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明細書 :通信システム及び通信方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4751847号 (P4751847)
公開番号 特開2008-236104 (P2008-236104A)
登録日 平成23年5月27日(2011.5.27)
発行日 平成23年8月17日(2011.8.17)
公開日 平成20年10月2日(2008.10.2)
発明の名称または考案の名称 通信システム及び通信方法
国際特許分類 H04B   3/02        (2006.01)
B61L  27/00        (2006.01)
FI H04B 3/02
B61L 27/00 Z
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願2007-069902 (P2007-069902)
出願日 平成19年3月19日(2007.3.19)
審査請求日 平成21年7月24日(2009.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】竹内 恵一
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】木下 直哉
参考文献・文献 特開平11-168515(JP,A)
特開2003-023402(JP,A)
調査した分野 H04B 3/00- 3/60
B61L 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
列車などの走行体が走行する軌道に沿って配設され、2以上の区間に分割された伝送媒体と、
前記分割された伝送媒体の各々の両端に接続され、当該分割された伝送媒体を介して互いに信号の送受信を行う伝送装置と、
前記伝送媒体の分割部分に配置され、当該分割部分で分割された前記伝送媒体の一方に接続された前記伝送装置、及び、当該分割部分で分割された前記伝送媒体の他方に接続された前記伝送装置に接続され、当該伝送装置を制御する制御部と、
前記走行体の列車情報を前記制御部に入力する情報入力部と、を備え、
前記制御部が、
前記情報入力部から入力された前記列車情報に基づいて、前記伝送装置が接続された前記分割された伝送媒体が属する前記区間のいずれかを前記走行体が走行していると判断したときに、
当該走行体が走行している区間である第1の区間に属する前記分割された伝送媒体に接続された前記伝送装置である第1の伝送装置から当該第1の区間の雑音レベルを取得し、当該雑音レベルから、前記走行体が走行していない区間である第2の区間の雑音レベルを予測して、当該予測された雑音レベルに応じて、当該第2の区間に属する前記分割された伝送媒体に接続された前記伝送装置である第2の伝送装置の伝送速度を決定して制御するように構成された通信システム。
【請求項2】
前記列車情報が、前記走行体の運転ダイヤ及び運転曲線を有し、
前記制御部が、前記走行体が走行する速度と当該走行体の走行により発生する雑音レベルとの関係である速度・雑音データベースが記憶された記憶領域を備え、
前記制御部が、
前記第1の伝送装置から取得した雑音レベルと、
前記情報入力部から入力された前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出された前記第1の区間における前記走行体の速度を第1の速度として抽出し、前記速度・雑音データベースから抽出した当該第1の速度における雑音レベルと、の差を補正値として算出し、
前記情報入力部から入力された前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出された前記第2の区間における前記走行体の速度を第2の速度として抽出し、前記速度・雑音データベースから抽出した当該第2の速度における雑音レベルに前記補正値を加算して、当該第2の区間における雑音レベルを予測するように構成された請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出される前記走行体の速度が、前記区間における最高速度である請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1の伝送装置から取得した前記雑音レベルが、前記走行体が前記区間を走行したときの最大値である請求項1~3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御部が、時刻を計時するクロックを備え、
