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明細書 :超磁歪薄膜素子及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5240826号 (P5240826)
公開番号 特開2009-231349 (P2009-231349A)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
公開日 平成21年10月8日(2009.10.8)
発明の名称または考案の名称 超磁歪薄膜素子及びその製造方法
国際特許分類 H01L  41/12        (2006.01)
H01L  41/20        (2006.01)
H01L  41/22        (2013.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C21D   6/00        (2006.01)
FI H01L 41/12
H01L 41/20
H01L 41/22 Z
C22C 38/00 303Z
C21D 6/00 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2008-071678 (P2008-071678)
出願日 平成20年3月19日(2008.3.19)
審査請求日 平成23年1月25日(2011.1.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】清宮 照夫
【氏名】脇若 弘之
【氏名】牧村 美加
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】河合 俊英
参考文献・文献 特開2003-202509(JP,A)
特開平10-229012(JP,A)
特開2002-335027(JP,A)
特開2004-186619(JP,A)
調査した分野 H01L 41/12
C21D 6/00
C22C 38/00
H01L 41/20
H01L 41/22
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、該基板上に成膜した超磁歪材料の薄膜とを有する超磁歪薄膜素子において、前記薄膜は、気相成長させたSm-Fe系の超磁歪材料からなり、その組成が、15at%≦Sm≦23at%であり、薄膜の内部応力が220MPa~130MPaの圧縮応力になっていて、80kA/mの磁界印加時の磁気ひずみが-700ppm以下であることを特徴とする超磁歪薄膜素子。
【請求項2】
超磁歪材料の薄膜は、その磁化容易軸が基板面にほぼ平行に配向したものである請求項1記載の超磁歪薄膜素子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超磁歪薄膜素子を製造する方法であって、基板としてガラス基板を用い、スパッタ法により超磁歪材料からなる薄膜を気相成長させる際に、不活性ガス圧力を0.7Pa以下とする超磁歪薄膜素子の製造方法。
【請求項4】
超磁歪材料の薄膜の気相成長による成膜中もしくは成膜後に、200℃~300℃の温度で熱処理を行う請求項記載の超磁歪薄膜素子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に気相成長させたSm(サマリウム)-Fe(鉄)系の超磁歪材料の薄膜からなる超磁歪薄膜素子及びその製造方法に関するものである。この超磁歪薄膜素子は、センサやアクチュエータなどとして有用である。
【背景技術】
【0002】
磁歪材料とは、外部からの磁界の作用によって形状そのものが変化する性質を有する材料のことをいい、このような磁歪材料は、逆に外部応力が加わると磁化が変化する性質を有する。そこで、このような磁気-変形(応力)の特性を利用して、各種センサやトランスジューサ、アクチュエータなどへの応用が試みられている。しかし、従来公知の磁歪材料は、その変形に伴うひずみ(磁歪定数)が非常に小さく(10-5~10-6程度)、そのため極く限られた分野の応用にとどまっていた。
【0003】
ところが、最近、希土類-遷移金属化合物の中に、室温における磁歪定数が非常に大きな(10-3以上を示す)磁歪材料(「超磁歪材料」とも呼ばれている)が発見され、大きな変位を発生するアクチュエータの駆動源としての応用が期待されている。しかし、超磁歪材料は、主に単結晶や結晶配向されたバルク材料であるため、結晶制御技術を必要とするなど製造過程も複雑で、しかも大きな磁歪特性を発現させるためには大きな磁界が必要となる欠点があった。近年のアクチュエータやセンサの技術進歩は著しいが、従来技術のようにバルク材料を用いると形状の制約が大きく小型化に適さない。それに対して薄膜化すれば、様々な形状のデバイスへの応用が可能になることから、薄膜化に適した実用的な超磁歪薄膜材料の開発が進められている。
【0004】
このような観点から、本発明者等によって、例えば、気相成長させたTb-Fe系の超磁歪薄膜素子(特許文献1)、あるいはTb-Fe-Co系の超磁歪薄膜素子(特許文献2)などが提案されている。しかし、これらは良好な特性を呈するものの、希土類元素においてTbは埋蔵量が極めて少なく非常に高価なため、使用量が少ない薄膜という形態といえども将来的に入手困難となる恐れがあるなど不安材料が多いことが問題となる。

