TOP > 国内特許検索 > 往復機械用振動低減装置及び往復機械 > 明細書

明細書 :往復機械用振動低減装置及び往復機械

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5831869号 (P5831869)
公開番号 特開2013-002364 (P2013-002364A)
登録日 平成27年11月6日(2015.11.6)
発行日 平成27年12月9日(2015.12.9)
公開日 平成25年1月7日(2013.1.7)
発明の名称または考案の名称 往復機械用振動低減装置及び往復機械
国際特許分類 F02B  77/00        (2006.01)
F02B  67/04        (2006.01)
F16F  15/26        (2006.01)
FI F02B 77/00 L
F02B 67/04 A
F16F 15/26 L
F16F 15/26 N
F16F 15/26 R
F16F 15/26 B
F16F 15/26 K
F16F 15/26 P
F16F 15/26 Q
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願2011-134452 (P2011-134452)
出願日 平成23年6月16日(2011.6.16)
審査請求日 平成26年6月12日(2014.6.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】岡部 匡
個別代理人の代理人 【識別番号】100085660、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 均
【識別番号】100149892、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 弥生
審査官 【審査官】瀬戸 康平
参考文献・文献 実開昭55-054632(JP,U)
特開2009-222135(JP,A)
実開昭63-100638(JP,U)
実開昭52-071601(JP,U)
米国特許第03511110(US,A)
実開昭55-034092(JP,U)
特開昭57-037133(JP,A)
実開昭57-035404(JP,U)
特開2009-281458(JP,A)
調査した分野 F02B 67/04,77/00
F16F 15/26
特許請求の範囲 【請求項1】
往復直線運動を行うスライダ、クランク軸を中心として回転運動を行うクランク、及び前記スライダの往復直線運動を前記クランクに伝達して前記クランク軸を回転させるコネクティングロッド、を有するスライダ・クランク機構と、前記クランク軸を間に挟んで前記クランクの反対側に連接されたカウンタウェイトと、第1、及び第2のバランスウェイト機構と、前記スライダ・クランク機構からの駆動力を前記第1、及び第2のバランスウェイト機構に夫々伝達する駆動力伝達機構と、前記各構成要素を支持するベース部材と、を備えた往復機械用振動低減装置であって、
前記第1、及び第2のバランスウェイト機構は、夫々前記スライダの重心移動経路の延長線に対して対称な前記ベース部材の各部位に配置され、
前記第1、及び第2のバランスウェイト機構は、夫々前記スライダの重心移動経路の延長線に対して対称位置に配置されたバランサ回転軸と、該各バランサ回転軸を中心とした円軌道に沿って回転し、且つ前記駆動力伝達機構によって伝達された駆動力により前記クランク軸と同一回転数にて互いに逆方向に回転する第一バランスウェイトと、前記各バランサ回転軸を中心とした円軌道に沿って回転し、且つ前記駆動力伝達機構よって伝達された駆動力により前記クランク軸の2倍の回転数にて互いに逆方向に回転する第二バランスウェイトと、を備え
前記各第一バランスウェイトは、夫々前記各バランサ回転軸を回転軸とする中空筒状部材の重心位置を前記各バランサ回転軸から外径方向にずらした構成を備え、
前記各第二バランスウェイトは、夫々前記各バランサ回転軸を回転軸とする軸状部材の重心位置を前記各バランサ回転軸から外径方向にずらした構成を備え、
前記各第一バランスウェイトの中空内部には、前記第二バランスウェイトが同軸状且つ相対回転可能に軸支されており、
前記駆動力伝達機構は、歯車列を有し、
該歯車列は、内歯車及び外歯車を有し、該外歯車同士が噛合し、且つ前記第一バランスウェイトと一体回転する一対のリングギヤと、該各リングギヤの内歯車との歯数比が2:1である外歯車を有し、且つ前記各第二バランスウェイトと一体回転するサンギヤと、前記各リングギヤの内歯車及び前記各サンギヤの外歯車と夫々噛合して自転する軸固定のアイドラギヤと、を備えたことを特徴とする往復機械用振動低減装置。
【請求項2】
前記カウンタウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構が前記スライダの重心移動方向と直交する方向に発生させる一次振動を除去するように設定され、
前記第一バランスウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構及び前記カウンタウェイトが前記スライダの重心移動方向と平行な方向に発生させる一次振動を除去するように設定され、
前記第二バランスウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構が前記スライダの重心移動方向と平行な方向に発生させる二次振動を除去するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の往復機械用振動低減装置。
【請求項3】
前記スライダの重心移動経路の延長線を基準軸として前記クランクの回転角をωtとしたときに、前記各第一バランスウェイトの位相がπ±ωtで与えられ、前記各第二バランスウェイトの位相がπ±2ωtで与えられることを特徴とする請求項1又は2記載の往復機械用振動低減装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項記載の往復機械用振動低減装置を備えたことを特徴とする往復機械。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、単気筒エンジン、ポンプ、空気圧縮機など、単一のスライダ・クランク機構を利用して、回転運動と往復運動との間の変換を行っている往復機械の振動・騒音を低減する往復機械用振動低減装置、及びこれを備えた往復機械に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、ポンプ、空気圧縮機など、回転運動と往復運動との間の変換機構として、スライダ・クランク機構(またはピストン・クランク機構とも呼ばれている)が広く利用されている。このスライダ・クランク機構においては、直線往復運動を行うスライダ(またはピストン)、揺動及び往復運動を行う連接棒(コネクティングロッド)、回転運動を行うクランクの各部の運動に起因した不釣合い慣性力により有害な振動が発生する。この振動は、クランク回転数と同期した一次振動と、その偶数倍の高次振動で構成される。
例えば、多気筒エンジンのように複数のスライダをもつ往復機械においては、各気筒間のクランク回転角の位相をずらすことにより、一次振動の除去が可能であり、二次振動以上の高次振動を低減すればよい。この高次振動の低減のためのバランサとして代表的なものとして、三菱自動車工業株式会社の「サイレントシャフト(登録商標)」が実用化されている。
【0003】
一方、単気筒エンジンのように単一のスライダのみをもつ往復機械では、一次成分の振動の除去は不可能であり、さらに、クランク回転数の偶数倍の高次振動も同時に発生する。単一のスライダ・クランク機構をもつ往復機械の振動低減法としては、様々なバランサ装着による方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、クランク軸により回転駆動されるキャリアと、回転可能なサンギヤを有するサンギヤ回転体と、サンギヤに対して径方向外方に配置されるリングギヤと、キャリアに回転可能に支持されると共に、サンギヤとリングギヤの双方に噛合するプラネタリギヤとを有する遊星歯車機構を備えたバランサ装置の発明が記載されている。