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明細書 :電動機制御方法及び電動機制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4945493号 (P4945493)
公開番号 特開2009-240123 (P2009-240123A)
登録日 平成24年3月9日(2012.3.9)
発行日 平成24年6月6日(2012.6.6)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 電動機制御方法及び電動機制御装置
国際特許分類 B60L   9/18        (2006.01)
B60L   7/16        (2006.01)
H02P  21/00        (2006.01)
H02P  27/04        (2006.01)
H02P   5/46        (2006.01)
FI B60L 9/18 L
B60L 7/16
B60L 9/18 S
H02P 5/408 A
H02P 5/46 J
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2008-085774 (P2008-085774)
出願日 平成20年3月28日(2008.3.28)
審査請求日 平成22年8月13日(2010.8.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】山下 道寛
個別代理人の代理人 【識別番号】100124682、【弁理士】、【氏名又は名称】黒田 泰
【識別番号】100104710、【弁理士】、【氏名又は名称】竹腰 昇
【識別番号】100090479、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 一
審査官 【審査官】竹下 晋司
参考文献・文献 特開平08-098316(JP,A)
特開2002-044804(JP,A)
調査した分野 B60L 1/00 - 15/42
H02P 5/46
H02P 21/00
H02P 27/04
特許請求の範囲 【請求項1】
インバータからの給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸以外の所定軸を空転監視軸として当該軸の空転発生を検出する空転検出ステップを含み、
力行時に、前記空転検出ステップによる検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記空転検出ステップによる検出がなされた場合には、前記進行方向最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う、
電動機制御方法。
【請求項2】
インバータからの給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸以外の所定軸を滑走監視軸として当該軸の滑走発生を検出する滑走検出ステップを含み、
制動時に、前記滑走検出ステップによる検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記滑走検出ステップによる検出がなされた場合には、前記進行方向最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う、
電動機制御方法。
【請求項3】
インバータからの給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸それぞれの電動機電流を検出する電流検出手段と、
n軸それぞれの回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
n軸のうちの進行方向最後方の軸以外の所定軸を空転監視軸として当該軸の空転発生を検出する空転検出手段と、
力行時に、前記空転検出手段による検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記空転検出手段による検出がなされた場合には、前記進行方向最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数用いて前記一括制御を行う力行時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置。
【請求項4】
インバータからの給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸それぞれの電動機電流を検出する電流検出手段と、
n軸それぞれの回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
n軸のうちの進行方向最前方の軸以外の所定軸を滑走監視軸として当該軸の滑走発生を検出する滑走検出手段と、
