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明細書 :加工機械の安全装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3636325号 (P3636325)
公開番号 特開2005-021978 (P2005-021978A)
登録日 平成17年1月14日(2005.1.14)
発行日 平成17年4月6日(2005.4.6)
公開日 平成17年1月27日(2005.1.27)
発明の名称または考案の名称 加工機械の安全装置
国際特許分類 B21D  5/02      
B30B 15/00      
FI B21D 5/02 M
B30B 15/00 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2003-270999 (P2003-270999)
出願日 平成15年7月4日(2003.7.4)
審査請求日 平成16年8月24日(2004.8.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
【識別番号】503003555
【氏名又は名称】有限会社中山ステンレス
【識別番号】503004138
【氏名又は名称】サーモジェン有限会社
発明者または考案者 【氏名】酒井 武一
【氏名】風間 武
【氏名】中山 成春
【氏名】小林 良二
個別代理人の代理人 【識別番号】100088579、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 茂
審査官 【審査官】川村 健一
参考文献・文献 特開平01-271012(JP,A)
特開昭58-207594(JP,A)
調査した分野 B21D 5/02
B30B 15/00
F16P 3/14
特許請求の範囲 【請求項1】
手に持った被加工物を加工する加工機械に付設し、人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出して加工機械の動作を安全側に制御する加工機械の安全装置において、レーザビームを幕状に拡散させた拡散光を前記監視領域の境界線上に放射する拡散光放射手段及び当該拡散光の反射光を受光する反射光受光手段を有することにより、人体の一部が前記監視領域に入ったことを検出する検出部と、この検出部の検出結果に基づいて加工機械の動作を安全側に制御する制御部と、外面に前記拡散光に対して異なる方向に偏光する反射光を前記拡散光の入射方向へ反射させる再帰特性を有する反射シートを用いた反射面部を有し、かつ作業者に装着する作業者用装着部を備えることを特徴とする加工機械の安全装置。
【請求項2】
前記拡散光放射手段は、レーザビームを発光する発光部と、このレーザビームを拡散させる一又は二以上の円筒レンズを備えることを特徴とする請求項1記載の加工機械の安全装置。
【請求項3】
前記レーザビームと前記反射光に対して、それぞれ異なる方向の光波を通過させる一対の偏光フィルタを備えることを特徴とする請求項1記載の加工機械の安全装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記監視領域の上方における左右に一対配することを特徴とする請求項1記載の加工機械の安全装置。
【請求項5】
前記作業者用装着部は、作業者が装着する少なくとも作業手袋を含むことを特徴とする請求項1記載の加工機械の安全装置。
【請求項6】
前記監視領域の手前に予備監視領域を設定し、かつ前記検出部の手前に、人体の一部が前記予備監視領域に入ったことを検出する予備検出部を設けるとともに、前記制御部に、前記予備検出部の検出結果に基づいて予備警報を発する警報機能を設けることを特徴とする請求項1記載の加工機械の安全装置。
【請求項7】
