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明細書 :振動加工装置とホルダー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4625963号 (P4625963)
公開番号 特開2008-213073 (P2008-213073A)
登録日 平成22年11月19日(2010.11.19)
発行日 平成23年2月2日(2011.2.2)
公開日 平成20年9月18日(2008.9.18)
発明の名称または考案の名称 振動加工装置とホルダー
国際特許分類 B23B  37/00        (2006.01)
B23C   3/00        (2006.01)
FI B23B 37/00
B23C 3/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2007-052251 (P2007-052251)
出願日 平成19年3月2日(2007.3.2)
審査請求日 平成19年3月2日(2007.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】磯部 浩已
【氏名】吉原 英雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100082337、【弁理士】、【氏名又は名称】近島 一夫
審査官 【審査官】中村 泰二郎
参考文献・文献 特開2002-346817(JP,A)
特開平02-109667(JP,A)
調査した分野 B23B 37/00, 1/00
B24B 1/04
B23C 3/00
B26F 1/16, 1/26
特許請求の範囲 【請求項1】
着脱自在な工具を、軸を中心に回転させながら軸方向に振動させて前記工具の先端部分で被加工部材を加工する振動加工装置において、
軸を中心に回転しながら振動源の振動によって軸方向に振動するスピンドルと、
前記工具を装着して前記スピンドルに円錐状のテーパ部同士の嵌合によって着脱自在なホルダーと、
前記スピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルに前記ホルダーを嵌合した使用状態において、前記スピンドルの振動の節となる部分に配置された軸受と、を備え、
前記ホルダーは、前記テーパ部と、前記工具を装着する保持部と、前記テーパ部と前記保持部との間で前記軸受部分に位置する節と異なる前記振動の節の部分に形成された最大径の部分と、を有している、
ことを特徴とする振動加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動加工装置に用いられるホルダーであって、
一端に、前記スピンドルの円錐状のテーパ凹部に嵌合する円錐状のテーパ凸部を備え、
他端に、前記工具を焼きばめによって保持する保持部を備え、
中間部に、前記ホルダーの最大径の部分を備え、
ていることを特徴とするホルダー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に振動する工具を被加工部材に接触させて振動を与えながら、前記被加工部材を加工する振動加工装置と、この振動加工装置に装着される工具保持用ホルダーとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン、セラミックス、超硬合金などの加工が困難な材質の硬い難削材に高周波で振動する工具を接触させて振動を与えながら難削材を加工する振動加工装置がある。
【0003】
この振動加工装置は、振動エネルギを発生するアクチュエータ(振動源)、アクチュエータの振動エネルギを工具に効率良く伝達する振動体などで構成されている。
【0004】
さらに、振動加工装置は、振動体をスピンドルとして、このスピンドルを支持部材である軸受によって回転自在に支持させることにより、いわゆるドリル加工やミーリング加工を行えるようになる。この場合、振動加工装置のスピンドルと軸受は、ロータを構成している。
【0005】
そして、振動加工装置は、各種の工具を利用するため、工具を高精度かつ確実に把持させて、工具把持部をロータのスピンドルに備えている(特許文献1)。
【0006】

【特許文献1】特開2000-334603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、振動加工装置における工具把持部は、アクチュエータの振動エネルギを工具に伝達すること、ロータの回転による工具の振れまわりを可能な限り小さくすること等の機能を備えていなければならない。仮に、振動エネルギが確実に工具へと伝達されない場合には、エネルギは損失し、工具が振動しないばかりか、工具の脱落やエネルギ損失が熱にかわり熱膨張や焼損などの問題を引き起こす。また、スピンドルの振れまわりも加工精度の低下原因になる。特に、振動の助けによる加工(振動援用加工)が優位になる工具径の小さな加工においては、工具の折損や、工具の摩耗を引き起こすことになる。
【0008】
工具把持部には、広く使用されているコレットチャックがある。コレットチャックは、柔軟な弾性体が介在するために、高周波の振動エネルギを伝達することが困難である。
【0009】
また、工具把持部としてスピンドルに着脱自在に装着されるホルダーがある。このホルダーには、工具に対して僅かな隙間が生じる隙間ばめ用の孔が形成されている。このため、ホルダーは、孔に工具を挿入して、ボルトで締結したり、接着や接合したりした場合、振れまわりを減らすための工具の芯だし作業が繁雑で、かつ困難であり、高い加工技術が必要であり、さらに、工具の交換が不可能であるなどの問題がある。
【0010】
本発明は、工具を確実、高精度に把持して高精度に被加工部材を加工する振動加工装置を提供することにある。
【0011】
