TOP > 国内特許検索 > 鉄道車両の接地装置用通電回転装置 > 明細書

明細書 :鉄道車両の接地装置用通電回転装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5105886号 (P5105886)
公開番号 特開2008-184019 (P2008-184019A)
登録日 平成24年10月12日(2012.10.12)
発行日 平成24年12月26日(2012.12.26)
公開日 平成20年8月14日(2008.8.14)
発明の名称または考案の名称 鉄道車両の接地装置用通電回転装置
国際特許分類 B61F  15/28        (2006.01)
F16C  33/58        (2006.01)
H01R  39/00        (2006.01)
FI B61F 15/28
F16C 33/58
H01R 39/00 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2007-018876 (P2007-018876)
出願日 平成19年1月30日(2007.1.30)
審査請求日 平成21年4月2日(2009.4.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】柿嶋 秀史
【氏名】松井 元英
【氏名】細谷 哲也
個別代理人の代理人 【識別番号】100090033、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 博司
【識別番号】100093045、【弁理士】、【氏名又は名称】荒船 良男
審査官 【審査官】小岩 智明
参考文献・文献 特開2005-289356(JP,A)
特開平07-091450(JP,A)
国際公開第2006/077682(WO,A1)
特開平08-186016(JP,A)
実開平04-053065(JP,U)
調査した分野 B61F 15/00-15/28
F16C 33/00-33/82
H01R 39/00
特許請求の範囲 【請求項1】
軸受に回転自在に支持された車軸に取り付けられて、該車軸とともに回転する回転部材と、この回転部材が回転可能に装着される固定部材と、前記回転部材と固定部材との間の隙間に封入されて、前記回転部材と固定部材との間を通電可能とする流体状または粉体状の導電性媒体とを備えた鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、
前記導電性媒体に接触する回転部材の接触面と固定部材の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜が形成されていることを特徴とする鉄道車両の接地装置用通電回転装置。
【請求項2】
前記酸化防止被膜は、カーボン被膜または金、銀、銅、錫等の軟質性の金属被膜であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置。
【請求項3】
前記酸化防止被膜は、前記接触面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置。
【請求項4】
前記酸化防止被膜は、ショット粒子をショットピーニングによって投射することによって表面が粗された接触面に、カーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記車軸の端面に固定された円板状の固定板と、この固定板に形成された凸部と備え、この凸部の先端面に凹部が形成され、
前記固定部材は円板状に形成され、その端面に凹部が形成され、この凹部の底面に凸部が形成され、この凸部が前記固定板に形成された凸部の前記凹部に所定の隙間をもって挿入され、
前記固定板に形成された前記凸部の先端部が前記固定部材の端面に形成された前記凹部の内壁面に密接することによって、前記両凹部が閉塞され、この両凹部が前記回転部材と固定部材との間の隙間となっており、この隙間に前記導電性媒体が封入されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の接地装置やその他の装置に適用される通電回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、走行レールを帰線として利用する電気鉄道車両では、台車に設けた接地装置を経由して車軸、車輪を介して走行レールへ電流を流している。ところが、場合により軸受に電流が流れることがあり、軸受の転動面、転動部材に電食が発生するおそれがある。
そこで、これを解決するための技術の一例が特許文献1に記載されている。この技術は、車軸端部を覆う軸箱前蓋で軸受の内レースを車軸に固定する鉄道車両において、前記軸箱前蓋に貫通孔を形成するとともに、軸箱前蓋の外側に、スリップリングをその脚部が前記貫通孔に挿入されかつ車軸端面に接触させるようにして装着し、さらに、スリップリングの外端面に接地ブラシを摺接させたものである。