手に持った被加工物を加工する加工機械に付設し、人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出して加工機械の動作を安全側に制御する加工機械の安全装置において、レーザビームを幕状に拡散させた拡散光を前記監視領域の境界線上に放射する拡散光放射手段及び当該拡散光の反射光を受光する反射光受光手段を有することにより、人体の一部が前記監視領域に入ったことを検出する検出部と、前記レーザビームと前記反射光に対してそれぞれ異なる方向の光波を通過させる一対の偏光フィルタと、前記検出部の検出結果に基づいて加工機械の動作を安全側に制御する制御部と、外面に前記拡散光を反射する反射面部を有し、かつ作業者に装着する作業者用装着部を備えることを特徴とする加工機械の安全装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出して加工機械の動作を安全側に制御する加工機械の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手に持った被加工物をプレス加工するプレス機械には、人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出してプレス機械の動作を安全側に制御(停止制御)する安全装置が付設されている。
【0003】
この種の安全装置としては、各種知られているが、特にレーザビームを使用した安全装置としては、特表2000-502782号公報で開示される「可動部品に取り付けるための光学的装置」が知られている。この装置は、プレスブレーキの可動部品(可動ブレード)の経路に入る物体を保護するための安全装置であって、可動部品の前縁に対して固定的に取付けられ、可動部品から間隔を置いた位置にある保護領域を形成するために対向した光放出手段と光受信手段が配されるとともに、可動部品の所定の移動範囲内において、光放出手段から光ビームが放出され、この放出された光ビームが光受信手段により受信可能に構成される。そして、正常時には、可動部品の前縁から間隔を置いた位置にある遮断されない経路に沿って光放出手段から放出される光ビームが光受信手段によって受信されるとともに、他方、光ビームが遮断された不測事態において、制御手段により可動部品の前進移動が停止するように構成されたものである。

【特許文献1】特表2000-502782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した安全装置をはじめ、従来のこの種の安全装置は、専ら光路が遮断されることをもって人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出していたため、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、被加工物の種類によっては加工できないものが発生する。例えば、図9に示すような起立した側板部Wsのある被加工物Wの場合には、光路を遮断する側板部Wsの存在によって加工機械の動作が安全側に制御されてしまうため、被加工物Wの加工が不能になる。
【0006】
第二に、上記公報開示の安全装置のように、光放出手段と光受信手段が可動部品と一体に移動する方式では、可動部品が下降を開始した後、加工を開始する直前まで検出できないリスクがあるとともに、他方、光放出手段と光受信手段が移動しない方式では、手の位置や大きさ等により、光路を遮断できないリスクがあるなど、高度の安全性を確保するという観点からは不十分である。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、加工できる被加工物の種類を飛躍的に拡大させることにより汎用性及び利便性を高めるとともに、高度の安全性を確保することができる加工機械の安全装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、手Hに持った被加工物Wを加工する加工機械Mに付設し、人体の一部(H)が所定の監視領域Zcに入ったことを検出して加工機械Mの動作を安全側に制御する加工機械Mの安全装置1を構成するに際して、レーザビームLo…を幕状に拡散させた拡散光Lt…を監視領域Zcの境界線Kz上に放射する拡散光放射手段2t…及び当該拡散光Lt…の反射光Lr…を受光する反射光受光手段2r…を有することにより、人体の一部(H)が監視領域Zcに入ったことを検出する検出部3p,3qと、この検出部3p,3qの検出結果に基づいて加工機械Mの動作を安全側に制御する制御部4と、外面に拡散光Ltに対して異なる方向に偏光する反射光Lrを拡散光Ltの入射方向へ反射させる再帰特性を有する反射シート14を用いた反射面部5を有し、かつ作業者に装着する作業者用装着部6を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、拡散光放射手段2tからの拡散光Ltは、監視領域Zcの境界線Kz上に幕状に放射される。