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明細書 :架線着霜の予測方法及びその装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4879822号 (P4879822)
公開番号 特開2008-292381 (P2008-292381A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月22日(2012.2.22)
公開日 平成20年12月4日(2008.12.4)
発明の名称または考案の名称 架線着霜の予測方法及びその装置
国際特許分類 G01W   1/10        (2006.01)
B60M   1/12        (2006.01)
FI G01W 1/10 A
G01W 1/10 R
B60M 1/12 J
G01W 1/10 K
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願2007-139820 (P2007-139820)
出願日 平成19年5月28日(2007.5.28)
審査請求日 平成21年7月21日(2009.7.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】鎌田 慈
【氏名】宍戸 真也
【氏名】飯倉 茂弘
【氏名】遠藤 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開平07-167965(JP,A)
特開2006-189403(JP,A)
特開昭63-191992(JP,A)
特開平05-026828(JP,A)
特開2000-111545(JP,A)
特開昭63-191991(JP,A)
宍戸真也、他,架線着霜発生時の気象条件,寒地技術論文・報告集,2006年11月29日,Vol.22,P.163-166
調査した分野 G01W 1/00-1/18
B60M 1/12
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
気象予測に基づいて、架線着霜の予測を行う架線着霜の予測方法において、
(a)架線着霜予測対象地域の天気予報情報を収集し、
(b)該天気予報情報を用いて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下であるか否かについて前記架線着霜予測対象地域の天気予報を判定し、
(c)該判定の結果、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合には、夕刻の気温T1 での飽和水蒸気圧es1を演算し、
(d)該飽和水蒸気圧es1と湿度の実測値とに基づいて、水蒸気濃度a1 を演算し、
(e)前記予想最低気温T2 から3℃を減じた温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を演算し、
(f)該飽和水蒸気圧es2に基づく飽和水蒸気濃度a2 を演算し、
(g)過飽和水蒸気濃度a1 -a2 を演算し、
(h)該過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正である場合に架線への霜発生を報知することを特徴とする架線着霜の予測方法。
【請求項2】
気象予測に基づいて、架線着霜の予測を行う架線着霜の予測装置において、
(a)架線着霜予測対象地域の天気予報情報収集部と、
(b)天気予報情報を用いて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下であるか否かを判定する前記架線着霜予測対象地域の天気予報判定部と、
(c)該天気予報判定部による判定を受けて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合において、夕刻の気温T1 での飽和水蒸気圧es1を演算する飽和水蒸気圧es1の演算部と、
(d)前記飽和水蒸気圧es1と湿度の実測値とに基づいて、水蒸気濃度a1 を求める水蒸気濃度a1 の演算部と、
(e)前記予想最低気温T2 から3℃を減じた温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を演算する飽和水蒸気圧es2の演算部と、
(f)前記飽和水蒸気圧es2に基づく飽和水蒸気濃度a2 を求める飽和水蒸気濃度a2 の演算部と、
(g)過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の演算部と、
(h)過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正であるか否かの判定部と、
(i)前記過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値の判定結果が正である場合に、架線への霜発生を報知する霜発生報知部とを具備することを特徴とする架線着霜の予測装置。
【請求項3】
請求項2記載の架線着霜の予測装置において、前記霜発生報知部からの情報を霜取り列車の運行所に提供することを特徴とする架線着霜の予測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、架線着霜の予測方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気温が低く、かつ、湿度が高い冬の晴れた夜間には、電車線(架線)に霜が付着し成長する。このような架線着霜が発生した区間を電車が走行すると、電車のパンタグラフと架線との間に介在する霜により離線が発生し、これに伴うアーク放電が、パンタグラフの損傷、架線の溶断等の事故の原因となっている。
こうした事故の低減対策として、
(1)架線に霜の付着および成長を抑制する凍結防止材を塗布する。例えば、架線へ油を塗布する(下記特許文献1参照)。
【0003】
(2)架線を加熱する(下記特許文献2参照)。
(3)架線に付着した霜を除去する。例えば、『霜取り列車』と呼ばれる臨時列車を始発列車前に運行させる等が行われている。
更に、農作物への被害を防止するために、降霜予測装置が提案されている(下記特許文献3参照)。
【0004】
また、これまでにも熱収支法による霜または霜の凝結量の計算方法が報告されている(下記非特許文献1参照)が、この熱収支法を使って計算するためには、物体の表面温度、気温、湿度、風速、放射収支量の値が必要になる。以上の気象要素のうち、一般の気象情報によって予測値が得られるのは、気温、湿度、風速である。

【特許文献1】特開平9-164862号公報
