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明細書 :アクアガスを用いて調製した加熱・殺菌・乾燥植物とその調製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5967639号 (P5967639)
公開番号 特開2011-211965 (P2011-211965A)
登録日 平成28年7月15日(2016.7.15)
発行日 平成28年8月10日(2016.8.10)
公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
発明の名称または考案の名称 アクアガスを用いて調製した加熱・殺菌・乾燥植物とその調製方法
国際特許分類 A23B   7/02        (2006.01)
A23B   7/06        (2006.01)
A47J  27/16        (2006.01)
FI A23B 7/02
A23B 7/06
A47J 27/16 D
請求項の数または発明の数 3
全頁数 20
出願番号 特願2010-083490 (P2010-083490)
出願日 平成22年3月31日(2010.3.31)
審判番号 不服 2015-006444(P2015-006444/J1)
審査請求日 平成25年1月9日(2013.1.9)
審判請求日 平成27年4月6日(2015.4.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
発明者または考案者 【氏名】五月女 格
【氏名】五十部 誠一郎
【氏名】竹中 真紀子
【氏名】岡留 博司
【氏名】小川 哲郎
【氏名】近重 克幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100102004、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 政彦
参考文献・文献 特開2007-228870(JP,A)
国際公開第2006/009150(WO,A1)
日本食品工学会誌,2005年,Vol.6,No.4,pp.229-236
食品と開発,2008年,Vol.43,No.9,pp.4-7
調査した分野 A23B 7/02 , A23B 7/06 , A47J 27/16
特許請求の範囲 【請求項1】
収穫後の植物を、下記の加熱・殺菌処理方法を用いて低侵襲的に加熱処理することによって、植物の抗酸化成分の減耗抑制と変・退色の抑制及び一般生菌数の低減並びに水分の蒸発を図ることにより、抗酸化成分高含有の加熱・殺菌・乾燥植物を調製する方法であって、
次の工程;1)少なくとも100℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる工程、2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、少なくとも湿度95%及び多くとも酸素濃度1%の組成を有し、90~180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす工程、3)上記微細水滴と湿熱水蒸気からなる加熱媒体で、被加熱材料の植物に、上記温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌処理する工程、により、湿度95%以上で酸素濃度1%以下の低酸素条件で抗酸化成分を含む植物素材を加熱処理することで、該被加熱植物の水分含量が多くとも10%に保持されて成り、かつ、被加熱植物の抗酸化成分の減耗を抑制することを特徴とする一般生菌数(cfu/g乾燥物)が300以下の乾燥植物の調製方法。
【請求項2】
下記の発生及び加熱条件の加熱媒体:
1)発生条件:少なくとも100℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させて発生させた微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させた少なくとも湿度95%及び多くとも酸素濃度1%の組成を有して成る加熱媒体
2)庫内制御温度:100℃~150℃
3)加熱時間(被加熱材料の加熱時間):10分~20分
で加熱することにより、被加熱植物の水分含量が多くとも10%に保持されて成る乾燥植物を調製する、請求項1記載の乾燥植物の調製方法。
【請求項3】
植物が農産物である、請求項1又は2記載の乾燥植物の調製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微細水滴を含んだ過熱水蒸気「アクアガス」(登録商標)を用いて得られる加熱・殺菌・乾燥植物とその調製方法に関するものであり、更に詳しくは、植物を、アクアガスを用いて、低侵襲的に加熱処理することによって、植物の抗酸化成分の減耗抑制と変・退色の抑制及び一般生菌数の低減並びに効率的な水分の蒸発を図ることを可能とした、加熱・殺菌・乾燥植物とその調製方法に関するものである。本明細書では、高温微細水滴と過熱水蒸気をノズルから混合、噴霧することにより発生させた加熱媒体である、微細水滴を含んだ過熱水蒸気を「アクアガス」と記載し、該加熱媒体を用いた加熱、殺菌、乾燥方法を、アクアガスを用いた加熱、殺菌、乾燥方法と記載し、該方法により調製した抗酸化成分高含有製品を加熱・殺菌・乾燥植物と記載することがある。
【背景技術】
【0002】
現在、食材・食品の機能性や安全性などに関する消費者の関心が高く、総じて国産品への需要が高い状況となっている。しかし、その原料となる植物や農産物の収穫時期は限られており、国産原料の安定的な供給や、多穫期の収穫後の植物の有用成分の減耗などを減じるために、特に品質劣化が早い葉物原料を長期保存する乾燥技術について、種々検討されている。これらの収穫直後の葉物原料を、余り品質を損なわないで、1次加工処理を行い、長期貯蔵を行い、通年的に原料として供給するシステムを確立できれば、収穫期に左右されないで、国産葉物原料の安定的な供給が可能となると考えられる。
【0003】
しかし、現実には、国産葉物原料の長期貯蔵技術や、通年的に食材として供給することを可能とする価格性能比の高い実用的・汎用的な技術は確立されておらず、葉物の有用成分のロスを減じることや、植物や葉物農産物の鮮度や機能性を損なわずに、妥当な価格で、安定的に消費者に供給することは困難な状況となっているのが実情である。季節性の高い国産植物や農産物の通年利用については、生の原料では、貯蔵中の品質の劣化の問題があり、更に、従来の乾燥方法では、生の原料と比べて、価格的にも高コストで、成分的にも劣る、通風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥や過熱水蒸気乾燥などによる乾燥原料を使用する以外には、十分に利用できない状況にあり、特に、国産葉物原料の端境期には、輸入植物や農産物を使用せざるを得ない状況にある。
【0004】