一方、制御部4は反射光受光手段2rの検出結果に対応して安全側に制御を行うため、反射光受光手段2rが反射光Lrを検出しない限り、制御部4は加工機械Mの動作に対する安全側への制御は行わない。他方、作業者は、外面に拡散光Ltに対して異なる方向に偏光する反射光Lrを拡散光Ltの入射方向へ反射させる再帰特性を有する反射シート14を用いた反射面部5を設けた作業者用装着部6を装着しているため、作業者用装着部6が監視領域Zcに入った場合には、拡散光Ltが作業者用装着部6における反射面部5を反射し、この反射光Lrは反射光受光手段2rにより受光する。この結果、制御部4は、反射光受光手段2rの受光(検出結果)に基づいて加工機械Mの動作を安全側に制御(停止制御)する。
【発明の効果】
【0010】
よって、本発明に係る加工機械Mの安全装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 従来の安全装置のような光路が遮断されることにより検出する方式とは異なるため、起立した側板部のある被加工物であっても加工できるなど、加工できる被加工物の種類を飛躍的に拡大することができ、汎用性及び利便性を高めることができる。
【0012】
(2) 拡散光を可動部品と一緒に移動させる従来の方式とは異なり、加工処理動作を開始した後は、常時検出可能な状態となるため、高度の安全性を確保できる。
【0013】
(3) レーザビームを拡散させた拡散光を用いるため、必要により監視領域を狭めることができ、より小さい被加工物の加工も実現可能となる。
【0014】
(4) レーザビームを幕状に拡散させた拡散光を放射するため、金型や被加工物の板厚を変更しても位置変更や調整等の手間が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る加工機械Mの安全装置1によれば、最良の形態により、拡散光放射手段2tは、レーザビームLoを発光する発光部11と、このレーザビームLoを拡散させる一又は二以上の円筒レンズ12a,12bを備える。これにより、安定した拡散光Ltを容易に得ることができる。また、レーザビームLoと反射光Lrに対してそれぞれ異なる方向の光波(横波と縦波)を通過させる一対の偏光フィルタ13t,13rを備える。これにより、反射光受光手段2rは、レーザビームLo(拡散光Lt)の影響(干渉)を受けることなく、拡散光Ltを反射する作業者用装着部6からの反射光Lrのみを確実に検出できる。さらに、検出部3p,3qは、監視領域Zcの上方における左右に一対配する。これにより、検出漏れが回避できるなど、より高度の安全性を確保できる。一方、作業者用装着部6には、作業者が装着する少なくとも作業手袋15を含ませることができる。これにより、人体の一部(H)を確実に検出できる。なお、監視領域Zcの手前に予備監視領域Zcsを設定し、かつ検出部3p,3qの手前に、人体の一部(H)が予備監視領域Zcsに入ったことを検出する予備検出部16p,16q設けるとともに、制御部4に、予備検出部16p,16qの検出結果に基づいて予備警報を発する警報機能を設ければ、作業者に対して監視領域Zcの手前で注意を促すこともでき、これにより、作業者に対して安心感を持たせることができるとともに、より安全性を高めることができる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施例に係る加工機械Mの概要及びこの加工機械Mに付設する安全装置1の構成について、図1~図7及び図9を参照して説明する。
【0018】
実施例の加工機械Mは、手Hに持った鋼板,アルミニウム板,銅板等の金属板(被加工物W)を曲げ加工するベンディングマシンMbを示す。このベンディングマシンMbは、図1(図9)に示すように、上部テーブル51に固定され、かつ下方に突出した剣先を有する上型(固定型)52と、下部テーブル53から突出し、かつ機体54に内蔵した昇降駆動部により昇降するV溝を有する下型(可動型)55を備える。これにより、作業者が被加工物Wを手Hに持ち、被加工物Wを上型52と下型55間に入れた後、バーペダル56を足で踏めば、昇降駆動部が作動し、下型55が上昇して被加工物Wに対する曲げ加工を行うことができる。