このような鉄道車両の接地装置によれば、電流が軸受を経由することなく、接地ブラシ、スリップリングを介して車軸に導かれるから、大容量の電流が軸箱と車軸間に流れても軸受に電食を発生させるおそれがなくなる。
【0003】
しかしながら、前記従来の鉄道車両の接地装置では、軸箱のケースに固定された接地ブラシをスリップリングの外端面に摺接させているので、例えば、平軸受で車軸を支持している場合のように、車軸が軸方向にある程度(10mm程度)移動すると、この車軸の移動とともにスリップリングも軸箱に対して移動し、その結果、接地ブラシがスリップリングから離れてしまう場合がある。この場合、電流が接地ブラシ、スリップリングを介して車軸に導かれず、軸受を介して車軸に導かれて軸受の電食が発生してしまうので、従来の鉄道車両の接地装置は平軸受装着車両では使用できないという問題があった。
【0004】
この問題を解決した接地装置が特許文献2に記載されている。この接地装置は、軸受(平軸受)に支持された車軸の端部に設けられて、前記軸受への通電を防止するための鉄道車両の接地装置であって、前記車軸の端面に固定されて、該車軸とともに回転する回転側治具と、この回転側治具が回転可能に装着される固定側治具と、前記回転側治具と固定側治具との間に介在されて、前記回転側治具と前記固定側治具との間の通電を可能とする流体状または粉体状の導電性媒体とを備えているものである。
このような接地装置によれば、軸受に支持されている車軸が軸箱に対して軸方向にある程度移動しても、それに伴って、固定側治具、導電性媒体、回転側治具が一体となって移動することになる。そして、車軸が回転するとそれに伴って回転側治具が回転するが、この回転側治具と固定側治具との間に導電性媒体が介在されているので、軸受を経由することなく、固定側治具、導電性媒体、回転側治具を介して電流を車軸に導くことができる。つまり、車軸が軸箱に対して軸方向に移動するような場合でも、軸受を経由することなく電流を車軸に導くことができる。

【特許文献1】特開平11—245811号公報
【特許文献2】特開2005-289356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記のような接地装置では、導電性媒体が、導電性グリースまたは導電性粒子を有する粉体等によって構成されているので、回転側治具が回転するに伴ってこの回転側治具と導電性媒体との摩擦によって、導電性媒体の温度が上昇していく。導電性媒体の温度が上昇すると、この導電性媒体が回転側治具および固定側治具に接触する接触面が酸化してしまい、この酸化によって前記接触面の電気抵抗値が上昇して、通電し難くなってしまう。このような現象は鉄道車両の接地装置はもとより、軸受等の回転物を支持しながら電気伝導性を確保する必要がある装置でも起こる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、導電性媒体の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる鉄道車両の接地装置用通電回転装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、軸受2に回転自在に支持された車軸4に取り付けられて、該車軸4とともに回転する回転部材11と、この回転部材11が回転可能に装着される固定部材12と、前記回転部材11と固定部材12との間の隙間に封入されて、前記回転部材11と固定部材12との間を通電可能とする流体状または粉体状の導電性媒体G1とを備えた鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、
前記導電性媒体G1に接触する回転部材11の接触面と固定部材12の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜20,21が形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記酸化防止被膜は、種々の被膜形成技術によって形成できるが、例えば後述するショットピーニングによって形成する他、化成処理や蒸着等によって形成してもよい。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前記導電性媒体に接触する回転部材の接触面と固定部材の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜が形成されているので、回転部材の回転によって導電性媒体の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、前記酸化防止被膜は、カーボン被膜20,21または金、銀、銅、錫等の軟質性の金属被膜であることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、酸化防止被膜が、カーボン被膜または金、銀、銅、錫等の軟性の金属被膜であるので、酸化防止被膜の摩擦係数を低くすることができる。