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明細書 :ねじれ秤による微小力測定装置及び微小力測定方法並びに埋没物体の探査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5578667号 (P5578667)
公開番号 特開2011-247811 (P2011-247811A)
登録日 平成26年7月18日(2014.7.18)
発行日 平成26年8月27日(2014.8.27)
公開日 平成23年12月8日(2011.12.8)
発明の名称または考案の名称 ねじれ秤による微小力測定装置及び微小力測定方法並びに埋没物体の探査方法
国際特許分類 G01L   3/08        (2006.01)
G01V   7/10        (2006.01)
G01L   5/00        (2006.01)
FI G01L 3/08
G01V 7/10
G01L 5/00 Z
請求項の数または発明の数 13
全頁数 25
出願番号 特願2010-122928 (P2010-122928)
出願日 平成22年5月28日(2010.5.28)
審査請求日 平成25年3月28日(2013.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
発明者または考案者 【氏名】村田 次郎
【氏名】二宮 一史
個別代理人の代理人 【識別番号】100085419、【弁理士】、【氏名又は名称】大垣 孝
【識別番号】100141955、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 宏之
審査官 【審査官】公文代 康祐
参考文献・文献 特開2000-206266(JP,A)
特開平02-122295(JP,A)
特公昭49-009782(JP,B1)
特開平01-074491(JP,A)
特開2009-115525(JP,A)
Kazufumi Ninomiya et al.,“New experimental technique for short-range gravity measurement”,Journal of Physics: Conference Series,英国,IOP Publishing,2009年10月,vol. 189,012026
調査した分野 G01L 1/04
G01L 3/08
G01L 5/00
G01V 7/10
特許請求の範囲 【請求項1】
両端に物体が取り付けられたアームを、細線によって当該細線の中心軸を中心にして弾性的に回転が可能な状態に吊り下げ、前記物体に働く力の大きさを、前記中心軸を回転中心とする当該アームの回転角度を計測することで測定する構成とされたねじれ秤と、
前記アームの画像を取り込んで当該画像の画像情報信号を生成し、当該画像情報信号から前記アームの静止2次元光強度画像を表示する時系列に従ったビデオフレームを生成して出力する画像情報取得装置と、
当該ビデオフレームを取り込んで、前記アームの静止2次元光強度画像から、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を決定し、複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を最小二乗法によって求め、当該直線の傾きを表すパラメータで与えられる回転角度から前記物体に働く力の大きさを決定する画像情報処理装置と
を具え、
前記ねじれ秤を構成する前記アームの画像から、当該アームの画像の中心線を表す直線を解析的に1次関数で表したときの当該直線の傾きを測定パラメータとし、単振動する当該アームの回転角度を、当該アームを吊り下げている細線に対する当該アームの重心の振り子運動としての単振動に影響されることなく独立に決定す
ことを特徴とする微小力測定装置。
【請求項2】
前記画像情報取得装置は、結像光学系と、2次元受光素子と、ビデオキャプチャー装置とを具え、
前記結像光学系は、前記アームの実像が前記2次元受光素子の受光面に形成されるように配置され、
前記2次元受光素子は、光強度を電気信号に変換する複数のピクセルが、当該ピクセルのそれぞれの配列位置が2次元位置座標によって規定されて、当該2次元受光素子の受光面を画する範囲の2次元平面を埋め尽くすように配列されて構成されており、かつ当該2次元受光素子を構成する前記ピクセルがそれぞれ同時刻に受光する光強度が電気信号に変換されて当該ピクセルの位置座標の関数として与えられる信号を、前記アームの前記画像情報信号として取得して出力し、
前記ビデオキャプチャー装置は、前記画像情報信号を取り込んで、前記画像情報信号のそれぞれから前記アームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレームを生成して、時系列に従った当該ビデオフレームを単位とする時間の関数として当該ビデオフレームを出力する構成とされており、及び、
前記画像情報処理装置は、輝度重心座標点確定手段と、直線方程式算出手段と、トルク算出手段とを具え、
前記輝度重心座標点確定手段によって、前記ビデオキャプチャー装置から出力された前記ビデオフレームを時系列に従って順次読み込んで、当該ビデオフレームのそれぞれが表示する前記静止2次元光強度画像ごとに、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を確定する処理と、
前記直線方程式算出手段によって、前記輝度重心座標点確定手段から出力された、前記静止2次元光強度画像の光強度重心となる複数の輝度重心座標点を読み込んで、複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を求める処理と、
前記トルク算出手段によって、前記直線方程式算出手段から、時系列に従って順次確定されて出力された前記直線の方程式を時間の関数として読み込んで、この直線の傾きの時間変動から、トルクの大きさを求める処理と
を実行することを特徴とする請求項1に記載の微小力測定装置。
【請求項3】
前記輝度重心座標点確定手段は、前記2次元位置座標をx-y直交座標としたとき、ROM(Read Only Memory)から次式(1)を読み出してきて、時刻tにおける、x座標がx0であるy軸に平行な方向に沿って光強度重心となるy座標の値を当該次式(1)によって確定させ、
順次前記x0の値を前記2次元受光素子の受光面の両端の範囲であるx1~xnにわたって変化させて、前記光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を順次確定する
ことを特徴とする請求項2に記載の微小力測定装置。
【数8】
JP0005578667B2_000009t.gif

【請求項4】
前記直線方程式算出手段は、前記ROMから次式(2)を読み出してきて、当該次式(2)によって与えられる、前記複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和χ2(t)が最小となる直線の方程式を時間の関数として算出することを特徴とする請求項3に記載の微小力測定装置。
【数9】
JP0005578667B2_000010t.gif
ここで、σmean_yは、mean_yの統計上の標準偏差値、a(t)及びb(t)はパラメータである。
【請求項5】
前記トルク算出手段は、前記ROMから次式(3)を読み出してきて、前記直線の傾きを与える時間の関数としての前記パラメータa(t)に、当該次式(3)を当てはめて前記アームに働いたトルクの大きさτを求めることを特徴とする請求項4に記載の微小力測定装置。
a(t)=a0+af sinωf t+(τ/κ) (3)
ここで、κは細線のねじれに対する弾性定数であり、ωfとafは雑音として残る、アームの固有振動の角周波数と角度振幅、a0は初期角度のパラメータである。減衰を無視すれば、af=τ/κである。
【請求項6】
前記トルク算出手段は、前記ROMから次式(4)を読み出してきて、前記直線の傾きを与える時間の関数としての前記パラメータa(t)に、当該次式(4)を当てはめて前記アームに働いたトルクの大きさτを求めることを特徴とする請求項4に記載の微小力測定装置。
a(t)=(τsinωt) /κ+a0 (4)
ここで、κは前記細線のねじれに対する弾性定数であり、ωはアームの固有振動の角周波数ωfに比べて十分に小さい角周波数の値、a0は初期角度のパラメータである。
【請求項7】
両端に物体が取り付けられたアームを、細線によって当該細線の中心軸を中心にして弾性的に回転が可能な状態に吊り下げ、前記物体に働く力の大きさを、前記中心軸を回転中心とする当該アームの回転角度を計測することで測定する構成とされたねじれ秤による微小力測定方法であって、
前記アームの画像を取り込んで当該画像の画像情報信号を生成し、当該画像情報信号から前記アームの静止2次元光強度画像を表示する時系列に従ったビデオフレームを生成して出力する画像情報取得ステップと、
当該ビデオフレームを取り込んで、前記アームの静止2次元光強度画像から光強度重心となる複数の輝度重心座標点を決定し、複数の輝度重心座標点からの距離の大きさの二乗の和が最小となる直線の方程式を最小二乗法によって求め、当該直線の傾きを表すパラメータで与えられる回転角度から前記物体に働く力の大きさ決定する画像情報処理ステップと
を含み、
前記ねじれ秤を構成する前記アームの画像から、当該アームの画像の中心線を表す直線を解析的に1次関数で表したときの当該直線の傾きを測定パラメータとし、単振動する当該アームの回転角度を、当該アームを吊り下げている細線に対する当該アームの重心の振り子運動としての単振動に影響されることなく独立に決定する
ことを特徴とする微小力測定方法。
【請求項8】
前記画像情報取得ステップは、
光強度を電気信号に変換する複数のピクセルが、当該ピクセルのそれぞれの配列位置が2次元位置座標によって規定されて、当該2次元受光素子の受光面を画する範囲の2次元平面を埋め尽くすように配列されて構成された2次元受光素子の受光面に、結像光学系によって前記アームの画像を形成する2次元画像形成ステップと、
前記ピクセルがそれぞれ同時刻に受光する光強度を当該ピクセルの位置座標の関数として与えられる、前記アームの画像情報を電気信号に変換して前記画像情報信号としてビデオキャプチャー装置に出力する画像情報構成ステップと、
前記ビデオキャプチャー装置が、前記画像情報信号を時系列に従って取り込んで、時刻ごとの前記画像情報信号のそれぞれから前記アームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレームを生成して、時系列に従った当該ビデオフレームを単位とする時間の関数として当該ビデオフレームを出力するビデオフレーム生成ステップと
を含み、及び
前記画像情報処理ステップは、
輝度重心座標点確定手段が前記ビデオキャプチャー装置から出力された前記ビデオフレームを時系列に従って順次読み込んで、当該ビデオフレームのそれぞれが表示する前記静止2次元光強度画像ごとに、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を確定する輝度重心座標点確定ステップと、
直線方程式算出手段が前記輝度重心座標点確定手段から出力された前記静止2次元光強度画像の光強度重心となる複数の輝度重心座標点を読み込んで、複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を時間の関数として求める直線方程式算出ステップと、
トルク算出手段が前記直線方程式算出ステップで、時系列に従って順次確定される前記直線の方程式を時間の関数として読み込んで、この直線の傾きの時間変動から、トルクの大きさを求めるトルク算出ステップと
を含んでいることを特徴とする請求項7に記載の微小力測定方法。
【請求項9】
前記輝度重心座標点確定ステップは、前記2次元位置座標をx-y直交座標系としたとき、ROM(Read Only Memory)から次式(1)を読み出してきて、時刻tにおける、x軸とy軸とで規定される2次元直交座標のx座標がx0であるy軸に平行な方向に沿って光強度重心となるy座標の値を当該次式(1)によって確定させ、
順次前記x0の値を前記2次元受光素子の受光面の両端の範囲であるx1~xnにわたって変化させて、前記光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を順次確定するステップである
ことを特徴とする請求項8に記載の微小力測定方法。
【数10】
JP0005578667B2_000011t.gif

