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明細書 :表面が改質された真空材料とその表面改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3010214号 (P3010214)
登録日 平成11年12月10日(1999.12.10)
発行日 平成12年2月21日(2000.2.21)
発明の名称または考案の名称 表面が改質された真空材料とその表面改質方法
国際特許分類 C23C 14/06      
B01J  3/00      
F04B 37/16      
F04D 19/04      
F16C 33/12      
C22C  9/00      
FI C23C 14/06 L
B01J 3/00
F04B 37/16
F04D 19/04
F16C 33/12
C22C 9/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 3
出願番号 特願平10-350333 (P1998-350333)
出願日 平成10年12月9日(1998.12.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 平成10年9月28日-30日愛媛大学において開催された第123回日本金属学会秋季大会において発表
特許法第30条第1項適用申請有り 日本表面科学会第18回表面科学講演大会講演要旨集(平成10年12月1日)第70頁に発表
審査請求日 平成10年12月9日(1998.12.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390002901
【氏名又は名称】科学技術庁金属材料技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】土佐 正弘
【氏名】笠原 章
【氏名】吉原 一紘
審査官 【審査官】山田 靖
参考文献・文献 特開 平2-153065(JP,A)
真空第41巻第1号(平成10年1月25日)日本真空協会発行第1頁-第6頁
調査した分野 C23C 14/00 - 14/58
C23C 16/00
B01J 3/00
F04B 37/16
F04D 19/04
F16C 33/12
C22C 9/00
要約 【課題】 真空材料の真空中における摩擦特性を改善し、トライボロジー特性の向上を図る。
【解決手段】 真空材料の表面に、六方晶窒化ホウ素及び銅をスパッタ蒸着してこれらの混合膜を形成し、真空中における摩擦係数を低減させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
表面が六方晶窒化ホウ素と銅のスパッタ蒸着による混合膜で被覆され、真空中における摩擦係数が低減されていることを特徴とする表面が改質された真空材料。

【請求項2】
1×10-3Paよりも高度の真空度において、摩擦係数が0.2以下である請求項1記載の表面が改質された真空材料。

【請求項3】
真空材料の表面に、六方晶窒化ホウ素及び銅をスパッタ蒸着してこれらの混合膜を形成し、真空中における摩擦係数を低減させることを特徴とする真空材料の表面改質方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【01】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、表面が改質された真空材料とその表面改質方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、低いガス吸着性能をそのままに保持できる一方、真空中における摩擦特性が改善され、トライボロジー特性の向上を図ることのできる、ステンレス鋼や銅などの真空材料とそのための表面改質方法に関するものである。

【02】

【従来の技術とその課題】従来より、SUS304等のステンレス鋼や銅などは、真空下で使用される真空機器の構造部材、摺動部材等の真空材料として採用されている。これらの真空材料については、使用環境の真空度を保つために、表面からのガス放出を抑制することが課題の一つとしてあり、表面を被覆材料によって被覆するという試みが幾つかなされている。

【03】
たとえば、六方晶窒化ホウ素は、真空環境下においてガス吸着性能が低く、被覆材料の一候補として有望視されている。しかしながら、六方晶窒化ホウ素は、大気中では摩擦係数が低いものの、真空中において高い摩擦係数を示すことが明らかとなった。このような摩擦特性の低下は、真空材料、特に真空機器の摺動部材に採用される材料としては好ましくない。

【04】
この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、低いガス吸着性能をそのままに保持しつつ、トライボロジー特性の向上を図り、真空中における摩擦特性が改善された真空材料とそのための表面改質方法を提供することを目的としている。

【05】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、表面が六方晶窒化ホウ素と銅のスパッタ蒸着による混合膜で被覆され、真空中における摩擦係数が低減されていることを特徴とする表面が改質された真空材料(請求項1)を提供する。

【06】
この出願の発明における表面が改質された真空材料は、1×10-3Paよりも高度の真空度において、摩擦係数が0.2 以下であること(請求項2)を好ましい態様として包含する。またこの出願の発明は、真空材料の表面に、六方晶窒化ホウ素及び銅をスパッタ蒸着してこれらの混合膜を形成し、真空中における摩擦係数を低減させることを特徴とする真空材料の表面改質方法(請求項3)を提供するものでもある。

【07】
以下、実施例を示しつつ、この出願の発明の表面が改質された真空材料とその表面改質方法についてさらに詳しく説明する。

【08】

【発明の実施の形態】この出願の発明においては、真空材料の表面に、六方晶窒化ホウ素及び銅をスパッタ蒸着してこれらの混合膜を形成し、真空中における摩擦係数を低減させる。六方晶窒化ホウ素は、低いガス吸着性能を有しているが、前述の通り、大気中では低い摩擦係数を示すものの、真空中の摩擦係数は大きく、真空材料の被覆材料としては採用し難しいものであった。

