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明細書 :トロリ線を支持するハンガ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5117269号 (P5117269)
公開番号 特開2009-262816 (P2009-262816A)
登録日 平成24年10月26日(2012.10.26)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成21年11月12日(2009.11.12)
発明の名称または考案の名称 トロリ線を支持するハンガ装置
国際特許分類 B60M   1/26        (2006.01)
B60M   1/23        (2006.01)
FI B60M 1/26 Z
B60M 1/23 H
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2008-115864 (P2008-115864)
出願日 平成20年4月25日(2008.4.25)
審査請求日 平成22年7月30日(2010.7.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】常本 瑞樹
【氏名】久須美 俊一
【氏名】中道 好信
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】竹下 晋司
参考文献・文献 特開2008-018774(JP,A)
実開平2-21043(JP,U)
実開平3-40122(JP,U)
調査した分野 B60M 1/00 - 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
ちょう架線とトロリ線との間に配置されるハンガ装置において、上部の垂下線と下部の垂下線との間に、周囲温度応答素子と、該周囲温度応答素子の出力に応じて前記トロリ線の弛度を一定化する動作を行うアクチュエータとを具備することを特徴とするトロリ線を支持するハンガ装置。
【請求項2】
請求項1記載のトロリ線を支持するハンガ装置において、前記周囲温度応答素子が正の線膨張係数を有する材料からなり、前記アクチュエータは前記材料の変位を拡大する変位拡大機構であることを特徴とするトロリ線を支持するハンガ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリ線からパンタグラフを介して電車に給電する電気鉄道における電車線のハンガ(ドロッパ)装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道の架空電車線は、良好な集電性能を維持するため、その張力は一定であることが望ましい。しかし、電車線は温度変化による伸縮により、その張力も変化する。そのため、電車線の引留箇所には張力調整装置を取り付け、電車線の伸縮に応じて支持点の移動が可能な構造(可動ブラケット支持、滑車支持)にするなどして、1つの引留からもう一方の引留まで(以下、ドラムと記す)の張力を一定に保つようにしている(下記特許文献1,2参照)。しかしながら、支持構造によっては摩擦力などにより線条の移動が抑制される抵抗力(以下、抑制抵抗と記す)が発生し、同一ドラム内でも径間毎の張力は必ずしも一定ではないと考えられているが、その実態は明らかになっていない。
【0003】
抑制抵抗がない理想的な状態における電車線の温度伸縮に伴う移動は、トロリ線では振止金具や曲引金具、ちょう架線では可動ブラケットや支持滑車によってスムーズに行われるため、電車線の張力は一定に保たれる。しかし、抑制抵抗により移動がスムーズに行われない場合、温度が上がると電車線は伸びるため張力は低下し弛度は大きくなり、逆に温度が下がると電車線は縮むため張力は上昇し弛度は小さくなる。
【0004】
また、機械的な増幅機構、例えば、圧電素子を駆動素子としたプリンター印字ヘッドが提案されている(下記特許文献3、4参照)。

【特許文献1】特開2008-055986号公報
【特許文献2】特開2007-253632号公報
【特許文献3】特開昭60-81568号公報
【特許文献4】特開昭61-47272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、良好な集電性能を維持するため、抑制抵抗により温度変化とともに線条の弛度が変化する場合でも、トロリ線の高さを一定に保つことが求められている。
【0006】
新幹線では滑車ではなく可動ブラケットで支持しており、抑制抵抗は小さい。近年、山手線や中央線などJR東日本が首都圏に導入しているき電ちょう架式電車線は、ちょう架線(トロリ線をつっている線条)がき電線の役目も担うため、銅でできておりかつ径が太くなっており、従来のちょう架線より質量が大きい。そのため、支持点での抑制抵抗が大きくなり、温度伸縮による線条の移動がスムーズに行われないために線条がたるむといった問題があった。
【0007】
図4は弛度の変化に対する対策がない場合の架空電車線を示す模式図である。
【0008】
この図において、101,102は電車線を支持する電柱、103は電柱101と電柱102間に張られるちょう架線、104はトロリ線、105はちょう架線103とトロリ線104との間に配置されるハンガ装置である。
【0009】
このようなハンガ装置105に弛度を一定にする対策がない場合、周囲温度の上昇によりちょう架線103が伸びるため、トロリ線104は弛むことになる。したがって、トロリ線104とパンタグラフとの離線率が高くなる。
【0010】
