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明細書 :サツマイモの栽培方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5483091号 (P5483091)
公開番号 特開2011-217611 (P2011-217611A)
登録日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発行日 平成26年5月7日(2014.5.7)
公開日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発明の名称または考案の名称 サツマイモの栽培方法
国際特許分類 A01G   1/00        (2006.01)
A01G   9/00        (2006.01)
FI A01G 1/00 301Z
A01G 9/00 J
請求項の数または発明の数 2
全頁数 14
出願番号 特願2010-086408 (P2010-086408)
出願日 平成22年4月2日(2010.4.2)
審査請求日 平成24年7月9日(2012.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】安達 克樹
【氏名】大嶺 政朗
【氏名】杉本 光穂
【氏名】石井 孝典
【氏名】新美 洋
【氏名】鈴木 崇之
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 実開昭51-51253(JP,U)
実開平1-87639(JP,U)
特開2002-233236(JP,A)
秋田重男・小林仁,直播甘藷の種藷肥大抑制に関する研究 種藷の肥大に関与する条件,日本作物学会紀事,1962年,第30巻,第127頁~第130頁
調査した分野 A01G 1/00
A01G 9/00 - 9/02
特許請求の範囲 【請求項1】
種芋を栽培土壌中に植え付ける植付工程を包含し、
上記種芋は、その肥大を物理的に抑制するための資材としての、育苗用培土又は土壌が充填された栽培容器内に収容されており、
上記栽培容器は、上記種芋から出芽する芽を外部に出すことが可能な開口部を有しており、
上記植付工程の前に、上記種芋を上記栽培容器内において出芽させる出芽工程をさらに包含していることを特徴とするサツマイモの栽培方法。
【請求項2】
上記植付工程において、上記種芋を植え付ける深さは15~20cmであることを特徴とする、請求項1に記載の栽培方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモの栽培方法、栽培容器及び農業資材に関し、特に、サツマイモを直播栽培する栽培方法、栽培容器及び農業資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サツマイモは、種芋から萌芽した苗をある程度の大きさになるまで苗床で育苗した後、採苗して圃場に植え付ける(挿苗する)ことによって栽培されている(非特許文献1及び3)。しかしながら、このような栽培方法は育苗・採苗作業及び植え付け作業に労力がかかり、サツマイモの労働生産性が低下する。サツマイモを省力栽培するための技術として、種芋を直接圃場に植え付ける直播栽培は以前より研究されている(非特許文献1)。「直播曝光栽培法」や「切断直播栽培法」と呼ばれる栽培法が提唱され、昭和49年には直播専用品種「ナエシラズ」(非特許文献2)が命名登録されたが、その後この直播栽培技術は広く活用されていなかった(非特許文献1)。一方で、直播栽培は、近年、サツマイモの労働生産性を向上させるために有効な革新的栽培方法として再び注目されており、直播適性の高い品種として、「ムラサキマサリ」及び「タマアカネ」が知られている(「ムラサキマサリ」2004年8月18日品種登録、「タマアカネ」2009年5月14日品種出願)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】坂井健吉,「ものと人間の文化史 90 さつまいも」,V章.サツマイモの栽培法、p.193~p.241,法政大学出版局,1999.
【非特許文献2】坂井健吉,「ものと人間の文化史 90 さつまいも」IV章.サツマイモの品種改良,p.97~p.191,法政大学出版局,1999.
【非特許文献3】川城英夫編,「新野菜つくりの実際 根茎菜-誰でもできる露地・トンネル・無加温ハウス栽培-」,サツマイモ,p.118~p.129,農山漁村文化協会発行,2001.
【非特許文献4】九州沖縄農業研究センター・九州畑輪作研究チーム,平成20年度九州沖縄農業研究センター研究成果情報「サツマイモ「ムラサキマサリ」の2分割芋付き苗の調製と移植栽培による収量性」,2008.
【非特許文献5】杉本光穂・安達克樹・澤村宣志、「50穴深型セルトレイを利用したサツマイモ育苗試験」、第71回九州農業研究発表会要旨集、p.22,2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サツマイモの直播栽培においては、植え付けた種芋の間の出芽のバラツキが大きいこと、種芋の肥大を起しやすいこと等の問題がある。親芋(種芋の収穫時の呼称)は、形状及び品質において子芋に劣るため商品価値が低く、通常は処分されている。そのため、種芋が肥大した結果として生じる親芋肥大によって、処分に要する労力及びコストがかさみ、生産者の負担となる。また、サツマイモの直播栽培は、現状では「ムラサキマサリ」等の数品種で適用されているのみであり、「コガネセンガン」等の他の多くの品種は直播適性が低く、直播栽培を適用できなかった。