前記制御部が、前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記クロックで計時された時刻から、前記走行体が前記第1の区間を走行していることを検知するように構成された請求項2~4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御部が、前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記クロックで計時された時刻から、前記第2の区間に前記走行体が侵入しようとしていることを検知したときに、前記決定された伝送速度で前記第2の伝送装置を制御するように構成された請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第2の伝送装置に接続され、当該第2の伝送装置に接続された前記分割された伝送媒体を介して通信を行う使用システムを有し、
前記制御部が、前記第2の伝送装置を前記決定された伝送速度で制御したときに、当該決定された伝送速度を前記使用システムに通知するように構成された請求項1~6のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
列車などの走行体が走行する軌道に沿って配設され、2以上の区間に分割された伝送媒体と、
前記分割された伝送媒体の各々の両端に接続され、当該分割された伝送媒体を介して互いに信号の送受信を行う伝送装置と、
前記伝送媒体の分割部分に配置され、当該分割部分で分割された前記伝送媒体の一方に接続された前記伝送装置、及び、当該分割部分で分割された前記伝送媒体の他方に接続された前記伝送装置に接続された制御部と、
前記走行体の列車情報を前記制御部に入力する情報入力部と、を備えた通信システムにおいて、前記制御部により前記伝送装置を制御する通信方法であって、
前記走行体が走行している区間である第1の区間に属する前記分割された伝送媒体に接続された前記伝送装置である第1の伝送装置から当該第1の区間の雑音レベルを取得する第1のステップ、
当該雑音レベルから、前記走行体が走行していない区間である第2の区間の雑音レベルを予測する第2のステップ、
当該予測された雑音レベルに応じて、当該第2の区間に属する前記分割された伝送媒体に接続された前記伝送装置である第2の伝送装置の伝送速度を決定して制御する第3のステップ、から構成される通信方法。
【請求項9】
前記通信システムの前記列車情報が、前記走行体の運転ダイヤ及び運転曲線を有し、
前記通信システムの前記制御部が、前記走行体が走行する速度と当該走行体の走行により発生する雑音レベルとの関係である速度・雑音データベースが記憶された記憶領域を備え、
前記第2のステップが、
前記第1の伝送装置から取得した雑音レベルと、
前記情報入力部から入力された前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出された前記第1の区間における前記走行体の速度を第1の速度として抽出し、前記速度・雑音データベースから抽出した当該第1の速度における雑音レベルと、の差を補正値として算出するステップ、及び、
前記情報入力部から入力された前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出された前記第2の区間における前記走行体の速度を第2の速度として抽出し、前記速度・雑音データベースから抽出した当該第2の速度における雑音レベルに前記補正値を加算して、当該第2の区間における雑音レベルを予測するステップ、から構成された請求項8に記載の通信方法。
【請求項10】
前記第2のステップにおいて列車情報の前記運転ダイヤ及び前記運転曲線から算出される前記走行体の速度が、前記区間における最高速度である請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
前記第1のステップにおいて前記第1の伝送装置から取得した前記雑音レベルが、前記走行体が前記区間を走行したときの最大値である請求項8~10のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項12】
前記通信システムの前記制御部が、時刻を計時するクロックを備え、
前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記クロックで計時された時刻から、前記走行体が前記第1の区間を走行していることを検知するように構成された請求項9~11のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項13】
前記第3のステップにおいて、前記列車情報の前記運転ダイヤ及び前記クロックで計時された時刻から、前記第2の区間に前記走行体が侵入しようとしていることを検知したときに、前記決定された伝送速度で前記第2の伝送装置を制御するように構成された請求項12に記載の通信方法。
【請求項14】
前記通信システムが、前記第2の伝送装置に接続され、当該第2の伝送装置に接続された前記分割された伝送媒体を介して通信を行う使用システムを有し、
