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明細書 :着霜除去装置及び着霜除去方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4761371号 (P4761371)
公開番号 特開2007-253649 (P2007-253649A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 着霜除去装置及び着霜除去方法
国際特許分類 B60M   1/28        (2006.01)
FI B60M 1/28 K
B60M 1/28 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2006-077152 (P2006-077152)
出願日 平成18年3月20日(2006.3.20)
審査請求日 平成20年7月16日(2008.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】鎌田 慈
【氏名】宍戸 真也
【氏名】飯倉 茂弘
【氏名】遠藤 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】上野 力
参考文献・文献 特開平06-064534(JP,A)
特開2000-134709(JP,A)
特開昭61-284643(JP,A)
特開昭61-284641(JP,A)
特開昭61-247528(JP,A)
特開平07-000981(JP,A)
実開平2-6630(JP,U)
調査した分野 B60M 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
集電装置が接触する電車線路に付着した霜を除去する着霜除去装置であって、
前記霜に打撃力を加えるとともに打撃後の前記電車線路に残存する前記霜を掃き取って、この電車線路からこの霜を除去する霜除去手段を備え、
前記霜除去手段は、前記電車線路と回転接触する回転ブラシ部を備え、
前記回転ブラシ部は、前記集電装置と前記電車線路とが接触する接触面とこの電車線路の両側面とに毛先が接触するように、この回転ブラシ部の周方向に所定の間隔をあけ、この回転ブラシ部の長さ方向に所定の幅でブラシを有すること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の着霜除去装置において、
前記霜の付着を抑制する抑制剤を前記回転ブラシ部に供給する抑制剤供給手段を備えること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項3】
請求項又は請求項に記載の着霜除去装置において、
前記回転ブラシ部の回転速度を制御する制御手段を備えること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項4】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、
前記回転ブラシ部は、使用時には前記電車線路と接触し、非使用時には前記電車線路から離れること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、
前記霜除去手段は、前記集電装置の進行方向前側に配置されていること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、
前記霜除去手段は、一編成に複数の前記集電装置が存在するときに、先頭車両寄りの前記集電装置の進行方向前側と、後尾車両寄りの前記集電装置の進行方向後側とに配置されており、
前記進行方向前側の前記霜除去手段と前記進行方向後側の前記霜除去手段とを使用状態と非使用状態とに切り替える使用状態切替手段を備えること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項7】
請求項に記載の着霜除去装置において、
車両の現在位置を検出する車両位置検出手段を備え、
前記使用状態切替手段は、前記進行方向前側の前記霜除去手段が前記霜を除去するように、前記車両位置検出手段の検出結果に基づいてこの霜除去手段を非使用状態から使用状態に切り替えること、
を特徴とする着霜除去装置。
【請求項8】
集電装置が接触する電車線路に付着した霜を除去する着霜除去方法であって、
前記霜に打撃力を加えるとともに打撃後の前記電車線路に残存する前記霜を掃き取って、この電車線路からこの霜を除去する霜除去工程を含
前記霜除去工程は、前記電車線路に回転ブラシ部を回転接触させる工程を含み、
前記回転ブラシ部は、前記集電装置と前記電車線路とが接触する接触面とこの電車線路の両側面とに毛先が接触するように、この回転ブラシ部の周方向に所定の間隔をあけ、この回転ブラシ部の長さ方向に所定の幅でブラシを有すること、
を特徴とする着霜除去方法。
【請求項9】
請求項に記載の着霜除去方法において、
前記霜除去工程は、前記霜の付着を抑制する抑制剤を前記回転ブラシ部に供給する工程を含むこと、
を特徴とする着霜除去方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、集電装置が接触する電車線路に付着した霜を除去する着霜除去装置及び着霜除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気温が低く、湿度が高く、風の弱い気象条件下では、積雪地域に限らず、冬季にはトロリ線への着霜が起きることがある。このため、トロリ線と接触移動するパンタグラフのすり板とトロリ線との間に列車走行時に絶縁物質として霜が挟まり、正常な集電が阻害されることがある。集電が阻害されるとトロリ線とすり板との間にアークが発生し、すり板を支持する集電舟(舟体)の溶断やすり板の異常摩耗が発生する。その結果、トロリ線の異常摩耗などが起こり列車の運行に重大な支障を与えることがある。このため、現在では、対策としてトロリ線へのコーティング剤の塗布による着霜防止や、ヒータによる霜の融解などが行なわれている。
