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明細書 :地下構造物の被覆物質異常判断装置および被覆物質異常判断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5005611号 (P5005611)
公開番号 特開2009-276259 (P2009-276259A)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月22日(2012.8.22)
公開日 平成21年11月26日(2009.11.26)
発明の名称または考案の名称 地下構造物の被覆物質異常判断装置および被覆物質異常判断方法
国際特許分類 G01M   3/20        (2006.01)
E02D   1/00        (2006.01)
E21D  11/38        (2006.01)
FI G01M 3/20 M
E02D 1/00
E21D 11/38 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2008-129096 (P2008-129096)
出願日 平成20年5月16日(2008.5.16)
審査請求日 平成22年8月3日(2010.8.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】坂井 宏行
個別代理人の代理人 【識別番号】100085394、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
審査官 【審査官】野村 伸雄
参考文献・文献 特開2004-37315(JP,A)
特開2004-77366(JP,A)
坂井宏行、外1名,分析化学的手法による関門トンネルの漏水流量測定,鉄道総研報告,日本,財団法人鉄道総研報告,2002年 2月18日,第16巻第2号,p. 41-44
調査した分野 G01M 3/00-3/40
E02D 1/00
E21D 11/38
特許請求の範囲 【請求項1】
海水を含有する地下水の漏水がある地下構造物を被覆する岩盤や土砂等の被覆物質に異常があるか否かの判断をする地下構造物の被覆物質異常判断装置であって、該被覆物質異常判断装置は、地下構造物の異なった複数の測定地点に海水由来成分の濃度を経時的に測定する濃度測定手段と、過去分の測定データに基づいて演算された経時的な平均化データを格納する平均化データ格納手段と、前記濃度測定手段から入力した測定時間の測定データと格納された平均化データにおける当該測定時間の平均化データとを比較し、各測定地点での測定データと平均化データとに不一致な地点が存在するか否かの判断をする不一致地点の存在判断手段と、不一致な測定地点が存在していたと判断された場合、全ての測定地点が不一致であるか否かの判断をし、全ての測定地点が不一致であると判断されたときには正常であり、一部の測定地点が不一致であると判断されたときには被覆物質に異常があると判断する異常有無判断手段とを備えていることを特徴とする地下構造物の被覆物質異常判断装置。
【請求項2】
異常有無判断手段は、異常発生が初回か若しくは初回発生時間から予め設定される設定時間以内の異常であると判断された場合には異常発生の予告を発し、前記設定時間を超えた異常であると判断された場合には異常発生の警告を発するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の地下構造物の被覆物質異常判断装置。
【請求項3】
海水を含有する地下水の漏水がある地下構造物を被覆する岩盤や土砂等の被覆物質に異常があるか否かの判断をする地下構造物の被覆物質異常判断方法であって、該被覆物質異常判断方法は、地下構造物の異なった複数の測定地点に海水由来成分の濃度を測定した各測定データが、過去分の測定データに基づいて演算された経時的な平均化データのうちの前記測定時間に対応する各測定地点における平均化データとを比較する工程、各測定地点での測定データと平均化データとに不一致な地点が存在するか否かの判断をする工程、不一致な測定地点が存在していたと判断された場合、全ての測定地点が不一致であるか否かの判断をし、全ての測定地点が不一致であると判断されたときには正常であり、一部の測定地点が不一致であると判断されたときには被覆物質に異常があると判断する工程とを備えていることを特徴とする地下構造物の被覆物質異常判断方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海底トンネル等の地下構造物のように海底や海岸近傍にあって、地下水に海水を含む漏水があるところに築造された地下構造物を被覆する岩盤や土砂等の被覆物質に異常があるか否かの判断をする被覆物質異常判断装置および被覆物質異常判断方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、海底や海岸近傍地域において海面より低い位置にトンネルやボックスカルバート等の地下構造物を築造することが頻繁に行われ、この様な地下構造物は、海水内にそのままどぶ漬け状態になっていて海水に直接晒されていることは稀で岩盤や土砂等の被覆物質で覆われているのが一般であり、このような地下構造物では、地下水に海水が混じった漏水が地下構造物内に漏出する。