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明細書 :鉄道の渦電流ブレーキシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5106964号 (P5106964)
公開番号 特開2009-083516 (P2009-083516A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成21年4月23日(2009.4.23)
発明の名称または考案の名称 鉄道の渦電流ブレーキシステム
国際特許分類 B61H   7/00        (2006.01)
B60L   7/28        (2006.01)
FI B61H 7/00 F
B60L 7/28
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2007-251553 (P2007-251553)
出願日 平成19年9月27日(2007.9.27)
審査請求日 平成21年11月20日(2009.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】笹川 卓
【氏名】田中 実
【氏名】坂本 泰明
【氏名】柏木 隆行
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】岩田 健一
参考文献・文献 特開平06-305422(JP,A)
特開2005-271704(JP,A)
特開2001-119921(JP,A)
調査した分野 B61H 1/00-15/00
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-15/42
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄道車両に搭載されるリング巻き型コイルによりレールに渦電流を生じさせる鉄道の渦電流ブレーキシステムにおいて、
前記リング巻き型コイルへの供給電源としてき電による3相交流電源と前記鉄道車両に搭載する直流電源とを備え、配線装置の切り換えにより、き電の正常時には前記リング巻き型コイルへ3相交流電流を供給し、き電の異常時には前記リング巻き型コイルへ直流電流を供給する鉄道の渦電流ブレーキシステムであって、前記リング巻き型コイルは、前記鉄道車両の先頭からU相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相として、前記リング巻き型コイルの相間電圧のバランスをとるようにしたことを特徴とする鉄道の渦電流ブレーキシステム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の渦電流ブレーキシステムに係り、特に、き電の異常時にも稼働できるリング巻き型LIM(Linear Induction Moter)方式渦電流ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のリング巻き型渦電流ブレーキの模式図、図5はそのリング巻き型渦電流ブレーキの正面図、図6は従来のリング巻き型コイルの配置を示す図である(下記特許文献1,2参照)。
これらの図において、101はレール、102はLIMに搭載されるリング巻き型コイル103を巻回するボビン、104は台車、105は車輪である。
【0003】
従来は、レール101に対向してリング巻き型コイル103を配置しておき、そのリング巻き型コイル103への3相交流電流の供給により磁場を発生させることでレール101に渦電流を生じさせ、その発生した渦電流と、リング巻き型コイル103の磁場との間に電磁力を作用させ、その電磁力をブレーキとして利用するようにしている。
また、図6に示すように、リング巻き型コイル103は、LIMの先頭からU相,W相,V相,U相,W相,V相,U相,W相,V相,U相,W相,V相と配置されるようになっている。

【特許文献1】特開2005-271704号公報
【特許文献2】特開2006-014394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のリング巻き型渦電流ブレーキシステムではリング巻き型コイルに大きな相間電圧アンバランス(回生電力のアンバランス)が生じてしまい、電力変換器の適用に支障をきたすといった問題があった。特に、LIMの後尾に配置されるV相巻線がリング巻き型コイルへの相間電圧(回生電力)のアンバランスを助長する。この相間電圧(回生電力)のアンバランスにより、渦電流ブレーキが作用する時にレールの温度上昇が高くなるといった問題があった。
【0005】
また、従来のリング巻き型渦電流ブレーキではき電が停止した異常時には、渦電流ブレーキを動作させることができず、非常用ブレーキとして使用することができなかった。
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道車両へのき電に異常がある時にも稼働することができる鉄道の渦電流ブレーキシステムを提供することを目的とする。
また、リング巻き型コイルの相間電圧のバランス(回生電力のバランス)をとり、レールの温度上昇を抑制することができる鉄道の渦電流ブレーキシステムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車両に搭載されるリング巻き型コイルによりレールに渦電流を生じさせる鉄道の渦電流ブレーキシステムにおいて、前記リング巻き型コイルへの供給電源としてき電による3相交流電源と前記鉄道車両に搭載する直流電源とを備え、配線装置の切り換えにより、き電の正常時には前記リング巻き型コイルへ3相交流電流を供給し、き電の異常時には前記リング巻き型コイルへ直流電流を供給する鉄道の渦電流ブレーキシステムであって、前記リング巻き型コイルは、前記鉄道車両の先頭からU相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相として、前記リング巻き型コイルの相間電圧のバランスをとるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(1)鉄道車両へのき電の異常時には直流渦電流ブレーキとして利用することができる。
(2)鉄道車両へのき電の正常時にはレールの温度上昇を抑制することができる。つまり、回生率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムは、鉄道車両に搭載されるリング巻き型コイルによりレールに渦電流を生じさせる鉄道の渦電流ブレーキシステムにおいて、前記リング巻き型コイルへの供給電源としてき電による3相交流電源と前記鉄道車両に搭載する直流電源とを備え、配線装置の切り換えにより、き電の正常時には前記リング巻き型コイルへ3相交流電流を供給し、き電の異常時には前記リング巻き型コイルへ直流電流を供給する鉄道の渦電流ブレーキシステムであって、前記リング巻き型コイルは、前記鉄道車両の先頭からU相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相として、前記リング巻き型コイルの相間電圧のバランスをとるようにした
