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明細書 :リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5737778号 (P5737778)
公開番号 特開2011-201987 (P2011-201987A)
登録日 平成27年5月1日(2015.5.1)
発行日 平成27年6月17日(2015.6.17)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
発明の名称または考案の名称 リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法
国際特許分類 C11B  11/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61K  36/899       (2006.01)
A61K  36/48        (2006.01)
A61K  36/00        (2006.01)
FI C11B 11/00
A61P 25/28
A61K 35/78 U
A61K 35/78 J
A61K 35/78 X
A61K 35/78 Y
請求項の数または発明の数 3
全頁数 18
出願番号 特願2010-069374 (P2010-069374)
出願日 平成22年3月25日(2010.3.25)
審査請求日 平成25年2月26日(2013.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】川瀬 眞市朗
個別代理人の代理人 【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】井上 恵理
参考文献・文献 特開2003-274882(JP,A)
国際公開第02/026788(WO,A1)
特表2002-503268(JP,A)
The Journal of Cell Biology,1992年,117(2),327-335
Plant Physiol.,1993年,101,267-276
Phytochemistry,1989年,28(8),2063-2069
J. Agric. Food Chem.,2007年,55,8711-8716
調査した分野 C11B 1/00-15/00
C11C 1/00- 5/02
A61K 35/78-35/84
A61P 25/28
A23L 1/27- 1/308
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Wiley Online Library
特許請求の範囲 【請求項1】
粒子径150μm以下に粉末化した米糠又は白米表層部分を原料として用い、前記原料に、前記原料1質量部に対して0.5~50質量部で、1~60℃の水を撹拌混合することによって、脂質を含む、粒子径100~1500nmの水分散粒を得、得られた水分散粒を、濾過、遠心又は自然沈降により、前記水分散粒が凝集したクリーム状の沈殿として、回収することを特徴とする、リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
【請求項2】
前記水混合と同時にもしくはその後に、強い攪拌もしくは振動を与えることによって、前記水分散粒の凝集を促進させる処理を行うものである、請求項1に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
【請求項3】
前記水分散粒及び/又はクリーム状の沈殿を、さらに透析、塩析もしくはクロマトグラフィーカラムにより精製する、請求項1又は2に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質及び/又はリゾリン脂質を抽出する方法に関し、詳しくは、植物天然素材である穀類及び/又は豆類由来の粉等(特に、稲や大豆等の種子由来の粉)から、極めて簡便な操作のみで、リン脂質及び/又はリゾリン脂質を抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
‘リン脂質’は、細胞膜を構成する主要成分であり、2本の脂肪酸鎖を有する。リン脂質には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールなどが含まれ、様々な機能を有することが報告されている。例えば、リン脂質の一種であるホスファチジルセリンは老人の脳機能改善効果を有することがヒトによる臨床試験で複数報告されている(非特許文献1参照)。
また、‘リゾリン脂質’は、疎水基として1本の脂肪酸鎖を有し、現在は主にリン脂質を酵素的に処理して生産されている。リゾリン脂質にはリゾホスファチジルコリンなどが挙げられる。例えば、リゾリン脂質の一種であるリゾホスファチジルコリンは、神経が死滅するのを防止する作用を有することが近年報告されている(非特許文献2参照)。またリゾホスファチジルコリンは神経突起伸展を誘導する作用を有することも報告されている(非特許文献3参照)。
このように、リン脂質やリゾリン脂質には、様々な機能性が見いだされており、高齢化社会の到来や健康志向の増大に伴い、脳関連疾患や悪性腫瘍性疾患の治療に利用するための研究が幅広く行われるなど、今後、ますます社会から必要とされる化合物である。
【0003】
現在、これらの脂質を効率よく抽出するには、牛脳、豚脳、鶏卵などの動物性原料や小麦胚芽や大豆などの植物性原料から、クロロホルムを含む溶媒を用いるのが定法とされている。しかし、環境負荷をより少なくするグリーンケミストリーの必要性が認識されるようになり、クロロホルムを用いない化学操作の必要性が高まっている。
また、リン脂質やリゾリン脂質の供給源として使用される動物性原料には、牛脳ではBSE問題、豚脳では豚コレラの問題、鶏卵では鳥インフルエンザの問題があり、なるべく植物性原料からリン脂質やリゾリン脂質を抽出する動きが企業に見られる。しかし、植物性原料には細胞壁多糖が存在するため、植物性原料にクロロホルムを含有する有機溶媒を加えると不溶性のガム状物質が形成され、効率的にリン脂質などを抽出できない問題点が存在する。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】NEUROLOGY, 41, 644-649, (1991)
【非特許文献2】Journal of Neuroscience Research, 87, 190-199, (2009)
【非特許文献3】Journal of Biological Chemistry, 280, 28044-28052, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、入手が容易であり且つ安全性の高い原料から、人体や環境に有害な試薬(特にクロロホルム)を使用することなく、低コストで安全かつ安定供給可能なリン脂質やリゾリン脂質を抽出する手法を開発し、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、植物天然素材である穀類及び/又は豆類由来の粉等を、水と混合するだけで、リン脂質やリゾリン脂質を多く含む水分散粒が得られることを見出した。そして、当該水分散粒を凝集させたクリーム状沈殿(残渣である澱粉や細胞壁断片等の上に積層する層)から、効率よくリン脂質やリゾリン脂質を回収できることを見出した。また、透析等によって簡便に精製できることを見出した。
【0007】
本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
即ち、請求項1に係る発明は、粒子径150μm以下に粉末化した米糠又は白米表層部分を原料として用い、前記原料に、前記原料1質量部に対して0.5~50質量部で、1~60℃の水を撹拌混合することによって、脂質を含む、粒子径100~1500nmの水分散粒を得、得られた水分散粒を、濾過、遠心又は自然沈降により、前記水分散粒が凝集したクリーム状の沈殿として、回収することを特徴とする、リン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項2に係る発明は、前記水混合と同時にもしくはその後に、強い攪拌もしくは振動を与えることによって、前記水分散粒の凝集を促進させる処理を行うものである、請求項1に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。
また、請求項3に係る発明は、前記水分散粒及び/又はクリーム状の沈殿を、さらに透析、塩析もしくはクロマトグラフィーカラムにより精製する、請求項1又は2に記載のリン脂質及び/又はリゾリン脂質の抽出方法に関する。