このため漏水中の海水成分による浸食を受けて地下構造物自体の劣化が進行する等して地下構造物の安定度が低下することになり、このような安定度の低下をそのまま放置しておくと、大量の漏水につながる惧れがある。そこで、このような地下構造物については定期的に安定度の判定検査をすることが提唱され、本発明の発明者は、地下水に海水を含んだ漏水のある地下構造物の安定度を判定するため、漏水中の海水成分の正常時の濃度を測定してこの変化状態を基礎データとして予め求めておき、該基礎データから逸脱した海水成分の濃度が測定された場合に、これを地下構造物の安定度が低下したものと判定する発明を提供し、これによって地下構造物自体の劣化判断が簡便にできるようになった(例えば特許文献1参照)。

【特許文献1】特開2002-294681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで斯かる地下構造物は人為的な工作物であって強度的に強いのに対し、地下構造物を被覆する被覆物質は一般に天然物質であることもあって強度的に弱いところがある。このため地下構造物が地震や交通車両の通過等によって振動した場合に、固有振動数がそれぞれ異なることもあって地下構造物との境界部位の被覆物質がどうしても浸食されやすい。このような浸食を放置しておくと、地下構造物と被覆物質とのあいだに隙間ができたりしてここに海水濃度の高い地下水が入り込み、この結果、地下構造物の劣化促進が助長される。
一方、海底では潮流によって土砂等の被覆物質が浸食されると、該被覆物質の層が薄くなっていき、このため地下構造物が海水濃度の高い地下水に晒され、この場合においても地下構造物の劣化促進が助長される。
そこでこのように被覆物質が浸食された箇所を発見した場合、薬剤を注入したり土砂袋を投下したりして補修することになるが、このような浸食を受けた箇所を発見することは、海底下のことでもあり、しかも地下構造物内からは直接見えないこともあって、前記地下構造物自体の劣化判断だけでは事実上難しいという問題があり、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、海水を含有する地下水の漏水がある地下構造物を被覆する岩盤や土砂等の被覆物質に異常があるか否かの判断をする地下構造物の被覆物質異常判断装置であって、該被覆物質異常判断装置は、地下構造物の異なった複数の測定地点に海水由来成分の濃度を経時的に測定する濃度測定手段と、過去分の測定データに基づいて演算された経時的な平均化データを格納する平均化データ格納手段と、前記濃度測定手段から入力した測定時間の測定データと格納された平均化データにおける当該測定時間の平均化データとを比較し、各測定地点での測定データと平均化データとに不一致な地点が存在するか否かの判断をする不一致地点の存在判断手段と、不一致な測定地点が存在していたと判断された場合、全ての測定地点が不一致であるか否かの判断をし、全ての測定地点が不一致であると判断されたときには正常であり、一部の測定地点が不一致であると判断されたときには被覆物質に異常があると判断する異常有無判断手段とを備えていることを特徴とする地下構造物の被覆物質異常判断装置である。
請求項2の発明は、異常有無判断手段は、異常発生が初回か若しくは初回発生時間から予め設定される設定時間以内の異常であると判断された場合には異常発生の予告を発し、前記設定時間を超えた異常であると判断された場合には異常発生の警告を発するように設定されていることを特徴とする請求項1記載の地下構造物の被覆物質異常判断装置である。
請求項3の発明は、海水を含有する地下水の漏水がある地下構造物を被覆する岩盤や土砂等の被覆物質に異常があるか否かの判断をする地下構造物の被覆物質異常判断方法であって、該被覆物質異常判断方法は、地下構造物の異なった複数の測定地点に海水由来成分の濃度を測定した各測定データが、過去分の測定データに基づいて演算された経時的な平均化データのうちの前記測定時間に対応する各測定地点における平均化データとを比較する工程、各測定地点での測定データと平均化データとに不一致な地点が存在するか否かの判断をする工程、不一致な測定地点が存在していたと判断された場合、全ての測定地点が不一致であるか否かの判断をし、全ての測定地点が不一致であると判断されたときには正常であり、一部の測定地点が不一致であると判断されたときには被覆物質に異常があると判断する工程とを備えていることを特徴とする地下構造物の被覆物質異常判断方法である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または3の発明とすることにより、海水含有地下水が漏出する地下構造物を被覆する被覆物質が浸食されたことの異常発生の予測判断が簡便にできることになる。