制動時に、前記滑走検出手段による検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記滑走検出手段による検出がなされた場合には、前記進行方向最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数用いて前記一括制御を行う制動時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、給電ラインに並列接続された電気車を駆動するn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車の電動機の制御として、給電ラインに並列接続された複数の電動機を一括してベクトル制御する技術が知られている。複数電動機の一括制御では、各電動機の回転子速度(回転子角周波数でもよい。)やインバータ出力電流のフィードバック値をもとに制御されるのが一般的であった。これは、粘着走行時(平常時)には、各電動機の回転子速度や流入電流はほぼ同じ値を取り、各電動機トルクはほぼ同値となるためである。
【0003】
また、電動機が並列接続された給電ラインの給電電流(インバータ出力電流)は、各電動機の流入電流の合計でなる。従って、粘着走行時(平常時)においては、各電動機の電流は略均等であるが、空転/滑走時には各電動機の負荷がアンバランスになる。具体的に説明する。ベクトル制御においては、インバータ出力電流である給電電流すなわち総電流ベクトルIを制御対象として、振幅(ベクトルIの長さ)、及び磁束成分とトルク成分とが制御される。例えば1C2M制御であれば、2台の電動機に入力される電流ベクトルは、総電流ベクトルIの約1/2ずつであり、磁束成分及びトルク成分の値はそれぞれの電動機間で略同値である。しかし、一方の電動機で空転又は滑走(以下包括的に「空転滑走」という。)が発生すると、その一方の電動機の負荷トルクが減少する。すると、減少した負荷トルク分のトルクを下げるように空転滑走した電動機のトルク成分電流が減少する。このトルク成分電流の減少分は、空転滑走していない電動機の増加分として配分される。総電流ベクトルIが一定に制御されているためである。
【0004】
この現象を放置した場合、空転滑走していない電動機に過度のトルクがかかり、空転滑走が誘発されて、全軸空転滑走に至る可能性がある。かかる問題は例えば特許文献1にも記載されている通りである。
【0005】
そして、トルクのアンバランスに対応する制御としては例えば特許文献2に記載された技術が知られている。この特許文献2の技術は、インバータ出力電流(給電ラインの給電電流)をフィードバックし、トルクのアンバランスが発生した場合にはトルク指令を引き下げて、一括制御している全ての電動機のトルクを下げるものである。

【特許文献1】特開2002-112404号公報
【特許文献2】特開平10-80190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、空転滑走発生時のトルクのアンバランスを抑制するための新たな技術を提案するものであり、インバータ出力電流をフィードバックしてトルク指令を引き下げるという従来の制御技術とは全く異なる新たな適応的な制御を実現すべく考案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の発明は、
給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
力行時に、制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う電動機制御方法である。
【0008】
この第1の発明に対する他の発明として、
給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流を検出する電流検出手段と、
前記進行方向最後方の軸の回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
力行時に前記電流検出手段により検出された電流と前記角周波数検出手段により検出された角周波数とを用いて前記一括制御を行う力行時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置を構成することとしてもよい。
【0009】
この第1の発明等によれば、力行時において、制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流と回転子角周波数とを用いて、制御対象のn軸全ての電動機がベクトル制御により一括制御される。力行時には車両内及び台車内において軸重移動が生じる。力行時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象のn軸のうち、進行方向最後方の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、トルク成分電流が略同一である電動機間において、力行時には進行方向最後方の軸が最も空転しにくい状況にあると言える。そこで、力行時には、空転の可能性が最も低い進行方向最後方の軸を制御の基準として、制御対象のn軸全ての電動機を一括制御するものである。
【0010】
仮に、進行方向最後方の軸以外の軸が空転したとしても、最後方の軸が粘着走行している限り、最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いた一括制御を継続しているため、最後方の軸のトルクが上昇して空転が誘発するというおそれもない。第1の発明等によれば、力行時の軸重移動を考慮した適応的且つ画期的な電動機一括制御を実現することができる。
【0011】
第2の発明は、
給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