【0019】
そして、このベンディングマシンMbには、本実施例に係る安全装置1を付設する。安全装置1は、監視領域Zcの上方に配した左右一対の検出部3p,3qを備える。実施例の監視領域Zcは、図3に示すように、上型52及び下型55の手前50〔mm〕程度の範囲に設定した。このため、検出部3p,3qは、図1に示す上部テーブル51を有する前面パネル57に取付けることにより、監視領域Zcの境界線Kz上を監視できる。したがって、本実施例に係る安全装置1は、既存のベンディングマシンMbにも容易に後付けすることができる。
【0020】
左側の検出部3pは、図1及び図4に示すように、底面に後述する拡散光Lt及び反射光Lsが通過する開口部21sを有するハウジング21を備え、このハウジング21の内部には、拡散光放射手段2t及び反射光受光手段2rを備える。拡散光放射手段2tは、基本的構成要素として、レーザビームLoを発光する発光部11と、このレーザビームLoを拡散させる二つの円筒レンズ12a,12bを備える。この場合、発光部11は、作業者が監視領域Zcを認識できるように、波長が630~670〔nm〕程度のレーザビームLoを発光する半導体レーザ素子(レーザダイオード)を用いる。レーザビームLoを用いれば、必要により監視領域Zcを狭めることができるため、より小さい被加工物Wの加工も実現可能になる。また、円筒レンズ12a,12bは、レーザビームLoを線上に拡散させるものであり、円筒レンズ12a,12bを透過したレーザビームLoは、所定の拡散角度Rに拡散した幕状の拡散光Ltに変換され、この拡散光Ltは、図3に示す監視領域Zcの境界線Kz上に放射される。なお、拡散角度Rは、現状の最大金型幅に対応できるように、円筒レンズ12a,12bの焦点距離や組合せ枚数の選定により、80〔°〕程度を確保することが望ましい。拡散角度Rは、円筒レンズ12a…の組合せ枚数を多くすることにより、容易に大きくすることができる。
【0021】
さらに、拡散光放射手段2tには、発光部11から発光されたレーザビームLoの横波のみが通過する偏光フィルタ13tと、この偏光フィルタ13tを経たレーザビームLoが通過するスリット22を備える。このスリット22によりレーザビームLoのビーム径を絞ることができるため、ビーム径を選定して、拡散光Ltの幕幅を3〔mm〕程度に設定する。このように構成する拡散光放射手段2tにより、安定した拡散光Ltを容易に得ることができる。
【0022】
一方、反射光受光手段2rは、基本的構成要素として、スリット22と偏光フィルタ13t間に配したハーフミラー23と、このハーフミラー23から得られる反射光Lrを受光する受光部24を備える。このハーフミラー23は、拡散光Ltの反射光Lrを直角方向に反射する機能を有する。なお、受光部24は、フォトダイオードを用いることができる。さらに、反射光受光手段2rには、ハーフミラー23と受光部24間に配した偏光フィルタ13rと、受光部24から得る出力信号を信号処理する信号処理回路26を備える。この偏光フィルタ13rは、反射光Lrの縦波のみが通過する特性を有する。このように、偏光フィルタ13rと上述した偏光フィルタ13tは、反射光LrとレーザビームLoに対してそれぞれ異なる方向の光波を通過させる機能、即ち、偏光フィルタ13tは横波のみを、偏光フィルタ13rは縦波のみをそれぞれ通過させる機能を有する。したがって、拡散光Ltは、鋼板,アルミニウム板,銅板等の金属板(被加工物W)に当たっても偏光方向は変わらないため、この反射光Lrは偏光フィルタ13rを通過せず、被加工物Wの反射光Lrは受光しない。なお、ハーフミラー23の代わりに、図5に示す偏光プリズム33を用いてもよい。これにより、偏光フィルタ13rは不要となる。偏光プリズム33は、誘電体膜を有する反射面により特定方向の光波のみを反射するため、偏光フィルタ13rを兼用することになる。
【0023】
また、信号処理回路26は、受光部24から得る出力信号を増幅するアンプ27と、ノイズ分を除去して後述する作業手袋15を反射した反射光Lrのみを検出するコンパレータ28と、このコンパレータ28の出力結果に基づいて検出信号Sdを出力する出力部29を備える。30は、コンパレータ28に接続した基準電圧設定部を示す。
