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明細書 :磁気浮上機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4838271号 (P4838271)
公開番号 特開2009-177888 (P2009-177888A)
登録日 平成23年10月7日(2011.10.7)
発行日 平成23年12月14日(2011.12.14)
公開日 平成21年8月6日(2009.8.6)
発明の名称または考案の名称 磁気浮上機構
国際特許分類 B60L  13/04        (2006.01)
B61B  13/08        (2006.01)
FI B60L 13/04 ZAAD
B61B 13/08 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2008-011842 (P2008-011842)
出願日 平成20年1月22日(2008.1.22)
審査請求日 平成22年3月12日(2010.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】笹川 卓
【氏名】坂本 泰明
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】相羽 昌孝
参考文献・文献 特開2000-41304(JP,A)
特開平8-251720(JP,A)
特開平11-165633(JP,A)
特開2001-286008(JP,A)
特開平3-118702(JP,A)
特開昭63-287303(JP,A)
特開平5-22807(JP,A)
特開平7-193914(JP,A)
調査した分野 B60L 13/03-13/10

B61B 13/08
E01B 25/30-25/34
特許請求の範囲 【請求項1】
両側に側壁を有しこれら側壁間にU字溝を形成する軌道と、この軌道のU字溝に沿って走行する浮上走行体と、この浮上走行体の両側部に設けられた超電導磁石と、前記軌道の側壁内側にて浮上走行体の超電導磁石と対向しかつ該浮上走行体の走行方向に沿うように配置された浮上コイル及び推進コイルと、を有する磁気案内機構であって、
前記軌道の低速走行用カーブ区間内周側の側壁において、前記浮上コイル及び推進コイルの外側の側方に、前記浮上走行体の走行方向に沿うように、前記超電導磁石との間に吸引力を発生させる磁性体が配置されていることを特徴とする磁気浮上機構。
【請求項2】
前記低速走行用カーブ区間が本線から分岐された引き込み線区間であることを特徴とする請求項1記載の磁気浮上機構。
【請求項3】
前記磁性体は、複数の鉄線の周囲を絶縁体で被覆してなる鉄線束、板状の磁性体、磁性体基板と非磁性体層との積層体、あるいは、磁性粉末の焼結合金のいずれかからなることを特徴とする請求項1記載の磁気浮上機構。
【請求項4】
前記浮上走行体の矩形状の台車のコーナ部分に個々にガイド輪が設けられるとともに、前記浮上走行体の台車の外軌側のコーナ部分と内軌側のコーナ部分の両方において案内輪が略されてなることを特徴とする請求項1に記載の磁気浮上機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はカーブしている車線区間において浮上走行体(車体)の浮上力と安定性の向上を図ることが可能な誘導反発式の磁気浮上機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導反発式の磁気浮上案内機構として、下記の特許文献1に示される技術が知られている。この公報に示される磁気浮上案内機構は、両側に側壁を有しこれら側壁間にU字溝を形成する軌道と、この軌道のU字溝に沿って走行される浮上走行体と、この浮上走行体の両側部に設けられた超電導磁石と、軌道の側壁内側に浮上走行体の超電導磁石と対向しかつ該浮上走行体の走行方向に沿うように配置された複数の浮上案内兼用電気コイルと、を有するものであって、これら浮上案内兼用電気コイル間に生じる誘導電流によって浮上走行体に浮上力を発生させる。また、それぞれの浮上案内兼用電気コイルは、軌道の両側壁にそれぞれ2つづつ上下に取付け、かつその巻線の端部が電気的に接続されているものであって、浮上走行体が走行する際に、浮上走行体上の磁石によって作られた磁束、及び浮上案内兼用電気コイルを貫通することによって発生する電圧の互いの相殺により、側壁面に取付けた浮上案内兼用電気コイルのみで浮上走行体の浮上ならびに走行案内を可能とする。