【0003】
従来のトロリ線塗油機は、線路に沿って走行可能な作業車上に取り付けられて上下方向に伸縮自在のフレームと、このフレームに取り付けられてトロリ線と回転接触する案内輪と、トロリ線に油を噴射する噴射ノズルと、トロリ線に付着しなかった油を受ける受箱などを備えている(特許文献1参照)。この従来のトロリ線塗油機では、作業車を線路に沿って走行させながら噴射ノズルから油を噴射して、トロリ線に付着した霜や氷が容易に落下するようにトロリ線に油を塗布している。
【0004】
また、従来の難着氷霜トロリ線は、パンタグラフのすり板と接触する大径部分に加熱線が挿入されている(特許文献2参照)。この従来の難着氷霜トロリ線では、大径部分の長さ方向に挿入孔を形成し、この挿入孔に加熱線を挿入しており、加熱線に電流を流すことで大径部分を加熱し着霜及び着氷を防止している。
【0005】

【特許文献1】特開平5-178131号公報
【0006】

【特許文献2】特開平9-301019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のトロリ線塗油機では、トロリ線に油を塗布した直後に列車が通過すると、この列車のパンタグラフのすり板によってトロリ線に塗布した油が取り除かれて、霜や氷の付着を防止する効果が低下してしまう問題点がある。また、従来のトロリ線塗油機では、広範囲に定期的に油を塗布する作業が必要になるとともに、大規模な装置を備える専用の作業車を用意する必要があり、材料費や人件費が高くなる問題点がある。一方、従来の難着氷霜トロリ線では、大径部分に挿入孔を形成する必要があり製造に手間がかかるとともに、既存のトロリ線との交換や製造装置の用意などの設備投資が必要になりコストが高くなってしまう問題点がある。また、従来の難着氷霜トロリ線では、大径部分を暖めるために過剰な電流を加熱線に流す必要があり、エネルギーコストがかかる問題点がある。
【0008】
このため、現状では、冷え込みの厳しい夜明け前の始発列車が走行する前に、トロリ線の霜や氷を落とすためのいわゆる霜取り列車を走行させて、トロリ線に付着した霜や氷を除去している。このような霜取り列車では、集電機能を有さない無集電パンタグラフ、霜取用のカッターを備えたパンタグラフ、通常よりも多く設置されたパンタグラフを用いて、トロリ線に付着した霜や氷をすり板によって強制的に除去しており、比較的低コスト化を図ることができる。
【0009】
図9は、従来の霜取り列車の一例を概略的に示す側面図である。図10は、従来の霜取り列車による霜取り動作を模式的に示す概念図であり、図10(A)は霜取り前の状態を示す側面図であり、図10(B)は霜取り後の状態を示す側面図であり、図10(C)は霜取り後の状態を示す正面図である。
【0010】
図9に示す従来の霜取り列車103は、架線102のトロリ線102aと接触移動する集電舟106aを有する通常のパンタグラフ106Aと、この通常のパンタグラフ106Aと同様の構造の霜取り用の集電舟106aを有する集電機能の無い無集電パンタグラフ106Bとを備えている。このような従来の霜取り列車103は、図9に示すように、軌道101に沿ってA方向に走行しながら無集電パンタグラフ106Bの集電舟106aによってトロリ線102aに付着した霜Fを削り取るようにして除去している。
【0011】
このような従来の霜取り列車103では、図10(A)に示すように、列車の移動速度に伴う運動エネルギーを霜Fの剥落に利用しているが1つの霜Fに与える打撃は1回限りである。また、従来の霜取り列車103では、図10(B)に示すように、トロリ線102aと無集電パンタグラフ106Bの集電舟106aとの間に一度霜Fが挟み込まれると霜Fの除去率が低下し、トロリ線102aと集電舟106aとの間に霜Fが挟み込まれてアークが発生する。さらに、従来の霜取り列車103では、図10(C)に示すように、無集電パンタグラフ106Bの集電舟106aとトロリ線102aとが接触するしゅう動面の外のトロリ線102aの両側面に付着した霜Fをこの集電舟106aによって除去することができない。このため、従来の霜取り列車103では、トロリ線102aから霜Fを完全に除去することができず、トロリ線102aに残存する霜Fが種となって成長してしまう問題点がある。
【0012】
この発明の課題は、トロリ線に付着した霜を簡単な構造によって低コストに除去することができる着霜除去装置及び着霜除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、集電装置(6)が接触する電車線路(2a)に付着した霜(F)を除去する着霜除去装置であって、前記霜に打撃力を加えるとともに打撃後の前記電車線路に残存する前記霜を掃き取って、この電車線路からこの霜を除去する霜除去手段(8)を備え、前記霜除去手段は、前記電車線路と回転接触する回転ブラシ部(8a)を備え、前記回転ブラシ部は、前記集電装置と前記電車線路とが接触する接触面とこの電車線路の両側面とに毛先が接触するように、この回転ブラシ部の周方向に所定の間隔をあけ、この回転ブラシ部の長さ方向に所定の幅でブラシ(8f)を有することを特徴とする着霜除去装置(7)である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の着霜除去装置において、前記霜の付着を抑制する抑制剤(O)を前記回転ブラシ部に供給する抑制剤供給手段(9)を備えることを特徴とする着霜除去装置である。