前記第3のステップにおいて、前記第2の伝送装置を前記決定された伝送速度で制御したときに、当該決定された伝送速度を前記使用システムに通知するように構成された請求項8~13のいずれか一項に記載の通信方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、列車などの走行体が走行する軌道に沿って敷設された伝送媒体を用いて情報を伝送する通信システム、及び、この通信システムを用いた通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道沿線には、メタリック通信ケーブルが敷設されており、モデム等を使用した高速データ伝送が行われている。しかし、メタリック通信ケーブルの雑音環境は列車の走行による変動があり、それに伴い所用の伝送速度を保つのが困難である。このように雑音環境が変動し、設定した伝送速度の維持が困難な状況で伝送を継続すると、フレームロスやパケットロスを引き起こし、伝送するシステムに悪影響を及ぼす可能性がある。この解決策としてモデムの送信出力を増加し、設定した伝送速度を十分維持できる状態にすることが考えられる。また、伝送速度が低下することを前提にして、一回線当たりの伝送速度を低めに設定し、使用回線を増やして所用の伝送速度を保つ手段も考えられる。例えば、周期的に雑音量が変化する場合に、伝送速度を測定する方法(例えば、特許文献1参照)や、伝送容量確保のために、予め予備回線を用意しておき、現用回線の伝送容量を比較しながら切り換えるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】

【特許文献1】特開2003-23402号公報
【特許文献2】特開2004-15253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このメタリック通信ケーブルは、同一ケーブル内に多数の通信回線が収容されて鉄道沿線に配設されており、ある通信回線を流れる信号の送信出力を増加させると、他の通信回線への漏話雑音が大きくなり、他のシステムに影響を与える虞があるという課題がある。また、通信回線の空き回線は少ないため、可能な限り使用回線を節約することが求められるため、フレームロスやパケットロスを増大させない、送信出力を増加させない、使用回線数を節約するという3点を満たした上で伝送品質を可能な限り向上させなければならないという課題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、送信出力を増加させず、使用回線数を節約して、伝送品質を確保する通信システム及びこの通信システムを用いた通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る通信システムは、列車などの走行体が走行する軌道に沿って配設され、2以上の区間に分割された伝送媒体(例えば、実施形態における第1及び第2通信回線51,52)と、分割された伝送媒体の各々の両端に接続され、当該分割された伝送媒体を介して互いに信号の送受信を行う伝送装置と、伝送媒体の分割部分に配置され、当該分割部分で分割された伝送媒体の一方に接続された伝送装置、及び、当該分割部分で分割された伝送媒体の他方に接続された伝送装置に接続され、当該伝送装置を制御する制御部(例えば、実施形態におけるB駅制御部33)と、走行体の列車情報をこの制御部に入力する情報入力部(例えば、実施形態におけるB駅情報入力部34)と、を備えて構成される。そして、制御部が、情報入力部から入力された列車情報に基づいて、伝送装置が接続された分割された伝送媒体が属する区間のいずれかを走行体が走行していると判断したときに、当該走行体が走行している区間である第1の区間に属する分割された伝送媒体に接続された伝送装置である第1の伝送装置(例えば、実施形態における伝送装置31)から当該第1の区間の雑音レベルを取得し、当該雑音レベルから、走行体が走行していない区間である第2の区間の雑音レベルを予測して、当該予測された雑音レベルに応じて、当該第2の区間に属する分割された伝送媒体に接続された伝送装置である第2の伝送装置(例えば、実施形態における伝送装置32)の伝送速度を決定して制御するように構成される。
【0007】
このような本発明に係る通信システムにおいて、列車情報が、走行体の運転ダイヤ及び運転曲線を有し、制御部が、走行体が走行する速度と当該走行体の走行により発生する雑音レベルとの関係である速度・雑音データベースが記憶された記憶領域を備えて構成され、この制御部が、第1の伝送装置から取得した雑音レベルと、情報入力部から入力された列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出された第1の区間における走行体の速度を第1の速度として抽出し、速度・雑音データベースから抽出した当該第1の速度における雑音レベルとの差を補正値として算出し、そして、情報入力部から入力された列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出された第2の区間における走行体の速度を第2の速度として抽出し、速度・雑音データベースから抽出した当該第2の速度における雑音レベルに補正値を加算して、当該第2の区間における雑音レベルを予測するように構成されることが好ましい。このとき、列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出される走行体の速度が、上記区間における最高速度であることが好ましい。