【請求項10】
前記直線方程式算出ステップは、前記ROMから次式(2)を読み出してきて、当該次式(2)によって与えられる前記複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和χ2(t)が最小となる直線の方程式を時間の関数として算出するステップであることを特徴とする請求項9に記載の微小力測定方法。
【数11】
JP0005578667B2_000012t.gif
ここで、σmean_yは、mean_yの統計上の標準偏差値であり、a(t)及びb(t)はパラメータである。
【請求項11】
前記トルク算出ステップは、前記ROMから次式(3)を読み出してきて、前記直線の傾きを与える時間の関数としての前記パラメータa(t)に、当該次式(3)を当てはめて前記アームに働いたトルクの大きさτを求めるステップであることを特徴とする請求項10に記載の微小力測定方法。
a(t)=a0+af sinωf t+(τ/κ) (3)
ここで、κは細線のねじれに対する弾性定数であり、ωfとafは雑音として残る、アームの固有振動の角周波数と角度振幅、a0は初期角度のパラメータである。減衰を無視すれば、af=τ/κである。
【請求項12】
前記トルク算出ステップは、前記ROMから次式(4)を読み出してきて、前記直線の傾きを与える時間の関数としての前記パラメータa(t)に、当該次式(4)を当てはめて前記アームに働いたトルクの大きさτを求めるステップであることを特徴とする請求項10に記載の微小力測定方法。
a(t)=(τsinωt)/κ+a0 (4)
ここで、κは前記細線のねじれに対する弾性定数であり、a0は初期角度のパラメータである。
【請求項13】
請求項7に記載の微小力測定方法を、被微小力測定対象に対する位置を変えつつ実行し、当該被微小力測定対象に埋没している物体の存在を非破壊探査する埋没物体の探査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、ねじれ秤による微小力測定装置及び微小力測定方法に係り、特にねじれ秤を構成するアームの画像に対する画像処理によってアームの回転角度を測定してこの回転角度からアームに働く微小力を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体等の内部に埋没していると推定される埋没物の存在を非破壊で確認する検査方法として、従来当該固体にX線等の放射線あるいは超音波を照射して、これら放射線あるいは超音波の散乱の情報から埋没物を探査する方法が知られている。
【0003】
これらの検査方法は、高い解像度を以って埋没物を探索可能であるという利点を有している一方で、探索対象とされる埋没物によっては、放射線あるいは超音波等を透過するため利用が困難である場合がある。また、放射線の被曝量を制限する必要がある対象物についてはその使用が制限される。
【0004】
更に、放射線あるいは超音波を検査対象物に照射して探査する方法にあっては、放射線あるいは超音波の発生源を検査対象物の付近に設置する必要があり、検査対象物の置かれている状況あるいは検査対象物の大きさ等によっては、その使用が制限される。
【0005】
そこで、埋没物を含有していると推定される検査対象物に対して放射線あるいは超音波を照射せずに、埋没されている物体の質量による重力を、当該検査対象物に対する複数の相異なる位置において測定し、この結果を解析することによって埋没物の存在を探索することが有効な手段となり得る。
【0006】
また、上述の実用的な要請から微小力である重力を測定するという用途の他に、学問的な知見を得るために微小力を測定したいという要請もある。例えば、平行に置かれた2枚の無帯電状態の金属板の間にカシミール力が引力として働くことが知られており、このカシミール力を測定する実験が行われている。また、近距離における万有引力定数の測定実験や、万有引力の法則自身の検証実験も行われている。
【0007】
上述の埋没されている物体の質量による重力の大きさ、及びカシミール力は非常に小さいために、高感度でかつ測定中の外乱の影響を受けにくい方法で測定する必要がある。このように微小力を測定する方法として有力なのが、歴史的に有名なキャベンディッシュの実験に使われたねじれ秤を利用する方法である。
【0008】
なお、ねじれ秤による測定対象としては、上述の重力、カシミール力に限らず、微小な電磁力も測定の対象となり得る。
【0009】
ねじれ秤は、両端に物体が取り付けられたアームを当該アームの重心を剛性のワイヤーあるいは熔融石英ファイバ等の細線で吊り下げられて構成されており、この細線を回転中心とするアームの回転角度を測定することによって、物体と被測定対象物との間に働く微小力の大きさを求めることを原理とした微小力測定装置である。以後、アームを吊り下げている細線を回転中心とするアームの回転を、ねじれ秤の回転ということもある。
【0010】
ねじれ秤による物体の質量による重力の大きさの測定方法の一例として非特許文献1に開示されている手法がある。
【0011】
また、ねじれ秤による測定においては、ねじれ秤の回転角度を正確に測定することがポイントとなる。その手法として、ねじれ秤の運動の様子をビデオ撮影して、この画像を解析することによって、ねじれ秤の回転角度を求めるというアイディアが開示されている(非特許文献2参照)。しかしながら、非特許文献2には、ねじれ秤の回転角度を求めるための具体的な手法が開示されていない。
【0012】
更に、ねじれ秤を用いたカシミール力の測定については、例えば、非特許文献3に開示されている。このカシミール力の測定方法によれば、ねじれ秤のアームの中心に取り付けられたミラーにレーザー光を当てこのレーザー光の反射光を光検出器で受光してアームの回転角度を測定するという方法がとられている。
【先行技術文献】
【0013】