制動時に、制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う電動機制御方法である。
【0012】
この第2の発明に対する他の発明として、
給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流を検出する電流検出手段と、
前記進行方向最前方の軸の回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
制動時に前記電流検出手段により検出された電流と前記角周波数検出手段により検出された角周波数とを用いて前記一括制御を行う制動時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置を構成することとしてもよい。
【0013】
この第2の発明等によれば、制動時において、制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流と回転子角周波数とを用いて、制御対象のn軸全ての電動機がベクトル制御により一括制御される。制動時には車両内及び台車内において軸重移動が生じる。制動時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象のn軸のうち、進行方向最前方の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、トルク成分電流が略同一である電動機間において、制動時には進行方向最前方の軸が最も滑走しにくい状況にあると言える。そこで、制動時には、滑走の可能性が最も低い進行方向最前方の軸を制御の基準として、制御対象のn軸全ての電動機を一括制御するものである。
【0014】
仮に、進行方向最前方の軸以外の軸が滑走したとしても、最前方の軸が粘着走行している限り、最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いた一括制御を継続しているため、最前方の軸のトルクが上昇して滑走が誘発するというおそれもない。第2の発明等によれば、制動時の軸重移動を考慮した適応的且つ画期的な電動機一括制御を実現することができる。
【0015】
第3の発明は、
インバータにより給電される給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸以外の所定軸を空転監視軸として当該軸の空転発生を検出する空転検出ステップと、
力行時に、前記空転検出ステップによる検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記空転検出ステップによる検出がなされた場合には、n軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う一括制御切替ステップと、
を含む電動機制御方法である。
【0016】
この第3の発明に対する他の発明として、
インバータにより給電される給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流を検出する電流検出手段と、
前記進行方向最後方の軸の回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸以外の所定軸を空転監視軸として当該軸の空転発生を検出する空転検出手段と、
力行時に、前記空転検出手段による検出がなされていない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記空転検出手段による検出がなされた場合には、前記電流検出手段により検出された電動機電流及び前記角周波数検出手段により検出された角周波数を用いて前記一括制御を行う力行時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置を構成することとしてもよい。
【0017】
この第3の発明等によれば、力行時において、空転が検出されていない場合には、制御対象のn軸それぞれの電動機電流又はインバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いた一括制御が行われる。この一括制御はいわば従来の制御と同様の制御と言える。そして、力行時において、空転が検出された場合には、制御対象のn軸のうちの進行方向最後方の軸の電動機電流と回転子角周波数とを用いて、制御対象のn軸全ての電動機がベクトル制御により一括制御される。
【0018】
力行時には車両内及び台車内において軸重移動が生じる。力行時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象のn軸のうち、進行方向最後方の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、力行時には進行方向最後方の軸が最も空転しにくい状況にあると言える。そこで、力行時に進行方向最後方の軸以外の空転監視軸が空転した場合には、空転の可能性が最も低い進行方向最後方の軸を制御の基準として、制御対象のn軸全ての電動機を一括制御する。この第3の発明等によれば、力行時の軸重移動を考慮した適応的且つ画期的な電動機一括制御を実現することができる。
【0019】
第4の発明は、