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムの模式図である。
この図において、1はボビン、2はそのボビン1に巻回されるリング巻き型コイル、3はそのリング巻き型コイル2に電力を供給するリード線、4はそのリード線が接続され、相間電圧が供給される配線装置、5はその配線装置4に接続される電源、6は電源5と配線装置4との間に配置されるスイッチであり、このスイッチ6は図示しないが制御装置によって切換制御される。
【0010】
ここでは、電源5として3相交流電源と直流電源が備えられており、スイッチ6の切り換えにより配線装置4を切り換えることにより、リング巻き型コイル2には、3相交流電源から3相交流電流を供給することも、あるいは直流電源から直流電流を供給することもできる。
図2は本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムを3相交流電源(き電線による給電)による作動を行わせるようにした例を示す図である。き電が正常に行われている場合は、このモードで渦電流ブレーキシステムを作動させる。
【0011】
このモードでは、図2に示すように、スイッチ7の制御装置(図示なし)による切り換えにより、相間電圧が供給される配線装置4が切り換えられ、その配線装置4にき電による3相交流電源11が接続される。したがって、リング巻き型コイル2には、き電によるU相、V相、W相の3相交流電流が供給されることになる。
より具体的には、ボビン1には24回巻きのリング巻き型コイル2が設けられ、LIMの先頭からU相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相,U相,W相,W相,V相,V相,U相となるように配置され、LIMの先頭と後尾に単一のU相が設けられるようになっている。このように配置すると、図6に示した従来のリング巻き型コイル103のようにLIM先頭にU相、LIM後尾にV相を配置した場合に比べて、リング巻き型コイル2の相間電圧のアンバランスを大幅に解消することができ、相間電圧のバランスの向上を図ることができる。
【0012】
なお、この実施例では、U相,W相,W相,V相,V相,U相を一極配置とした合計4極配置の例を示したが、これに限定されるものではなく、6極極配置または8極配置とするようにしてもよい。
ここで、従来の渦電流ブレーキシステムと本発明の渦電流ブレーキシステムとの回生電力のバランスの状態を次の表1を参照しながら説明する。
【0013】
【表1】
JP0005106964B2_000002t.gif
従来の渦電流ブレーキシステム(図6参照)と本発明の渦電流ブレーキシステム(図2参照)とを比較した。表1によれば、それぞれ最大電流で、かつ滑りが-0.4の場合の各相から出力される回生電力(横方向1m当たり)を示している。
【0014】
これによれば、各相の回生電力は、従来の渦電流ブレーキシステムにおいてはU相で221(kW/m)、V相で369(kW/m)、W相で303(kW/m)であるのに対して、本発明の渦電流ブレーキシステムにおいては、U相で294(kW/m)、V相で340(kW/m)、W相で266(kW/m)であり、本発明の渦電流ブレーキシステムの場合は、従来の渦電流ブレーキシステムに比べて、相間アンバランスが改良されていることがわかる。なお、表1には示していないが、相間アンバランスの改善度合いは滑りが小さくなるにつれて顕著になる。
【0015】
また、本発明の渦電流ブレーキシステムでは、同じ電流を各相に通電する時は各相の電圧がほぼ揃っているので、通常過電流ブレーキシステムで行われているように、各相に対して定電圧制御することで、結果的にほぼ同じ大きさの電流を各相に通電することができる。これは、通常のPWMインバータ制御が適用できることを意味し、インバータ側の開発要素が少なくて済むという意味で望ましい。
【0016】
これに対して、従来の渦電流ブレーキシステムの方のLIMに各相定電圧制御型インバータで通電すると、結果として各相に同等の電流を流すことができない。したがって、このようなことにならないように、従来の渦電流ブレーキシステムにおいては、インバータ側の制御に何らかの付加的な工夫を加えることが必要になり、本発明の渦電流ブレーキシステムに比較して不利になる。
【0017】
図3は本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムを直流電源により作動させるようにした一例を示す図である。き電に異常がある場合は、このモードで渦電流ブレーキシステムを作動させる。
このモードでは、図3に示すように配線が接続されるよう、配線装置4が切り換えられる。その配線装置4に制御装置(図示なし)によって制御されるスイッチ8,9を介して直流電源12が接続されて、直流電流が供給される。
【0018】
この図に示されるように、ボビン1には24回巻きのリング巻き型コイル2が設けられており、直流電源12を接続することにより、24回巻きのリング巻き型コイル2がNS磁極となり、き電が異常な場合は、このモードで渦電流ブレーキシステムとして機能させることができる。
このように、本発明によれば、き電が正常に行われている時にはレールの温度上昇を抑制することができ、回生率を向上させることができる。一方、き電に異常がある時には、常備している直流電源を用いた非常ブレーキ(直流渦電流ブレーキ)として作用させることができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムは、き電の異常時には、直流渦電流ブレーキシステムとして利用することができ、き電が正常に行われている時には、レールの温度上昇を抑制し、回生率を向上させることのできる交流渦電流ブレーキシステムとして稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムの模式図である。
【図2】本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムを3相交流電源により作動させるようにした例を示す図である。
【図3】本発明の鉄道の渦電流ブレーキシステムを直流電源により作動させるようにした一例を示す図である。
【図4】従来のリング巻き型渦電流ブレーキの模式図である。
【図5】従来のリング巻き型渦電流ブレーキの正面図である。
【図6】従来のリング巻き型コイルの配置を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ボビン
2 リング巻き型コイル
3 リード線
4 配線装置
5 電源
6,7,8,9 スイッチ
11 き電による3相交流電源
12 直流電源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5