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明細書 :併結車両の動揺低減方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4927698号 (P4927698)
公開番号 特開2009-154726 (P2009-154726A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年5月9日(2012.5.9)
公開日 平成21年7月16日(2009.7.16)
発明の名称または考案の名称 併結車両の動揺低減方法及びその装置
国際特許分類 B61D  17/02        (2006.01)
FI B61D 17/02
請求項の数または発明の数 14
全頁数 8
出願番号 特願2007-335428 (P2007-335428)
出願日 平成19年12月27日(2007.12.27)
審査請求日 平成22年3月10日(2010.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中出 孝次
【氏名】鈴木 昌弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】小岩 智明
参考文献・文献 特開2003-300463(JP,A)
特開平10-066202(JP,A)
特開平04-090960(JP,A)
特開2002-211390(JP,A)
調査した分野 B61D 17/02,27/00,49/00
B61F 3/14, 5/24
特許請求の範囲 【請求項1】
併結車両の併結部前方の後尾車両の屋根上に噴流開口部を設け、制御手段により制御した噴流を前記噴流開口部より発生させ、該噴流により前記併結車両の併結部前方の後尾車両から発生する空気の乱れを制御することによって、前記併結車両の併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力を減少させるようにしたことを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項2】
請求項1記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部は前記併結車両の併結部前方の後尾車両の幅方向に複数個配置することを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部は前記併結車両の併結部前方の後尾車両の後尾に近い後尾部に配置することを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の方向を調整可能にすることを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の量を調整可能にすることを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項6】
請求項1、2又は3記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の方向および量を調整可能にすることを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項7】
請求項1、2又は3記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部より前方の車体表面に圧力センサーを配置し、該圧力センサーの出力値に基づいて、前記制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項8】
請求項1、2又は3記載の併結車両の動揺低減方法において、前記後尾車両に振動センサーを配置し、該振動センサーの出力値に基づいて、前記制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする併結車両の動揺低減方法。
【請求項9】
(a)併結車両の併結部前方の後尾車両の屋根上に形成される噴流開口部と、
(b)前記併結車両の併結部前方の後尾車両に搭載される圧縮空気タンクと、
(c)前記噴流開口部から吹き出す噴流の制御手段を具備することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
【請求項10】
請求項9記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流の制御手段が、前記噴流開口部からの噴流の方向を制御する噴流の方向制御装置を具備することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
【請求項11】
請求項10記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流の制御手段が、前記圧縮空気タンクと前記噴流開口部との間に配置される前記噴流開口部からの噴流の量を制御する噴流の量の制御装置を具備することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
【請求項12】
請求項9、10又は11記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流開口部を前記併結車両の併結部前方の後尾車両の後尾に近い後尾部に配置することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
【請求項13】
請求項9、10又は11記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流開口部より前方の車体表面に圧力センサーを備え、該圧力センサーの出力値に基づいて、前記噴流の制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
【請求項14】
請求項9、10又は11記載の併結車両の動揺低減装置において、前記後尾車両に振動センサーを備え、該振動センサーの出力値に基づいて、前記噴流の制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする併結車両の動揺低減装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が併結して走行する場合の車両の併結箇所における気流の乱れによる車両動揺を低減させる併結車両の動揺低減方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、秋田新幹線「こまち」と東北新幹線「はやて」(又は「やまびこ」)など、鉄道車両が併結して走行する際、空気力を原因とする車両動揺を低減することが必要である。