他方、過熱水蒸気加熱は、高温高圧で、高カロリーで、しかも、熱エネルギー的に準安定な乾燥水蒸気を利用できるため、例えば、食品の加熱焼成手段などとして、広くその応用技術が提案されている(特許文献1~5)。農産物の乾燥法としては、上記の通風乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、過熱水蒸気乾燥などが用いられている。
【0005】
一方、本発明者らは、先行技術として、アクアガスによる加熱方法を開発し、報告している。このアクアガス加熱技術については、過熱水蒸気加熱技術を応用した高品質調理、食材加工システムとして、これまでに、高圧下で水を沸騰させ、高温微細水滴と過熱水蒸気をノズルから混合して噴霧することにより発生させる新しい加熱媒体の発生方法とその装置を開発し、特許出願している(特許文献6)。
【0006】
また、加熱対象・目的に応じた最適加熱処理技術として、上記の新しい加熱媒体以外に、飽和水蒸気、過熱水蒸気を同一の装置によって発生させる方法及び装置について特許出願している(特許文献7)。更に、アクアガスの発生条件(臨界内部圧力の発見)を明らかにして、安定的制御方法について、提案している(特許文献8)が、これらの用途は、殺菌を主とした加熱処理を目的としたものであり、乾燥技術としての用途については、言及されていない。
【0007】
このアクアガスは、優れた加熱特性を有することから、調理前の生鮮野菜の表面殺菌処理やジャガイモなどの加工食材の酵素失活や澱粉のα化処理などにおいて、既存の湿熱加熱(茹で、蒸し)や、乾熱加熱(オーブン)の何れよりも、品質の面や殺菌効果の面でも優れていることから、その利用方法が提案され、一部、実用化されている。
【0008】
しかし、アクアガスは、乾燥用の加熱媒体としては、過熱水蒸気よりも乾燥速度は遅く、効率の面からも今まで検討をされてこなかったが、近年、高い機能性を有した農産物の加工素材として、乾燥素材としての割合が増えることで、機能性成分の保持や、劣化抑制のための新しい乾燥法が求められる傾向となってきた。一般に、凍結乾燥法が、このような熱劣化の抑制を可能にした乾燥法としてよく知られているが、装置コストが高く、更に処理時間も長く、そのことが、冷凍乾燥処理後の食品素材のコスト高を誘引している。そこで、当技術分野においては、凍結乾燥法よりも安価で、効率的に乾燥を行うことができ、従来法よりも、乾燥素材としての品質が優れた製品を調製できる新しい処理技術の開発が強く要請されている。
【0009】
従来の乾燥処理において、脂溶性の機能性物質などを多く含む農産物の乾燥については、以下のような問題点、すなわち、加熱時に生じる酸化による油脂成分や脂質含有素材の劣化については、これらが機能性成分の場合には、特に農産物の乾燥処理には用いることができない、また、減圧乾燥や、凍結乾燥については、コスト高や、処理時間などの経済的課題、また、最近は、過熱水蒸気による乾燥処理も試みられているが、安定的な過熱水蒸気の温度域(概ね150℃以上)では、低酸素状態であるが、温度自身高いこともあり、短時間処理でも熱劣化による品質や色、香りといった面での嗜好性も低下する傾向がある、などの問題点があり、その解決が求められていた。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平06-090677号公報
【特許文献2】特開2001-061655号公報
【特許文献3】特開2001-214177号公報
【特許文献4】特開2001-323085号公報
【特許文献5】特開2002-194362号公報
【特許文献6】特開2004-358236号公報
【特許文献7】特開2007-064564号公報
【特許文献8】特開2009-091386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、国産植物や葉物農産物を通年的に素材として供給するシステムを確立することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、旬の植物などの植物素材を、アクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理することによって、植物に含まれる抗酸化成分の減耗抑制と、変・退色の抑制及び一般生菌数の低減並びに効率的な水分の蒸発を図ることが可能であり、長期間保存性及びその保存安定性などの優位性を付与した乾燥素材として、通年的に供給することが実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、アクアガスを用いて、植物に旬の高品質維持などの優位性を付与して、その常温保存と常温輸送を可能とする、高品質の加熱・殺菌・乾燥植物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、アクアガスを用いて、高い歩留まり、長期間保存性及びその保存安定性などの優位性を付与した抗酸化成分高含有乾燥素材を製造し、供給することを可能とする、植物や葉物農産物の新しい加工処理手法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)収穫後の植物を、下記の加熱・殺菌処理方法を用いて低侵襲的に加熱処理することによって、植物の抗酸化成分の減耗抑制と変・退色の抑制及び一般生菌数の低減並びに水分の蒸発を図ることにより、抗酸化成分高含有の加熱・殺菌・乾燥植物を調製する方法であって、
次の工程;1)少なくとも100℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる工程、2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、少なくとも湿度95%及び多くとも酸素濃度1%の組成を有し、90~180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす工程、3)上記微細水滴と湿熱水蒸気からなる加熱媒体で、被加熱材料の植物に、上記温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌処理する工程、により、湿度95%以上で酸素濃度1%以下の低酸素条件で抗酸化成分を含む植物素材を加熱処理することで、該被加熱植物の水分含量が多くとも10%に保持されて成り、かつ、被加熱植物の抗酸化成分の減耗を抑制することを特徴とする一般生菌数(cfu/g乾燥物)が300以下の乾燥植物の調製方法。
(2)下記の発生及び加熱条件の加熱媒体:
1)発生条件:少なくとも100℃に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させて発生させた微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させた少なくとも湿度95%及び多くとも酸素濃度1%の組成を有して成る加熱媒体
2)庫内制御温度:100℃~150℃
3)加熱時間(被加熱材料の加熱時間):10分~20分
で加熱することにより、被加熱植物の水分含量が多くとも10%に保持されて成る乾燥植物を調製する、前記(1)記載の乾燥植物の調製方法。
(3)植物が農産物である、前記(1)又は(2)記載の乾燥植物の調製方法。