【非特許文献1】"キャベンディッシュの地球の重さ測定実験(1798年)における”ねじれ秤”について"[online][平成22年2月8日検索]インターネット〈URL: http://www.fnorio.com/0006Chavendish/Chavendish.htm〉
【非特許文献2】"立教大学学術推進特別重点資金(立教SFR)大学院生研究2008年度研究成果報告書"[online][平成22年2月8日検索]インターネット〈URL:http://okamoto.rikkyo.ac.jp/research/initiative/_asset/pdf/insei/insei_53.pdf〉
【非特許文献3】"ねじれ秤を用いたカシミール力の精密測定[online][平成22年3月23日検索]インターネット〈http://yukimura.hep.osaka-cu.ac.jp:16080/TAMAsympo4/viewgraphs/219-pm-masuda.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ねじれ秤による微小力測定においては、アームの回転方向の単振動だけでなく、このアームを吊り下げている細線に対するアームの重心の振り子運動としての単振動が加わる。ねじれ秤の回転角度を求める方法において、この振り子運動としての単振動が、ねじれ秤の回転角度を決定する上で雑音として働く。従って、ねじれ秤の回転角度を決定する上で、何らかの方法でこの振り子運動としての単振動を除外することが必要である。
【0015】
アームの回転量を計測する方法として、ねじれ秤のアームの何れかの箇所、例えば中心に取り付けられたミラーにレーザー光を当てこのレーザー光の反射光を光検出器で受光してアームの回転角度を測定するという方法がある。この計測方法では、振り子運動としての単振動が、ねじれ秤の回転角度を決定する上で雑音として働き、アームの回転とアームの重心の振り子運動としての変位とを区別することができない。すなわち、上述のレーザー光を用いた計測方法を含め、アームの回転量を、アームの何れかの一箇所の変動を捉えて計測するという一点計測によって決定する方法によれば、アームの回転とアームの重心の振り子運動としての変位とを区別することができないという共通の課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この出願の発明者は、上述の一点計測の代わりに、ねじれ秤を構成するアームの画像から、このアームの画像の中心線を表す直線を解析的に1次関数で表したときのこの直線の傾きを測定パラメータとすることに注目した。この傾きの時間変化が単振動で表され、この単振動の振る舞いを解析することによって、アームの回転角度を、アームを吊り下げている細線に対するアームの重心の振り子運動としての単振動に影響されることなく独立に決定できることに想到した。
【0017】
ねじれ秤に働く微小力を、このねじれ秤を測定対象物に対して移動させつつ測定する場合、アームを吊り下げている細線の中心軸を中心とする回転運動としての単振動と、アームを吊り下げている細線に対するアームの重心の振り子運動としての単振動が起こる。しかしながら、この振り子運動としての単振動に影響されることなく独立にアームの回転角度を決定できれば、ねじれ秤を測定対象物に対して移動させつつ微小力測定をすることが可能となることを意味する。
【0018】
すなわち、アームの回転角度を上述のように確定させる方法によれば、微小力を高精度で測定することが可能となり、例えば、小型のねじれ秤によって固体等の内部に埋没している物体を非破壊で探査する工業的な検査、あるいは上述の学問的な目的での計測等に広く利用することが可能な方法として実現されることを確信した。
【0019】
従って、この発明の目的は、アームの重心の振り子運動としての単振動の影響を受けずにねじれ秤の回転を決定することが可能であり、このねじれ秤の回転角度から微小力の大きさを決定することを可能とした、微小力測定装置及びこの測定装置を用いて実現される微小力測定方法を提供することにある。
【0020】
上述の理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下のねじれ秤による微小力測定装置及び微小力測定方法が提供される。
【0021】
この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置は、両端に物体が取り付けられたアームを、細線によってこの細線の中心軸を中心にして弾性的に回転が可能な状態に吊り下げ、この物体に働く力の大きさを、中心軸を回転中心とするアームの回転角度を計測することで測定する構成とされたねじれ秤によって微小力を測定する装置である。そして、画像情報取得装置と画像情報処理装置とを具えて構成される。
【0022】
画像情報取得装置は、アームの画像を取り込んでこの画像の画像情報信号を生成し、この画像情報信号からアームの静止2次元光強度画像を表示する時系列に従ったビデオフレームを生成して出力する。
【0023】
画像情報処理装置は、アームの静止2次元光強度画像から、光強度重心となる複数の座標点、すなわち輝度重心座標点を決定し、この複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を最小二乗法によって求め、この直線の傾きを表すパラメータから物体に働く力の大きさを決定する。
【0024】
画像情報取得装置は、結像光学系と、2次元受光素子と、ビデオキャプチャー装置とを具えて構成するのが好適である。
【0025】
結像光学系は、アームの実像が2次元受光素子の受光面に形成されるように配置される。2次元受光素子は、光強度を電気信号に変換する複数のピクセルが、これらピクセルのそれぞれの配列位置が2次元位置座標によって規定されて、2次元受光素子の受光面を画する範囲の2次元平面を埋め尽くすように配列されて構成されている。そして、2次元受光素子は、当該2次元受光素子を構成するピクセルがそれぞれ同時刻に受光する光強度が電気信号に変換されてピクセルの位置座標の関数として与えられる信号を、アームの画像情報信号として取得して出力する。
【0026】
ビデオキャプチャー装置は、画像情報信号を時系列に従って取り込んで、時刻ごとの画像情報信号のそれぞれからアームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレームを生成して、時系列に従ったこのビデオフレームを単位とする時間の関数としてこのビデオフレームを出力する構成とされている。
【0027】
画像情報処理装置は、ビデオキャプチャー装置から出力されるビデオフレームを時系列に従って順次読み込んで、このビデオフレームのそれぞれが表示する2次元光強度画像ごとに輝度重心座標点確定手段、直線方程式算出手段によって、以下の処理を行うのが好適である。
【0028】
輝度重心座標点確定手段は、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を確定する。
【0029】
直線方程式算出手段は、輝度重心座標点確定手段から出力される、2次元光強度画像の光強度重心となる複数の輝度重心座標点を読み込んで、この複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を時間の関数として求める。
【0030】
そして、トルク算出手段は、時系列に従って順次確定されて出力される上述の直線の方程式を時間の関数として読み込んで、この直線の傾きの時間変動からトルクの大きさを求める。
【0031】
輝度重心座標点確定手段は、2次元位置座標をx-y直交座標系として設定し、ROM(Read Only Memory)から次式(1)を読み出してきて、時刻tにおける、x座標がx0であるy軸に平行な方向に沿って光強度重心となるy座標の値mean_y(x0,t)を次式(1)によって確定させ、順次x0の値を2次元受光素子の受光面の両端の範囲であるx1~xnにわたって変化させて、光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を順次確定する機能を有することが好適である。
【0032】
【数1】
JP0005578667B2_000002t.gif

【0033】
直線方程式算出手段は、ROMから次式(2)を読み出してきて、次式(2)によって与えられる、複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和χ2(t)が最小となる直線の方程式を時間の関数として算出する機能を有するのが好適である。
【0034】
【数2】
JP0005578667B2_000003t.gif

