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明細書 :盛土構造物及び盛土構造物の補強方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4851881号 (P4851881)
公開番号 特開2008-031722 (P2008-031722A)
登録日 平成23年10月28日(2011.10.28)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
公開日 平成20年2月14日(2008.2.14)
発明の名称または考案の名称 盛土構造物及び盛土構造物の補強方法
国際特許分類 E02D  17/18        (2006.01)
E02D   5/04        (2006.01)
E02D   5/10        (2006.01)
E01B   1/00        (2006.01)
FI E02D 17/18 Z
E02D 5/04
E02D 5/10
E01B 1/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 9
出願番号 特願2006-206065 (P2006-206065)
出願日 平成18年7月28日(2006.7.28)
審査請求日 平成21年2月5日(2009.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】舘山 勝
【氏名】村田 修
【氏名】西岡 英俊
【氏名】神田 政幸
個別代理人の代理人 【識別番号】100097113、【弁理士】、【氏名又は名称】堀 城之
【識別番号】100124316、【弁理士】、【氏名又は名称】塩田 康弘
審査官 【審査官】小山 清二
参考文献・文献 特開2003-253644(JP,A)
特開平11-001926(JP,A)
特開平04-254606(JP,A)
特開平06-088301(JP,A)
特開2001-317043(JP,A)
特開2003-013451(JP,A)
特開2005-194774(JP,A)
調査した分野 E02D 17/18
E02D 5/04
E02D 5/10
E01B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
基礎地盤上に構築されるべき、もしくは構築された盛土構造物であって、盛土を構成する盛土地盤の幅方向両側位置からその幅方向に対向して前記基礎地盤中に挿入され、上端が前記基礎地盤の表層部分に位置する矢板壁と、前記盛土地盤中の、前記矢板壁上に挿入され、前記矢板壁の上端に下端が接合されて前記幅方向に対向する土留め壁と、この対向する土留め壁間に架設される連結材とを備えることを特徴とする盛土構造物。
【請求項2】
盛土地盤の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端が支持層に到達していることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物。
【請求項3】
盛土地盤の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端が支持層に到達せず、前記基礎地盤中に周面の摩擦力で支持されていることを特徴とする請求項1に記載の盛土構造物。
【請求項4】
基礎地盤上に構築されるべき、もしくは構築された盛土構造物であって、盛土を構成する盛土地盤の幅方向両側位置からその幅方向に対向して前記基礎地盤中に矢板壁を挿入し、上端を前記基礎地盤の表層部分に位置させる工程と、前記盛土地盤中の、前記矢板壁上に土留め壁を挿入し、前記矢板壁の上端に下端を接合して前記幅方向に対向させる工程と、この幅方向に対向する土留め壁間に連結材を架設する工程とを含むことを特徴とする盛土構造物の補強方法。
【請求項5】
前記対向する土留め壁間に、盛土を構成する充填材を充填する工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の盛土構造物の補強方法。
【請求項6】
前記矢板壁を挿入する工程において盛土の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端を支持層に到達させることを特徴とする請求項4、もしくは請求項5に記載の盛土構造物の補強方法。
【請求項7】