【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、植物や葉菜などの植物素材を、速やかに、アクアガス加熱装置で、低侵襲的、且つ迅速に加熱処理して、抗酸化成分の減耗抑制と、変・退色の抑制及び一般生菌数の低減並びに効率的な水分蒸発を図って、水分含有率10%以下の、常温安定性が高く、長期間の常温保存が可能な、抗酸化成分高含有の加熱・殺菌・乾燥植物や葉菜を供給することを特徴とするものである。
【0015】
本発明は、加熱効率が高く、高品質の食材加熱加工が可能な、アクアガスを用いた農産物の乾燥方法に関するものであり、機能性成分の存在を認めた農産物などの高付加価値乾燥素材の製造に関わるものであり、既存の通風乾燥や、一般的な過熱水蒸気による乾燥に比べて、酸化劣化などを抑制して、機能性成分やその活性を保持することを可能とするものであり、これらの乾燥処理後に、粉末化素材などとして、機能性食品などへの利用、加工を可能とするものである。
【0016】
本発明者らは、アクアガスを用いた植物素材の乾燥処理を試みたところ、利用する農産物の種類や形状によっては、それほど、過熱水蒸気と変わらない時間で、品質的に優れた乾燥素材を調製できることが明らかになり、更に、農産物中の脂質成分や抗酸化成分の劣化が抑制されることや、色などについても、変色や退色が抑えられることが明らかになった。
【0017】
本発明において、「アクアガスを用いて低侵襲的に加熱処理する」とは、植物や農産物を、以下の工程、1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させる工程、2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90~180℃の温度領域に保持されたガス成分で満たす工程、3)上記微細水滴と湿熱水蒸気からなる加熱媒体で、被加熱・殺菌材料に、上記温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱・殺菌処理する工程、により、加熱処理することを意味するものとして定義される。
【0018】
本発明では、上記アクアガスを用いて、被加熱材料を低侵襲的に加熱処理するための装置として、少なくとも、被加熱材料である植物素材を外気と遮断して加熱する準密閉状態の加熱室、該加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱する加熱手段、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を上記加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させて、所定の方向に移送する水蒸気発生手段、を構成要素として含むアクアガス発生装置が用いられる。
【0019】
本発明では、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、上記加熱室内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、加熱室内部を常圧状態のまま微細水滴と水蒸気で充満させ、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下の組成を有し、90~180℃の温度領域に保持されたガス成分で、加熱室内部の空気を置換し、該微細水滴と湿熱水蒸気で、加熱室内の被加熱材料に、上記温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理する方法が使用される。
【0020】
本発明の加熱方法は、1)100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を、これと同温度以上に加熱された準密閉空間の加熱室内に噴射ノズルを介して連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、2)上記微細水滴と湿熱水蒸気で、上記加熱室内の空気を置換させて、湿度95%以上及び酸素濃度1%以下の組成を有し、90~180℃の温度領域に保持された微細水滴と高湿度の湿熱水蒸気を含む水蒸気ガス成分で満たし、3)上記微細水滴と湿熱水蒸気で、被加熱材料に、上記温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理する、ことを特徴とするものである。
【0021】
ここで、本発明でいう「準密閉空間」とは、完全密閉ないし開放空間ではなく、100℃以上に加熱された熱水及び/又は水蒸気を該空間内に連続的に噴射させ、微細水滴と湿熱水蒸気を発生させても、該水蒸気等を高温常圧状態のままで充満させることができる空間のことを意味している。本発明において、微細水滴と湿熱水蒸気とは、高湿度の湿熱水蒸気とその凝縮により部分的に生成する微細水滴との混合系を意味し、湿熱水蒸気とは、その高湿度の水蒸気部分を意味し、乾熱水蒸気とは、上記湿熱水蒸気の加熱室内での乾燥現象により部分的に生成する高乾燥水蒸気を意味する。
【0022】
本発明では、上記微細水滴と湿熱水蒸気で、被加熱材料に、90~180℃の温度領域で、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱を施して加熱処理するが、ここで、少なくとも10℃の温度差の連続振幅加熱とは、90~180℃の温度範囲において、短時間に10℃を上回る温度差の振幅を有するノズル付近の温度変化が生起する条件で、連続的に加熱することを意味する。本発明では、例えば、10~50℃の温度差の振幅で、連続的に、被加熱材料を加熱することができる。
【0023】
本発明では、加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱すると共に、該加熱室に熱水及び/又は水蒸気を導入し、該加熱室を水の気体で置換し、酸素濃度を1.0%以下に低下させることにより形成した雰囲気で、被加熱材料を加熱する。本発明において、上記加熱室は、被加熱材料を外気と遮断して加熱することができる所定の準閉鎖系空間で構成され、好適には、例えば、被加熱材料を載せるためのプレート、一部にガラス窓部を形成した開閉可能なドア部を有する準密閉空間が例示される。加熱室は、好適には、ステンレス製の素材で形成される。本発明では、上記加熱室を100℃を越える所定の温度に加熱するが、この場合、好適には、該加熱室に導入する熱水及び/又は水蒸気の温度と同等又はそれ以上に加熱する。
【0024】
上記のように、本発明では、加熱室を所定の温度に加熱すると共に、該加熱室で微細水滴と湿熱水蒸気を発生させ、該加熱室内の空気を水の気体で置換する。この場合、上記微細水滴と湿熱水蒸気は、例えば、細管を通して所定の流速で送水された水を細管の外部からヒータで加熱し、細管の端部に設けられたノズルを介して加熱室に導入することで生成される。上記微細水滴と湿熱水蒸気は、100~180℃、より好適には、95~150℃に加熱された高温常圧の微細水滴と高湿度の湿熱水蒸気を含む水蒸気ガス成分であり、被加熱材料を、高いエネルギー効率で加熱する作用を有する。
【0025】
本発明では、給水タンクの水を給水ポンプで汲み上げ、細管からなる導管を通して水蒸気発生蓄熱パネルに供給し、加熱ヒーターにより、例えば、105~200℃の所定の温度に加熱し、そのまま、細管の先端に設置した水蒸気噴射ノズルから高速で熱水及び/又は水蒸気を噴射させる。この場合、水蒸気ノズルとしては、先端に微細噴射孔を形成してなる、熱水及び/又は水蒸気を微細化して噴出する機能を有するものであれば、適宜のものが用いられる。
【0026】
微細噴射孔の孔径、孔数、孔の穿設位置などは、任意に設定できる。水蒸気噴射ノズルからの熱水及び/又は水蒸気の噴射速度は、好適には、噴射ノズルの先端において160~200m/s程度であるが、これらに制限されるものではなく、装置の大きさ、種類及び使用目的などに応じて、例えば、微細噴射孔の孔径、孔数などを変更することにより、任意に設定することができる。
【0027】
本発明では、例えば、上記微細噴射ノズルから噴射された水蒸気を加熱室に導入するが、その際に、噴射ノズルの先端に近接して設置した循環ファンに水蒸気を噴射して、循環ファンの回転による衝撃力と風力により所定の風向に水蒸気を移送すると共に、それらの風向に合わせて設置された加熱ヒーターに水蒸気を接触させて、水蒸気をその温度を低下させずに加熱室全体に導入し、該加熱室を所定の温度に保持された水の気体で置換し、湿度95%以上、酸素濃度1.0%以下、より好適には、湿度99.0%以上、酸素濃度1.0%以下のガス成分で加熱室を満たすことにより加熱室内に気体水雰囲気を形成する。
【0028】