【0008】
また、このような本発明に係る通信システムにおいて、第1の伝送装置から取得した雑音レベルが、走行体が上記区間を走行したときの最大値であることが好ましい。
【0009】
また、このような本発明に係る通信システムにおいて、制御部が、時刻を計時するクロックを備え、この制御部が、列車情報の運転ダイヤ及びクロックで計時された時刻から、走行体が第1の区間を走行していることを検知するように構成されることが好ましい。さらに、制御部が、列車情報の運転ダイヤ及びクロックで計時された時刻から、第2の区間に走行体が侵入しようとしていることを検知したときに、決定された伝送速度で第2の伝送装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係る通信システムが、第2の伝送装置に接続され、当該第2の伝送装置に接続された分割された伝送媒体を介して通信を行う使用システム(例えば、実施形態におけるB駅使用システム35)を有し、制御部が、第2の伝送装置を決定された伝送速度で制御したときに、当該決定された伝送速度をこの使用システムに通知するように構成されることが好ましい。
【0011】
一方、本発明に係る通信方法は、列車などの走行体が走行する軌道に沿って配設され、2以上の区間に分割された伝送媒体と、分割された伝送媒体の各々の両端に接続され、当該分割された伝送媒体を介して互いに信号の送受信を行う伝送装置と、伝送媒体の分割部分に配置され、当該分割部分で分割された伝送媒体の一方に接続された伝送装置、及び、当該分割部分で分割された伝送媒体の他方に接続された伝送装置に接続された制御部と、走行体の列車情報を制御部に入力する情報入力部と、を備えた通信システムにおいて、制御部により伝送装置を制御する通信方法であって、走行体が走行している区間である第1の区間に属する分割された伝送媒体に接続された伝送装置である第1の伝送装置から当該第1の区間の雑音レベルを取得する第1のステップ、当該雑音レベルから、走行体が走行していない区間である第2の区間の雑音レベルを予測する第2のステップ、当該予測された雑音レベルに応じて、当該第2の区間に属する分割された伝送媒体に接続された伝送装置である第2の伝送装置の伝送速度を決定して制御する第3のステップ、から構成される。
【0012】
このような本発明に係る通信方法において、上記通信システムの列車情報が、走行体の運転ダイヤ及び運転曲線を有し、この通信システムの制御部が、走行体が走行する速度と当該走行体の走行により発生する雑音レベルとの関係である速度・雑音データベースが記憶された記憶領域を備え、第2のステップが、第1の伝送装置から取得した雑音レベルと、情報入力部から入力された列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出された第1の区間における走行体の速度を第1の速度として抽出し、速度・雑音データベースから抽出した当該第1の速度における雑音レベルと、の差を補正値として算出するステップ、及び、情報入力部から入力された列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出された第2の区間における走行体の速度を第2の速度として抽出し、速度・雑音データベースから抽出した当該第2の速度における雑音レベルに補正値を加算して、当該第2の区間における雑音レベルを予測するステップ、から構成されることが好ましい。このとき、第2のステップにおいて列車情報の運転ダイヤ及び運転曲線から算出される走行体の速度が、上記区間における最高速度であることが好ましい。
【0013】
このような本発明に係る通信方法は、第1のステップにおいて第1の伝送装置から取得した雑音レベルが、走行体が上記区間を走行したときの最大値であることが好ましい。
【0014】
また、このような本発明係る通信方法において、上記通信システムの制御部が、時刻を計時するクロックを備え、列車情報の運転ダイヤ及びクロックで計時された時刻から、走行体が第1の区間を走行していることを検知するように構成されることが好ましい。さらに、第3のステップにおいて、列車情報の運転ダイヤ及びクロックで計時された時刻から、第2の区間に走行体が侵入しようとしていることを検知したときに、決定された伝送速度で第2の伝送装置を制御するように構成されることが好ましい。
