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明細書 :非接触部の冷却装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4920629号 (P4920629)
公開番号 特開2009-264495 (P2009-264495A)
登録日 平成24年2月10日(2012.2.10)
発行日 平成24年4月18日(2012.4.18)
公開日 平成21年11月12日(2009.11.12)
発明の名称または考案の名称 非接触部の冷却装置
国際特許分類 F16C  37/00        (2006.01)
F16C  32/04        (2006.01)
H02J  15/00        (2006.01)
F16C  39/06        (2006.01)
F25B   9/00        (2006.01)
FI F16C 37/00 Z
F16C 32/04 ZAAZ
H02J 15/00 A
F16C 39/06 Z
F25B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2008-115173 (P2008-115173)
出願日 平成20年4月25日(2008.4.25)
審査請求日 平成22年7月21日(2010.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】田中 芳親
【氏名】中内 正彦
【氏名】長嶋 賢
【氏名】清野 寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】仲村 靖
参考文献・文献 特開2003-219581(JP,A)
特開2004-023921(JP,A)
調査した分野 F16C 37/00
F16C 32/04
F16C 39/06
F25B 9/00
H02J 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
低温・希薄ガス雰囲気下で浮上している高温超電導体からなる回転体を有する非接触部の冷却装置において、非接触部の冷却装置内の圧力を設定する手段を設け、輻射による伝熱が支配的である圧力の領域から気体分子伝導による伝熱が支配的となる圧力の近傍に圧力を設定するとともに、前記回転体を熱伝達率が高く、かつ風損が小さくなる雰囲気に設定することを特徴とする非接触部の冷却装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低温・希薄ガス雰囲気下で浮上している高温超電導体など非接触部に対する冷却装置に係り、特に、超電導フライホイール電力貯蔵装置の非接触部の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定子に超電導コイル、回転子に超電導バルク体を利用した超電導フライホイール装置電力貯蔵装置が提案されている(下記特許文献1参照)。
この超電導フライホイール装置電力貯蔵装置によれば、浮上している回転子を常に臨界温度以下に保つ必要があるので、低温、希薄ガス雰囲気中を非接触で冷却する手段が必要であった。圧力を上昇させれば、熱伝達率は向上するが、フライホイール装置の場合、圧力を上昇させることにより回転部の気体抵抗(風損)を増大させることにもなるため、装置内部の圧力は低い方が望ましい。このため、風損を低く抑えるため低い圧力である希薄ガス雰囲気において、非接触状態で伝熱量を確保できる手段が必要であった。
【0003】
また、半導体基板製造などにおける薄膜形成や回路露光において、基板表面の加熱、冷却は不純物混入防止のため真空中で行う必要があり、種々の提案がなされている(例えば、下記特許文献2参照)。
この特許文献2には、温度と輻射熱量の関係をあらかじめ把握しておき、その特性に基づき可動ステージと輻射熱部の距離を調整し、ステージ上の受熱部の温度を調整できる装置が提案されている。

【特許文献1】特開2003-219581号公報
【特許文献2】特開2007-122181号公報
【非特許文献1】萩原宏康編,「低温工学概論」,東京電機大学出版局,1999,pp.261-262
【非特許文献2】(株)アルバック編,「真空ハンドブック」、オーム社,2007年4月,pp.133-137
【非特許文献3】古屋善正他,「流体工学」,朝倉書房,2005.pp.197-200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温・希薄ガス雰囲気中の回転子を非接触で冷却する場合、圧力を上昇させれば、熱伝達率は向上するが、フライホイール装置の場合、圧力を上昇させることにより、回転部の気体抵抗(風損)を増大させることにもなるため、装置内部の圧力は低い方が望ましい。このため、風損を低く抑えるため低い圧力である希薄ガス雰囲気において、非接触状態で伝熱量を確保できる手段が必要であった。