【特許文献1】特開2002-335027号公報
【特許文献2】特開2005-340429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小さな磁界でも大きな磁歪特性を発現し、しかも埋蔵量の点からも将来的に不安の少ない材料を使用して超磁歪薄膜素子を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、該基板上に成膜した超磁歪材料の薄膜とを有する超磁歪薄膜素子において、前記薄膜は、気相成長させたSm-Fe系の超磁歪材料からなり、その組成が、15at%≦Sm≦23at%であることを特徴とする超磁歪薄膜素子である。ここで薄膜の内部応力220MPa~130MPaの圧縮応力になっており、80kA/mの磁界印加時の磁気ひずみは-700ppm以下である。基板としては、例えばガラス基板を用いる。なお、超磁歪材料の薄膜は、その磁化容易軸が基板面にほぼ平行に配向したものが好ましい。

【0007】
このような超磁歪薄膜素子は、スパッタ法により超磁歪材料からなる薄膜を気相成長させる際に、不活性ガス圧力を0.7Pa以下とし、成膜中もしくは成膜後に200℃~300℃の温度で熱処理を行うことによって製造できる。気相成長による成膜を、基板面に平行な一方向の磁界中で行うこと、あるいは熱処理を基板面に平行な一方向の磁界中で行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る超磁歪薄膜素子は、薄膜構造であることから、種々の形状のデバイスへの応用が可能となり、しかも小さな磁界でも大きな磁歪特性が発現するため、新しいマイクロセンサやアクチュエータ等のマイクロデバイスへの実用化に大きく寄与できる。しかも本発明に係る超磁歪薄膜素子は、Sm-Fe2元系であり、Smは希土類元素の中でも埋蔵量が比較的多い元素であることから、将来的に資源枯渇の不安も少なく、比較的安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
超磁歪薄膜素子を種々のデバイスに応用する際、材料に求められる特性は、低磁界において磁歪特性が高いことである。本発明者等は、超磁歪材料の開発過程において、Sm-Fe系の材料であっても、Smの組成を、Sm量が比較的少ない特定の範囲に設定することによって、低磁界で高磁歪特性が得られることを見出した。本発明は、かかる知得に基づき完成されたものである。
【0010】
本発明の超磁歪薄膜素子は、スパッタ法や蒸着法などの気相法によって、基板上に超磁歪材料を成膜することで製造する。本発明では、超磁歪材料として、Sm-Fe系の材料を用い、その組成を15at%≦Sm≦23at%とする。これによって、80kA/mの低磁界で-700ppm以下の高磁歪特性を呈する超磁歪薄膜素子が得られる。なお、SmFe系の超磁歪材料は負磁歪材料であるので、磁気ひずみは負の値となることから、その絶対値の大小が性能評価の基準となる。
【0011】
ところで、単結晶や粉末冶金手法で形成するバルク型の磁歪材料の場合、非常に大きな磁歪特性を得るためには、RT2(R:希土類元素、T:遷移金属)で表されるラーベス相を適用することが重要である。それに対して、本発明のように気相法にて形成された磁性薄膜は、気相から固相へと急冷される過程でアモルファス状態が得られるため、磁気異方性エネルギーが減少し、小さな磁界でも磁化し易くなり、大きな磁歪特性が得られる。
【0012】
しかし、気相法で得られる薄膜は、成膜中のガス成分や、基板と薄膜との熱膨張係数との違いなどの原因から、薄膜内部に大きな残留応力(内部応力)が発生する。磁性薄膜の場合、この内部応力が作用し、逆磁歪効果による応力誘起異方性が発生する。特に、超磁歪薄膜の場合、その磁歪特性が大きいため逆磁歪エネルギーが非常に大きくなり、磁気異方性エネルギーが大きくなって、小さな磁界でも大きな磁歪が得られなくなる。本発明のSm-Fe系超磁歪薄膜では、220MPa~130MPaの圧縮応力を残存させることで、大きな磁歪特性が得られる。また、成膜中あるいは成膜後に200℃~300℃の温度で加熱処理することで、220MPa~130MPaの圧縮応力を残存させることができ、それによって大きな磁歪特性が得られる。
【0013】
一方、超磁歪薄膜素子のアクチュエータなどへの用途展開を考えた場合、磁界に対して薄膜基板面内方向の伸びの感度が高いことが望まれる。そのため、基板面内に磁化容易軸を配向した超磁歪薄膜を形成することは重要である。本発明の超磁歪薄膜素子は、希土類元素をSmとしたことでFe元素と強磁性的に結合するため、Tbなどと異なり希土類量の少ない組成でも飽和磁化が大きくなるため、薄膜面内への磁化容易軸が形成され易い。そのため、膜面内での小さな磁界に対し、大きな磁歪特性が得られる。
【0014】
更に、気相成長中のArガス圧が1.0Pa以上の場合には、薄膜内部応力が引張応力になるため大きな磁歪特性は得られない。しかし、Arガス圧を0.7Pa以下にすることで、薄膜内部応力を220MPa~130MPaの圧縮応力にすることが可能となり、大きな磁歪特性が得られる。
【実施例】
【0015】
DCマグネトロンスパッタ法により、基板上に超磁歪材料を気相成長させることで超磁歪薄膜素子を作製した。SmターゲットとFeターゲットとを用いる同時スパッタ法、もしくはSmとFeの組成比率(at%)でSm40Fe60及びSm15Fe85の合金ターゲットを用いるスパッタ法によって、スパッタパワーを制御しSm-Fe2元系超磁歪薄膜の組成を調整した。予めチャンバ内を真空にして不純物ガスを除去した後、不活性ガスとしてArガスを注入し、ガス圧を調整した。使用した基板は、縦横3mm×25mm、厚さ0.1mmのガラス製である。成膜した超磁歪薄膜は、膜厚1μm程度である。作製したSm-Fe2元系超磁歪薄膜の各試料について、その組成と、成膜条件(ターゲット、スパッタパワー、Arガス圧)を表1に示す。超磁歪薄膜の組成分析にはEPMA(電子線プローブ・マイクロアナライザ)を用いた。
【0016】
【表1】
JP0005240826B2_000002t.gif