【0015】
さらに、上記通信システムが、第2の伝送装置に接続され、当該第2の伝送装置に接続された分割された伝送媒体を介して通信を行う使用システムを有し、第3のステップにおいて、第2の伝送装置を決定された伝送速度で制御したときに、当該決定された伝送速度をこの使用システムに通知するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る通信システム及び通信方法を以上のように構成すると、制御部が、この制御部が制御する伝送装置が接続された区間の伝送媒体に対する列車などの走行体による雑音レベルと速度から、次にこの走行体が通過する区間の雑音レベルを予測し、この予測された雑音レベルでも十分伝送品質を確保することができる伝送速度になるように伝送装置を制御することができるため、この通信システムを利用するシステムに対して伝送品質を保証することができる。
【0017】
また、走行体の速度と雑音レベルの関係を、例えば、予め測定してデータベースに蓄積しておくことにより、指令所端末等から取得できる列車情報により容易に雑音レベルを予測することができる。このとき、雑音レベルを予測するための走行体の速度をその区間を通過する最大速度とし、また、走行体の走行により発生する雑音のうち、次の区間の予測に用いる雑音レベルを、収集区間における最大値とすることにより、雑音レベルの予測の処理を簡単にすることができる。
【0018】
また、制御部に時刻を計時するクロックを設け、このクロックの時刻と列車情報とから走行体の区間の通過や次の区間への侵入を検出するように構成することにより、伝送装置からの情報の収集や制御のタイミングを簡単にすることができる。
【0019】
さらに、この通信システムを用いてデータ伝送を行う使用システムに対して、制御部が伝送装置に指示した伝送速度を通知するように構成することにより、この使用システムが、伝送速度に応じて伝送するデータの優先順位付け等を行うことができ、使用システムの品質を確保し、効率の良いデータ伝送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて本発明に係る通信システム10の構成について説明する。この通信システム10は、複数の区間に分割されて鉄道沿線、すなわち、列車Tが走行する軌道Rに沿って敷設された通信回線を用いて、各区間の接続点に配置された使用システムが情報の送受信を行うものである。この図1においては、説明を簡単にするために3つの駅(A駅20、B駅30及びC駅40)で分割された2つの区間(第1及び第2区間1,2)から構成される場合を示しており、各区間1,2には、それぞれ第1及び第2通信回線51,52が敷設されている。そして、A駅20とB駅30とを結ぶ第1通信回線51には、A駅20に設置された伝送装置21と、B駅30に設置された伝送装置31とが接続されており、また、B駅30とC駅40とを結ぶ第2通信回線52には、B駅30に設置された伝送装置32とC駅40に設置された伝送装置42とが接続されている。
【0021】
B駅30に設置された伝送装置31,32には、B駅制御部33が接続されている。ここで、B駅制御部33は、伝送装置31,32からそれぞれが接続された通信回線(第1及び第2通信回線51,52)を介して送受信される信号の状態(信号レベル及びS/N)を取得し、この情報を元にこれらの伝送装置31,32の伝送速度等を制御するものである。また、同様に、C駅40に設置された伝送装置42には、B駅制御部33と同様の機能を有するC駅制御部43が接続されている。そして、これらのB駅及びC駅制御部33,43にはそれぞれB駅及びC駅情報入力部34,44が接続されており、管轄する区域内のすべての列車の運行を監視する指令所に設置され、この監視業務を行う指令所端末60から軌道Rを走行する列車Tの情報(列車ダイヤ、運転曲線、使用車種、編成両数から構成され、以下「列車情報」と呼ぶ)をこのB駅及びC駅情報入力部34,44を介して取得するように構成されている。
【0022】
ここで、列車ダイヤとは、この軌道Rを走行する列車毎に、その列車の始発駅から終着駅までにおける各駅の到着時刻及び出発時刻等からなるデータであり、運転曲線は、列車毎の始発駅からの距離と走行速度の関係を示すデータであり、使用車種は、列車毎に使用される車種の情報であり、編成両数は、列車毎に用いられる車両の数である。
【0023】
また、B駅30の伝送装置31,32にはB駅使用システム35が接続されており、C駅40の伝送装置42にはC駅使用システム45が接続されており、B駅及びC駅使用システム35,45は、伝送装置32及び伝送装置42を用いて第2通信回線52を介してデータの送受信を行うように構成されている。なお、A駅20にも上述のB駅30等と同様の構成を設けることにより、第1通信回線51を介して情報の送受信を行うことが可能であるが、ここでは省略する。
【0024】
