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明細書 :有機半導体レーザ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3640578号 (P3640578)
公開番号 特開2000-156536 (P2000-156536A)
登録日 平成17年1月28日(2005.1.28)
発行日 平成17年4月20日(2005.4.20)
公開日 平成12年6月6日(2000.6.6)
発明の名称または考案の名称 有機半導体レーザ
国際特許分類 H01S  3/16      
H05B 33/00      
H05B 33/14      
H05B 33/22      
FI H01S 3/16
H05B 33/00
H05B 33/14 A
H05B 33/22 A
H05B 33/22 C
請求項の数または発明の数 11
全頁数 19
出願番号 特願平11-261286 (P1999-261286)
出願日 平成11年9月14日(1999.9.14)
優先権出願番号 1998260709
優先日 平成10年9月14日(1998.9.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年8月17日(2001.8.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】597174849
【氏名又は名称】株式会社オプテク
発明者または考案者 【氏名】谷口 彬雄
【氏名】安達 千波矢
【氏名】小山 俊樹
【氏名】名川 倫郁
個別代理人の代理人 【識別番号】100074675、【弁理士】、【氏名又は名称】柳川 泰男
審査官 【審査官】古田 敦浩
参考文献・文献 特開平06-112529(JP,A)
特開平09-112529(JP,A)
特開平04-237993(JP,A)
特開平07-335973(JP,A)
特開平06-051144(JP,A)
谷口彬雄他,有機薄膜レーザの実現に向けて,第7回ポリマー材料フォーラム講演要旨集,第375-376頁
調査した分野 H01S 3/00-3/30
H05B 33/00-33/28
特許請求の範囲 【請求項1】
陽電極層、正孔輸送層、有機色素材料を含む発光層、電子輸送層、陰電極層がこの順で積層されてなり、陽電極層と陰電極層との間に電圧を印加することにより発光層で発光した光が、その端部から放出されるように構成された有機半導体レーザであって、上記正孔輸送層及び電子輸送層がそれぞれ下記の条件:
1<n1/n2
1<n1/n3
(上記の各式において、n1は発光層で発光した光の波長における発光層の屈折率、n2は発光層で発光した光の波長における正孔輸送層の屈折率、n3は発光層で発光した光の波長における電子輸送層の屈折率を表す)を満足し、さらに、下記の条件:
【数1】
JP0003640578B2_000025t.gif
(上記の各式において、n1、n2、及びn3は上記の意味と同じ、d2は正孔輸送層の厚み、d3は電子輸送層の厚み、λは発光層で発光した光の波長を表す)を満足することを特徴とする有機半導体レーザ。
【請求項2】
上記正孔輸送層及び電子輸送層が、下記の条件:
1.05<n1/n2
1.05<n1/n3
を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項3】
上記正孔輸送層が下記の条件:
1.20<n1/n2
を満たし、かつ下記の条件:
0.23<n2×d2/λ
を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項4】
上記電子輸送層が下記の条件:
1.09<n1/n3
を満たし、かつ下記の条件:
0.37<n3×d3/λ
を満足することを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項5】
上記正孔輸送層が、二以上の正孔輸送単位を非共役系スペーサー基を介して連結させてなる正孔輸送材料と電子受容性アクセプタとからなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項6】
上記正孔輸送層が、芳香族環を二個以上含み、主鎖に非共役系スペーサー基を含む化合物と、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、及びアリールアミンとハロゲン化金属またはルイス酸との塩の中から選ばれた少なくとも一種以上からなる電子受容性アクセプタとからなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項7】
上記正孔輸送層が、コ-ポリ[3,3’-ハイドロキシテトラフェニルベンジジン/ヘキサメチレン]カーボネートと、トリス(4-ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネートとからなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項8】
上記正孔輸送層の厚みが、2000nm以下にあることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項9】
上記電子輸送層が、オキサジアゾール誘導体からなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項10】
上記電子輸送層の厚みが、2000nm以下にあることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
【請求項11】