前記矢板壁を挿入する工程において盛土の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端を支持層に到達させず、前記基礎地盤中に周面の摩擦力で支持させること特徴とする請求項4、もしくは請求項5に記載の盛土構造物の補強方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道盛土等のように天端上に荷重が作用する盛土において、荷重による地盤の側方流動を拘束し得る盛土構造物及び盛土構造物の補強方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道盛土等のように天端上に上載荷重が作用する盛土においては、荷重による地盤の沈下に伴う基礎地盤の側方流動を拘束する目的で、支持層に到達する鋼矢板等からなる矢板壁を地中に打設し、地盤を締め切ることにより地盤の変位を拘束することが行われる(特許文献1、2参照)。
【0003】
これらの方法によれば、支持層に到達する矢板壁を盛土の長さ方向に連続させ、幅方向に対向させることで、基礎地盤が2列の矢板壁によって区分され、その区分された領域毎に流動に対して拘束されるため、地盤の安定性が高まる利点を有する。
【0004】

【特許文献1】特開2003-013451号公報(請求項1、請求項3、段落0040~0045、図3)
【特許文献2】特開2005-194774号公報(請求項1、段落0029~0032、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常の盛土構造物はのり肩間の幅よりのり尻間の幅が大きい台形断面をしていることから(特許文献1)、のり肩の位置に矢板壁を挿入するのみでは、のり肩とのり尻間の盛土地盤を拘束することができない。のり尻位置とのり肩位置に矢板壁を挿入すれば、盛土地盤の拘束効果を上げることができるが、使用する矢板壁の数が膨大になるため、材料費及び施工費が上昇し、工期も長期化せざるを得ない。
【0006】
これに対し、特許文献2のように盛土地盤の幅方向両側の、のり尻とのり肩間の領域を除去し、断面を方形状にした上で、盛土地盤の両側位置に土留め壁を構築すれば、盛土構造物が台形状をすることによる上記問題を解消することができる。反面、土留め壁が基礎地盤の天端位置に留まることから、土留め壁に盛土構造物の沈下を防止する矢板壁の機能を持たせることはできないため、土留め壁の他に盛土構造物自身の沈下を防止する杭を打設することが必要になる。
【0007】
しかしながら、沈下防止用の杭を打設する場合、杭は盛土地盤の長さ方向に間隔を隔てて配置されるため、盛土地盤下の基礎地盤の側方流動を拘束する機能を発揮し得ない。特許文献1のように矢板壁を盛土地盤の天端から支持層にまで挿入すれば、矢板壁に側方流動を拘束する機能を持たせることができるが、側方流動を拘束する機能を持たせるには、盛土地盤の幅方向に対向させなければならない。
【0008】
ところが、盛土地盤の天端から支持層に亘り、盛土地盤の長さ方向に連続して対向する矢板壁を挿入することは、矢板の使用量が膨大になり、施工期間が長引くため、経済性の面からは合理的とは言えない。
【0009】
また特許文献2の方法では、杭を打設する等により杭基礎を構築した後に、盛土構造物(盛土地盤)の両側位置に土留め壁を構築し、土留め壁間に軽量な気泡モルタルからなる盛土構造物を構築することになるが、杭と土留め壁が分離し、杭の頭部が土留め壁より内側の、盛土構造物の底面のレベルに位置するため、既存の盛土構造物に対して適用することができない。
【0010】
矢板や杭を支持層にまで挿入する特許文献1、2のいずれの方法においても決まった長さの矢板や杭を一定深度、挿入する毎に、挿入済みの矢板や杭の頂部に後続の矢板や杭を接合した後、接合された状態の矢板や杭を挿入する作業が繰り返される。この内、特許文献1の方法では矢板を盛土構造物の天端のレベルから支持層にまで連続して挿入することができる利点がある。
【0011】
但し、特許文献1の方法で盛土構造物を新規に構築する場合において、矢板の挿入を先行させれば、矢板が基礎地盤から突出した状態になり、盛土地盤を構築する際の障害になる。逆に、盛土地盤の構築を先行させれば、盛土地盤の構築完了までの間、基礎地盤の側方流動を拘束する手段がないため、結局、特許文献1の方法では盛土構造物を新規に構築することが難しい。
【0012】
