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明細書 :パンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5184050号 (P5184050)
公開番号 特開2009-113530 (P2009-113530A)
登録日 平成25年1月25日(2013.1.25)
発行日 平成25年4月17日(2013.4.17)
公開日 平成21年5月28日(2009.5.28)
発明の名称または考案の名称 パンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法
国際特許分類 B60M   1/28        (2006.01)
FI B60M 1/28 R
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2007-285686 (P2007-285686)
出願日 平成19年11月2日(2007.11.2)
審査請求日 平成22年3月10日(2010.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】網干 光雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】八木 誠
参考文献・文献 特開2007-261370(JP,A)
実開平6-64116(JP,U)
臼田隆之,鉄道力学 パンタグラフ接触力を用いたトロリ線の摩耗とひずみの推定,鉄道総研報告,日本,2006年11月 8日,Vol.20 No.11,P.11-16
久須美俊一ら,接触力によるトロリ線ひずみ推定の検討,電気学会産業応用部門大会講演論文集,日本,2004年 9月14日,Vol.2004 No.3,P.239-242
調査した分野 B60M1/00-7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
パンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定する方法であって、
トロリ線の波動方程式から得られる特性方程式、
λ4 -(T-ρν2 /EI)λ2 -i(2ρνω/EI)λ-(ρω2 /EI)=0 …(A)
(ここで、ρはトロリ線の線密度、νは列車走行速度、iは虚数単位、Tはトロリ線の張力、EIはトロリ線の曲げ剛性、ωは振動角周波数)の4つの特性根のうち、λ1 を実数部が正の複素数、λ3 を実数部が負の複素数、λ2 を正の純虚数、λ4 を負の純虚数とし、計測された接触力に対して、トロリ線ひずみへの変換
(r/EI)・〔(λ1 +λ2 )/(λ1 -λ3 )(λ1 -λ4 )〕
…(B)
(ここで、はトロリ線の中立軸から表面までの距離であり、トロリ線の形状が円形の場合は半径に相当)を乗じてパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することを特徴とするパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法。
【請求項2】
請求項1記載のパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法において、前記式(B)は周波数特性を示すので、予めインパルス応答関数を用意しておき、実測された時間軸の接触力波形に対して前記インパルス応答関数を重畳積分することにより、前記時間軸のパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することを特徴とするパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パンタグラフの接触力からトロリ線のひずみを推定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パンタグラフとトロリ線間の接触力によりトロリ線に曲げ応力(ひずみ)が発生し、この曲げ応力が繰り返し作用するとトロリ線が疲労破断(断線)する恐れがあるため、応力(ひずみ)の許容値が設定されている。特に、高速度運転する新幹線ではトロリ線に発生する曲げ応力は著大になる傾向があり、高速化の良否を判断する重要な指標の一つとなっている。
【0003】
これまでは、トロリ線に直接ひずみゲージを貼り、パンタグラフ通過時の値を実測していたが、事実上測定箇所が限定される上に、必ずしもその測定箇所が応力(ひずみ)の最大値を発生する箇所とも限らないため、空間的に連続な測定が望まれていた。そこで、パンタグラフに作用する接触力を実測して、トロリ線の最大応力(ひずみ)を連続的に算出する方法が望まれていた。
【0004】
近年、弾性支床梁モデルを用いて、パンタグラフ点のトロリ線ひずみを算出する方法が提案されている。

【非特許文献1】久須美 俊一,福谷 隆宏,岩井中 篤史,「接触力によるトロリ線ひずみ推定の検討」,平成16年電気学会産業応用部門大会,2004年8月,3-27,pp.III -239~242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した方法は、定常状態における接触力とトロリ線応力との関係から導出された式を用いており、変動する接触力に対しては算出誤差が大きいという欠点があった。
本発明は、上記状況に鑑みて、近年、パンタグラフに作用する接触力が精度良く測定できるようになり、また、パンタグラフ点のトロリ線応力が最大となる特性を利用して、パンタグラフ通過時にトロリ線に作用する応力(ひずみ)を、実測された架線・パンタグラフ間の接触力を用いて精度良く連続的に推定することができる、パンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕パンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定する方法であって、
トロリ線の波動方程式から得られる特性方程式、
λ4 -(T-ρν2 /EI)λ2 -i(2ρνω/EI)λ-(ρω2 /EI)=0 …(A)
(ここで、ρはトロリ線の線密度、νは列車走行速度、iは虚数単位、Tはトロリ線の張力、EIはトロリ線の曲げ剛性、ωは振動角周波数)の4つの特性根のうち、λ1 を実数部が正の複素数、λ3 を実数部が負の複素数、λ2 を正の純虚数、λ4 を負の純虚数とし、計測された接触力に対して、トロリ線ひずみへの変換
(r/EI)・〔(λ1 +λ2 )/(λ1 -λ3 )(λ1 -λ4 )〕
…(B)
