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明細書 :熱電変換材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5773483号 (P5773483)
公開番号 特開2013-008902 (P2013-008902A)
登録日 平成27年7月10日(2015.7.10)
発行日 平成27年9月2日(2015.9.2)
公開日 平成25年1月10日(2013.1.10)
発明の名称または考案の名称 熱電変換材料
国際特許分類 H01L  35/20        (2006.01)
C22C  38/00        (2006.01)
C22C  27/02        (2006.01)
C22C  21/00        (2006.01)
FI H01L 35/20
C22C 38/00 304
C22C 27/02 103
C22C 27/02 101Z
C22C 21/00 N
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2011-141656 (P2011-141656)
出願日 平成23年6月27日(2011.6.27)
審査請求日 平成26年4月22日(2014.4.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】西野 洋一
【氏名】宮崎 秀俊
【氏名】田中 優
審査官 【審査官】長谷川 直也
参考文献・文献 特開2008-300465(JP,A)
国際公開第2007/108176(WO,A1)
特開2004-119648(JP,A)
特開2008-021982(JP,A)
国際公開第2003/019681(WO,A1)
高田健太郎, 外2名,非化学量論組成Fe2VAlの熱電特性に及ぼすTa置換の影響,日本金属学会講演概要,日本,2010年 9月25日,第147回大会,pp. 355
森 知之, 外2名,p型Fe2(V1-x-yTixTay)Al合金の熱電特性,日本金属学会誌,日本,2008年,Vol. 72, No. 8,pp. 593-598
調査した分野 H01L 27/16、35/00-37/04、
H02N 11/00、
C22C 21/00、27/02、38/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ホイスラー合金型結晶構造を有するFeVAl系の熱電変換材料において、Alの一部をTaにて置換したFeV(Al1-αTaαであって、0.03≦α≦0.15なる熱電変換材料。
【請求項2】
温度300K~600Kにおいて、ゼーベック係数が負であって、ゼーベック係数がピークとなる温度での絶対値が100(μV/K)以上である請求項に記載の熱電変換材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーとの相互変換が可能な熱電変換素子が知られている。この熱電変換素子は、p型およびn型の二種類の熱電変換材料から構成されており、この二種類の熱電変換材料を電気的に直列に接続し、熱的に並列に配置した構成とされている。この熱電変換素子は、両端子間に電圧を印加すれば、正孔および電子の移動が起こり両面間に温度差が発生する(ペルチェ効果)。一方、この熱電変換素子は、両面間に温度差を与えれば、同じく正孔および電子の移動が起こり、両端子間に起電力が発生する(ゼーベック効果)。このため、熱電変換素子を冷蔵庫やカーエアコン等の冷却用の素子として用いたり、ごみ焼却炉から生ずる排熱を利用した発電用の素子として使用することが検討されている。
【0003】
従来、熱電変換素子を構成する熱電変換材料として、金属間化合物が知られ、その中でもBiTeを主成分とする熱電変換材料が大きなゼーベック係数を有することにより古くから知られているが、一方、最近、BiTe系材料の難加工性あるいは高い原材料コストという欠点を補うため、ホイスラー合金型結晶構造を有するFeVAl系の金属間化合物の開発が行われるようになってきた。このFeVAl系熱電変換材料に関して、FeVAlを構成する一元素の少なくとも一部を他元素で置換することにより、室温あるいは室温よりやや高い、300~400Kでのゼーベック係数の絶対値が大きくなることが開示されている(特許文献1)。
【0004】
そして、被置換元素と置換元素の組み合わせにより総価電子数を変化させ、ゼーベック係数の符号を変える、すなわち、p型からn型に、あるいはn型からp型にすることができるとしている。そしてその表1には、数多くの被置換元素と置換元素の組み合わせが記載されている。具体的には、FeをPtあるいはCoで置換、VをMoあるいはTiで置換、AlをSi,Ge、あるいはSnで置換することが開示されている。より具体的には、AlをSiあるいはGeにて置換してゼーベック係数が正から負に変化し、その絶対値が大きくなっている。また、VをTiで置換しても、ゼーベック係数は正のままであるが、Moで置換するとゼーベック係数は正から負に変化し、その絶対値は大きくなっている。
【0005】
さらに、FeVAl系において、前記特許文献1と同様な元素置換により、熱電変換性能指数を決めるゼーベック係数以外の因子である熱伝導率あるいは電気抵抗率を室温で測定している。元素置換により熱伝導率および電気抵抗率が小さくなり、結果として室温付近での性能指数が大きくなることが開示されている(特許文献2)。
【0006】
一方、同じくFeVAl系において、AlをGaあるいはBで置換し、さらに化学量論組成からシフトさせた実施例につき、室温付近でのゼーベック係数、熱伝導率を開示している(特許文献3)。
