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明細書 :鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5138305号 (P5138305)
公開番号 特開2009-041917 (P2009-041917A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成21年2月26日(2009.2.26)
発明の名称または考案の名称 鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法
国際特許分類 G01B   5/06        (2006.01)
E01B  35/08        (2006.01)
G01N   3/42        (2006.01)
FI G01B 5/06
E01B 35/08
G01N 3/42
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2007-203928 (P2007-203928)
出願日 平成19年8月6日(2007.8.6)
審査請求日 平成21年11月20日(2009.11.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】中村 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】公文代 康祐
参考文献・文献 特開2002-137085(JP,A)
特開2004-309355(JP,A)
特開2005-163116(JP,A)
特開平06-271926(JP,A)
特開2000-073140(JP,A)
特開2002-088431(JP,A)
特開平08-094344(JP,A)
特開2000-028582(JP,A)
特開2006-265642(JP,A)
調査した分野 G01B 5/06
G01B 21/08
G01N 3/42
G01N 19/00
E01B 35/06
C21D 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
敷設された鉄道レール表面にビッカース硬さ計を押し当てて、前記鉄道レールの表面硬化層の実測ビッカース硬さを求め、あらかじめ測定した鉄道レールの表面硬化層のビッカース硬さと膜厚との対応データに基づいて、前記実測ビッカース硬さより、前記敷設された鉄道レールの表面硬化層の膜厚を測定することを特徴とする鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法
【請求項2】
請求項1記載の鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法において、前記ビッカース硬さ計は、ポータブルな携帯型硬さ計であることを特徴とする鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法に係り、特に、鉄道レール保線現場における、ビッカース硬さ計を用いた、鉄道レール表面硬化層の非破壊による膜厚の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの頭頂面が車輪の空転や滑走による摩擦熱等により高温になる時、また転がり接触により激しい歪みが繰り返し加わる時、レール硬化層(白色層・白層)とよばれるマルテンサイト組織の熱変態層が鉄道レール表面に形成される。このレール硬化層(白色層・白層)は一般的に硬くて脆いため、普通レール鋼のパーライト組織と比較して、レールの転がり疲労損傷の一つであるレールシェリングに発展する亀裂の発生原因となる。つまり、レール硬化層が厚くなると、亀裂の発生確率が高まる。
【0003】
かかる鉄道レール表面硬化層の膜厚の測定においては、従来はリバウンド式の硬さ測定で反発係数の値を求めることにより、そのレール硬化層の厚さを非破壊で求めようとしてきた(下記非特許文献1参照)。しかしこの測定では、シミュレーションのみが実施され、実際の測定器は試作されなかった。

【非特許文献1】中村崇他「反発式白色層厚さ評価システム」:新線路、59巻、3号、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、非破壊による鉄道レール表面硬化層の膜厚の測定に関して、非特許文献1では測定器の試作にまで至っておらず、実用可能な提案はなされていなかった。
また、ポータブルなリバウンド式硬さ計を用いた測定では、リバウンド圧子の衝突エネルギーが高いため、鉄道レール表面に発生する薄いレール硬化層部分のみの硬さを求めることができなかった。
【0005】
本発明は、上記状況に鑑みて、本来は測定試料の硬さのみを測定するビッカース硬さ計を用いることで、そのやわらかい母材レール鋼(パーライト鋼)上に発生する薄いレール硬化層部分のみの硬さを求め、さらにその厚さを非破壊で測定することができる鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法において、敷設された鉄道レール表面にビッカース硬さ計を押し当てて、前記鉄道レールの表面硬化層の実測ビッカース硬さを求め、あらかじめ測定した鉄道レールの表面硬化層のビッカース硬さと膜厚との対応データに基づいて、前記実測ビッカース硬さより、前記敷設された鉄道レールの表面硬化層の膜厚を測定することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法において、前記ビッカース硬さ計は、ポータブルな携帯型硬さ計であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)本来は測定体の硬さのみを測定するビッカース硬さ計を用いて、現場の敷設状態レールの不特定箇所に発生するレール表面硬化層の膜厚を簡易に非破壊で測定することができる。
(2)現場において敷設状態レールの不特定箇所に発生するレール表面硬化層の膜厚を、1人で持ち運びが可能なポータブルな携帯型ビッカース硬さ計により、簡便に非破壊で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法は、敷設された鉄道レール表面にビッカース硬さ計を押し当てて前記鉄道レールの表面硬化層の実測ビッカース硬さを求め、あらかじめ測定した鉄道レールの表面硬化層のビッカース硬さと膜厚との対応データに基づいて、前記実測ビッカース硬さより、前記敷設された鉄道レールの表面硬化層の膜厚を測定する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、ビッカース硬度の測定について説明する。
ビッカース硬さは次のように定義づけられている。
ビッカース硬さとは対面角α=136°のダイヤモンド四角錐圧子を用い、試験面にピラミッド形の窪みをつけた時の荷重を、永久窪みの対角線の長さから求めた表面積で除した商をいい、次の式で算出する。ただし、Hvの数値には単位をつけない。
【0011】
Hv=(2P/d2 )sin(α/2)=1.854(P/d2