微細噴射口から噴射された熱水及び/又は水蒸気は、循環ファンに衝突することで、更に微細化する。また、循環ファンにより形成された風向の風下に設置された加熱ヒーターは、その表面が噴射された熱水及び/又は水蒸気に、直接的に、かつ広面積で接触するように、好適には、噴射された熱水及び/又は水蒸気をなるべく遮るような位置及び方向に設置する。それにより、加熱ヒーターによる熱を噴射された熱水及び/又は水蒸気に効率良く伝達し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の温度低下を、確実に防止することが可能となる。
【0029】
上記循環ファンは、好適には、例えば、加熱室内部の後面側の中央に設置され、噴射された熱水及び/又は水蒸気を、加熱室内部の左側面部及び右側面部に位置するダクト内に設置された加熱ヒーターに直接接触するように移送する機能を有するものが例示されるが、これらに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。
【0030】
また、上記加熱ヒーターは、好適には、例えば、ヘアピン形状のシーズヒーターなどを多数設置して、噴射された熱水及び/又は水蒸気との接触面積が増えるようにしたものが例示されるが、これらに制限されるものではなく、同様の機能を有するものであれば同様に使用することができる。上記循環ファンの回転数及び回転方向は、装置の大きさ、ダクトの位置、形状、加熱ヒーターの形状、設置位置などを考慮して、噴射された熱水及び/又は水蒸気がダクト内に循環風として循環し得るように設定される。
【0031】
加熱室は、気体水で置換された段階で、被加熱材料を該加熱室に導入し、上記気体水を熱媒体として利用して、所定の加熱処理を行う。加熱室に導入した被加熱材料は、所定の加熱処理を施した後、適宜のタイミングで加熱室の外に搬出され、被加熱材料に接触した気体水は、気体水排出口から系外に排出される。加熱室内に噴射された熱水及び/又は水蒸気は、まず、循環ファンに衝突し、微細化され、ダクトに移送され、ダクト内に設置した加熱ヒーターに接触し、所定の温度に加熱された後、加熱室内に導入された被加熱材料に接触し、熱媒体として利用された後、系外に排出される。
【0032】
加熱媒体の熱エネルギーは、被加熱材料の加熱処理の熱源として利用されるが、本発明では、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、そのまま、被加熱材料に接触するのではなく、一旦、ダクト内に設置された加熱ヒーターにより加熱された後に、被加熱材料に接触し、噴射された熱水及び/又は水蒸気の熱量を低下させることなく、被加熱材料を加熱するので、被加熱材料を効率よく加熱することが可能となる。
【0033】
また、噴射された熱水及び/又は水蒸気は、高速で循環ファンに衝突し、その衝突により衝撃で水滴が分割されて、更に、微細化されると共に、更に、加熱ヒーターで加熱されるので、この微細化された高温の加熱媒体は、肉眼観察で完全に透明な高熱伝導率の高温の水粒子からなり、被加熱材料の内部への浸透性が高く、一旦、被加熱材料の内部へ浸透して熱交換を行った加熱媒体に対し、後続の高温の加熱媒体が熱エネルギーをたえず供給するので、高熱伝導率を有する熱が連続的に内部へ移動し、加熱媒体が、効率よく被加熱材料の内部へ浸透し、短時間で被加熱材料を加熱することができる。
【0034】
本発明において、上記噴出された熱水及び/又は水蒸気の水滴は、循環ファンに衝突することで更に微細化され、殺菌性の微細な水粒子として加熱室に充満する。実験の結果、給水タンクから採取された水のpHは約6.9~7.1であったが、この殺菌性微細水粒子のpHは、約5.2~5.8であり、105℃以上の高温条件と協動して、加熱室内で高殺菌性雰囲気を形成する。したがって、本発明を、被加熱材料に適用した場合には、高殺菌性雰囲気下で、被加熱材料を加熱処理することができるので、加熱と同時に高殺菌効果を付与できる。本発明において、上述のアクアガスによる加熱方法及びその装置、その余の具体的な構成については、本発明者らが開発し、報告した公知文献に記載の方法及び装置を適宜採用することができる。
【0035】
本発明では、後記する実施例に示されるように、アクアガスの優位性を確認したエゴマ葉の乾燥素材の調製方法と同様にして、1)微細水滴を含有した100~130℃程度の常圧の過熱水蒸気を用いた農産物の乾燥方法及びその素材、2)微細水滴を含有した100~130℃程度の常圧の過熱水蒸気を用いた農産物の乾燥方法及びその素材、3)微細水滴を含有した100~130℃程度の常圧の過熱水蒸気を用いた、機能性成分を有する農産物について、機能性成分の酸化劣化を抑制した乾燥方法及びその素材、を提供することができる。
【0036】
本発明によるアクアガス乾燥のメリットは、酸素濃度1%以下の低酸素状態、及び高熱効率の点であり、例えば、エゴマ(葉)の乾燥に際して、従来法と比較すると、その特徴は、以下の通りである。尚、本発明は、エゴマの他に、シソ、バジルにも好適に適用可能であり、その他、抗酸化成分を含む植物素材であれば、同様に好適に適用することが可能である。
1)αリノレン酸
通風乾燥(80%) 過熱水蒸気・アクアガス(90-100%)
2)ロスマリン酸
通風乾燥(20%)、過熱水蒸気(60%)、アクアガス(100%)
3)可溶性総ポリフェノール量も良好な残存性を示す。
4)通風乾燥10時間では、生残微生物が確認される。
【0037】
本発明による植物原料のアクアガス乾燥技術では、低酸素状態、高熱効率で、植物原料を低侵襲的に加熱・殺菌・乾燥処理することが可能であり、それにより、植物の抗酸化成分の減耗抑制と、植物の変・退色の抑制と、植物の一般生菌数の低減・並びに高効率な水分の蒸発を図ることによる従来の植物乾燥物にみられない、品質及び外観共に良好かつ高品質の植物乾燥物を調製し、提供できるという顕著な作用効果が得られる点で、本発明は、既存の植物乾燥方法乾燥製品と本質的に区別性を有するものである。
【0038】
本発明は、植物の水分を単に蒸発、乾燥させるだけではなく、低酸素状態、高熱効率の条件で、植物を低侵襲的に加熱・殺菌・乾燥することを可能とすることを特徴とするものであり、特に、酸素濃度1%以下の低酸素条件で、抗酸化成分を含む植物素材を加熱・殺菌・乾燥する方法として好適に使用されるものであり、抗酸化成分高含有植物素材であれば、その植物の種類に制限されることなく、あらゆる種類の植物原料に好適に適用可能である。本明細書では、抗酸化成分高含有植物の代表例であるエゴマ(葉)を実施例として示したが、本発明は、これと同様に、あらゆる種類の植物原料に適用できるものである。
【0039】
本発明では、アクアガス乾燥処理後、過熱水蒸気乾燥処理するアクアガス乾燥と過熱水蒸気乾燥を併用する場合、実操業の面で、例えば、連続処理工程において、アクアガス雰囲気を過熱水蒸気雰囲気に切り替えるバッチ処理、あるいはラインで処理する場合に、アクアガス雰囲気と過熱水蒸気雰囲気をセットにして組み込んだ連続処理で、乾燥操作の処理時間を大幅に短縮したり、乾燥操作の効率を大幅に高めたりすることが可能になる、という格別の効果が得られる。このように、アクアガス乾燥は、過熱水蒸気乾燥と組み合わせることで、品質保持の面では、アクアガス単独処理と同等以下であり、相乗効果は認められないが、実操業の面では、これらの処理を併用した場合に、乾燥の操作を短時間に高効率に、かつ多角的に行うことが可能となるという実用上の利点がある。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)植物や農産物を抗酸化成分による抗酸化性能などの機能性を損なうことなしに、高い歩留まり、旬の高品質維持、簡便性の向上、長期間常温保存性及びその保存安定性などの優位性を付与した乾燥材料として供給することが可能な乾燥植物や乾燥農産物とその加工処理方法を提供することができる。
(2)植物や農産物の高品質化加工及びその供給が可能となり、生産農家には作物の高付加価値化と出荷調整が、産地加工業者には産地振興が、そして、消費者には食の安心と安全確保と食生活の健全化が実現可能となる。
(3)様々な機能性を有する農産物の素材化が可能であり、アクアガス加熱装置で乾燥処理を行うことで、農産物の乾燥素材化の品質の向上、更に、システム化を図ることでコスト低減が期待される。
(4)これらの農産物の乾燥素材は、国産農産物を原料にして長期保存できることから、多収穫時に処理して、通年供給することで、国産農産物の利用率の向上や自給率向上にも寄与できる。
(5)本発明は、従来、真空凍結乾燥法で加工されている、機能性や薬効が重要視される漢方への応用や、油を多く含み酸化が懸念される魚介類、海草類などの乾燥への応用も可能であり、多くの分野へ応用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の例によって何ら限定されるものではない。