【0007】
しかし、上記特許文献1~3では、室温より高い、すなわち400~700Kの中高温度域でのゼーベック係数、電気抵抗率等は開示されていない。そして、室温より高い温度で測定がなされている文献1においても、ゼーベック係数のピークは300~400Kであり、またピーク温度が高くなる可能性があるものの絶対値は小さい。以上より、500~700Kの温度域で大きなゼーベック係数を得ることが困難であった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4035572号公報
【特許文献2】特開2004-253618公報
【特許文献3】特開2004-119647公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、300~700Kの温度域で熱電変換材料を実用化することを目的とし、その温度域でゼーベック係数の大きく、かつ電気抵抗率の小さい熱電変換材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、FeVAl系の熱電変換材料において、Alの一部をTaにて置換することにより、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の熱電変換材料が提供される。
【0011】
[1]ホイスラー合金型結晶構造を有するFeVAl系の熱電変換材料において、Alの一部をTaにて置換したFeV(Al1-αTaαであって、0.03≦α≦0.15なる熱電変換材料。
【0012】
[2] 温度300K~600Kにおいて、ゼーベック係数が負であって、ゼーベック係数がピークとなる温度での絶対値が100(μV/K)以上である前記[1]に記載の熱電変換材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、300~700Kの温度域でゼーベック係数が大きく、かつ電気抵抗率が小さい熱電変換材料を提供することができる。これにより、特に700K以下の排熱を利用した発電用の熱電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明実施例1~4の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【図2】本発明実施例1~4のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
【図3】本発明実施例1~4、および比較例1~3の室温での熱伝導率の元素置換量依存性を示す図である
【図4】本発明実施例1~4、および比較例1~3の室温での熱電変換性能指数の元素置換量依存性を示す図である。
【図5】比較例1~3の電気抵抗率の温度依存性を示す図である。
【図6】比較例1~3のゼーベック係数の温度依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0016】
本発明の熱電変換材料は以下のようにして製造される。この製造方法は、上記熱電変換材料を製造可能な元素構成比率を有する原料混合物を用意する第1工程と、該原料混合物を真空中又は不活性ガス中にて溶融または気化した後、固化して熱電変換材料を得る第2工程とを有する。

【0017】
第2工程としては、例えば、原料混合物を真空中あるいは不活性ガス中においてアーク溶融等により溶融し、固化することによりインゴットを作成する。このインゴットを不活性ガスあるいは窒素ガス雰囲気中で機械的に粉砕する方法、溶湯アトマイズあるいはガスアトマイズによる方法、さらにはメカニカルアロイングという不活性ガスあるいは窒素ガス雰囲気中で原料混合物の圧着と破断を繰り返す方法等により、ほぼ均一粒径の紛体を得る。そして、このようにして得られた紛体をホットプレス法、HIP法(熱間静水圧成形法)、放電プラズマ焼結法、パルス通電法等により、焼結することができる。HIP法により紛体を焼結する場合、例えば、800℃で150MPaのアルゴンガスにて圧縮成形と焼結を同時に進行させ、ほぼ真密度で固化を行うことができる。また、p型あるいはn型の熱電変換材料を可及的に小さな結晶粒とするために、熱間圧延等の歪加工を行ったり、溶融した原料を急冷すること、等の方法が適宜採用される。

【0018】
そして、原料混合物を溶融固化した後、粉砕して得られた粉末をX線回折法によりX線回折測定を行う。一方、前記粉砕して得られた粉末をHIP法により焼結し、さらに切断等を行い、電気抵抗率の測定、ゼーベック係数の測定、熱伝導率の測定を各々所定のサイズにて行う。

【0019】
本発明のFeVAl系の熱電変換材料は、Alの一部をTaにて置換したFe2+x1+y(Al1-αTaα1+zであって、-1<x<1、-1<y<1、-1<z<1、0<α<1なる熱電変換材料である。電気抵抗率を小さく、熱伝導率を小さく、またゼーベック係数を大きくする観点から、αは0.01≦α≦0.15であることがより好ましく、0.03≦α≦0.12であることがさらに好ましい。

【0020】
また、本発明のFeVAl系の熱電変換材料は、Fe2+x1+y(Al1-αTaα1+zにおいて、-0.2≦x≦0.2、-0.2≦y≦0.2、-0.2≦z≦0.2であることがより好ましい。さらに、化学式当たりの総価電子数が23.2~24.8であることが好ましい(化学量論組成では総価電子数は24である)。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
