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明細書 :鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4964813号 (P4964813)
公開番号 特開2009-237399 (P2009-237399A)
登録日 平成24年4月6日(2012.4.6)
発行日 平成24年7月4日(2012.7.4)
公開日 平成21年10月15日(2009.10.15)
発明の名称または考案の名称 鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置
国際特許分類 G09B   9/04        (2006.01)
FI G09B 9/04 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2008-085321 (P2008-085321)
出願日 平成20年3月28日(2008.3.28)
審査請求日 平成22年7月21日(2010.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】喜岡 恵子
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】中澤 言一
参考文献・文献 特公昭48-25094(JP,B1)
特開2000-338861(JP,A)
特開平11-69516(JP,A)
川崎正敏,外3名,“乗務員訓練シミュレータ”,東芝レビュー,日本,株式会社東芝,1991年11月 1日,第46巻,第11号,p.866-868
調査した分野 G09B 1/00 - 9/56
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練を行う際に、運転操作状況情報取得装置から得られる運転操作状況情報と、地上側の状況情報取得装置から得られる地上側の状況情報と、車上側の状況情報取得装置から得られる車上側の状況情報記録装置によって系統的に同時に記録し、前記記録装置による記録データを評価装置によって分析して、鉄道の運転士の異常時対応能力を評価することを特徴とする鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法。
【請求項2】
請求項記載の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法において、前記列車の操作状態に関する情報はノッチ及びブレーキに関する情報であり、前記地上側設備の状態に関する情報はATS照査速度に関する情報であり、前記車両の状態に関する情報はATS動作及び運転速度に関する情報であることを特徴とする鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法。
【請求項3】
列車の操作状態に関する情報を得る運転操作状況情報取得装置と、地上側設備の状態に関する情報を得る地上側の状況情報取得装置と、車両の状態に関する情報を得る車上側の状況情報取得装置と、前記運転操作状況情報取得装置からの列車の操作状態に関する運転操作状況情報と前記地上側の状況情報取得装置からの地上側設備の状態に関する地上側の状況情報と前記車上側の状況情報取得装置からの車両の状態に関する車上側の状況情報とを系統的に同時に記録する記録装置と、該記録装置による記録データを評価する評価装置とを備え、該評価装置による前記記録データの分析により鉄道の運転士の異常時対応能力を評価することを特徴とする鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置。
【請求項4】
請求項記載の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置において、前記列車の操作状態に関する情報はノッチとブレーキに関する情報であり、地上側設備の状態に関する情報はATS照査速度に関する情報であり、前記車両の状態に関する情報はATS動作と運転速度に関する情報であることを特徴とする鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転士のシミュレータ訓練は、講師と訓練グループの観察による評価が中心であった。
一方、近年では、バスの運転訓練車が導入され、安全確認や省エネ運転のチェックができるようになってきている(下記非特許文献1参照)。

【非特許文献1】「京王電鉄バスグループの安全対策」,京王ニュース 2007年11月 No.634,pp4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の運転訓練では、実際のシミュレーション記録とその評価が系統立てて行われていないのが現状である。