本発明は、工具を振動加工装置に確実、高精度に保持させて、工具による被加工部材の加工精度を向上させることのできる工具用のホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の振動加工装置は、
着脱自在な工具を、軸を中心に回転させながら軸方向に振動させて前記工具の先端部分で被加工部材を加工するようになっており、
軸を中心に回転しながら振動源の振動によって軸方向に振動するスピンドルと、
前記工具を装着して前記スピンドルに円錐状のテーパ部同士の嵌合によって着脱自在なホルダーと、
前記スピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルに前記ホルダーを嵌合した使用状態において、前記スピンドルの振動の節となる部分に配置された軸受と、を備え、
前記ホルダーは、前記テーパ部と、前記工具を装着する保持部と、前記テーパ部と前記保持部との間で前記軸受部分に位置する節と異なる前記振動の節の部分に形成された最大径の部分と、を有している、
ことを特徴としている。
【0013】
本発明のホルダーは、
上記の振動加工装置に用いられるホルダーであって、
一端に、前記スピンドルの円錐状のテーパ凹部に嵌合する円錐状のテーパ凸部を備え、
他端に、前記工具を焼きばめによって保持する保持部を備え、
中間部に、前記ホルダーの最大径の部分を備え、
ていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の振動加工装置は、ホルダーが工具を保持部で焼きばめによって保持しているので、工具がホルダーに確実に保持されて、振動源の振動が工具に確実に伝達されるとともに、工具の振れまわりが少なくなり、被加工部材に高精度な加工をすることができる。
【0015】
本発明の振動加工装置は、ホルダーが円錐状のテーパ部同士の嵌合によって着脱可能にスピンドルに備えられるようになっているので、工具の芯だしや、工具の交換が容易である。
【0016】
本発明の振動加工装置は、振動源の所定の振動数によって生じる節が軸受とホルダーの軸方向の中間部分に位置しているので、スピンドルやホルダーの振動の影響を少なくして確実に保持して、被加工部材の加工精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の振動加工装置用のホルダーは、工具を保持部で焼きばめによって保持しているので、工具を確実に保持して、振動源の振動を工具に確実に伝達することができる。また、工具の振れまわりを少なくすることができる。
【0018】
本発明の振動加工装置用のホルダーは、円錐状のテーパ部によってスピンドルに着脱可能に備えられるようになっているので、工具の芯だしや、工具の交換が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の振動加工装置と、この振動加工装置に保持される工具用のホルダーとを図に基づいて説明する。なお、本発明において取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
【0020】
図1は振動加工装置の概略正面図である。図2は図1の振動加工装置のスピンドルに装着さるホルダーである。
【0021】
振動加工装置1は、軸方向に振動する工具Tを被加工部材Wに接触させて振動を与えながら、被加工部材Wを加工するようになっている。振動加工装置1は、工具としてドリルを取り付ければドリル加工、エンドミルを取り付ければミーリング加工、研削砥石を取り付ければ研削加工をすることができる。
【0022】
振動加工装置1は、振動エネルギを発生する振動源としてのアクチュエータ10と、振動エネルギを工具Tへと効率的に伝達できるように設計されたスピンドル11と、スピンドル11に着脱自在で工具を保持するホルダー12とを備えている。スピンドル11は、軸受13によって回転支持されている。なお、軸受は、1つしか図示していないが他にもあるものとする。
【0023】
ホルダー12は、工具Tを保持孔21で焼きばめによって保持している。
【0024】
ホルダー12の下端(他端)には、工具を保持する保持部としての保持孔21が軸方向に沿って形成されている。保持孔21の内径は、常温においては工具Tのシャンク部Taの外径より僅かに小さく形成されている。ホルダー12を加熱すると保持孔21が、僅かに拡張して、工具Tのシャンク部Taを受け入れることができるようになる。この結果、ホルダー12に工具Tを挿入することができる。その後、ホルダー12が冷却されて常温に戻ると、保持孔21は、締まり、工具Tのシャンク部Tを把持する。このように、ホルダー12は、保持孔21で焼きばめによって工具Tを保持するようになっている。
【0025】
焼きばめは、熟練した技術が不要でありながら、ホルダー12に工具Tを確実に保持することができる。また、ホルダー12と工具Tとの接触面積が広いので、振動エネルギの伝達効率を高めることができる。これによって、工具を確実に保持して、被加工部材の加工精度を向上させることができる。
【0026】
さらに、工具Tの中心とホルダー12の中心とを一致させて、保持させることができて、工具の芯振れを少なくすることができ、被加工部材の加工精度を向上させることができる。
【0027】
ホルダー12とスピンドル11との間にも、高い取り付け精度と振動伝達能力が必要である。特に、工具Tは、ホルダー12に取り付けられたままストックされて、他の工具を使用するときはホルダー12ごと交換する必要がある。
【0028】
したがって、ホルダー12をスピンドル11に容易に着脱できると同時に、作業者の能力や環境に影響されることなく、常に安定して高い精度で装着されて振動エネルギをスピンドル11からホルダー12に確実に伝達ができるようにする必要がある。
【0029】