【0035】
ここで、σmean_yは、mean_yの統計上の標準偏差値であり、a(t)及びb(t)はパラメータである。
【0036】
トルク算出手段は、ROMから次式(3)を読み出してきて、直線の傾きを与える時間の関数としてのパラメータa(t)に、次式(3)を当てはめてアームに働いたトルクの大きさτを求める機能を有するのが好適である。
a(t)=a0+afsinωft+(τ/κ) (3)
ここで、κは細線のねじれに対する弾性定数であり、ωfとafは雑音として残る、アームの固有振動の角周波数と角度振幅、a0は初期角度のパラメータである。減衰を無視すれば、af=τ/κである。
【0037】
あるいは、トルク算出手段は、ROMから次式(4)を読み出してきて、直線の傾きを与える時間の関数としてのパラメータa(t)に、次式(4)を当てはめてアームに働いたトルクの大きさτ(t)=τsinωtを求める機能を有するのが好適である。
a(t)=(τsinωt) /κ+a0 (4)
ここで、κは細線のねじれに対する弾性定数であり、ωはアームの固有振動の角周波数ωfに比べて十分に小さい角周波数の値、a0はパラメータである。
【0038】
この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置によれば、この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定方法が実現される。
【0039】
アームに働いたトルクの大きさτを求める際、式(3)を当てはめるか、式(4)を当てはめるかの判断については、アームに作用する微小力の変化する時間が、当該アームの固有振動周期に比べ長いか短いかによって決定されるが、その詳細は後述する。
【0040】
この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定方法は、両端に物体が取り付けられたアームを、細線によってこの細線の中心軸を中心にして弾性的に回転が可能な状態に吊り下げ、この物体に働く力の大きさを、中心軸を回転中心とするこのアームの回転角度を計測することで測定する構成とされたねじれ秤によって微小力を測定する方法である。そして、画像情報取得ステップと画像情報処理ステップとを含んで構成される。
【0041】
画像情報取得ステップ及び画像情報処理ステップは、それぞれ上述の画像情報取得装置及び画像情報処理装置によって実現される。
【0042】
画像情報取得ステップは、2次元画像形成ステップと、画像情報構成ステップと、ビデオフレーム生成ステップとを含んで構成される。
【0043】
2次元画像形成ステップは上述の画像情報取得装置が具える結像光学系によって実現され、画像情報構成ステップは上述の画像情報取得装置が具える2次元受光素子によって実現され、ビデオフレーム生成ステップは上述の画像情報取得装置が具えるビデオキャプチャー装置によって実現される。
【0044】
画像情報処理ステップは、輝度重心座標点確定ステップと、直線方程式算出ステップと、トルク算出ステップとを含んで構成される。
【0045】
輝度重心座標点確定ステップは上述の画像情報処理装置が具える輝度重心座標点確定手段によって実現され、直線方程式算出ステップは上述の画像情報処理装置が具える直線方程式算出手段によって実現され、トルク算出ステップは上述の画像情報処理装置が具えるトルク算出手段によって実現される。
【発明の効果】
【0046】
この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置によれば、画像情報取得装置によってアームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレームが生成される。そして、画像情報処理装置によってアームの静止2次元光強度画像が解析されて、このアームの画像の中心線を表す、1次関数で与えられる直線の傾きを表すパラメータが求められる。このパラメータから物体に働く力の大きさが決定される。
【0047】
この直線の傾きを表すパラメータには、アームを吊り下げている細線に対するアームの重心の振り子運動としての単振動の影響が含まれない。従って、この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置によれば、アームの重心の振り子運動としての単振動の影響を受けずにねじれ秤の回転角度を決定することが可能なる。
【0048】
アームの静止2次元光強度画像から求められるこのアームの画像の中心線を表す直線の傾きを表すパラメータには、アームの重心の振り子運動としての単振動の影響が含まれない理由は以下のとおりである。
【0049】
アームを吊り下げている細線の中心軸を中心とするアームの回転中心の座標を(x0,y0)とし、アームを吊り下げている細線の中心軸と直交するアームの中心線を表す直線の方程式をy-y0=a(x-x0)とする。ここで、細線の中心軸を中心とするアームの回転方向の単振動を考え、この単振動のつりあい位置をa0、単振動の振幅をaf(t)、単振動の角振動数をωfとすれば、この単振動は、次式(5)で表される。
a(t)=a0+af(t)sinωft (5)
ここで、単振動の初期位相については無視し0としてある。また、単振動のつりあい位置a0も時間的にゆっくりと変化するが、ここでは無視してある。
【0050】
既に説明したように、ねじれ秤による微小力測定においては、周辺の環境あるいはねじれ秤そのものを移動させる等によって、アームの回転の単振動だけでなくこのアームを吊り下げている細線に対するアームの重心の振り子運動としての単振動が加わる。この場合は、アームを吊り下げている細線の中心軸を中心とするアームの回転中心の座標(x0,y0)が定数ではなく、(x0+x0fsinωpt, y0+y0fsinωpt)と表される単振動をする。ここで、この単振動の角振動数をωpで表してある。
【0051】
x0f及びy0fは、時間tの関数であるので、x0f(t)及びy0f(t)と書くべきところであるが、時間tの関数であることをいちいち断らなくとも誤解の生じない場合は、x0f及びy0fと略記してある。以後の説明においても、時間tの関数であることをいちいち断らなくとも誤解の生じない場合は、時間tの関数であることを明示しない場合もある。
【0052】
単振動のつりあい位置が上述のように時間の関数として変化するものとすると、アームの中心線を表す直線の方程式は次式(6)で与えられる。
y=(a0+af(t)sinωft)(x-x0-x0fsinωpt)+(y0+y0fsinωpt) (6)
式(6)で与えられる運動を行っているアームの画像から、アームの中心線を表す直線の方程式がy=a(t)x+b(t)で書けるものとして実験的に求めると、次式、(7a)及び(7b)が得られる。
a(t)=a0+afsinωft (7a)
b(t)=(a0+af(t)sinωft)(x0+x0fsinωpt)+(y0+y0fsinωpt) (7b)
従って、アームの中心線を表す直線の方程式が、y=a(t)x+b(t)で与えられるとしてこの直線の傾きを表すパラメータa(t)を時間の関数として計測することで、単振動のつりあい位置a0を振動中心として決定することができる。すなわち、式(7a)で与えられるこの直線の傾きを表すパラメータa(t)には、x0f(t)、y0f(t)、ωp等のアームの重心の振り子運動としての単振動を与えるパラメータが含まれていないので、アームの重心の振り子運動としての単振動に依存せずに決定される。
【0053】
このことによって、この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置によれば、アームの重心の振り子運動としての単振動の影響を受けずにねじれ秤の回転角度、すなわち、単振動のつりあい位置a0を決定することができることが結論される。
【0054】
次に、上述の、アームの画像の中心線を表す直線の傾きを表すパラメータから物体に働く力の大きさを決定する方法によらず、ねじれ秤のアームの片側アームに取り付けられたミラーにレーザー光を当てこのレーザー光の反射光を光検出器で受光してミラーまでの距離を計測してアームの回転角度を測定する、いわゆる、レーザー変位計を用いてアームの何れかの一箇所の変動を捉えて計測するという一点計測によって決定する方法によって、ねじれ秤の回転角度を決定する方法によった場合、アームの重心の振り子運動としての単振動の影響がどの様に現れるかにつき説明する。
【0055】
この場合は、x座標のある位置xobsに置かれたレーザー変位計の軸上におけるミラーまでの距離であるy座標の位置yobs(xobs)が観測される観測量となる。この観測量が上述の状況でどの様に時間的変化をするかを式で表現すると、次式(8a)及び(8b)となる。
xobs=固定値 (8a)
yobs=(a0+af(t)sinωft)(xobs-x0-x0fsinωpt)+(y0+y0fsinωpt) (8b)
この式(8b)から、微小力の大きさを与えるパラメータa0を得るには、次式(9)を用いることとなる。
【0056】
【数3】
JP0005578667B2_000004t.gif

【0057】
つまり、微小力の大きさを与えるパラメータa0を得るには、アームの重心の振り子運動としての単振動のパラメータx0、y0、x0f(t)、y0f(t)、ωp等を同時に決定しなければならない。そのため、これらのアームの重心の振り子運動としての単振動のパラメータを決定しなくとも済むように、すなわち、x0f(t)→0、y0f(t)→0となるように、ねじれ秤の測定環境を整える必要が出てくる。尚、ねじれ秤の中心に取り付けられたミラーにレーザー光を当てこのレーザー光の反射光を光検出器で受光してミラーの角度を計測する方法においても、反射光の位置からミラーの角度を算出する為にアームの中心座標が必要になる為、片側アームにミラーを取りつけた場合と同様に観測量がx0f(t)、y0f(t)に依存し、アームの重心の振り子運動としての単振動のパラメータを決定する必要がある。これに対して、上述したように、この発明の要旨によるねじれ秤による微小力測定装置はこのようなねじれ秤に対する測定環境の調整を厳格にする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の実施形態の微小力測定装置の構造の説明に供する図である。
【図2】ビデオキャプチャー装置から一定時間間隔で出力されるビデオフレームの説明に供する図であり、(A)~(C)はそれぞれ第1~第3ビデオフレームに表示されたアームの静止2次元光強度画像を模式的に示す図であり、(D)は細線によって、物体が取り付けられたアームが吊り下げられて構成されるねじれ秤の構成の一部を示す図である。
【図3】光強度重心となる複数の輝度重心座標点を順次確定する工程についての説明に供する図であり、(A)は複数のビデオフレームを重ねて模式的に示す図であり、(B)はx座標がx0、xp、xqである場合を例にとってそれぞれにおける光強度重心となる位置を示す図であり、(C)はx-y平面に光強度重心となる複数の輝度重心座標点を模式的にプロットした様子を示す図である。
【図4】微小力が、ねじれ秤のアームの固有振動周期に比べて十分に短時間に変化すると見なされる場合におけるトルクの変化分の大きさの求め方の説明に供する図である。(A)は微小力の作用を時間の関数として示す図であり、(B)は減衰の無視できる場合に対し直線の傾きを表すパラメータa(t)の時間変動を示す図であり、(C)はx軸の原点をアームの中心に定義した場合の直線のy軸切片を表すパラメータb(t)の時間変動を示す図である。
【図5】微小力が、ねじれ秤のアームの固有振動周期に比べて十分に長い時間で変化させる場合におけるトルクの大きさの求め方の説明に供する図である。(A)は微小力の作用を時間の関数として示す図であり、(B)は直線の傾きを表すパラメータa(t)の時間変動を示す図であり、(C)はx軸の原点をアームの中心に定義した場合の直線のy軸切片を表すパラメータb(t)の時間変動を示す図である。
【図6】この発明の実施形態の微小力測定方法を示すフローチャートである。
【図7】固体中に埋没していると推定される検出対象物を、この発明の実施形態の微小力測定装置によって検知する非破壊検査の事例の説明に供する図である。
【図8】微小力測定装置の被検査対象である固体に対する位置(x座標)に対して、ねじれ変位角Θの大きさを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、図1~図8を参照して、この発明の実施形態につき説明する。なお、図1及び図7は、この実施形態に係る一構成例に対するものであり、この発明の実施形態が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、この発明の微小力測定装置と同種の装置であれば通常具えている、この発明の特徴部分ではない周知の構成要素は図示を省略したものもある。以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら機器及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、図1、図2、図7及び図8において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。