【0005】
最近、直播適性の高い品種「ムラサキマサリ」の二分割芋付き苗の調製とその移植栽培による収量性について報告されている(非特許文献4)。直播適性の低い品種「コガネセンガン」についても同様の方法で二分割芋付き苗を調製した報告があるが(非特許文献5)、「コガネセンガン」の二分割芋付き苗を移植栽培すると収穫時の親芋肥大が問題となっている。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、種芋の肥大を抑制した、直播栽培によるサツマイモの栽培方法、栽培容器及び農業資材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るサツマイモの栽培方法は、種芋を栽培土壌中に植え付ける植付工程を包含し、上記種芋は、その肥大を抑制するための資材によって被覆されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係るサツマイモの栽培方法において、上記種芋は、育苗用培土又は土壌が充填された栽培容器内に収容されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る栽培方法は、上記植付工程の前に、上記種芋を上記栽培容器において出芽させる出芽工程をさらに包含していることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る栽培方法において、上記種芋は、サツマイモを塊根の伸張方向に交差する方向に二分割して得られた一方であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る栽培方法において、上記種芋は、コガネセンガンの種芋であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る栽培方法において、上記栽培容器の容積は、上記種芋の体積と同一以上、上記種芋の体積の5倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る栽培方法において、上記種芋は、シート状の資材によって被覆されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係るサツマイモの栽培容器は、育苗用培土又は土壌が充填された内部に種芋を収容し、栽培土壌中に植え付けられるものであることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る栽培容器は、容積が、上記種芋の体積と同一以上、上記種芋の体積の5倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る農業資材は、育苗用培土又は土壌と萌芽した種芋とを収容した栽培容器を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るサツマイモの栽培方法によれば、種芋を栽培土壌中に植え付ける植付工程を包含し、上記種芋は、その肥大を抑制するための資材によって被覆されているので、サツマイモの直播栽培において、種芋の肥大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る栽培容器と種芋(品種「コガネセンガン」)とを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る栽培容器において出芽した種芋(品種「コガネセンガン」)を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る栽培方法により栽培したサツマイモ(品種「コガネセンガン」)を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る栽培方法により栽培したサツマイモの親芋(品種「コガネセンガン」)を示す図である。
【図5】二分割芋付き苗を移植する栽培方法により直播栽培したサツマイモの親芋(品種「コガネセンガン」)を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る栽培方法と従来の栽培方法とにおいて、芋収量(品種「コガネセンガン」)を比較したグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る栽培方法と二分割芋付き苗を移植する栽培方法とにおいて、親芋(品種「コガネセンガン」)の乾物重量を比較したグラフである。
【図8】本発明の一実施形態に係る栽培方法と従来の栽培方法とにおいて、親芋(品種「コガネセンガン」)の生重量を含む総芋収量を比較したグラフである。
【図9】本発明の一実施形態に係る栽培方法と従来の栽培方法とにおいて、収量調査区域におけるサツマイモ(品種「コガネセンガン」)の地上部の乾物重量を比較したグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係る栽培方法と二分割芋付き苗を移植する栽培方法とにおいて、親芋(品種「コガネセンガン」)のみ反復して掘り上げた場合の親芋の乾物重量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔サツマイモの栽培方法〕
本発明に係るサツマイモの栽培方法は、種芋を栽培土壌中に植え付ける植付工程を包含し、上記種芋は、その肥大を抑制するための資材によって被覆されていることを特徴としている。