インバータにより給電される給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御方法であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸以外の所定軸を滑走監視軸として当該軸の滑走発生を検出する滑走検出ステップと、
制動時に、前記滑走検出ステップによる検出がなされない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記滑走検出ステップによる検出がなされた場合には、n軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いて前記一括制御を行う一括制御切替ステップと、
を含む電動機制御方法である。
【0020】
この第4の発明に対する他の発明として、
インバータにより給電される給電ラインに並列接続された電動車車両内或いは台車内のn軸(n≧2)それぞれの電動機をベクトル制御により一括制御する電動機制御装置であって、
制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流を検出する電流検出手段と、
前記進行方向最前方の軸の回転子角周波数を検出する角周波数検出手段と、
制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸以外の所定軸を滑走監視軸として当該軸の滑走発生を検出する滑走検出手段と、
制動時に、前記滑走検出手段による検出がなされていない場合には、n軸それぞれの電動機電流又は前記インバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いて前記一括制御を行い、前記滑走検出手段による検出がなされた場合には、前記電流検出手段により検出された電動機電流及び前記角周波数検出手段により検出された角周波数を用いて前記一括制御を行う制動時一括制御手段と、
を備えた電動機制御装置を構成することとしてもよい。
【0021】
この第4の発明等によれば、制動時において、滑走が検出されていない場合には、制御対象のn軸それぞれの電動機電流又はインバータの出力電流と、n軸それぞれの電動機の回転子角周波数又は代表軸の電動機の回転子角周波数とを用いた一括制御が行われる。この一括制御はいわば従来の制御と同様の制御と言える。そして、制動時において、滑走が検出された場合には、制御対象のn軸のうちの進行方向最前方の軸の電動機電流と回転子角周波数とを用いて、制御対象のn軸全ての電動機がベクトル制御により一括制御される。
【0022】
制動時には車両内及び台車内において軸重移動が生じる。制動時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象のn軸のうち、進行方向最前方の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、制動時には進行方向最前方の軸が最も滑走しにくい状況にあると言える。そこで、制動時に進行方向最前方の軸以外の滑走監視軸が滑走した場合には、滑走の可能性が最も低い進行方向最前方の軸を制御の基準として、制御対象のn軸全ての電動機を一括制御する。この第4の発明等によれば、制動時の軸重移動を考慮した適応的且つ画期的な電動機一括制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、軸重移動を考慮した適応的且つ画期的な電動機一括制御を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明するが、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
本実施形態では、動輪2軸の台車を2台車備える電動車の電動機制御装置に本発明を適用した場合の実施形態について説明する。また、台車内の2軸分の電動機を1台の制御装置で制御するいわゆる1C2Mとし、各電動機を誘導機としてベクトル制御により制御することとして説明する。また、数式における変数及び係数の添え字の数字は、軸の番号(1~2)を示し、軸の番号は進行方向側より1,2とする。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、電車の主回路の回路ブロックのうち、第1実施形態に関わる構成を概略的に示した図であり、台車内の2軸の電動機と、その2軸の電動機を制御する電動機制御装置を中心に示した図である。
図1によれば、第1実施形態に関わる電車の主回路としては、電動機制御装置1と、誘導機である電動機IM_1,IM_2と、インバータ70と、電流センサ81,82,85と、速度センサ91,92とを備えて構成されている。
【0026】
電動機IM_1,IM_2は、インバータ70から電力が供給されることで車軸を回転駆動する主電動機(メインモータ)であり、本実施形態では3相誘導機でなる。速度センサ91,92は、それぞれ電動機IM_1,IM_2の回転速度(角周波数)ωr_1r_2を検出して出力する。電流センサ85は、インバータ70のU相及びV相の出力電流Iu,Ivを検出し、電流センサ81,82は、それぞれ電動機IM_1,IM_2のU相及びV相の流入電流Iu_1,Iv_1,Iu_2,Iv_2を検出して出力する。
【0027】
インバータ70には、パンタグラフ及びコンバータを介して架線の電力が供給される。そして、ベクトル制御演算装置20から入力されるU相、V相及びW相それぞれの電圧指令値Vu,Vv,Vwに基づいて出力電圧を調整し、電動機IM_1,IM_2に給電する。