【特許文献1】特公平7-55003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記磁気浮上案内機構に適用される浮上走行体の台車には、案内輪とガイド輪が設けられており、このうち、案内輪は低速走行時の浮上走行体のガイドに使用されているが、磁気浮上走行体の台車システムそのものは構成の簡素化、軽量化が望まれており、前記の案内輪を省略することも望まれている。ところが、この案内輪を省略すると、駅のホームまでの引き込み車線区のカーブなどの低速走行用区間において浮上走行体の台車に設けられているガイド輪が側壁の内面側に接触する可能性があり、従来技術においては案内輪を略することができなかった。
【0004】
本発明は、従来有していたこれらの問題を解決しようとするものであって、軌道の低速走行用カーブ区間の内周側の側壁に磁性体を配置して浮上走行体を内規側に引っ張る力を増長させ、浮上走行体に通常設けられている案内輪を略することができるようにした磁気浮上案内機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そして、上記目的を達成するために本発明の課題解決手段では、両側に側壁を有しこれら側壁間にU字溝を形成する軌道と、この軌道のU字溝に沿って走行する浮上走行体と、この浮上走行体の両側部に設けられた超電導磁石と、前記軌道の側壁内側にて浮上走行体の超電導磁石と対向しかつ該浮上走行体の走行方向に沿うように配置された浮上コイル及び推進コイルと、を有する磁気案内機構であって、前記軌道の低速走行用カーブ区間内周側の側壁において、前記浮上コイル及び推進コイルの外側の側方に、前記浮上走行体の走行方向に沿うように、前記超電導磁石との間に吸引力を発生させる磁性体が配置されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の課題解決手段では、前記低速走行用カーブ区間が本線から分岐された引き込み線区間であることを特徴とする。
本発明の課題解決手段では、前記磁性体は、複数の鉄線の周囲を絶縁体で被覆してなる鉄線束、板状の磁性体、磁性体基板と非磁性体層との積層体、あるいは、磁性粉末の焼結合金のいずれかからなることを特徴とする。
本発明の課題解決手段では、前記浮上走行体の矩形状の台車のコーナ部分に個々にガイド輪が設けられ、前記浮上走行体の台車の外軌側のコーナ部分と内軌側のコーナ部分の両方において案内輪を略してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁気浮上案内機構では、軌道の低速走行用カーブ区間内周側の側壁において、浮上コイル及び推進コイルの外側の側方に、浮上走行体の走行方向に沿うように、超電導磁石との間に吸引力を発生させる磁性体を配置したので、低速走行時においてもガイド輪が側壁に接触する虞が無くなり、そのため、磁気浮上走行体の台車に従来から設けられていた案内輪を無くすることができる。
即ち、本発明により浮上走行体の台車の製造コストの低減を図ることができ、浮上走行車の台車構造の簡略化と軽量化に寄与する。
前記の低速走行用カーブ区間が本線から分岐された引き込み線区間であるならば、浮上走行体の引き込み線区間における低速走行時において超電導磁石の発生させる浮上力並びに走行力が低下することに起因する浮上走行体の姿勢不安定性を回避し、磁性体と超電導磁石との間で発生する吸引力が浮上走行体の低速走行用カーブ区間での姿勢安定性を増長するので、引き込み線区間において浮上走行体が側壁に接触するおそれがなくなり、走行安定性を向上できる。
【0008】
また、本発明の磁気浮上案内機構において、複数の鉄線の周囲を絶縁体で被覆してなる鉄線束により磁性体を構成した場合、鉄線束内の磁束により生じる渦電流が個々の鉄線内に限定され、複数の鉄線間を跨って流れる渦電流が抑止されるため、過大な磁気抗力を生じさせることなく、これによって磁性体と超電導磁石との間にて、吸収力を効率よく発生させることができる。また、絶縁体により鉄線を個々に被覆しているので、鉄線に対する防錆効果も得られる。