【0005】
また、本発明は上記した特許文献2とは異なり、輻射よりも伝熱量の大きな気体分子による熱伝導も用い、輻射と気体分子伝導を含めた圧力と伝熱量の関係の特性から、必要最低限の圧力で伝熱行うことを可能とする。
本発明は、上記状況に鑑みて、低温で、低い圧力である希薄ガス雰囲気において、非接触で伝熱量を確保できる非接触部の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕非接触部の冷却装置において、低温・希薄ガス雰囲気下で浮上している高温超電導体からなる回転体を有する非接触部の冷却装置において、非接触部の冷却装置内の圧力を設定する手段を設け、輻射による伝熱が支配的である圧力の領域から気体分子伝導による伝熱が支配的となる圧力の近傍に圧力を設定するとともに、前記回転体を熱伝達率が高く、かつ風損が小さくなる雰囲気に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)高い熱伝達率のもとで非接触部を高い効率で冷却することができる。
(2)非接触部が回転の場合、高い熱伝達率のもとで、かつ風損を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の非接触部の冷却装置は、低温・希薄ガス雰囲気下で浮上している高温超電導体からなる回転体を有する非接触部の冷却装置において、非接触部の冷却装置内の圧力を設定する手段を設け、輻射による伝熱が支配的である圧力の領域から気体分子伝導による伝熱が支配的となる圧力の近傍に圧力を設定するとともに、前記回転体を熱伝達率が高く、かつ風損が小さくなる雰囲気に設定する
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明が適用される超電導フライホイール電力貯蔵装置の磁気軸受部冷却装置の構成例を示す図、図2はあるガス種、温度、伝熱距離における、容器内の圧力と熱伝達率の特性を示す図である。
図1において、1は低温容器(真空容器)、2は冷却板、3は浮上用超電導コイル、4,4′は案内用超電導コイル、5はフライホイール、6は回転軸、7は浮上用バルク体、8,9は案内用バルク体、10は真空ポンプ、11は冷凍機、12は極低温冷却器、13は発電・電動機、14は非接触式の電磁クラッチ装置である。
【0010】
ここで、浮上用超電導コイル3及び案内用超電導コイル4の電磁力により、浮上用バルク体7及び案内用バルク体8,9は非接触で支持される。
その場合、冷却板2と浮上用バルク体7との距離、冷却板2と案内用バルク体8,9との距離はそれぞれd1 に保たれるようにする必要がある。そして、非接触で伝熱量を確保できる非接触部の冷却装置が必要になる。
【0011】
非接触で伝熱量を確保できる非接触部の冷却装置の場合、上記非特許文献1によると、一般的に、図2に示されるような容器内の圧力と熱伝達率の傾向が示される。
図2において、横軸に圧力と縦軸に熱伝達率を示すと、熱伝達率は、輻射伝熱成分Aと気体分子伝熱成分Bとからなり、圧力が増えて、ある値で急激に熱伝達率が上昇する傾向がある。
【0012】
図3は本発明にかかる伝熱特性の実験装置を示す図、図4は本発明にかかる熱伝達率実験値と理論値とを示す図であり、横軸に圧力(Pa)、縦軸に熱伝達率(W/m2 ・K)を示している。
図3において、21は低温容器(真空容器)、22は真空槽、23はシールド体、24は冷凍機、25は極低温冷却器、26は真空計、27は圧力調整槽、28は冷却体、29は被冷却体、30は温度センサである。
【0013】
このような非接触時の伝熱特性を把握するため、低温時における、希薄ガス圧力に対する熱伝熱の特性について実験により測定を行い、理論解析値との比較を行う。
低温・希薄ガス雰囲気下での伝熱特性を検証するため、図3に示すような実験装置を利用して、圧力に応じた伝熱特性の測定を行った。実験装置は、断熱を目的とした真空槽22の内部に圧力調整槽27を設置しており、圧力調整槽27の中に冷凍機24に接続した冷却体28とこれに対向して配置した被冷却体29を設置している。実験では、この圧力調整槽27に導入するガスの圧力を設定し、冷却体28を冷却することによる冷却体28と被冷却体29の温度の変化から、希薄ガス圧力に対する伝熱特性を求めた。
【0014】
冷却体28、被冷却体29の温度変化の測定値から算出した熱伝達率実験値を、圧力調整槽27の圧力をパラメータとして表し、理論値と比較した図を図4に示している。なお、この実験は、冷却体28の面積は0.15m2 、被冷却体29の面積は0.14m2 、圧力調整槽27内のガス種はヘリウム、冷却体28と被冷却体29間距離(伝熱距離)は6.6mm、被冷却体29の温度50Kで行った。