【0024】
その他、31は開口部21sを覆う透明カバー、32は開口部21sに付設したシャッタであり、このシャッタ32により開口部21sの開口幅を調整することができる。以上、左側の検出部3pについて説明したが、右側の検出部3qも左側の検出部3pに対して左右対称に構成する点を除いて同一に構成することができる。また、左右の干渉を防止するため、レーザビームLoの波長を左右において若干異ならせてもよい。
【0025】
さらに、前面パネル57の空き位置には、制御部4を内蔵する制御ボックス35を取付ける。制御部4には、上述した検出部3p,3qを接続するとともに、ベンディンングマシンMbの制御系を接続する。これにより、検出部3p,3qの出力部29…から出力する検出信号Sdは、制御部4に付与されるとともに、制御部4は、この検出信号Sdに基づいて加工機械Mの動作を安全側に制御する。この場合、検出部3p,3qのいずれの検出信号Sdによっても加工機械Mの動作を安全側に制御する。なお、図1中、58は緊急停止解除ボタンを示す。
【0026】
他方、安全装置1は、外面に拡散光Ltを反射する反射面部5を有し、かつ作業者に装着する作業者用装着部6を備える。反射面部5は、拡散光Ltに対して異なる方向に偏光する反射光Lrを、拡散光Ltの入射方向へ反射させる再帰特性を有する夜光反射シート14を用いる。また、作業者用装着部6は、作業者が装着する少なくとも作業手袋(保護手袋)15を含み、必要により作業服や作業ズボンの一部を含ませることができる。図6には、拡散光Ltを反射する反射面部5を外面全面に設けた作業手袋15を示す。
【0027】
再帰特性を有する夜光反射シートとしては、一般に、ガラスビーズ方式とマイクロプリズム方式が知られている。実施例は、図6に示すように、マイクロプリズム方式を用いた夜光反射シート14を示す。夜光反射シート14は、多数のマイクロプリズムP…が配列したプリズム層41,空気層42及び薄いアクリル樹脂や軟質塩化ビニル等を用いた裏材43からなり、平坦面に形成したプリズム層41の外面が入射面となる。これにより、反射面部5に入射した拡散光Ltは、マイクロプリズムPの三つの面を跳ね返り、拡散光Ltに対して異なる方向に偏光する反射光Lrを入射方向に放射する。
【0028】
このため、作業手袋15を製作する場合には、夜光反射シート14の裏材43に作業手袋用生地に兼用できる柔軟な素材を使用し、図6に示すように、夜光反射シート14を直接用いて作業手袋15を製作してもよいし、図7に示すように、別途の作業手袋用生地44を用いて作業手袋の本体を製作し、この表面に、夜光反射シート14を小片状にカットするなどによって形成した多数の夜光反射チップ14p…を貼付けてもよい。
【0029】
次に、本実施例に係る安全装置1の動作について、各図を参照しつつ図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】
まず、作業者は、手Hに作業手袋15を装着する。そして、作業者は、作業手袋15を装着した手Hで被加工物Wを持ち、図1に示すように、ベンディングマシンMbの上型52と下型55間に挿入する。この状態で、作業者がバーペダル56を足で踏めば、ベンディングマシンMbは加工処理動作を開始する(ステップS1)。即ち、機体54に内蔵する昇降駆動部の作動により下型55が上昇を開始し、同時に、検出部3p(3q側も同じ)の拡散光放射手段2tから拡散光Ltが放射される(ステップS2)。この際、発光部11からレーザビームLoが発光され、このレーザビームLoは偏光フィルタ13tにより横波のみが取出される。そして、レーザビームLo(横波)は、ハーフミラー23を透過するとともに、スリット22を通過し、この後、二つの円筒レンズ12a,12bを透過して所定の拡散角度Rの幕状に拡散される。拡散角度Rに拡散された拡散光Ltは、透明カバー31(開口部21s)を透過し、シャッタ32により拡散範囲が制限された後、図3に示す監視領域Zcの境界線Kz上に放射される(ステップS3)。
【0031】
