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明細書 :樹脂成形品の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257791号 (P4257791)
公開番号 特開2005-297207 (P2005-297207A)
登録日 平成21年2月13日(2009.2.13)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成17年10月27日(2005.10.27)
発明の名称または考案の名称 樹脂成形品の製造方法
国際特許分類 B29C  45/00        (2006.01)
B29C  45/77        (2006.01)
B29K 105/12        (2006.01)
B29K 307/04        (2006.01)
FI B29C 45/00
B29C 45/77
B29K 105:12
B29K 307:04
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2004-112084 (P2004-112084)
出願日 平成16年4月6日(2004.4.6)
審査請求日 平成17年9月15日(2005.9.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
発明者または考案者 【氏名】松原 雅春
【氏名】佐々木 篤史
【氏名】戸崎 正道
【氏名】酒井 伸
【氏名】山極 佳年
【氏名】高橋 幸彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100067356、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 容一郎
審査官 【審査官】川端 康之
参考文献・文献 特開平07-207142(JP,A)
特開2001-310994(JP,A)
特開2002-097375(JP,A)
特開2004-034611(JP,A)
調査した分野 B29C45/00-45/84
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノ材料を含有してなる樹脂成形品の製造方法であり、射出速度を制御することで所望の電気抵抗値を有する樹脂成形品を得る樹脂成形品の製造方法において、
射出速度を除く射出条件、樹脂の種類、この樹脂に混合するカーボンナノ材料の種類及び樹脂とカーボンナノ材料との混合比を共通にし、射出速度を変えて各々射出成形する工程と、得られた複数の樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程と、得られた相関関係に基づき、以降に射出成形を行うときにその樹脂成形品に要求される電気抵抗値に対応する射出速度を導き出す工程と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程とからなることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
カーボンナノ材料を含有してなる樹脂成形品の製造方法であり、射出速度を制御することで所望の電気抵抗値を有する樹脂成形品を得る樹脂成形品の製造方法において、
厚さを含む樹脂成形品の大きさ、射出速度を除く射出条件、樹脂の種類、この樹脂に混合するカーボンナノ材料の種類及び樹脂とカーボンナノ材料との混合比を共通にし、射出速度を変えて各々射出成形する工程と、得られた複数の樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程と、得られた相関関係に基づき、以降に射出成形を行うときにその樹脂成形品に要求される電気抵抗値に対応する射出速度を導き出す工程と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程とからなることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、良導電材料であるカーボンナノ材料を樹脂に混合して製造する樹脂成形品の製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂にカーボン材料を混ぜることで導電性プラスチックを製造することができる。近年、普通のカーボン材料よりも格段に微細な材料であるカーボンナノ材料が開発され、実用化されつつある。
【0003】
図9はカーボンナノファイバのモデル図であり、カーボンナノ材料の一種であるカーボンナノファイバ110は、六角網目状に配列した炭素原子のシートを筒状に巻いた形態のものであり、直径Dが1.0nm(ナノメートル)~150nmであり、ナノレベルであるため、カーボンナノファイバ、カーボンナノ材料又はカーボンナノチューブと呼ばれる。なお、長さLは数μm~100μmである。
【0004】
炭素原子が立方格子状に並んだものがダイヤモンドであって、ダイヤモンドは極めて硬い物質である。カーボンナノファイバ110は、ダイヤモンドと同様に規則的な結晶構造を有するために機械的強度は大きい。また、炭素は電気をよく通すため、電極などに用いられる。
【0005】
この様なカーボンナノ材料を用いて導電性樹脂成形品を製造することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。

【特許文献1】特開2002-97375公報(第9頁)
【0006】
特許文献1の段落番号[0066]の表に示されるとおり、実施例1はカーボンナノチューブが0.5wt%で、体積固有抵抗が0.2Ω・cm、実施例3はカーボンナノチューブが3wt%で、体積固有抵抗が0.09Ω・cm、実施例6はカーボンナノチューブが10wt%で、体積固有抵抗が0.08Ω・cmであった。この様にカーボンナノチューブの添加割合を増加することで、電気抵抗を下げ、導電性を高めることができる。
【0007】