【0015】
請求項3の発明は、請求項又は請求項に記載の着霜除去装置において、前記回転ブラシ部の回転速度を制御する制御手段(12)を備えることを特徴とする着霜除去装置である。
【0016】
請求項4の発明は、請求項から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、前記回転ブラシ部は、使用時には前記電車線路と接触し、非使用時には前記電車線路から離れることを特徴とする着霜除去装置である。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、前記霜除去手段は、前記集電装置の進行方向前側に配置されていることを特徴とする着霜除去装置である。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の着霜除去装置において、前記霜除去手段は、一編成に複数の前記集電装置が存在するときに、先頭車両(3A,3F)寄りの前記集電装置の進行方向前側と、後尾車両(3F,3A)寄りの前記集電装置の進行方向後側とに配置されており、前記進行方向前側の前記霜除去手段と前記進行方向後側の前記霜除去手段とを使用状態と非使用状態とに切り替える使用状態切替手段(13)を備えることを特徴とする着霜除去装置である。
【0019】
請求項7の発明は、請求項に記載の着霜除去装置において、車両(3A,3F)の現在位置を検出する車両位置検出手段(16)を備え、前記使用状態切替手段は、前記進行方向前側の前記霜除去手段が前記霜を除去するように、前記車両位置検出手段の検出結果に基づいてこの霜除去手段を非使用状態から使用状態に切り替えることを特徴とする着霜除去装置である。
【0020】
請求項8の発明は、集電装置(6)が接触する電車線路(2a)に付着した霜(F)を除去する着霜除去方法であって、前記霜に打撃力を加えるとともに打撃後の前記電車線路に残存する前記霜を掃き取って、この電車線路からこの霜を除去する霜除去工程を含前記霜除去工程は、前記電車線路に回転ブラシ部(8a)を回転接触させる工程を含み、前記回転ブラシ部は、前記集電装置と前記電車線路とが接触する接触面とこの電車線路の両側面とに毛先が接触するように、この回転ブラシ部の周方向に所定の間隔をあけ、この回転ブラシ部の長さ方向に所定の幅でブラシ(8f)を有することを特徴とする着霜除去方法である。
【0021】
請求項9の発明は、請求項に記載の着霜除去方法において、前記霜除去工程は、前記霜の付着を抑制する抑制剤(O)を前記回転ブラシ部に供給する工程を含むことを特徴とする着霜除去方法である。
【発明の効果】
【0023】
この発明によると、トロリ線に付着した霜を簡単な構造によって低コストに除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置を備える車両を概略的に示す側面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の使用状態を概略的に示す側面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の非使用状態を概略的に示す側面図である。図4は、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の霜除去部の回転ブラシ部を概略的に示す側面図である。図5は、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の霜除去部の回転ブラシ部を概略的に示す正面図である。
【0025】
図1に示す霜Fは、放射冷却によって冷やされた大気中の水蒸気がトロリ線2aの表面へ凝結して形成された氷の結晶である。霜Fは、通常、うろこ状、針状、羽毛状又は扇状に発達し、冬季の気温が低く、湿度の高い、晴天、無風の夜に発生する。
【0026】
軌道1は、車両3が走行する通路(線路)である。架線2は、線路上空に架設される電車線路(架空電車線路)であり、支持構造物によって支持点間の距離(径間)が所定の長さになるように支持されている。架線2は、図1に示すように、トロリ線2aを備えている。トロリ線2aは、集電装置6のすり板6eが接触する電線であり、すり板6eが接触移動することによって車両3に負荷電流を供給する。
【0027】
車両3は、電車又は電気機関車などの電気車(鉄道車両)であり、図1に示すように車体4と、台車5と、集電装置(パンタグラフ)6と、着霜除去装置7などを備えている。車体4は、乗客を積載し輸送するための構造物であり、台車5は車体4を支持して軌道1上を走行する走行装置である。
【0028】
集電装置6は、架線2のトロリ線2aから車両3に電力を導くための装置である。図1に示す集電装置6は、上昇した状態で側面から見たときの外観形状が菱形であり前後対称構造である菱形パンタグラフである。集電装置6は、図1~図3に示す集電舟(舟体)6aと、舟支え部6bと、枠組6cと、図2及び図3に示す昇降機構部6dなどを備えている。集電舟6aは、すり板6eが取り付けられた部材であり、すり板6eはトロリ線2aと接触移動する部材である。舟支え部6bは、集電舟6aを支持する部材であり、集電舟6aを架線2に対して水平に押上げるとともに集電舟6aにばねによる緩衝作用を与える。枠組6cは、舟支え部6bを支持し上下方向に昇降する部材である。枠組6cは、上端が舟支え部6bに回転自在に連結される上枠6fと、上端が上枠6fに回転自在に連結され、下端が昇降機構部6dの主軸に連結される下枠6gとを備えている。昇降機構部6dは、集電舟6aを昇降させる装置であり、集電装置6の使用時には集電舟6aを上昇させ、集電装置6の非使用時(折畳時)にはこの集電舟6aを下降させる。