【0028】
ベクトル制御演算装置20を含む電動機制御装置1は、電動機IM_1,IM_2をベクトル制御する。この電動機制御装置1は、CPUやROM、RAM等から構成されるコンピュータ等によって実現され、例えば制御ボードとして各種の制御装置の一部として実装されたり、或いはインバータ70を含めて一体的にインバータ装置として構成される。また、電動機制御装置1は、ベクトル制御演算装置20の他に、再粘着制御装置30と、加減算部50とを備えて構成されている。
【0029】
再粘着制御装置30は、公知の再粘着制御装置と同様の構成でなり、速度センサ91,92により検出された各電動機IM_1,IM_2の回転速度(回転子角周波数でもよい。以下適宜、「回転速度」或いは「回転子角周波数」として説明するが、何れも同義に扱うことができる。)ωr_1r_2を基準速度(目標速度)ωと比較し、基準速度ωを所定値(例えば時速0.2km相当値)以上超えた場合に空転滑走が発生したと検出して、ベクトル制御演算装置20に入力されるトルク成分電流指令値Iqrefを引き下げて再粘着させる引き下げ指令Iq_Rを生成する。基準速度ωは電車の進行速度であり、例えば運転台から得られる速度信号や、T車の従軸の周速度から得ることとしてもよいし、車両内の各軸の周速度のうち、力行時であれば最小値、制動時であれば最大値等として決定してもよい。
【0030】
また、再粘着制御装置30の構成として、電流センサ81,82で検出された電動機流入電流のU相、V相の電流をd-q軸座標に変換する座標変換部と、座標変換部により変換された電動機IM_1と電動機IM_2それぞれのトルク成分電流の差異に基づいて空転滑走を検知する空転滑走検知部と、空転滑走の検知に応じて引き下げ指令Iq_Rを生成する指令部とを有して構成することとしてもよい。
【0031】
再粘着制御装置30から出力された引き下げ指令Iq_Rは加減算部50に入力され、ベクトル制御演算装置20に入力されるトルク成分電流指令Iqrefを引き下げ指令Iq_Rによる指令値分引き下げるよう作用する。
【0032】
ベクトル制御演算装置20は、電圧制御指令器210と、主電動機信号切替部220と、積分器250と、座標変換部270とを備えて構成される。電圧制御指令器210は、運転台のノッチ信号や制動(ブレーキ)指令信号をもとに電流指令パターンを参照して生成される磁束成分電流指令値Idrefとトルク成分電流指令値Iqrefとを指令値として入力するとともに、主電動機信号切替部220から電動機回転子の角周波数ωと磁束成分電流フィードバック値Iとトルク成分電流フィードバック値Iとを制御対象の現在の状態を表す値として入力して、電圧指令値Vu,Vv,Vwを演算してインバータ70に出力する。この電圧制御指令器210の構成は従来の電圧制御指令器の構成と同様である。
【0033】
また、電圧制御指令器210は、積分器250にインバータ角周波数ωを出力する。積分器250は、インバータ角周波数ωを積算することで回転磁界位置θ(磁束位相)を算出して座標変換部270に出力する。
【0034】
座標変換部270は、インバータ出力のU相電流I及びV相電流Iそれぞれをインバータ出力磁束成分電流Iとインバータ出力トルク成分電流Iとに変換する座標変換器271と、第1軸の電動機IM_1のU相電流Iu_1及びV相電流Iv_1それぞれを第1軸磁束成分電流Id_1と第1軸トルク成分電流Iq_1とに変換する座標変換器272と、第2軸の電動機IM_2のU相電流Iu_2及びV相電流Iv_2それぞれを第2軸磁束成分電流Id_2と第2軸トルク成分電流Iq_2とに変換する座標変換器273とを備える。回転磁界位置θを用いてU相電流及びV相電流をd-q軸座標へ変換する技術は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0035】
主電動機信号切替部220は、座標変換部270からインバータ出力電流としてインバータ出力磁束成分電流Iとインバータ出力トルク成分電流Iとを入力し、第1軸の電動機電流として第1軸磁束成分電流Id_1と第1軸トルク成分電流Iq_1とを入力し、第2軸の電動機電流として第2軸磁束成分電流Id_2と第2軸トルク成分電流Iq_2とを入力する。また、主電動機信号切替部220は、速度センサ91,92により検出された第1軸及び第2軸それぞれの電動機の回転子角周波数ωr_1r_2を入力する。
【0036】
一方、主電動機信号切替部220は、運転台等から入力されるノッチ指令及び制動指令をもとに、現在の走行状態が力行であるか制動であるかを判断する。そして、現在の走行状態に基づいて、入力された各種の電流値から、一括制御している電動機全体の現在の状態を表す値として、磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出して電圧制御指令器210に出力する。
【0037】
図2に主電動機信号切替部220による算出原理を示す。主電動機信号切替部220は、現在の走行状態が力行であれば、進行方向最後方軸である第2軸を基準軸として、第2軸の電動機電流及び回転子角周波数をもとに磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出する。具体的には、第2軸磁束成分電流Id_2の2倍を磁束成分電流フィードバック値Iとし、第2軸トルク成分電流Iq_2の2倍をトルク成分電流フィードバック値Iとし、第2軸の電動機の回転子角周波数ωr_2を回転子角周波数ωとする。