【0042】
実施例1
本実施例では、植物茎葉乾燥物の調製、及びそれに含まれるα-リノレン酸とロスマリン酸の含有量の評価を行った。
1.植物茎葉乾燥物の調製
以下の装置、原料を使用して、植物茎葉乾燥物の調製を行った。
(1)使用装置
1)アクアガス装置(アクアクッカー)
アクアガス装置(アクアクッカー)として、(株)タイヨー製作所(北海道北斗市清水川)製、アクアガス試作1号機、を使用した。この装置を、供給水量(spm)160、180、200及び300、庫内設定温度120℃、の条件で使用した。
2)過熱水蒸気装置
過熱水蒸気装置として、(株)中国メンテナンス製、SDAHW、を使用した。
3)温風乾燥装置
温風乾燥装置として、八尋産業(株)(岐阜県美加茂市森山町)社製の減圧平衡発熱乾燥機(BCD-2000U)、を使用した。
4)凍結乾燥装置
凍結乾燥装置として、MRTIN CHRIST Gefriertrocknungsanlagen(Germany)社製のALPHA-1-4、を使用した。

【0043】
(2)使用原料
乾燥に供する原料植物茎葉として、エゴマの生葉(葉身)を使用した。エゴマの生葉(葉身)は、島根県農業技術センターの圃場において栽培したものを用いた。