【0029】
図1~図4に示す着霜除去装置7は、集電装置6が接触するトロリ線2aに付着した霜Fを除去する装置である。着霜除去装置7は、トロリ線2aに付着した霜Fに打撃力を加えてこの霜Fを除去するとともに、このトロリ線2aに抑制剤Oを塗布して霜Fの付着を抑制する。着霜除去装置7は、図1~図3に示すように、既存の集電装置6の集電舟6aを舟支え部6bから取り外した後にこの舟支え部6bに取り付けられたコンパクトな構造であり、既存の集電装置6を改造して新たに着霜除去機能を付加した構造である。着霜除去装置7は、図1に示すように、集電装置6の進行方向前側に配置されている。着霜除去装置7は、図1~図4に示す霜除去部8と、抑制剤供給部9と、図2及び図3に示す使用状態切替部10と、回転速度設定部11と、制御部12などを備えている。
【0030】
図1~図4に示す霜除去部8は、霜Fに打撃力を加えるとともに打撃後のトロリ線2aに残存する霜Fを掃き取って、このトロリ線2aからこの霜Fを除去する手段である。霜除去部8は、図1~図4に示す回転ブラシ部8aと、図2及び図3に示す回転ブラシ駆動部8bと、駆動力伝達部8cと、図2~図5に示す回転速度検出部8dを備えている。
【0031】
図1~図4に示す回転ブラシ部8aは、トロリ線2aと回転接触する部材である。回転ブラシ部8aは、図5に示すトロリ線2aとすり板6eとが一箇所で接触して摩耗しないようにトロリ線2aには水平方向にジグザグ偏位が付与されているため、この偏位量よりも長く形成されている。回転ブラシ部8aは、図4及び図5に示す本体部8eと、ブラシ8fと、図5に示す軸受部8gなどを備えている。本体部8eは、図4及び図5に示すように、舟支え部6bに回転自在に支持される部材であり、両端部に軸部を有し外観が円柱状に形成されている。ブラシ8fは、霜Fに衝撃力を加えるとともにトロリ線2aから霜Fを掃き取る部材である。ブラシ8fは、図4に示すように周方向には所定の間隔をあけて、図5に示すように長さ方向には所定の幅で本体部8eの外周面に植え込まれている。ブラシ8fは、図5に示すように、トロリ線2aとすり板6eとが接触する接触面(しゅう動面)に毛先が接触するだけではなく、トロリ線2aの両側面にも毛先が接触する。ブラシ8fは、霜Fに衝撃を加えるのに十分な剛性を備え、耐摩耗性のプラスチックなどの絶縁材によって形成することが好ましい。軸受部8gは、回転ブラシ部8aを回転自在に支持する部材である。軸受部8gは、図5に示すように、回転ブラシ部8aの両端部をそれぞれ回転自在に支持する転がり軸受などであり、回転ブラシ部8aの両端部を支持した状態で舟支え部6bに取り付けられている。
【0032】
図2及び図3に示す回転ブラシ駆動部8bは、回転ブラシ部8aを回転駆動する手段である。回転ブラシ駆動部8bは、例えば、駆動力を発生し正転及び逆転可能なモータであり、車体4の屋根上に設置されている。
【0033】
駆動力伝達部8cは、回転ブラシ駆動部8bが発生する駆動力を回転ブラシ部8aに伝達する手段である。駆動力伝達部8cは、原動軸の回転を従動軸に伝達するベルト伝動装置などの巻き掛け伝動装置であり、図2及び図3に示すように回転体8h~8kと巻き掛け部材8m~8oなどを備えている。回転体8hは、回転ブラシ部8aと一体となって回転するベルト車であり、図5に示すように本体部8eの軸端部に固定されている。図2及び図3に示すように、回転体8iは上枠6fと舟支え部6bとを連結する連結部(ヒンジ部)に回転自在に支持されるベルト車であり、回転体8jは、上枠6fと下枠6gとを連結する連結部(ヒンジ部)に回転自在に支持されるベルト車であり、回転体8kは回転ブラシ駆動部8bの駆動軸と一体となって回転するベルト車である。巻き掛け部材8mは、回転体8hと回転体8iとに巻き掛けられるベルトであり、巻き掛け部材8nは回転体8iと回転体8jとに巻き掛けられるベルトであり、巻き掛け部材8oは回転体8jと回転体8kとに巻き掛けられるベルトである。
【0034】
図2~図5に示す回転速度検出部8dは、回転ブラシ部8aの回転速度を検出する手段である。回転速度検出部8dは、回転ブラシ部8aの回転速度に応じた電気信号(回転速度情報)を制御部12に出力するロータリエンコーダなどである。回転速度検出部8dは、図5に示すように、本体部8eの回転体8hが取り付けられている側とは反対側の軸端部に配置されている。
【0035】
図2~図5に示す抑制剤供給部9は、霜Fの付着を抑制する抑制剤Oを回転ブラシ部8aに供給する手段である。抑制剤供給部9は、図4及び図5に示す抑制剤付着部9aと、図2及び図3に示す抑制剤収容部9bと、抑制剤送出部9cと、抑制剤流路9dと、図2~図4に示す抑制剤検出部9eなどを備えている。抑制剤付着部9aは、回転ブラシ部8aに抑制剤Oを付着させる手段である。抑制剤付着部9aは、図4及び図5に示すように、回転ブラシ部8aのブラシ8fの毛先が抑制剤Oと接触するように、回転ブラシ部8aの下方に配置された受け皿である。図2及び図3に示す抑制剤収容部9bは、霜Fの付着を抑制する抑制剤Oを収容する手段である。抑制剤収容部9bは、例えば、トロリ線2aの表面に塗布されることによってこのトロリ線2aへの霜Fの付着を抑えるシリコーン油またはフッ素コーティング剤などを収容するタンクである。抑制剤送出部9cは、抑制剤収容部9bから抑制剤付着部9aに抑制剤Oを送出する手段であり、抑制剤収容部9b内の抑制剤Oを抑制剤付着部9a内に排出するポンプである。抑制剤流路9dは、抑制剤付着部9aと抑制剤収容部9bとを接続する手段であり、抑制剤収容部9bから抑制剤付着部9aに抑制剤Oが流れる配管である。図2~図4に示す抑制剤検出部9eは、抑制剤付着部9a内の抑制剤Oを検出する手段である。抑制剤検出部9eは、抑制剤付着部9a内の抑制剤Oの液面の高さを検出し、この抑制剤Oの残量に応じた電気信号(残量情報)を制御部12に出力する液面センサなどである。