【0020】
本発明に係る栽培方法において用いられる、種芋の肥大を抑制するための資材は、栽培土壌に植え付けた種芋が肥大するのを物理的に抑制することによって、収穫時の親芋肥大を抑制することが可能なものであればよい。したがって、種芋を被覆することが可能であり、種芋の成長により損壊せず、その成長を抑えることが可能な強度を有する資材を好適に用いることが可能である。このような資材として、後述する栽培容器、ビニール製等のシート状の資材等が挙げられる。

【0021】
したがって、本発明に係るサツマイモの栽培方法において、上記種芋は、育苗用培土あるいは土壌が充填された栽培容器内に収容されていることが好ましい。このように、栽培容器内に種芋を収容することによって種芋を被覆し、種芋の肥大を抑制することができる。

【0022】
なお、本明細書中において、「種芋」は、栽培土壌への植え付け前に栽培容器に収容した芋を意図しており、「親芋」は、種芋を収容した栽培容器を本圃に植え付けて、茎葉が茂り、子芋が太りはじめた時に、この子芋と対比して種芋のことを「親芋」と呼ぶのであって、収穫時の栽培容器内の芋(元の種芋)を意図している。

【0023】
本発明に係る栽培方法より栽培するサツマイモは、ヒルガオ科サツマイモ属に属する植物であり、学名:Ipomoea batatas Lで表されるものである。このようなサツマイモにおいて、特にその品種は限定されないが、例えば、焼酎原料用品種であればコガネセンガン、ムラサキマサリ、ジョイホワイト、ときまさり等の品種、加工用品種であればアケムラサキ、アヤムラサキ、農林ジェイレッド、サニーレッド、ムラサキマサリ、コガネセンガン等の品種が挙げられる。これらの中でも、焼酎原料用の需要が大きい「コガネセンガン」が好ましい。「コガネセンガン」を直播栽培したいという生産者からの要望がある。

【0024】
本発明によれば、直播栽培時の種芋の肥大を抑制することが可能であるので、収穫時の親芋肥大を抑制し、親芋の処分にかかる労力及びコストを削減することができる。また、本発明によれば、従来は直播適性が低いために直播栽培することが困難であったコガネセンガンのような品種であっても、直播栽培することが可能である。また、一般に、直播栽培のよい点には旱魃などの不良環境に強い、生育が盛んである、などの諸点があり(非特許文献1)、一株ごとの生育が盛んなので栽植密度を下げることができるなど、直播適性の低いサツマイモ品種の労働生産性を向上させることができる。コガネセンガンは焼酎原料用サツマイモの主力品種である。

【0025】
(植付工程)
本発明に係る栽培方法の植付工程においては、育苗用培土又は土壌が充填された栽培容器内に収容された種芋を、栽培土壌中に植え付ける。

【0026】
本発明において用いられる栽培容器は、種芋を収容可能に構成されていればよい。したがって、栽培容器の容積は種芋の体積よりも大きく、種芋の体積と同一以上、種芋の体積の5倍以下の範囲内であることが好ましく、種芋の体積と同一以上、種芋の体積の3倍以下の範囲内であることがより好ましい。また、栽培容器の容積は、50~150mL程度であることが好ましく、より好ましくは50~100mL程度である。さらに、栽培容器の外径は、30~60mm程度であることが好ましく、より好ましくは30~40mm程度である。また、栽培容器の深さは、50~100mm程度であることが好ましく、より好ましくは50~80mm程度である。さらに、栽培容器の口径は、30~60mm程度であることが好ましく、より好ましくは30~40mm程度である。本発明においては、栽培容器として、例えば、容積100mL、外径48.8mm、深さ87.1mm、口径32.2mmのプラスチック容器を用いることができる。

【0027】
また、本発明において用いられる栽培容器は、種芋の肥大を物理的に抑制可能なように、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料により形成されたプラスチック容器、陶器製容器、ガラス容器、腐蝕しにくい金属製容器等であることができるが、これに限定されない。また、栽培容器の形状は、出芽した芽を外部に出すことが可能な開口部を有している限り、特に限定されないが、(i)種芋の収納が容易となるように容器の外径と開口部の口径がほぼ同じ大きさであること、(ii)本圃栽培中に肥大する親芋が、容器外部へ自然にはみ出して肥大抑制が緩くなることを避けるために、開口部に向かって適度に(僅かに)すぼまる形状であること、又は(iii)肥大しつつある親芋が容器外へはみ出しにくくなるように適度な深さと、場合によっては容器内壁に僅かな引っ掛かり突起又は滑り止め構造体があること等の条件を満たす形状であることが好ましい。また、栽培容器には、水抜き用の穴が設けられていることが好ましい。