【発明の効果】
【0008】
本発明は、植物天然素材である穀類及び/又は豆類由来の粉等から、煩雑な操作(超音波処理、加熱処理、凍結融解など)を必要とすることなく、単純混合等の‘極めて簡便な操作’のみで、リン脂質やリゾリン脂質を、抽出(回収)することを可能とする。
これにより、本発明は、原料の適用範囲が広く且つ工程が容易であるため、リン脂質やリゾリン脂質を‘安価に’提供することを可能とする。
また、本発明は、抽出原料として穀類、豆類を使用でき、製造工程においてクロロホルムをはじめとする有害な塩素系薬品等を用いないため、環境や人体への‘安全性の高い’リン脂質やリゾリン脂質の抽出法を提供することを可能とする。
【0009】
さらに、本発明は、規格外や廃棄される穀類や豆類、穀類の加工時に生じる廃棄物(米糠やフスマなど)を、有効に利用することを可能にする。
【0010】
また、本発明は、神経突起伸展能や痴呆症改善能などの優れた機能性を有するリン脂質やリゾリン脂質を、効率よく提供する手段に繋がることが期待される。
これにより、高齢化社会の到来により深刻さを増している認知症やアルツハイマー病などの神経疾患に有効な治療予防手段に繋がることが期待される。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例1において、白米表層粉-メタノール抽出物について、ゲル濾過カラムを用いて分画を行った分離ピークを示す図である。
【図2】試験例1において、図1の矢印で示した画分をFAB-MS分析した結果である。
【図3】図2のm/z=200付近を拡大した図である。
【図4】実施例1において、白米表層粉-水混合物白濁上清の透析物について質量分析した結果である。
【図5】実施例2において、白米表層粉-水混合物白濁上清の透析物について、ODSカラムを用いて分画を行った分離ピークを示す図である。
【図6】実施例2において、図5のピーク2の画分を質量分析した結果である。
【図7】実施例2において、図5のピーク3の画分を質量分析した結果である。
【図8】実施例2において、図5のピーク4の画分を質量分析した結果である。
【図9】実施例2において、図5のピーク5の画分を質量分析した結果である。
【図10】実施例2において、図5のピーク6の画分を質量分析した結果である。
【図11】実施例2において、図5のピーク7の画分を質量分析した結果である。
【図12】実施例2において、図5のピーク8の画分を質量分析した結果である。
【図13】実施例2において、図5のピーク9の画分を質量分析した結果である。
【図14】実施例2において、図5のピーク10の画分を質量分析した結果である。
【図15】実施例2において、図5のピーク11の画分を質量分析した結果である。
【図16】実施例2において、図5のピーク12の画分を質量分析した結果である。
【図17】実施例2において、白米表層粉-水混合物クリーム状沈殿の透析物について、ODSカラムを用いて分画を行った分離ピークを示す図である。
【図18】実施例2において、図17のピーク2の画分を質量分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、植物天然素材である穀類及び/又は豆類由来の粉等(特に、稲や大豆等の種子由来の粉)から、極めて簡便な操作のみで、リン脂質及び/又はリゾリン脂質を抽出する方法に関する。詳しくは、次の実施形態のように行うことができる。