したがって、回転部材の回転による導電性媒体の温度上昇を抑えることができ、前記接触面の酸化をより効果的に防止できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、前記酸化防止被膜20,21は、前記接触面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、酸化防止被膜が接触面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されているので、接触面の形状に合わせて酸化防止被膜を容易かつ均一に形成できる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、前記酸化防止被膜20,21は、ショット粒子をショットピーニングによって投射することによって表面が粗された接触面に、カーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、表面が粗された接触面に、カーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって、該カーボン粉体を接触面に確実かつ強固に付着させることができるので、酸化防止被膜の耐久性が向上する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の鉄道車両の接地装置用通電回転装置において、
前記回転部材31は、前記車軸4の端面に固定された円板状の固定板31aと、この固定板31aに形成された凸部31cと備え、この凸部31cの先端面に凹部38が形成され、
前記固定部材32は円板状に形成され、その端面に凹部37が形成され、この凹部37の底面に凸部32aが形成され、この凸部32aが前記固定板31aに形成された凸部31cの前記凹部38に所定の隙間をもって挿入され、
前記固定板31aに形成された前記凸部31cの先端部が前記固定部材32の端面に形成された前記凹部37の内壁面に密接することによって、前記両凹部37,38が閉塞され、この両凹部37,38が前記回転部材31と固定部材32との間の隙間となっており、この隙間に前記導電性媒体が封入されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、導電性媒体に接触する固定部材の接触面と回転部材の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜が形成されているので、回転部材の回転によって導電性媒体の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車軸とともに回転する回転部材と、この回転部材が回転可能に装着される固定部材と、回転部材と固定部材との間の隙間に封入されて、回転部材と固定部材との間を通電可能とする流体状または粉体状の導電性媒体とを備え、前記導電性媒体に接触する回転部材の接触面と固定部材の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜が形成されているので、回転部材の回転によって導電性媒体の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
本実施の形態は、本発明に係る通電回転装置を、鉄道車両の接地装置に適用した例である。
図1は、鉄道車両の接地装置を備えた軸箱の断面図、図2は鉄道車両の接地装置を示す側断面図である。
【0020】
図1において符号1は軸箱を示す。この軸箱1は図示しない鉄道車両の台車に取り付けられており、この軸箱1内に平軸受2が設けられている。平軸受2の背面側には軸受押え金3が設けられており、この軸受押え金3によって平軸受2が背面側から支持されている。平軸受2は円弧板状のものであり、その内周面が車軸4のジャーナル部4aに摺接しており、これによって、車軸4は平軸受2によって回転可能に支持されている。
また、軸箱1内の下部には、潤滑油Jが貯留されるとともに、給油具5がその下部を潤滑油Jに浸した状態で設けられている。この給油具5の上部は車軸4のジャーナル部4aに摺接しており、これによって、潤滑油Jがジャーナル部4aに供給されるようになっている。そして、車軸4が回転することにより、ジャーナル部4aと平軸受2との摺接部に油膜が形成されるようになっている。
【0021】
本発明に係る通電回転装置としての鉄道車両の接地装置(以下、接地装置と略称する。)10は、前記軸箱1内に設けられている。この接地装置10は、平軸受2に支持された車軸4の端部に設けられて、平軸受2を経由することなく車軸4に通電する装置である。以下、接地装置10について詳述する。
【0022】
すなわち、接地装置10は、図1および図2に示すように、回転部材11と固定部材12と導電性媒体G1とを備えており、この導電性媒体G1は導電性グリースおよび導電性粒子を有する粒体等によって構成されている。導電性グリースとは、潤滑グリースや潤滑油に、例えばカーボンブラック等の導電性の粒子を混合した導電性を有するグリースのことである。
回転部材11は、車軸4の端面4bに固定されて、該車軸4とともに回転するものであり、該端面4bに固定される円板状の固定板11aと、この固定板11aに一体的に形成された円板状の凸部11bとから構成されている。そして、固定板11aが4本のボルト13によって車軸4の端面4bに固定されている。
