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明細書 :鉄道車両の脱線可能性推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4980867号 (P4980867)
公開番号 特開2009-146038 (P2009-146038A)
登録日 平成24年4月27日(2012.4.27)
発行日 平成24年7月18日(2012.7.18)
公開日 平成21年7月2日(2009.7.2)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両の脱線可能性推定方法
国際特許分類 G06F  19/00        (2011.01)
B61L  23/00        (2006.01)
G06Q  50/30        (2012.01)
FI G06F 19/00 110
B61L 23/00 E
G06F 17/60 112G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2007-320843 (P2007-320843)
出願日 平成19年12月12日(2007.12.12)
審査請求日 平成22年3月11日(2010.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】宮本 岳史
【氏名】野上 雄太
【氏名】室野 剛隆
【氏名】石田 弘明
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
【識別番号】100123696、【弁理士】、【氏名又は名称】稲田 弘明
審査官 【審査官】小島 哲次
参考文献・文献 特開2005-351742(JP,A)
特開平11-140806(JP,A)
特開平11-264112(JP,A)
調査した分野 G06Q 10/00~50/34
G06M 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
地震波による鉄道車両の脱線可能性推定方法であって、
前記地震波を複数の単位波に分解し、
前記複数の単位波のそれぞれについて限界振幅の異なった複数の加振条件における限界振幅と比較することによって点数付けを行い、
前記点数を前記複数の単位波について加算した和に基づいて脱線可能性を推定するとともに、前記限界振幅は、前記単位波の周波数に応じて異なった値が設定されることを特徴とする鉄道車両の脱線可能性推定方法。
【請求項2】
前記複数の単位波の点数付けは、前記複数の加振条件における限界振幅にそれぞれ設定された点数を、点数付けの対象となる単位波の振幅に応じて傾斜配分して行うことを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の脱線可能性推定方法。
【請求項3】
前記複数の加振条件のうち最も限界振幅が大きい加振条件は、限界振幅時に1波で車両を脱線させるものであることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両の脱線可能性推定方法。
【請求項4】
地震波による鉄道車両の脱線可能性推定方法であって、
間隔fint毎に設定され、限界振幅に関するデータと関連付けられた加振周波数をfRSL
安全余裕が異なった複数の加振条件における限界振幅を、この限界振幅が大きい順にD(fRSL),D(fRSL),・・DfRSL)、
前記限界振幅D(fRSL),D(fRSL),・・D(fRSL)にそれぞれ設定された点数をP,P,・・P
地震波を分解して得た単位波のうちi番目の単位波の周波数、振幅をそれぞれf、xとしたときに、
加振周波数fRSL毎に、fRSL+fint/2>f>fRSL-fint/2の範囲に含まれる単位波の振幅xに基づいて、以下に示す脱線評価指標λを求め、
【数1】
JP0004980867B2_000011t.gif

求められた脱線評価指標λを脱線可能性の推定対象となる地震波の全波、及び、加振周波数全域にわたって足し合わせた和を所定の閾値と比較することによって脱線可能性を推定することを特徴とする鉄道車両の脱線可能性推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地震による鉄道車両の脱線可能性推定方法に関し、地震波から簡易かつ精度よく脱線可能性を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震によって鉄道車両が脱線する可能性を評価するため、地震時の車両挙動を解析することの出来るシミュレーションプログラムを用いることが知られている。このようなシミュレーションプログラムは、これまでに実物大の車両を用いた振動台実験等によって解析の妥当性を検証されている。