本発明は上記背景より、効率的に側方流動を抑制しながら、既設か新設かを問わずに盛土構造物の沈下等に起因する基礎地盤の側方流動を防止できる盛土構造物及び盛土構造物の補強方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明の盛土構造物は、基礎地盤上に構築されるべき、もしくは構築された盛土構造物において、盛土を構成する盛土地盤の幅方向両側位置からその幅方向に対向して前記基礎地盤中に挿入され、上端が前記基礎地盤の表層部分に位置する矢板壁と、前記盛土地盤中の、前記矢板壁上に挿入され、前記矢板壁の上端に下端が接合されて前記幅方向に対向する土留め壁と、この対向する土留め壁間に架設される連結材とを備えることを構成要件とする。盛土構造物が新設の場合には対向する土留め壁間に、盛土を構成する充填材が充填される。
【0014】
基礎地盤中に挿入される矢板壁の上端が基礎地盤の表層部分に位置し、その上に土留め壁が位置することで、盛土構造物が既設の場合には盛土構造物の天端位置から矢板壁の挿入とそれに続く土留め壁の挿入作業を行うことが可能である。
【0015】
盛土構造物が新設の場合には、矢板壁の上端が基礎地盤の表層部分に位置することで、盛土地盤の構築前に、基礎地盤の天端位置から矢板壁を挿入し、盛土地盤の構築後に、または構築と並行して盛土地盤の天端位置から土留め壁を挿入する作業を行うことが可能になり、既設か新設かを問わずに盛土構造物に対して矢板壁を挿入することが可能になる。矢板壁は盛土構造物の長さ方向に隣接して挿入される矢板を互いに連結することにより構成される。
【0016】
盛土構造物が新設の場合、矢板壁と土留め壁の接合と、対向する土留め壁間への連結材の架設は盛土地盤の構築前に、または構築と並行して行われる。既設の場合には、盛土地盤の幅方向両外側において矢板壁と土留め壁の接合が行われ、盛土地盤の幅方向両外側を通じ、盛土地盤内に貫通孔を形成する等により対向する土留め壁間への連結材の架設が行われる。
【0017】
請求項1では基礎地盤中に挿入される矢板壁の上端が基礎地盤の天端のレベルに留まることで、矢板壁の上端を基礎地盤から突出させないようにすることができるため、盛土構造物を新規に構築する際に矢板壁が障害になる事態を回避することが可能になり、盛土構造物を新規に構築する要請に対応することが可能になる。
【0018】
矢板壁(矢板)はまた、盛土地盤下の基礎地盤中で盛土構造物の幅方向に対向することで、矢板壁に挟まれた基礎地盤の土砂を拘束するため、基礎地盤の側方流動を抑制することが可能である。側方流動を抑制しながらも、矢板壁は基礎地盤から盛土地盤の天端までは連続しないことで、矢板の使用量が削減されるため、盛土地盤の天端から支持層にまで矢板を挿入する場合より材料費の節減が図られる。
【0019】
盛土構造物が新設の場合にも、基礎地盤中には矢板壁を先行させて挿入しておくことができるため、盛土地盤中への土留め壁の挿入が完了するまでの間、基礎地盤の側方流動が問題になることはない。
【0020】
矢板壁(矢板)の上端には土留め壁の下端が接合され、土留め壁と矢板壁は鉛直方向に連続する。土留め壁は矢板壁の構築後であれば、矢板壁に接合可能となるため、矢板壁への土留め壁の接合の時期は問われず、盛土地盤の構築後、または構築前に行われる。土留め壁は例えば矢板壁上に、盛土構造物の長さ方向に間隔を隔てて親杭を設置し、隣接する親杭間に横矢板を挿入することにより構成されるが、土留め壁の構成方法は問われない。
【0021】
盛土地盤の構築後には盛土地盤の天端から土留め壁を挿入してその下端を矢板壁の上部に接合すればよく、盛土地盤の構築前であれば、矢板壁の頂部上に土留め壁を建て込み、起立させた状態で矢板壁に接合すると共に、対向する土留め壁間に連結材を架設し、対向する土留め壁を自立させることが行われる。連結材は対向する土留め壁間の土砂等の充填材による土圧等の圧力に対し、引張力に抵抗することにより土留め壁を自立させる。盛土構造物が新設の場合、自立した土留め壁間には盛土地盤を構成する土砂その他の充填材が充填されることにより盛土地盤が構築される。
【0022】
請求項2に記載の発明は盛土地盤の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端が支持層に到達していることを構成要件とする。この場合、矢板壁は先端が支持層に到達することで、盛土地盤を支持層に安定させて支持させる機能を発揮する。
【0023】
請求項3に記載の発明は盛土地盤の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端が支持層に到達せず、前記基礎地盤中に周面の摩擦力で支持されていることを構成要件とする。この場合、矢板壁の先端が支持層に到達しないものの、基礎地盤中に周面摩擦力によって支持されることで、盛土地盤を支持層に安定させて支持させる機能を発揮する。この方法は基礎地盤の表面から支持層までの距離が大きく、支持層に到達させる矢板壁を使用することが不合理、または不経済である場合に実施される。
【0024】