上記電子輸送層が、導電性高分子と電子供与性ドナーとからなることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体レーザ。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機色素材料を用いた電流励起型有機半導体レーザに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ある種の有機色素材料(有機蛍光物質ともいう)を光励起すると、例えば発光波長が、400~550nmといった短波光を得ることができる。この光の波長は、現在用いられている無機半導体レーザで得られる光の波長(一般に、620~800nm)に比べて著しく短い。従って、かかる有機色素材料を用いるレーザは、そのレーザ光が短波長であるという特性を利用して、CD等を高記録密度化し得るなどさまざまな分野への応用が期待される。
【0003】
有機色素材料を用いたレーザとしては、有機色素材料を溶媒に溶かしたもの用いた色素レーザが知られている。また、最近では、ガラスなどの上に薄膜状に形成した有機色素材料をレーザ媒質とし、光共振器に平面導波路を用いた光励起型の有機半導体レーザが研究、報告されている[S.R. Forrest etal.,Nature 389,362(1997)、R.E. Slusher et al.,Appl.Phys.Lett.71,2230(1997)、及びS.R. Forrest et al.,Appl.Phys.Lett.72,144(1998)を参照]。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の色素レーザ及び光励起による有機半導体レーザでは、有機色素材料を励起させてレーザ光を得るために、有機色素材料に光を照射しなければならず、別に有機色素材料励起用の光源を用意する必要があり、産業上あるいは日常的に使用する電子機器に組み込むには適当でない。
【0005】
一方、励起用の光源を用いずに有機色素材料を発光させる代表的な発光素子として、有機エレクトロルミネッセンス(EL)発光素子が知られている。この素子は、通常、陽電極層、正孔輸送層、有機色素材料を含む発光層、電子輸送層、陰電極層がこの順で積層されてなり、陽電極層と陰電極層との間に電圧を印加して、発光層に正孔と電子とを注入することにより、有機色素材料を発光させ、その発光を陽電極層の表面又は陰電極層の表面から得るものである。しかしながら、有機EL素子の陽電極層又は陰電極層から得られる光には指向性がほとんどないためこの光を直接レーザ光として用いることができない。
【0006】
従って、本発明の目的は、有機色素材料励起用の光源を必要としないで、容易にレーザ光を得ることができる電流励起型の有機色素材料を用いたレーザを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、有機EL素子の発光層内で発光した光を発光層内に閉じこめることにより、発光層内で光を増幅させ、発光層の端面からレーザ光として取り出すことができると考えて、鋭意研究を重ねた。そしてその結果、発光層に多くの正孔又は電子の注入を行う(すなわち強い発光を得る)には、正孔輸送層及び電子輸送層の膜厚は薄い方が好ましいとされているが、そのような構造の発光素子を有機半導体レーザとして用いる場合には、正孔輸送層、電子輸送層がある一定以上の膜厚に形成することにより、レーザ光を取り出すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
従って、本発明は、陽電極層、正孔輸送層、有機色素材料を含む発光層、電子輸送層、陰電極層がこの順で積層されてなり、陽電極層と陰電極層との間に電圧を印加することにより発光層で発光した光が、その端部から放出されるように構成された有機半導体レーザであって、上記正孔輸送層及び電子輸送層がそれぞれ下記の条件:
1<n1/n2
1<n1/n3
(上記の各式において、n1は発光層で発光した光の波長における発光層の屈折率、n2は発光層で発光した光の波長における正孔輸送層の屈折率、n3は発光層で発光した光の波長における電子輸送層の屈折率を表す)を満足し、さらに、下記の条件:
【0009】
【数2】
JP0003640578B2_000002t.gif【0010】
【数3】
JP0003640578B2_000003t.gif【0011】
(上記の各式において、n1、n2、及びn3は上記の意味と同じ、d2は正孔輸送層の厚み、d3は電子輸送層の厚み、λは発光層で発光した光の波長を表す)を満足することを特徴とする有機半導体レーザにある。
【0012】
上述の正孔輸送層又は電子輸送層の膜厚が薄いと、レーザ光が得られなくなることの原因は下記のように考えられる。上記の有機半導体レーザでは、発光層で発生した光が、正孔輸送層又は電子輸送層と発光層との接触面で全反射を繰り返すことによって増幅され、その後、発光層の端部からレーザー光として放出される。ここで、全反射する際に発光層で発生した光の一部は、正孔輸送層又は電子輸送層の内部に侵入し(この正孔輸送層又は電子輸送層の内部に侵入した光を、エバネッセント光という)、陽電極層又は陰電極層にまで到達したエバネッセント光は陽電極層又は陰電極層で吸収される。従って、正孔輸送層又は電子輸送層の厚みが薄くなると、陽電極層又は陰電極層で吸収されるエバネッセント光が多くなり、レーザ光が得られなくなる。
【0013】
次に、前記式(1)及び式(2)について説明する。
エバネッセント光の強度が1/eになるまでの距離を求める式はすでに知られている。そして、発光層で発光した光の波長をλとし、その波長における発光層の屈折率をn1、同じくその波長における正孔輸送層の屈折率をn2とすると、全反射する光の入射角θにおけるエバネッセント光の強度が1/eになるまでの距離Zを求める式(3)は下記のように表される。
【0014】
【数4】
JP0003640578B2_000004t.gif【0015】