【0013】
〔原料〕
本発明における原料として、穀類及び/又は豆類を用いるものである。
ここで「穀類」としては、イネ科植物のうち、食用となる澱粉質を含む種子をつける植物を指し、麦や稲だけでなく雑穀に分類される種類も含むものである。
具体的には、イネ科に属する稲(イネ)、小麦(コムギ)、大麦(オオムギ)、ライ麦(ライムギ)、燕麦(エンバク、オーツ麦、カラス麦の栽培種)、ワイルドグラス、シコクビエ、キビ、ヒエ、アワ、ハトムギ、トウモロコシ、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム)、トウジンビエ、テフ、フェニオ、コドラ(コードンビエ)、マコモ、などを挙げることができる。
本発明では、これらの中でも、特に主要な穀類である‘稲’、‘小麦’、‘大麦’を好適に用いることができる。なお、小麦や大麦に近縁なライ麦、燕麦も好適に用いることができる。特に‘稲’を用いると、リン脂質やリゾリン脂質を多く含むクリーム状沈殿を多く得ることができる。

【0014】
‘稲’(イネ)としては、Oryza sativaに属する植物であれば、ジャポニカ品種とインディカ品種を含めて、如何なる品種、系統のものも用いることができる。例えば、一般良食味米(コシヒカリなど)、低アミロース米、高アミロース米、低グリテリン米、もち米、黒米、赤米、紫米、などを挙げることができる。
また、‘小麦’(コムギ、wheat)としては、コムギ属(Triticum)に属する植物であれば、如何なる種、品種、系統のものも用いることができる。例えば、T. aestivum(普通コムギ、パンコムギ)、T. compactum(クラブコムギ、密穂コムギ)、T. durum(デュラムコムギ、マカロニコムギ)、などを挙げることができる。
また、‘大麦’(オオムギ、barley)としては、Hordeum vulgareに属する植物であれば、如何なる品種、系統のものも用いることができる。例えば、二条大麦、六条大麦、裸大麦、皮大麦などを挙げることができる。

【0015】
また、「豆類」としては、マメ科に属する食用の種類を挙げることができ、例えば、大豆、小豆、インゲンマメ、エンドウマメ、ソラマメ、などを挙げることができるが、特には、‘大豆’を好適に用いることができる。
‘大豆’(ダイズ、Glycine max)としては、Glycine maxに属する植物であれば如何なる品種、系統のものも用いることができる。例えば、黒豆、赤豆、だだちゃ豆、青大豆、白大豆(別名:黄大豆)、雁食豆、などを挙げることができる。

【0016】
本発明の原料である穀類や豆類としては、植物体、すなわち植物の器官や組織であれば如何なるものでも用いることが可能であるが、好ましくは、‘種子’を用いることが望ましい。
また、種子に由来する組織であれば、胚、胚芽、胚乳、種皮、糠、糊粉層、澱粉貯蔵部、子葉などいかなる組織や部分でも用いることができる。また、種子全体(全粒)を用いることもできる。好ましくは、米糠(米糊粉層)、白米表層、小麦ふすま、大麦ふすま、大豆子葉を用いることができ、最も好ましくは、米糠、白米表層を用いることができる。

【0017】
また、本発明の原料である穀類や豆類としては、加工品を用いることができる。例えば、小麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉などの穀物粉や、大豆粉、を用いることができる。なお、これらのうち、後述する実施例では、その一例(白米粉)を示した。
またさらには、廃棄対象となる、精米過程や精白過程で生じる糠(米糠、コムギフスマ、オオムギフスマ、胚芽など)、澱粉を抽出した残り粕、焼酎絞りかす、大豆製品粕、規格外や余剰の収穫物、なども好適に用いることができる。