【0023】
また、前記固定部材12は、回転部材11が回転可能に装着されるものであり、円板状に形成されている。固定部材12の一方の端面には、リング部材14がボルト15によって固定されており、このリング部材14の内部に、転がり軸受16が固定されている。そして、この転がり軸受16に前記回転部材11の凸部11bがはめ込まれている。これによって、固定部材12には、回転部材11が回転可能に装着されている。
また、固定部材12の一方の端面には、円形状の凹部17が形成されており、この凹部17の開口部は、回転部材11の凸部11bと転がり軸受16とによって閉塞されている。したがって、回転部材11と固定部材12との間には、前記凹部17によって所定の隙間が設けられており、この隙間(凹部17)に、固定部材12の他方の端面に形成された図示しない充填孔から導電性媒体G1が充填封入されている。凹部17に充填された導電性媒体G1は、回転部材11と固定部材12との間に介在されており、これら回転部材11と固定部材12との双方に接触している。つまり、導電性媒体G1は、回転部材11の凸部11bの端面と、固定部材12の凹部17を形成する内壁面とに接触している。凹部17には導電性媒体G1を充満させるのではなく、車軸4の回転時における導電性媒体G1の膨張等を考慮して、導電性媒体G1が所定の量だけ充填封入されている。
【0024】
また、前記転がり軸受16は、シールドタイプの転がり軸受であり、その内部に導電性媒体G1が密封され、この導電性媒体G1によって転がり軸受16の外輪と内輪とが電気的に接続されている。このように、回転部材11を、導電性媒体G1が密封された転がり軸受16を介して固定部材12に装着することによって、固定部材12に、導電性媒体G1が密封された転がり軸受16の外輪が接触し、回転部材11に同転がり軸受16の内輪が接触しており、これによっても、回転部材11と固定部材12との間の通電を可能としている。
【0025】
上記のような回転部材11と固定部材12の双方とも、通電可能な金属で形成されており、固定部材12には、電流を流すリード線18の一端部が電気的に接続されている。また、このリード線18の他端部は、図1に示すように、前記軸箱1に電気的に接続されている。
また、導電性媒体G1に接触する回転部材11の接触面と固定部材12の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜20,21が形成されている。つまり、固定部材12の凹部17の内壁面に酸化防止被膜20が形成され、回転部材11の凸部11bの端面に酸化防止被膜21が形成されている。
【0026】
酸化防止被膜20,21は、厚さが数μm程度のカーボン被膜であり以下のようにして形成されている。
すなわち、固定部材12の凹部17の内壁面に、微細硬質粒子であるアルミナ粒子からなるショット粒子をショットピーニングによって投射することによって該内壁面を粗し、この粗された内壁面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されている。カーボン被膜の表面粗さは、Rz(十点平均高さ)で3~4μm程度である。
同様にして、回転部材11の凸部11bの端面に、微細硬質粒子であるアルミナ粒子からなるショット粒子をショットピーニングによって投射することによって該端面を粗し、この粗された端面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されている。カーボン被膜の表面粗さは、Rz(十点平均高さ)で3~4μm程度である。
このような酸化防止被膜(カーボン被膜)20,21は、低摩擦係数を有しており、具体的には、摩擦係数が0.3以下となっている。
【0027】
なお、前記固定部材12には、回転部材11との供回りを防止するための図示しない回り止め部材が設けられている。この回り止め部材は針金等で形成されたものであり、一端部は固定部材12の外周部に固定されており、他端部は軸箱の内壁等に固定されている。
さらに、回り止め部材は、回転部材11が固定部材12に固着した際に、切断されるような引張強度を有している。すなわち、軸受の電食等に起因して回転部材11が固定部材12に固着すると、固定部材12が回転部材11と一体的に回転するが、この際に回り止め部材が固定部材12の回転力によって切断されるような引張強度を有している。
【0028】
上記のように構成された接地装置10では、鉄道車両が走行する際に、平軸受2に支持されている車軸4が軸箱1に対して軸方向にある程度移動しても、それに伴って、固定部材12、導電性媒体G1、回転部材11が一体となって移動する。
そして、車軸4が回転するとそれに伴って回転部材11が回転するが、この回転部材11と固定部材12との双方に導電性媒体G1が接触しているので、電流を平軸受2を経由することなく、固定部材12、導電性媒体G1、回転部材11を介して車軸4に導くことができる。つまり、車軸4が軸箱1に対して軸方向に移動するような場合でも、電流を平軸受2を経由することなく車軸4に導くことができる。