このバランサ装置においては、キャリア、プラネタリギヤ、及び第一バランスウェイト部により構成されるキャリア組立体により一次成分の振動を低減し、第二バランスウェイト部を有するサンギヤ回転体により、一次振動よりも高い振動数の高次数振動を低減する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-281458公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のバランサ装置においては、振動を低減させる機構が複雑であり、依然として振動低減装置のサイズや重量が大きいという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、単一個のスライダをもつ往復機械に関し、有害な振動の主な原因となる一次振動と二次振動(クランク回転数の2倍の回転角速度)の不釣合い慣性力を単純な機構を用いて消去し、往復機械の運転時に発生する振動及び騒音を大幅に低減し、静粛な運転を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、往復直線運動を行うスライダ、クランク軸を中心として回転運動を行うクランク、及び前記スライダの往復直線運動を前記クランクに伝達して前記クランク軸を回転させるコネクティングロッド、を有するスライダ・クランク機構と、前記クランク軸を間に挟んで前記クランクの反対側に連接されたカウンタウェイトと、第1、及び第2のバランスウェイト機構と、前記スライダ・クランク機構からの駆動力を前記第1、及び第2のバランスウェイト機構に夫々伝達する駆動力伝達機構と、前記各構成要素を支持するベース部材と、を備えた往復機械用振動低減装置であって、前記第1、及び第2のバランスウェイト機構は、夫々前記スライダの重心移動経路の延長線に対して対称な前記ベース部材の各部位に配置され、前記第1、及び第2のバランスウェイト機構は、夫々前記スライダの重心移動経路の延長線に対して対称位置に配置されたバランサ回転軸と、該各バランサ回転軸を中心とした円軌道に沿って回転し、且つ前記駆動力伝達機構によって伝達された駆動力により前記クランク軸と同一回転数にて互いに逆方向に回転する第一バランスウェイトと、前記各バランサ回転軸を中心とした円軌道に沿って回転し、且つ前記駆動力伝達機構よって伝達された駆動力により前記クランク軸の2倍の回転数にて互いに逆方向に回転する第二バランスウェイトと、を備え、前記各第一バランスウェイトは、夫々前記各バランサ回転軸を回転軸とする中空筒状部材の重心位置を前記各バランサ回転軸から外径方向にずらした構成を備え、前記各第二バランスウェイトは、夫々前記各バランサ回転軸を回転軸とする軸状部材の重心位置を前記各バランサ回転軸から外径方向にずらした構成を備え、前記各第一バランスウェイトの中空内部には、前記第二バランスウェイトが同軸状且つ相対回転可能に軸支されており、前記駆動力伝達機構は、歯車列を有し、該歯車列は、内歯車及び外歯車を有し、該外歯車同士が噛合し、且つ前記第一バランスウェイトと一体回転する一対のリングギヤと、該各リングギヤの内歯車との歯数比が2:1である外歯車を有し、且つ前記各第二バランスウェイトと一体回転するサンギヤと、前記各リングギヤの内歯車及び前記各サンギヤの外歯車と夫々噛合して自転する軸固定のアイドラギヤと、を備えたことを特徴とする。
請求項1の発明では、単一のスライダのみをもつ往復機械の一次及び二次振動を除去するために、クランク軸に取り付けられるカウンタウェイト、2つの一次バランスウェイト、及び2つの二次バランスウェイトの計4つのバランスウェイトを有する振動低減装置を提案した。本発明に係る振動低減装置は、クランクの回転と同期して回転する一次バランスウェイトと、一次バランスウェイトと同一の回転軸を有し、クランク回転数の2倍の回転角速度で回転する二次バランスウェイトを有するものである。この装置の4つのバランスウェイトの回転軸(2つ)を平行に設置し、一次、二次のそれぞれが対となるバランスウェイトを互いに逆回転させることにより、往復機械の一次振動と二次振動を除去する。その結果、往復機械の振動・騒音を大幅に低減することが可能となる。
また、一次バランスウェイトを中空筒状とし、一次バランスウェイトの中空内部で二次バランスウェイトが回転するものである。上記のような構造とすることにより、非常に軽量かつ小型化することが可能である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記カウンタウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構が前記スライダの重心移動方向と直交する方向に発生させる一次振動を除去するように設定され、前記第一バランスウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構及び前記カウンタウェイトが前記スライダの重心移動方向と平行な方向に発生させる一次振動を除去するように設定され、前記第二バランスウェイトの質量及び重心の回転半径は、前記スライダ・クランク機構が前記スライダの重心移動方向と平行な方向に発生させる二次振動を除去するように設定されている請求項1記載の往復機械用振動低減装置を特徴とする。
請求項2の発明では、スライダ・クランク機構の一次振動と二次振動とを完全に除去するため、まず一次振動をカウンタウェイトと第一バランスウェイトとによって完全に除去し、二次振動を第二バランスウェイトによって完全に除去する構成とした。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記スライダの重心移動経路の延長線を基準軸として前記クランクの回転角をωtとしたときに、前記各第一バランスウェイトの位相がπ±ωtで与えられ、前記各第二バランスウェイトの位相がπ±2ωtで与えられる請求項1又は2記載の往復機械用振動低減装置を特徴とする。
請求項3の発明では、請求項2と同様に往復機械の一次振動と二次振動とを完全に除去するため、クランクの位相に対して第一バランスウェイトと第二バランスウェイトの位相をそれぞれπ±ωt、π±2ωtとなるようにした
求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項記載の往復機械用振動低減装置を備えた往復機械を特徴とする。
請求項の発明では、請求項1乃至の何れか一項記載の往復機械用振動低減装置により、往復機械の振動を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る振動低減装置を単一のスライダのみをもつ往復機械に取り付けるだけで、大幅な振動低減が可能となる。本発明に係る振動低減装置は、非常に軽量化且つ小型化することができるため、エンジンを搭載したチェーンソーのような手持ち機械にも搭載することができる。手持ち機械に搭載した場合は作業者の手に伝達する振動を低減できるため、白蝋病などの発生の予防効果も期待できる。また、オートバイ用エンジンから発生する振動低減、ポンプの運転時の振動低減など、産業界で使用されている様々な往復機械にも適用が可能である。
また、機械の共振を避ける一般的な方法として、往復機械の支持部防振ゴムばね定数、機械の質量の調節により一次固有振動を運転振動数域外にはずす手法が用いられる。
しかし往復機械の場合には、一次固有振動数を運転振動数域外の高振動数域側にはずしたとしても、加振力に二次成分が含まれているため、この加振力による二次の共振が運転振動数域で発生することとなる。このような場合においても、本発明の振動低減装置を搭載した場合には、二次加振力が除去されているため、二次共振の発生をも防止できる。このため、往復機械の防振設計に大きな自由度を与えることができ、往復機械の振動低減を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】スライダ・クランク機構にて駆動される往復機械の原理を示す説明図である。
【図2】本発明に係る振動低減装置の原理を説明する概略図である。
【図3】一次バランサ及び二次バランサを駆動する歯車列を示す図である。
【図4】振動低減装置の斜視図である。
【図5】振動低減装置の上面側断面図である。
【図6】一次バランスシャフトの斜視図である。
【図7】二次バランスシャフトの斜視図である。
【図8】本発明に係る振動低減装置を備えた往復機械(試験機)の要部斜視図である。
【図9】本発明に係る振動低減装置を備えた往復機械(試験機)の振動加速度の周波数応答を示す図であり、(a)はx軸方向の周波数応答を示し、(b)はy軸方向の周波数応答を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1.本発明の概要〕
以下に、本発明で考案した単一のスライダ・クランク機構を有する往復機械用バランサ装置の概要について図1に基づいて説明する。図1は、スライダ・クランク機構にて駆動される往復機械の原理を示す説明図である。
エンジン、ポンプ、空気圧縮機などスライダ・クランク機構10を用いた往復機械は、非常に多くの産業分野で利用されている。これらの往復機械は、往復直線運動を行う往復運動部15(スライダ;エンジンではピストンが相当する)、クランク軸12を中心として回転運動を行うクランク11、及び往復運動部15の往復直線運動をクランク11に伝達してクランク軸12を回転させるコネクティングロッド13(連接棒、以下、コンロッドと呼ぶ)から構成され、運転時には、これらの不釣合い慣性カを加振力として有害な振動や騒音が発生する。この不釣合い慣性力は、クランク軸12の回転と同期した一次成分以外に、クランク軸の1回転あたり偶数回変動する高次成分を有する。
自動車用の多気筒エンジンのように、複数個のスライダ・クランク機構が直列に連結された機械の場合には、各気筒のクランク回転角の位相をずらすことにより不釣合い慣性力の一次成分の釣合わせを行うことができ、振動を低減することができる。一方、単気筒エンジンのように1個のスライダ・クランク機構のみで構成される往復機械の場合は、一次及び高次不釣合い慣性力の釣合わせを行うことは困難である。一般的には、クランク回転軸中心と点対称の位置に適当な大きさのカウンタウェイト(釣合い重り)を取り付けて、一次振動を可能な限り小さくなるようにして調整している(部分釣合わせ)。
本装置は、単気筒エンジンのように1個のスライダ・クランク機構のみで構成される各種往復機械の一次、及び二次不釣合い慣性力の釣合わせを行うことができ、その結果、往復機械の一次、及び二次振動を除去することができる。本発明は、先に提案した装置(特開2009-222135号)に改良を加え、釣合わせ用バランサが発生する慣性力の特性を考慮して、バランサ装置を軽量化かつ小型化したことが特徴である。

