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明細書 :低周波音低減方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4943209号 (P4943209)
公開番号 特開2008-248624 (P2008-248624A)
登録日 平成24年3月9日(2012.3.9)
発行日 平成24年5月30日(2012.5.30)
公開日 平成20年10月16日(2008.10.16)
発明の名称または考案の名称 低周波音低減方法及び装置
国際特許分類 E21D   9/14        (2006.01)
FI E21D 9/14
請求項の数または発明の数 14
全頁数 11
出願番号 特願2007-093065 (P2007-093065)
出願日 平成19年3月30日(2007.3.30)
審査請求日 平成21年7月24日(2009.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】宮地 徳蔵
【氏名】斉藤 実俊
【氏名】飯田 雅宣
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】田畑 覚士
参考文献・文献 特開2002-038900(JP,A)
特開2005-155129(JP,A)
特許第3822368(JP,B2)
特開平04-182502(JP,A)
特開平02-066396(JP,A)
特開昭57-012190(JP,A)
特開平08-219364(JP,A)
福田、飯田、前田、小澤、前野、本間,高速鉄道のスラブ軌道トンネル内を伝ぱする圧縮波の解析(第2報,トンネル内の器材坑の効果),日本機械学会論文集(B編),日本,社団法人日本機械学会,1999年 2月25日,第65巻第630号,P188-194
調査した分野 E21D 9/14
G10K 11/16
JSTPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
圧力波が伝搬する管路の口において発生する低周波音を低減する方法であって、
該口からある長さの間において該管路を複数に分割するとともに、分割した一部管路の口を閉鎖することにより、
まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割管路(開口管路)に導かれて該管路を進み、該管路の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該管路の奥方向へ戻り、
閉鎖されている分割管路(閉鎖管路)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記管路の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減方法。
【請求項2】
圧力波が伝搬する管路(本管)の口において発生する低周波音を低減する方法であって、
該口からある長さ奥の位置において該管路に分岐管路を設けるとともに、該分岐管路の口を閉鎖することにより、
まず、前記圧力波の一部(A波)が前記本管を進んで該管の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該本管の奥方向へ戻り、
前記分岐管路に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記本管の分岐点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減方法。
【請求項3】
トンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該トンネルの出口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する方法であって、
該口からある長さの間において該トンネルを複数に分割するとともに、分割した一部トンネルの口を閉鎖することにより、
まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割トンネル(開口トンネル)に導かれて進み、該開口トンネルの口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口トンネル奥方向へ戻り、
閉鎖されている分割トンネル(閉鎖トンネル)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖トンネルの閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖トンネルの奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記トンネルの分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減方法。
【請求項4】
枝坑を有するトンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該枝坑の口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する方法であって、
該口からある長さの間において該枝坑を複数に分割するとともに、分割した一部枝坑の口を閉鎖することにより、
まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割枝坑(開口枝坑)に導かれて該開口枝坑を進み、該開口枝坑の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口枝坑の奥方向へ戻り、