【特許文献2】特開平9-301019号公報
【特許文献3】特開2006-189403号公報
【非特許文献1】「地表面に近い大気の科学」、著者 近藤純正 発行所 東京大学出版会 pp.140-153
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架線着霜の気象条件、霜の成長メカニズム、成長速度等の着霜性状が十分に解明されていないために、架線着霜への対策は、気象条件を基にした経験的な判断基準で行われており、その効果を定量的に把握できていない。
また、上記した熱収支法で霜の凝結量を計算するためには、多くのパラメータを必要とする。
【0006】
そこで、霜取り列車等の対策を適切に行うためには、架線着霜の発生予測を的確に行う必要がある。
本発明は、上記した状況に鑑みて、天気予報による情報に基づいて、霜の発生の予測を的確に行うことができる架線着霜の予測方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕気象予測に基づいて、架線着霜の予測を行う架線着霜の予測方法において、架線着霜予測対象地域の天気予報情報を収集し、この天気予報情報を用いて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下であるか否かについて前記架線着霜予測対象地域の天気予報を判定し、この判定の結果、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合には、夕刻の気温T1 での飽和水蒸気圧es1を演算し、この飽和水蒸気圧es1と湿度の実測値とに基づいて、水蒸気濃度a1 を演算し、前記予想最低気温T2 から3℃を減じた温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を演算し、この飽和水蒸気圧es2に基づく飽和水蒸気濃度a2 を演算し、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 を演算し、この過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正である場合に架線への霜発生を報知することを特徴とする。
【0008】
〔2〕気象予測に基づいて、架線着霜の予測を行う架線着霜の予測装置において、架線着霜予測対象地域の天気予報情報収集部と、天気予報情報を用いて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下であるか否かを判定する前記架線着霜予測対象地域の天気予報判定部と、この天気予報判定部による判定を受けて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合において、夕刻の気温T1 での飽和水蒸気圧es1を演算する飽和水蒸気圧es1の演算部と、前記飽和水蒸気圧es1と湿度の実測値とに基づいて、水蒸気濃度a1 を求める水蒸気濃度a1 の演算部と、前記予想最低気温T2 から3℃を減じた温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を演算する飽和水蒸気圧es2の演算部と、前記飽和水蒸気圧es2に基づく飽和水蒸気濃度a2 を求める飽和水蒸気濃度a2 の演算部と、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の演算部と、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正であるか否かの判定部と、前記過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値の判定結果が正である場合に、架線への霜発生を報知する霜発生報知部とを具備することを特徴とする。
【0009】
〔3〕上記〔2〕記載の架線着霜の予測装置において、前記霜発生報知部からの情報を霜取り列車の運行所に提供することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、架線着霜の有無の予測に用いるパラメータが少ないにもかかわらず、的確な架線着霜予測を報知することができる。
すなわち、架線着霜の有無の予測を、夕刻の気温と湿度の実測値、翌朝の予想天気、予想最低気温、予想風速という少ないパラメータから行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、気象予測に基づいて、架線着霜の予測を行う架線着霜の予測方法において、架線着霜予測対象地域の天気予報情報を収集し、この天気予報情報を用いて、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ風速が1m/s以下であるか否かについて前記架線着霜予測対象地域の天気予報を判定し、この判定の結果、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合には、夕刻の気温T1 での飽和水蒸気圧es1を演算し、この飽和水蒸気圧es1と湿度の実測値とに基づいて、水蒸気濃度a1 を演算し、前記予想最低気温T2 から3℃を減じた温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を演算し、この飽和水蒸気圧es2に基づく飽和水蒸気濃度a2 を演算し、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 を演算し、この過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正である場合に架線への霜発生を報知する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す架線着霜の予測装置を示すブロック図である。
この図において、1は気象予測所、2は通信ネットワーク、3は温湿度計、10は架線着霜の予測装置、11は架線着霜予測対象地域の天気予報情報収集部、12は架線着霜予測対象地域の天気予報判定部、13は架線着霜予測対象地域の架線着霜の予測演算部、14は気温T1 での飽和水蒸気圧es1の演算部、15は水蒸気濃度a1 の演算部、16は温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2の演算部、17は飽和水蒸気濃度a2 の演算部、18は過飽和水蒸気濃度の演算部、19は過飽和水蒸気濃度の判定部、20は霜発生報知部、21は霜取り列車運用所である。
【0013】
図2は本発明の実施例を示す架線着霜の予測フローを示す図である。