【0036】
図2及び図3に示す使用状態切替部10は、着霜除去装置7を使用状態と非使用状態とに切り替える手段である。使用状態切替部10は、例えば、車両3を運転する運転士などが着霜除去装置7の使用状態又は非使用状態を選択するときに操作するスイッチである。使用状態切替部10は、図2に示すように、回転ブラシ部8aがトロリ線2aと接触するように昇降機構部6dに枠組6cを上昇させる霜取り走行モードと、図3に示すように回転ブラシ部8aがトロリ線2aから離れるように昇降機構部6dに枠組6cを下降させる通常走行モードとに切り替える。使用状態切替部10は、霜取り走行モードが選択されたときには霜取り走行切替信号を制御部12に出力し、通常走行モードが選択されたときには通常走行切替信号を制御部12に出力する。
【0037】
図2及び図3に示す回転速度設定部11は、回転ブラシ部8aの回転速度を設定する手段である。回転速度設定部11は、例えば、運転士などが回転ブラシ部8aの回転速度を任意の回転速度に設定するときに操作されるスイッチである。回転速度設定部11は、トロリ線2aに霜Fが比較的強固に付着しているような走行区間を車両3が走行するときには、回転ブラシ部8aの回転速度を高く設定し、トロリ線2aに霜Fが比較的弱く付着しているような走行区間を車両3が走行するときには、回転ブラシ部8aの回転速度を低く設定する。回転速度設定部11は、設定後の回転ブラシ部8aの回転速度に応じた回転速度設定信号を制御部12に出力する。
【0038】
制御部12は、着霜除去装置7の種々の動作を制御する手段(中央処理部)である。制御部12は、例えば、運転士が車両3を制御するときに操作する主幹制御器(マスターコントローラ)であり、車両3の運転室内の運転台に設置されている。制御部12は、回転速度検出部8dが出力する回転検出信号に基づいて回転ブラシ駆動部8bを駆動制御し回転ブラシ部8aの回転速度を制御したり、抑制剤検出部9eが出力する残量信号に基づいて抑制剤送出部9cを駆動制御し抑制剤付着部9aに抑制剤Oを供給させたり、使用状態切替部10が出力する霜取り走行切替信号及び通常走行切替信号に基づいて昇降機構部6dを動作制御し集電舟6aを昇降動作させたり、回転速度設定部11が出力する回転速度設定信号に基づいて回転ブラシ駆動部8bを動作制御し回転ブラシ部8aの回転速度を可変させたりする。制御部12には、図2及び図3に示すように昇降機構部6d、回転ブラシ駆動部8b、回転速度検出部8d、抑制剤送出部9c、抑制剤検出部9e、使用状態切替部10及び回転速度設定部11などが電気的に接続されている。
【0039】
次に、この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の動作を説明する。
(通常走行時)
図3に示すように、霜取り機能を使用しない通常走行時には、使用状態切替部10を運転士が操作して霜取り走行モードから通常走行モードに切り替える。通常走行切替信号を使用状態切替部10が制御部12に出力すると、制御部12が昇降機構部6dに下降動作を指令する。その結果、昇降機構部6dのエアシリンダが駆動力を発生してこの駆動力によって舟支え部6bとともに枠組6cが下降し、回転ブラシ部8aがトロリ線2aから離れ、枠組6cが折り畳まれた状態で昇降機構部6dによってロックされる。着霜除去装置7の進行方向後側に集電装置6が配置されているため、トロリ線2aから車両3にこの集電装置6によって電力が供給されて車両3がA方向に走行する。
【0040】
(霜取り走行時)
図2に示すように、霜取り機能を使用する霜取り走行時には、使用状態切替部10を運転士が通常走行モードから霜取り走行モードに切り替える。霜取り走行切替信号を使用状態切替部10が制御部12に出力し、制御部12が昇降機構部6dに上昇動作を指令する。その結果、昇降機構部6dが枠組6cのロックを解除するとこの昇降機構部6dのばねが駆動力を発生してこの駆動力によって舟支え部6bとともに枠組6cが上昇し、回転ブラシ部8aがトロリ線2aと接触する。次に、回転ブラシ駆動部8bに制御部12が回転動作を指令すると、回転ブラシ駆動部8bの駆動力が駆動力伝達部8cを通じて回転ブラシ部8aに伝達されて、回転ブラシ部8aがB方向(車両3の進行方向)に回転を開始する。通常走行時と同様に、トロリ線2aから車両3に集電装置6によって電力が供給されるため、A方向に車両3が走行する。
【0041】
次に、この発明の第1実施形態に係る着霜除去方法について説明する。
図1及び図2に示すように車両3がA方向に走行しているときに、図4に示すように回転ブラシ部8aがB方向に回転すると、トロリ線2aに付着した霜Fにブラシ8fが次々に衝突して霜Fに連続して打撃力が加わり、この打撃力によって霜Fがトロリ線2aから叩き落される。このとき、図5に示すように、トロリ線2aの両側面にもブラシ8fが接触するため、トロリ線2aとすり板6eとの接触面に付着した霜Fだけではなく、トロリ線2aの両側面に付着した霜Fにもブラシ8fによって打撃力が加えられトロリ線2aから叩き落される。ブラシ8fによって打撃力が加えられた後にトロリ線2aに霜Fが残存しているときには、この残存した霜Fがブラシ8fによってトロリ線2aから掃き取られ除去される。図4に示すように、回転ブラシ部8aがB方向に回転すると、ブラシ8fの毛先が抑制剤付着部9a内の抑制剤Oと接触して、このブラシ8fに抑制剤Oが付着する。回転ブラシ部8aがB方向にさらに回転するとブラシ8fの毛先がトロリ線2aと接触し、ブラシ8fに付着した抑制剤Oがトロリ線2aに塗布される。