閉鎖されている分割枝坑(閉鎖枝坑)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖枝坑の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖枝坑の奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記枝坑の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減方法。
【請求項5】
前記開口管路及び閉鎖管路は、長さがほぼ同じであるとともに、両者の断面積がほぼ等しいことを特徴とする請求項1記載の低周波音低減方法。
【請求項6】
前記本管及び分岐管路は、長さがほぼ同じであるとともに、両者の断面積がほぼ等しいことを特徴とする請求項2記載の低周波音低減方法。
【請求項7】
前記開口枝坑及び閉鎖枝坑は、長さがほぼ同じであるとともに、両者の断面積がほぼ等しいことを特徴とする請求項4記載の低周波音低減方法。
【請求項8】
前記分割管路、分岐管路又は分割枝坑の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることを特徴とする請求項1~7いずれか1項に記載の低周波音低減方法。
【請求項9】
圧力波が伝搬する管路の口において発生する低周波音を低減する装置であって、
該口からある長さの間において該管路を複数に分割する隔壁と、
分割した一部管路の口を閉鎖する手段と、
を備え、
まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割管路(開口管路)に導かれて該管路を進み、該管路の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該管路の奥方向へ戻り、
閉鎖されている分割管路(閉鎖管路)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記管路の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減装置。
【請求項10】
前記開口管路及び閉鎖管路は、長さがほぼ同じであるとともに、断面積がほぼ等しいことを特徴とする請求項9記載の低周波音低減装置。
【請求項11】
前記隔壁の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることを特徴とする請求項9又は10記載の低周波音低減装置。
【請求項12】
枝坑を有するトンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該枝坑の口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する装置であって、
該口からある長さの間において該枝坑を複数に分割する隔壁と、
分割した一部枝坑の口を閉鎖する手段と、
を備え、
まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割枝坑(開口枝坑)に導かれて該開口枝坑を進み、該開口枝坑の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口枝坑の奥方向へ戻り、
閉鎖されている分割枝坑(閉鎖枝坑)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖枝坑の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖枝坑の奥方向へ戻り、
前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記枝坑の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする低周波音低減装置。
【請求項13】
前記開口枝坑及び閉鎖枝坑は、長さがほぼ同じであるとともに、断面積がほぼ等しいことを特徴とする請求項12記載の低周波音低減装置。
【請求項14】
前記隔壁の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることを特徴とする請求項12又は13記載の低周波音低減装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高速移動体(鉄道車両など)が管路(トンネルなど)内に突入することによって発生する圧力波が、管路出口まで伝わって同出口で発生する微気圧波(低周波音)を低減する方法及び装置に関する。特には、鉄道用トンネルの枝坑などの分岐坑から発生する微気圧波を低減する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、微気圧波の発生機構について説明する。
図3は、トンネル内における微気圧波の発生機構を説明する図である。
列車Tがトンネル(本坑)1に突入すると、トンネル内に圧縮波が生じる。その圧縮波がトンネル内を伝播してトンネル出口1aに達すると、大部分の圧縮波は開口端反射して膨張波となってトンネル1の奥方向に戻ってくるが、一部は、圧縮波の圧力勾配にほぼ比例したパルス状の圧力波となって出口1aから外部に放射される。これをトンネル微気圧波という。このような微気圧波が放射されると、破裂的な空気圧音(一次音)を招くことがあるだけでなく、トンネル出口付近の民家の窓ガラスや戸を急に振動させて二次音を発生させる要因ともなる。
【0003】