(1)天気予報情報を収集する(ステップS1)。
(2)翌朝の予想天気が晴れ又は曇りか否かをチェックする(ステップS2)。
(3)次に、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りの場合には、予想最低気温T2 が0.5℃以下であるか否かをチェックする(ステップS3)。
【0014】
(4)次に、予想最低気温T2 が0.5℃以下である場合には、予想風速が1m/s以下か否かをチェックする(ステップS4)。
(5)このチェックの結果、翌朝の予想天気が晴れ又は曇りであり、予想最低気温T2 が0.5℃以下であり、かつ予想風速が1m/s以下である場合には、架線着霜予測対象地域の夕刻の気温をT1 とし、気温T1 での飽和水蒸気圧es1を求める(ステップS5)。
【0015】
(6)水蒸気濃度a1 の計算を行う(ステップS6)。なお、ここで、水蒸気濃度a1 は、a1 =2.167×〔es1×(湿度RH1 /100)〕/T1 で求めることができる。
(7)一方、温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を求める(ステップS7)。ここで、架線の着霜発生時には、架線温度はその周囲の温度よりも約3℃低くなることが観測で得られている。この温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2を算出する点は本発明の特徴である。
【0016】
(8)次に、飽和水蒸気濃度a2 の計算を行う(ステップS8)。なお、ここで、飽和水蒸気濃度a2 は、a2 =2.167×(es2)/(T2 -3)で求めることができる。
(9)そこで、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の計算を行う(ステップS9)。
(10)次に、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正(a1 -a2 >0)であるか否かの判定を行う。なお、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が、正(a1 -a2 >0)の場合は、霜が発生するものと判定する。そうでない場合は、霜は発生しないものと判定する(ステップS10)。
【0017】
(11)次に、過飽和水蒸気濃度a1 -a2 の値が正(a1 -a2 >0)となり、霜が発生すると判定された場合には、霜の発生を報知する(ステップS11)。
(12)霜の発生が予想され、これが報知されると、霜取り列車の出動を要請する(ステップS12)。
この場合、翌朝は霜が発生すると予想されるので、翌朝は霜取り列車を走らせて霜の除去を行う。
【0018】
なお、上記(6)及び(8)で挙げた式は、水蒸気濃度及び飽和水蒸気濃度を求めるための一方法である。水蒸気濃度と飽和水蒸気濃度の求め方は、上記の式に因る以外にも、気体の状態方程式を用いる方法や、理科年表などの飽和水蒸気圧の表をデータベースとして用いる方法を採用してもよい。
図3は架線着霜危険区域の一例を示す図であり、ここでは、名古屋から塩尻までの中央西線を示している。この他に架線着霜が頻発する線区として飯田線や身延線などが挙げられる。
【0019】
なお、ここまでに得られたデータを用いて、過飽和度σの計算を行う。つまり、過飽和度σは、σ=(a1 -a2 )/a2 である。
また、架線着霜の成長速度νと過飽和度σとの関係を実験等で明らかにし、この関係を用いて時間積分することで、架線着霜成長量Mの計算を行うことができる。架線着霜成長量Mは、M=∫ν=∫f(σ)で表される。
【0020】
さらに、架線着霜の付着力Fは、架線着霜成長量Mと予想最低気温T2 の関数として表され、F=f(M,T2 )と算出することができる。
上記したように、本発明は、架線周囲の温度と水蒸気濃度の関係に基づいて、夕刻の天気予報情報から架線着霜の発生の有無を予測し、それに対応した措置を行うようにすることができる。
【0021】
さらに着霜が発生すると予測される場合には霜の成長量および霜の付着力についても予測することができる。
本発明によれば、架線着霜の有無を、夕刻の気温、湿度の実測値、翌朝の予想天気、予想最低気温、予想風速という少ないパラメータのみで予測可能である。
100%天気予報が的中すると仮定した場合について、本発明の架線着霜の予測手法の精度を検証した結果、適中率は91%となった。因みに、試験的に財団法人日本気象協会発表の天気予報を用いて予想した場合、本発明の架線着霜の予測方法の精度を検証した結果、的中率は71%であった。
【0022】
また、様々な気象条件を模擬した実験及び観測により、過飽和度〔温度(T2 -3)℃での過飽和水蒸気濃度を温度(T2 -3)℃の飽和水蒸気濃度で除したもの〕と架線着霜の成長速度との関係を求めて、架線着霜の成長量予測を行うこともできると共に、気温、架線着霜の成長量と霜と架線の界面の付着力との関係を求め、霜の付着力の予測を行うこともできる。
【0023】
上記の予測手法を用いて、架線着霜による事故が発生する危険性が高い気象条件を見出すことができるため、予想気象情報から離線による架線あるいはパンタグラフの損傷の発生危険度の推定を行うことができる。また、霜取り列車の運行の要否の正確な判断を行うことができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の架線着霜の予測方法は、架線着霜による事故を未然に防ぐことができるツールとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例を示す架線着霜の予測装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例を示す架線着霜の予測フローを示す図である。
【図3】架線着霜危険区域の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 気象予測所
2 通信ネットワーク
3 温湿度計
10 架線着霜の予測装置
11 架線着霜予測対象地域の天気予報情報収集部
12 架線着霜予測対象地域の天気予報判定部
13 架線着霜予測対象地域の架線着霜の予測演算部
14 気温T1 での飽和水蒸気圧es1の演算部
15 水蒸気濃度a1 の演算部
16 温度(T2 -3)での飽和水蒸気圧es2の演算部
17 飽和水蒸気濃度a2 の演算部
18 過飽和水蒸気濃度の演算部
19 過飽和水蒸気濃度の判定部
20 霜発生報知部
21 霜取り列車運用所
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2