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明細書 :低熱膨張線状体の製作方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5295585号 (P5295585)
公開番号 特開2008-235259 (P2008-235259A)
登録日 平成25年6月21日(2013.6.21)
発行日 平成25年9月18日(2013.9.18)
公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
発明の名称または考案の名称 低熱膨張線状体の製作方法
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
B21C  37/04        (2006.01)
B60M   1/13        (2006.01)
FI H01B 13/00 501Z
B21C 37/04 C
B60M 1/13 BFDH
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2008-035725 (P2008-035725)
出願日 平成20年2月18日(2008.2.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年8月21日~23日 「平成18年 電気学会産業応用部門大会」に文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 2006年12月13日~15日 日本機械学会交通・物流部門主催の「第13回鉄道技術連合シンポジウム」に文書をもって発表
優先権出願番号 2007037651
優先日 平成19年2月19日(2007.2.19)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年3月10日(2010.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】上條 弘貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
【識別番号】100096426、【弁理士】、【氏名又は名称】川合 誠
審査官 【審査官】近藤 政克
参考文献・文献 特開平10-223061(JP,A)
特開2004-329575(JP,A)
特開2002-162532(JP,A)
調査した分野 H01B 13/00
B21C 37/04
B60M 1/13
特許請求の範囲 【請求項1】
円筒形状導電体内に低熱膨張繊維を配置し、スエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行い、前記円筒形状導電体を絞り、該円筒形状導電体の外径を徐々に縮小させ、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維との接触面を加工し、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維とを密着させて複合し、低熱膨張線状体を製作することを特徴とする低熱膨張線状体の製作方法。
【請求項2】
請求項1記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記スエージング加工は、外側に配置された前記円筒形状導電体の表面にウロコ状の圧痕が生じる程度まで十分に行うことを特徴とする低熱膨張線状体の製作方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維に撚りを加えることを特徴とする低熱膨張線状体の製作方法。
【請求項4】
請求項3記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維の撚り方が、組紐であることを特徴とする低熱膨張線状体の製作方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維はPBO繊維であることを特徴とする低熱膨張線状体の製作方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱膨張線状体の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トロリ線、吊架線と言った線状材料では温度変化に伴う熱伸縮が大きく、敷設や保守管理において問題となっている。
そこで、熱伸縮に伴う架線支持部構造への影響を低減し、設備の簡素化やメンテナンスフリー化といったニーズに応えるために、線膨張係数の小さい材料の適用による低熱膨張線状材料の研究開発を進めている(下記特許文献1~4参照)。
【0003】