この際、拡散光Ltは、鋼板,アルミニウム板,銅板等の金属板(被加工物W)に当たっても偏光方向は変わらない。拡散光Ltは、偏光フィルタ13tにより横波のみとなっているため、この反射光Lrは、縦波のみを通過させる偏光フィルタ13rにより遮断される。したがって、反射光受光手段2rは、被加工物Wを検出せず、作業手袋15が監視領域Zcに入らない限り、正常に加工処理動作が継続する(ステップS4,S5)。即ち、下型55の上昇が継続するとともに、この下型55と上型52で被加工物Wを挟むことにより曲げ加工が行われる。この状態の一例を図9に示す。この場合、監視領域Zcは上型52及び下型55に対して50〔mm〕程度手前に設定されるため、かなり小さい被加工物Wであっても加工可能である。そして、加工が終了すれば、下型55が下降し、ホームポジションに戻ることにより加工処理動作が終了するとともに、拡散光Ltの放射が停止する(ステップS6,S7,S8)。これにより一連の加工工程が終了する。
【0032】
他方、加工処理動作中に、作業手袋15が図3に仮想線で示す作業手袋15sのように、監視領域Zcに入った場合を想定する。この場合、図2に示すように、拡散光Ltは作業手袋15の反射面部5を反射する。反射面部5は、拡散光Lt(横波)に対して異なる方向に偏光する反射光Lr(縦波)を、拡散光Ltの入射方向へ反射させる再帰特性を有する夜光反射シート14を用いているため、反射面部5に入射した拡散光Ltは、マイクロプリズムPの三つの面を跳ね返り、横波の拡散光Ltに対して異なる方向に偏光した縦波の反射光Lrを入射方向に放射する。
【0033】
一方、反射光Lrは、シャッタ32、透明カバー31(開口部21s)を通過し、円筒レンズ12b,12aを透過してハーフミラー23に入光する。そして、ハーフミラー23を反射し、偏光フィルタ13rを透過した後、受光部24に入光する。偏光フィルタ13rに入光する反射光Lrは縦波であるため、ほとんどの光波成分が偏光フィルタ13rを通過し、受光部24により検出される。このように、レーザビームLoと反射光Lrに対してそれぞれ異なる方向の光波(横波と縦波)を通過させる一対の偏光フィルタ13t,13rを用いたため、受光部24は、レーザビームLo(拡散光Lt)の影響(干渉)を受けることなく、拡散光Ltを反射する作業者用装着部6からの反射光Lrのみを確実に検出できる。これにより、受光部24から所定レベルの出力信号が出力し、アンプ27により増幅される。この場合、アンプ27の出力電圧は、所定レベルの大きさが確保されるため、基準電圧設定部30の基準電圧よりも大きくなる。この結果、コンパレータ28の出力レベルが反転し、出力部29は検出信号Sdを出力する。この検出信号Sdは、制御部4に付与され、制御部4は、作業手袋15(人体の一部)が監視領域Zcに入ったことを判別する(ステップS4,S9)。
【0034】
よって、制御部4は、ベンディングマシンMbの動作を安全側に制御(停止制御)する(ステップS10)。この結果、動作中のベンディングマシンMbは直ちに停止し、安全が確保される。作業者は、これに基づき、被加工物Wを持つ位置を変えるなどにより、作業手袋15を監視領域Zcの外に出せば、反射光Lrは無くなり、反射光受光手段2rは非検出状態となる。したがって、加工を続行する場合には、バーペダル56を踏み直すことにより、加工処理動作が再開する(ステップS11,S1…)。即ち、停止していた下型55が上昇を再開するとともに、拡散光Ltの放射も再開する。
【0035】
一方、ベンディングマシンMbの動作が停止した際に、作業者が危険を感じた場合は、緊急停止解除ボタン58を押せばよい(ステップS11,S12)。これにより、下型55が下降し、ホームポジションに戻ることにより加工処理動作を終了させることができる(ステップS7,S8)。
【0036】
このような本実施例に係る安全装置1によれば、従来の安全装置のような光路が遮断されることをもって人体の一部が所定の監視領域に入ったことを検出する方式とは異なり、図9に示すような起立した側板部Wsのある被加工物Wであっても加工することができる。よって、加工できる被加工物Wの種類が飛躍的に拡大し、汎用性及び利便性を高めることができる。また、バーペダル56を踏んだ後(加工処理動作が開始した後)は、常時、検出可能な状態になるとともに、左右一対の検出部3p,3qにより角度の異なる二方向から検出を行うため、一方向のみによる場合の検出漏れが回避されるなど、高度の安全性を確保することができる。