【0060】
<この発明の実施形態の微小力測定装置>
図1を参照してこの発明の実施形態の微小力測定装置の構造及びその動作について説明する。図1は、この発明の実施形態の微小力測定装置の構造の説明に供する図であり、ねじれ秤の概略的構成及び画像情報取得装置及び画像情報処理装置の概略的ブロック構成を示している。

【0061】
この発明の実施形態の微小力測定装置は、両端に物体10が取り付けられたアーム12を、細線14によってこの細線14の中心軸を中心にして弾性的に回転が可能な状態に吊り下げ、物体10に働くトルクの大きさを、中心軸を回転中心とするこのアーム12の回転角度を計測することで測定する構成とされたねじれ秤によって微小力を測定する装置である。そして、画像情報取得装置20と画像情報処理装置30とを具えて構成される。

【0062】
両端に物体10が取り付けられたアーム12、及び細線14によって構成されたねじれ秤は、周辺の空気の流れ等、アームの運動に影響を及ぼす要因を遮断するための保護カバー16で覆われた構成とされている。また、アーム12を撮像するためにアームを照明する必要があるが、図1ではこの照明装置については図示を省略してある。アーム12の照明方法としては、半透鏡等を利用して図1における保護カバー16の下方からアーム12を照明する等さまざまな方法があるが、ねじれ秤によって測定の対象となる微小力の種類に応じて適宜選択すればよい。

【0063】
画像情報取得装置20は、アーム12の画像を取り込んでこの画像の画像情報信号25を生成し、この画像情報信号25から時系列に従ったアームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレーム27を生成して出力する。

【0064】
画像情報取得装置20は、結像光学系22と、2次元受光素子24を具えたビデオカメラ28と、ビデオキャプチャー装置26とを具えて構成されている。図1では、2次元受光素子24を直接示す代わりにビデオカメラ28の筺体を直方体で象徴的に示してあるが、ここではビデオカメラ28の細部構造が問題となるのではなく、結像光学系22によって2次元受光素子24にアーム12の静止2次元光強度画像が結像される構成とされていることを概略的に示されているに過ぎないものと了解されたい。

【0065】
従って、以後の説明においては、2次元受光素子24といった場合は、光強度を電気信号に変換する複数のピクセルが、当該ピクセルのそれぞれの配列位置が2次元位置座標によって規定されて、当該2次元受光素子の受光面を画する範囲の2次元平面を埋め尽くすように配列されて構成された受光素子を意味する。そして、結像光学系22によって形成されるアーム12の画像が形成される位置が、この2次元受光素子の結像面となる。2次元座標系としては、斜交座標系、直交座標系,極座標系等様々な座標系があるが、何れの座標系を利用するかは設計的事項に属する事柄であるので、ここでは、x-y直交座標系を採用する。

【0066】
2次元受光素子24では、2次元受光素子24を構成するピクセルがそれぞれ同時刻に受光する光強度が電気信号に変換されてピクセルの位置座標の関数として与えられる信号が取得され、アームの画像情報信号25として出力される。

【0067】
ビデオキャプチャー装置26は、画像情報信号25を時系列に従って取り込んで、時刻ごとの画像情報信号25のそれぞれからアームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレーム27を生成して、時系列に従ったこのビデオフレーム27を単位とする時間の関数として出力する構成とされている。図1では、ビデオキャプチャー装置26から単にビデオフレーム27が出力されるように示してあるが、ビデオキャプチャー装置26からは、一定の時間間隔で時系列に従ったこのビデオフレーム27が出力される構造となっている。

【0068】
画像情報処理装置30は、アームの静止2次元光強度画像から、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を決定し、この複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を最小二乗法によって求め、この直線の傾きを表すパラメータから物体10に働く力の大きさ決定する機能を有し、以下のとおり構成されている。

【0069】
画像情報処理装置30は、MPU(Micro Processing Unit)38、入力部32、記憶部34及び出力部36を具えて構成される、周知のパーソナルコンピュータ等を用いることができる。入力部32はパーソナルコンピュータに通常用いられるキーボード、データ読取装置等の任意好適な公知の入力装置を具え、及び、出力部36はディスプレイ、プリンター、音声出力装置等の任意好適な出力装置を具えて構成される。記憶部34にはハードディスク等の任意好適な周知の記憶装置が用いられる。MPU 38は、周知の構成とすることができ、ここでは、CPU(Central Processing Unit)52と、メモリとしてのROM(Read Only Memory)48及びRAM(Random Access Memory)50を具える構成としている。

【0070】
CPU 52が具える制御手段40は、例えばROM 48に読み出し自在に記録されているプログラムを読み出して当該プログラムを実行することにより、CPU 52の機能手段として、輝度重心座標点確定手段42、直線方程式算出手段44、及びトルク算出手段46を実現する。なお、輝度重心座標点確定手段42、直線方程式算出手段44、及びトルク算出手段46が実行する処理の内容については、以下においてその都度詳細な説明を行う。

【0071】
画像情報処理装置30は、ビデオキャプチャー装置26から出力されてくるビデオフレーム27を時系列に従って順次読み込んで、このビデオフレーム27のそれぞれが表示する静止2次元光強度画像ごとに、輝度重心座標点確定手段42及び直線方程式算出手段44によって、以下の処理が行われる。

【0072】
以下詳細に説明するように、輝度重心座標点確定手段42は、光強度重心となる複数の輝度重心座標点を確定する。直線方程式算出手段44は、輝度重心座標点確定手段42から出力された、静止2次元光強度画像の光強度重心となる複数の輝度重心座標点を読み込んで、この複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を求める。

【0073】
また、トルク算出手段46によって、直線方程式算出手段44によって時系列に従って順次確定され出力される上述の直線の方程式を、時間の関数として読み込んで、この直線の傾きの時間変動からトルクの大きさが求められる。

【0074】
<輝度重心座標点確定手段>
画像情報取得装置20において、ビデオカメラ28によって、アーム12の画像が取り込まれて画像情報信号25が生成され、ビデオキャプチャー装置26によって、時系列に従ったアームの静止2次元光強度画像を表示するビデオフレーム27が生成して出力される。

【0075】
ビデオキャプチャー装置26から一定時間間隔で出力されるビデオフレーム27について図2(A)~図2(D)を参照して説明する。図2(A)~図2(D)は、ビデオキャプチャー装置26から一定時間間隔で出力される、ビデオフレーム27の説明に供する図であり、図2(A)~図2(C)は、それぞれ第1~第3ビデオフレームに表示されたアーム12の静止2次元光強度画像を模式的に示す図であり、図2(D)は、細線14によって、物体10が取り付けられたアーム12が吊り下げられて構成されるねじれ秤の構成の一部を示す図であり、物体10に微小力が働き、物体10が10aで示す位置にあった位置から10bで示す位置に移動して、アーム12が細線14の中心軸を中心にして弾性的に回転する様子を示している。

【0076】
図2(A)~図2(C)において、アーム12の一部が画像として表示されている。図2(A)に示す第1ビデオフレームに表示されたアーム12の画像は、時刻t1にビデオカメラ28によって取得されたものであり、図2(B)に示す第2ビデオフレームに表示されたアーム12の画像は、時刻t2にビデオカメラ28によって取得されたものであり、図2(C)に示す第3ビデオフレームに表示されたアーム12の画像は、時刻t3にビデオカメラ28によって取得されたものである。以下、図示は省略してあるが、離散的な時刻に順次第4ビデオフレーム以降のビデオフレームが、時系列t=t4、t5、・・・・・に従って順次ビデオキャプチャー装置26から出力される。