そこで、ホルダー12には、円錐状のテーパ凸部22を形成されている。スピンドル11には、ホルダー12のテーパ凸部22が嵌合される円錐状のテーパ凹部23が形成されている。テーパ凸部22とテーパ凹部23は、互いに接触面積を広くして嵌合するようになっている。なお、ホルダー12の上端(一端)には雄ねじ24が形成され、スピンドル11には、雄ねじ24がねじ込まれる雌ねじ25が形成されている。このため、ホルダー12はスピンドル11にねじ込むようにして嵌合される。なお、これらのねじ24,25は、必ずしも必要としない。ねじ24,25を設けていない場合には、ホルダー12をスピンドル11に勢い良く挿入させて、スピンドル11で受け止めさせて、嵌合させる必要がある。
【0030】
このように、ホルダー12は、スピンドル11に嵌合装着されるので、半径方向への自由度が拘束されて、作業者の作業能力とは無関係にホルダー12をスピンドル11に確実に装着することができる。
【0031】
図3は、ホルダー12をスピンドル11に脱着を10回(試行回数10回)繰り替えした場合のホルダー12の、半径方向の静的な振れまわりを測定器Sで測定した結果のグラフである。取り付けに際しては、特に芯出しに相当する調整作業は行っていない。これより、平均で2μm以下の振れまわりを容易に実現することができる。また、振れまわりの標準偏差も1μm以下であり、高い繰り返し再現性を有していることが確認できた。
【0032】
また、円柱端面同士の当たり面に比べて、有効接触面積が広くなるので、振動エネルギをスピンドル11からホルダー12により効率的に伝達することができる。上述の特性を総合的に評価するため、工具Tとホルダー12との間の焼きばめと取り外し作業、およびスピンドル12に対するホルダー11の脱着交換作業を5回(試行回数5回)繰り返した場合の工具(直径4mmの超硬軸)の先端部における振れまわりの変化を測定器Sで測定した結果を図4に示す。
【0033】
図4に示した特性は、加工精度に直接影響を与える特性である。図4によると、振れまわりの平均値は2.6μm、標準偏差は1.3μmである。この振れまわりの大きさは、コレットチャックなどの一般的な工具把持部と同程度なレベルであり、本ホルダー12が十分な把持精度を有していることが確認された。また、アクチュエータ10の発生した振動エネルギが工具Tに伝達されることも確認されて、本振動加工装置1を、振動の助けによる加工(振動援用加工)を優位にすることができる。
【0034】
以上の構成において、振動加工装置1は、アクチュエータ10によって工具Tを軸方向に振動させて被加工部材Wに接触させて振動を与えながら、被加工部材を加工するようになっている。工具Tの軸方向への振幅が1μm、振動数60kHz±500Hz、工具Tの直径3mm、ホルダー12からの突出長さ12mmとしたとき、スピンドル11とホルダー12とに図1(b)に示すように、振動の節Aと腹Bが発生する。節Aは、軸方向への振幅が少ない部分であり、腹Bは、軸方向への振幅が多い部分である。
【0035】
節Aは、軸受13と、ホルダー12の軸方向の中間部分のホルダーとして最大径の部分12aとに位置している。腹Bは、テーパ部22,23と、保持部としてのホルダーの保持孔21の部分と、工具Tの先端とに位置している。
【0036】
節と腹の位置は、スピンドル、ホルダー、工具の径や長さ、材質等によって決まるものであり、振動を解析して一概に求めることができるものではなく、実験的に求めたものである。
【0037】
節Aが軸受13に位置しているので、スピンドル11を軸受13に振動の影響を少なくして支持させることができて、スピンドル11を不図示のモータによって円滑に回転させることができる。
【0038】
また、節Aがホルダー12の最大径の部分12aに位置していると、ホルダー12に不必要な軸方向の慣性力が発生することがなく、工具Tに所定の振動を確実に伝達することができて、被加工部材の加工精度を向上させることができる。
【0039】
節Bがテーパ部22,23と、保持孔21の部分とに位置していても、スピンドルとホルダーはテーパ部22,23によって、ホルダーと工具は焼きばめによって、それぞれ確実に接続されている部分であるので、脱落のおそれがない。また、エネルギ損失が少なくなり、熱膨張や焼損などの問題を引き起こすようなことがなくなる。
【0040】
また、腹Bが工具の先端に位置していると、振動加工装置1は、被加工部材に所定の振動を確実に伝えて、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は、本発明の実施形態における、振動加工装置の概略正面図である。(b)は、軸方向の振幅を示すグラフである。
【図2】(a)は、図1の振動加工装置のスピンドルに装着さるホルダーの半断面図である。(b)は、(a)の下面図である。
【図3】(a)は、ホルダーをスピンドルに脱着を10回(試行回数10回)繰り替えした場合のホルダーの、半径方向の静的な振れまわりを測定器で測定した結果のグラフである。(b)は、測定状態を示す図である。
【図4】(a)は、工具とホルダーとの間の焼きばめと取り外し作業、およびスピンドルに対するホルダーの脱着交換作業を5回(試行回数5回)繰り返した場合の工具の先端部における振れまわりの変化を測定器で測定した結果のグラフである。(b)は、測定状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
A 節
B 腹
T 工具
Ta シャンク部
W 被加工部材
S 測定器
1 振動加工装置
10 アクチュエータ(振動源)
11 スピンドル
12 ホルダー
12a ホルダーの最大径の部分(ホルダーの軸方向の中間部分)
13 軸受
21 保持孔(保持部)
22 テーパ凸部(テーパ部)
23 テーパ凹部(テーパ部)
24 雄ねじ
25 雌ねじ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3