【0018】
〔リン脂質・リゾリン脂質の回収〕
本発明では、前記原料は、擂潰、粉末化など(好ましくは粉末化)を行った状態にして用いることを要する。
このように粉末等の状態にした原料は、水を混合することで、リン脂質やリゾリン脂質を含む水分散粒を得ることができる。
ここで得られる‘水分散粒’とは、両親媒性脂質をはじめとする多数の分子が集合して形成される粒子(粒子径約100~1500nm)であり、粒子表面は親水性の性質を有するため、水中に分散する性質を有する。当該粒の性質により水の外観は白濁する。当該粒子は、原料である植物組織や細胞中に元々含まれていた粒子や、当該操作によって形成された粒子であると考えられる。
なお、最初に穀類や豆類そのものを水に浸漬した後、水の中で直接、擂潰等の処理(水挽き)を行った場合でも、当該水分散粒を得ることができる。

【0019】
これらの処理を行った原料の状態としては、粒子径としては、300μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下の状態になっていることが望ましい。粒子径が大きすぎる場合、リン脂質やリゾリン脂質を含む水分散粒が得られず、収率が極端に低下するため、好ましくない。また、粒子径の下限値としては特に限定はないが、実施可能な技術的な点を踏まえる1μm以上を挙げることができる。
なお、これらの処理は、公知技術のどのような方法で行うことができる。例えば、穀類の種子を粉末化する場合は、粉砕機(Ultracentrifugal Mill, MRK-RETSCH製、又はCyclone Sample Mill, UDY CORPORATION製)、あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)を用いて粉末化することができる。また、これらの装置を組み合わせて粉末化することもできる。
また、穀類の種子から糠を調製する場合は、ブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)、精米器(RICEPAL31、山本製作所製)を用いることができる。小麦からふすまを製造する場合は、ビューラー製粉機を用いることができる。
また、豆類については、粉砕機(Ultracentrifugal Mill, MRK-RETSCH製、又はCyclone Sample Mill, UDY CORPORATION製)、あるいは研削式精米機(Grain Testing Mill, SATAKE製)を用いて粉末化することができる。

【0020】
本発明において、粉末化等した原料との混合に用いる「水」としては、水道水、蒸留水、脱イオン水、硬度の高い水、など如何なる水を用いることもできる。また、糖(砂糖、ショ糖、水可溶性オリゴ糖、糖アルコールなど、)、塩(塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、酸(塩酸、クエン酸、酢酸など)、アルカリ(水酸化マグネシウム、アンモニアなど)、pH緩衝剤、などを含有する水を用いることもできる。
なお、本工程で用いる水として、水分散粒が凝集したクリーム状沈殿よりもやや比重が高いもの(例えば、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、キシリトールなど糖類、;食塩、;などを加えて比重1.05~1.5、望ましくは比重1.05~1.4に調製したもの)を用いた場合、他の油成分(比重1.0未満)や澱粉粒(無水状態では比重約1.5~1.6)の混入を防ぎつつ、当該クリーム状沈殿を浮上させて回収しやすくでき、操作上好ましい。
なお、本工程では、水分散粒を破壊するアルコール(例えばエタノール)等の有機溶媒を混合することは好ましくないが、水分散粒に影響を与えない程度であれば、若干量を含有するものであってもよい。

【0021】
本工程で用いる水の量は、原料と混合してペースト状や分散液になる程度の水の量があれば十分であるが、前記原料1質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上用いることが望ましい。なお、上限としては、混合操作が可能な量であればよいが、例えば、50質量部以下、好ましくは10質量部以下を挙げることができる。

【0022】
ここで、混合操作としては、単純な攪拌混合を行えばよいが、好ましくは、前記原料の粉末等に水を少量ずつ(ダマにならないように)加えながら攪拌し、ペースト状や分散液の状態を調製することが好適である。なお、いわゆる米の研ぎ汁は、この分散液の状態に相当する。
攪拌混合の操作としては、攪拌棒を用いての単純混合だけでなく、転倒混合、ミキサー、ボルテックス、シェーカー、ローテーター、大型攪拌槽などによっても行うことができる。なお、超音波処理、曝気等を行ってもよいが、本工程では必須ではない。

【0023】
ここで水の温度としては、1~60℃のものを用いることができる。上限として好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、最も好ましくは25℃以下で行うことが好適である。なお、下限としては、1℃以上を挙げることができるが、例えば、5℃程度以上を挙げることができる。
なお、特には、澱粉が糊化しない温度(例えば60℃以下)で行った場合、リン脂質やリゾリン脂質を多く含むクリーム状沈殿が形成されやすくなり好適である。しかし、水の温度が高すぎる場合、原料が糊化し水分散粒が得られにくくなるため好ましくない。
また、当該混合処理(もしくは自然沈降のための放置)を長時間行う場合は、酵素代謝による変化を防ぐために、低めの温度(例えば10℃以下)で行うことが望ましい。