請求項4に記載の発明は基礎地盤上に構築される、もしくは構築された盛土構造物において、盛土を構成する盛土地盤の幅方向両側位置からその幅方向に対向して前記基礎地盤中に矢板壁を挿入し、上端を前記基礎地盤の表層部分に位置させる工程と、前記盛土地盤中の、前記矢板壁上に土留め壁を挿入し、前記矢板壁の上端に下端を接合して前記幅方向に対向させる工程と、この幅方向に対向する土留め壁間に連結材を架設する工程とを含むことを構成要件とし、全工程を経ることにより請求項1に記載の発明が完成する。
【0025】
請求項5に記載の発明は請求項4に記載の発明において、対向する土留め壁間に、盛土を構成する充填材を充填する工程を含むことを構成要件とする。この発明は充填材の充填によって盛土地盤が構成される、または完成することから、主として盛土構造物が新設の場合に適用される。
【0026】
請求項6に記載の発明は請求項4、もしくは請求項5に記載の発明の矢板壁を挿入する工程において、盛土の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端を支持層に到達させることを構成要件とし、全工程を経ることにより請求項2に記載の発明が完成する。
【0027】
請求項7に記載の発明は請求項4、もしくは請求項5に記載の発明の矢板壁を挿入する工程において、盛土の長さ方向に配置される矢板壁の内、少なくとも一部の矢板壁の先端を支持層に到達させず、前記基礎地盤中に周面の摩擦力で支持させること構成要件とし、全工程を経ることにより請求項3に記載の発明が完成する。
【発明の効果】
【0028】
請求項1、4では基礎地盤中に挿入される矢板壁の上端が基礎地盤の表層部分に位置することで、盛土構造物が既設の場合には盛土構造物の天端位置から矢板壁の挿入と土留め壁の挿入作業を行うことが可能である。新設の場合には盛土地盤の構築前に、基礎地盤の天端位置から矢板壁を挿入し、盛土地盤の構築後にその天端位置から土留め壁の挿入作業を行うことが可能であり、既設か新設かを問わずに盛土構造物に対して矢板壁を挿入することができる。
【0029】
また基礎地盤中に挿入される矢板壁の上端が基礎地盤の天端のレベルに留まることで、矢板壁の上端を基礎地盤から突出させないようにすることができるため、基礎地盤の側方流動を防止しながら、盛土構造物を新規に構築する場合に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0031】
図1は基礎地盤2上に構築されるべき、もしくは構築された盛土構造物1において、盛土を構成する盛土地盤3の幅方向両側位置からその幅方向に対向して基礎地盤2中に挿入され、上端が基礎地盤2の表層部分に位置する矢板壁4と、盛土地盤3中の、矢板壁4上に挿入され、矢板壁4の上端に接合されて前記幅方向に対向する土留め壁5と、この対向する土留め壁5、5間に架設される連結材6とを備える盛土構造物1の具体例を示す。盛土構造物1が新設の場合、対向する土留め壁5、5間に充填材7が充填される。
【0032】
矢板壁4は主として先端が支持層に到達するまで基礎地盤2中に挿入されるが、幅方向に対向する矢板壁4、4が均等に沈下を生じるように、盛土構造物1自体が不同沈下を生じなければ、支持層に到達しない場合もある。支持層に到達する矢板壁4は盛土地盤3の長さ方向に配置される全矢板壁4の内、少なくとも一部である場合もある。逆に、先端が支持層に到達しない矢板壁4が盛土地盤3の長さ方向に配置される矢板壁4の内、少なくとも一部である場合もある。支持層に到達しない矢板壁4は基礎地盤2中に周面の摩擦力で支持されることになる。
【0033】
矢板壁4を構成する矢板41には例えば圧入作業性の面から鋼矢板の使用が適切であるが、地盤条件によっては鋼管矢板、コンクリート矢板も使用される。矢板41は盛土構造物1の長さ方向に互いに連結されながら基礎地盤2中に挿入され、連係することにより対向する矢板壁4、4に囲まれた領域の土砂を拘束し、側方流動を防止する。
【0034】
盛土構造物1の長さ方向に配列する矢板41の頂部はつなぎ材8によって連結されるが、各矢板41がつなぎ材8と接合される上では、矢板壁4を構成する全矢板41の頂部の位置(深度)が揃っていればよい。また矢板壁4が側方流動を防止する上では必ずしも全矢板41の長さが同一である必要はないため、各矢板41の基礎地盤2中での先端位置が相違することもある。
【0035】
つなぎ材8は矢板41の連結により構成された矢板壁4の頂部上に架設され、各矢板41の頂部がつなぎ材8に接合されることにより、独立した挙動に対して拘束され、安定させられる。つなぎ材8には主としてH形鋼その他の鋼材が使用される。
【0036】