【0015】
実験の結果、低い圧力では熱伝達率は小さいが、ある圧力(1Pa付近)のとき、熱伝達率は10-2W/m2 ・K以下から10W/m2 ・K程度まで急激に上昇し、その後はあまり上昇しないことが確認できた。ただし、この実験結果は、伝熱面積、伝熱距離、ガス種、温度などの条件が変わることによって変化する。上記非特許文献2によると、希薄ガス中の伝熱形態には輻射と気体分子伝導及び対流があり、このうち気体分子伝導による伝熱量は、伝熱距離が気体分子平均自由行程と同等となる圧力以上になると大きく変化する。熱伝達率実験値が大きく上昇した圧力付近での気体分子平均自由行程は、本実験装置の伝熱距離と同レベルであったことから、実験値の上昇は気体分子伝導による伝熱量の変化によるものと考察される。このため、当該圧力以下の圧力領域と、これ以上の圧力領域に区分して、熱伝達率の実験値と理論値を伝熱形態別に比較した。
【0016】
比較の結果、低い圧力領域では、熱伝達率実験値と輻射による熱伝達率の理論値はほぼ一致しており、この領域での伝熱はほとんど輻射によっており、気体分子伝導による熱伝達率は非常に小さいことが判明した。一方、高い圧力領域では、実験値と気体分子伝導の理論値がほぼ一致しており、かつ、輻射による熱伝達率はこれらに比較して無視できるほど小さいため、気体分子伝導による伝熱が支配的であることが判明した。なお、高い圧力領域において、圧力が高くなるにしたがって、実験値が気体分子伝導の理論値から乖離し、徐々に大きくなる傾向を示すが、これは対流による伝熱の影響によるものと考えられる。
【0017】
以上のような伝熱実験により、低温下,希薄ガス雰囲気における圧力に対する伝熱特性を確認することができ、また、伝熱特性を理論値と比較することにより、圧力領域に応じて支配的な伝熱形態を把握することができた。
図5は本発明に係る非接触部が回転体の場合の雰囲気の圧力と風損との関係を示す図である。風損Dは上記非特許文献3に示された関係式に基づき算出した結果である。この結果、風損Dは圧力が上昇するにつれて大きくなる。
【0018】
この図に示されるように、風損の値を示すグラフCを見ると明らかなように、実験値に示された、輻射による伝熱が支配的である圧力の領域から気体分子伝導による伝熱が支配的となる領域に移行する。気体分子平均自由行程が伝熱距離にほぼ一致する圧力より少し高い圧力においては熱伝達率は大きいが風損Dは小さい。
非接触部が回転体である場合には、熱伝達率が上昇した近傍の容器内の圧力を設定することにより、非接触で伝熱量を確保できるとともに、風損もかなり小さくすることができる。つまり、熱伝達率を確保できる範囲で圧力を低く設定することにより回転部の風損を小さくできるため、風損を最低限に抑えつつ必要な熱伝達率を確保できる非接触部の冷却装置を提供することができる。
【0019】
特に、図1に示した超電導フライホイール電力貯蔵装置の磁気軸受部冷却装置に適用する場合には、非接触で伝熱量を確保できるとともに、風損もかなり小さくすることができる。
また、図2の特性を用いることにより、真空ポンプで装置内部の圧力を調整することで、伝熱の必要な箇所に対し、必要なときのみ伝熱を行うことが可能となる。伝熱が必要なときは圧力を上昇させて熱伝達率を向上させて伝熱を行い、伝熱が不要なときは圧力を低下させて伝熱を低減させることも可能になる。
【0020】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の冷却装置は、雰囲気の圧力を、伝熱量を確保できるように設定し、非接触部を冷却できる冷却装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用される超電導フライホイール電力貯蔵装置の磁気軸受部冷却装置の構成例を示す図である。
【図2】あるガス種、温度、伝熱距離における、容器内の圧力と熱伝達率の特性を示す図である。
【図3】本発明にかかる伝熱特性の実験装置を示す図である。
【図4】本発明にかかる熱伝達率実験値と理論値とを示す図である。
【図5】本発明に係る非接触部が回転体の場合の雰囲気の圧力と風損との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1,21 低温容器(真空容器)
2 冷却板
3 浮上用超電導コイル
4,4′ 案内用超電導コイル
5 フライホイール
6 回転軸
7 浮上用バルク体
8,9 案内用バルク体
10,31 真空ポンプ
11,24 冷凍機
12,25 極低温冷却器
13 発電・電動機
14 非接触式の電磁クラッチ装置
22 真空槽
23 シールド体
26 真空計
27 圧力調整槽
28 冷却体
29 被冷却体
30 温度センサ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4