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明細書 :人体無線網用通信システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5742053号 (P5742053)
公開番号 特開2013-005023 (P2013-005023A)
登録日 平成27年5月15日(2015.5.15)
発行日 平成27年7月1日(2015.7.1)
公開日 平成25年1月7日(2013.1.7)
発明の名称または考案の名称 人体無線網用通信システム
国際特許分類 H04B  13/00        (2006.01)
FI H04B 13/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2011-131173 (P2011-131173)
出願日 平成23年6月13日(2011.6.13)
審査請求日 平成26年5月26日(2014.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】王 建青
審査官 【審査官】佐藤 敬介
参考文献・文献 特開2009-268016(JP,A)
特開2010-273115(JP,A)
特開2004-364009(JP,A)
国際公開第2010/109698(WO,A1)
特表2005-527337(JP,A)
調査した分野 H04B 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
人体表面伝送を用いてオン・ボディ信号を送信するオン・ボディ送信手段と、
人体内部伝送を用いてイン・ボディ信号を送信するイン・ボディ送信手段と、
前記オン・ボディ信号および前記イン・ボディ信号を受信する受信手段と、からなる人体無線網用通信システムであって、
前記オン・ボディ送信手段は、1~100MHzの周波数帯のパルスを用いてインパルス・ラジオ方式で送信を行い、
前記イン・ボディ送信手段は、UWBローバンドの周波数帯のパルスを用いてインパルス・ラジオ方式で送信を行うことを特徴とする人体無線網用通信システム。
【請求項2】
前記オン・ボディ送信手段と前記イン・ボディ送信手段とにより1つの送信機を構成しており、この送信機は、前記オン・ボディ送信手段と前記イン・ボディ送信手段のいずれで用いるかを切り替える切替手段を有することを特徴とする請求項1に記載の人体無線網用通信システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、医療・ヘルスケアのための人体無線網用通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来に伴い、各種の人体装着或いは埋込み型生体センサーに通信機能を持たせ、それらの生体情報を医療・ヘルスケアに活用する人体無線網の確立への期待が高まっている。
【0003】
この時、体内生体センサーからの体外への伝送は、例えばカプセル型内視鏡(特許文献1参照)の場合に毎秒数十メガビットの高速伝送が必要である一方、体表での脈拍、血圧などは、毎秒数キロビット以下の低速伝送が十分である。現在先行しているヘルスケア分野への人体無線網の適用は主にBluetooth、Zigbee或いは人体通信技術を利用している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-301967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、医療・ヘルスケア用人体無線網の構成を想定すると、毎秒数キロビットから毎秒数十メガビットまでの幅広い伝送速度が要求され、Bluetooth、Zigbee或いは人体通信だけでの一括対応が難しい。また、医療用インプラント通信機(MICS)は400MHz帯を使用しているため、現状では体内からの毎秒数十メガビットのリアルタイム画像伝送が困難である。このために、医療・ヘルスケアに特化した人体無線網用通信機の開発が必要である。
【0006】
本発明は、人体表面伝送(オン・ボディ)と人体内部伝送(イン・ボディ)のそれぞれの特徴を生かし、毎秒数キロビットから毎秒数十メガビットまでの幅広い伝送速度が一括で対応できる人体無線網用通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
人体表面伝送を用いてオン・ボディ信号を送信するオン・ボディ送信手段と、
人体内部伝送を用いてイン・ボディ信号を送信するイン・ボディ送信手段と、
前記オン・ボディ信号および前記イン・ボディ信号を受信する受信手段と、からなる人体無線網用通信システムであって、
前記オン・ボディ送信手段は、1~100MHzの周波数帯のパルスを用いてインパルス・ラジオ方式で送信を行い、
前記イン・ボディ送信手段は、UWBローバンドの周波数帯のパルスを用いてインパルス・ラジオ方式で送信を行うことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、オン・ボディの通信では、人体自身が伝送路となる人体通信技術を流用し、高周波(HF)帯パルスを用いてインパルス・ラジオ(IR)方式で伝送を行う。このとき、周波数を1~100MHz(好ましくは10~50MHz)の範囲に抑えれば、低伝送損失に加え、外部への放射も極めて低く、高秘匿性の利点がある。
【0009】
また、体内から体表へのイン・ボディの通信では、高速、大容量、耐マルチパス性の超広帯域(UWB)の周波数帯(国よって多少異なるが、日本では3.4~4.8GHz)のパルスを用いて伝送を行う。このとき、UWBローバンドにおいてIR方式を採用することで、人体組織におけるGHz帯の減衰を緩和するとともに、人体通信で困難なリアルタイムの画像伝送を可能とする。
【0010】
このように、オン・ボディ伝送ではHF帯を用いたIR方式、イン・ボディ伝送ではUWBローバンドを用いたIR方式を採用するデュアルモード通信システムが本発明の特徴である。このとき、オン・ボディ通信にHF帯人体通信技術を採用することにより、BluetoothやZigbeeに比べ低伝送損失と高秘匿性という優位性、また、体内からのイン・ボディ通信に高速・大容量なUWB技術を採用することにより、人体通信やMICSの伝送速度で対応困難なカプセル内視鏡などのリアルタイム画像伝送が可能となる優位性を有する。
【0011】
特に、いずれの通信モードにおいても、搬送波を必要せず、パルスをそのまま伝送するIR変調方式の採用は大きな特徴であり、伝送速度の向上に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態における人体無線網用通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるオン・ボディ送信機の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるイン・ボディ送信機の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるデュアルモード受信機の構成を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態における送信パルスの形状を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるオン・ボディモード伝搬損距離特性を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるイン・ボディモード伝搬損距離特性を示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態におけるオン・ボディモードのビット誤り率を示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態におけるイン・ボディモードのビット誤り率を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態における送信機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態における人体無線網用通信システムの構成を示す。人体1表面にデュアルモード受信機2を設置し、人体表面に配置されたオン・ボディ送信機3と、人体内部に配置されたイン・ボディ送信機4からの両方の信号を受信・復調する。オン・ボディ送信機3は、HF帯オン・ボディ通信機能を有し、イン・ボディ送信機4は、UWBローバンドイン・ボディ通信機能を有する。