請求項2の発明とすることにより、被覆物質の浸食による異常発生の予測判断がより正確になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は在来の海底トンネルの概略縦断面図であって、該海底トンネルは、本坑1、作業坑2から構成されている。そのうちの本坑1は軸方向の中間に向かうほど深くなるこう配変更点を有する略V字形の傾斜状態で築造されている。これに対して作業抗2は、前記本坑1の軸方向中間位置では該本坑1よりも深く位置するこう配変更点を有し、坑口はさらに深くなるよう傾斜した略逆V字形に築造され、そして地上位置において縦坑3が築造されている。
【0007】
そして本坑1、作業坑2には、漏水に含有する海水由来イオン、例えばナトリウムイオン等の特定イオン(単数の特定イオンの濃度測定であってもよいが、精度を高めるため、複数の特定イオンの濃度測定をすることが好ましい)の濃度を経時的に測定する複数の濃度センサ4が適箇所(例えば図面において黒丸で示したA~Jの10箇所の測定地点)に設けられている。因みに濃度センサ4としては、例えば汎用のイオン選択性電極を用いて構成することができる。そして濃度センサ4には、測定された測定データを、例えば電話回線(携帯電話回線を含む)等の通信伝達媒体を用いて通信するための通信手段5が設けられている。
【0008】
一方、6は管理端末であって、該管理端末6は、後述するように海底トンネルの被覆物質の異常判断がなされた場合、必要な対策を立てることが要求されるが、鉄道や道路のような場合、広範囲にわたる多数箇所での管理が必要であり、そこで各測定箇所にこれら管理端末3を個々に設けてそれぞれの地区で管理しても良いが、総合的に管理をすることも要求され、このような場合には、測定したイオン濃度を現地の管理端末を介して本部の管理端末に入力し、この本部の管理端末6で前述した海底トンネルの被覆物質の異常判断をし、その結果を、支部の管理端末等、異常判断の結果を知らしめておく必要がある部所(部局、地域)の端末に出力するようにすることで、海底トンネルの被覆物質の異常判断の総合管理ができることになるが、本実施の形態では、本部の管理端末3に測定データを集中して入力し、必要な異常判断をし、その結果を現場に通報するようにしている。
【0009】
前記管理端末6は、入力手段であるキーボード7、画面表示をするディスプレイ8、そして必要なコンピュータ処理をする端末本体9を用いて構成されるが、端末本体9には、前記各測定地点A~Jに設けた濃度センサ4で測定された測定データが逐次的にそれぞれ入力するようになっている。
【0010】
端末本体9は、図3に示すように、システムスタートすると初期設定をし、後述する異常判断をすることになるが、端末本体9には、各測定地点A~Jにおいてそれぞれ測定した過去数年間(例えば10年間)の経時的な測定データがメモリーに蓄積(格納)されている。ここで例えば測定地点Bでの漏水に含まれるナトリウムイオン濃度の過去分の経時的測定データを図4に示す。これによると、10月ごろから3月ごろまでがナトリウムイオン濃度が低く、4月ごろから9月ごろまでがナトリウムイオン濃度が高くなっている。通常、前記海底トンネルが設けられた地域では4月ごろから10月ごろまで降水期で雨量が多く、11月ごろから3月ごろまでが渇水期で雨量が少ない傾向にある。
【0011】
一方、海底トンネルの漏水は、地下水に海水が含有したものであるが、地下水量は雨量に左右されて増減するが、海水量は通年を通して略一定と推定される。このことから、ナトリウムイオン濃度が高いということは、漏水における海水の希釈割合が小さいこと、つまり地下水量が少ないことを意味し、ナトリウムイオン濃度が低いということは、漏水において海水希釈割合が大きいこと、つまり地下水量が多いことを意味する。
【0012】