図2は、B駅20に設置されたB駅制御部33周辺の構成を示しており、このB駅制御部33には、時刻を計時するクロック33aと、記憶領域33bとが設けられており、この記憶領域33bには軌道Rを走行する列車Tの速度と雑音(この雑音を以降の説明においては「平均雑音レベル」と呼ぶ)の関係を示す速度・雑音データベース33cが格納されている。もちろん、C駅30に設置されたC駅制御部43も同様の構成を有している。なお、速度・雑音データベース33cは、図3に示すように、列車の車種と編成両数とから決定されるパターンPに応じて、その速度Vと雑音Nの関係が、例えば予め測定等行われてデータベース化されたものである(ここでは、説明を簡単にするために速度Vと雑音Nの関係を線形にしたI~IVの4つのパターンを示しているが、非線形でも同様である)。
【0025】
それでは、このB駅30に設置されたB駅制御部33を例に、指令所端末60から列車情報を取得して伝送装置31,32の伝送速度を制御する方法について図4及び図5を合わせて用いて説明する。上述のようにこのB駅制御部33は、隣接する区間(第1及び第2区間1及び2)に敷設された第1及び第2通信回線51,52を用いて通信を行う伝送装置31,32に接続されており、これらの隣接する区間1,2のいずれか一方を走行中の列車Tの雑音レベルから次にこの列車Tが走行する他方の区間の雑音レベルを推定して伝送速度を決定するものである。ここでは、第1区間1を走行する列車Tが図1の矢印Dの方向に走行している場合に、第2区間2における伝送速度を決定する方法について説明する。
【0026】
まず、B駅制御部33は、B駅情報入力部34を介して指令所端末60から取得した列車情報の列車ダイヤとクロック33aの時刻から、隣接する第1区間1に列車Tが入ったことを検出すると(ステップS100)、列車ダイヤからその列車Tが第2区間2を通過するか否かを判断する(ステップS110)。その列車Tが第2区間2を通過しない場合はこの処理を終了し、通過する場合は、次に、列車TがB駅20に到着するまでの間、第1区間1に敷設された第1通信回線51に接続された伝送装置31から、その伝送装置31が受信した信号の信号レベルとS/N(信号と雑音の比)の組を所定の時間間隔で収集する(ステップS120)。
【0027】
そして、B駅制御部33は、クロック33aの時刻と列車ダイヤからその列車TがB駅30に到着したと判断すると、収集した信号レベルとS/Nの組のそれぞれから雑音レベルを算出し、この算出された雑音レベルのうちの最大値を最大雑音レベルN1maxとして抽出する(ステップS130)。また、指令所端末60から取得した列車情報の運転曲線から、A駅からB駅に走行した列車Tの速度の最大値を、最大速度V1maxとして抽出する(ステップS140)。
【0028】
このようにして、第1区間1を通過したときの列車Tの最大雑音レベルN1max及び最大速度V1maxが抽出されると、B駅制御部33は次に、列車情報の使用車種及び編成両数からこの列車TのパターンPを決定し、速度・雑音データベース33cに記憶されている速度と雑音の関係からこのパターンPに対応するものを選択する(ステップS150)。そして、最大速度V1maxを用いて速度・雑音データベース33cのパターンPに対応する情報を検索して、この最大速度V1maxに対応する平均雑音レベルN1avgを抽出し(ステップS160)、最大雑音レベルN1maxと平均雑音レベルN1avgの差を補正値ΔNとして算出する(ステップS170)。すなわち、本実施例においては、運転曲線から抽出された列車Tの最大速度V1maxのときに最大雑音レベルN1maxが発生しているものと推定して、以降の処理を行うように構成されている。図5(a)に、パターンIが選択された場合における、最大速度V1max、平均雑音レベルN1avg、最大雑音レベルN1max及び補正値ΔNの関係を示す。
【0029】
さらに、B駅制御部33は、列車情報の運転曲線から列車Tが第2区間2を走行するときの最大速度V2maxを抽出し(ステップS180)、抽出された最大速度V2maxを用いて速度・雑音データベース33cのパターンPに対応する情報を検索して、この最大速度V2maxに対応する平均雑音レベルN2avgを抽出する(ステップS190)。そして、この平均雑音レベルN2avgにステップS170で算出した補正値ΔNを加算して、第2区間2におけるこの列車Tによる予想最大雑音レベルN2estを算出する(ステップS200)。図5(b)に、上記と同様にパターンIが選択された場合における、最大速度V2max、平均雑音レベルN2avg、補正値ΔN及び予想最大雑音レベルN2estの関係を示す。
【0030】