本発明は、上記状況に鑑みて、実際のシミュレーション記録を確実に取得して運転技術の向上を図ることができる鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法において、鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練を行う際に、運転操作状況情報取得装置から得られる運転操作状況情報と、地上側の状況情報取得装置から得られる地上側の状況情報と、車上側の状況情報取得装置から得られる車上側の状況情報とを記録装置によって系統的に同時に記録し、前記記録装置による記録データを評価装置によって分析して、鉄道の運転士の異常時対応能力を評価することを特徴とする。
【0005】
〕上記〔〕記載の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法において、前記列車の操作状態に関する情報はノッチ及びブレーキに関する情報であり、前記地上側設備の状態に関する情報はATS照査速度に関する情報であり、前記車両の状態に関する情報はATS動作及び運転速度に関する情報であることを特徴とする。
〕列車の操作状態に関する情報を得る運転操作状況情報取得装置と、地上側設備の状態に関する情報を得る地上側の状況情報取得装置と、車両の状態に関する情報を得る車上側の状況情報取得装置と、前記運転操作状況情報取得装置からの列車の操作状態に関する運転操作状況情報と前記地上側の状況情報取得装置からの地上側設備の状態に関する地上側の状況情報と前記車上側の状況情報取得装置からの車両の状態に関する車上側の状況情報とを系統的に同時に記録する記録装置と、該記録装置による記録データを評価する評価装置とを備え、該評価装置による前記記録データの分析により鉄道の運転士の異常時対応能力を評価する。
【0006】
〕上記〔〕記載の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置において、前記列車の操作状態に関する情報はノッチとブレーキに関する情報であり、地上側設備の状態に関する情報はATS照査速度に関する情報であり、前記車両の状態に関する情報はATS動作と運転速度に関する情報である
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際のシミュレーション記録を確実に取得して運転技術の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法は、鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練を行う際に、運転操作状況情報取得装置から得られる運転操作状況情報と、地上側の状況情報取得装置から得られる地上側の状況情報と、車上側の状況情報取得装置から得られる車上側の状況情報記録装置によって系統的に同時に記録し、記録装置による記録データを評価装置によって分析して、鉄道の運転士の異常時対応能力を評価する。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練・評価の全体フローチャートである。
この図に示すように、(1)まず、心理的側面の擬似体験のためのシミュレータ訓練を行う(ステップS1)。(2)次に、擬似体験(シュミレータ訓練)のふりかえりを行い、異常時の場面や運転行動に問題のある場面について客観的データ(例えば図3)を提示して評価検討を行う(ステップS2)。(3)客観評価結果を示したフィードバック・シートの提示を行う(ステップS3)。
【0010】
このように、シミュレータ訓練により客観的なデータを取得し、それに基づいて、効率的で、かつ確実な評価を行うことができるようにしている。
図2は本発明の実施例を示す鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置のブロック図である。
この図において、1は運転操作状況(ノッチ、ブレーキ)情報取得装置、2は地上側の状況(ATS照査速度)情報取得装置、3は車上側の状況(ATS動作、運転速度)情報取得装置、4は上記した運転操作状況情報取得装置1と地上側の状況情報取得装置2と車上側の状況(ATS動作、運転速度)情報取得装置3のそれぞれからの情報を記録する記録装置、5はその記録装置4のデータを分析して評価する評価装置であり、この評価装置5には提示装置5Aとフィードバック・シート印字装置5Bが接続されている。6は記録装置4及び評価装置5に接続される中央処理装置(CPU)である。
【0011】
図3は本発明の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置によって得られたある駅間の被験者の運転操作状況(ノッチ、ブレーキ)と地上側の状況(ATS照査速度)と車上側の状況(ATS動作、運転速度)を系統的に同時に示した図である。つまり、上記したステップS2のふりかえりで用いる、擬似体験によるシミュレータ訓練で得た客観的データ例を示している。
【0012】
この図3において、(a)はATS照査速度、(b)はATS動作、(c)はノッチ、(d)はブレーキ、(e)運転速度(km/h)をそれぞれ示している。
実線が被験者の通常運転(理想値または模範値でもよい)、点線が場内信号機の信号現示の急変が発生した場合の被験者の運転を示している。なお、ここでは、異常時の例として、信号現示の急変が起きた場合を示すが、他に信号機消灯などが挙げられる。