【0028】
本発明において用いられる栽培容器は、例えば、現在使用されている定型の育苗用セルトレイ(30cm×60cm)の大きさに納まるように、縦×横×高さを約40mm×約40mm×約70mmの大きさであってもよい。栽培容器をこのように設計することによって、上記セルトレイに、1トレイあたり7×14=98セルを設置できる。

【0029】
本発明に係る栽培方法においては、上記のような栽培容器内に種芋を収容し、栽培容器と共に種芋を圃場に植え付けて直播栽培するので、親芋(種芋)が栽培容器よりも大きくなるのを物理的に抑制することが可能であり、かつ商品価値のある子芋の生育には影響しない。したがって、本発明によれば、サツマイモの親芋(種芋)の肥大を抑制しつつ、子芋の生産性を向上させることができる。

【0030】
本発明において用いられる種芋は、各品種のサツマイモの植物体から収穫されたものであればよく、植え付けの前年に収穫され種芋貯蔵庫等で貯蔵された芋又は商業的に入手可能な芋のうち、傷がなく、病原菌等に感染していないものであることが好ましい。特に、ウイルス病徴のないサツマイモから採取された種芋であることが好ましい。また種芋は、植え付け前に殺菌してから用いてもよい。本発明においては、重量30~100g程度の芋を塊根の伸張方向に交差する方向に二分割したもののうちの一方を種芋として用いることができる。芋を二分割したうちの1つを種芋として用いると、栽培用に確保した種芋数の2倍の数を出芽工程へ進めることができるため、好ましい。また、伸張方向に長すぎて、容器の深さからはみ出す長さの種芋の長さを二分割することによって、その長さが半減するので、種芋を容器内部へ適正に収納することが可能となる。しかしながら、種芋が30g程度で十分に小さい場合には、容器にそのまま入れてもはみ出しがなければ、二分割しないで、丸芋のまま収納してもよい。この際に、丸芋の頭部と尾部との区別が可能な場合には、頭部を上(開口部側)にして収容することが好ましい。

【0031】
本発明において、上述した栽培容器内に育苗用培土又は土壌を入れた後、種芋を栽培容器内に入れ、さらに種芋の上から育苗用培土又は土壌を入れて、種芋を育苗用培土又は土壌中に埋めることによって、容器開口部からの種芋の飛び出しがなく、種芋が土壌に埋まって隠れた状態とすることが好ましい。種芋として、芋を二分割したもののうちの1つを用いる場合、その切断面が栽培容器の底側になるように、栽培容器内に収容すればよい。

【0032】
本発明において、栽培容器内に収容された種芋を容器内で埋めるために、容器内に充填する育苗用培土又は土壌としては、サツマイモの生育に適した土壌であれば特に限定されず、従来一般に用いられている肥料を混ぜ込んだ培養土壌等を用いることができる。容器内に充填する栽培土壌は、水はけのよい酸性から弱酸性の土壌であることが好ましく、病原菌の混入がない土壌を用いることが好ましい。

【0033】
本発明において、栽培容器内に収容された種芋を植え付ける本圃の栽培土壌には、種芋の本圃への植え付け前、マルチ栽培する場合には畦立て及びマルチング前等の時期にサツマイモ栽培用に配合された肥料(例えば,窒素8%,リン酸12%,カリ20%)を10aあたり40kg~80kg程度施すことが好ましいが、本圃土壌の肥沃度、栽培履歴、前作物の残肥量、堆肥施用の有無等を考慮して、施肥量を決定してもよい。本発明においては、基本的には、慣行の挿苗栽培における栽培管理及び肥培管理により好適に栽培が可能である。