図2に、仮にλを510nm、n1を2.11、n2を1.96(n12=1.09)としたときに上記式(3)から算出される入射角θと距離Zとの関係を表す。図から明らかなように、距離Zは入射角θが90度のときに最小値を示す。従って、少なくとも正孔輸送層又は電子輸送層の膜厚を、入射角θが90度の時の距離Z以上にすることにより、入射角θが90度付近の光が全反射する際に発生するエバネッセント光は、その強度が1/e以下になるまでは、陽電極層又は陰電極層には到達しない。すなわち、エバネッセント光が陽電極層又は陰電極層に吸収される割合を低くすることができる。
【0016】
以上の理由から有機半導体レーザの正孔輸送層の厚さをd2とするとレーザ光を得るために必要な正孔輸送層の膜厚は下記の式(4)により与えられる。
【0017】
【数5】
JP0003640578B2_000005t.gif【0018】
上記式(4)から下記の式(5)が導き出される。
【0019】
【数6】
JP0003640578B2_000006t.gif【0020】
上記式(5)から、前記の式(1)が導き出され、同様にして前記の式(2)が導き出される。
【0021】
【発明の実施の形態】
[1]有機半導体レーザの構成
図1に、本発明の一実施例による有機半導体レーザの断面図を示す。本発明の有機半導体レーザは、陽電極層1、正孔輸送層2、発光層3、電子輸送層4、陰電極層5がこの順で積層されてなり、陽電極層と陰電極層との間に電圧を印加することにより発光層で発光した光が、図に示した矢印方向へ、端部から放出されるように構成されたものである。
【0022】
本発明の有機半導体レーザは、その基本的な層構成については、上述したように従来から知られている有機EL素子とおなじである。本発明の有機半導体レーザは、正孔輸送層と電子輸送層とが、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各材料の屈折率と、発光層に導入された発光色素材料の発光波長から規定される一定の膜厚を必要とし、かつ発光層で発光した光が全反射を繰り返しながら増幅がされようにするために、光が放出される方向の長さが、発光層で発光した光の波長の整数倍の長さである点で有機EL素子と異なっている。
【0023】
正孔輸送層2及び電子輸送層4は、光閉じ込め効率を向上させるのに最も重要な役割を果たす。正孔輸送層及び電子輸送層に必要な条件は、▲1▼屈折率が発光層の屈折率より小さいこと、▲2▼電極に到達するエバネッセント光の割合を小さくするため、正孔輸送層及び電子輸送層は、正孔輸送層及び電子輸送層で全反射する発光層で発光した光の入射角を90度とした時に、エバネッセント光の強度が1/eになるまでの距離よりも厚いこと、及び▲3▼厚膜化しても通常の印加電圧(数十V以下、特に2~20V程度)で良好な正孔移動度または電子移動度を示す導電性材料からなることである。
【0024】
正孔輸送層2の屈折率n2は、発光層3の屈折率n1との関係において、n1/n2>1であり、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上である。n12が1.05未満であると、臨界角が大きくなり、全反射の起こる光の入射角の範囲が狭くなり、得られるレーザ光の強度が低下する。
【0025】
正孔輸送層2は、その屈折率n2が、発光層3の屈折率n1との関係において1.20<n1/n2であることが好ましく、その膜厚d2が、0.23<n2×d2/λを満足することが好ましい。また、正孔輸送層の正孔輸送能力を考慮すると、正孔輸送層2の膜厚は2000nm以下にあることがより好ましい。
【0026】
電子輸送層4の屈折率n3は、発光層3の屈折率n1との関係において、正孔輸送層と同様の理由から、n1/n3>1であり、好ましくは1.05以上である。
【0027】
電子輸送層4は、その屈折率n3が、発光層3の屈折率n1との関係において1.09<n1/n3であることが好ましく、その膜厚d3が、0.37<n3×d3/λを満足することが好ましい。また、電子輸送層の電子輸送能力を考慮すると、電子輸送層4の膜厚は2000nm以下であることがより好ましい。
【0028】
以下、本発明の有機半導体レーザを構成する陽電極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰電極層について詳細に説明する。
【0029】
(1)正孔輸送層
正孔輸送層の材料は、▲1▼二以上の正孔輸送単位が非共役系スペーサー基で連結された化合物(正孔輸送材料)と、▲2▼この正孔輸送材料を酸化する電子受容性アクセプタを少なくとも含有するものが好ましい。本発明に使用する正孔輸送材料は、従来有機エレクトロルミネッセンスに用いられてきた全共役系の重合体(ポリアニリン、ポリ-3,4-エチレン-ジオキシチオフェン等)に比べ、飛躍的に高い正孔移動度を有することが好ましい。例えば、電界強度1×105~1×106V/cm2における正孔移動度は1×10-4cm2/V・秒もしくはそれ以上である。これにより、100nm以上の膜厚においても正孔輸送が良好に実現される。
【0030】
(i)正孔輸送材料
正孔輸送層に用いる正孔輸送材料において、正孔伝達を良好に行うために、各正孔輸送単位は共役系で連結されずに、電気的に独立であることが好ましい。このため正孔輸送単位は、極めてエネルギー分散の小さいものが好ましく、特に0.2eV以下のものが好ましい。
【0031】
正孔輸送単位のイオン化エネルギーは5.7eV以下であることが好ましい。イオン化エネルギーが5.7eV以下であれば、正孔輸送単位は併用される電子受容性アクセプタよって容易に酸化されるとともに、正孔輸送単位含有化合物を用いた正孔輸送層内に陽電極層から正孔を容易に注入することができる。ここで、正孔を容易に注入することができるとは、3×105V/cm2の電界下で、20mA/cm2以上の電流を注入しうることを意味する。このことは、陽電極層/正孔輸送層/発光層/陰電極層の構成からなる試験素子を用いて、容易に判定することができる。正孔輸送層に用いる化合物中の正孔輸送単位が、非共役系スペーサー基で連結されていれば、正孔輸送単位同士の共役は無視しうる。かかる構造を持つことにより、共役鎖長が分散しないため正孔移動度が減少するのを阻止することが可能となる。