【0014】
図2にオン・ボディ送信機3の構成を示す。オン・ボディ送信機3は、オン・ボディ生体センサー5と、発振器6と、ガウス型帯域フィルタ7と、パルス位置変調器8と、電極9とから構成されている。

【0015】
オン・ボディ生体センサー5は、オン・ボディの生体情報を検出し、オン・ボディ送信データ、例えば血圧や心電図などディジタルデータを出力する。発振器6から出力される41MHzの正弦波は、20~60MHzの帯域を有するガウス型帯域フィルタ7で整形される。オン・ボディ生体センサー5からのオン・ボディ送信データは、パルス位置変調器8により、それの”1”と”0”をそれぞれガウス型帯域フィルタ7から出力されるパルス波形の位置と対応させることによってIR変調され、電極9から送信される。

【0016】
図3にイン・ボディ送信機4の構成を示す。イン・ボディ送信機4は、イン・ボディ生体センサー10と、発振器11と、ガウス型帯域フィルタ12と、パルス位置変調器13と、アンテナ14とから構成されている。

【0017】
イン・ボディ生体センサー10は、イン・ボディの生体情報を検出し、イン・ボディ送信データ、例えばカプセル内視鏡や埋め込み型心臓ペースメーカーからのディジタルデータを出力する。発振器11から出力される4.1GHzの正弦波は、3.4~4.8GHzの帯域を有するガウス型帯域フィルタ12で整形される。イン・ボディ生体センサー10からのイン・ボディ送信データは、パルス位置変調器13により、それの”1”と”0”をそれぞれガウス型帯域フィルタ12から出力されるパルス波形の位置と対応させることによってIR変調され、アンテナ14から送信される。

【0018】
オン・ボディ送信機3から送信されたパルス(オン・ボディ信号)およびイン・ボディ送信機4から送信されたパルス(イン・ボディ信号)のそれぞれは、人体自身が伝送路となって、伝送される。図5に、正弦波で変調され送信されたガウス型パルス波形を示す。なお、図5の時間軸は通信モード(すなわち、オン・ボディ通信時のオン・ボディモード、イン・ボディ通信時のイン・ボディモード)に依存する。パルス幅は、それぞれオン・ボディモードの50nsとイン・ボディモードの2.1nsとなる。

【0019】
このようにして伝送されたパルスは、デュアルモード受信機2にて受信される。図4にデュアルモード受信機2の構成を示す。デュアルモード受信機2は、オン・ボディモードおよびイン・ボディモードそれぞれのモードの帯域フィルタを有し、その通過信号に対して相関検波を行うことで情報を復調する。なお、相関検波用のテンプレート信号の発生法は送信時と同じである。

【0020】
まず、電極・アンテナ15で受信されるオン・ボディ信号は、20~60MHzの帯域を有するフィルタ16を通過し、発振器17、分周器18、ガウス型帯域フィルタ19で生成されるテンプレート信号と乗算器20を用いて乗算演算される。その演算結果に対し、積分器21を用いて低周波成分を抽出し、判別器22を用いて“1”,“0”判定を行い、情報データを復調する。