最後に、B駅制御部33は、第2通信回線52においてこの予想最大雑音レベルN2estでも十分伝送品質を確保できる伝送速度を決定し(ステップS210)、列車情報の列車ダイヤから、列車Tが第2区間2に進入する直前、すなわち、列車TがB駅30を発車する直前に伝送装置32に対してこの決定された伝送速度を指示する(ステップS220)。伝送装置32は、B駅制御部33から伝送速度の指示を受信すると、第2通信回線52を用いてC駅40の伝送装置42と通信を行ってこの伝送速度を指示し、指定された伝送速度での通信を開始する。また、B駅制御部33は、伝送装置32に指示した伝送速度をB駅使用システム35にも通知する(ステップS230)。
【0031】
例えば、B駅使用システム35が、第2通信回線52を介して、C駅使用システム45との間で、複数の論理回線を使ってデータ伝送を行っていた場合を考える。このような場合、B駅使用システム35は、予め伝送速度が低下することが通知されていれば、複数の論理回線のうち重要回線を優先し、そうでない論理回線の帯域を絞るというような制御を行うことができる。また、画像伝送を行っている場合には、この画像伝送の伝送フレーム数を落とす処理を、列車Tが第2区間2に侵入する前に完了でき、重要回線への影響を防止することができる。
【0032】
以上の説明から、本実施例で示す通信システム10における通信方法の効果をまとめると、次のようになる。第1に、B駅制御部33が、この制御部33が制御する伝送装置31,32が接続された区間1,2のうち、第1区間1における列車Tによる雑音レベルとこの列車Tの速度から、次にこの列車Tが通過する第2区間2の雑音レベルを予測し、この予測された雑音レベルでも十分伝送品質を確保することができる伝送速度になるように伝送装置32を制御することができるため、この通信システム10を利用するB駅使用システム35に対して伝送品質を保証することができる。
【0033】
また、第2に、列車Tの速度と雑音レベルの関係を、例えば、予め測定して速度・雑音データベース33cとして記憶領域33bに蓄積しておくことにより、指令所端末60から取得できる列車情報、すなわち、列車ダイヤ及び運転曲線を用いて容易に雑音レベルを予測することができる。このとき、雑音レベルを予測するための列車Tの速度をその区間を通過する最大速度とし、また、列車Tの走行により発生する雑音のうち、次の区間の予測に用いる雑音レベルを、収集区間における最大値とすることにより、雑音レベルの予測の処理を簡単にすることができる。
【0034】
また、第3に、B駅制御部33に時刻を計時するクロック33aを設け、このクロック33aの時刻と列車情報とから列車Tの第1区間1の通過や次の第2区間2への侵入を検出するように構成することにより、伝送装置31からの情報の収集や伝送装置32への制御のタイミングを簡単に決定することができる。
【0035】
さらに、第4に、この通信システム10を用いてデータ伝送を行うB駅使用システム35に対して、B駅制御部33が伝送装置32に指示した伝送速度を通知するように構成することにより、このB駅使用システム35が、設定された伝送速度に応じて伝送するデータの優先順位付け等を行うことができ、このB駅使用システム35の品質を確保し、効率の良いデータ伝送を行うことができる。
【0036】
なお、以上の実施例においては、B駅制御部33から伝送装置32に指示された伝送速度は、第2通信回線52を介してこの伝送装置32がC駅40の伝送装置42に通知するように構成した場合を説明したが、図1の矢印付き破線で示すように、この第2通信回線52とは別の回線を用いて、B駅制御部33からC駅制御部43に伝送速度を通知し、C駅制御部43が伝送装置42に伝送速度を指示するように構成することも可能である。また、以上の実施例においては、第1区間1を走行する列車Tが第2区間2に侵入する場合について説明したが、逆も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】B駅制御部周辺の構成を示すブロック図である。
【図3】速度・雑音データベースの構成を示す説明図である。
【図4】本発明に係る通信方法を示すフローチャートである。
【図5】第1区間で測定した雑音レベルから第2区間の雑音レベルを予測する方法を説明するための説明図であって、(a)は、第1区間の速度から雑音レベルの補正値を求める場合を示し、(c)は、第2区間の速度からこの第2区間の雑音レベルの予測値を求める場合を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 第1区間(第1の区間)
2 第2区間(第2の区間)
10 通信システム
31 伝送装置(第1の伝送装置)
32 伝送装置(第2の伝送装置)
33 B駅制御部(制御部)
33a クロック
33b 記憶領域
33c 速度・雑音データベース
34 B駅情報入力部(情報入力部)
35 B駅使用システム(使用システム)
51 第1通信回線(伝送媒体)
52 第2通信回線(伝送媒体)
T 列車(走行体)
R 軌道
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4