【0077】
このように、ビデオキャプチャー装置26から時系列に従って順次ビデオフレーム27が出力され、画像情報処理装置30に読み込まれる。ビデオキャプチャー装置26から順次出力されるビデオフレーム27は、画像情報処理装置30が具える入力部32を介して、RAM 50に一時的に記憶される。

【0078】
ROM 48には、予め、時刻tにおける、x座標がx0であるy軸に平行な方向に沿って光強度重心となるy座標の値を次式(1)によって確定させ、更に、順次x0の値を2次元受光素子の受光面の両端の範囲であるx1~xnにわたって変化させて、光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を順次確定する工程(詳細は後述する。)を実行するための輝度重心座標点確定処理プログラムが格納されている。従って、式(1)はROM 48に、必要に応じて読み出しが可能な状態で格納されている。

【0079】
【数4】
JP0005578667B2_000005t.gif

【0080】
ただし、mean_y(x0,t)は、時刻tにおける、x座標がx0であるy軸に平行な方向に沿って光強度重心となるy座標の値である。

【0081】
制御手段40は、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から、入力部32を介して与えられる輝度重心座標点確定処理の実行指示に応答して、輝度重心座標点確定処理プログラムをROM 48から読み出すと共に、ビデオキャプチャー装置26から出力されたビデオフレーム27を時系列に従って順次読み出し、ビデオフレーム27のそれぞれに対して当該プログラムを実行させることによって、CPU 52の機能手段として輝度重心座標点確定手段42を実現させる。そして、制御手段40により、輝度重心座標点確定手段42による処理の結果である、光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を記憶部34あるいはRAM 50に読み出し自在の形態で保存する。

【0082】
以下の説明では、輝度重心座標点確定処理、直線方程式算出処理、及びトルク算出処理のそれぞれの処理に対して、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から入力部32を介して与えられる実行指示を待って実行されることを前提にして説明するが、これら3つの処理が順次自動的に実行されるように構成してもよい。

【0083】
輝度重心座標点確定処理、直線方程式算出処理、及びトルク算出処理のそれぞれの処理に対して微小力測定装置の操作者が処理ごとにチェックしつつ実行する場合は、それぞれの処理を個別に実行指示する形式が使いやすいが、流れ作業的な処理等においては3つの処理が順次自動的に実行されるように構成するのが便利である。どの様に3つの処理を実行するかは、測定対象あるいは、測定条件等によって適宜決定すべき形式的事項に属する。

【0084】
輝度重心座標点確定手段42による処理の結果は、記憶部34あるいはRAM 50のいずれかに保存すればよいが、この結果は、以下に説明する直線方程式算出手段44によって保存後すぐに使われるので、RAM 50に保存する形態とするのが都合のよい場合もある。しかしながら、RAM 50の記憶容量には限りがあるので、光強度重心となる複数の輝度重心座標点の数が多い場合には、記憶部34に保存するのが好都合である場合もある。2次元受光素子24がピクセルを高密度に配置された高精細な素子である場合は、求められる座標点の数は多くなる。何れの記憶手段に保存するかは、輝度重心座標点確定手段42によって求められた光強度重心となる複数の輝度重心座標点の数等を総合的に勘案して決定する形式的事項である。

【0085】
図3(A)~図3(C)を参照して、光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))を順次確定する工程について説明する。図3(A)は、複数のビデオフレームを重ねて模式的に示す図であり、図3(B)はx座標がx0、xp、xqである場合を例にとってそれぞれにおける光強度重心となる位置を示す図であり、図3(C)はx-y平面に光強度重心となる複数の輝度重心座標点を模式的にプロットした様子を示す図である。

【0086】
ここで、x座標を識別するために付したサブスクリプトp及びqは、1より大きな任意の整数であり、このサブスクリプトの最大値は、x軸方向に並べられたピクセルの総数に等しいか、あるいはピクセルの総数以下の値である。光強度重心となる複数の輝度重心座標点は、x軸方向に並べられたピクセルの全てに対して必ずしも求める必要はなく、数ピクセル置きあるいは数十ピクセル置きに求めてもよい。光強度重心となる輝度重心座標点の数をどの程度求めるべきかについては、測定対象、あるいは測定時間等を総合的に勘案して決定すべき事項である。

【0087】
図3(A)及び図3(B)に示すように、第iビデオフレーム(iは1以上であり一括処理されるビデオフレーム総数以下の整数)において、光強度分布の重心位置mean_y(x,t)は、x座標がx0、xp、xqのそれぞれで上述の式(1)で与えられる。式(1)においてI(x,y,t)は、時刻tにおける座標(x、y)における光強度の大きさを表している。

【0088】
なお、以後の説明において、アーム12の慣性モーメントもIを用いて表示しているが、Iを含む式及び前後の説明文から、光強度を表しているか慣性モーメントを表しているかは明らかである。

【0089】
x=x0、xp、xq等のそれぞれにおいて光強度分布の重心位置が求められると、図3(C)に示すように、光強度重心となる複数の輝度重心座標点が求められる。ただし、ここで、図3(C)に示す光強度重心となる複数の輝度重心座標点は、第iビデオフレームに対するものであり、同様に第1~第Nビデオフレームのそれぞれについて、図3(C)に示すような、光強度重心となる複数の輝度重心座標点が求められる。

【0090】
ビデオキャプチャー装置26からビデオフレームが一定時間間隔Δtで時刻t=t1から順次出力されるものとすると、輝度重心座標点確定手段42による処理の結果である、光強度重心となる複数の輝度重心座標点(x1, mean_y(x1,t))、(x2, mean_y(x2,t))、・・・・(xn, mean_y(xn,t))は、(x1, mean_y(x1,t1))、(x2, mean_y(x2,t1))、・・・・(xn, mean_y(xn,t1))、(x1, mean_y(x2,t1+Δt))、(x2, mean_y(x2,t1+Δt))、・・・・(xn, mean_y(xn,t1+Δt))、(x1, mean_y(x2,t1+2Δt))、(x2, mean_y(x2,t1+2Δt))、・・・・(xn, mean_y(xn,t1+2Δt))、・・・・等となる。これらの輝度重心座標点が記憶部34あるいはRAM 50のいずれかに保存されるように設定すればよいが、ここではRAM 50に一時的に保存するものとして、以下説明する。

【0091】
<直線方程式算出手段>
直線方程式算出手段44は、輝度重心座標点確定手段42によって求められた静止2次元光強度画像の光強度重心となる複数の輝度重心座標点をRAM 50から読み込んで、この複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和が最小となる直線の方程式を求める。

【0092】
ROM 48には、予め、次式(2)によって複数の輝度重心座標点からの距離の二乗の和χ2(t)が最小となる直線の方程式を時間の関数として算出する直線方程式算出処理プログラムが格納されている。従って、次式(2)は予めROM 48に読み出し自在に格納されている。

【0093】
【数5】
JP0005578667B2_000006t.gif

【0094】
制御手段40は、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から、入力部32を介して与えられる直線方程式算出処理の実行指示に応答して、直線方程式算出処理プログラムをROM 48から読み出すと共に、RAM 50に保存されている時刻t=t1からt=t1+Δt、t=t1+2Δt、・・・・におけるそれぞれの輝度重心座標点を順次読み出してそれぞれの時刻における輝度重心座標点に対して当該直線方程式算出処理プログラムを実行することによって、CPU 52の機能手段として直線方程式算出手段44を実現する。

【0095】
そして、直線方程式算出手段44による処理の結果である、直線の方程式y=a(t)x+b(t)を時系列に記憶部34あるいはRAM 50に出力し、これに読み出し自在の形態で保存する。ここで、直線の方程式y=a(t)x+b(t)とは、y=a(t1)x+b(t1)、y=a(t1+Δt)x+b(t1+Δt)、y=a(t1+2Δt)x+b(t1+2Δt)、・・・・等である。すなわち、図3(C)に示すように、時刻t1、t1+Δt、t1+2Δt、・・・・における直線の方程式が直線方程式算出手段44によって、y=a(t)x+b(t)の形式で確定される。ただし、a(t)及びb(t)は、時間の関数として与えられるパラメータである。これらの直線の方程式が記憶部34あるいはRAM 50のいずれかに保存されるように設定すればよいが、ここではRAM 50に一時的に保存するものとして、以下説明する。