本発明の磁気浮上案内機構において、磁性体基板を複数、非磁性体層を介して積層してなる積層鉄心により磁性体を形成した場合、複数の鉄線の周囲を絶縁体で被覆してなる鉄線束により磁性体を構成する場合に比較し低コストで目的を実現できる効果を奏する。即ち、1本1本の鉄線を個々に絶縁して撚り合わせて製造するよりも、磁性体基板と非磁性体層を交互積層する方が製造が容易にでき、安価に提供できる。
また、積層鉄心により磁性体を構成する場合、板状の磁性体の場合、磁性体基板と非磁性体層との積層体からなる磁性体の場合、あるいは、磁性粉末の焼結合金の磁性体の場合のいずれにおいても磁気浮上走行体のカーブ区間における浮上走行安定性の向上に寄与し、台車に従来一般的に設けられていた案内輪を略することで浮上走行体の台車の製造コストの低減を図ることができ、浮上走行車の台車構造の簡略化と軽量化に寄与する。
【0009】
次に、浮上走行体の矩形状の台車のコーナ部分において個々にガイド輪を設け、前記浮上走行体の台車の外軌側のコーナ部分と内軌側のコーナ部分の両方において案内輪を略してなるので、低速走行用カーブ区間における走行安定性を維持した上に、台車構造の簡略化、低コスト化、軽量化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図1~図3に基づいて説明する。
図1は本発明に係わる磁気浮上案内機構の正面概略図であって、この図において符号1は軌道である。この軌道1は、両側に側壁2を有しこれら側壁2間にU字溝3を形成するものであって、この軌道1のU字溝3に沿って浮上走行体4が走行する(図1では紙面と直交する方向に走行する)。この浮上走行体4は、台車5と、この台車5の上方に空気バネ6を介して連結された車体7とを具備するものであって、台車5の下部には、U字溝3上の車輪走行路3Aを走行する車輪(図示略)、補助車輪(図示略)が設けられている。
【0011】
この浮上走行体4の台車5の両側には超電導磁石8が設けられている。また、浮上走行体4には超電導磁石8にヘリウムを供給するヘリウムタンクが設けられているが、図面上では省略されている。一方、軌道1の側壁2の内側には、浮上走行体4の超電導磁石8と対向しかつ該浮上走行体4の走行方向に沿うように浮上コイル10及び推進コイル11が設けられている。浮上コイル10は側壁2に上下に配置されているものであって、超電導磁石8との間に吸引力を発生させ、この吸引力から、軌道1のU字溝3内にて浮上走行体4を浮上させる浮上力を発生させる。また、推進コイル11は、U字溝3内にて浮上した浮上走行体4を軌道1に沿って走行させる推進力を与えるものである。なお、これら浮上コイル10及び推進コイル11については、「背景技術」に示した特公平7-55003号公報の他、特開平8-205315号公報、特開2006-14420号公報等に詳細に示される。また、本実施形態では、浮上コイル10及び推進コイル11を別体にしたが、背景技術の特許文献1に示されるような一体型のものを使用しても良い。
【0012】
一方、軌道1の一方の側壁2の内部でかつ推進コイル11とほぼ同一高さ位置の外側には、浮上走行体4の走行方向に沿うように超電導磁石8との間に吸引力を発生させる磁性体(磁性線状体)12が配置されている。この磁性体12は、横長の磁性板を垂直に起立させた状態とされ、その高さ方向中央部を推進コイル11の高さ方向中央部と浮上コイル10、10の高さ方向中央部と同一高さに位置させて側壁2の内部に側壁2の長さ方向に沿って水平に間欠的に複数設置されている。
この磁性体12が配置されているのは、図2に示す直線状の軌道1から分岐して設けられるカーブ区間に相当する軌道1aにおける内周側の側壁2である。このカーブ区間に相当する軌道1aは、直線状の軌道1から、駅などのために引き込み線として設けられる低速走行用カーブ区間などを例示することができる。
【0013】
この軌道1aに設ける磁性体12の1つの配置例として、カーブ区間の軌道1aにおいて、直線状の軌道1からカーブ区間の軌道1aに分岐する領域から徐々に吸引力を発揮させ、磁性体12による吸引力を一定の値に維持した後、徐々に吸引力を低下させることを目的とした配置を採用できる。