これまでに、銅と低熱膨張線状材料として有望な有機系新材料で負の線膨張係数をもつPBO繊維「ザイロン(商品名)」との複合材料として、銅板とザイロンプリプレグシートを接着により積層した積層複合試料や、短尺の溝付き銅線にザイロンを挿入した構造や、銅パイプ内にザイロンを挿入した構造をした接着による短尺のザイロン充填銅線を製作し、その線膨張係数を測定して線膨張係数の制御の可能性を確認してきた。

【特許文献1】特開2003-281942号公報
【特許文献2】特開2006-085915号公報
【特許文献3】特開2006-164692号公報
【特許文献4】特開2006-172838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでのエポキシ系接着剤を用いた接着による複合方法では、耐熱性や接着後の曲げなどの変形が難しいといった実用上の問題があった。
また、従来は導電性材料に低熱膨張材料を処理せずにそのまま挿入し、機械加工を行い複合することが提案されていた。この方法でも、導電性材料と低熱膨張材料は複合することができ、送電線やき電線などの電線に用いる導電性を有する低熱膨張線材として問題なく使用できる。
【0005】
しかし、機械加工だけで複合した低熱膨張線状体をトロリ線として用いた場合、使用により表面が摩耗してしまい、内部に挿入している低熱膨張材料が露出してばらけるなどの問題が発生する。
本発明は、上記状況に鑑みて、円筒形状導電体内に低熱膨張材料を挿入してスエージング加工することで、接着剤を用いることなく、導電体材料と低熱膨張材料とのそれぞれの特性を保持しつつ信頼性の高い複合構造化を図ることができる低熱膨張線状体の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕低熱膨張線状体の製作方法において、円筒形状導電体内に低熱膨張繊維を配置し、スエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行い、前記円筒形状導電体を絞り、この円筒形状導電体の外径を徐々に縮小させ、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維との接触面を加工し、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維とを密着させて複合し、低熱膨張線状体を製作することを特徴とする。
【0007】
〔2〕上記〔1〕記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記スエージング加工は、外側に配置された前記円筒形状導電体の表面にウロコ状の圧痕が生じる程度まで十分に行うことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維に撚りを加えることを特徴とする。
【0008】
〔4〕上記〔3〕記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維の撚り方が、組紐であることを特徴とする。
〕上記〔1〕又は〔2〕記載の低熱膨張線状体の製作方法において、前記低熱膨張繊維はPBO繊維であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の低熱膨張線状体の製作方法によれば、接着剤を用いることなく、円筒形状導電体と低熱膨張繊維とのそれぞれの特性を保持しつつ信頼性の高い円筒形状導電体と低熱膨張繊維との複合構造化を図ることができる。
また、円筒形状導電体に低熱膨張繊維を処理せずにそのまま挿入してスエージング加工を行っても、円筒形状導電体と低熱膨張繊維を複合することができ、送電線やき電線などの電線に用いる導電性を有する低熱膨張繊維として問題なく使用できる。
【0010】
さらに、低熱膨張繊維にめっきを施した上でスエージング加工を行うようにしたので、円筒形状導電体と低熱膨張繊維の複合力及び密着性が向上し、機械加工だけで複合した低熱膨張線状体をトロリ線へ用いた時のように、使用により表面が摩耗してしまい、内部に挿入している低熱膨張繊維が露出してばらけるなどの問題を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の低熱膨張線状体の製作方法は、円筒形状導電体内に低熱膨張繊維を配置し、スエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行い、前記円筒形状導電体を絞り、この円筒形状導電体の外径を徐々に縮小させ、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維との接触面を加工し、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維とを密着させて複合し、低熱膨張線状体を製作する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す低熱膨張線状体の斜視図、図2は本発明の実施例を示す低熱膨張線状体の断面図、図3は本発明で用いるスエージング加工機を示す図面代用の写真である。なお、図1及び図2ではスエージング加工が完了した低熱膨張線状体を示している。