【0017】
その後、温度を変えて熱処理を行った。熱処理は、真空中で磁界無しの状態で、200~350℃の温度で1時間行った。成膜したままの状態の試料(as-depo.)及び各熱処理温度で熱処理した試料について、磁気ひずみと薄膜内部応力を求めた。なお、磁気ひずみは、80kA/mの磁界印加時での値である。磁気ひずみは、磁界印加時の基板そり量からひずみ量へ変換して求めた値である。また、薄膜内部応力は、超磁歪薄膜成膜前後並びに熱処理前後の基板そり量変化より算出した値である。結果を表2及び表3に示す。
【0018】
【表2】
JP0005240826B2_000003t.gif

【0019】
【表3】
JP0005240826B2_000004t.gif

【0020】
それら表1~表3に基づき解析した結果を図1~図4に示す。
【0021】
図1は、Sm-Fe2元系超磁歪薄膜の組成に対する最大磁気ひずみ(以下、本願では絶対値で最も大きい磁気ひずみのことを言う)の関係を示している。Sm量が、15at%≦Sm≦23at%の範囲では、80kA/mの低磁界印加時に-700ppm以下の最大磁気ひずみが得られた。それに対してSm量が14.2at%以下では、磁気ひずみ(絶対値)は急激に低下し、かなり小さい値となった。逆に、Sm量が多くなると、磁気ひずみ(絶対値)は徐々に低下した。Sm量が多くなることは、コストが高くなることを意味し、その点からも好ましくない。
【0022】
図2は、Sm-Fe2元系超磁歪薄膜の内部応力と磁気ひずみの関係を示している。内部応力がプラス(引張応力)の場合は磁気ひずみ(絶対値)が小さい。薄膜内部応力がマイナス(圧縮応力)で、220MPa~130MPaの場合に、最大磁気ひずみが-700ppm以下になる。このことから、最大磁気ひずみを高めるためには、薄膜内部応力を圧縮応力とし、その圧縮応力が220MPa~130MPaの範囲内に収まるようにする必要があることが分かる。
【0023】
図3は、Sm-Fe2元系超磁歪薄膜の成膜時のArガス圧と最大磁気ひずみの関係を示している。Arガス圧が0.7Pa以下の場合に、最大磁気ひずみが-700ppm以下になるが、1.0Pa以上では磁気ひずみ(絶対値)は大きく低下することが分かる。
【0024】
図4は、Sm-Fe2元系超磁歪薄膜の熱処理温度と最大磁気ひずみとの関係を示している。200℃~300℃の適切な温度での熱処理によって最大磁気ひずみを-700ppm以下にできることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】Sm量に対する最大磁気ひずみの関係を示すグラフ。
【図2】薄膜内部応力と磁気ひずみの関係を示すグラフ。
【図3】Arガス圧と最大磁気ひずみの関係を示すグラフ。
【図4】熱処理温度と磁気ひずみの関係を示すグラフ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3