【0013】
ノッチは車のアクセルにあたり、offはアクセルを踏んでいない状況を表し、1~4の4段階で数字の大きい方がスピードが速くなる。
一方、ブレーキはoffがブレーキを踏んでいない状況を表し、ブレーキの大きさは1~8の8段階で数字が大きい方がブレーキの大きさは強くなる。さらに、8の延長上に緊急用の非常ブレーキがある。
【0014】
ATS(Automatic Train Stop)とは、列車が停止信号機に接近した際、地上からの制御信号により車上の運転室内に警報ベルを鳴らして運転士に注意を喚起したり、自動的にブレーキを動作させて列車を停止信号の手前で停止させる装置であり、通常の列車運転は運転士にまかせ、緊急時に運転士のブレーキ操作をバックアップするものである。
【0015】
一方、照査速度とは、列車速度が超過していないかチェックするときに用いる比較のための速度であり、ATC(Automatic Train Control)などで指示される許容速度が該当する。
ATS照査速度は、ATSを動作させる時の許容速度であり、図3では、Freeは制限がなく、75は75km/h制限を、45は45km/h制限を、25は25km/h制限を車上側に伝える。
【0016】
ATS動作は、制限速度内で運転していれば動作することはなくoffのままであるが、図3のようにATS照査速度が25km/hの地点で運転速度が25km/hを超えると、非常制動がかかる。この非常制動を解除するには、非常運転モードに手動で変更せざるを得ない。非常運転モードにすることで、ATS照査速度は一旦freeになり、しばらくして(例えば、信号機2つ分過ぎたところで操作して)通常運転モードに戻すことになる。
【0017】
図3におけるある駅間の被験者の運転操作状況(ノッチ、ブレーキ)と地上側の状況(ATS照査速度)と車上側の状況(ATS動作、運転速度)を見ると、Aの時点で信号現示が急変し、注意→警戒に変わりATS照査速度が25km/h制限となった。この信号現示変化に伴い、運転士がBの時点で誤ってノッチ投入を行うと、Cの時点で制限速度25kmを超過した。これにより、Dの時点でATSによる非常制動がかかったが、Eに示すように、ATSベル鳴動中にブレーキ操作をせず、Fの時点で非常運転が行われた。
【0018】
この結果、被験者による列車の運転速度は、図3(e)の点線のように推移したことが記録される。
このように、運転士(被験者)の運転訓練のために、運転士の客観的な行動指標(ノッチ操作、ブレーキ操作、指令との連絡等)と、車上・地上の設備の変化指標(ATS照査速度、ATS動作、信号現示等)を時系列に同時提示することにより、ふりかえりによる自己評価(自分の行動に対する認識)のさらなる評価(メタ認知)が客観的データに基づいて行われ、運転士自身の行動を意識させ、課題や問題点を納得しやすくすることができる。
【0019】
また、上記した時系列に同時提示されるデータはふりかえり時に、ベテランの運転士の評価を受け、その評価に基づいて更なる異常時対応能力向上を図ることができる。
したがって、鉄道の運転士の異常時対応能力向上に資する効果は著大である。
なお、上記実施例では、運転操作状況情報として、ノッチ、ブレーキを典型的な例として示したが、これに限定されるものではなく、他に、防護無線の発報など、列車の操作状態を示す各指標を運転操作状況情報として用いることができる。
【0020】
また、上記実施例では、地上側の状況情報として、ATS照査速度を典型的な例として示したが、これに限定されるものではなく、他に、地上信号機の現示や勾配等を挙げることができ、これら地上側設備の状態を示す指標を地上側の状況情報として用いることができる。
さらに、上記実施例では、車上側の状況情報として、ATS動作や運転速度を典型的な例として示したが、これに限定されるものではなく、これらの指標のような車両の状態を示すものを車上側の状況情報とすることができる。
【0021】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練方法及びその装置は、鉄道の運転士の異常時対応能力の向上に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練・評価の全体フローチャートである。
【図2】本発明の実施例を示す鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置のブロック図である。
【図3】本発明の鉄道の運転士の異常時対応能力向上用シミュレータ訓練装置によって得られたある駅間の被験者の運転操作状況(ノッチ、ブレーキ)と地上側の状況(ATS照査速度)と車上側の状況(ATS動作、運転速度)を系統的に同時に示した図である。
【符号の説明】
【0024】
1 運転操作状況(ノッチ、ブレーキ)情報取得装置
2 地上側の状況(ATS照査速度)情報取得装置
3 車上側の状況(ATS動作、運転速度)情報取得装置
4 記録装置
5 評価装置
6 中央処理装置(CPU)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2