【0003】
また、こうしたシミュレーション解析によって、正弦波や地震時のようなランダム波で振動する軌道上を走行する車両の挙動を解析、分類し、車両の走行安全限界線図を得ることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
これらの結果は、鉄道構造物の設計等に活用されている。
【0004】
また、従来、地震波中における振動加速度あるいは振動速度の最大値に基づいて、例えば橋梁や高架橋等の鉄道構造物の地震被害ランクを推定することが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。

【非特許文献1】宮本岳史著「車両運動シミュレーション解析による走行安全限界の設定」、鉄道総合技術研究所刊“鉄道構造物等設計標準・同解説変位制限性能照査の手引き”、2006年8月、p.129—132
【非特許文献2】室野剛隆、芦谷公稔著「早期被害予測のための鉄道構造物ランク推定手法の開発」鉄道総合技術研究所刊 “鉄道総研報告Vol.16,No.8”、2002年8月、p.7—12
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐震技術開発、耐震に有効な施策選定あるいは危険箇所抽出等を目的として、所与の地震波に対する鉄道車両の脱線可能性を推定することが求められている。ここで、上述した構造物の被害推定と同様に、地震動の最大加速度や最大速度に基づいて脱線可能性を推定することも考えられるが、この場合脱線する可能性があるにも関わらず検出されない確率(脱線を見過ごす確立)である非超過確率を十分に高めようとすると、脱線可能性がないにも関わらず脱線可能性ありと推定される確率(誤判定率)が高くなってしまい、精度の面で問題がある。
これに対し、上述したようなコンピュータシミュレーションによって脱線可能性を推定すれば、推定精度は高めることができるが、膨大な演算が必要となることから、大規模なコンピュータハードウェアを長時間占有することとなり煩雑である。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、地震動に対して鉄道車両が脱線する可能性を簡易かつ精度よく評価できる脱線可能性推定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、地震波による鉄道車両の脱線可能性推定方法であって、前記地震波を複数の単位波に分解し、前記複数の単位波のそれぞれについて限界振幅の異なった複数の加振条件における限界振幅と比較することによって点数付けを行い、前記点数を前記複数の単位波について加算した和に基づいて脱線可能性を推定するとともに、前記限界振幅は、前記単位波の周波数に応じて異なった値が設定されることを特徴とする。
例えば、加算した和(評価指標)を、所定の閾値と比較することによって脱線可能性を推定することができる。
【0008】
ここで、典型的には地震波を分解して得られる複数の単位波とは、振動速度がゼロとなる箇所で地震波を区切ることによって得た半波である。
また、限界振幅の異なった複数の加振条件は、安全余裕の異なった例えば3つ程度の加振条件を含み、例えば、(1)横揺れ正弦波1波、(2)横揺れ正弦波複数波、(3)縦揺れ正弦波複数波、といった組み合わせとすることができる。
本発明によれば、軽い演算負荷によって鉄道車両の脱線可能性を精度よく推定することができる。
【0009】
本発明において、前記複数の単位波の点数付けは、前記複数の加振条件における限界振幅にそれぞれ設定された点数を、点数付けの対象となる単位波の振幅に応じて傾斜配分して行うことができる。
これによれば、簡単な計算によって複数の限界振幅間に位置づけられる振幅の単位波に対して、適切な点数付けを行うことができる。
【0010】
また、本発明において、前記複数の加振条件のうち最も限界振幅が大きい加振条件は、限界振幅時に1波で車両を脱線させるものである構成とすることができる。
これによれば、このような最大の限界振幅を下回る振幅の単位波(単独では車両を脱線させないが複合されることによって脱線リスクを生じさせる単位波)に対して、複数の限界振幅を用いた傾斜配分によって精度よく点数付けを行うことができ、脱線可能性の推定精度を高めることができる。
【0011】
また、本発明は、地震波による鉄道車両の脱線可能性推定方法であって、間隔fint毎に設定され、限界振幅に関するデータと関連付けられた加振周波数をfRSL、安全余裕が異なった複数の加振条件における限界振幅を、この限界振幅が大きい順にD(fRSL),D(fRSL),・・D(fRSL)、前記限界振幅D(fRSL),D(fRSL),・・D(fRSL)にそれぞれ設定された点数をP,P,・・P、地震波を分解して得た単位波のうちi番目の単位波の周波数、振幅をそれぞれf、xとしたときに、加振周波数fRSL毎に、fRSL+fint/2>f>fRSL-fint/2の範囲に含まれる単位波の振幅xに基づいて、以下に示す脱線評価指標λを求め、