【0024】
混合時間としては、粉と水が均一になるまで、おおよそ10秒以上行えばよいが、均一性を向上されるためには、好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上の混合処理を行うことが望ましい。
また、上限としては、原料由来の内在性酵素による分解を防止するため60分以下で、好ましくは10分以下で行うことが望ましい。

【0025】
当該混合処理後、水中に分散した分散粒は、濾過、遠心、残渣の自然沈降などを行って、液体である‘白濁上清’として回収することができる。なお、原料1質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、2質量部未満の条件において、濾過、遠心、残渣の自然沈降では水分散粒を含む液を効率よく回収できない場合は圧搾によって水分散粒を含む液を効率よく回収できる。

【0026】
〔クリーム状沈殿〕
なお、工業的な実用の観点を踏まえると、前記分散粒は、凝集した‘クリーム状の沈殿’として回収することが収率の点で好適である。
なお、当該クリーム状沈殿は、沈降させた場合、比重の関係により下層沈殿(残渣である澱粉や細胞壁残渣など白色沈殿)の上に‘中間層’として積層する。

【0027】
水分散粒の凝集を促進する処理としては、上記混合処理と同時もしくはその後に、激しい撹拌もしくは振動を付与することで、分散粒の凝集沈降を促進させることができる。また、pH変化によって凝集を促進することも可能である。
また、水分散粒を含む液を残渣より分別した後は、水分散粒を含む液にエタノールを注加することによって、沈殿させて濃縮・回収することもできる。

【0028】
凝集した水分散粒は、遠心、自然沈降などによって積層させることによって、比重の異なる下層沈殿(残渣)と分離したクリーム状沈殿として回収できる。
なお、上清を回収後に、クリーム状沈殿よりもやや高い比重に調製した水(例えば、ショ糖、グリセロール、ソルビトール、キシリトールなどの糖類や、;食塩、;などを含有する比重1.05~1.5、望ましくは比重1.05~1.4に調製した水)を加えて遠心(即ち、密度勾配遠心)等を行うことによって、当該クリーム状沈殿を浮上させて効率的に回収することもできる。

【0029】
〔精製〕
上記のようにして得られた白濁上清(分散粒)やクリーム状沈殿は、精製を行うことで、リン脂質やリゾリン脂質の含量をさらに高めることができる。
具体的には、透析、塩析、もしくはクロマトグラフィーカラムによって、リン脂質やリゾリン脂質を多く含む画分を分離し、回収することで行うことができる。
なお、これらのうち、工業的な実用の観点を踏まえると、透析法が特に好適である。

【0030】
本工程において、‘透析’としては、電気透析法、単純透析、などによって行うことができる。
また、‘塩析’としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、などによって行うことができる。
また、‘クロマトグラフィーカラム’としては、アフィニティーカラム(レクチンアフィニティー担体カラム、ヘパリンカラム、抗体カラム、など)、イオン交換カラム(4級アンモニウム基結合担体カラム、ジエチルアミノエチル基結合担体カラム、など)、ゲル濾過カラム(架橋アガロースゲルカラム、架橋デキストランゲルカラム、など)、吸着樹脂カラム(多孔性吸着樹脂カラム、活性炭カラムなど)、シリカゲルカラム、修飾基付きシリカゲルカラム、などによって行うことができる。
また、カラム形態も、高速液体クロマトグラフィーに用いられるような一般的なカラムだけではなく、固相カートリッジのような使い捨てカラムでも問題なく目的を達することができる。

【0031】
〔分子種〕
上記工程によって得られる(抽出される)リン脂質とリゾリン脂質の分子種は、用いた原料によって異なる。
具体的に含有されうる‘リン脂質’の分子種としては、ホスファチジルコリン(PC:別名レシチン)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(PE:別名セファリン)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(DPG:別名カルジオリピン)などを挙げることができる。
また、‘リゾリン脂質’の分子種としては、具体的には、リゾホスファチジルコリン(LPC)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、リゾホスファチジン酸(LPA)、リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)、スフィンゴシン1リン酸(S1P)、スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)などを挙げることができる。
なお、これらのリン脂質とリゾリン脂質それぞれについて、分子内に含まれる脂肪酸の種類(C14~C24、好ましくはC16~C18)が異なる、複数の分子種が存在する。