しかし、カーボンナノチューブは樹脂や普通の炭素繊維に比較して極めて高価な材料であって、樹脂成形品は高価になる。
また、導電性を高めることを目的としてカーボンナノチューブや炭素繊維の添加割合を増すことは、樹脂の粘性が高まり(固くなり)、成形性が低下し、成形不良の原因となり、好ましくない。
したがって、カーボンナノチューブを増加することで導電性を高める従来の技術には限度があり、これに代わる技術が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、樹脂成形品において、カーボンナノ材料の添加量を抑えつつ導電性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、カーボンナノ材料を含む樹脂成形品の研究を進める中で、次のような考えに至った。
導電性を付与するために添加するカーボンナノ材料は、樹脂に均一に分散することが望まれる。しかし、キャビティに溶融樹脂を充満させる過程で、溶融樹脂の流れの挙動が極めて複雑になり、カーボンナノ材料が均一に分散する保証はない。不均一であるほど、導電性は低下する可能性がある。そこで、樹脂成形品におけるカーボンナノ材料の分散性を検証することが重要である。
【0010】
そこで、本発明者らは次の実験を行うことにした。
・材料:ナイロン80質量%+ナノカーボンファイバ20質量%
・樹脂成形品の大きさ:60mm×60mm
・樹脂成形品の厚さ:2mm
・射出速度:100mm/秒
【0011】
図1は樹脂成形品の斜視図であり、樹脂成形品10は、例えば、Aが60mm、Bが60mm、Cが2mmの正方形板である。
図2は電気抵抗値測定図であり、樹脂成形品10を2枚のカーボン端子11、11で挟み、これらのカーボン端子11、11を介してインピーダンスアナライザで樹脂成形品10の厚さ方向における交流の電気抵抗値を計測する。カーボン端子11は10mm×10mmの大きさである。
【0012】
図3は板厚中心の電気抵抗値測定図であり、樹脂成形品の上下面を等しくフライスで研削し、厚さtの試験片12を造り、この試験片12の電気抵抗値を計測した。tは0.5mm、1.0mm、1.5mmの3種を造り、各々の電気抵抗値を計測した。
【0013】
図4は厚さと電気抵抗値の関係を表したグラフであり、横軸は樹脂成形品又は試験片の厚さ、縦軸は電気抵抗値とした。横軸で2mmは樹脂成形品10のままであり、電気抵抗値は大きい。横軸で1.5mmは片側0.25mmずつ研削した試験片12であって、電気抵抗値は微小となった。横軸で1.0及び0.5mmも電気抵抗値は微小であった。このグラフから、次のことが推定できる。
【0014】
図5は樹脂成形品におけるカーボンナノ材料の分布模式図であり、樹脂成形品10の厚さ中心は電気抵抗値が小さいため、(c)に示すように線状のカーボンナノ材料13が縦横に配列されていると推定できる。
一方、表皮14が電気抵抗値を稼いでいることから、(b)に示すようにカーボンナノ材料13が横に配列されていると推定できる。横であれば、厚さ方向の電気抵抗値が大きくなるからである。
【0015】
表皮14、14は金型に接触して形成されるが、この際、溶融樹脂が金型に沿って流れ、この流れに沿ってカーボンナノ材料13が揃うと考えられ、且つ厚さ中央とは異なり表皮14の部位では、カーボンナノ材料13は姿勢が変わる前に急冷・凝固するために、(b)のようになると思われる。この傾向は流速が大きいほど顕著になることが予想される。
【0016】
そこで、本発明者らは射出速度に注目し、射出速度を変えて射出成形を行った。射出条件は次のとおりである。
・材料:ポリプロピレン80質量%+ナノカーボンファイバ20質量%
・樹脂成形品の大きさ:60mm×60mm
・樹脂成形品の厚さ:2mm
・射出速度:超微速、100mm/秒又は300mm/秒
【0017】
そして、インピーダンスアナライザで樹脂成形品の交流の電気抵抗値を測定し、その結果を次図に示す。
図6は、ある樹脂成形品での射出速度と電気抵抗値の相関図であり、横軸は射出速度、縦軸(対数目盛)は電気抵抗値を示す。電気抵抗値は射出速度に比例することが分かった。
【0018】
次に、成形条件などを変更して射出成形を実施した。
・材料:ポリプロピレン80質量%+ナノカーボンファイバ20質量%
・樹脂成形品の大きさ:60mm×60mm
・樹脂成形品の厚さ:0.5mm
・射出速度:100mm/秒、300mm/秒又は600mm/秒
【0019】
そして、インピーダンスアナライザで樹脂成形品の交流の電気抵抗値を測定し、その結果を次図に示す。
図7は別の樹脂成形品での射出速度と電気抵抗値の相関図であり、図6とは異なる相関グラフを描くことができた。
なお、相関図は一例を示したに過ぎず、数式、テーブルであってもよく、形態は任意である。
【0020】
以上に述べたとおり要求される電気抵抗値が決まれば、それに対応する射出速度が決まるため、この原理を応用することで発明を完成させることができる。
すなわち、請求項1に係る発明は、カーボンナノ材料を含有してなる樹脂成形品の製造方法であり、射出速度を制御することで所望の電気抵抗値を有する樹脂成形品を得る樹脂成形品の製造方法において、
射出速度を除く射出条件、樹脂の種類、この樹脂に混合するカーボンナノ材料の種類及び樹脂とカーボンナノ材料との混合比を共通にし、射出速度を変えて各々射出成形する工程と、得られた複数の樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程と、得られた相関関係に基づき、以降に射出成形を行うときにその樹脂成形品に要求される電気抵抗値に対応する射出速度を導き出す工程と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程とからなることを特徴とする。
【0021】