【数2】
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求められた脱線評価指標λを脱線可能性の推定対象となる地震波の全波、及び、加振周波数全域にわたって足し合わせた和を所定の閾値と比較することによって脱線可能性を推定する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、地震波を分解して得た単位波の振幅を、安全余裕が異なった(限界振幅が異なった)複数の加振条件における限界振幅と比較して点数付け(重み付け)し、点数(重み)を加算した和を所定の閾値と比較することによって、地震動に対して鉄道車両が脱線する可能性を簡易かつ精度よく評価できる脱線可能性推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を適用した鉄道車両の脱線可能性推定方法の実施の形態について説明する。
先ず、本実施形態の脱線可能性推定方法において用いる走行安全限界線図について説明する。
図1は、正弦波振動に対する走行安全限界線図である。図1において、横軸は加振周波数を示し、縦軸は安全限界振幅(脱線しない最大の加振振幅)を示している。この安全限界振幅は、本発明にいう限界振幅として機能する。
【0014】
ここでは、一般化した入力振動として正弦波振動を用い、一定振幅で例えば5波の左右変位等をレール支持部に入力して、1回のシミュレーション計算を実行する。1つの加振周波数に対して、加振振幅を逐次大きくしながらシミュレーション計算を繰り返し実行し、安全限界超過の有無を判別する。そして、各加振周波数における脱線しない最大の加振振幅(Safety limit amplitude)として、図1に示す正弦波振動に対する走行安全限界線図が求められる。
【0015】
ここでは、変位制限標準で使用した新幹線車両モデルが直線軌道を速度300km/hで走行する場合について、入力振動と安全限界の判定指標として、(1)正弦波5波、車輪/レール相対左右変位70mmの評価指標に加えて、(2)正弦波1波、車輪/レール相対左右変位70mm、(3)正弦波5波、車輪上昇量10mmの評価指標も用いて、3種類の走行安全限界線を求めた。
図1において、(1)5波左右変位のデータを太実線、(2)1波左右変位のデータを破線、(3)5波上下変位のデータを細実線によりそれぞれ図示している。
【0016】
次に、脱線可能性の推定対象となる地震動の振動成分分解について説明する。
本実施の形態においては、入力する地震動の加速度波形状態で、0.1~10Hzのバンドパスフィルタにより波形整形したものを用い、その後に積分して求めた絶対変位波形を用いる。車両運動シミュレーション入力波は、この絶対変位波形を基本としている。
【0017】
図2は、本実施の形態における振動成分分解例を示すグラフである。図2において、横軸は時間を示し、縦軸は変位を示している。
入力振動の振動成分は、図2に示すように、半波毎に分解する。分解方法は、変位が正方向から負方向あるいは負方向から正方向へ折り返すとき、式1に示す速度ゼロのときの変位と時間を抽出する。
【数3】
JP0004980867B2_000003t.gif
そして、抽出された時間の間、すなわち1半山波形毎に番号札iをつけ、振動半波の片振幅x=d/2、及び、周波数f=1/2Tを、全入力振動にわたって調べる。これによって求めた振動成分に基づいて、以下説明する脱線評価指標を求める。
【0018】
次に、脱線評価指標の求め方について説明する。
脱線評価指標は、図1に示した走行安全限界線図を目安として求める。走行安全限界振幅は、加振周波数0.3~3.0Hzまで0.1Hz毎に加振周波数fRSL、正弦波1波、車輪/レール相対左右変位70mmの場合DL1(fRSL)、正弦波5波、車輪/レール相対変位70mmの場合DL5(fRSL)、D(fRSL)として求める。
この脱線評価指標は、単位波である半波毎にそれぞれ与えられる、本発明にいう点数である。
【0019】
上述した入力地震動に含まれるn個の振動半波のうち、i番目の振動成分(周波数f、振幅x)について、走行安全限界振幅を求めた際の加振周波数fRSL毎に、
RSL+0.05>f>fRSL-0.05
の範囲に含まれる振動の振幅xに基づいて、以下に示す脱線評価指標λを求める。
【0020】
xi≧DL1(fRSL)のとき、脱線評価指標は、以下の式2によって表される。
【数4】