【0034】
本発明においては、栽培土壌に設けた高さ20~30cm程度の畦に、栽培容器内に収容された種芋を栽培土壌に植え付ければよい。種芋を植え付ける畦の間隔(畦間)は、80~100cm程度であることが好ましい。また、種芋を植え付ける深さは15~20cmのように、深めに植え付けることが好ましい。その理由は、容器の上方に伸びる茎の節から不定根が発根し、その一部が「つる根芋」の形で塊根(子芋)が形成されるため、栽培容器の上方の茎が5cm~10cm程度栽培土壌に埋まるように植え付けることが好ましいためである。植え付けた種芋の株間は、30~60cm程度であることが好ましい。本発明において、種芋の植え付け時期は、サツマイモの植え付けに適した時期であればよく、一日の平均気温が15~18℃程度である時期、又は九州及び四国等の西日本地帯では4月下旬~5月上旬であることが好ましい。なお、本発明によれば、種芋を直播するため、慣行の挿苗栽培よりも植え付け期を10日~2週間程度早めることが可能である。

【0035】
また、本発明に係る栽培方法においては、上記栽培容器の代わりに、ビニール製等のシート状の資材を用いて、種芋を被覆したものを、栽培土壌中に植え付けてもよい。このようなシート状の資材としては、種芋の肥大を抑制することが可能な強度を有した資材であれば特に限定されない。シート状の資材を用いて種芋を被覆するとき、種芋から出芽茎が滑らかに伸び出すように被覆する。

【0036】
(出芽工程)
本発明に係る栽培方法は、植付工程の前に、種芋を栽培容器内において萌芽させ、容器開口部から出芽させる出芽工程をさらに包含していてもよい。

【0037】
出芽工程においては、栽培容器に収容した種芋を、萌芽に適した環境において萌芽させればよい。例えば、種芋を収容した栽培容器を、自然光が1日あたり11~13時間程度照射する条件下で、温度25℃程度に保たれた環境に置いて培養することによって、種芋を萌芽させ、容器の開口部から出芽させることができる。また、種芋に1回あたり20~60mL程度の水を1日1回又は2日に1回与えてもよく、希釈した液肥等の栄養成分を含む養液等を与えてもよい。

【0038】
出芽工程においては、種芋から萌芽し、容器開口部から出芽した苗の高さ(草丈)が、10~20cm程度まで生長し、本葉の枚数が5~10枚程度になるまで、種芋を培養することが好ましい。これにより、栽培土壌への植え付けに適した苗(容器収納芋付き苗)を得ることができる。出芽工程における種芋の培養期間は、上述した苗が得られる期間であれば特に限定されないが、まとまった数の容器にそれぞれ二分割した種芋を収容して培養すると、3週間~4週間程度の培養期間である程度の数の容器収納芋付き苗を得ることができる。この際、種芋からの出芽にはバラツキがある。

【0039】
また、場合によっては、出芽苗の草丈が僅かな状態から、10cm未満の状態で植え付けることも可能である。さらに、容器に収納する前に種芋を萌芽させ、容器に育苗用培土あるいは土壌と萌芽した種芋とを収納した容器収納萌芽種芋を、直ちに本圃栽培土壌に植え付けるような栽培形態も可能である。これらの場合には、出芽工程における種芋の培養期間は、前者では3週間~4週間程度よりも一層短縮し、また後者では容器へ萌芽種芋を収納した後の培養期間が不要となる。

【0040】
上述した植付工程においては、出芽工程において得られた種芋付き苗を、栽培容器内に収容した状態(容器収納芋付き苗)で、栽培土壌に植え付ければよい。

【0041】
なお、本発明に係る栽培方法においては、容器収納芋付き苗を栽培土壌に植え付けて栽培した後、その収穫時に親芋が収容された栽培容器を回収し、充実した親芋を選定して、次の年の種芋として使用してもよい。これにより、回収した栽培容器から親芋を取り出したり、親芋を取り出した栽培容器を洗浄したりする労力及びコストを削減することができる上に、親芋を有効利用することができる。

【0042】
本発明に係るサツマイモの栽培方法によれば、栽培容器内に収容した種芋を栽培土壌中に植え付けて直播栽培するので、種芋の成長が栽培容器によって妨げられ、種芋(親芋)の肥大を物理的に抑制することができる。また、本発明によれば、親芋(種芋)肥大の抑制が子芋の成長を促進する(茎葉部で得られる光合成産物が親芋でなく子芋に転流することが促進される)ので、商品価値の高い子芋の生産性を向上しつつ、商品価値の低い親芋の収量を低減させることができる。さらに、親芋の収量が低減することによって、その搬出コストを削減することができる。また、本発明によれば、直播適性が低いために従来は直播栽培できなかった「コガネセンガン」のような品種のサツマイモであっても、直播栽培することが可能であるため、様々な品種のサツマイモの直播栽培が可能となり、種芋(親芋)の肥大が抑制され、子芋の生産性を向上させることができる。