【0012】
〔2.往復機械の不釣合い慣性力〕
ここでは図1に示すようなスライダ・クランク機構10を考える。クランク軸は、一定の角速度ωで回転しているものとする。理解を容易化するため、図1に示すようにO-x,y軸を設定し、クランク回転軸をI軸と呼ぶ。以下の説明における変数の定義は以下のとおりである。
:往復運動部(ピストン、ピストンピンなど)の質量
:コネクティングロッド(コンロッド)の質量
:クランク部(クランク軸まわりの回転運動部)の質量
r :クランクアームの長さ
:クランク部重心の回転半径
l :コネクティングロッド(コンロッド)の長さ
a :コンロッド重心~ピストンピンの距離
b :コンロッド重心~クランクピンの距離
また、a+b=lの関係がある。往復運動部の質量mはピストンピンの中心(x,0)に、コンロッドの質量mは(x,y)に、クランク部の質量mは(x,y)にそれぞれ集中しているものとする。
クランク11、コンロッド13、往復運動部15は、それぞれ原点O回りの回転運動、揺動運動+往復運動、x方向の往復運動を行う。なお、x軸は往復運動部15の重心の移動経路及びその延長線上に設定されている。この運動によって、往復機械本体には、次の数式(1)のような不釣合い慣性力が発生し、この力がクランク軸支持部などを通して往復機械自体に有害な振動を発生する。