請求項2に係る発明では、カーボンナノ材料を含有してなる樹脂成形品の製造方法であり、射出速度を制御することで所望の電気抵抗値を有する樹脂成形品を得る樹脂成形品の製造方法において、厚さを含む樹脂成形品の大きさ、射出速度を除く射出条件、樹脂の種類、この樹脂に混合するカーボンナノ材料の種類及び樹脂とカーボンナノ材料との混合比を共通にし、射出速度を変えて各々射出成形する工程と、得られた複数の樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程と、得られた相関関係に基づき、以降に射出成形を行うときにその樹脂成形品に要求される電気抵抗値に対応する射出速度を導き出す工程と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1、2に係る発明では、射出速度を制御することで所望の電気抵抗値を有する射出樹脂成形品を製造することができる。
射出速度を下げることで、電気抵抗値を下げることができれば、高価なカーボンナノ材料を節約することができ、樹脂成形品のコストを抑えることができる。同時に、カーボンナノ材料の添加割合を減らすことで、樹脂の成形性を高め、樹脂成形品の品質を高めることができる。
【0023】
又は、ある種の樹脂成形品には、高い導電性は不要であって、表面に溜まる静電気を逃がすことができる程度の低い導電性があれば十分であるというものがある。
この様な樹脂成形品は、射出速度を上げて、電気抵抗値を上げることで製造することができる。
【0024】
この様に、請求項1、2によって、電気抵抗値を制御することができるので、得られる効果は甚大である。
【0025】
さらに、請求項1、2に係る発明は、射出速度を変えて各々射出成形する工程(第1工程)と、樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程(第2工程)と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程(第3工程)と、得られた相関関係から射出速度を導き出す工程(第4工程)と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程(第5工程)とからなることを特徴とする。
【0026】
全5工程のうち、第1工程から第3工程までで、基礎となる相関関係を定める。そして、第4、第5工程で、樹脂成形品の生産を行う。すなわち、相関関係が定まれば、その後は成形品の生産に集中することができ、生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図8は本発明に係る導電性樹脂の製造フロー図であり、ST××はステップ番号を示す。
ST01:先ず、データベース(ここでは、相関図の集合体を指す。)中に生産する樹脂成形品に対応する相関図があるか否かを調べる。あるときにはST06に進み、無いときには次に進む。
【0028】
ST02:相関図が無いので、データ取得のために射出成形を行う。このときに射出速度だけを変更し、他の射出条件(材料、樹脂成形品の大きさ、射出圧力、温度条件など)は変えない。
ST03:得られた樹脂成形品の電気抵抗値を計測する。
ST04:複数の電気抵抗値が得られたら、射出速度と電気抵抗値の相関図(図6,7参照)を作成する。
ST05:作成した相関図をデータベースに加える。
【0029】
ST06:データベースから樹脂成形品に対応する相関図を選択する。
ST07:選択した相関図に基づき、要求される電気抵抗値に対応する射出速度を決定する。
ST08:そして、生産のための射出成形を行う。
【0030】
ST09:生産を継続する必要がなければ、フローを終了し、継続する必要があれば次に進む。
ST10:樹脂成形品の種類など(材質、大きさ、形状、射出圧力、温度など)が変更されるか否かを調べる。条件を変える必要がなければ、ST08に戻って射出工程を継続する。種類などの条件が変わる場合は、ST01に戻る。
【0031】
以上のフローを要約すれば次のとおりになる。
本発明は、射出速度を除く射出条件、樹脂の種類、この樹脂に混合するカーボンナノ材料の種類及び樹脂とカーボンナノ材料との混合比を共通にし、射出速度を変えて各々射出成形する工程(ST02)と、得られた複数の樹脂成形品の電気抵抗値を計測する工程(ST03)と、計測した電気抵抗値と射出速度との相関関係を調べる工程(ST04)と、得られた相関関係に基づき、以降に射出成形を行うときにその樹脂成形品に要求される電気抵抗値に対応する射出速度を導き出す工程(ST07)と、この射出速度で射出成形を実行する射出成形工程(ST08)とからなることを特徴とする。
【0032】
フローから明らかなように、データベースが充実すれば、ST02~ST05を割愛した形態で製造が行えることは言うまでもない。
ST02~ST05と他のステップとを同時期にシリーズに実施するか、時期を変えて行うかは任意である。すなわち、ST02~ST05を先行して実施し、後に他のステップ(ST06~ST09)を実施することは、本発明に含むものである。
【0033】
なお、カーボンナノ材料は、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ、カーボンナノフラーレンの何れであってもよく、材質が炭素で、ナノレベルのサイズを含む物であれば形態は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、カーボンナノ材料を樹脂に混合して製造する導電性樹脂成形品の製造技術に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】樹脂成形品の斜視図である。
【図2】電気抵抗値測定図である。
【図3】板厚中心の電気抵抗値測定図である。
【図4】樹脂成形品における厚さと電気抵抗値の関係を表したグラフである。
【図5】カーボンナノ材料の分布模式図である。
【図6】ある樹脂成形品での射出速度と電気抵抗値の相関図である。
【図7】別の樹脂成形品での射出速度と電気抵抗値の相関図である。
【図8】本発明に係る導電性樹脂の製造フロー図である。
【図9】カーボンナノファイバのモデル図である。
【符号の説明】
【0036】
10…樹脂成形品、12…試験片、13…カーボンナノ材料、110…カーボンナノファイバ。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8