【0032】
(イ)正孔輸送単位
正孔輸送単位は、正孔伝達性構造を有する基であれば特に制限はなく、一種類でも二種以上でも良い。このような正孔輸送単位は、例えば、ジアミン、トリアリールアミンオリゴマー、チオフェンオリゴマー、アリーレンビニレンオリゴマー及びスチリルアミン等の化合物に由来する単位が好ましい。
【0033】
(ロ)非共役系スペーサー基
非共役系スペーサー基は、正孔の輸送に関しては不活性であることが好ましく、このような非共役系スペーサー基としては、エステル基、エーテル基、カーボーネート基、ウレタン基、アミド基、スルホン基、ケトン基、アルキレン基等が好ましい。
【0034】
非共役系スペーサー基は、例えば下記の一般式(I)により表される。
【0035】
【化1】
JP0003640578B2_000007t.gif【0036】
ここでr、s及びtはそれぞれ0又は1以上の整数であって、それらの合計は1以上であり、またD1及びD3はそれぞれ独立にエーテル基、カーボネート基、エステル基、アミド基、ウレタン基、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数5~30のシクロアルキレン基、炭素数1~30のハロゲン化アルキレン基又は炭素数7~30のアリール置換アルキレン基である。D2はD1又はD3と同じであるか、あるいは下記の一般式(II)により表される基である。
【0037】
【化2】
JP0003640578B2_000008t.gif【0038】
ここで、Eは炭素数1~30アルキレン基、炭素数5~30のシクロアルキレン基、炭素数1~30のハロゲン化アルキレン基、又は炭素数7~30のアリール置換アルキレン基である。Ar及びAr’はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基である。この置換基としては、炭素数6~24のアリール基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数7~24のアラルキル基、炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数1~24のアルコキシ基、アルキル基の炭素数が1~24のモノ又はジアルキルアミノ基、アリール基の炭素数が6~24のモノ又はジアリールアミノ基、アルキルアリール基の炭素数が7~24のモノ又はジアルキルアリールアミノ基等が挙げられる。uは0又は1以上の整数である。
【0039】
正孔輸送性材料における非共役系スペーサー基は、電子輸送単位からなるものであっても良い。非共役スペーサー基に利用できる電子輸送単位としては、例えばオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリレン誘導体由来の二価の基を挙げることができる。具体的には、下記の一般式(III)により表されるオキサゾール、オキサジアゾール又はそれらに類似の誘導体由来の二価の基が挙げられる。
【0040】
【化3】
JP0003640578B2_000009t.gif【0041】
ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数6~30アリーレン基又は炭素数1~30のアルキレン基であり、Z1及びZ2はそれぞれ独立に-CR3=又は-N=、Z3は-NR4-又は-SiR56-である。R3~R6は、それぞれ炭素数6~30のアリール基又は炭素数1~30のアルキル基である。
【0042】
非共役系スペーサー基は、σ共役系スペーサー基をも包含する。正孔輸送単位がσ共役系スペーサー基で連結されても、個々の独立性が失われず、独立の単位として機能するからである。好ましいσ共役系スペーサー基としては、Siを有するスペーサー基が好ましく、具体的には下記の一般式(IV)により表される基を挙げることができる。
【0043】
【化4】
JP0003640578B2_000010t.gif【0044】
ここで、vは1以上の整数である。R7及びR8はそれぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基又は置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリール基である。アリール基の置換基としては、炭素数1~24のアルキル基又はアルコキシ基が挙げられる。
【0045】
(ハ)正孔輸送材料の具体例
正孔輸送材料としては、例えば、正孔輸送単位と非共役系スペーサー基とを含有する化合物(重合体、共重合体を含む)が好ましい。また電子輸送単位が正孔輸送には不活性であることを利用し、これを非共役系スペーサー基として用いた共重合体も使用することができる。さらに正孔輸送単位がσ共役系スペーサー基で連結されている共重合体も挙げることができる。このような重合体の具体例としては、以下(い)~(に)に示す重合体を挙げることができる。重合体(い)~(に)は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0046】
(い)ジアミン又はトリアリールアミンオリゴマー由来の単位を正孔輸送単位として含む重合体
このような重合体として、例えば一般式(V):
【0047】
【化5】
JP0003640578B2_000011t.gif【0048】
により表される繰り返し単位を有し、かつこの単位又はこの単位と電子輸送単位が、エステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、スルホン又はケトン基等を介して連結された重合体又は共重合体、さらには上記一般式(V)により表される単位と前記一般式(IV)により表されるσ共役系スペーサー基とを互い違いに連結した共重合体が挙げられる。
【0049】