【0013】
【数1】
JP0005831869B2_000002t.gif

JP0005831869B2_000003t.gifここで、


【0014】
【数2】
JP0005831869B2_000004t.gif

JP0005831869B2_000005t.gif
JP0005831869B2_000006t.gif

【0015】
不釣合い力fの第1添字は、不釣合い慣性力の分力の方向、第2添字は不釣合い慣性力の回転速度の次数である。すなわち、fx,1、fy,1は、それぞれ不釣合い慣性力のx、y軸の方向分力の一次成分、fx,2は不釣合い慣性力のx軸の方向分力の二次成分、fx,nはx軸の方向分力のn次成分である。数式(1)からわかるように、図1のスライダ・クランク機構を有する往復機械において、y方向には、クランク回転角速度ωと同期した一次成分の加振力のみが発生する。一方、x方向には、一次成分以外にクランク回転角速度ωの偶数倍2ω、4ω、…の加振力が発生する。この加振力は、次数が大きくなるにしたがい、その大きさが急激に小さくなる。したがって、一次と二次成分の不釣合い慣性力を釣合わせれば、往復機械の振動は大幅に低減できる。

【0016】
〔3.一次振動の除去〕
本発明の振動低減装置の概略図を図2に示す。まず、一次振動の除去について説明する。図2に示すように、O点に関してコンロッド13と反対の位置にカウンタウェイト21をクランク軸12に取り付ける。カウンタウェイト21の質量をM、その重心の回転半径をRとする。
単気筒エンジンでは、x、y方向に均等な大きさの不釣合い量

【0017】
【数3】
JP0005831869B2_000007t.gif

JP0005831869B2_000008t.gif
が現れるようにカウンタウェイトの修正量Mを調整していることが多い(部分釣合せ)。

【0018】
本発明では、カウンタウェイトの修正量の大きさM(MとRの積)を調整し、不釣合い量のy方向成分を完全に釣合わせる。このため、カウンタウェイト21の重心を、クランク軸12を間に挟んでクランク11の反対側に配置する。カウンタウェイト21の回転数はクランク11の回転数と同一であり、カウンタウェイト21の位相は、クランク11の位相に対してπずらしたものとする。不釣合い量のy方向成分を完全に釣合わせるためには、カウンタウェイトの修正量(MとRの積M)を次式のように設定すればよい。

【0019】
【数4】
JP0005831869B2_000009t.gif

このカウンタウェイトの設置により、x方向の加振力(一次成分)は、

【0020】
【数5】
JP0005831869B2_000010t.gif

と変化する。すなわち、往復機械の発生する加振力(数式1)は、次式となる。

【0021】
【数6】
JP0005831869B2_000011t.gif

JP0005831869B2_000012t.gif
ここに、

JP0005831869B2_000013t.gifは往復機械とカウンタウェイトにより発生するx方向の加振力の合力一次成分の大きさであり、次式で表される。

【0022】
【数7】
JP0005831869B2_000014t.gif

【0023】
次に、上式の

JP0005831869B2_000015t.gifを除去するため、2本の一次釣合いおもり(一次バランスウェイト、以後「一次バランサ」と呼ぶ)23、23’を設置する。質量が同じである2つの一次バランサ23、23’は、x軸に関して対称であるII、II’軸(バランサ回転軸)まわりにそれぞれ回転するように設置する。この2つの一次バランサ23、23’は、各バランサ回転軸II、II’を中心とした円軌道に沿って、互いに逆回転する機構とする。x軸を基準として、クランク11の回転角がωtの場合、II、II’軸まわりに回転する一次バランサ23、23’の位相は、それぞれπ-ωt、π+ωtとする。一次バランサ23、23’の質量をM、II、II’軸から一次バランサ23、23’の重心までの半径をRとすると、各バランサが発生する慣性力はMωであり、図示の位置における2つの一次バランサの発生する慣性力(遠心力)のx方向分力は、