【09】
しかしながら、六方晶窒化ホウ素を銅とともに、スパッタ蒸着した混合膜は、真空中での摩擦係数の上昇が抑制され、しかも六方晶窒化ホウ素が固有的に有する低いガス吸着性能を損なうことなく発揮する。摩擦係数は、たとえば1×10-3Paよりも高度の真空度において0.2 以下、さらには0.15以下ともなる。また、この混合膜は、スパッタ蒸着されることにより、SUS304等のステンレス鋼や銅などの真空材料の表面に良好に密着する。高周波スパッタ蒸着により混合膜を形成させる時には、密着性に特に優れる。

【10】
したがって、六方晶窒化ホウ素及び銅をスパッタ蒸着し、混合膜として表面に形成した真空材料は、真空下においてガス吸着性能に優れるばかりでなく、トライポロジー特性に優れ、真空機器の構造部材、摺動部材等に採用され得る。このような六方晶窒化ホウ素及び銅の混合膜については、スパッタ蒸着する際のターゲットの形態に特に制限はない。たとえば、六方晶窒化ホウ素と銅の混合ターゲットを採用したり、個別としたターゲットを用いることもできる。

【11】
また、混合膜を表面にスパッタ蒸着した後に熱処理を行い、混合膜の安定化を図ることもできる。熱処理によって真空中における摩擦特性に変化は生じることはない。次に実施例を示す。

【12】

【実施例】(実施例1及び2)高周波スパッタ蒸着装置において、銅ターゲット上に面積比20%の六方晶窒化ホウ素を配置し、鏡面に研磨したSUS304ステンレス鋼表面に六方晶窒化ホウ素及び銅の混合膜を高周波スパッタ蒸着した(実施例1)。この時の蒸着条件は、以下の通りとした。

【13】

・スパッタ用アルゴンガス圧:0.4Pa
・投入高周波電力: 100W
・蒸着速度: 1.57nm/sec
・基板温度(雰囲気温度): 300K(室温)
また、混合膜形成後に 500℃で15分間熱処理した(実施例2)。これら2つの試料について、真空度を変化させながら、50gfの印加荷重において 1/8インチ径のSUS304ステンレス鋼圧子を用いて摩擦抵抗力の測定を行った。その結果を、真空度及び摩擦係数の関係として示したのが図1の相関図である。図1において、白抜きの丸印は未熱処理の試料(実施例1)を、また、白抜きの三角印は熱処理後の試料(実施例2)を示している。

【14】
この図1から明らかなように、実施例1及び実施例2いずれの試料についても、真空下において良好な摩擦特性を発揮する。六方晶窒化ホウ素のみの場合に現れる真空中での高い摩擦係数は認められない。また、実施例1及び実施例2の比較では、大気圧(105Pa )付近の摩擦係数は、熱処理を行わない実施例1の試料の方が熱処理を行った実施例2の試料よりも優れる。一方、高真空度になると、両者の間に顕著な差は現れず、ともに低い摩擦係数を示す。熱処理による真空中での摩擦特性の低下は認められない。

【15】
また、走査型オージェ電子分光分析器(AES)により表面組成の分析を行った。後述する比較例2の銅のみの表面に比べ、炭素系及び酸素系の吸着量はおよそ1/4であり、優れた低いガス吸着性能を有することも確認された。
(比較例1及び2)比較として、六方晶窒化ホウ素(比較例1)及び銅(比較例2)について実施例1及び実施例2と同様の摩擦抵抗力測定を行った。その結果が図2に示した相関図である。図2図中の白抜きの四角印は六方晶窒化ホウ素(比較例1)を、また、黒塗りの四角印は銅(比較例2)を示している。

【16】
この図2から明らかなように、比較例1の六方晶窒化ホウ素の場合には、大気圧下では小さな摩擦係数を示すが、真空度が高くなるにつれ摩擦係数は大きくなり、摩擦特性の低下が見られる。一方、比較例2の銅の場合は、真空度の上昇にともなって摩擦係数が低くなる傾向が認められるが、真空中での摩擦係数は、実施例1及び実施例2に例示した六方晶窒化ホウ素及び銅の混合膜に比較して劣っている。

【17】
もちろんこの出願の発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。真空材料の種類をはじめ、混合膜のスパッタ蒸着条件、熱処理条件等の細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。

【18】

【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、真空中における真空材料の摩擦特性が改善され、トライボロジー特性の向上が図られる。真空下で使用される真空機器の構造部材、摺動部材等の特性改善が見込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1