上記一般式(V)において、Ar1~Ar4はそれぞれ独立に置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基を示す。またAr5及びAr6はそれぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリール基を示す。ここで、アリーレン基及びアリール基の置換基としては、炭素数1~24のアルキル基又はアルコキシ基が挙げられる。一方、Gは単結合、炭素数5~30のアルキレン基、炭素数5~30のシクロアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、-O-、-S-、又は下記の一般式(VI)もしくは一般式(VII)により表される基を挙げることができる。
【0050】
【化6】
JP0003640578B2_000012t.gif(ただし、Ar7は炭素数6~30のアリール基である。)
【0051】
【化7】
JP0003640578B2_000013t.gif(ただし、Ar8は炭素数6~30のアリーレン基であり、Ar9又はAr10はそれぞれ炭素数6~30のアリール基である。)
【0052】
さらに、一般式(V)中のGは、置換基を有しても良く、置換基としては、炭素数1~24のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアラルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数6~24のアリールオキシ基、アルキル基の炭素数が1~24のモノ若しくはジアリールアミノ基、アルキルアリール基の炭素数が7~24のモノ若しくはジアルキルアリールアミノ基等が挙げられる。pは0、1又は2である。また、上記一般式(VI)及び一般式(VII)中のAr7~Ar10は、上記Gと同じ置換基を有しても良い。
【0053】
一般式(V)の重合体の例としては、例えば、下記の式(VIII)に表されるカーボネート系共役重合体が好適である。
【0054】
【化8】
JP0003640578B2_000014t.gif(ただし、Ar1~Ar6及びGは前記と同じであり、p及びqは0、1又は2であり、Xは非共役スペーサー基であり、nは2以上の整数である。)
【0055】
特に好ましいカーボネート系共役重合体は、下記式で表されるコ-ポリ[3、3’-ハイドロキシテトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネートを挙げることができる。
【0056】
【化9】
JP0003640578B2_000015t.gif【0057】
(ろ)チオフェンオリゴマー由来の単位を正孔輸送単位として含む重合体
この重合体としては、例えば、下記の一般式(IX);
【0058】
【化10】
JP0003640578B2_000016t.gif【0059】
により表される繰り返し単位を有し、かつこの単位(又はこの単位と電子輸送単位)がエステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、スルホン又はケトン基等を介して連結された重合体又は共重合体、さらには上記一般式(IX)により表される単位と前記一般式(IV)により表されるσ共役系スペーサー基とを互い違いに連結した共重合体が挙げられる。
【0060】
一般式(IX)において、a、b及びcはそれぞれ0~9の整数を示すが、それらの合計は3以上である。R9~R14はそれぞれ、水素原子、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~15のアルキル基又はアルコキシ基であるが、R9とR10、R11とR12及びR13とR14の組み合わせにおいて、両方共が水素原子であることはない。
【0061】
(は)アリーレンビニレンオリゴマー由来の単位を正孔輸送単位として含む重合体
この重合体の例としては、例えば一般式(X):
【0062】
【化11】
JP0003640578B2_000017t.gif【0063】
により表される繰り返し単位を有し、かつこの単位(又はこの単位と電子輸送単位)がエステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、スルホン又はケトン基等を介して連結された重合体又は共重合体、さらには上記一般式(X)により表される単位と前記一般式(IV)により表されるσ共役系スペーサー基とを互い違いに連結した共重合体が挙げられる。
【0064】
一般式(X)において、R15~R20はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアラルキル基、炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数1~30のアルキルチオ基、アルキル基の炭素数が1~30のモノ若しくはジアルキルアミノ基、炭素数6~24のアリールチオ基、アリール基の炭素数が6~24のモノ若しくはジアリニルアミノ基、ニトロ基またはシアノ基を示す。dは1~500の整数である。
【0065】
(に)スチリルアミン由来の単位を正孔輸送単位として含む重合体
この重合体としては、例えば一般式(XI):
【0066】
【化12】
JP0003640578B2_000018t.gif【0067】
により表される繰り返し単位を有し、かつこの単位(又はこの単位と電子輸送単位)がエステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、スルホン又はケトン基等を介して連結された重合体又は共重合体、さらには上記一般式(XI)により表される単位と前記一般式(IV)により表されるσ共役系スペーサー基とを互い違いに連結した共重合体が挙げられる。
【0068】