【0096】
<トルク算出手段>
トルク算出手段46は、時系列に従って順次確定された上述の直線の方程式y=a(t1)x+b(t1)、y=a(t1+Δt)x+b(t1+Δt)、y=a(t1+2Δt)x+b(t1+2Δt)、・・・・をRAM 50から読み込んで、この直線の傾きa(t)の時間変動から、トルクの大きさτを求める。

【0097】
ROM 48には、予め、直線の傾きを与える時間の関数として、直線方程式算出手段44によって求められたパラメータa(t)に、次式(3)または次式(4)を当てはめてアームに働いたトルクの大きさτを求めるトルク算出処理プログラムが格納されている。従って、式(3)及び式(4)は、予めROM 48に読み出し自在に格納されている。
a(t)=a0+af sinωf t+(τ/κ) (3)
a(t)=(τsinωt) /κ+a0 (4)
ここで、κは細線のねじれに対する弾性定数である。ωfとafは雑音として残る、アームの固有振動の角周波数と角度振幅、a0は初期角度のパラメータである。減衰を無視すれば、af=τ/κである。ωはωfに比べて十分に小さい角周波数の値である。

【0098】
制御手段40は、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から、入力部32を介して与えられるトルク算出処理の実行指示に応答して、トルク算出処理プログラムをROM 48から読み出すと共に、RAM 50に保存されているa(t1)、a(t1+Δt)、a(t1+2Δt)・・・・等を順次読み出してそれぞれの時刻におけるパラメータa(t)に対して当該トルク算出処理プログラムを実行することによって、CPU 52の機能手段としてトルク算出手段46を実現する。

【0099】
そして、トルク算出手段46による処理の結果である、トルクの大きさτを記憶部34あるいはRAM 50から出力されて、これに読み出し自在の形態で保存する。

【0100】
アーム12に働いたトルクの大きさτを求めるに当たり式(3)を利用するか式(4)を利用するかは、ねじれ秤に作用する被測定力である微小力が、ねじれ秤のアーム12の固有振動周期に比べて十分に短時間に変化するか、あるいはアーム12の固有振動周期に比べて十分に長時間にわたって変化するかによって決定される。すなわち、微小力が、ねじれ秤のアーム12の固有振動周期に比べて十分に短時間に変化していると見なされる場合は式(3)を使用し、アーム12の固有振動周期に比べて十分に長時間にわたって変化していると見なされる場合は式(4)を使用するのが好適である。

【0101】
このことを図4(A)~図4(C)及び図5(A)~図5(C)を参照して説明する。図4(A)~図4(C)は、微小力が、ねじれ秤のアーム12の固有振動周期に比べて十分に短時間に変化していると見なされる場合におけるトルクの大きさの求め方の説明に供する図であり、図5(A)~図5(C)は、アーム12の固有振動周期に比べて十分に長時間にわたって変化していると見なされる場合におけるトルクの大きさの求め方の説明に供する図である。図4(A)及び図5(A)は微小力の作用を時間の関数として示す図であり、横軸に時間を縦軸に微小力の大きさをそれぞれ任意目盛で示してある。図4(B)及び図5(B)は直線の傾きを表すパラメータa(t)の時間変動を示す図であり、横軸に時間を縦軸にa(t)の大きさをそれぞれ任意目盛で示してある。図4(C)及び図5(C)は直線のy軸切片を表すパラメータb(t)の時間変動を示す図であり、横軸に時間を縦軸にb(t)の大きさをそれぞれ任意目盛で示してある。

【0102】
微小力のアームに作用する変化時間の長短についての判断について以下に説明する。

【0103】
まず、ある時刻(例えばt=tp)でアームに対してトルクτとなる微小力が階段関数的に変化し、アームの運動に減衰がないと見なせる運動を当該アームが行っていると見なせる場合について説明する。この場合は、図4(A)に示すように、t=tpでτだけトルクが階段関数状に変化したと想定することになる。すなわち、t<tpにおいてτ0の大きさのトルクが働いているところに階段関数状にt≧tpにおいて(τ0-τ)の大きさのトルクが働いたと仮定する。そして、このアーム12の運動には減衰がないものとする。このような状況下ではアーム12の画像の中心線を表す直線の傾きを表すパラメータaは次式(7)で与えられる微分方程式に従って変化する。
I(d2a/dt2)=-κa+τ(t) (7)
但し、τ(t) =τ0 (t<tp)、τ0-τ(t≧tp)とする。
ここで、Iはアーム12の物体10を含めた慣性モーメントである。

【0104】
式(7)で与えられる微分方程式の一般解は、次式(8)で与えられる。
a(t)=Asinω0t+a0 (8)
今の場合、式(8)は、
t<tpにおいて、a(t)=a0
t≧tpにおいて、a(t)=a0+(τ/κ)sinω0t+(τ/κ)
の形に書き表される。

【0105】
従って、この場合、a(t)の振動中心は、t<tpにおいてa0となり、t≧tpにおいて、a0-(τ/κ)となるから、この結果によってτが求まる。

【0106】
すなわち、微小力がねじれ秤のアーム12の固有振動周期T(=2π(I/κ)1/2)に比べて十分に短時間に変化し、t<tpにおいてτ0の大きさのトルクが働いているところに階段関数状にt≧tpにおいて(τ0-τ)の大きさのトルクが働いた場合は、式(3)を利用してアーム12に働いたトルクの大きさτを求めることになる。このように、ある時刻でアームに対してトルクτとなる微小力が階段関数的に変化し、アームの運動に減衰がないと見なせる運動を当該アームが行っていると見なせる場合には、式(3)を利用してトルクの大きさτを求めることになり、このような測定方法を変位測定法ということとする。

【0107】
一方、図5(A)に示すように、微小力がねじれ秤のアーム12の固有振動周期T(=2π(I/κ)1/2)に比べて十分に長い時定数で滑らかに変化する状況を想定する。そしてこのアーム12の運動には減衰があるものとする。この場合アーム12は一度も振動することなく、つりあいの位置の変換に追随して回転動作する。

【0108】
ここで、τ(t)=τsinωtとすると、a(t)=(τ(t)/κ)+a0=(τ/κ)sinωt+a0となって、図5(B)に示すように、Δa=τ/κとして直接τの値を求めることができる。この場合は、上述の変位測定法のように振動中心を求めなくとも、時間の関数としてそのまま、トルクτが求められる。

【0109】
すなわち、微小力がねじれ秤のアーム12の固有振動周期T(=2π(I/κ)1/2)に比べて十分に長い時定数で滑らかに変化する場合は、式(4)を利用してアーム12に働いたトルクの大きさτを求めることになり、このような測定方法を追随測定法ということとする。

【0110】
変位測定法によるか、追随測定法によるかは、測定対象等によって決定される事項であり、この発明の実施形態の微小力測定装置及び微小力測定方法を実行する操作者が経験的に決定すべき事項である。

【0111】
ここで、微小力がねじれ秤のアーム12の固有振動周期に比べて十分に短時間に作用していると見なされる場合におけるトルクの大きさを求めるための理論モデル式である式(3)及び、十分に長い時定数で滑らかに作用していると見なされる場合におけるトルクの大きさを求めるための理論モデル式である式(4)をamodel(t)で表し、直線方程式算出手段44で求められた直線の傾きを与えるパラメータa(t)をameasured(t)と表す。

【0112】
この理論モデル式amodel(t)と実験データ式ameasured(t)とを用いて、トルクτの大きさを最小二乗法で求めるには、次式(10)で与えられる、理論モデル式amodel(t)と実験データ式ameasured(t)とのずれ量が最小となるようにτを求める。次式(10)は、予め、上述のトルク算出処理プログラムによって、ROM 48に読み出し自在に格納されている。

【0113】
【数6】
JP0005578667B2_000007t.gif

【0114】
実際には、トルク算出手段46によって、同様に、予め、ROM 48に格納されている次式(11)を読み出してきて、この式(11)を解いてトルクτの値を求める。

【0115】
【数7】
JP0005578667B2_000008t.gif

【0116】
ここで、tframeとは、ビデオキャプチャー装置26から一定時間間隔Δtで時刻t=t1から順次出力されるビデオフレーム27のそれぞれの時刻を与えるt=t1からt=t1+Δt、t=t1+2Δt、・・・・を示す変数である。

【0117】
式(10)及び式(11)において、σmeasured(tframe)は、ameasured(tframe)の統計上の標準偏差値である。また、amodel(t=tfram,τ)は、式(3)または式(4)で与えられる理論モデルのa(t)、すなわち、amodel(t)を意味する。