【0044】
(3)乾燥処理
エゴマの生葉(葉身)25gを、洗浄後、水分を取り除き、これを、それぞれ下記(a)、(b)、(c)及び(d)の四通りの乾燥工程に供して、水分含量が10%以下になるまで乾燥処理を行った。
(a)アクアガス乾燥
以下の条件で、アクアガス乾燥を行った。
1)120℃・160spmで乾燥(所要時間:10分)
2)120℃・180spmで乾燥(所要時間:10分)
3)120℃・200spmで乾燥(所要時間:20分)

【0045】
(b)過熱水蒸気乾燥
以下の条件で、過熱水蒸気乾燥を行った。
4)120℃で乾燥(所要時間:10分)
5)180℃で乾燥(所要時間:5分)

【0046】
(c)アクアガス処理後、過熱水蒸気乾燥
以下の条件で、アクアガス処理後、過熱水蒸気乾燥を行った。
6)120℃・200spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、120℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:8分)
7)120℃・200spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、150℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:5分)
8)120℃・200spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、180℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:3分)

【0047】
9)120℃・300spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、120℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:8分)
10)120℃・300spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、150℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:5分)
11)120℃・300spmでアクアガス処理(所要時間:2分)後、180℃で過熱水蒸気乾燥(所要時間:3分)

【0048】
(d)温風乾燥
以下の条件で、温風乾燥を行った。
12)生葉をそのまま50℃で乾燥(所要時間:10時間)
13)生葉を2分間の蒸熱処理(ブランチング)を行った後、50℃で温風乾燥(所要時間:10時間)
14)生葉を5分間の蒸熱処理(ブランチング)を行った後、50℃で温風乾燥(所要時間:10時間)

【0049】
(4)対照実験1
以下により、対照実験(対照実験1)を行った。
上記エゴマの生葉(葉身)25gを、凍結乾燥に供した。凍結乾燥は、以下の条件で行った。すなわち、エゴマの生葉(葉身)を、-30℃で、一昼夜冷凍した後、0.05Torr前後の真空度で、72時間凍結乾燥した。生葉を凍結乾燥することにより、植物茎葉中のα-リノレン酸とロスマリン酸の含量は、ほとんど低下しなかった。このことから、当該凍結乾燥処理によって得られる乾燥物(対照品1)中のα-リノレン酸とロスマリン酸の含量を、原料含量相当量とした。

【0050】
2.水分含量、脂肪酸含量及びロスマリン酸含量の測定
得られた各乾燥物について、α-リノレン酸含量、ロスマリン酸含量及び水分含量を、以下の方法に従って、測定した。

【0051】
(1)α-リノレン酸含量の測定方法
乾燥物0.5gに、クロロホルム:メタノール=2:1(v/v)液20mLを加え、ポリトロン式ホモジナイザーで1分間磨砕した後、2,000rpmで、10分間遠心した。得られた上清100μLを、共栓付き試験管に量り取り、100μg/mLのTCA(Tricosaenoic acid、内標)100μL、及びメタノール2mLを加えて、冷却した後、塩化アセチル200μLを加えて、100℃で、1時間加熱した。

【0052】
これを冷却した後、オクタン400μL及び10%(w/v)食塩水に溶解した0.5N水酸化ナトリウム溶液5mLを加え、10分間激しく振とうした。次いで、2,500rpmで、10分間遠心後、得られた上層(オクタン層)を、ガスクロマトグラフ(GC)用バイアル瓶に分注し、以下のGC分析に供して、α-リノレン酸含量を測定した。