【0024】
【数8】
JP0005831869B2_000016t.gif

となる。一方、y方向分力は

【0025】
【数9】
JP0005831869B2_000017t.gif

であり、一次バランサによるy方向分力は互いに相殺する。
数式(8)のx方向分カの大きさ2Mωを数式(6)の不釣合い力

JP0005831869B2_000018t.gifと等しくするようにM、Rの大きさを調整すれば、x方向の加振力は完全に除去することができる。すなわち、

【0026】
【数10】
JP0005831869B2_000019t.gif
数式(7)、(10)から、1つの一次バランサの修正量は、次のようにすればよい。(これを1対2本使用する)

【0027】
【数11】
JP0005831869B2_000020t.gif

以上のように一次不釣合い慣性力を釣合わせるには、MとRの積M(修正量)の大きさを数式(11)を満足するように調整すればよい。一次不釣合い慣性力は、他の高次不釣合い慣性力に比較して最も大きいので、振動低減装置を軽量化するためには、Rを極力大きくし、Mを小さくすることが望ましい。本発明では、後述の図4乃至図6に示すように、一次バランサとして中空円筒型のシャフトを用い、一次バランサの重心の回転半径Rを大きくし、Mを小さくする構造として軽量化を図っている。

【0028】
〔4.二次振動の除去〕
〔3.一次振動の除去〕で述べたように一次振動を除去できれば、数式(1)[または数式(6)]からわかるように、二次不釣合い力はx方向のみにおいて発生し、y方向の不釣合い慣性力は発生しない。
このx方向の二次不釣合い力fx,2を除去するため、クランク回転数の2倍の速度で、かつ互いに逆方向に回転する2本の二次バランサ25、25’(二次バランスウェイト、図2参照)を使用する。二次バランサ25、25’は、一次バランサ23、23’と同一のバランサ回転軸II、II’まわりに、つまり、バランサ回転軸II、II’を中心とした円軌道に沿って回転する。二次バランサの位相は、それぞれπ+2ωt、π-2ωtとする。各二次バランサの質量をM、二次バランサの重心の回転半径をRとする。一次バランサと同様に、二次バランサの慣性力のy方向成分は相殺して零となり、x方向成分のみが残る。
すなわち、

【0029】
【数12】
JP0005831869B2_000021t.gif

【0030】
【数13】
JP0005831869B2_000022t.gif

このx方向成分Px,2を式(6)の二次の不釣合いのy方向と釣合わせれば、二次成分の加振力が除去できる。すなわち、

【0031】
【数14】
JP0005831869B2_000023t.gif

JP0005831869B2_000024t.gif
となるようにMとRの大きさを調整する。すなわち、数式(2)、(13)から、一つの二次バランサの修正量M

【0032】
【数15】
JP0005831869B2_000025t.gif

とする(これを1対2本使用する)。このx方向の二次不釣合い力fx,2は、一次不釣合い慣性力に比較してかなり小さい。それを除去する修正量(M)も小さいため、Mの大きさはともに小さくてよい。このため、二次バランサ25、25’は、中空円筒型の一次バランサ23、23’内で回転するように設置する(図4及び図5参照)。また、二次バランサ25、25’は、円柱のシャフトを面取り加工して、重心をバランサ回転軸II、II’から偏心させる(図7参照)。このような構造とすることによって、振動低減装置の小型化かつ軽量化を図ることができる。
なお、上記一次バランサと二次バランサは、全て同一平面上、且つ、各バランサをx軸に対称となるように設置しているため、これら各バランサによる慣性力のモーメントと、スライダ・クランク機構がもつ不釣り合い慣性力との慣性モーメントは発生しない。

【0033】
〔5.バランサ駆動方法〕
図3は、〔3.一次振動の除去〕、〔4.二次振動の除去〕で述べた一次、二次それぞれ2本のバランサを回転させる機構の一例である。図3に示すようにバランサ駆動用歯車列30(駆動力伝達機構)は歯車列であり、内歯車及び外歯車を有し、外歯車同士が噛合し、且つ第一バランスウェイトと一体回転する一対のリングギヤGl、Gl’と、各リングギヤGl、Gl’の内歯車との歯数比が2:1である外歯車を有し、且つ各第二バランスウェイトと一体回転するサンギヤG2、G2’と、各リングギヤGl、Gl’の内歯車及び各サンギヤG2、G2’の外歯車と夫々噛合して自転する位置固定(軸固定)アイドラギヤG3、G3’と、を備えている。