このようなトンネル微気圧波を低減する主な対策として、トンネル入口に緩衝工を設ける方法が一般に取られている(例えば、特許文献1参照)。緩衝工とは、トンネル口に設置された、トンネル断面より大きい断面を有するフードである。このような緩衝工を設けることにより、トンネル口で発生する圧力波の圧力勾配を小さくして微気圧波を低減させている。
【0004】
一方、長大トンネルなど、本坑の途中に枝坑2が設けられている場合も、その枝坑2の坑口2aから上記と同様の微気圧波が発生する。山岳トンネルの場合は、枝坑2の坑口2aは人家のない山中にあるため、音が発生しても大きな問題とはならない。しかし、地下鉄用の大深度地下トンネルで、枝坑2の坑口2aが住宅が密集する都市部に存在する場合には騒音問題となる。
【0005】
このような枝坑における微気圧波の発生を低減するには、枝坑の坑口の開口のほとんどの部分を門扉などで閉鎖すればよい。これは、枝坑坑口にオリフィスを設けることに相当するもので、開口部(オリフィス)の面積を10%程度とすれば、微気圧波を1/2程度とすることができる。しかし、都市部の地下トンネルの場合、枝坑が換気や避難用に適用されるため、開口部の面積をあまり狭くすることができない。
【0006】

【特許文献1】特許第3822368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、換気や避難用に十分な抗口の面積を確保しつつ枝坑からの低周波音(微気圧波)を低減する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の低周波音低減方法は、 圧力波が伝搬する管路の口において発生する低周波音を低減する方法であって、 該口からある長さの間において該管路を複数に分割するとともに、分割した一部管路の口を閉鎖することにより、 まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割管路(開口管路)に導かれて該管路を進み、該管路の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該管路の奥方向へ戻り、 閉鎖されている分割管路(閉鎖管路)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記管路の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、管路を閉鎖管路と開口管路に分割したので、管路に伝搬した圧力波のエネルギーが分割されることになる。このため、開口管路で開口端反射する際に放射される微気圧波の大きさは、分割していない場合に比べて小さくなる。なお、閉鎖管路及び開口管路の各々を圧力波が伝播、反射しながら進んでいく際に、微気圧波は二回発生するが、その大きさはいずれも分割していない場合に比べて小さい。
【0010】
本発明の第2の低周波音低減方法は、 圧力波が伝搬する管路(本管)の口において発生する低周波音を低減する方法であって、 該口からある長さ奥の位置において該管路に分岐管路を設けるとともに、該分岐管路の口を閉鎖することにより、 まず、前記圧力波の一部(A波)が前記本管を進んで該管の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該本管の奥方向へ戻り、 前記分岐管路に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記本管の分岐点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0011】
管路が分割できない場合には、管路を分岐させて、閉鎖管路(分岐管路)と開口管路(本管)を形成することもできる。
【0012】
これらの発明においては、 前記開口管路及び閉鎖管路は、長さがほぼ同じであるとともに、両者の断面積がほぼ等しいことが好ましい。さらには、 前記本管及び分岐管路は、長さがほぼ同じであるとともに、両者の断面積がほぼ等しいことが好ましい。
この場合、微気圧波をほぼ1/2とすることができる。
【0013】
本発明の第3の低周波音低減方法は、 トンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該トンネルの出口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する方法であって、 該口からある長さの間において該トンネルを複数に分割するとともに、分割した一部トンネルの口を閉鎖することにより、 まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割トンネル(開口トンネル)に導かれて進み、該開口トンネルの口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口トンネル奥方向へ戻り、 閉鎖されている分割トンネル(閉鎖トンネル)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖トンネルの閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖トンネルの奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記トンネルの分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の低周波音低減方法は、 枝坑を有するトンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該枝坑の口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する方法であって、 