【0032】
なお、稲の種子に由来する粉を用いた場合、ホスファチジルコリン(PC)、リゾホスファチジルコリン(LPC)、を多く含むものが得ることができる。なお、これらの分子に含まれる脂肪酸の種類としては、C16~C18のものを挙げることができる。
また、大豆の種子に由来する粉を用いた場合、ホスファチジルセリン(PS)、リゾホスファチジルセリン(LPS)、を多く含むものが得ることができる。なお、これらの分子に含まれる脂肪酸の種類としては、C16~C18のものを挙げることができる。

【0033】
〔用途〕
リン脂質やリゾリン脂質(特に、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンなど)は、神経細胞の分化、成長、維持に効果を有する物質であり、アルツハイマー病、認知症、などに有効な治療や予防効果を有する有効成分となることが期待できる。また、前記疾患以外にも、記憶改善作用が期待できる。
従って、上記工程を経て得たリン脂質やリゾリン脂質は、各種原料に混合することで、薬剤、機能性飲食品とすることができる。
なお、本発明における有効成分である当該抽出物は、穀類や豆類の種子由来であるため、投与や摂取の上で安全性に優れたものである。

【0034】
薬剤の形態としては、例えば経口投与の場合、粉末状、細粒状、顆粒状、などとすることができ、カプセルに充填する形態の他、水に分散した溶液の形態、賦形剤等と混和して得られる錠剤の形態とすることもできる。

【0035】
また、機能性飲食品(特定保健用食品、栄養機能性食品、健康食品)としては、種々の食品、例えば乳製品、米加工食品、パン、麺、菓子、レトルト、缶詰などに添加して使用したり、水、牛乳、果汁、清涼飲料水、スープ等の飲物に添加して使用してもよい。

【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
〔測定例1〕
以下に、共通の測定条件である質量分析の条件を記載する。
「FAB-MS分析」は、日本電子JMS-700を使用し、加速電圧:8kV、FABガス:キセノン(電圧6kV)、FABマトリックス:m-ニトロベンジルアルコール(m-NBA)、測定質量範囲:0~2000、の条件で行った。
【実施例】
【0038】
「ODSカラムを用いたLC-MS分析」は、日本電子JMS-700を使用し、イオン化法:ESI、加速電圧:5kV、リング電圧:100V、オリフィス電圧:20V、イオンマルチ電圧:1.5kV、の条件で行った。
カラム分離は、L-カラム(ODS相当) 2.1φ×15cm(化学物質評価機構)を使用し、移動相:A液として精製水(0.028%NH3)、B液としてエタノール(0.028%NH3)、グラジェント条件:B液を15分間に70~100%まで溶媒グラジェント、測定時間:40分間、流量:0.2mL/min、の条件で行った。

【実施例】
【0039】
〔試験例1〕 (米におけるリン脂質・リゾリン脂質の存在確認)
米(ひとめぼれ)の全粒を粉砕器(Cyclone Sample Mill、UDY CORPORATION製)によって粉砕することで得た粉(粒子径約280μm以下)3gに、メタノール(室温)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。この処理物を直ちに3000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
固液分離して得られた上清は、窒素気流によって濃縮して濃縮液とし、ゲル濾過カラム(Shodex Asahipak GS-620 2GおよびGS-220 2Gを連結して使用、どちらも2.0cm×50cm)を接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(本体:日本分析工業:LC-9201、示差屈折検出器:RI-50s)で分画した。なお、溶離液はメタノールを用いた。分画結果を図1に示す。
次いで、図1の矢印で指示した画分をFAB-MS分析し、図2に示す分析結果を得た。m/z=200付近の拡大図を図3に示す。
【実施例】
【0040】
その結果、リン脂質やリゾリン脂質の構成要素であるコリンの存在を示すm/z=184.2のピークが見られることから、米全粒にリン脂質やリゾリン脂質が存在することが確認できた。

【実施例】
【0041】
〔試験例2〕 (白米表層粉-水混合物白濁上清に存在する水分散粒の粒度分布)
玄米(コシヒカリ)を精米機(RICEPAL31、山本製作所製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100~91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91~86質量%部分(白米表層部分)由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この処理物をただちに、3000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
分離した上清は、ただちに粒度分布測定装置(LB-550、堀場製作所製)で粒度分布測定を行い、分離した上清中に存在する水分散粒の粒度分布データを得た。結果を表1に示す。
【実施例】
【0042】
その結果、当該白濁上清中に水分散している粒子は、平均粒子径496.2nm、最大粒子径1317.3nmの粒であることが明らかになった。
【実施例】
【0043】
【表1】
JP0005737778B2_000002t.gif