つなぎ材8には土留め壁5の脚部が接合され、土留め壁5の接合後、つなぎ材8の回りには笠木コンクリート9等が打設され、この笠木コンクリート9等によって土留め壁5の脚部が矢板壁4の頂部に固められ、土留め壁5と矢板壁4の一体化が図られる。土留め壁5が親杭51と隣接する親杭51、51間に挿入される横矢板から構成される場合は、親杭51がつなぎ材8に接合される。図面では土留め壁5の外側に土留め壁5の剛性と強度を増すための鉄筋コンクリート造の壁板10を打設、もしくは設置している。
【0037】
対向する土留め壁5、5間には鉄筋、形鋼等の鋼材、PC鋼材等の連結材6が架設され、連結材6の端部が土留め壁5に接合されることで、土留め壁5が充填材7による転倒に対して安定させられる。連結材6は充填材7から土留め壁5、5に作用する土圧と水圧に対し、引張力を負担することにより土留め壁5、5を自立させる働きをする。
【0038】
盛土地盤3が既存の場合、連結材6は盛土地盤3に形成された貫通孔等を通じていずれか一方の土留め壁5の外側から他方の土留め壁5へ向けて挿入され、端部が土留め壁5に緊結される。盛土地盤3が新設の場合には土留め壁5の外側と内側のいずれかにおいて連結材6の架設作業が行われる。
【0039】
盛土地盤3が新設の場合、対向する土留め壁5、5間に土砂、モルタル等の充填材7が充填される。図面では基礎地盤2の、交差したハッチングで示す表層部分を地盤改良し、その上に砕石を敷設し、その上に充填材7として、土砂等より軽量で、基礎地盤2の沈下への影響が小さい気泡モルタルを充填している。充填材7の上端には対向する土留め壁5、5間に跨り、土留め壁5の頂部の変位を拘束する上層コンクリート11が打設される。充填材7は予め気泡モルタル等からブロック状、または版状の成型品として成型され、基礎地盤2上、もしくは砕石上に積み重ねられることもある。
【0040】
図面では盛土地盤3を鉄道軌道用の盛土として使用していることから、上層コンクリート11上の幅方向両側に高欄となる擁壁を設置し、その間の上層コンクリート11上にバラストを敷設し、その上にまくらぎを敷設している。
【0041】
充填材7中には、盛土構造物1上の荷重によって充填材7に作用する幅方向の引張力に対して充填材7を補強するために、図1に示すように充填材7の下層と幅方向両側の土留め壁5の内側に沿って鉄筋、棒鋼、形鋼等の鋼材12を這わせることもある。図2は図1に示す鋼材12に代え、鉄筋等の鋼材12の両端を溝形鋼等の定着材13にナット14等を用いて定着させることにより鋼材12を直線状に配置した場合の平面を示す。
【0042】
図3-(a)~(d)は盛土地盤3が既設盛土である場合の、図1に示す盛土構造物1の構築手順を示す。(a)は台形状の既設盛土の断面を示す。この状態で、(b)に示すように矢板41の挿入により矢板壁4を構築すると共に、矢板41の頂部位置につなぎ材8を架設し、これを矢板41に接合することが行われる。
【0043】
引き続き、つなぎ材8に向かって親杭51を挿入し、親杭51、51間に横矢板を挿入する等により土留め壁5を構築することが行われる。ここで、対向する土留め壁5、5の頭部はその内側、または外側への転倒を防止するために仮設材15によって一時的に、または前記した上層コンクリート11等によって永久的に盛土地盤3の幅方向に互いに連結される。
【0044】
その後、(c)に示すように対向する土留め壁5、5の頭部を拘束した状態で、土留め壁5の外側の土砂を切り取って排除し、土砂が不在となった空間を利用して対向する土留め壁5、5間に連結材6を架設することが行われる。(c)は盛土地盤3の全長の内、一部の土砂を除去し、その除去区間に連結材6を架設したときの平面を、(d)はその断面を示す。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】盛土構造物の構築例を示した縦断面図である。
【図2】図1における鋼材の他の配置例を示した平面図である。
【図3】(a)、(b)、(d)は台形状の既設の盛土地盤を盛土構造物化するまでの手順の概要を示した断面図、(c)は(d)の平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1………盛土構造物
2………基礎地盤
3………盛土地盤
4………矢板壁
41……矢板
5………土留め壁
51……親杭
6………連結材
7………充填材
8………つなぎ材
9………笠木コンクリート
10……壁板
11……上層コンクリート
12……鋼材
13……定着材
14……ナット
15……仮設材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2