【0042】
この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置及び着霜除去方法には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、霜除去部8が霜Fに打撃力を加えるとともに打撃後のトロリ線2aに残存する霜Fを掃き取って、このトロリ線2aからこの霜Fを除去する。このため、霜Fに打撃力を加えてトロリ線2aから霜Fを叩き落すことができるとともに、残存する霜Fを霜除去部8によってトロリ線2aから掃き取り、残存する霜Fが種となって霜Fが再成長するのを抑制することができる。その結果、トロリ線2aとすり板6eとの間に霜Fが挟まりこれらの間にアークが発生するのを防止することができる。
【0043】
(2) この第1実施形態では、トロリ線2aと回転接触する回転ブラシ部8aを霜除去部8が備えている。例えば、図9に示すような従来の霜取り列車103では、図10に示すように、単位面積の霜Fに与えるエネルギーは列車の速度による運動エネルギーだけである。一方、この第1実施形態では、車両3の移動速度に伴う運動エネルギーと回転ブラシ部8aの回転速度に伴う回転エネルギーとを霜Fの剥落に利用し、一つの霜Fに打撃力を強く、連続的に与えて霜Fを除去することができる。
【0044】
(3) この第1実施形態では、霜Fの付着を抑制する抑制剤Oを回転ブラシ部8aに抑制剤供給部9が供給する。このため、トロリ線2aから霜Fを除去するのと同時に、このトロリ線2aに抑制剤Oを供給して霜Fの成長を阻害し、トロリ線2aに霜Fが再成長するのを抑制することができる。
【0045】
(4) この第1実施形態では、使用時には回転ブラシ部8aがトロリ線2aと接触し、非使用時には回転ブラシ部8aがトロリ線2aから離れる。このため、通常走行時に回転ブラシ部8aがトロリ線2aと接触して、回転ブラシ部8aが摩耗するのを防止することができる。
【0046】
(5) この第1実施形態では、回転ブラシ部8aの回転速度を制御部12が制御する。このため、回転ブラシ部8aの回転速度を任意にコントロールすることができ、単位面積あたりの霜Fに打撃力を複数回与えることができる。
【0047】
(6) この第1実施形態では、集電装置6の進行方向前側に霜除去部8が配置されている。このため、集電装置6の集電機能を阻害することなくトロリ線2aに付着する霜Fを有効に除去することができるとともに、霜Fが除去されたトロリ線2aから車両3に集電装置6によって安定して電力を供給することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図6は、この発明の第2実施形態に係る着霜防止装置を備える車両を概略的に示す側面図であり、図6(A)は上り方面に走行している状態を示す側面図であり、図6(B)は下り方面に走行している状態を示す側面図である。図7は、図6のVII部分の部分断面図である。図8は、図6のVIII部分の部分断面図である。以下では、図1~図5に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0049】
図6に示す車両3A~3Fは、6両編成の列車を構成する新幹線列車などであり、一編成に2台の集電装置6が存在し2両目と5両目に集電装置6を備えている。図6~図8に示す集電装置6は、車両3A~3Fの進行方向(A1,A2方向)に対して非対称であり、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム型パンタグラフである。集電装置6は、気流の乱れを防ぐとともに空力音を低減可能な構造であり、図7及び図8に示すように内部に空間を有する集電舟6a、舟支え部6b及び枠組6cを備えているとともに、昇降機構部6dを覆う風防部(風防カバー)6hなどを備えている。
【0050】
着霜除去装置7は、図7及び図8に示すように、既存の集電装置6と一体に取り付けられたコンパクトな構造であり、既存の集電装置6を改造してこの既存の集電装置6に新たに着霜除去機能を付加したような構造である。着霜除去装置7は、図7及び図8に示すように、霜除去部8と、抑制剤供給部9と、制御部12と、使用状態切替部13と、車両速度検出部14と、路線情報記憶部15と、車両位置検出部16などを備えている。
【0051】
図6に示す霜除去部8は、先頭の車両3Aよりの集電装置6の進行方向前側(A1方向)と、後尾の車両3F寄りの集電装置6の進行方向後側(A2方向)に配置されている。霜除去部8は、図7及び図8に示すように、気流の乱れを防ぐために集電舟6a、舟支え部6b、枠組6c及び風防部6hの内部に収容されている。
【0052】