【0043】
〔サツマイモの栽培容器〕
本発明に係るサツマイモの栽培容器は、育苗用培土又は土壌が充填された内部に種芋を収容し、栽培土壌中に植え付けられるようになっていることを特徴としている。

【0044】
本発明に係る栽培容器は、種芋を収容可能に構成されていればよく、その容積は種芋の体積よりも大きく、種芋の体積と同一以上、種芋の体積の5倍以下の範囲内であることが好ましく、種芋の体積と同一以上、種芋の体積の3倍以下の範囲内であることがより好ましい。また、栽培容器の容積は、50~150mL程度であることが好ましく、より好ましくは50~100mL程度である。さらに、栽培容器の外径は、30~60mm程度であることが好ましく、より好ましくは30~40mm程度である。また、栽培容器の深さは、50~100mm程度であることが好ましく、より好ましくは50~80mm程度である。さらに、栽培容器の口径は、30~60mm程度であることが好ましく、より好ましくは30~40mm程度である。本発明においては、栽培容器として、例えば、容積100mL、外径48.8mm、深さ87.1mm、口径32.2mmのプラスチック容器を用いることができる。

【0045】
また、本発明に係る栽培容器は、種芋の肥大を物理的に抑制可能なように、ポリエチレン、ポリプロピレン等の材料により形成されたプラスチック容器、陶器製容器、ガラス容器、腐蝕しにくい金属製容器等であることができるが、これに限定されない。例えば、栽培容器として、生分解性プラスチック容器を用いた場合、収穫時に栽培容器を回収し処分する必要がないため、収穫が容易である。一方、本発明に係る栽培容器としては、本圃における栽培の後半において容器の強度が低下し、容器が変形したり割れたりして親芋肥大を抑制できなくなることが確実に避けられるようにする必要がある。

【0046】
さらに、栽培容器の形状は、出芽した芽を外部に出すことが可能な開口部を有している限り、特に限定されないが、(i)種芋の収納が容易となるように容器の外径と開口部の口径がほぼ同じ大きさであること、(ii)本圃栽培中に肥大する親芋が、容器外部へ自然にはみ出して肥大抑制が緩くなることを避けるために、開口部に向かって適度に(僅かに)すぼまる形状であること、又は(iii)肥大しつつある親芋が容器外へはみ出しにくくなるように適度な深さと、場合によっては容器内壁に僅かな引っ掛かり突起又は滑り止め構造体があること等の条件を満たす形状であることが好ましい。また、栽培容器には、水抜き用の穴が設けられていることが好ましい。

【0047】
本発明に係る栽培容器は、サツマイモの種芋を収容して直播栽培するために用いられ、栽培容器の内に収容した種芋を、栽培容器と共に圃場に植え付けて用いられる。したがって、栽培される種芋は、栽培容器よりも大きくなることが物理的に抑制され、地上部の光合成産物が親芋に転流するのを抑え、子芋への転流が促進されるので、商品価値のある子芋の生育が促進される。したがって、本発明によれば、サツマイモの親芋(種芋)の肥大を抑制しつつ、子芋の生産性を向上させることができる。