【0029】
そして、導電性媒体G1に接触する回転部材12の接触面(固定部材12の凹部17の内壁面)と回転部材11の接触面(回転部材11の凸部11bの端面)とに、導電性を有する酸化防止被膜20,21が形成されているので、回転部材11の回転によって導電性媒体G1の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体G1の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
また、酸化防止被膜20,21が接触面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されているので、接触面の形状に合わせて酸化防止被膜20,21を容易かつ均一に形成できる。
さらに、表面が粗された接触面に、カーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって、該カーボン粉体を接触面に確実かつ強固に付着させることができるので、酸化防止被膜20,21の耐久性が向上する。
加えて、酸化防止被膜20,21が低摩擦係数(0.3以下)を有する被膜であるため、回転部材11の回転による導電性媒体G1の温度上昇を抑えることができ、接触面の酸化をより効果的に防止できる。
【0030】
なお、本実施の形態では、凹部17に導電性媒体G1として流体状の導電性グリースを充填したが、これに代えてカーボンブラック等の粉体状の導電性粒子をほぼ隙間無く充填してもよい。このようにすれば、回転部材11が回転した際に、導電性粒子は導電性グリースに比して、回転によって凹部17に発生する空孔ができ難くなる。したがって、導電性粒子が確実に、固定部材12と回転部材11との双方に接触するので、軸受を経由することなく、固定部材12、導電性粒子(導電性媒体)、回転部材11を介して電流をより確実に車軸に導くことができる。この際においても、粉体状の導電性粒子(導電性媒体)に接触する固定部材12の接触面と回転部材11の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜20,21が形成されているので、回転部材11の回転によって導電性媒体の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
本実施の形態も、本発明に係る通電回転装置を、鉄道車両の接地装置に適用した例である。
図3は鉄道車両の接地装置を示す側断面図である。
接地装置30は、図3に示すように、回転部材31と固定部材32と導電性媒体G2とを備えており、この導電性媒体G2は粉体状の導電性粒子によって構成されている。導電性粒子としては、例えばカーボン粉を使用している。
回転部材31は、車軸4の端面4bに固定されて、該車軸4とともに回転するものであり、該端面4bに固定される円板状の固定板31aと、この固定板31aに一体的に形成された円板状の凸部31b,31cとから構成されている。そして、固定板31aが4本のボルト13によって車軸4の端面4bに固定されている。また、凸部31bと凸部31cとは同軸に形成されており、凸部31cの方が小径となっている。
【0032】
また、固定部材32は、回転部材31が回転可能に装着されるものであり、円板状に形成されている。固定部材32の一方の端面には、リング部材34,35が固定されており、このリング部材35の内部に、転がり軸受36が固定されている。そして、この転がり軸受36に前記回転部材31の凸部31bがはめ込まれ、さらに、前記リング部材34の内側に前記回転部材31の凸部31cが遊嵌されることによって、固定部材32には、回転部材31が回転可能に装着されている。
また、固定部材32の一方の端面には、円形状の凹部37が形成されており、この凹部37の底面には、凸部32aが突設されている。
一方、前記凸部31cは前記リング部材34から突出しており、その先端面には凹部38が形成されている。この凹部38の内径は前記凸部32aの直径より大径に形成されており、凸部32aは凹部38に所定の隙間をもって挿入されている。また、凸部31cの先端部は凹部37の傾斜した内壁面に密接しており、これによって、凹部37と凹部38は閉塞されている。
【0033】
そして、回転部材31と固定部材32との間には、前記凹部37と凹部38とによって所定の隙間が設けられており、この隙間(凹部37,38)に、固定部材32の他方の端面に形成された図示しない充填孔から導電性媒体G2が充填封入されている。凹部37,38に充填された導電性媒体G2は、回転部材31と固定部材32との間に介在されており、これら回転部材31と固定部材32との双方に接触している。つまり、導電性媒体G2は、回転部材31の凸部31cの凹部38の内壁面と、固定部材32の凹部37の内壁面と凸部32aの外周面とに接触している。なお、前記隙間(凹部37,38)には、導電性媒体G2がほぼ隙間無く充填されている。
【0034】
上記のような回転部材31と固定部材32の双方とも、通電可能な金属で形成されており、固定部材32には、電流を流すリード線18の一端部が電気的に接続されている。また、このリード線18の他端部は、前記軸箱1に電気的に接続されている。