【0038】
また、現在の走行状態が制動であれば、主電動機信号切替部200は、進行方向最前方軸である第1軸を基準軸として、第1軸の電動機電流及び回転子角周波数をもとに磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出する。具体的には、第1軸磁束成分電流Id_1の2倍を磁束成分電流フィードバック値Iとし、第1軸トルク成分電流Iq_1の2倍をトルク成分電流フィードバック値Iとし、第1軸の電動機の回転子角周波数ωr_1を回転子角周波数ωとする。
【0039】
ここで、図3~図5を参照して主電動機信号切替部220が磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出する原理について詳細に説明する。
【0040】
図3~図5において、横軸は1次電流のd軸成分(励磁成分電流)、縦軸は1次電流のq軸成分(トルク成分電流)を表しており、I1_1は第1軸の電動機IM_1に流入される1次電流ベクトル、I1_2は第2軸の電動機IM_2に流入される1次電流ベクトル、Iはフィードバック電流ベクトルであり、Φは2次鎖交ベクトルであり、この2次鎖交ベクトルΦがd軸と一致する様に座標設定されている。なお、フィードバック電流ベクトルIとは、磁束成分電流フィードバック値Iとトルク成分電流フィードバック値Iとの和である。
【0041】
図3は、第1軸及び第2軸ともに粘着走行している場合の電流ベクトルの挙動を模式的に示すもので、同図に示す様に、この場合には、1次電流ベクトルI1_1と1次電流ベクトルI1_2の振幅及び位相はそれぞれ等しい。
【0042】
次に、図4は、電動機IM_1によって駆動される車輪(第1軸)が空転した場合の従来制御による電流ベクトルの挙動を模式的に示す図である。第1軸が空転すると、1次電流ベクトルI1_1の位相と振幅が変化する。然るに、従来制御では、1次電流ベクトルI1_1と1次電流ベクトルI1_2の和であるインバータ電流ベクトルをフィードバック電流ベクトルとしており、このフィードバック電流ベクトル(インバータ電流ベクトル)Iの位相及び振幅が常に一定となる様に定電流制御されているので、第2軸の1次電流ベクトルI1_2が、第1軸の1次電流ベクトルI1_1の変化分をキャンセルする様に変化する。
【0043】
その結果、粘着走行していた第2軸の電動機には、第1軸が空転する前に比べて図中一点鎖線の両端矢視線で示すトルク成分電流差ΔI1q_2が生じる。この結果、空転せず粘着走行していた第2軸の空転が誘発される可能性がある。
【0044】
一方、本実施形態の主電動機信号切替部220によれば、力行時には、図5のような制御となる。図5は、電動機IM_1によって駆動される車輪(第1軸)が空転した場合の本実施形態による電流ベクトルの挙動を模式的に示す図である。主電動機信号切替部220は、力行時は、第2軸磁束成分電流Id_2の2倍を磁束成分電流フィードバック値Iとし、第2軸トルク成分電流Iq_2の2倍をトルク成分電流フィードバック値Iとする。このときの第1軸の1次電流ベクトルI1_1を一点鎖線で図示するが、この1次電流ベクトルI1_1はフィードバック電流ベクトルIには影響しない。従来制御のような、第1軸及び第2軸の総電流ベクトルであるインバータ電流ベクトルをフィードバック電流ベクトルとしているわけではない。
【0045】
また、力行時においては、車両内及び台車内において軸重移動が生じる。力行時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象の各軸のうち、進行方向最後方の軸の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、力行時には進行方向最後方の軸が最も空転しにくい状況にあると言える。そこで、力行時には、空転の可能性が最も低い進行方向最後方の軸を制御の基準として、制御対象の全ての軸の電動機を一括制御するのが本実施形態である。
【0046】
仮に、進行方向最後方の軸以外の軸(本実施形態では第1軸)が空転したとしても、最後方の軸が粘着走行している限り、最後方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いた一括制御を継続しているため、最後方の軸のトルクが上昇して空転が誘発するというおそれもない。
【0047】
制動時も同様である。すなわち、制動時の軸重移動によれば電動車車両内或いは台車内の制御対象の各軸のうち、進行方向最前方の軸の軸重が他の軸に比べて最も大きくなる。従って、制動時には進行方向最前方の軸が最も滑走しにくい状況にあると言える。そこで、制動時には、滑走の可能性が最も低い進行方向最前方の軸を制御の基準として、制御対象の全ての軸の電動機を一括制御するのが本実施形態である。
【0048】
仮に、進行方向最前方の軸以外の軸(本実施形態では第2軸)が空転したとしても、最前方の軸が粘着走行している限り、最前方の軸の電動機電流及び回転子角周波数を用いた一括制御を継続しているため、最前方の軸のトルクが上昇して空転が誘発するというおそれもない。
【0049】
電流について説明したが、電動機角周波数ωについても同様である。
以上の原理に基づき、主電動機信号切替部220が磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出する。