【実施例】
【0044】
〔実施例1〕 (白米表層粉-水混合物白濁上清からのリゾリン脂質の回収)
玄米(ひとめぼれ)をブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100~91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91~86質量%部分由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この処理物をただちに、1000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。
分離した上清は、排除限界分子量100(MWCO=100)の透析膜(スペクトラポア、Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes、Spectrum製)に封入し、純水に対して透析を行った。
透析膜内側の内容物は、Freezdryer FD-1(EYELA製)により凍結乾燥し、質量分析(JMS-700、日本電子製)に供した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0045】
その結果、C16:0の脂肪酸鎖をもつLPCを示すm/z=496.3のピーク、C18:2の脂肪酸鎖をもつLPCを示すm/z=520.2のピーク、C18:1の脂肪酸鎖をもつLPCを示すm/z=522.3のピークが検出された。
このことから、白米表層粉-水混合物白濁上清には複数種のリゾリン脂質が含まれ、透析によって高純度化されることが明らかとなった。

【実施例】
【0046】
〔実施例2〕 米の白米表層粉-水混合物白濁上清およびクリーム状沈殿に含まれるリン脂質・リゾリン脂質分子の解析
(1)リン脂質・リゾリン脂質の回収及び透析
玄米(ひとめぼれ)をブラシ式精米機(HRG-122、みのる産業製)で糠部分、すなわち玄米を100質量%とすると最外層部分および糊粉層部分に相当する100~91質量%部分を除去した後、研削式精米機(Grain Testing Mill、SATAKE製)で外側から順次研削し、玄米を100質量%とすると白米表層部分に相当する91~86質量%部分由来の粉(粒子径約135μm以下)3gに、水(約20℃)15mLを加え、ガラス棒を用いてよく混合した。
この混合物をただちに、1000rpm、10分間の遠心分離により固液分離した。これにより、混合物は、白濁上清、中間層であるクリーム状沈殿(沈殿上層)、白色沈殿(沈殿下層)に分離した。
分離した上清およびクリーム状沈殿は、各々排除限界分子量100(MWCO=100)の透析膜(スペクトラポア、Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes、Spectrum製)に封入し、純水に対して透析を行った。
そして、透析膜内側の内容物は、Freezdryer FD-1(EYELA製)により凍結乾燥した。
【実施例】
【0047】
(2)白濁上清についての質量分析
まず、白濁上清の透析物について、ODSカラムを用いて含まれる物質の分離(分画)を行った。分離結果を図5に示す。
そして、図5におけるピーク2~12の画分を質量分析した結果を図6~16に示す(なお、図5中のピーク1は糖を示すものである)。また、これらの結果をまとめたものを表2に示す。
【実施例】
【0048】
【表2】
JP0005737778B2_000003t.gif
【実施例】
【0049】
図5の各ピークから検出された脂質分子について具体的に示す。
まず、ピーク2を質量分析した結果(図6)において、m/z=542のピークはC18:2の脂肪酸鎖をもつLPCにNaが付加したものである。
また、m/z=520のピークはC18:2の脂肪酸鎖をもつLPCにHが付加したものである。
【実施例】
【0050】
ピーク3を質量分析した結果(図7)において、m/z=544のピークはC18:1の脂肪酸鎖をもつLPCにNaが付加したものである。
また、m/z=518のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにNaが付加したもの、m/z=496のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにHが付加したものである。
【実施例】
【0051】
ピーク4を質量分析した結果(図8)において、m/z=544のピークはC18:1の脂肪酸鎖をもつLPCにNaが付加したものである。
また、m/z=522のピークはC18:1の脂肪酸鎖をもつLPCにHが付加したものである。
【実施例】
【0052】
ピーク5を質量分析した結果(図9)において、m/z=864のピークはC20:1の脂肪酸鎖を2本もつホスファチジルコリン(PC)にNaが付加したものである。
また、m/z=806のピークはC18:1およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したものである。
また、m/z=784のピークはC18:1およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにHが付加したものである。
また、m/z=780のピークはC16:1およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したもの若しくC16:0およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したものである。
また、m/z=758のピークはC16:1およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにHが付加したもの若しくC16:0およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにHが付加したものである。