【0053】
GC分析は、以下の条件で行った。
カラム:DB-WAX(0.25mm×30m,J&W Scientific製)
カラム温度:100℃(1分保持) → 20℃/分で昇温 → 180℃ → 2℃/分で昇温 → 240℃ → 4℃/分で昇温 → 260℃(5分保持)
検出器:FID
検出器温度:260℃
試料気化室温度:260℃
試料注入量:1μL

【0054】
(2)ロスマリン酸含量の測定方法
粉末状にした乾燥物0.4gに、80容量%メタノール水溶液を50mL加え、80℃で、還流抽出を1時間行った後、80容量%のメタノール水溶液により100mLに定容した。この抽出液を、0.45μmのフィルタでろ過した後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析に供して、ロスマリン酸含量を測定した。

【0055】
HPLC分析は、以下の条件で行った。
カラム:Shim-pack XR-ODS(4.6×100mm,(株)島津製作所製)
カラム温度:40℃
溶離液:水/アセトニトリル=80/20~20/80(0.2% ギ酸を含む)のグラジエント溶出
流速:1mL/分
検出器:UV280nm
試料注入量:10μL

【0056】
(3)水分含量の測定方法
予め恒量になった秤量皿に、乾燥物0.5gを採取して精秤した。これを、105℃の乾燥器で乾燥した後、デシケーターに移して放冷し、重量を測定した。恒量になるまで乾燥(2~4時間)し、放冷、重量測定を繰り返し、元の試料と乾燥後の試料の重量の差から、元試料の水分含量を算出した。

【0057】
その結果を表1に示す。表中、( )内の記載は、対照品1(凍結乾燥品)のα-リノレン酸含量(原料含量相当量)、及びロスマリン酸含量(原料含量相当量)を100とした場合の、(a)アクアガス乾燥物、(b)過熱水蒸気乾燥物、(c)アクアガス処理後、過熱水蒸気乾燥物、及び(d)温風乾燥物、中に含まれる対応成分の割合(相対比)を示す。

【0058】
【表1】
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【0059】
この結果から判るように、エゴマの生葉(原料)を温風乾燥すると、前処理としての蒸熱処理の有無にかかわらず、α-リノレン酸の収率が80%台にまで低下したが、アクアガス処理、過熱水蒸気処理、及びアクアガス処理後過熱水蒸気処理(併用)で乾燥することにより、エゴマの生葉(原料)に元来含まれるα-リノレン酸量をほぼ維持した状態で(高含量のままで)、乾燥物を調製することができた。また、アクアガス処理あるいは過熱水蒸気処理の条件別では、処理時間が短いほど、あるいは処理温度が低いほど、α-リノレン酸の収率は、高いままで維持させることができた。

【0060】
ロスマリン酸についても、同様に、エゴマの生葉(原料)を温風乾燥すると、前処理として蒸熱処理をしない場合は、その量は20%台にまで激減し、また、過熱水蒸気処理のみで乾燥すると、その量は50%台にまで激減した。しかし、アクアガス処理、あるいはアクアガス処理後過熱水蒸気処理(併用)して乾燥することにより、生葉(原料)のロスマリン酸を損失することなく、ロスマリン酸を高い割合(高収率)で含む乾燥物を調製することができた。

【0061】
これらのことから、アクアガス処理による乾燥は、α-リノレン酸及びロスマリン酸を高い割合(高収率)で含む植物茎葉の乾燥物の調製方法として有効であることが判明した。アクアガスと過熱水蒸気併用処理は、品質保持の面では、アクアガス単独処理と同等以下であり、相乗効果は認められなかったが、実操業の面では、乾燥時間など、処理時間の短縮には効果が期待された。なお、本発明は、植物茎葉中に、α-リノレン酸及びロスマリン酸を高い割合で含む植物として、上記エゴマのほか、シソ、アマ、チア及びバジルについても、同様に適用可能であった。

【0062】
実施例2
本実施例では、乾燥エゴマ葉の色調測定を行った。
表2に示す各種の方法で調製したエゴマ葉乾燥物について、コニカミノルタ社製CR-300を用いて、色調(L、a、b値)を測定した。その結果を表3に示す。なお、L値は明度を示し、a値は緑から赤方向の色調を示し、b値は青から黄方向の色調を示している。すなわち、a値が小さいほど(マイナスの数値が大きいほど)、緑色をよく残していることを意味している。

【0063】
【表2】
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【0064】
【表3】
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【0065】
この結果から判るように、エゴマの生葉(原料)をアクアガス乾燥することにより(120℃・200spm・20min処理を除く)、エゴマの生葉(原料)が元来持つ緑色の色調をほぼ維持した(a値が低い)状態で、乾燥物を得ることができた。一方、過熱水蒸気乾燥の単独処理では、温度が高くなるにつれて、褐変化(一部焦げが発生)する傾向が認められた。アクアガス処理後過熱水蒸気併用乾燥では、品質保持の面では、アクアガス単独処理と同等以下であり、相乗効果は認められなかったが、実操業の面では、乾燥時間など、処理時間の短縮には効果が期待された。

【0066】
実施例3
本実施例では、乾燥エゴマ葉の微生物検査を行った。
実施例1に記載の各種の方法で調製したエゴマ葉乾燥物について、一般生菌数及び大腸菌群を、定法(一般生菌数:混釈平板培養法、大腸菌群:BGLB培地法)により評価した。すなわち、乾燥物1gを精秤し、99gの滅菌生理食塩水を加えて、ストマッカーにより1分混和したものを試料原液として、更に、これを生理食塩水で10倍毎に段階希釈した試料液を調製した。