一般式(XI)において、Ar11~Ar14はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリーレン基を示す。Ar15及びAr16はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基を示す。R21及びR22はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~30のアルキル基又は置換若しくは無置換の炭素数6~30のアリール基を示す。ここで置換基としては、炭素数1~24のアルキル基又はアルコキシ基が挙げられる。eは0又は1である。また鎖線は、単結合又は炭素数1~6のアルキレン基で結合していても良いことを示す。
また、一般式(XII):
【0069】
【化13】
JP0003640578B2_000019t.gif【0070】
により表される繰り返し単位を有し、かつこの単位(又はこの単位と電子輸送単位)がエステル、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、スルホン又はケトン基等を介して連結された重合体又は共重合体、さらには上記一般式(XII)により表される単位と前記一般式(IV)により表されるσ共役系スペーサー基とを互い違いに連結した共重合体が挙げられる。
【0071】
一般式(XII)において、Ar17~Ar21は、前記一般式(X)のAr11~Ar14と同じで良く、Ar22及びAr23は一般式(X)のAr15及びAr16と同じで良い。fは0又は1であり、鎖線は単結合又は炭素数1~6のアルキレン基で結合していても良いことを示す。
【0072】
(ii)電子受容性アクセプタ
正孔輸送層に前記(i)の化合物とともに用いる電子受容性アクセプタは、正孔輸送材料に含まれる正孔輸送単位を酸化し、もって正孔輸送層の導電性を高める作用を有する。また電子受容性アクセプタによって酸化された正孔輸送単位によりπ電子雲の重なりが大きくなり、正孔濃度が酸化前に比べて増大し、正孔輸送層の導電率は10-10~103S・cm-1程度になる。正孔輸送層における電子受容性アクセプタの濃度は10-3~30重量%であることが好ましい。
【0073】
電子受容性アクセプタとしては酸化剤として機能する化合物が好ましく、特にハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、及びアリールアミンとハロゲン化金属またはルイス酸との塩等が好適である。
【0074】
ハロゲン化金属やルイス酸の好ましい例としては、FeCl3、AlCl3、SbCl5、AsF5、BF3等が挙げられる。また有機酸としては、例えば下記の一般式(XIII)により表される化合物が挙げられる。
【0075】
【化14】
JP0003640578B2_000020t.gif【0076】
ここで、Aはスルホン酸基、リン酸基、ホウ酸基、カルボン酸基等の酸基である。Rは炭素数1~20のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、炭素数2~20のアルコキシアルキル基、アルキルチオアルキル基、アルケニル基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアルカリール基、アラルキル基、さらにはピリジル基、キノリル基、フラニル基、ピロリル基、チエニル基等の複素環式基又はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、エポキシ基である。mは0~5の整数であり、mが2以上の場合、複数のRは互いに同一でも異なっていても良い。
【0077】
さらにこの有機酸の別の例としては、ポリマー酸がある。このポリマー酸はポリマー中に、上記一般式(XIII)における酸基Aを有するものであり、このようなものとしては、例えば、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエチレン、スルホン化ポリカーボネート等が挙げられる。またポリアクリル酸も用いることができる。
【0078】
さらにアリールアミンとハロゲン化金属又はルイス酸との塩としては、例えば一般式(XIV)により表される塩を挙げることができる。
【0079】
【化15】
JP0003640578B2_000021t.gif【0080】
ここで、Lはハロゲン化金属又はルイス酸であり、その例としては、SbCl5、BF3、AsF5、AlCl3、FeCl3等が挙げられる。X-は好ましくはハロゲンイオンである。Ar24~Ar26はそれぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数5~30の芳香族基又は複素環式基である。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~24のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~24のアラルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、炭素数6~24のアリールオキシ基、アルキル基の炭素数が1~24のモノ又はジアルキルアミノ基、アリール基の炭素数が6~24のモノ若しくはジアリールアミノ基などが挙げられる。
【0081】
一般式(XIV)で表される電子受容性アクセプタの好ましい具体例としては、下式で表されるトリス(4-ブロモフェニル)アンモニウム・ヘキサクロロアンチモネート(TBAHA)を挙げることができる。
【0082】
【化16】
JP0003640578B2_000022t.gif【0083】
電子受容性アクセプタは、一種でも二種以上組み合わせても良い。
【0084】
(2)電子輸送層
電子輸送層は、陰電極層より注入された電子を発光層に伝達する機能を有し、その材料としては公知の無機又は有機の化合物から適宜選択することができる。
【0085】
電子輸送層に用いる電子輸送材料の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アンドラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体などが挙げられる。