(ここで、はトロリ線の中立軸から表面までの距離であり、トロリ線の形状が円形の場合は半径に相当)を乗じてパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載のパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法において、前記式(B)は周波数特性を示すので、予めインパルス応答関数を用意しておき、実測された時間軸の接触力波形に対して前記インパルス応答関数を重畳積分することにより、前記時間軸のパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)パンタグラフ通過時におけるトロリ線の最大応力(ひずみ)を空間連続的に推定することができ、走行安全性の確認や要注意箇所の抽出を容易に、かつ正確に行うことができる。
(2)現車走行試験における測定の効率化が大幅に向上する。
【0009】
(3)トロリ線断線等の事故の恐れが少なくなり、安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法は、パンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定する方法であって、
トロリ線の波動方程式から得られる特性方程式、
λ4 -(T-ρν2 /EI)λ2 -i(2ρνω/EI)λ-(ρω2 /EI)=0 …(A)
(ここで、ρはトロリ線の線密度、νは列車走行速度、iは虚数単位、Tはトロリ線の張力、EIはトロリ線の曲げ剛性、ωは振動角周波数)の4つの特性根のうち、λ1 を実数部が正の複素数、λ3 を実数部が負の複素数、λ2 を正の純虚数、λ4 を負の純虚数とし、計測された接触力に対して、トロリ線ひずみへの変換係数
(r/EI)・〔(λ1 +λ2 )/(λ1 -λ3 )(λ1 -λ4 )〕
…(B)
(ここで、はトロリ線の中立軸から表面までの距離であり、トロリ線の形状が円形の場合は半径に相当)を乗じてパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することを特徴とする。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明に係るパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定装置のブロック図である。
図1において、1はデータ入力装置、2は推定装置、3はCPU(中央処理装置)、4はトロリ線に関する情報の記憶装置であり、ここでは、トロリ線の線密度ρ、トロリ線の張力T、トロリ線の曲げ剛性EI、列車走行速度ν、λ1 ,λ3 ,λ2 ,λ4 (後述)などが記憶される。5は入力インタフェース、6は出力インタフェース、7は出力装置である。
【0012】
張力のかかった無限長梁モデルを用いて、加振力Fが速度νで移動している場合、トロリ線の波動方程式は以下の式(1)で表される。なお、ここでは、トロリ線の減衰は無視する。
〔ρ(∂2 y/∂t2 )〕-〔T(∂2 y/∂x2 )〕+〔EI(∂4 y/∂x4 )〕=F・δ(x-νt) …(1)
これを移動座標系ξ=x-νtに変換すると
〔ρ(∂2 y/∂t2 )〕-〔2ρνT(∂2 y/∂t∂ξ)〕-(T-ρν2 )(∂2 y/∂ξ2 )+〔EI(∂4 y/∂ξ4 )〕=F・δ(ξ)
…(2)
となる。
【0013】
ここで、加振力Fを
F=f・exp(iωt) …(3)
ここでiは虚数単位とし、解の形を
y=A・exp(λξ)・exp(iωt) …(4)
と仮定して、上記式(2)に代入すると、次の特性方程式を得ることができる。
λ4 -(T-ρν2 /EI)λ2 -i(2ρνω/EI)λ-(ρω2 /EI)=0 …(5)
この式(5)の4つの特性根のうち、λ1 を実数部が正の複素数、λ3 を実数部が負の複素数、λ2 を正の純虚数、λ4 を負の純虚数とする。
【0014】
移動加振力がトロリ線に作用した場合と、波動がパンタグラフに入射した場合とでは、接触力とパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)との比を表す式は厳密には異なる。しかし実際の架線・パンタグラフの特性を用いて約50Hz程度以下に限定すれば、概ね両者が一致する特性を有する。
そこで、ひずみ/接触力比を以下の式(6)で表すと、
(ε/F)=(r/EI)・〔(λ1 +λ2 )/(λ1 -λ3 )(λ1 -λ4 )〕 …(6)
となる。
【0015】
ここで、rはトロリ線の中立軸から表面までの距離である。
上記式(6)を実測された接触力に適用すれば算出誤差も概ね10%以内に収めることができる。
上記式(6)は周波数特性であるので、予めインパルス応答関数を用意しておき、実測された時間軸の接触力波形に対して、このインパルス応答関数を重畳積分すれば、時間軸のパンタグラフ点におけるトロリ線応力(ひずみ)を推定することができる。
【0016】
トロリ線の応力(ひずみ)は、パンタグラフ点が最大となるので、この方法を用いれば、トロリ線の最大応力(ひずみ)を空間連続的に推定することができる。
本発明によれば、パンタグラフ通過時におけるトロリ線の最大応力(ひずみ)を空間連続的に推定することができ、走行安全性の確認や要注意箇所の抽出を容易に、かつ正確に行うことができる。
【0017】
また、現車走行試験における測定の効率化が大幅に向上する。
さらに、トロリ線断線等の事故の恐れが少なくなり、安全性が向上する。
このように、上記式(6)に基づき、接触力とトロリ線ひずみについて試算する。
図2に、本発明に係るコンピュータシミュレーション手法を用いてパンタグラフの接触力とその点のトロリ線ひずみを計算した例を示す。これを真値と仮定した場合、図示の点では、497μの値となっている。これに対して、従来の方法である弾性支床梁モデルを用いる方法では、685μと誤差が大きいが、本発明の手法を用いれば、517μとほぼ正確に推定できることが分かる。
【0018】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定方法は、パンタグラフ通過時におけるトロリ線の最大応力(ひずみ)を空間連続的に推定することができ、走行安全性の確認や要注意箇所の抽出を容易に、かつ正確に行うことのできるトロリ線のひずみ推定方法として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るパンタグラフの接触力からのトロリ線のひずみ推定装置のブロック図である。
【図2】本発明に係るコンピュータシミュレーション手法を用いてパンタグラフの接触力とその点のトロリ線ひずみを計算した例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 データ入力装置
2 推定装置
3 CPU(中央処理装置)
4 トロリ線に関する情報の記憶装置
5 入力インタフェース
6 出力インタフェース
7 出力装置
図面
【図1】
0
【図2】
1