【0037】
なお、図10には、変更実施例を示す。この変更実施例は、監視領域Zcの手前に予備監視領域Zcsを設定し、かつ検出部3p,3qの手前に、人体の一部が予備監視領域Zcsに入ったことを検出する予備検出部16p,16qを設けるとともに、制御部4に、予備検出部16p,16qの検出結果に基づいて予備警報を発する警報機能を設けたものである。この場合、予備監視領域Zcsは、監視領域Zcの手前200〔mm〕程度の範囲に設定することができる。予備検出部16p,16qは、それぞれ検出部3p,3qと同様に構成することができるが、検出精度は、検出部3p,3qよりも低度で足りるため、例えば、反射型光センサ部には、拡散光を用いることなく、一般的な発光ダイオードの発光を利用することができる。また、制御部4には、チァイム音等を発するアラーム61を接続する。
【0038】
これにより、予備監視領域Zcsに、作業手袋15が入ったなら、予備検出部16p,16qにより検出され、制御部4は、アラーム61を作動させてチァイム音等による予備警報を発する。よって、作業者に対して監視領域Zcの手前で注意を促すことができるため、作業者に対して安心感を持たせることができるとともに、より安全性を高めることができる。なお、図10中、Kzsは予備監視領域Zcsの境界を示している。また、図10において、図2及び図3と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にした。
【0039】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、実施例は、安全装置1を付設する加工機械Mとして、ベンディングマシンMbを例示したが、印刷業や紙器業で用いられる裁断機等の各種加工機械Mにも同様に適用することができる。また、人体の一部が監視領域Zcに入ったことを検出して加工機械Mの動作を停止させる場合を例示したが、必要により反対方向に動作させるなどの他の制御を行わせる場合を排除するものではない。さらに、レーザビームLoを二つの円筒レンズ12a,12bにより拡散させた場合を示したが、一又は三以上の円筒レンズ12a…を用いることができるとともに、拡散させる手段としては、円筒レンズ12a…の他、反射鏡や他の拡散手段を用いてもよいし、発光部11自身が拡散機能を有していてもよい。一方、拡散光Ltに対して異なる方向に偏光する反射光Lrを反射する反射面部5を示したが、この異なる方向には乱射方向も含まれる。他方、検出部3p,3q(予備検出部16p,16q)は、監視領域Zc(予備監視領域Zcs)の上方における左右に一対配した場合を示したが、単一の検出部3p(又は3q)であってもよいし、必要により三以上の検出部3p…を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好適な実施例に係る安全装置を付設した加工機械(ベンディングマシン)の外観斜視図、
【図2】同安全装置の正面方向から見た原理的構成図、
【図3】同安全装置の平面方向から見た原理的構成図、
【図4】同安全装置における検出部の構成図、
【図5】同安全装置における他の検出部の構成図、
【図6】同安全装置における作業手袋の背面図、
【図7】同作業手袋の変更例における断面図、
【図8】同安全装置の動作(機能)を説明するためのフローチャート、
【図9】同加工機械(ベンディングマシン)による被加工物に対する加工中の状態を示す斜視図、
【図10】本発明の変更実施例に係る安全装置の平面から見た原理的構成図、
【符号の説明】
【0041】
1 安全装置
2t… 拡散光放射手段
2r… 反射光受光手段
3p… 検出部
4 制御部
5 反射面部
6 作業者用装着部
11 発光部
12a… 円筒レンズ
13t 偏光フィルタ
13r 偏光フィルタ
14 夜光反射シート
15 作業手袋
16p… 予備検出部
Lo… レーザビーム
Lt… 拡散光
Lr… 反射光
H 手
W 被加工物
M 加工機械
Zc 監視領域
Zcs 予備監視領域
Kz 監視領域の境界線
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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