該口からある長さの間において該枝坑を複数に分割するとともに、分割した一部枝坑の口を閉鎖することにより、 まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割枝坑(開口枝坑)に導かれて該開口枝坑を進み、該開口枝坑の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口枝坑の奥方向へ戻り、 閉鎖されている分割枝坑(閉鎖枝坑)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖枝坑の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖枝坑の奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記枝坑の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、枝坑などの分岐坑を閉鎖枝坑と開口枝坑に分割したので、枝坑に伝搬した圧力波のエネルギーが分割されることになる。このため、開口枝坑で開口端反射する際に放射される微気圧波の大きさは、分割していない場合に比べて小さくなる。なお、閉鎖枝坑及び開口枝坑の各々を圧力波が伝播、反射しながら進んでいく際に、微気圧波は二回発生するが、その大きさはいずれも分割していない場合に比べて小さい。
【0016】
枝坑の坑口にオリフィスを設けて微気圧波を低減する場合は、微気圧波の大きさを1/2とするために、オリフィスの開口率(抗口の開口率)を10%と小さくする必要があった。しかし、本発明のように枝坑を分割することにより、枝坑の坑口の開口率を50%程度と大きくしても微気圧波の大きさを1/2とすることができる。このため、非難や換気用として十分な開口面積を確保できる。
【0017】
本発明においては、 前記開口枝抗及び閉鎖枝抗は、長さがほぼ同じであるとともに、断面積が前記枝坑の断面積のほぼ1/2でであることとすれば、微気圧波をほぼ1/2とすることができる。
【0018】
以上の発明においては、 前記分割管路、分岐管路又は分割枝抗の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることが好ましい。
【0019】
本発明の第1の低周波音低減装置は、 圧力波が伝搬する管路の口において発生する低周波音を低減する装置であって、 該口からある長さの間において該管路を複数に分割する隔壁と、 分割した一部管路の口を閉鎖する手段と、を備え、 まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割管路(開口管路)に導かれて該管路を進み、該管路の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該管路の奥方向へ戻り、 閉鎖されている分割管路(閉鎖管路)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該管路の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該管路の奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記管路の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0020】
本発明においては、 前記開口管路及び閉鎖管路は、長さがほぼ同じであるとともに、断面積がほぼ等しいことが好ましい。さらに、 前記隔壁の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることが好ましい。
【0021】
本発明の第2の低周波音低減装置は、 枝坑を有するトンネルに鉄道車両が突入した際に該トンネル中に生じる圧力波が該枝坑の口に伝搬して開口端反射する際に生じる低周波音を低減する装置であって、 該口からある長さの間において該枝坑を複数に分割する隔壁と、 分割した一部枝坑の口を閉鎖する手段と、を備え、 まず、前記圧力波の一部(A波)が、閉鎖されていない分割枝坑(開口枝坑)に導かれて該開口枝坑を進み、該開口枝坑の口(開口端)に至って該口で開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する一次低周波音が発生するとともに、開口端反射したA波が逆位相の圧力波となって該開口枝坑の奥方向へ戻り、 閉鎖されている分割枝坑(閉鎖枝坑)に導かれた一部の圧力波(B波)は、該閉鎖枝坑の閉鎖されている端(固定端)に至って固定端反射して、同位相のまま該閉鎖枝坑の奥方向へ戻り、 前記A波の逆位相反射波と前記B波の同位相反射波が前記枝坑の分割点で合流してそれぞれ逆位相となって前記口方向へ再び進み、2回逆位相反射したA波が前記開口端に至って開口端反射する際に、分割された圧力波のエネルギーに対応する二次低周波音が発生することを特徴とする。
【0022】
本発明においては、 前記開口枝坑及び閉鎖枝坑は、長さがほぼ同じであるとともに、断面積がほぼ等しいことが好ましい。さらには、 前記隔壁の長さが前記圧力波の波長程度以上の長さであることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、枝坑の坑口の開口面積を50%程度として、枝坑からの微気圧波(低周波音)の発生を1/2程度に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る微気圧波低減方法及び装置を説明するための図である。ここでは、管路として鉄道用トンネルの枝坑の場合について説明する。