その配置例として、図2に示す如く、低速走行用カーブ区間の軌道1aの大部分には一定間隔で所定幅と所定長さの磁性体12を配置するが、軌道1から軌道1aに分岐する領域には水平方向の長さの短い磁性体12aを磁性体12どうしの相互間隔よりも大きな間隔をあけて配置するとともに、カーブ区間の軌道1aにおいて磁気的吸引力が必要ない領域になったならば水平方向長さの短い磁性体12aを再び前記と同じように大きな間隔をあけて配置する構成を採用することができる。
なお、図1では浮上コイル10及び推進コイル11とそれらに隣接する磁性体12とを併記しているので、図1は直線状の軌道1とカーブ区間の基層1aの境界部分において浮上コイル10及び推進コイル11と磁性体12が設けられた領域を例示している。また、低速走行用カーブ区間においては、通常、浮上コイル10及び推進コイル11は略されているが、浮上コイル10及び推進コイル11を必要に応じて低速走行用カーブ区間に設けていても差し支えない。
【0014】
以上説明のように磁性体12a、12を配置することで軌道1から軌道1aに磁気浮上走行体4が移動する際に磁性体が作用させる吸引力を段階的に印加できる。これに対して単純に磁性体12を密に配置すると、カーブ区間の軌道1aに浮上走行体4が差しかかった際に浮上走行体4の台車5に急激な横方向及び前後力が作用するので望ましくない。また、カーブ区間の軌道1aを所定の距離走行した後、磁気的吸引力が不要な位置になった場合には、水平方向長さの短い磁性体12aを間隔をあけて配置しているので、磁性体12aとの間に発生する磁気的吸引力が段階的に低減する。
なお、浮上走行体4の台車5に急激な横方向及び前後力が作用しないように段階的に徐々に磁気吸引力を作用させるためには、磁性体12の配置や長さを調整する他に、磁性体12の厚さを変更するなどの構成を採用しても良い。図3においては説明の便宜のために、磁性体12を配置した区間を磁気的吸引力発生区間と表記し、磁性体12aを配置した区間を段階的に磁気的吸引力が増加する領域か、段階的に磁気的吸引力が減少する領域、即ち、グレーディング区間として区別して表記した。要するに、このグレーディング区間においては磁気的吸引力が徐々に増加するか減少するように、磁性体の磁気的ボリュームを徐々に増加するか、徐々に減少するように配置すれば良いので、磁性体の幅や厚さ、設置間隔の変更の他に、磁気的ボリュームを調整する手段を適宜適用すれば良い。
【0015】
また、磁性体12a、12を低速走行用カーブ区間の軌道1aの内周側にのみ配置したのは、磁性体12、12aにより浮上走行体4の台車5を内軌側に磁気吸引することにより、通常の台車5に備えられている案内輪を略することを目的とする。特に案内輪の省略は、先頭車、後尾車の台車5において実現し易い。これは、低速カーブ区間の軌道1aに先頭車あるいは後尾車が移動して来た場合、通常の低速走行用カーブ区間の軌道1aには浮上走行用の浮上コイル10及び推進コイル11が設けられておらず、磁気的な推進力は弱くなり、遠心力により台車5の外軌側の部分が側壁2に近接しようとするので、この力を先の内軌側の磁性体12、12aによる磁気吸引力によりキャンセルして台車5が側壁2に近接することを抑制することができる。これにより、低速走行用のカーブ区間の軌道1aにおいて従来は台車5の保護のために必要とされていた案内輪を略することが可能となる。特に図2の如く磁性体12a、12を配置することにより、案内輪の省略を先頭車と後尾車において確実に実現できる。
【0016】
次に、前述の磁性体12の具体構造について詳述する。
前記磁性線状体12は、例えば、図4に示されるように、複数の鉄線(強磁性体の線材)13の周囲を絶縁体14で被覆してなる鉄線束(強磁性線材束)により形成されているものであって、各鉄線束内には、矢印Aで示すような磁束が形成され、この磁束によって、超電導磁石8との間に浮上走行体4を磁気的に吸引するための力となる吸引力(図1に符号Bで示す)が発生する。また、このような磁性線状体12では、複数の鉄線13の周囲を被覆した絶縁体14が設けられているので、図4に符号Cで示すような渦電流が発生したとしても、これら鉄線束内の磁束により生じる渦電流が個々の鉄線13内に限定され、複数の鉄線13間を跨って流れる渦電流が抑止されるため、過大な磁気抗力を生じさせることなく、これによって磁性体12と超電導磁石8との間にて、吸収力Bを効率良く発生させることができる。
【0017】