JP0004980867B2_000004t.gif

【0021】
また、DL1(fRSL)>xi≧DL5(fRSL)のとき、脱線評価指標は、以下の式3によって表される。
【数5】
JP0004980867B2_000005t.gif

【0022】
また、DL5(fRSL)>xi≧D(fRSL)のとき、脱線評価指標は、以下の式4によって表される。
【数6】
JP0004980867B2_000006t.gif

【0023】
また、D(fRSL)≧xのとき、脱線評価指標は、以下の式5によって表される。
【数7】
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【0024】
なお、1つの振動周波数fRSLに対して、複数の波がカウントされることがある。この場合、下記の式6に示すように、その波全ての脱線評価指標の和λをとる。
【数8】
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【0025】
本実施の形態における脱線評価指標λは、上述したλaを、下記の式7に示すように、加振周波数全域にわたって足し合わせることによって求められる。
【数9】
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【0026】
この地震動評価法の意図するところは、正弦波1波の走行安全限界振幅DL1と同じ振動が1波入力されたならば、脱線危険性は十分にあり、このときの脱線評価指標を5.0とする。正弦波1波の走行安全限界DL1を超えた振動が入力されたときには、式2を用いて脱線評価指標を5.0以上とする。式2において計算される脱線評価指標λは、脱線限界振幅で正規化した入力振動振幅に対して線形1次に大きくなるように傾斜配分したものとした。
【0027】
入力振動1波毎から求めた脱線危険性は、加振周波数毎に安全限界付近の振動が繰り返されることで脱線の可能性が高まると考えて、式6で和をとり、複数の周波数に安全限界付近の振幅を含んだ入力振動の場合にも脱線の可能性が高まると考え、式7で和をとり、その結果得られる脱線評価指標の和λをもって入力振動を評価することとする。
【0028】
すなわち、脱線評価指標の和λに基づいて、以下の通り脱線可能性を評価することができると考えられる。
(1)5.0以上ならば、左右振動により脱線する可能性が十分にある。
(2)5.0未満1.0以上ならば、左右振動により脱線する可能性がある。
(3)1.0未満0.0より大きければ、左右振動により車輪踏面はレールから離れて上昇する可能性が十分にある。左右振動以外の他の要因が加わることで脱線する可能性がある。
(4)0.0ならば左右振動があっても脱線しない。
【0029】
次に、実際に発生した地震である兵庫県南部地震波と釧路沖地震波を用いて、地表面における最大加速度50~1000Galに調節した地震動に対する固有周期(0.6,1.0、2.0秒)と降伏震度(0.4,0.8)の構造物天端での応答波を求めた。構造物天端での絶対変位波形をスラブ軌道の振動変位として車両に入力した。地震波の総数は2856波であり、今回は車両の挙動に大きな影響を及ぼす水平方向の振動成分のみを扱い、全ての振動は車両進行方向に対して直角方向(左右方向)に入力する。
【0030】
図1に示した走行安全限界線図を求めたのと同じシミュレーションプログラムにより、これらの地震波に対する車両運動の時間歴解析を実行した。その結果から、車輪・レール相対左右変位が70mmに達して脱線した場合(×)、脱線はしなかったが車輪上昇量最大値が10mm以上、30mm未満の場合(△)、脱線はしなかったが車輪上昇量最大値が30mm以上の場合(▲)、脱線せず車輪上昇量最大値が10mm未満の場合(○)と分類した。なお、車輪上昇量30mmは、車輪フランジ高さに相当する。全ての入力地震波について、卓越周波数を横軸に示し、加速度最大値を縦軸に示した時刻歴解析結果を図3、図4に示す。ここで、図3は兵庫県南部地震、図4は釧路沖地震の解析結果をそれぞれ示している。なお、地震動の卓越周波数fは、加速度最大値Amaxと、速度最大値Vmaxから、
=1/T,T=2π(Vmax/Amax
により求めている。
【0031】
入力地震動として、兵庫県南部地震よりも釧路沖地震の場合のほうが高い加振周波数範囲の入力地震動を扱っているものの、いずれの場合も構造物の応答波としては、卓越周波数0.3~2.3Hz程度の範囲の振動となっている。地震動は地表面で最大1000Galまでの大きな地震動にも関わらず、ピーク周波数1.3Hz付近より高い周波数では脱線が発生していない。これは車両の走行安全限界は1.3Hzよりも高い加振周波数では安全限界加速度は1000Galを超えて車両は脱線しにくくなることを表している。