従来、列車まわりの空気の流れの数値シミュレーションの研究(下記非特許文献1参照)が行われ、車両の揺れを低減させる提案がなされている。
また、空気抵抗軽減のために噴流を利用しようとする提案がなされている(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
更に、鉄道車両の中間車両を想定した、車両側面に成長する渦を崩壊させるための噴流利用の提案もなされている(下記特許文献3参照)。

【特許文献1】特開昭57-007755号公報
【特許文献2】特開昭57-018556号公報
【特許文献3】特開2005-205947号公報
【非特許文献1】「列車まわりの流れの数値シミュレーション」(第2報,後尾車両に加わる非定常空気力),鈴木昌弘,新井紀夫,前田達夫,日本機械学会論文集(B編),62巻,595号(1996-3),pp.229-235
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
併結車両が高速で走行するときには、併結部前方の後尾車両により発生する空気の乱れにより併結部後方の先頭車両に大きな変動空気力が生じ、車両動揺が大きくなる。車両動揺低減に用いられる従来の方法(車両振動の制御技術)では、変動空気力が大きい時には制振性能に限界が見られ、乗り心地が悪化する場合がある。
これまで、鉄道車両が併結走行する際に生じる車両動揺について、上記車両の振動制御方法(セミアクティブサスペンションなど)以外に、流れの制御による低減方法はないのが現状である。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、併結車両において、併結部前方の後尾車両から発生する空気の乱れを噴流により制御することによって、併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力そのものを減少させることができる併結車両の動揺低減方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕併結車両の動揺低減方法において、併結車両の併結部前方の後尾車両の屋根上に噴流開口部を設け、制御手段により制御した噴流を前記噴流開口部より発生させ、この噴流により前記併結車両の併結部前方の後尾車両から発生する空気の乱れを制御することによって、前記併結車両の併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力を減少させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部は前記併結車両の併結部前方の後尾車両の幅方向に複数個配置することを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部は前記併結車両の併結部前方の後尾車両の後尾に近い後尾部に配置することを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の方向を調整可能にすることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の量を調整可能にすることを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部からの噴流の方向および量を調整可能にすることを特徴とする。
【0009】
〔7〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記噴流開口部より前方の車体表面に圧力センサーを配置し、この圧力センサーの出力値に基づいて、前記制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の併結車両の動揺低減方法において、前記後尾車両に振動センサーを配置し、この振動センサーの出力値に基づいて、前記制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする。
【0010】
〔9〕併結車両の動揺低減装置において、併結車両の併結部前方の後尾車両の屋根上に形成される噴流開口部と、前記併結車両の併結部前方の後尾車両に搭載される圧縮空気タンクと、前記噴流開口部から吹き出す噴流の制御手段を具備することを特徴とする。
〔10〕上記〔9〕記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流の制御手段が、前記噴流開口部からの噴流の方向を制御する噴流の方向制御装置を具備することを特徴とする。
【0011】
〔11〕上記〔10〕記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流の制御手段が、前記圧縮空気タンクと前記噴流開口部との間に配置される前記噴流開口部からの噴流の量を制御する噴流の量の制御装置を具備することを特徴とする。
〔12〕上記〔9〕、〔10〕又は〔11〕記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流開口部を前記併結車両の併結部前方の後尾車両の後尾に近い後尾部に配置することを特徴とする。
【0012】
〔13〕上記〔9〕、〔10〕又は〔11〕記載の併結車両の動揺低減装置において、前記噴流開口部より前方の車体表面に圧力センサーを備え、この圧力センサーの出力値に基づいて、前記噴流の制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする。
〔14〕上記〔9〕、〔10〕又は〔11〕記載の併結車両の動揺低減装置において、前記後尾車両に振動センサーを備え、この振動センサーの出力値に基づいて、前記噴流の制御手段により噴流の周期を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)併結車両の併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力を効果的に減少させることができる。
(2)簡単な構成で、乗り心地のよい併結車両を構成することができる。