【0021】
一方、電極・アンテナ15で受信されるイン・ボディ信号は、3.4~4.8GHzの帯域を有するフィルタ23を通過し、発振器17とガウス型帯域フィルタ24で生成されるテンプレート信号と乗算器25を用いて乗算演算される。その演算結果に対し、積分器26で低周波成分を抽出し、判別器27を用いて”1”,”0”判定を行い、情報データを復調する。

【0022】
図6に、解剖学的人体数値モデルに対して電磁界シミュレーションを実施し、得られたオン・ボディモードでの伝搬損距離特性を示す。距離に対しての減衰は緩やかで、減衰指数が1.8であり、自由空間のそれ(2.0)に比べて小さいため、空気中での伝送よりもこの周波数帯における人体表面での伝送は損失が小さいことが伺える。

【0023】
図7に、電磁界シミュレーションによって得られた消化器官から体外へのイン・ボディ伝搬損距離特性を示す。伝送損失はオン・ボディモードに比べて大きいが、平均として40dBから80dBの間にあり、復調可能なレベルである。

【0024】
図8と図9に、10-4のビット誤り率を目安としたときの所要送信電力と伝送速度との関係をオン・ボディモードの場合とイン・ボディモードの場合それぞれについて示す。オン・ボディモードにおける-25dBmの最大許容電力に対して10Mbpsの伝送速度、イン・ボディモードにおける-10dBmの最大許容電力に対して少なくても20Mbpsの伝送速度が得られている。

【0025】
上記した実施形態によれば、人体表面伝送と人体内部伝送のそれぞれの特徴を生かした、数kbpsから数十Mbpsまでの幅広い伝送速度が一括で対応できる、医療・ヘルスケアのための人体無線網用通信システムを提供することができる。

【0026】
なお、医療・ヘルスケア用において、オン・ボディ送信データとイン・ボディ送信データのいずれも常時に送信している状況にない場合には、デュアルモード受信機2はモードを切り替えて使用されるようになっていてもよい。この場合、モードの切替えは、送信側からモードに応じた帯域を有する送信要求信号を送出し、デュアルモード受信機2側で、帯域フィルタ16と23の通過信号の有無を検出することで行う。
(第2実施形態)
図10に本発明の第2実施形態に係る送信機の構成を示す。この実施形態は、図2に示したオン・ボディ送信機3と図3に示したイン・ボディ送信機4とを1つの送信機で構成したものとなっている。すなわち、この実施形態に係る送信機は、オン・ボディ生体センサー5と、ガウス型帯域フィルタ7と、パルス位置変調器8と、イン・ボディ生体センサー10と、ガウス型帯域フィルタ12と、パルス位置変調器13と、発振器11と、切替機器28と、分周器29と、電極・アンテナ30とから構成されている。

【0027】
この実施形態の場合、オン・ボディモードとイン・ボディモードのいずれか一方でのみ用いるようにするために、切替器(切替手段)28を備え、さらにオン・ボディ送信データの送信時に用いる41MHzの正弦波を得るために、発振器11から出力される4.1GHzの正弦波を41MHzの信号に変換する分周器29を備えている。つまり、この実施形態の場合、オン・ボディ送信機として用いるときには、発振器11からの信号を分周器29にのみ供給し、イン・ボディ送信機として用いるときには、発振器11からの信号をガウス型帯域フィルタ12にのみ供給するように切替器28を設定する。

【0028】
このようによれば、1つの送信機で、オン・ボディ送信機とイン・ボディ送信機のいずれかで使用することができる。
(その他の実施形態)
・パルス変調として、On-Off Keying(OOK)方式を採用するようにしてもよい。すなわち、情報“1”のときはパルスを送信し、情報“0”のときはパルスを送信しない。受信するときは、包絡線検波を用い、パルスの振幅或いはエネルギーの有無を検出することで復調する。

【0029】
・受信機としては、デュアルモード受信機でなく、イン・ボディ信号を受信する受信機と、オン・ボディ信号を受信する受信機とを別々にしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 人体、
2 デュアルモード受信機
3 オン・ボディ送信機
4 イン・ボディ送信機
5 オン・ボディ生体センサー
6 発振器
7 ガウス型帯域フィルタ
8 パルス位置変調器
9 電極
10 オン・ボディ生体センサー
11 発振器
12 ガウス型帯域フィルタ
13 パルス位置変調器
14 アンテナ
15 電極・アンテナ
16 帯域フィルタ
17 発振器
18 分周器
19 ガウス型帯域フィルタ
20 乗算器
21 積分器
22 判別器
23 帯域フィルタ
24 ガウス型帯域フィルタ
25 乗算器
26 積分器
27 判別器
28 切替器
29 分周器
30 電極・アンテナ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9