【0086】
また特開昭59-194393号公報に記載されている一連の電子伝達性化合物も、電子輸送材料として用いることができる。さらに上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0087】
また、8-キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8-キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7-ジクロロ-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7-ジブロモ-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(5-メチル-8-キノリノール)アルミニウム、ビス(8-キノリノール)亜鉛等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他にメタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも電子輸送材料として用いることができる。またジスチリルピラジン誘導体も電子輸送材料として用いることができ、さらにn型-Si、n型-SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
【0088】
上記の電子輸送材料からなる電子輸送層には、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属、及びアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のフッ化物、塩化物、ヨウ化物などの化合物からなる電子供与性ドナーを0.1~30モル%ドーピングすることが好ましい。電子供与性ドナーをドーピングすることにより100nm以上の膜厚においても電子輸送が良好に実現される。
【0089】
(3)発光層
発光層の有機色素材料としては=公知の色素材料を用いることができるが、低い励起エネルギーで反転分布を形成するものであることが好ましい。これにより、発光層に印加するエネルギー(電流)密度を低くくできる。有機色素材料としては、レーザー閾値が50μJ以下のものが好ましく、1μJ以下のものがさらに好ましい。このような有機色素材料としては、具体的には次の化合物が挙げられる。
【0090】
紫外領域ないし紫色領域の発光を得る場合には、パラ-ポリフェニレン系のものが好ましい。このパラ-ポリフェニレン系化合物のフェニル基又はフェニレン基には、アルコキシ基、水酸基、スルホニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換基が一個又は二個以上導入されていても良い。このようなパラ-ポリフェニレン系化合物の例としては、p-クォーターフェニル、3,5,3’,5’-テトラ-t-ブチル-p-クインクフェニル、3,5,3’,5’-テトラ-t-ブチル-p-セキシフェニル等が挙げられる
【0091】
次に青色ないし緑色の発光を得るには、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物を挙げることができる。また、芳香族ジメチリディン系化合物(欧州特許第388768号及び特開平3-231970号を参照)も好ましい。この芳香族ジメチリディン系化合物の例としては、1,4-フェニレンジメチリディン、4,4’-ビフェニレンジメチリディン、2,5-キシリレンジメチリディン、2,6-ナフチレンジメチリディン、1,4-p-テレフェニレンジメチリディン、4,4’-ビス(2,2-ジ-t-ブチルフェニルビニル)ビフェニル(DTBPVBi)、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0092】
さらに特開平5-258862号公報に記載されている一般式(XV):
(J-Q)2-Al-O-Z・・・(XV)
(式中、Zはベンゼン環を含む炭素数6~24の炭化水素基であり、O-Zは、フェノラート配位子であり、Qは置換8-キノリラート配位子であり、Jはアルミニウム原子に置換8-キノリノラート配位子が三個を以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8-キノリノラート環置換基である。)により表される化合物も挙げることができる。この化合物の具体例としては、ビス(2-メチル-8-キノリラート(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2-メチル-8-キノリラート)(1-ナフトラート)アルムニウム(III)等が挙げられる。
【0093】
その他に青色と緑色の混合発光を高効率に得るために、ホストである上記有機色素材料にドーパントを加えても良い(特開平6-9953号公報参照)。ドーパントとしては、例えば青色領域緑領域の色素材料、具体的にはクマリン系あるいは上記のホストとして用いるものと同様の蛍光色素材料等が挙げられる。特にホストとしてジスチリルアリーレン骨格の発光材料、好ましくはDPVBiと、ドーパントとしてジフェニルアミノビニルアリーレン骨格を有するもの、好ましくは4,4’ビス[4-(N,N-ジフェニルアミノ)スチリル]ベンゼン(DPAVB)との組み合わせを挙げることができる。
【0094】
また下式で表されるジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)などのスチリルアミン誘導体も非常に低いレーザ閾値(~1μJ)を有するので、有機半導体レーザ用の有機色素材料として有望である。
【0095】
【化17】
JP0003640578B2_000023t.gifDADSB;
【0096】
発光層の膜厚は特には制限はなく、適宜選択できるが、通常は5~500nmの範囲内とするのが好ましい。
【0097】
(4)陽電極層