【0013】
これらの図において、1はスエージング加工後の円筒形状導電体(銅パイプ)2はスエージング加工後の円筒形状導電体1内に複合される低熱膨張繊維(PBO繊維、例えばザイロン)、3はスエージング加工により円筒形状導電体1に低熱膨張繊維2が加圧されて複合された低熱膨張線状体である。
スエージング加工は、スエージング加工機5に装着されるダイス(金型)6を高速回転させ連続的に絞り加工を行う加工法であり、丸棒、パイプ絞りをはじめ、ワイヤーカシメ、砲弾形状など、多くの分野で使用されている。スエージング加工の特徴は、回転式鍛造のため真円精度を高く加工できること、熱間、冷間の加工や、ソリッドおよびパイプ絞り加工が可能であること、加圧力が大きいこと、また、ワイヤー材の連続加工が可能であることなどである。特に、ロール、線引きなどの機械加工では、有機材料やカーボンなどの低熱膨張繊維は高強度で弾性が小さく延び難いため、それらの低熱膨張繊維が破断してしまい、特性を保持しつつ複合することが難しかったが、本発明におけるスエージング加工の採用により、円筒形状導電体内への低熱膨張繊維の円滑な複合が可能となった。
【0014】
そこで、本発明では、スエージング加工の大きな加圧力、連続加工などの特徴を生かして円筒形状導電体としての銅パイプ中に、低熱膨張繊維としてのザイロンを挿入してスエージング加工することにより、銅とザイロンを加圧し複合するようにした。
図4は本発明にかかるスエージング加工状況を示す工程断面図である。
この図において、1′はスエージング加工前の円筒形状導電体(銅パイプ)、2′はスエージング加工前の低熱膨張繊維(PBO繊維)である。
【0015】
まず、図4(a)に示すように、円筒形状導電体1′に低熱膨張繊維(PBO繊維)2′を充填する。次に、図4(b)に示すように、低熱膨張繊維が充填された円筒形状導電体をスエージング加工することにより、図4(c)に示すような円筒形状導電体1へ低熱膨張繊維2が複合された低熱膨張線状体3を製作することができる。
図5は本発明の実施例を示すスエージング加工による低熱膨張線状体の製作工程を示す図、図6は本発明にかかるスエージング加工回数と円筒形状導電体の外径の関係を示す図である。
【0016】
ここに、低熱膨張線状体3を製作するスエージング加工工程を図5を参照しながら説明する。
まず、図5(a)に示すように、外径10mm、内径7mmの円筒形状導電体(銅パイプ)1′に低熱膨張繊維としてのPBO繊維(例えば、ザイロン3270dtex×44束)2′を充填する。そこで、スエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行う。すなわち、1回目のスエージング加工後〔図5(b)〕、3回目のスエージング加工後〔図5(c)〕、5回目のスエージング加工後〔図5(d)〕、7回目のスエージング加工後〔図5(e)〕、9回目のスエージング加工後〔図5(f)〕、最終回である11回目のスエージング加工後〔図5(g)〕と加工されて、低熱膨張線状体3が製作される。つまり、スエージング加工を繰り返し行うことにより、円筒形状導電体(銅パイプ)1′の外径が徐々に縮小するとともに、内径も同時に縮小して、PBO繊維2′と密着していく。なお、これは加工の一例で、11回のスエージング加工で複合化できた例であり、スエージング加工の回数は適宜設定することができる。
【0017】
このように、スエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行って、円筒形状導電体1′を絞り外径を徐々に縮小させることで、円筒形状導電体1′と低熱膨張繊維2′との接触面を加工し、円筒形状導電体1′と低熱膨張繊維2′とを密着させて複合し、低熱膨張線状体3を製作する。
上記のように加工することで、最初外径10mm、内径7mmの円筒形状導電体(銅パイプ)1′に低熱膨張繊維(ザイロン3270dtex×44束)2′が充填されていたものが、図6に示されるように、円筒形状導電体1′の外径は次第に絞られて細くなっていく。同時に、円筒形状導電体1′の内径も絞られ、その肉厚も増加している。そして、最終回である11回目のスエージング加工後には低熱膨張線状体3(円筒形状導電体1)の外径は7.67mmとなった。一方、加工前に端部より出ていた充填したザイロンは、円筒形状導電体1が軸方向にも多少延びるため、加工後見えなくなった。
【0018】
最終的に低熱膨張線状体3が十分複合されたかは、図7に示すようなウロコ状の圧痕が低熱膨張線状体3の表面に出たかどうかでほぼ判断することができる。なお、再度同じ径のダイスに通すスキンパスにより、そのウロコ状の圧痕は無くすことができる。