【0118】
トルクの大きさτが求まれば、アーム12の両端に取り付けられた物体10に働いている微小力の大きさFは次のようにして求められる。

【0119】
ねじれ秤の回転角θは、θ=tan-1a(t)で与えられるが、あまり大きくない範囲で直線の傾きを与えるパラメータa(t)の振動中心a0(t)にほぼ等しく、θ=a0(t)と見なすことができる。また、アーム12の長さをLとしアーム12の両端に取り付けられた物体10の質量が等しいとするとトルクτはLFで与えられる。すなわちτ=LFである。一方、アーム12を吊り下げている細線14の弾性定数はκであるから、細線14のねじれによる弾性力の大きさはκθで与えられる。両者の値が等しいことから、LF=κθ=κa0(t)が成り立ち、微小力の大きさFは、F=κθ/L=κa0(t)/Lと求められる。

【0120】
トルク算出手段46を実現するためのプログラムには、微小力の大きさFをF=κθ/L=κa0(t)/Lの関係から求める処理を含めておけば便利である。また、細線14のねじれに対する弾性定数κの値、アーム12の長さL等の定数値は、予めトルク算出手段46を実現するためのプログラム中に与えるように設定しておけばよい。

【0121】
トルク算出手段46によって得られた結果である、a(t1)、a(t1+Δt)、a(t1+2Δt)・・・・等、あるいは、トルクτ、微小力F等は、記憶部34に格納し、必要に応じて、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から入力部32を介して与えられる読み出し指示に応答して、出力部36に出力されるように設定しておけばよい。

【0122】
<微小力測定方法>
この発明の実施形態の微小力測定方法について、図1及び図6に示すフローチャートを参照して説明する。図6は、この発明の実施形態の微小力測定方法を示すフローチャートである。

【0123】
図6に示すステップS1はスタートステップであり、画像情報取得装置及び画像情報処理装置が動作可能な状態に設定するステップである。ステップS2は、2次元画像形成ステップであり、図1に示す画像情報取得装置30が具える結像光学系22によって、ねじれ秤が具えるアーム12の画像を2次元受光素子24に結像されるように調整するステップである。

【0124】
ステップS2に続いて、2次元受光素子24を構成するそれぞれのピクセルが光強度を電気信号に変換し、画像情報信号25としてその電気信号を当該ピクセルの位置座標の関数としてビデオキャプチャー装置26に出力する画像情報構成ステップであるステップS3が実行される。

【0125】
ステップS3に続いて、ビデオキャプチャー装置26が、画像情報信号25を時系列に従って取り込んで、時刻ごとの画像情報信号25のそれぞれからアーム12の静止2次元光強度画像を表示するビデオフレーム27を生成して、時系列に従ったこのビデオフレーム27を単位とする時間の関数としてビデオフレーム27を出力するビデオフレーム生成ステップであるステップS4が実行される。

【0126】
ステップS4に引き続いて、制御手段40が、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から、入力部32を介して与えられる輝度重心座標点確定処理の実行指示に応答して、輝度重心座標点確定処理プログラムをROM 48から読み出すと共に、ビデオキャプチャー装置26から出力されたビデオフレーム27を時系列に従って順次読み出し、ビデオフレーム27のそれぞれに対して当該プログラムを実行させるステップS5が実行される。

【0127】
ステップS5に引き続いて、制御手段40が、この発明の実施形態の微小力測定装置の操作者から、入力部32を介して与えられる直線方程式算出処理の実行指示に応答して、直線方程式算出処理ログラムをROM 48から読み出すと共に、RAM 50に保存されている時刻t=t1からt=t1+Δt、t=t1+2Δt、・・・・におけるそれぞれの輝度重心座標点を順次読み出してそれぞれの時刻における輝度重心座標点に対して当該直線方程式算出処理ログラムを実行するステップS6が実行される。

【0128】
ステップS6が実行されたら、制御手段40によって、ビデオキャプチャー装置26から出力されたビデオフレーム27の全てに対して、ステップS5及びS6が実行されたか否かを判断し、すべてのビデオフレームに対してステップS5及びS6の処理が終了している場合は、ステップS8に進み、未終了であると判断された場合はステップS5に戻す処理であるステップS7が実行される。

【0129】
ステップS8は、直線方程式算出手段から、時系列に従って順次確定されて出力された上述の直線の方程式を時間の関数として読み込んで、この直線の傾きの時間変動から、トルクの大きさ(τ)を求めるトルク算出ステップである。

【0130】
ステップS8によってトルクの大きさτが求まったら、アーム12の両端に取り付けられた物体10に働いている微小力の大きさFを求める微小力確定ステップであるステップS9が実行されて、この発明の実施形態の微小力測定方法の終了ステップであるステップS10が実行される。

【0131】
<微小力測定装置による埋没物の存在確認検査>
この発明の実施形態の微小力測定装置による微小力測定方法によれば、被微小力測定対象に対する位置を変えつつ実行し、当該被微小力測定対象に埋没している物体の存在を非破壊で探査する埋没物体の探査方法を実現することが可能である。以下図7及び図8を参照して、この発明の実施形態の微小力測定装置によって、固体中に埋没した物体の存在を検知する非破壊検査の事例を説明する。

【0132】
この非破壊検査の事例では、被微小力測定対象に対するこの発明の微小力測定装置の位置を移動させて、複数箇所において重力の大きさが観測され、その測定箇所に対する重力の大きさの変化から、固体中に埋没した物体の存在が探知される。

【0133】
図7は、固体60中に埋没していると推定される検出対象物56及び58を、この発明の実施形態の微小力測定装置54によって検知する非破壊検査の事例の説明に供する図である。図7では、画像情報取得装置20の一部及び画像情報処理装置30について図示を省略してあるが、ここで利用されている微小力測定装置は図1に示す構成要素が全て具えられているものと了解されたい。

【0134】
被検査対象である固体60に沿って微小力測定装置54の位置をずらしつつ、アーム12に働くトルクの大きさを測定する。ここでは、微小力測定装置54の走査方向をx軸方向に設定してある。

【0135】
図8は、微小力測定装置54の被検査対象である固体60に対する位置(x座標)に対して、ねじれ変位角Θの大きさを示す図である。横軸にx軸が任意スケールで示してあり、縦軸にねじれ変位角Θの大きさを任意目盛で示してある。

【0136】
既に図4及び図5を参照して説明したように、図8の縦軸に示すねじれ変位角Θの大きさは、直線の傾きを表すパラメータa(t)から求められる(τ/κ)の値に比例する値である。すなわち、x座標の各地点で微小力Fの値の相対値が測定されていることになる。図7に示す非破壊検査の事例のように、必ずしも微小力Fの値そのものを知る必要はなく相対値が知られればよい場合が多い。しかしながら、微小力Fの値そのものを知りたい場合には、アームの固有単振動の周期を計測し、慣性モーメントの値を用いる事でκの値を規格化すればよい。

【0137】
図8に示すように、検出対象物56及び58に近いほど(τ/κ)の値、すなわち微小力Fが大きくなっており、この結果から微小力Fが大きなx座標から、検出対象物56及び58が固体60のどのあたりに埋め込まれているかが推定される。

【0138】
上述のように、被検査対象である固体60に沿って微小力測定装置54の位置をずらしつつ微小力の大きさを測定する場合は、トルク算出手段46によって得られた結果である、a(t1)、a(t1+Δt)、a(t1+2Δt)・・・・等、あるいは、トルクτ、微小力F等についての情報は、x座標に対応させて記憶部34格納し、入力部32を介して与えられる読み出し指示に応答して出力部36に出力される構成とすればよい。ここで、出力部36としてディスプレイあるいはプリンターを表示手段とし、図8に示した、x座標に対する微小力Fの大きさを示す図を表示させるように設定しておくのが便利である。このような設定は、周知のコンピュータの操作手法によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0139】
10:物体
12:アーム
14:細線
16:保護カバー
20:画像情報取得装置
22:結像光学系
24:2次元受光素子
26:ビデオキャプチャー装置
28:ビデオカメラ
30:画像情報処理装置
32:入力部
34:記憶部
36:出力部
38:MPU
40:制御手段
42:輝度重心座標点確定手段
44:直線方程式算出手段
46:トルク算出手段
48:ROM
50:RAM
52:CPU
54:微小力測定装置
56、58:検出対象物
60:固体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7