図7及び図8に示す使用状態切替部13は、進行方向前側の霜除去部8と進行方向後側の霜除去部8とを使用状態と非使用状態とに切り替える手段である。使用状態切替部13は、例えば、図6(A)に示すように、車両3A~3Fが上り方面(A1方向)に走行するときには、先頭よりの車両3Bの回転ブラシ部8aを上昇させてトロリ線2aに接触させ使用状態に切り替えるとともに、後尾寄りの車両3Eの回転ブラシ部8aを下降させてトロリ線2aから離し非使用状態に切り替える。一方、使用状態切替部13は、例えば、図6(B)に示すように、車両3A~3Fが下り方面(A2方向)に走行するときには、先頭寄りの車両3Eの回転ブラシ部8aをトロリ線2aに接触させて使用状態に切り替えるとともに、後尾よりの車両3Bの回転ブラシ部8aを下降させてトロリ線2aから離し非使用状態に切り替える。使用状態切替部13は、図7及び図8に示すように、回転ブラシ昇降部13aと、流体圧回路13bと、作動流体流路13cなどを備えており、気流の乱れを防ぐため集電舟6a、舟支え部6b、枠組6c及び風防部6hの内部に収容されている。
【0053】
回転ブラシ昇降部13aは、回転ブラシ部8aを昇降駆動する手段であり、流体圧によって回転ブラシ部8aを上下方向に所定量だけ駆動する空気圧シリンダ又は油圧シリンダなどである。流体圧回路13bは、回転ブラシ昇降部13aを作動させる手段であり、ポンプ、バルブ及びタンクなどから構成された空気圧回路又は油圧回路などである。作動流体流路13cは、回転ブラシ昇降部13aと流体圧回路13bとを接続する手段であり、流体圧回路13bから回転ブラシ昇降部13aに油又は空気などの作動流体が流れる配管である。
【0054】
車両速度検出部14は、車両3A,3Fの速度を検出する手段である。車両速度検出部14は、車両3A,3Fの車輪の回転数に応じた距離パルス信号(車両速度信号)を制御部12に出力する速度発電機などである。
【0055】
路線情報記憶部15は、車両3A~3Fが走行する路線に関する情報を路線情報として記憶する手段である。路線情報記憶部15は、例えば、図6に示すように、トロリ線2aに霜Fが付着する可能性のある通過区間の路線の位置及びこの通過区間の距離などを路線情報として記憶するメモリである。路線情報記憶部15には、この通過区間の範囲が変更されたような場合には変更後の路線情報が書き込まれ記憶されている。
【0056】
車両位置検出部16は、車両3A,3Fの現在位置を検出する手段である。車両位置検出部16は、軌道1側の特定地点に設置された自動列車停止装置(ATS)のATS地上子との間で相互に情報を送受信するために車両3A,3F側に設置されたATS車上子と、このATS車上子からの信号を受信して現在位置信号(絶対位置信号)を制御部12に出力するATS受信機などを備えている。
【0057】
次に、この発明の第2実施形態に係る着霜除去装置の動作を説明する。
(通常走行時)
図6に示す車両3A~3Fが上下線をA1,A2方向に通常走行しているときには、車両3B,3Eの霜除去部8を使用状態切替部13が非使用状態に切り替えている。このため、車両3B,3Eの回転ブラシ部8aがトロリ線2aから離れて集電舟6a内に収容されており、車両3B,3Eのすり板6eがトロリ線2aと接触しているため、集電装置6によって車両3B,3Eにはトロリ線2aから電力が供給されている。
【0058】
(霜取り走行時)
図6(A)に示すように、車両3A~3Fが上り方面(A1方向)に走行すると、図7及び図8に示す車両位置検出部16のATS車上子が出力する絶対位置信号に基づいて車両3Aの絶対位置を制御部12が検出する。そして、次のATS地上子に車両3Aが到達するまで車両速度検出部14が出力する距離パルス信号を制御部12が積算して、車両3Aの現在位置を制御部12が検出する。次に、路線情報記憶部15が記憶する路線情報と現在位置とを制御部12が参照して、トロリ線2aに霜Fが付着する通過区間に車両3Bのすり板6eが進入するタイミングを制御部12が演算する。そして、この通過区間Sにすり板6eが進入する前に、図7に示す車両3B側の使用状態切替部13に切替動作を制御部12が指令するとともに、車両3B側の回転ブラシ駆動部8bに回転動作を指令する。その結果、流体圧回路13bが回転ブラシ昇降部13aに作動流体を供給すると、回転ブラシ昇降部13aが回転ブラシ部8aを上昇させ回転ブラシ部8aがトロリ線2aと回転接触するとともに、回転ブラシ駆動部8bが回転ブラシ部8aをB1方向に回転させてトロリ線2aに付着する霜Fを除去する。このとき、図8に示す車両3E側の使用状態切替部13には切替動作を制御部12が指令しないため、車両3E側の回転ブラシ部8aが下降状態を維持しておりトロリ線2aから離れ集電舟6a内に収容されている。このとき、車両3B,3Eのすり板6eがトロリ線2aと接触しているため、車両3B,3Eにはトロリ線2aから電力が供給されている。
【0059】
図6(B)に示すように、車両3A~3Fが下り方面(A2方向)に走行するときには、車両3E側の使用状態切替部13に切替動作を制御部12が指令するため、車両3E側の回転ブラシ部8aが上昇してトロリ線2aと接触し、回転ブラシ部8aがB2方向に回転してトロリ線2aに付着する霜Fを除去する。一方、車両3B側の使用状態切替部13には切替動作を制御部12が指令しないため、車両3B側の回転ブラシ部8aが下降状態を維持しておりトロリ線2aから離れ集電舟6a内に収容されている。このとき、車両3B,3Eの集電装置6によって車両3B,3Eにはトロリ線2aから電力が供給されている。
【0060】