更に、表1のように、加工前の円筒形状導電体(銅パイプ)の外径・内径及び低熱膨張繊維(ザイロン)の挿入本数を変えて複数の試料を製作した。銅パイプ内にザイロンを充填する際に、銅パイプの一端では、ザイロンを挿入して接着した銅製のキャップをネジ止めすることでザイロンを固定し、他端はフリーの状態にした。スエージング加工により、銅パイプの肉厚は増加し、長さは伸びる。それぞれの試料A~Eは、外径の縮小が止まるまで十分にスエージング加工を行い、最終的に表1のような外径まで絞られて加圧され、ザイロンと密着して複合された。なお、試料E(参考例)のみ、同条件の試料Dよりスエージング加工の回数を減らして絞り量を抑え、加圧力を小さくした。
【0019】
【表1】
JP0005295585B2_000002t.gif
なお、上記した低熱膨張繊維に撚りを加えるようにしてもよい。また、低熱膨張繊維の撚り方を、組紐とするようにしてもよい。
次に、作製された低熱膨張線状体の線膨張定数の測定方法について説明する。
【0020】
試料に温度補償型の歪みゲージを貼り付け、温度変化を与えた時の歪み量を測定し、使用した歪みゲージが温度変化で生じる見かけ歪みによる影響を除去して線膨張係数を算出した。なお、リード線の温度勾配や温度変化の影響を除去するために1アクティブゲージ法3線式で、データロガーを用いて測定した。
試料を電気温風式オーブンに入れ、設定温度を-20から80℃までの間で10℃ずつ変化させた場合の線膨張係数の測定結果を図8に示す。
【0021】
測定結果から、各試料の25℃付近の線膨張係数の平均値を求めると表1に示すようになる。十分にスエージング加工して銅パイプとザイロンが複合された試料B,C,Dの線膨張係数は、銅パイプのみの試料Aに比べて、小さく抑えられている。一方、試料Dと同じ条件で、途中でスエージング加工を止めた試料Eは、銅パイプと同程度の線膨張係数を示しており、銅パイプとザイロンが複合できず、外側に配置される銅パイプの値のみが寄与している。また、銅パイプとザイロンが複合された試料において線膨張係数を比較すると、ザイロンの割合が大きい試料Dが最も小さく、ザイロンの割合が大きいほど線膨張係数を抑制できていることが分かる。
【0022】
このように、銅パイプとザイロンの複合方法として、接着剤などを用いず、銅パイプ中にザイロンを挿入してスエージング加工する機械的な複合方法を用いて試料を製作し、線膨張係数を測定した。その結果、スエージング加工を十分に行うことで銅パイプとザイロンを複合した線膨張係数が小さい低熱膨張線状体を製作することができる。さらに、ザイロンの割合により線膨張係数が制御できる可能性があることを確認した。
【0023】
なお、本発明の実施例で用いた低熱膨張材料としてのザイロンは、室温付近での線膨張係数が-6×10-6/℃程度の負の膨張を示し、高強力高弾性率で耐衝撃性が高く、比重が小さいなどの特性も持つ有機系材料である。また、負の線膨張係数を持つ線状体の材料としては、ザイロンに代えて、超高分子量ポリエチレン繊維「ダイニーマ」やカーボン繊維などを用いてもよい。
【0024】
次に、参考例について説明する。
図9は本発明の参考例を示す低熱膨張線状体の模式図、図10はその円筒形状導電体内に配置する低熱膨張材料へのめっき処理の工程図である。
図9において、11は低熱膨張繊維(例えば、PBO繊維からなる線状体)、12は低熱膨張繊維11に施されるめっき層(例えば、銅めっき層)、13はめっき層12付きの単線、14は単線13が円筒形状導電体(例えば、銅)に充填されてスエージング加工された低熱膨張線状体である。
【0025】
以下、低熱膨張繊維11に施されるめっき工程を図10を参照しながら説明する。
(1)まず、図10(a)に示すように、低熱膨張繊維11(例えば、ザイロンまたはダイニーマなどのPBO繊維)を芯材として用意する。
(2)次いで、図10(b)に示すように、その低熱膨張繊維11をめっき槽21に浸して、導電性材料(例えば、銅)をめっきしてめっき層12を形成する。めっき槽21では電着させようとする金属板22(ここでは銅の板状体)と低熱膨張材料11を電解液23中に浸す。次に、この低熱膨張繊維11を陰極とし、金属板22を陽極として、直流電流を流すと、図10(c)に示すように、低熱膨張繊維11上に導電性材料のめっき層12(ここでは銅)を形成することができる。
【0026】
このようにしてめっき処理を施した低熱膨張繊維を円筒形状導電体に充填し、以降は実施例と同様にスエージング加工機のダイスの径を小さくしながら繰り返しスエージング加工を行い、円筒形状導電体を絞りその外径を徐々に減少させることで、円筒形状導電体と低熱膨張繊維との接触面を加工し、前記円筒形状導電体と前記低熱膨張繊維とを密着させて複合し、図9に示すような低熱膨張線状体14を製作する。このとき、低熱膨張繊維11の表面にあるめっきされた導電性材料(めっき層12)も絞られて、繊維同士の接触面も加工されてお互いに一体となり複合することができるので、導電体繊維の複合効果も向上する。