【0048】
〔農業資材〕
本発明に係る農業資材は、育苗用培土又は土壌と萌芽した種芋とを収容した栽培容器を備えていることを特徴としている。本発明に係る農業資材は、上述した容器収納芋付き苗又は容器収納萌芽種芋を備えていてもよい。
【実施例】
【0049】
図1に示す、容積100mL、外径48.8mm、深さ87.1mm、口径32.2mm、ポリエチレン製のサンプル瓶を、本発明の栽培容器として用いた。サンプル瓶の底に直径9mmの水抜き穴を1個設け、少量の育苗用培土(培養土)を詰めた後、40g~50gの「コガネセンガン」の種芋を塊根の伸張方向に交差する方向に二分割したものの1つをそれぞれ入れた。種芋を入れたサンプル瓶に、種芋の上からさらに育苗用培土(培養土)を詰め、温度25℃に管理した自然光(照射時間:約12時間/日)下で、2日に1回または1日1回の頻度で水遣りを行いながら、種芋を出芽させた。図2に培養24日目の種芋の出芽の様子を示す。
【実施例】
【0050】
培養25日目に、出芽した種芋を収容したサンプル瓶苗を圃場に、深さ約20cm、株間40cmで植え付けた。植え付け前に出芽不良の株を排除した。畦型を高畦、畦間を90cmとし、畦部分(植え付け部)を黒ポリマルチフィルムでマルチングし、慣行施肥条件で栽培した。比較対照のために、二分割した種芋をサンプル瓶に入れずに50穴深型セルトレイに植え付けて培養し、同様に出芽させた二分割芋付き苗を、セルトレイから抜き取って植え付けた。また、慣行の挿苗栽培も比較として行った。処理区を3反復で試験した。植え付けからの163日後(ただし、慣行挿苗区は156日後)の株をそれぞれ収穫し、芋収量及び親芋重量を調べた。
【実施例】
【0051】
図3に、サンプル瓶苗を植え付けた株の収穫時の様子を示す。図3に示すように、サンプル瓶苗を植え付けた株では、親芋(種芋)がサンプル瓶の容積よりも大きくならず、子芋が十分に生育した。図4に、サンプル瓶苗区から収穫した親芋の様子を示し、図5に、二分割芋付き苗区から収穫した親芋の様子を示す(50穴深型セルトレイに植え付けて培養(育苗)した二分割芋付き苗を、セルトレイより抜き取って栽培土壌へ移植する栽培方法により栽培した親芋。種芋を植え付ける意味において直播栽培の一形態と言える(非特許文献4))。図4及び5に示すように、サンプル瓶苗を植え付けた株の親芋の大きさはサンプル瓶の容積以内に抑制され、親芋の肥大が物理的に抑制されたが、サンプル瓶を用いずに種芋を直播栽培した株(二分割芋付き苗を植え付けた株)の親芋は肥大した。
【実施例】
【0052】
図6に、各処理区における子芋収量を示し、図7に、サンプル瓶苗区(容器収納芋付き苗区)及び芋付き苗区(二分割芋付き苗区)における収穫した親芋の乾物重量を示した。図6に示すように、直播適性の低い「コガネセンガン」でも、サンプル瓶苗を直播栽培した区の子芋収量は、挿苗栽培した区の子芋収量と同等以上であった。また、サンプル瓶苗区(容器収納芋付き苗区)と芋付き苗区(二分割芋付き苗区)とにおいて、子芋の収量に差は生じなかったが、サンプル瓶苗区(容器収納芋付き苗区)の親芋の乾物重量は、芋付き苗区(二分割芋付き苗区)の親芋の乾物重量の半分以下であった(図7)。なお、子芋収量は、生の子芋のみの重量を測定したものであり、親芋の乾物重量は、80℃5日間以上の通風乾燥条件下で乾燥させた親芋のみの重量を測定したものである。
【実施例】
【0053】
図8に、生の親芋重量を含む総芋収量を示し、図9に収量調査区域の地上部乾物重量を示し、図10に、親芋のみを30株×3反復で掘り上げて測定した親芋乾物重量を示す。図8に示すように、各調査区域において、子芋収量に有意な差はないが、サンプル瓶苗区(容器収納芋付き苗区)の総芋収量に対する親芋重量の割合は、芋付き苗区(二分割芋付き苗区)と比較して少なかった。図9に示すように、各調査区域において、地上部乾物重に有意な差はなかった。また、図10に示すように、調査範囲を広げて各区30株ずつの親芋乾物重の平均値を3反復で比較しても、サンプル瓶苗区(容器収納芋付き苗区)の親芋乾物重量は、芋付き苗区(二分割芋付き苗区)と比較して有意に少なかった。
【実施例】
【0054】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、サツマイモの直播栽培に有用であるため、農業、食品産業等に好適に利用可能である。
図面
【図6】
0
【図7】
1
【図8】
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【図9】
3
【図10】
4
【図1】
5
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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