【0034】
リングギヤGl、Gl’は一次バランサとともに一体回転し、サンギヤG2、G2’は二次バランサとともに一体回転する。リングギヤGl、G1’は外周に外歯車、内周に内歯車をもち、サンギヤG2、G2’は外歯車をもつ。また、G3、G3’は回転数調整用のアイドラギヤである。
リングギヤGlの内歯車の歯数とアイドラギヤG3の歯数を4:1、サンギヤG2とアイドラギヤG3の歯数を2:1とする。この歯数比は一例であって、リングギヤGlとサンギヤG2(又はリングギヤG1’とサンギヤG2’)の歯数比が2:1となっていればよく、アイドラギヤG3、G3’の歯数はいくつでもよい。
往復機械のクランク軸の回転を何らかの方法でリングギヤG1に伝えれば、リングギヤG1とG1’の外歯車同士の噛み合い(噛合)によって、2つの一次バランサは、クランク軸と同じ回転数で回転し、互いに逆方向に回転する。さらに、リングギヤG1→アイドラギヤG3→サンギヤG2の歯車列の噛み合いによって、サンギヤG2はクランクの回転数の2倍の回転数で回転する。また、サンギヤG2’は、サンギヤG2と逆方向かつクランクの回転数の2倍の回転数で回転する。なお、本発明においては、アイドラギヤG3、G3’の回転軸の位置を固定し、それぞれ自転させる。

【0035】
以上の説明はバランサ駆動方法の一例であって、リングギヤGl、Gl’がクランク軸と同一の回転数で回転するならば、リングギヤGl、サンギヤG2,アイドラギヤG3のどの歯車を駆動歯車としてもよい。また、本説明では、バランサ回転軸II、II’をクランク軸12の下に配置しているが、バランサ回転軸II、II’は、x軸に関して対称の位置であればどこに配置してもよい。

【0036】
〔6.高次振動〕
スライダ・クランク機構では、4次以上の高次不釣合い慣性力(数式(1)のfx,n(n=4,6,8…))も発生するが、これらの高次不釣合い慣性力は、一次と二次不釣合い慣性力に比較して非常に小さいため往復機械の運転時に発生する振動は特に問題とならないため、本発明においては特に考慮しないこととする。

【0037】
〔7.振動低減装置の構造〕
製作した振動低減装置について、図4乃至7に基づいて説明する。図4は、振動低減装置の斜視図である。図5は、振動低減装置の上面側断面図である。図6は、一次バランスウェイトの斜視図である。図7は、二次バランスウェイトの斜視図である。
図示する振動低減装置20は、x軸(スライダの重心移動経路の延長線)に対して対称位置に配置されて、それぞれ一次バランサ23、23’と二次バランサ25、25’とが同一回転軸まわりに相対回転可能に組み合わされた2つのバランスウェイト機構27、27’と、ベアリングを備えて各バランスウェイト機構27、27’の軸方向両端部を回転自在に支持するハウジング29(ベース部材)と、各バランスウェイト機構27、27’の軸方向一端部に配置されたバランサ駆動用歯車列30と、ベアリングを備えて、各アイドラギヤG3、G3’を軸位置固定のまま回転自在に支持(軸支)するハウジング31と、二次バランサ25と一体回転し、クランク軸の回転を伝達する従動側タイミングプーリ33と、を備えている。なお、カウンタウェイト21は、クランク軸12に取り付けられるため、この図には図示されていない。

【0038】
各ウェイトの構成は以下の通りである。
カウンタウェイト21(図8参照)は半円板状であり、クランク軸12を間に挟んでクランク11の反対側に連接されている。数式(4)を満たすように、質量M及び重心の回転半径Rを設定する。また、重心位置をクランク11の重心に対してクランク回転軸Iを間に挟んだ反対側に設定することにより、重心位置がクランク11の重心に対して位相差πを生ずるようにする(図2参照)。
一次バランサ23は、バランサ回転軸IIを回転軸とする中空円筒形のシャフト35(中空筒状部材)と、シャフト35の外周に固定された半円筒形のおもり37と、を備え、重心位置をII軸から外径方向にずらした構成となっている。数式(11)を満たすように、質量M及び重心の回転半径Rを設定する。シャフト35が中空状であればよく、軸方向と交差する方向の断面が円形状や、多角形状、或いはその他の形状であっても良い。
二次バランサ25は、バランサ回転軸IIを回転軸とする非中空の円柱状部材(軸状部材)の一部を切り欠くことにより、重心位置をバランサ回転軸IIから外径方向にずらした構成となっている。本実施形態においては、軸方向に直交する方向の断面が半円形状となるように円柱状部材の一部を切り欠いている。数式(15)を満たすように、質量M及び重心の回転半径Rを設定する。なお、上記円柱状部材の軸方向と交差する方向の断面はどんな形状であってもよい。また、数式(15)を満たすことができれば、上記円柱状部材が非中空状であっても中空状であってもよい。
一次バランサ23と二次バランサ25の重心位置が、クランク11の重心の位相ωtに対して、それぞれπ±ωt、π±2ωtとなるように、バランサ駆動用歯車列30の各ギヤを組み付けるとともに、従動側タイミングプーリ33とクランク軸12とを接続する。