ここで、Hvはビッカース硬さ(kg/mm2 )、Pは加えた荷重(kg)、dは窪みの対角線の長さ(mm)である。
このようにして、試験体の硬さを測定することができる。
図1は本発明に係る鉄道レール表面に硬化層を有するレールの断面図である。
【0012】
この図において、1はレールの下地としてのやわらかい母材鋼、2はその母材鋼1上に形成されるレール表面硬化層である。
図2は本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚が厚い場合のビッカース硬さ計による測定状態を示す断面図である。
このように、下地としてのやわらかい母材鋼11上のレール表面硬化層12の膜厚が十分に厚い場合、ビッカース硬さ計のダイアモンド圧子13を用いて測定すると、母材鋼11の影響を受けることなくレール表面硬化層12の表面に窪み14が形成され、レール表面硬化層12の硬さを測定することができる。
【0013】
図3は本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚が薄い場合のビッカース硬さ計による測定状態を示す断面図である。
このように、下地としてのやわらかい母材鋼21上のレール表面硬化層22の膜厚が薄い場合、ビッカース硬さ計のダイアモンド圧子23を用いてレール表面硬化層22の硬さを測定すると、母材鋼21の影響が出る。つまり、レール表面硬化層22の表面に窪み24が形成されると共に、母材鋼21の表面にも窪み25が形成されてしまう。
【0014】
図4は本発明に係る鉄道レール表面の硬化層の膜厚(μm)とビッカース硬さ(Hv)を示す図である。この図において、JIS〔100g〕、JIS〔300g〕は、JIS規格の一般的なビッカース硬さ計(固定式:実験室内で使用する据え置き型のもの)を用いて測定した硬さの値であり、〔100g〕、〔300g〕は押込み荷重の種別である。ビッカース硬さHvは、Hv=(荷重P)/(圧痕部表面積)であるが、圧痕部表面積は四角錐の表面積であるため、窪みの対角線の長さdを測定し、幾何学演算により圧痕部表面積を求めている。そのため、Hv=1.854×P/d2 という式になっている。
【0015】
UCI〔1N〕,UCI〔3N〕はGE Inspection Technology社製のポータブル硬さ計による測定結果である。〔1N〕,〔3N〕は上記と同様に押込み荷重である。測定器の型番は〔1N〕がMIC-2101、〔3N〕がMIC-2103である。UCIとは超音波接触インピーダンス法(Ultrasonic Contact Impedance method)の略である。JISによる方法が圧痕部表面積をdから求めるのに対して、UCI法では圧痕を印加するプローブが超音波振動をし、プローブが材料に接触する前と圧痕を印加したときの振動数の差より圧痕部表面積を演算する。その後、Hv=(荷重P)/(圧痕部表面積)により硬さを求めるのは上記したJISと同じである。
【0016】
JISもUCIもダイアモンド圧子を押込み硬さを求めるビッカース硬さ測定という意味で同じであり、圧痕の表面積の求め方が異なるだけである。実験ではUCIの正確さを確かめるため、実績のある据え置き型のJISタイプの測定器による硬さとの比較を行っている。なお、100gは1Nとほぼ同じと考えて、JIS〔100g〕とUCI〔1N〕による結果を同等のものと考えている。JIS〔300g〕とUCI〔3N〕についても同じである。
【0017】
この図から明らかなように、鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)が40μm位まで、レール表面硬化層の厚さ測定の際、下地としての母材鋼の影響が現れることが分かる。
図5は本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)が特に薄い領域のビッカース硬さ(Hv)を示す図である。ここでも、JIS〔100g〕とUCI〔1N〕,JIS〔300g〕,UCI〔3N〕については、図4における説明と同様である。
【0018】
この図によって、鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)が20μm程度までの場合に、レール表面硬化層の厚さ測定の際、下地としての母材鋼の影響が強く現れることが分かる。
そこで、図6及び図7に示すように、あらかじめ鉄道レール表面の硬化層の膜厚(μm)とビッカース硬さ(Hv)の関係を母材鋼の影響を考慮して求めておく。
【0019】
そこで、図8及び図9に示すように、現場の鉄道レールにおいて、ポータブルな携帯型のビッカース硬さ計を用いてビッカース硬さ(Hv)を示めると、このビッカース硬さ(Hv)と対応するレール表面硬化層の膜厚(μm)を求めることができる。
上記したように、本来は測定体の硬さのみを測定するビッカース硬さ計を用いて、レール表面硬化層の薄い膜厚を正確に測定することができる。
【0020】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の鉄道レール表面硬化層の膜厚測定方法は、鉄道レール表面硬化層の膜厚を、本来は測定体の硬さのみを測定するビッカース硬さ計を用いて簡便に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る鉄道レール表面に硬化層を有するレールの断面図である。
【図2】本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚が厚い場合のビッカース硬さ計による測定状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚が薄い場合のビッカース硬さ計による測定状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)とビッカース硬さ(Hv)を示す図である。
【図5】本発明に係る鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)が特に薄い領域のビッカース硬さ(Hv)を示す図である。
【図6】あらかじめ鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)とビッカース硬さ(Hv)を求める様子を示す図(その1)である。
【図7】あらかじめ鉄道レール表面硬化層の膜厚(μm)とビッカース硬さ(Hv)を求める様子を示す図(その2)である。
【図8】現場の鉄道レールにおいて、ポータブルな携帯型のビッカース硬さ計を用いて、ビッカース硬さ(Hv)を示める様子を示す図(その1)である。
【図9】現場の鉄道レールにおいて、ポータブルな携帯型のビッカース硬さ計を用いて、ビッカース硬さ(Hv)を示める様子を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0023】
1,11,21 母材鋼(下地)
2,12,22 レール表面硬化層
13,23 ダイアモンド圧子
14,24,25 窪み
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8