この発明の第2実施形態に係る着霜除去装置及び着霜除去方法には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、一編成に複数の集電装置6が存在するときに、先頭の車両3A寄りの集電装置6の進行方向前側と、後尾の車両3F寄りの集電装置6の進行方向後側とに霜除去部8が配置されており、進行方向前側の霜除去部8と進行方向後側の霜除去部8とを使用状態と非使用状態とに使用状態切替部13が切り替える。このため、状況に応じて霜取り走行モードと通常走行モードとに前後の霜除去部8を切り替えることができる。また、新幹線のように集電装置6が騒音源となり一編成当たりの集電装置6の設置台数に制約がある場合には、図1~図5に示すような集電装置6に近似した構造の着霜除去装置7を増設せずに、図6~図8に示すように既存の集電装置6に霜除去部8を一体化させ、着霜除去装置7が新たな騒音源となるのを防ぐことができる。
【0061】
(2) この第2実施形態では、車両3A,3Fの現在位置を車両位置検出部16が検出し、進行方向前側の霜除去部8が霜Fを除去するように、車両位置検出部16の検出結果に基づいてこの霜除去部8を非使用状態から使用状態に使用状態切替部13が切り替える。このため、霜Fが発生しやすい線区を車両3A~3Fが走行するようなときに、自動的に霜除去部8を使用状態に切り替えてトロリ線2aに付着する霜Fを除去することができる。
【0062】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、トロリ線2aに付着した霜Fを霜除去部8によって除去する着霜除去装置7を例に挙げて説明したが、トロリ線2aに付着した雪又は氷などの付着物を除去部によって除去する付着物除去装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、電車線路として架空電車線路のトロリ線2aを例に挙げて説明したが、第三軌条式(サードレール式)電車線路の導電性レールについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、霜除去部8が回転ブラシ部8aを備える場合を例に挙げて説明したが、このような構造に限定するものではなく、同様の機能を有する他の構造の除去部についてもこの発明を適用することができる。
【0063】
(2) この実施形態では、駆動力伝達部8cがベルト伝動装置である場合を例に挙げて説明したが、チェーン伝動装置又は歯車伝動装置などを駆動力伝達部8cに使用することもできる。また、この実施形態では、回転ブラシ部8aに抑制剤Oを下から付着させて供給する場合を例に挙げて説明したが、回転ブラシ部8aに抑制剤Oを上から滴下して供給することもできる。
【0064】
(3) この第1実施形態では、車両3が1両編成の場合を例に挙げて説明したが、車両3が複数連結されている場合についてもこの発明を適用することができる。例えば、一編成に集電装置6が1台又は複数台搭載されている場合には、先頭車両の進行方向前側と後尾車両の進行方向後側とに着霜除去装置7をそれぞれ設置することもできる。同様に、1両編成の車両の前後に集電装置6を備える場合には、前側の集電装置の前方と後側の集電装置の後方とにそれぞれ回転ブラシ部8aを配置することもできる。また、この第2実施形態では、一編成に2台の集電装置6を備える場合を例に挙げて説明したが、空力音が問題とならない場合には先頭車両寄りの集電装置6の前方と後尾車両寄りの集電装置6の後方とにそれぞれ図1~図3に示す着霜除去装置7を配置することもできる。さらに、この第2実施形態では、車両位置検出部16がATS車上子からの信号を受信して車両3の位置を検出する場合を例に挙げて説明したが、このような検出方法に限定するものではない。例えば、摩耗の多い特定な位置を事前にデータ入力することにより、GPS(Global Positioning System(全地球測位システム))や自律航行装置(ジャイロ)を併用して車両3の位置を検出することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置を備える車両を概略的に示す側面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の使用状態を概略的に示す側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の非使用状態を概略的に示す側面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の霜除去部の回転ブラシ部を概略的に示す側面図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る着霜除去装置の霜除去部の回転ブラシ部を概略的に示す正面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る着霜防止装置を備える車両を概略的に示す側面図であり、(A)は上り方面に走行している状態を示す側面図であり、(B)は下り方面に走行している状態を示す側面図である。
【図7】図6のVII部分の部分断面図である。
【図8】図6のVIII部分の部分断面図である。
【図9】従来の霜取り列車の一例を概略的に示す側面図である。
【図10】従来の霜取り列車による霜取り動作を模式的に示す概念図であり、(A)は霜取り前の状態を示す側面図であり、(B)は霜取り後の状態を示す側面図であり、(C)は霜取り後の状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 軌道
2 架線
2a トロリ線
3,3A~3F 車両
6 集電装置
6a 集電舟
6e すり板
7 着霜除去装置
8 霜除去部
8a 回転ブラシ部
9 抑制剤供給部
10 使用状態切替部
12 制御部
13 使用状態切替部
13a 回転ブラシ昇降部
16 車両位置検出部
F 霜
O 抑制剤
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9