【0050】
次に、本実施形態の作用効果の確認のために行った力行時の空転に対するシミュレーション結果について説明する。
図6は、本実施形態の電動機制御装置1の制御による(a)各軸速度、(b)各軸電流、(c)各軸トルクの様子を説明するための図である。何れも“2秒”時点で第1軸が空転を開始した。なお、主電動機信号切替部220により算出された磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとの作用効果を明らかにするために、再粘着制御装置30によるトルク指令の引き下げを行っていない。また、軸重移動の要素は考慮せずにシミュレーションを行った。
【0051】
図6(a)~図6(c)から分かる通り、第1軸が空転開始した“2秒”以降も第2軸は粘着走行している。第2軸の電動機電流及び回転子角周波数が制御基準となっているため、第1軸の空転によって第2軸の電動機のトルク成分電流が上昇して連れ回りが発生する現象が生じることはない。
【0052】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主電動機信号切替部230が、空転滑走を含めた走行状態に応じて、磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出する点で第1実施形態と異なる。以下説明において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0053】
図7に第2実施形態にかかる主回路構成を示す。構成的には第2実施形態の電動機制御装置2は、ベクトル制御演算装置20が空転滑走検出部240を備え、主電動機信号切替部220の代わりに主電動機信号切替部230を備えた点で、第1実施形態の電動機制御装置1と異なる。
【0054】
空転滑走検出部240は、速度センサ91,92により検出された各電動機IM_1,IM_2それぞれの回転速度ωr_1r_2を基準速度(目標速度)ωと比較する。そして、基準速度ωを所定値(例えば時速0.2km相当値)以上超えたことをもって空転滑走が発生したことを検出する。第1軸の空転滑走の発生検出に応じて検出信号SK1をONとして主電動機信号切替部230に出力し、第2軸の空転滑走の発生検出に応じて検出信号SK2をONとして主電動機信号切替部230に出力する。
【0055】
主電動機信号切替部230は、座標変換部270からインバータ出力電流としてインバータ出力磁束成分電流Iとインバータ出力トルク成分電流Iとを入力し、第1軸の電動機電流として第1軸磁束成分電流Id_1と第1軸トルク成分電流Iq_1とを入力し、第2軸の電動機電流として第2軸磁束成分電流Id_2と第2軸トルク成分電流Iq_2とを入力する。また、速度センサ91,92により検出された第1軸及び第2軸それぞれの電動機の回転子角周波数ωr_1r_2を入力する。以上の点は第1実施形態の主電動機信号切替部220と同様である。
【0056】
また、主電動機信号切替部230は、運転台等から入力されるノッチ指令及び制動指令と、空転滑走検出部240から入力される検出信号SK1,SK2をもとに、現在の走行状態として、力行であるか制動であるのか、更に粘着走行中であるか空転滑走が発生した状況であるかを判断する。そして、現在の走行状態に基づいて、入力された各種の電流値及び回転子角周波数から、一括制御している電動機全体の現在の状態を表す値として、磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとを算出して電圧制御指令器210に出力する。
【0057】
図8に主電動機信号切替部230による算出原理を示す。主電動機信号切替部230は、現在の走行状態が力行であれば、まず、進行方向最後方軸以外の軸を監視軸とする。第2実施形態においては第1軸が監視軸である。この監視軸に対応する検出信号SK1をもとに、監視軸が粘着走行中であるか空転しているかを判定する。そして、検出信号SK1がOFFの場合には粘着走行していると判定して、インバータ出力磁束成分電流Iを磁束成分電流フィードバック値Iとし、インバータ出力トルク成分電流Iをトルク成分電流フィードバック値Iとし、各軸の電動機の回転子角周波数ωr_1,ωr_2の平均値を回転子角周波数ωとして算出する。すなわち、監視軸が粘着走行中は従来制御と同様の制御がなされることとなる。
【0058】
一方、検出信号SK1がONの場合には監視軸に空転が発生したと判定し、進行方向最後方軸である第2軸を基準軸として、第2軸磁束成分電流Id_2の2倍を磁束成分電流フィードバック値Iとし、第2軸トルク成分電流Iq_2の2倍をトルク成分電流フィードバック値Iとし、第2軸の電動機の回転子角周波数ωr_2を回転子角周波数ωとする。すなわち、監視軸が空転した場合に第1実施形態と同様の制御がなされることとなる。
【0059】
また、現在の走行状態が制動であれば、進行方向最前方軸以外の軸である第2軸を監視軸として、検出信号SK2をもとに、監視軸が粘着走行中であるか滑走しているかを判定する。そして、検出信号SK2がOFFの場合には粘着走行していると判定して、インバータ出力磁束成分電流Iを磁束成分電流フィードバック値Iとし、インバータ出力トルク成分電流Iをトルク成分電流フィードバック値Iとし、各軸の電動機の回転子角周波数ωr_1,ωr_2の平均値を回転子角周波数ωとして算出する。すなわち、監視軸が粘着走行中は従来制御と同様の制御がなされることとなる。