これらを総合的に判断したとき、前記測定データにおいて、ナトリウムイオン濃度は渇水期に少なく降水期に多いということは、前記地方に降った雨は、凡そ半年のずれで地下水として測定地点に流れ込んでくるものと推定され、これは過去の経時的測定データにおいて同じよう時期に同じような山と谷が繰返された波形状になっており、しかもこの波形状は各測定地点毎に殆ど一致していて大きなずれがないことが確認されている。また台風や集中豪雨のように短期間(短時間)ではあるが大量の降雨になることがあるが、このような場合、降雨量にもよるが多くの場合、殆ど平均化されてしまって地下水量の変化としては大きな影響を与えないが、稀に地下水量が増加する場合があり、このようなときには部分的な測定地点での地下水量の増加ではなく、全体的な地下水量の増加となって全ての測定地点での測定データが平均化データから外れることが既に確認されている。この現象は異常渇水の場合についても同様である。そこで本発明では、これらの現象を利用し、地下構造物を被覆する被覆物質の異常判断ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
そこで本実施の形態では、各測定地点A~Jについての過去分の経時的な測定データを同じ日時毎に平均化し、これによって1年間のナトリウムイオン濃度の平均化データを演算しておく。因みに平均化するための演算については統計的な手法を用いることは勿論であり、その場合に分布(例えば正規分布)と有意水準(例えば5%)とを予め決めて演算する。このようにして得た例えば測定地点Bでの1年間のナトリウムイオン濃度の平均化データを図4に示す。
【0014】
前記端末本体9では、前述したようにシステムスタートをし初期設定がなされると、各測定値点A~Jでの現在(連続したものでもよいが、例えば1時間毎や毎日の正午毎等の所定時間毎でもよい)のナトリウムイオンの濃度測定データを入力する(S-1)。そして該入力した各濃度測定データのなかに、各測定地点A~Jにおける測定時の平均化データと不一致したものがあるか否かの判断をする(S-2)。この不一致したものがあるか否かの判断においては、例えば前記有意水準から外れているか否かで判断することが統計学上好ましい。不一致なものがない、つまりすべて一致するとしてNOの判断がなされた場合、正常であると判断し、リターンする。
【0015】
これに対し、不一致な地域があるとしてNOの判断がなされた場合、不一致の地点は全ての地点か否かの判断がなされ(S-3)、全ての地点であるとしてYESの判断がなされた場合、そして全ての測定地点A~Jで一致しているとしてYESの判断がなされた場合、これは地下水量を測定地域全体で変化させるような異常降雨や異常渇水等の環境変化があったことが要因で不一致になったものとして正常であると判断し、リターンする。
【0016】
一方、不一致な測定地点は全てではなく一部の測定地点(複数であってもよい)であるとしてNOの判断がなされた場合、不一致な測定地点X(例えば測定地点B)における不一致は、予め設定される設定時間(例えば1時間、1日等)を超えて不一致か否かの判断がなされ(S-4)、設定時間を超えて不一致であるとしてYESの判断がされた場合、当該不一致な測定地点Xに異常が発生しているとして警告を発し(S-5)、所定時間以内であるとしてNOの判断がなされた場合、当該不一致な測定地点Xに異常が発生しているとして予告を発する(S-6)ように制御される。
【0017】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、海底トンネルを被覆している被覆物質の異常があるか否かの判断をするにあたり、海底トンネル内の各測定地点A~Jの濃度測定データについて、測定時における各測定地点の平均化データと比較して不一致があるか否かの判断をし、不一致な測定データがあると判断された場合、その不一致な測定地点は全測定地点A~Jであるか否かの判断がなされ、全測定地点A~Jで不一致であると判断された場合、これは海底トンネルが構造された地域において異常気象が発生する等の全体的な環境変化によるものであるとして正常と判断し、一部の測定地点Xで不一致であると判断された場合、当該測定地点Xにおいて異常が発生したものと予測判断することになる。この結果、どの測定地点で異常が発生したかの予測が簡単にできることになり、その後、必要において異常発生の有無について人為的な確認をし、必要な補修をすることができる。
【0018】
しかもこのものでは、異常が発生したことが予め設定された設定時間の範囲である場合には予告を発するに留め、設定時間を超えたときに警告を発するようにして異常発生の度合いに確度をもたせたため、より信頼性が高い異常判断ができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】海底トンネルの概略図である。
【図2】異常判断のブロック図である。
【図3】異常判断のフローチャート図である。
【図4】過去データのグラフ図である。
【図5】平均化データのグラフ図である。
【符号の説明】
【0020】
1 本坑
2 作業坑
3 管理端末
4 濃度センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4