また、上記の磁気浮上案内機構では、複数の鉄線13の周囲を絶縁体14で被覆してなる鉄線束により磁性体12を構成したので、鉄線束内の磁束により生じる渦電流が個々の鉄線13内に限定され、複数の鉄線13間を跨って流れる渦電流が抑止されるため、過大な磁気抗力を生じさせることなく、これによって磁性体12と超電導磁石8との間にて、磁気的吸収力を効率よく発生させることができる。
【0018】
また、上記磁性線状体12として上述した複数の鉄線13の周囲を絶縁体14で被覆してなる鉄線束を使用せず、軌道1の側壁2を形成するコンクリート内の鉄筋に磁性を帯びさせたものを、上述した磁性体12として使用し、このような磁性体12によって浮上走行体4に対して付加的な吸引力を付与しても良い。また、このような軌道1の側壁2を形成する鉄筋を使用した場合に、この鉄筋として、複数の鉄線が撚り合わされて側壁2に対してプレストレス(圧縮力)を与えるプレストレス鋼線を使用しても良い。すなわち、軌道1の側壁2内にある鉄筋を、浮上走行体4に対して補助的な浮上力を与える磁性線状体12に兼用することで構成を共通化しかつ全体の構造を簡素化することができる。
【0019】
また、上述した磁性体として、複数の鉄線13の周囲を絶縁体14で被覆してなる鉄線束、又は軌道1の側壁2の鉄筋を使用することに限定されず、軌道1の側壁2の内周側に浮上走行体4の走行方向に沿うように設けられた他の構造の磁性体を使用しても良い。
また、側壁2に沿って配置される磁性体12は、側壁2の継ぎ目部分において切れ目が生じ、この部分において補助的な吸引力が弱まり走行浮上体4に振動が生じるおそれがあるが、これを防止するために、このような継ぎ目部分に追加的に磁力を付与する磁性体あるいは磁力発生装置を設け、吸引力を連続に安定して維持することが好ましい。
【0020】
図4は、先の図1と図4に示す実施の形態における磁気浮上案内機構において、磁性線状体(磁性体)12に代えて使用する積層鉄心からなる磁性体30について示す。
図4に示す磁性体30においては、磁性線状体12が設けられていた部分に積層鉄心として、磁性体基板31をフラックスバリアとなるべき樹脂などの非磁性体層32を介して複数積層してなる積層構造の板状の鉄心を用いた点に特徴を有する。
前記積層鉄心30の磁性体基板31は、鉄板、珪素鋼板、あるいはFe系の強磁性体合金材料からなる磁性体基板から、あるいは強磁性体合金粉末を絶縁層で被覆してなる強磁性体粉末複合体を焼結した焼結材料製の磁性体基板などから形成されている。磁性体基板31を構成する材料として、その他、ヒステリシス損失が小さく電気伝導率の小さい磁性材料などを適用することが好ましい。
前記フラックスバリアとなるべき非磁性体層32は樹脂などの絶縁性の非磁性体基板などからなる磁気的絶縁層であることが好ましい。そのためには、FRP(ガラス繊維強化樹脂)などのように強度的に高く絶縁性に優れた樹脂が好ましく、この他には、非磁性の鉄合金など、磁性体と線膨張係数の近い材料などからなることが好ましい。
【0021】
この形態に示す積層鉄心30を先の形態の磁性線状体12の代わりに設けることで先の形態と同様に超電導磁石8との間に吸引力を発生させることができ、先の形態と同等の効果を得ることができる。
また、強磁性体合金粉末を絶縁層で被覆してなる強磁性体粉末複合体を焼結した焼結材料製の磁性体基板であるならば、強磁性体合金粉末自体が個々に絶縁層により被覆されていて、渦電流損失を低減できるので、渦電流損失の低減の面においてより好ましい。更に、本発明において適用する磁性体は無垢材の鉄板などの強磁性体基板であっても良く、超電導磁石8との間に磁気的吸引力を発生できるものであればその構造は特に問わない。
【0022】
図6は本発明に適用される浮上走行体4の台車の一具体構造例を示す。
図6において矩形状に組まれた枠体40の両側に超電導磁石ユニット41が設けられ、超電導磁石ユニット41の上部側にヘリウムタンク42が設けられて、この例の台車51が構成されている。
台車51の枠体40の内側には図1に示す車輪走行路3Aを走行するための4つの車輪43が設けられている。そして、前記枠体40の各コーナ部分には、水平方向に回転自在に支持された案内輪45が水平旋回アーム46と支持軸47とに支持されて設けられている。また、先の支持軸47に軸支されている水平旋回アーム48に支持されたガイド輪49が先の案内輪48に隣接するように設けられている。