【0039】
バランスウェイト機構27において、修正量Mの小さい二次バランサ25は、質量Mも回転半径Rも、一次バランサ23よりも小さくて済む。従って、上述のように一次バランサ23を空洞にし、その中に二次バランサ25を設置し、一次バランサ23の中で二次バランサ25が回転するような機構を採用した。各バランスウェイト機構27をx軸に対称に一対並べ、一次バランサ23同士、二次バランサ25同士ともに互いに逆回転するように歯車列を採用し、リングギヤG1は一次バランサ23、サンギヤG2は二次バランサ25の回転を行う設計を行った。以上により、〔2.往復機械の不釣合い慣性力〕乃至〔4.二次振動の除去〕にて説明した振動低減の理論に沿った運動を一次バランサ23及び二次バランサ25が行い、スライダ・クランク機構の振動を低減する。上記の機構を採用することにより、従来の振動低減装置よりも大幅な小型化及び軽量化を実現することができた。

【0040】
〔8.往復機械の構成〕
図8は、本発明に係る振動低減装置を備えた往復機械(試験機)の要部斜視図である。試験機となる往復機械1は、スライダ・クランク機構10と、スライダ・クランク機構10の下方に設置された振動低減装置20と、を備え、スライダ・クランク機構10及び振動低減装置20は、ベースプレート41(ベース部材)上に設置されている。スライダ・クランク機構10のクランク軸12の両端部は、ベアリングを備えたハウジング17(ベース部材)によって回転自在に支持されている。振動低減装置20のハウジング29上にハウジング17が直接固定されており、スライダ・クランク機構10の振動がハウジング17、29を介して振動低減装置20に伝わるようになっている。また、クランク軸12には、駆動側タイミングプーリ51(駆動力伝達機構)が相対回転不能に取り付けられ、駆動側タイミングプーリ51及び従動側タイミングプーリ33(駆動力伝達機構)にはタイミングベルト(不図示、駆動力伝達機構)が巻き掛けられている。クランク軸12の回転が、従動側タイミングプーリ33を介して二次バランサ25に回転数を2倍にして伝達される。

【0041】
〔9.運転実験~運転及び実験方法〕
実際の試験には図8に示す試験機(往復機械1)を用い、概略、以下のような構成にて行った。定盤に固定した架台に防振ゴムを設置し、振動低減装置20を組み込んだ試験機(往復機械1)と駆動用モータとダミーモータとをベースプレート41に取り付け、ベースプレート41を防振ゴム上に固定する。駆動用モータとダミーモータは、往復機械1を間に挟んで、図中左右両側にそれぞれ配置した。これにより、コンロッド13が運動する面内(x-y平面内)での振動がほぼ実現するように工夫した。試験機を固定する架台は等辺山形鋼と溝形鋼を溶接接合した正方400[mm]ボックス型ラーメン構造であり、また試験機と架台間に取り付けた防振ゴムのバネ定数は、y方向が9.9[N/mm]、x方向が55[N/mm]である。
実験は、試験機に対して、カウンタウェイト21のみを取り付けた場合、振動低減装置20による一次成分釣り合わせを行った場合、そして二次成分までの釣り合わせを行った場合について、機械全体を支持するベースプレート41の、x及びy方向の振動加速度の周波数応答を計測する。なお、「一次成分釣り合わせを行った場合」とは、カウンタウェイト21と一次バランサ23を装着したことを意味する。また、「二次成分までの釣り合わせを行った場合」とは、カウンタウェイト21と一次バランサ23と二次バランサ25とを装着したことを意味する。モータの運転周波数域は4~30[Hz]で、その1[Hz]ごとの振動加速度を、共振点付近では0.5[Hz]ごとの振動加速度をx軸と交わるベースプレート上に取り付けた加速度ピックアップ(B&K社製4501型)によって計測していく。

【0042】
〔10.運転実験~実験結果〕
図9は、試験機のx軸方向及びy軸方向の振動加速度の周波数応答を示す図である。同図(a)はx軸方向の周波数応答を示し、(b)はy軸方向の周波数応答を示している。図9の縦軸は振動加速度a[m/s2]、横軸はモータの運動周波数ω[Hz]である。両方向の振動加速度は、共に共振点を除いて振動加速度と運動周波数の相関関係が見られることから、振幅が運転周波数の2乗に比例して大きくなる不釣り合い力による周波数応答の傾向が確かめられる。
図9の(a)に示すx軸方向の周波数応答については、カウンタウェイトのみを取り付けただけでは13.5[Hz]、23[Hz]で共振を確認できた。一次バランサを取り付けた場合、これらの共振点付近での振動低減を確認することができた。さらに一次及び二次バランサを取り付け、二次成分まで釣り合わせた場合は23[Hz]付近を含め、高い回転数域で一次バランサのみよりも高い振動低減効果を確認することができた。運転領域全体で共振点が無くなり、回転数ωの増加と共に緩やかに振動加速度が大きくなっていることがわかる。
次に図9の(b)に示すy軸方向の周波数応答については、(a)の5倍のスケールで表示したが、カウンタウェイトによって往復機械の持つy軸方向の不釣り合い慣性力は打ち消されており、一次及び二次バランサは影響しないため、全体的にそれぞれ大きな差は確認できない。18[Hz]付近は試験機のy軸方向の固有振動数であることから、幾分か加速度が高くなっている。カウンタウェイトのみを取り付けた場合の23[Hz]は、x軸方向の共振に誘発されたものと考えられる。