化学量論組成FeVAlのAlの一部をTaにて置換することによる熱電変換特性に影響する因子の特性を調べた。純度99,99質量%の鉄(Fe)、同99.99質量%のアルミニウム(Al)、同99.9質量%のバナジウム(V)、そして同99.9%のTaをFeVAl0.97Ta0.03になるように計量し、さらに混合して原料混合物を得た。
【実施例】
【0023】
次に、この原料混合物をアルゴン雰囲気下でアーク溶解してボタン状のインゴットを作成した。均質なインゴットを得るため、前記インゴットを再溶解し、均質なインゴットを得た。溶解前後での質量変化は0.1%以下であり、溶解による質量変化は無視できる程度と仮定した。
【実施例】
【0024】
その後、このインゴットを5×10-3Pa以下の高真空中において、1273Kで48時間の均質化処理を行った後、短冊状、粉末、およびブロック形状の各測定形状に加工した。その後、真空中で1273K×1Hrの歪除去処理と673K×4Hrの規則化処理を行った。このようにして熱電変換材料を得た。
【実施例】
【0025】
<評価>
・ X線回折測定
得られた実施例1の熱電変換材料を紛末とし、粉末X線回折法によってX線回折測定を行った。この結果、実施例1の熱電変換材料はDO(L2)単相により構成されており、ホイスラー合金型の結晶構造を有していた。
【実施例】
【0026】
・ 電気抵抗率(比抵抗)の測定
実施例1の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、1.0mm×1.0mm×15mmの短冊状の試験片を得た。この試験片を直流四端子法にて、温度4.2~1000Kで電気抵抗率を測定した。
【実施例】
【0027】
測定の結果、電気抵抗率は400K付近でピークを有し、約500μΩcmであった。
【実施例】
【0028】
・ ゼーベック係数の測定
実施例1の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、0.5mm×0.5mm×5.0mmの短冊状の試験片を得た。そして、MMR-Technologies社製「SB100」を用いてゼーベック係数を100~700Kで測定した。
【実施例】
【0029】
測定温度とゼーベック係数の関係を図2に示す。ゼーベック係数は負であり、350K付近でピークを有し、約170μV/Kであった。
【実施例】
【0030】
(4)熱伝導率の測定
実施例1の熱電変換材料のインゴットをダイシングソーにて切断し、3.5mm×3.5mm×4mmのブロック形状の試験片を得た。そして、4×10-4Paの真空中において、熱流法による定常比較測定法を用いて熱伝導率を測定した。300Kにおける熱伝導率は12(W/mK)であった。
【実施例】
【0031】
(実施例2~4)
実施例1と同様に、純度99,99質量%の鉄(Fe)、同99.99質量%のアルミニウム(Al)、同99.9質量%のバナジウム(V)および同99.9%のTaを、FeVAl0.95Ta0.05(実施例2)、FeVAl0.92Ta0.08(実施例3)、およびFeVAl0.88Ta0.12(実施例4)になるように計量して、各々原料混合物を得た。
【実施例】
【0032】
原料混合物の溶解および焼鈍は実施例1と同じ条件で行った。X線回折測定、電気抵抗率測定、ゼーベック係数測定、および熱伝導率測定は、実施例1と同じ大きさの試験片を得て、同一条件にて測定を行った。
【実施例】
【0033】
実施例1~4の試験片の、電気抵抗率の温度依存性、ゼーベック係数の温度依存性、熱伝導率(室温)でのTa置換量依存性を、それぞれ、図1、図2、および図3に示す。
【実施例】
【0034】
(比較例1~3)
比較例として、化学量論組成FeVAlにおいて、Alの一部をSiにて置換した試料片を得て実施例1と同様の特性を測定した。FeVAl0.97Si0.03(比較例1)、FeVAl0.95Si0.05(比較例2)、およびFeVAl0.90Si0.10(比較例3)の3種類の組成の試験片を実施例1~4と同様に作成し、測定した。電気抵抗率測定結果は図5に、ゼーベック係数測定結果は図6に、熱伝導率(室温)でのSi置換量依存性を図3にTa置換と併せて示す。
【実施例】
【0035】
以上の電気抵抗率測定、ゼーベック係数測定、および熱伝導率測定より、熱電変換性能指数(室温)を求めた結果を図4に示す。この結果より、化学量論組成FeVAlにおいて、Alの一部をTaにて置換する場合(Ta置換)は、Alの一部をSiにて置換する場合(Si置換)に比して、室温において少なくとも置換量が0.03~0.1では性能指数が優れていることが判る。そして300K(室温)~600Kにおいて、Si置換のゼーベック係数に比してTa置換のゼーベック係数の絶対値が大きいこと、かつSi置換の熱伝導率に比してTa置換の熱伝導率が小さいことにより、Ta置換の性能指数がより大きいと言える。
【実施例】
【0036】
Si置換のゼーベック係数に比してTa置換のゼーベック係数が大きい理由は定かではないが、Si置換では自由電子的な3p電子をドープしていることから電子構造は大きく変化していないのに対し、Ta置換では局在的な5d電子をドープしていることから僅かに電子構造が変化していることに起因していると推察する。
【実施例】
【0037】
Si置換の熱伝導率に比してTa置換の熱伝導率が小さい理由は、原子番号が14であるSiに比べ、原子番号が73と平均原子量が大きなTaを用いることによる格子の熱伝導率の低下に起因すると推察する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の材料は、熱電変換素子、特に300~700Kの温度域で排熱を利用して発電する発電素子に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5