【0023】
本発明の図1、図2に示す構造の磁性体12、12aを備えた側壁2をカーブ区間の軌道1aに適用する場合、本発明において浮上走行体4の台車として図6に示す構造の台車51を適用する場合、図6には図示されている案内輪45を適宜省略することが可能となる。その場合、台車51の構造の簡略化をなし得る。
また、本発明に係る図1、図2に示す軌道1aに台車51を適用して台車51の案内輪45を省略する場合、図6に示す4基の案内輪45のうち、軌道1aの外側に位置する2基の案内輪45と内側に位置する2基の案内輪45をいずれも略することができる。また、浮上走行体4が複数連結式の車両である場合、先頭車の車両の台車51の外側の2基の案内輪45と内側に位置する2基の案内輪45をいずれも確実に略することができ、後尾車の車両の台車51の外側の2基の案内輪45と内側に位置する2基の案内輪45をいずれもを確実に略することができる。
これは先に図1、図2を元に説明した通り、内軌側の磁性体12あるいは30により磁気的吸引力を作用させて台車51を内軌側に吸引するならば、台車51の外軌側の部分を外軌側の側壁2に異常接近させることが無いためである。
【0024】
「試験例」
本願発明の効果を検証するために、超電導磁石と磁性体を用いて磁気吸引力を発生させた場合に実際に発生すると想定される吸引力を計算した。
図7(A)に示す如く超電導走行車両に搭載される中心径500mmの超電導コイル20(700kA:SCコイル)に対し、260mm離間した位置に超電導コイルと中心高さを揃えた高さ550mm、厚さ25mmの鋼板21を鉛直に配置したと仮定すると、磁気吸引力は台車片側に対して566kN程度作用させることができる。
次に、図7(B)に示す如く超電導走行車両に搭載される中心径500mmの超電導コイル22(700kA:SCコイル)に対し、415mm離間した位置に超電導コイルと中心高さを揃えた高さ550mm、厚さ12.5mmの鋼板23を鉛直に配置したと仮定すると、磁気吸引力は台車片側に対して128kN程度作用させることができる。
以上説明のように、図7(A)の構造の場合に57トンの磁気吸引力、図7(B)の構造の場合に13トンの磁気吸引力を発生させて超電導走行車両の走行台車に作用できるということは、本発明者の想定として、13トン程度の磁気吸引力でもカーブにおける規制力として十分過ぎる位大きいと考えているので、超電導走行車両の走行台車用として十二分に実用的な磁気吸引力を発生できることが明らかであり、低速走行時のカーブ区間での前述の問題点を解消することができる。
即ち、これらのような十二分な磁気吸引力の発生により超電導走行車両の台車をその内軌側に吸引し、超電導走行車両の台車の外軌側の部分が外軌側の側壁に異常接近することを防止できるので、超電導走行車両の先頭車の台車において外側の2基の案内輪と内側の2基の案内輪を確実に略することができ、案内輪を略しても十分な安全性を確保できることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる磁気浮上案内機構の概略を示す正面図。
【図2】直線状の軌道からカーブ区間の軌道に分岐している状態を示す図。
【図3】浮上走行体と磁気的吸引力発生区間並びにグレーディング区間との関係を示す図。
【図4】本発明に係わる磁性体を鉄線束で構成した場合の一例を示す構成図。
【図5】本発明に係わる磁性体を磁性体基板と非磁性体層の積層構造とした場合の一例を示す構成図。
【図6】本発明に係わる浮上走行機構に適用される浮上走行体の台車の一例を示す構成図。
【図7】本発明に係る構成により磁気吸引力を実際に発生させた場合の磁気吸引力の発生値の計算結果を説明するためのもので、図7(A)は超電導コイルと鋼板との第1の配置例を示す説明図、図7(B)は超電導コイルと鋼板との第2の配置例を示す説明図。
【符号の説明】
【0026】
1…軌道、2…側壁、3…U字溝、4…浮上走行体、5…台車、8…超電導磁石、10…浮上コイル、11…推進コイル、12…磁性線状体(磁性体)、13…鉄線、14…絶縁体、30…磁性体、31…磁性体基板、32…非磁性体層、41…超電導磁石ユニット、51…台車、45…案内輪、48…ガイド輪。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6