【0043】
〔11.運転実験~考察〕
運転実験に使用した試験機は簡易に作成されたものであり、本発明に係る理論を完全に再現できるような構造・機構になっていない。具体的には、以下のような構造上・機構上の問題点を有している。
[1]試験機としては、スライダ(ピストン)の重心が、ピストンピンの位置になるように調整しておく必要がある。その理由は、理論式は、スライダ(ピストン)の重心がピストンピンの位置にあることを前提に定式化されているためである。しかしながら、本試験機では、スライダ(ピストン)の重心位置がそのように調整できていないため、コンロッドの揺動運動に起因してスライダ(ピストン)上部の丸棒部にピストンピンまわりの回転運動が発生し、試験機の上部(スライダ部)に加振力が発生し、その結果、若干ではあるが往復機械の振動を誘発している。そのため、実験結果を示す図9には、完全な状態で実験したものとは異なる結果が現れている。特に図9(b)にその傾向が見られ、水平方向の振動が低減していない。これに比較し、図9(a)における垂直方向の振動は、かなり低減している。
[2]試験機では、スライダ(ピストン)を直接駆動しにくいため、クランク回転軸中心を電動モータで回転駆動した。電動モータは装置の片側(図8中、往復機械1の左側)のみに配置されているため、このままでは装置全体に質量のアンバランスを生じる。そこで、装置全体の質量のバランスをとるため、反対側(図8中、往復機械1の右側)にも、同じ質量のダミーモータを設置した。しかし、ダミーモータとクランク回転軸とは連結していないため、その部分の質量が考慮されていないなど、装置全体の重心位置がx軸から若干ずれている。このため試験機には、重心まわりのピッチング(y軸まわりの回転振動)が発生している。

【0044】
[3]スライダ(ピストン)を支えるため、試験機の上部に4本脚で支えた平板構造(不図示)を設けた。しかし、この構造の剛性は十分でない。このため、上記[1]で述べたスライダ部の加振力により、装置上部に振動が発生し、その結果、試験機全体の振動が発生している。この影響が少なからず図9の結果に現れていると考えられる。
[4]また、装置全体の基部を、やわらかい弾性体(防振ゴム)で支えたが、これは装置全体が発生する振動を極力阻害しないためであり、この柔軟支持の採用により、このわずかな加振力に起因して発生する振動を計測できるようにした。
[5]また、試験機全体の重心位置も、x軸(スライダの垂直運動線)に完全に一致していない。これに起因して、y軸まわりの回転振動(ピッチング)が起きている可能性がある。純粋にxy平面内の面内振動のみが起きているか否かの確認はしていない。
このように上記実験結果は、試験機の不備から発明の理論を完全に裏付けるものではないが、傾向として、あるいは、理論の正しさについて裏付けるものではあると考えられる。

【0045】
〔12.効果〕
機械の共振を避ける最も一般的な方法として、往復機械の支持部防振ゴムばね定数や、機械の質量の調節により一次固有振動を運転振動数域外にはずす手法が用いられる。
しかし、往復機械の場合には、たとえ一次固有振動数を運転振動数域外の高振動数域側にはずしたとしても、加振力に二次成分が含まれているため、この加振力による二次の共振が運転振動数域で発生することとなる。
本発明では、単一のスライダ・クランク機構をもつ往復機械から発生する不釣り合い慣性力による振動の一次成分及び二次成分について、3種のウェイトを用いて低減する。特に、二次バランサを用いて二次成分まで釣り合わせて、二次加振力を除去するため、二次共振の発生をも防止できる。このため、往復機械の防振設計に大きな自由度を与えることができ、往復機械の振動低減を実現することが可能となる。
さらに、一次バランサ内に二次バランサを回転自在に収容する機構を採用することにより、体積、重量共に大きく低減することができた。
また、本発明に係る振動低減装置を単一のスライダのみをもつ往復機械に取り付けるだけで、大幅な振動低減が可能となる。本発明に係る振動低減装置は、非常に軽量化且つ小型化することができるため、エンジンを搭載したチェーンソーのような手持ち機械に対しても搭載することができる。手持ち機械に搭載した場合は手に伝達する振動を低減できるため、白蝋病などの発生の予防効果も期待できる。また、オートバイ用エンジンから発生する振動低減、ポンプの運転時の振動低減など、産業界で使用されている様々な往復機械にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…往復機械、10…スライダ・クランク機構、11…クランク、12…クランク軸、13…コネクティングロッド(コンロッド)、15…往復運動部、17…ハウジング、20…振動低減装置、21…カウンタウェイト、23、23’…一次バランサ(一次バランスウェイト)、25、25’…二次バランサ(二次バランスウェイト)、27、27’…バランスウェイト機構、29…ハウジング、30…バランサ駆動用歯車列、31…ハウジング、33…従動側タイミングプーリ、35…シャフト、37…おもり、41…ベースプレート、51…駆動側タイミングプーリ、G1、G1’…リングギヤ、G2、G2’…サンギヤ、G3、G3’…アイドラギヤ、I軸…クランク回転軸、II軸、II’軸…バランサ回転軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8