陽電極層は正孔輸送層に正孔を注入する作用を有する。陽電極層は、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、又はその合金、電気導電性化合物及びこれらの混合物により形成することが好ましい。このような電極材料の具体例としては、Au等の金属、CuI、ITO(インジウムチンオキシド)、SnO2、ZnO等の導電性材料が挙げられる。陽電極層の厚さは、通常10nm~1μm、好ましくは50~200nmである。
【0098】
(5)陰電極層
陰電極層は、電子輸送層に電子を注入する作用を有する。陰電極層は、仕事関数の小さい(4eV以下)金属又はその合金、電気導電性化合物及びこれらの混合物により形成することが好ましい。このような電極材料の具体例としては、Na、Na・K合金、Mg、Li、Mg/Cu混合物、Mg・Ag合金、Al・Li合金、Al/Al23混合物、In、希土類金属等が挙げられる。陰電極層の厚さは、通常10nm~1μm、好ましくは50~200nmである。
【0099】
[2]有機半導体レーザの作製
本発明の有機半導体レーザを作製する方法の好適な例を説明する。まず、ガラス板などの適当な基板上に、所望の電極材料、例えば、陽電極材料からなる薄膜を、10nm~1μm、好ましくは50~200nmの範囲の膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成し、陽電極層を形成する。
【00100】
陽電極層の上に、スピンコート法、キャスト法、蒸着法、スパッタリング法等により、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を順次形成する。正孔輸送層は、スピンコート法で形成することが好ましく、発光層及び電子輸送層は、真空蒸着法で形成するのが好ましい。真空蒸着法により発光層及び電子輸送層を形成するときの条件は、使用する材料の種類、目的とする分子堆積膜の結晶構造、会合構造等により異なるが、一般にボート加熱温度を50~400℃の範囲で、真空度を10-6~10-3Paの範囲で、蒸着速度を0.001~50nm/秒の範囲で、基板温度を-50~200℃の範囲で選ぶことが望ましい。
【00101】
これらの層を形成した後、電子輸送層の上に、陰電極材料からなる薄膜を、10nm~1μm、好ましくは、50~200nmの範囲になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成し、陰電極層を形成する。なお、各層の形成順序を逆にすることも可能である。
【00102】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【00103】
[実施例1]
厚さ150nmのITO膜(陽電極層)を設けたガラス基板を用意し、プラズマ洗浄機(サムコインターナショナル社製、BP1)を用い、酸素プラズマにより30秒間洗浄した。次いで、ITO膜の上に、正孔輸送材料として前記コ-ポリ[3、3’-ハイドロキシテトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネートを蒸着し、厚さ220nmの正孔輸送層を形成した。
【0104】
正孔輸送層の上に、有機色素材料として前記ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)を真空蒸着し、厚さ100nmの発光層を形成した後、さらにその上に電子輸送材料として下記式;
【0105】
【化18】
JP0003640578B2_000024t.gif【0106】
で表されるオキサジアゾール(OXD)誘導体を真空蒸着し、厚さ240nmの電子輸送層を形成した。そして、最後に、電子輸送層の上に、Mg・Ag合金を真空蒸着し、厚さ200nmの陰電極層を形成した。こうして図1に示す構造の有機半導体レーザを作製した。なお、各層の屈折率は、正孔輸送層が1.75であり、発光層が2.11であり、電子輸送層が1.93であった。
【0107】
作製した有機半導体レーザに30Vの電圧を印加して、有機半導体レーザの発光層端部からレーザ光が放出されることを確認した。このレーザ光のピーク波長λは、510nmであった。
【0108】
[実施例2]
前記コ-ポリ[3、3’-ハイドロキシテトラフェニルベンジジン/ジエチレングリコール]カーボネート50mgと前記トリス(4-ブロモフェニル)アンモニウム・ヘキサクロロアンチモネート(TBAHA)5mgとをジクロロメタン1mLに溶解した溶液を回転数1000rpmでスピンコートした後、80℃で一時間加熱し、溶媒を除去することにより膜厚650nm(触針膜厚計により測定)の正孔輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして、有機半導体レーザを作製した。そして、作製した有機半導体レーザに実施例1と同様に電圧を印加して、有機半導体レーザの端部からレーザ光が放出されることを確認した。
【0109】
[比較例1]
正孔輸送層の膜厚を50nm、電子輸送層の厚みを50nmにした以外は、実施例と同様にして、有機半導体レーザを作製した。そして、作製した有機半導体レーザに実施例1と同様に電圧を印加したところ、レーザ光の出力は認められなかった。
【0110】
【発明の効果】
本発明の有機半導体レーザは、簡単な構造を持ち、電流励起によりレーザ光を発生するので、各種電子機器などに組み込むことが可能となり実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による有機半導体レーザの構成を示す断面図である。
【図2】発光層で発光した光の波長λを510nm、n1を2.11、n2を1.96(n12=1.09)としたときの光の入射角θとエバネッセント光の強度が1/eになるまでの距離Zとの関係を表す。
【符号の説明】
1 陽電極層
2 正孔輸送層
3 発光層
4 電子輸送層
5 陰電極層
図面
【図1】
0
【図2】
1