【0060】
一方、検出信号SK2がONの場合には監視軸に滑走が発生したと判定し、進行方向最前方軸である第1軸を基準軸として、第1軸磁束成分電流Id_1の2倍を磁束成分電流フィードバック値Iとし、第1軸トルク成分電流Iq_1の2倍をトルク成分電流フィードバック値Iとし、第1軸の電動機の回転子角周波数ωr_1を回転子角周波数ωとする。すなわち、監視軸が滑走した場合に第1実施形態と同様の制御がなされることとなる。
【0061】
第2実施形態によれば、粘着走行中であれば力行及び制動の何れの走行状態であっても従来と同様のインバータ出力電流をフィードバック値とした制御を行い、空転滑走が発生したときに第1実施形態と同様の制御を行うこととなる。
【0062】
次に、第2実施形態の作用効果の確認のために行った力行時の空転に対するシミュレーション結果について説明する。
図9は、第2実施形態の電動機制御装置2の制御による(a)各軸速度、(b)各軸電流、(c)各軸トルクの様子を説明するための図である。何れも“2秒”時点で第1軸が空転を開始し、“6秒”時点から主電動機信号切替部230による磁束成分電流フィードバック値Iと、トルク成分電流フィードバック値Iと、電動機の回転子角周波数ωとの算出制御を開始した。また、“2秒”から“6秒”までは、インバータ出力磁束成分電流Iを磁束成分電流フィードバック値Iとし、インバータ出力トルク成分電流Iをトルク成分電流フィードバック値Iとし、各軸の電動機の回転子角周波数ωr_1,ωr_2の平均値を回転子角周波数ωとして電圧指令値Vu,Vv,Vwを演算した。なお、再粘着制御装置30によるトルク指令の引き下げは行っていない。また、軸重移動の要素は考慮せずにシミュレーションを行った。
【0063】
図9(a)~図9(c)から分かる通り、第1軸が空転した“2秒”から“6秒”までのインバータ出力電流をフィードバック値とする従来制御の間は、第2軸は粘着走行しているものの、トルク成分電流及びトルクが増大しており、連れ回り(空転誘発)が発生し得る状態にある。しかし、本実施形態の制御を開始した“6秒”以降は第2軸の電動機のトルク成分電流及びトルクが、第1軸が空転発生する前の状態に戻っていることが分かる。
【0064】
[変形例]
以上、2つの実施形態について説明したが、本発明が適用可能な形態は上述した実施形態に限られるものではない。例えば、1車両分の2台車の各軸を制御する1C4M制御に適用してもよい。
【0065】
この場合、進行方向最前方の軸が第1軸となり、進行方向最後方の軸が第4軸となるため、図2及び図の表を適宜読み替えることで主電動機信号切替部220,230を設計変更可能である。すなわち、軸重移動により、力行時であれば第1軸~第4軸のうちの進行方向最後方の第4軸の軸重が他の軸に比べて最大になり、制動時であれば進行方向最前方の第1軸の軸重が他の軸に比べて最大になる。尚、複数電動機を一括して制御する方式であれば、3台車以上の台車を備える車両に対して本実施形態を適用することとしてもよい。
【0066】
また、図8において、監視軸が粘着走行している際にはインバータ出力電流をフィードバック電流とし、各軸の角周波数の平均値をフィードバックすることとした。しかし、各軸の電動機の出力電流の合計値(より詳細には磁束成分それぞれの合計値とトルク成分それぞれの合計値)をフィードバック電流としてもよいし、平均値をフィードバック電流としてもよい。また、フィードバックする角周波数として代表軸(例えば力行時であれば進行方向最後方軸、制動時であれば進行方向最前方軸)の角周波数をフィードバックすることとしてもよい。
【0067】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、第1軸の電動機IM_1の電流を検出する電流センサ81、第2軸の電動機IM_2の電流を検出する電流センサ82と、インバータ70の出力電流を検出する電流センサ85とを設けることとして説明したが、電流センサの設置数・組合せはこれに限られるものではない。例えば、電流センサ82を設置せずとも、電流センサ85の検出値と電流センサ81の検出値とから第2軸の電動機IM_2の電流を算出(検出)することとしてもよい。インバータ出力電流は、一括制御している各軸の電動機電流の和であるからである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第1実施形態における電車の主回路の回路ブロック図。
【図2】第1実施形態の主電動機信号切替部の動作原理を説明するための図。
【図3】第1実施形態の主電動機信号切替部の動作原理を説明するための図。
【図4】第1実施形態の主電動機信号切替部の動作原理を説明するための図。
【図5】第1実施形態の主電動機信号切替部の動作原理を説明するための図。
【図6】第1実施形態に係るシミュレーション結果を示す図。
【図7】第2実施形態における電車の主回路の回路ブロック図。
【図8】第2実施形態の主電動機信号切替部の動作原理を説明するための図。
【図9】第2実施形態に係るシミュレーション結果を示す図。
【符号の説明】
【0069】
1,2 電動機制御装置
20,22 ベクトル制御演算装置
210 電圧制御指令器
220,230 主電動機信号切替部
250 積分器
270 座標変換部
70 インバータ
IM_1,2 電動機
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8