(3)明かり区間で突起物による車両形状変更を行うと空力騒音の問題が生じるが、噴流による方法ではその問題が生じない。また、簡単に噴流をOFFにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の併結車両の動揺低減方法は、併結車両の併結部前方の後尾車両の屋根上に噴流開口部を設け、制御手段により制御した噴流を前記噴流開口部より発生させ、この噴流により前記併結車両の併結部前方の後尾車両から発生する空気の乱れを制御することによって、前記併結車両の併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力を減少させるようにした。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す併結車両の動揺低減装置を備えた併結車両の側面図、図2はその上面図、図3は本発明の実施例を示す併結車両の動揺低減装置の概略構成図、図4はその噴流開口部の制御装置の構成図である。
これらの図において、1は併結車両、2は併結車両1の併結部前方の後尾車両、3はその後尾車両2の後尾部、4はその後尾車両2の後尾部3に配置される噴流開口部、4Aは後尾車両2の後尾部3の噴流開口部4より前方の車両側面に配置される圧力センサー、4Bは後尾車両2に配置される振動センサー、5は噴流、6は車輪、7はレール、8は併結車両1の併結部後方の先頭車両、9はその先頭車両8の先頭部、10は連結部材である。
【0016】
ここで、噴流開口部4は併結車両1の併結部前方の後尾車両2の後尾部3の幅方向に複数個配置する(ここでは、5個配置された例を示している)。なお、車両の幅方向に長い噴流開口部を1個だけ配置するようにしてもよい。
また、図1及び図2に示すように、噴流開口部4は併結車両1の併結部前方の後尾車両2の後尾に近い後尾部3に配置する。
【0017】
さらに、図3に示すように、噴流開口部4から吹き出す噴流5は圧縮空気タンクTからの噴流を調整する制御装置11によって制御されるようになっている。その具体的制御機構は、図4に示す通りである。制御装置11は噴流の量を制御する流量制御装置12(制御バルブを有する)と支持部13上に配置され噴流開口部4から吹き出す噴流の方向を制御する噴流の方向(向き)の制御装置14とを備えており、その流量制御装置12と噴流の方向(向き)の制御装置14は制御部15によって制御されるようになっている。なお、噴流の方向(向き)の制御装置14は、例えば支持部13上にシールされたユニバーサル制御装置14Aからなり、このユニバーサル制御装置14Aが噴流開口部4の向きを個別に調整するように構成されている。
【0018】
また、本実施例では、噴流5を噴出させる周期を、併結車両1の併結部前方の後尾車両2に配置される圧力センサー4Aからの出力信号に基づいて流量制御装置12により制御するようにしている。例えば、ある周波数(1Hz~3Hz)に同期させた周期的な噴流を発生させるようにすることができる。なお、圧力センサー4Aは併結車両1の振動を惹起させる併結部前方の後尾車両2に発生する空気の乱れを的確に計測するために噴流開口部4の前方に配置することが望ましい。
【0019】
更に、併結車両1の併結部前方の後尾車両2に振動センサー4Bを配置し、この振動センサー4Bによる車体振動の測定値を用いることで噴流5を噴出させる周期を調整するようにしてもよい。
このように構成することにより、連続的な噴流によるエネルギーの浪費を抑えて、省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
このように、本発明の併結車両の動揺低減装置によって得られる噴流は
(1)噴流の量を制御することができる。噴流を必要としない区間では、噴流の量を最大限に絞ってOFFにすることもできる。更に、併結部前方の後尾車両に配置される圧力センサーや振動センサーを利用して、噴流の周期を制御するようにしてもよい。
(2)噴流の方向(向き)を制御することができる。図2に示すように、複数の噴流開口部4を配置する場合には、それぞれの噴流開口部4を個別に制御するようにしてもよい。
【0021】
(3)上記(1)及び(2)を組み合わせて噴流の量及び噴流の方向(向き)を効果的に制御することができる。
このように、本発明の併結車両の動揺低減装置によって得られる噴流はその噴流の量と方向(向き)を効果的に制御することができ、併結車両の併結部後方の先頭車両に生じる変動空気力を低減するのに最適な噴流を設定することができる。
【0022】
実際に、1/33スケールでトンネル内に2両+2両の併結車両を編成し、風速10m/s、噴流(ジェット)供給圧5気圧で風洞実験を行った。
図5は本発明の併結車両の動揺低減装置を用いた実験による併結車両の併結部後方の先頭車両の変動空気力のヨーイングモーメントのPSD〔(振動などの)パワースペクトル密度〕を示す図であり、横軸は周波数(Hz)、縦軸はPSDを示している。ここで、実線は従来の車両で噴流(ジェット)なしの場合、点線は本発明の噴流(ジェット)ありの場合を示しており、噴流(ジェット)により、併結車両の併結部後方の先頭車両の変動空気力が低減することが分かる。
【0023】
また、上記実施例では、車両の上面部に噴流開口部を配置したが、更に側面部にまで拡張して噴流開口部を配置するようにしてもよい。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の併結車両の動揺低減方法及びその装置は、併結車両の乗り心地を向上させることができる併結車両の動揺低減方法及びその装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す併結車両の動揺低減装置を備えた併結車両の側面図である。
【図2】本発明の実施例を示す併結車両の動揺低減装置を備えた併結車両の上面図である。
【図3】本発明の実施例を示す動揺低減装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施例を示す動揺低減装置の噴流開口部の制御装置の構成図である。
【図5】本発明の併結車両の動揺低減装置を用いた実験による併結車両の併結部後方の先頭車両の変動空気力のヨーイングモーメントのPSDを示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 併結車両
2 併結車両の併結部前方の後尾車両
3 併結車両の併結部前方の後尾車両の後尾部
4 噴流開口部
4A 圧力センサー
4B 振動センサー
5 噴流
6 車輪
7 レール
8 併結車両の併結部後方の先頭車両
9 併結車両の併結部後方の先頭車両の先頭部
10 連結部材
11 制御装置
12 流量制御装置
13 支持部
14 噴流の方向(向き)の制御装置
14A ユニバーサル制御装置
15 制御部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4