本発明の低周波音低減装置は、本坑1の途中に設けられた枝坑2を二分割する隔壁3を有する。この例では、隔壁3は枝坑2を、断面積が1/2ずつとなるように分割している。隔壁3によって分割された枝坑2の一方の末端(口)は壁4で閉じられている。このような構成により、枝坑2は、口が閉鎖されていない開口枝坑5と、口が閉鎖された閉鎖枝坑6に分割される。開口枝坑5の開口面積は、枝坑2の開口面積の1/2となる。隔壁3の長さ(開口枝坑5及び閉鎖枝坑6の長さ)は、枝坑2に発生する圧力波の波長程度である。
具体的な数値例として、枝坑2に発生する圧力波の波長が40mの場合、枝坑2の全長は60m、断面積は20m、隔壁3の長さ(開口枝坑5及び閉鎖枝坑6の長さ)は40m、開口枝坑5及び閉鎖枝坑6の断面積は10mである。
【符号の説明】
【0025】
次に、このような構成の枝坑2が微気圧波を低減する作用を説明する。
まず、図1(A)に示すように、枝坑2に、本坑1の圧縮波と同じ位相の圧縮波(+2:圧力と断面積を乗じた大きさ)が伝播してきたとする。なお、分割されていない枝坑の場合は、同位相の圧縮波(+2)が枝坑の坑口で開口端反射して、一部が微気圧波となって外部へ放射され、残りは逆位相の膨張波(-2)となって戻ってくる。しかし、この例では、枝坑2が途中で分割されているので、同位相の圧縮波(+2)は、分割点(隔壁3の奥側端部)で開口枝坑5及び閉鎖枝坑6に分かれ、各枝坑に同位相の圧縮波(+1.0)が進んでいく。
【0026】
図1(B)に示すように、開口枝坑5を進んだ圧縮波の一部(A波)は、同枝坑5の坑口5aで開口端反射し、一回目の微気圧波を発生する。ここで、開口枝坑5の坑口5aの開口面積は、枝坑2の開口面積の1/2であるので、微気圧波の大きさは1/2となる。開口端反射したA波は、逆位相の膨張波(-1.0)となって開口枝坑5を奥方向へ戻っていく。
【0027】
一方、閉鎖枝坑6を進んだ圧縮波の一部(B波)は、同枝坑6の壁4(固定端)に至って固定端反射して、同位相の圧縮波(+1.0)のまま閉鎖枝坑6の奥方向へ戻っていく。
【0028】
次に、図1(C)に示すように、開口枝坑5及び閉鎖枝坑6のそれぞれを奥方向に戻ってきたA波及びB波は、枝坑2の分割点で合流する。この際、A波とB波は位相が反対であるので、各波が干渉し、各々逆位相になって反射する。つまり、A波は元の圧縮波と同じ位相の圧縮波(+1.0)となって開口枝坑5を坑口5a方向へ進む。一方、B波は元の圧縮波と逆の位相の膨張波(-1.0)となって閉鎖枝坑6を先方向へ進む。
【0029】
そして、図1(D)に示すように、開口枝坑5を進む同位相のA波(+1)は、坑口5aで開口端反射し、二回目の微気圧波を発生する。ここで、開口枝坑5の坑口5aの開口面積は、枝坑2の開口面積の1/2であるので、微気圧波の大きさは1/2となる。開口端反射したA波は、逆位相の膨張波(-1.0)となって開口枝坑5を奥方向へ戻っていく。
【0030】
一方、閉鎖枝坑6を進んだB波は、壁4(固定端)に至って固定端反射して、逆位相の膨張波(-1.0)のまま閉鎖枝坑6の奥方向へ戻っていく。
【0031】
図1(E)に示すように、開口枝坑5及び閉鎖枝坑6のそれぞれを奥方向に戻ってきたA波及びB波は、枝坑2の分割点で合流する。この際、A波とB波はともに逆位相の膨張波(-1)であるので、各波は合流して、そのまま枝坑2を奥方向に伝播していく。つまり、分割していないときと同じ逆位相の膨張波(-2)が戻っていく。
【0032】
以上説明したように、本発明では、開口枝坑5の坑口5aから微気圧波が二回発生する(図1(B)、(D))。しかし、各微気圧波の大きさは、枝坑2を分割していない場合の微気圧波の大きさの1/2である。さらに、前述のように、枝坑の坑口にオリフィスを設けて微気圧波を低減する方法では、微気圧波を1/2とするために、オリフィスの開口率(抗口の開口率)を10%とする必要があった。しかし、本発明では枝坑2の坑口の開口率を50%としても、同等の効果を得ることができる。このため、枝坑を換気や避難用として十分な面積を確保することができる。
【0033】
図2は、図1の変形例を示す図である。
図2(A)は、枝坑2を、途中で閉鎖枝坑16と開口枝坑15に分岐したものである。閉鎖枝坑16の坑口は壁14で閉じられており、開口枝坑15の坑口15aは開いている。閉鎖枝坑16と開口枝坑15との間の角度θは特に規定されない。この場合も、閉鎖枝坑16と開口枝坑15の長さLはほぼ等しく、両者の断面積はほぼ等しい。この例は、例えば、地表に枝坑の坑口の面積を取ることができない場合に適している。
【0034】
図2(B)は、枝坑2の中心に開口枝坑15を設け、その周囲の環状の部分を閉鎖枝坑16としたものである。閉鎖枝坑16の坑口は壁14で閉じられており、開口枝坑15の抗口15aは開いている。この場合も、閉鎖枝坑16と開口枝坑15の長さLはほぼ等しく、両者の断面積はほぼ等しい。この例も、例えば、地表に枝坑の坑口の面積を取ることができない場合に適している。
【0035】
以上、例としてトンネル枝坑について説明したが、トンネルそのものの出口について本発明の対策を施すこともありうる。さらに、低周波音が問題となる一般の管路についても広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る微気圧波低減方法及び装置を説明するための図である。
【図2】図1の変形例を示す図である。
【図3】トンネル内における微気圧波の発生機構を説明する図である。
【0037】
1 トンネル(本坑) 2 枝坑
3 隔壁 4 壁
5 開口枝坑 6 分割枝坑
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2