図3及び図4から、従来知られていたように、加速度最大値の閾値を4000Gal程度に設定して脱線を判別しようとすると、高い加振周波数の脱線を引き起こさない地震動までも含まれてしまうことがわかる。
【0032】
以上説明した脱線評価指標(提案指標)を適用して供試地震波を評価した結果を図5、6及び表1に示す。
【表1】
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【0033】
図5は、釧路沖地震における地震動の振動加速度最大値、変位最大値と、評価指標の和(評価指標値)との関係を示すグラフである。
図6は、釧路沖地震における地震動の振動速度最大値、変位最大値と、評価指標の和(評価指標値)との関係を示すグラフである。
表1は、提案指標の閾値を設定したとき、入力地震波に対する時刻歴解析結果の脱線(×)ケースを検出する非超過確率と閾値の超過件数を示し、また閾値超過件数中に含まれる時刻歴解析結果で脱線しなかった(▲△○)ケースを含む誤判定率と、車輪上昇量が30mm以上(▲)を除いて脱線しなかった(△○)ケースを含む誤判定率IIを示した。表1には、比較として地震動の加速度最大値、速度最大値、変位最大値を判定指標としたときの各非超過確率を得る閾値と、そのときの2種の誤判定率などを示した。
【0034】
図7は、本実施の形態に係る評価指標の閾値を超えた件数に含まれる時刻歴解析結果(×▲△○)の割合を示すグラフである。
図8は、従来技術に係る地震動の振動加速度最大値、速度最大値、変位最大値を指標として閾値を設定したときの時刻歴解析結果(×▲△○)の割合を示すグラフである。
【0035】
表1から2種の地震動に対して本実施の形態の脱線評価指標を用いると、脱線を確実(非超過確率100%)に検出する閾値3.5に設定することで、誤判定率30%程度となる。また、非超過確立を90%と設定するならば、誤判定率は20%以下となる。また、概ね振動加速度130kine以上、振動変位290mm以上で脱線が発生することがわかる。
【0036】
従来技術のように、地震動の振動速度最大値を用いて非超過確立90%を設定する場合にも、ほぼ同様の結果が得られるが、高精度(非超過確立100%)に脱線を検出するためには、誤判定率が40%程度まで増加する。
【0037】
一方、振動加速度最大値、変位最大値の場合には、非超過確立90%の場合でも誤判定率が50%程度あり、検出精度が低い。また、参考までに表1中の車輪上昇量30mm以上で脱線しなかったデータ(黒三角(▲)で図示)を誤判定率から除いた誤判定率2においては、提案指標は概ね10%以下の良好な結果を示している。
【0038】
以上説明したように、上述した実施の形態によれば、2種の水平方向の地震動が直線走行中の鉄道車両に左右振動として入力されるときは、非超過確立100%あるいは99%において、誤判定率30%以下の精度で脱線可能性を推定することができる。
【0039】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記した実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
(1)複数の加振条件の個数や各条件の内容は上述した実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。例えば、各加振条件における振幅や波数、波形等は適宜変更することができる。また、加振条件の個数も3つに限らず、適宜増減することができる。
(2)上述した実施の形態は新幹線車両を例にとって説明したが、本発明はこれに限らず他の種類の鉄道車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を適用した脱線可能性推定方法の実施の形態において用いられる走行安全限界線図である。
【図2】本発明を適用した脱線可能性推定方法の実施の形態における地震波の振動成分分解例を示すグラフである。
【図3】兵庫県南部地震の時刻歴解析結果を示すグラフである。
【図4】釧路沖地震の時刻歴解析結果を示すグラフである。
【図5】釧路沖地震における地震動の振動加速度最大値、変位最大値と、評価指標の和(評価指標値)との関係を示すグラフである。
【図6】釧路沖地震における地震動の振動速度最大値、変位最大値と、評価指標の和(評価指標値)との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る評価指標の閾値を超えた件数に含まれる時刻歴解析結果の割合を示すグラフである。
【図8】従来技術に係る地震動の振動加速度最大値、速度最大値、変位最大値を指標として閾値を設定したときの時刻歴解析結果の割合を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7