【0067】
この試料液中の微生物を、一般生菌数は、標準寒天培地を用いた混釈培養法(35℃・48時間培養)で発生したコロニー数をカウントすることにより評価し、大腸菌群は、BGLB培地を用いた培養(35℃・48時間培養)で発酵管へのガス発生の有無を確認することにより評価した。その結果を表4に示す。

【0068】
【表4】
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【0069】
この結果から判るように、対照品1(凍結乾燥品)の乾燥物の生菌数が生葉(原料)の生菌数と同じであり、原料では10の5乗オーダーの一般生菌数が存在し、大腸菌群も陽性であった。これに対し、アクアガス乾燥、過熱水蒸気乾燥、アクアガス処理後過熱水蒸気併用乾燥、あるいは蒸熱処理後温風乾燥をすることにより、これらの微生物は検出されなくなった。ただし、前処理として、蒸熱処理を行わずに温風乾燥した場合には、一般生菌数が残存した。

【0070】
これらのことから、アクアガス処理あるいは過熱水蒸気処理の相乗効果の有無は不詳ながら、アクアガス乾燥単独処理もしくはアクアガス処理後過熱水蒸気併用処理による乾燥は、生葉(原料)に存在する微生物を効果的に殺菌する手段として有効であることが判明した。

【0071】
実施例4
本実施例では、乾燥エゴマ葉の可溶性総ポリフェノール含量とDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)ラジカル捕捉活性(抗酸化活性)の測定を行った。
実施例1に記載の各種の方法で調製したエゴマ葉乾燥物について、可溶性総ポリフェノール含量と、抗酸化活性の指標としてのDPPHラジカル捕捉活性を測定した。

【0072】
1)可溶性総ポリフェノール含量の測定
エゴマ葉乾燥物の可溶性総ポリフェノール含量は、Folin-Ciocalteu法で測定した。すなわち、エゴマ葉乾燥物を70容量%含水エタノールで一晩抽出した後、遠心分離し、得られた上清である、エゴマ葉乾燥物抽出液を段階希釈し、その80μLに、水で5倍希釈したフェノール試薬と10%炭酸ナトリウム水溶液を、それぞれ80μL加え、60分間放置した後、分光光度計で650nmの吸光度を測定した。この測定値から、エゴマ葉乾燥物1gあたりの可溶性総ポリフェノール量を、没食子酸相当量として算出した。

【0073】
2)DPPHラジカル捕捉活性の測定
抗酸化活性は、安定なラジカルであるDPPHを用い、DPPHラジカルの捕捉活性を求めることにより評価した。DPPHラジカル捕捉活性は、DPPH溶液に、エゴマ葉乾燥物を70容量%含水エタノールで一晩抽出した後、遠心分離し、得られた上清である、エゴマ葉乾燥物抽出液を加えた前後での520nmの吸光度の変化(DPPHの紫色の退色度合)を測定することにより求め、エゴマ葉乾燥物1gあたりのトロロックス(Trolox)相当量として算出した。その結果を表5に示す。

【0074】
【表5】
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【0075】
この結果から判るように、エゴマの生葉を温風乾燥した場合[12)]は、可溶性総ポリフェノール残存量が対照品1(凍結乾燥品)の70%まで低下した。これに対して、アクアガス乾燥単独処理[1)~3)]では、増加する傾向にあった。一方、アクアガス処理後過熱水蒸気併用乾燥[6)~11)]では、増加傾向にはあるものの、品質保持の面では、アクアガス単独処理[1)~2)]と同等以下であり、相乗効果は認められなかったが、実操業の面では、乾燥時間など、処理時間の短縮には効果が期待された。過熱水蒸気乾燥の単独処理[4)~5)]では、アクアガス単独処理あるいはアクアガス処理後過熱水蒸気併用乾燥に比べて、可溶性総ポリフェノール含量は減少した。

【0076】
アクアガス乾燥単独処理は、従来の蒸熱処理後温風乾燥した場合と遜色ないレベルで、可溶性総ポリフェノールを維持していた。乾燥エゴマ葉中の可溶性総ポリフェノール含量とDPPHラジカル捕捉活性の値は、よく相関していることが確認された。これらのことから、アクアガス処理による乾燥は、生葉(原料)が元来持つ可溶性総ポリフェノールとDPPHラジカル捕捉活性を良好に維持する手段として有効であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上詳述したように、本発明は、アクアガスを用いた加熱・殺菌・乾燥植物とその調製方法に係るものであり、本発明により、植物や農産物を機能性を損なうことなしに、高い歩留まり、旬の高品質維持、簡便性の向上、長期間常温保存性及びその保存安定性などの優位性を付与した乾燥素材として供給することが可能な、乾燥植物や乾燥農産物とその加工処理方法を提供することができる。そして、本発明により、植物や農産物の高品質化加工及びその供給が可能となり、生産農家には、作物の高付加価値化と出荷調整が、産地加工業者には、産地振興が、そして、消費者には、食の安心と安全確保と食生活の健全化が実現する。様々な機能性を有する農産物の素材化が可能であり、アクアガス加熱装置で乾燥処理を行うことで、農産物の乾燥素材の品質の向上と、更に、システム化を図ることで、コスト低減が期待される。これらの農産物の乾燥素材は、国産農産物を原料にして長期保存できることから、多収穫時に処理して、通年供給することで、国産農産物の利用率の向上や自給率向上にも寄与できる。本発明は、アクアガス加熱による、抗酸化成分高含有による機能性を保持した、農産物の加熱、乾燥、殺菌技術と、その乾燥、殺菌植物製品を提供することを可能にするものとして有用である。