドデカン溶液(有機相)とを等量(容積比)混合、振とうし、振とう後の水相及び有機相の金属の分配比を測定することにより行った。結果を表2及び表3に示す。
【0038】
【表2】
JP0005526434B2_000004t.gif

【0039】
【表3】
JP0005526434B2_000005t.gif

【0040】
以上の結果から、分離可能な条件として推定される分離比4以上(分離比4で5回の多段抽出を行うと理論上目的元素99.99%を、共存元素0.01%で回収できることになる)の条件は以下の通りであった。
(1)DOODA:0.2M,HNO:3M,TEDGA:0.002Mの条件で、Am/Gd分離比15.9、Am/Eu分離比6.67、Cm/Gd分離比7.94
(2)DOODA:0.2M,HNO:5M,TEDGA:0.01Mの条件で、Am/Eu分離比18.8,Am/Gd分離比30.6、Am/Sm分離比8.3、Cm/Eu分離比7.69、Cm/Gd分離比12.5
(3)DOODA:0.2M,HNO:5M,TEDGA:0.01Mの条件で、Am/Sm分離比8.3、Am/Eu分離比18.8、Am/Gd分離比30.6、Cm/Eu分離比7.69、Cm/Gd分離比12.5
(4)DOODA:0.3M,HNO:4M,TEDGA:0.005Mの条件で、Am/Sm分離比10.2,Am/Eu分離比26.7,Am/Gd分離比58.7、Cm/Sm分離比4.19、Cm/Eu分離比10.9、Cm/Gd分離比24
(5)DOODA:0.3M,HNO:4M,TEDGA:0.005Mの条件で、Am/Sm分離比10.2、Am/Eu分離比26.7、Am/Gd分離比58.7、Cm/Sm分離比4.19、Cm/Eu分離比10.9,Cm/Gd分離比24
(6)DOODA:0.3M,HNO:5M,TEDGA:0.01Mの条件で、Am/Sm分離比14.4,Am/Eu分離比40,Am/Gd分離比111、Cm/Eu分離比10.6、Cm/GD分離比29.2
(7)DOODA:0.3M,HNO:4M,TEDGA:0.01Mの条件で、Am/Sm分離比14.4、Am/Eu分離比40、Am/Gd分離比111、Cm/Eu分離比10.6,Cm/Gd分離比29.2
[実施例2B]
抽出剤としてDOODA-ドデシルの代わりにDOODA-オクチルを用いて有機相をDOODA-オクチル/ドデカン溶液とした以外は実施例2Aと同様に行い、表4に示す結果を得た。
【0041】
【表4】
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【0042】
分離可能な条件として推定される分離比4以上の条件は以下の通りであった。
(8)DOODA:0.2M、HNO:5M、TEDGA:0.01Mの条件で、Am/Sm分離比10.4、Am/Eu分離比32.8、Am/Gd分離比61、Cm/Eu分離比10.6、Cm/Gd分離比20
[実施例3]
マスキング剤としてTEDGA以外の水溶性DGAの代表例としてTMDGA(テトラメチルジグリコールアミド)とTPDGA(テトラプロピルジグリコールアミド)を用いた以外は、実施例2と同様の実験を行った。有機相:0.2M DOODA/ドデカン、水相:TMDGA(TPDGA)/3M HNOでの各種金属の分配比の結果を表5に示す。
【0043】
【表5】
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【0044】
分離可能な条件として推定される分離比4以上の条件は以下の通りであった。
(1)DOODA:0.2M,HNO:3M,TMDGA:0.005Mの条件で、Am/Gd分離比10、Am/Eu分離比4.87、Cm/Gd分離比6.24
(2)DOODA:0.2M,HNO:3M,TPDGA:0.002Mの条件で、Am/Sm分離比4.99、Am/Eu分離比12.5,Am/Gd分離比24.3、Cm/Gd分離比7.12
[実施例4]
その他のランタノイドとの分離性について検討した。
【0045】
図2に、先の実験条件である0.2M DOODA/ドデカン、10mM TEDGA/4M HNOでの各種金属の分配比の結果を縦軸に、その金属の原子番号を横軸に示した。示していない金属は分配比が著しく低かった。
【0046】
図2より、高レベル廃液中に比較的高濃度で存在する軽ランタノイド(La,Ce,Pr,Nd等)との分離は余り高くなく、原子番号の高い重ランタノイドになるに従って相互分離が容易になることがわかる。本実験結果より、本発明の方法は、Am,Cmの核変換に影響を及ぼす中性子吸収断面積の高いランタノイドとの分離は容易であるが、高レベル廃液に高濃度で含まれる軽ランタノイドとの分離は難しい事が分った。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、高レベル廃液中に含まれるアクチノイドとランタノイド元素を溶媒抽出法により相互分離する方法である。これまでランタノイドと相互分離困難であったAm及びCmは分別回収の後、中性子照射などにより核変換し、他の核種に核変換することでAm,Cmの持つ固有の長期的な毒性を排除し、ガラス固化体の発生量を抑える事ができる。プロセス設計が容易になり、経済性も向上する。
図面
【図1】
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【図2】
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