本発明は、上記状況に鑑みて、トロリ線からパンタグラフを介して電車に給電する電気鉄道において、温度の変化により的確に動作して、トロリ線の弛度を一定化することができる、トロリ線を支持するハンガ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕ちょう架線とトロリ線との間に配置されるハンガ装置において、上部の垂下線と下部の垂下線との間に、周囲温度応答素子と、この周囲温度応答素子の出力に応じて前記トロリ線の弛度を一定化する動作を行うアクチュエータとを具備することを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕記載のトロリ線を支持するハンガ装置において、前記周囲温度応答素子が正の線膨張係数を有する材料からなり、前記アクチュエータは前記材料の変位を拡大する変位拡大機構であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周囲温度が高くなるとトロリ線の弛度を小さくなるようにし、周囲温度が低くなるとトロリ線の弛度が大きくなるように作用するハンガ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のちょう架線とトロリ線との間に配置されるハンガ装置は、上部の垂下線と下部の垂下線との間に、周囲温度応答素子と、この周囲温度応答素子の出力に応じて前記トロリ線の弛度を一定化する動作を行うアクチュエータとを具備する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例を示すトロリ線を支持するハンガ装置を設置した架空電車線を示す模式図であり、図2はそのトロリ線を支持するハンガ装置の概略模式図である。
【0017】
これらの図において、1,2は電車線を支持する電柱、3は電柱1と電柱2間に張られるちょう架線、4はトロリ線、5はちょう架線3とトロリ線4との間に配置されるハンガ装置であり、ハンガ装置5はトロリ線4の弛度が一定になるように配置されている。
【0018】
このハンガ装置5は、上部の垂下線5Aと下部の垂下線5Bの間に周囲温度応答素子6とこの周囲温度応答素子6からの出力信号により駆動されるアクチュエータ7とから構成されている。
【0019】
図3は本発明の実施例を示すトロリ線を支持するハンガ装置の一例を示す構成図である。
【0020】
この図において、11はハンガ装置であり、このハンガ装置11は上部の垂下線12Aと下部の垂下線12Bとの間に周囲温度応答素子13とその周囲温度応答素子13の出力に応じて駆動されるアクチュエータとしての変位拡大機構14が配置されて構成されている。
【0021】
周囲温度応答素子13には、例えば、正の線膨張係数を有する部材〔カドミウム(線膨張係数が30.69×10-6)、アルミニウム(線膨張係数が23.13×10-6)や鉛(線膨張係数が29.1×10-6)など〕からなる線膨張係数が大きい材料を用いる。温度変化に対応して正の線膨張係数を有する部材からなる周囲温度応答素子13が変位すると、その変位が変位拡大機構14で拡大されて、上部の垂下線12Aと下部の垂下線12Bとに作用する。
【0022】
ここで、変位拡大機構14について説明する。
【0023】
周囲温度応答素子13の一端は、ほぼU字形状のベース14Aの底面に固定されている。このベース14Aの上端には第1のヒンジ14Cと第3のヒンジ14Eが形成される。また、周囲温度応答素子13の他の一端にはキャップ14Bが固定される。このキャップ14Bには第2のヒンジ14Dと第4のヒンジ14Fとが形成される。一方、周囲温度応答素子13を中心にして上下対称に配置されるとともに、第1のヒンジ14C及び第3のヒンジ14E、第2のヒンジ14D及び第4のヒンジ14Fがそれぞれ固定され、ベース14Aが内側になるように配置されるほぼΓ形状を有する第1のアーム14G及び第2のアーム14Hが配置される。
【0024】
このアクチュエータとしての変位拡大機構14は、上部の垂下線12Aと下部の垂下線12Bに伝わる変位が拡大されるように変位拡大率が大きくなるように構成する。
【0025】
この変位拡大率は、第1のアーム14G及び第2のアーム14Hをてこ機構として、第1のヒンジ4Cと第2のヒンジ4Dの間の距離と第1のアーム14Gの長さの比で決定される。従って、この変位拡大率を高めるためにはアームが長い方が有利である。
【0026】
このように構成したので、例えば、周囲温度が高くなり正の線膨張係数を有する部材からなる周囲温度応答素子13は伸びる。すると、第1のアーム14G及び第2のアーム14Hの先端は内側へと変位し、上部の垂下線12Aは下方へ、下部の垂下線12Bは上方へ引っ張られることになり、トロリ線4はこのハンガ装置11により引上げられて張られ、弛度が小さくなる。つまり、通常は周囲温度が高くなると、トロリ線4の弛度は大きくなるが、上記したような本発明のハンガ装置によれば、周囲温度が高くなるとそれに対応してトロリ線4の弛度が小さくなるように作用する。
【0027】
本発明によれば、周囲に温度の変化が生じても、トロリ線の弛度を一定に保つことができるので、パンタグラフとの離線率の低下を図ることができる。
【0028】
なお、上記実施例では、トロリ線を支持するハンガ装置として説明したが、ちょう架線とトロリ線との間に配置されるドロッパ装置も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のトロリ線を支持するハンガ装置は、周囲温度が高くなるとトロリ線の弛度が小さくなり、周囲温度が低くなるとトロリ線の弛度が大きくなるように作用するハンガ装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例を示すトロリ線を支持するハンガ装置を設置した架空電車線を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例を示すトロリ線を支持するハンガ装置の概略模式図である。
【図3】本発明の実施例を示すトロリ線を支持するハンガ装置の一例を示す構成図である。
【図4】弛度の変化に対する対策がない場合の架空電車線を示す模式図である。
【符号の説明】
【0032】
1,2 電柱
3 ちょう架線
4 トロリ線
5,11 ハンガ装置
5A,12A 上部の垂下線
5B,12B 下部の垂下線
6 周囲温度応答素子
7 アクチュエータ
13 周囲温度応答素子(正の線膨張係数を有する部材)
14 変位拡大機構(アクチュエータ)
14A ほぼU字形状のベース
14B キャップ
14C 第1のヒンジ
14D 第2のヒンジ
14E 第3のヒンジ
14F 第4のヒンジ
14G 第1のアーム
14H 第2のアーム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3