【実施例】
【0053】
ピーク6を質量分析した結果(図10)において、m/z=808のピークはC18:1の脂肪酸鎖を2本もつPCにNaが付加したもの若しくC18:0およびC18:2の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したものである。
また、m/z=782のピークはC16:0およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したもの若しくC16:1およびC18:0の脂肪酸鎖をもつPCにNaが付加したものである。
また、m/z=760のピークはC16:0およびC18:1の脂肪酸鎖をもつPCにHが付加したもの若しくC16:1およびC18:0の脂肪酸鎖をもつPCにHが付加したものである。
また、m/z=639のピークはC18:2の脂肪酸鎖を2つもつDGにNaが付加したものである。
また、m/z=617のピークはC18:2の脂肪酸鎖を2つもつDGにHが付加したものである。
【実施例】
【0054】
ピーク7を質量分析した結果(図11)において、m/z=641のピークはC18:1およびC18:2の脂肪酸鎖をもつDGにNaが付加したものである。
【実施例】
【0055】
ピーク8を質量分析した結果(図12)において、m/z=901のピークはC18:2の脂肪酸鎖を3つ持つトリアシルグリセロール(TG)にNaが付加したものである。
【実施例】
【0056】
ピーク9を質量分析した結果(図13)において、m/z=903のピークはC18:1の脂肪酸鎖を1つおよびC18:2の脂肪酸鎖を2つ持つTGにNaが付加したものである。
【実施例】
【0057】
ピーク10を質量分析した結果(図14)において、m/z=905のピークはC18:1の脂肪酸鎖を2つおよびC18:2の脂肪酸鎖を1つ持つTGにNaが付加したもの若しくはC18:0の脂肪酸鎖を1つおよびC18:2の脂肪酸鎖を2つ持つTGにNaが付加したものである。
【実施例】
【0058】
ピーク11を質量分析した結果(図15)において、m/z=907のピークはC18:1の脂肪酸鎖を3つ持つTGにNaが付加したもの若しくはC18:0の脂肪酸鎖、C18:1の脂肪酸鎖、C18:2の脂肪酸鎖を1つずつ持つTGにNaが付加したものである。
【実施例】
【0059】
ピーク12を質量分析した結果(図16)において、m/z=935のピークはC18:0、C18:2、C20:1の脂肪酸鎖を1つずつ持つTGにNaが付加したもの若しくはC18:1の脂肪酸鎖を2つおよびC20:1の脂肪酸鎖を1つ持つTGにNaが付加したもの若しくはC18:1、C18:2、C20:0の脂肪酸鎖を1つずつ持つTGにNaが付加したものである。
また、m/z=909のピークはC18:0の脂肪酸鎖を2つおよびC18:2の脂肪酸鎖を1つ持つTGにNaが付加したもの若しくはC18:0の脂肪酸鎖を1つおよびC18:1の脂肪酸鎖を2つ持つTGにNaが付加したものである。
【実施例】
【0060】
これらの結果が示すように、白米表層粉-水混合物を遠心して得られる白濁上清(水分散粒)には、リゾリン脂質であるLPCとリン脂質であるPCが、複数種類含まれることが明らかになった。
【実施例】
【0061】
(3)クリーム状沈殿についての質量分析
また、クリーム状沈殿の透析物について、ODSカラムで含まれる物質の分離を行った。分離結果を図17に示す。
そして、図17におけるピーク2を質量分析した結果を図18に示す(なお、図17中のピーク1は糖を示すものである)。また、これらの結果をまとめたものを表3に示す。
【実施例】
【0062】
【表3】
JP0005737778B2_000004t.gif
【実施例】
【0063】
図17のピークから検出された脂質分子について具体的に示す。
ピーク2を質量分析した結果(図18)において、m/z=518のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにNaが付加したものである。
また、m/z=496のピークはC16:0の脂肪酸鎖をもつLPCにHが付加したものである。
【実施例】
【0064】
この結果が示すように、白米表層粉-水混合物を遠心して得られたクリーム状沈殿には、リゾリン脂質であるLPCが含まれることが明らかになった。

【実施例】
【0065】
〔考察〕
上記のように、稲の種子由来の粉に、水(室温)を加えて単に混合操作をすることによって、リン脂質やリゾリン脂質を多く含む画分(白濁上清やクリーム状沈殿)を得ることができることが示された。
また、当該画分から、透析やカラムによりリン脂質やリゾリン脂質を簡便に精製できることも示された。

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、優れた機能性(特に、神経突起伸展能や痴呆症改善能)を有するリン脂質やリゾリン脂質を、環境や人体への安全性の高い方法で、安価に提供することを可能とする。
これにより、高齢化社会の到来により深刻さを増している認知症やアルツハイマー病などの神経疾患に有用である薬剤や機能性食品の供給に貢献できることが期待できる。
また、本発明によれば、植物由来廃棄物である米糠、規格外の米や大豆などの新規用途創出に貢献することが期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図14】
11
【図15】
12
【図16】
13
【図18】
14
【図3】
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【図4】
16
【図17】
17