【0027】
図11は銅めっきしないPBO繊維を有する低熱膨張線状体の破断状態を示す図面代用の写真、図12は本発明の参考例を示す銅めっきしたPBO繊維を有する低熱膨張線状体の破断状態を示す図面代用の写真である。
図11に示すように、低熱膨張繊維としてのPBO繊維(ザイロン)101にめっきなどの前処理を行わない状態で円筒形状導電体としての銅パイプ102に挿入し機械加工を行っていた。
【0028】
これに対して、本発明は、図12に示すように、低熱膨張材料としてのPBO繊維(ザイロン)31にめっきによる前処理を行い、めっき層(銅層)32を形成してから、スエージング加工を行うようにした。このように構成することにより、PBO繊維(ザイロン)101部分に銅が入り込まず、PBO繊維(ザイロン)101束の周囲のみ銅パイプ102と接触した状態で、複合効果が十分とは言えなかったが、本発明により、PBO繊維(ザイロン)1本ずつにめっき層(銅層)32が構成でき、PBO繊維間に銅が入り、繊維同士の密着性も向上して複合効果が向上する。また、内部の繊維が露出してもばらけることはない。
【0029】
また、以下の点は、実施例と同様に実施することができる。
(1)スエージング加工は、外側に配置された円筒形状導電体の表面にウロコ状の圧痕が生じる程度まで十分に行う。
(2)低熱膨張繊維に撚りを加えるようにしてもよい。また、撚りを加え後の低熱膨張繊維上にめっき処理を行うようにしてもよい。つまり、撚りを加えるのは、めっき前でも後でも可能である。
【0030】
(3)低熱膨張繊維の撚り方が、組紐であるようにしてもよい。
(4)円筒形状導電体として銅を用いることができる。
(5)低熱膨張繊維としてPBO繊維を用いることができる。
この参考例によれば、めっき層を施すことにより導電性材料と低熱膨張繊維の複合を助け密着性を向上させ、弾性の小さい低熱膨張繊維の機械加工による破断を防ぐことができる。低熱膨張線状体をトロリ線として利用する場合、摩耗により内部部分の低熱膨張繊維が露出する可能性があるが、導電性材料と低熱膨張繊維の間、さらにめっき層を施したことにより繊維の間にも導電性材料が存在するため、導電性材料と低熱膨張繊維の複合力、密着性が向上し、摩耗して低熱膨張繊維が露出してもばらけることなく、複合の効果が継続できる。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の低熱膨張線状体の製作方法は、円筒形状導電体と低熱膨張繊維との複合構造化された低熱膨張線状体の製作方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例を示す低熱膨張線状体の斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示す低熱膨張線状体の断面図である。
【図3】本発明で用いるスエージング加工機を示す図面代用の写真である。
【図4】本発明にかかるスエージング加工状況を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施例を示すスエージング加工による低熱膨張線状体の製作工程を示す図である。
【図6】本発明にかかるスエージング加工回数と銅パイプの外径の関係を示す図である。
【図7】本発明にかかるスエージング加工の最終加工工程であることを判断するためのウロコ状の圧痕を示す図である。
【図8】本発明にかかる試料を電気温風式オーブンに入れ、設定温度を-20から80℃までの間で10℃ずつ変化させた場合の線膨張係数の測定結果を示す図である。
【図9】本発明の参考例を示す低熱膨張線状体の模式図である。
【図10】本発明の参考例を示す円筒形状導電体内に配置する低熱膨張材料へのめっき処理の工程図である。
【図11】めっきしないPBO繊維を有する低熱膨張線状体の破断状態を示す図面代用の写真である。
【図12】本発明の参考例を示す銅めっきしたPBO繊維を有する低熱膨張線状体の破断状態を示す図面代用の写真である。
【符号の説明】
【0034】
1′ スエージング加工前の円筒形状導電体(銅パイプ)
2′ スエージング加工前の低熱膨張繊維(PBO繊維:ザイロン)
1 スエージング加工後の円筒形状導電体(銅パイプ)
2 スエージング加工後の低熱膨張繊維(PBO繊維:ザイロン)
3,14 スエージング加工後の低熱膨張線状体
5 スエージング加工機
6 ダイス(金型)
11,31 低熱膨張繊維(PBO繊維:ザイロンまたはダイニーマ)
12,32 めっき層(銅層)
13 めっき層付きの単線
21 めっき槽
22 金属板
23 電解液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図6】
3
【図3】
4
【図5】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11