また、導電性媒体G2に接触する回転部材31の接触面と固定部材32の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜40,41が形成されている。つまり、固定部材32の凹部37の内壁面および凸部32aの外周面に酸化防止被膜40が形成され、回転部材31の先端面と凹部38の内壁面とに酸化防止被膜41が形成されている。
【0035】
酸化防止被膜40,41は、厚さが数μm程度のカーボン被膜であり、前記酸化防止被膜20,21と同様にして形成されている。
すなわち、固定部材32の凹部37の内壁面および凸部32aの外周面に、微細硬質粒子であるアルミナ粒子からなるショット粒子をショットピーニングによって投射することによって該内壁面および外周面を粗し、この粗された内壁面および外周面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されている。カーボン被膜の表面粗さは、Rz(十点平均高さ)で3~4μm程度である。
同様にして、回転部材31の先端面と凹部38の内壁面に、微細硬質粒子であるアルミナ粒子からなるショット粒子をショットピーニングによって投射することによって該先端面と内壁面を粗し、この粗された先端面と内壁面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されている。カーボン被膜の表面粗さは、Rz(十点平均高さ)で3~4μm程度である。
このような酸化防止被膜(カーボン被膜)40,41は、低摩擦係数を有しており、具体的には、摩擦係数が0.3以下となっている。
【0036】
上記のように構成された接地装置30では、接地装置10と同様に、導電性媒体G2に接触する固定部材32の接触面と回転部材31の接触面とに、導電性を有する酸化防止被膜40,41が形成されているので、回転部材31の回転によって導電性媒体G2の温度が上昇しても、前記接触面が酸化するのを防止できる。したがって、導電性媒体G2の温度が上昇しても、電気抵抗値を上げることなく確実に通電することができる。
また、酸化防止被膜40,41が接触面にカーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって形成されているので、接触面の形状に合わせて酸化防止被膜40,41を容易かつ均一に形成できる。
さらに、表面が粗された接触面に、カーボン粉体をショットピーニングによって投射して付着させることによって、該カーボン粉体を接触面に確実かつ強固に付着させることができるので、酸化防止被膜40,41の耐久性が向上する。
加えて、酸化防止被膜40,41が低摩擦係数(0.3以下)を有する被膜であるため、回転部材31の回転による導電性媒体G2の温度上昇を抑えることができ、接触面の酸化をより効果的に防止できる。
【0037】
なお、本実施の形態では、凹部37,38に導電性媒体G2として粉体状の導電性粒子を充填したが、これに代えて流体状の導電性グリースを充填してもよい。この場合、凹部37,38には導電性グリースを充満させるのではなく、車軸4の回転時における導電性グリースの膨張等を考慮して、導電性グリースを所定の量だけ充填封入したほうが好ましい。
【0038】
(実験例)
酸化防止被膜40,41が形成された接地装置30と、酸化防止被膜が形成されていない接地装置とを用いて、車軸の総回転数に対する電気抵抗値を実験によって調べた。
実験例では、摩擦係数が0.3以下で厚さが数μm程度のカーボン被膜からなる酸化防止被膜40,41が形成されており、導電性媒体G2として粉体状のカーボン粉を0.3g使用した。また、実験例では20A通電した。
比較例では、酸化防止被膜は形成されておらず、導電性媒体G2として粉体状のカーボン粉を0.3g使用した。また、比較例では20A通電した。
【0039】
その結果を表1と図4に示すグラフに示す。
【表1】
JP0005105886B2_000002t.gif
表1およびグラフから明らかなように、実験例に係る接地装置は、比較例に係る接地装置に比して、電気抵抗値が低く、また、総回転数の増加に伴う電気抵抗値の増加量も少ないことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る通電回転装置を、鉄道車両の接地装置に適用した第1例を示すものであり、接地装置を備えた軸箱の断面図である。
【図2】同、接地装置を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る通電回転装置を、鉄道車両の接地装置に適用した第2例を示すものであり、接地装置を示す側断面図である。
【図4】実験例と比較例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0041】
2 軸受
3 回転軸
10,30 接地装置(通電回転装置)
11,31 回転部材
12,32 固定部材
20,40 酸化防止被膜
21,41 酸化防止被膜
G1,G2 導電性媒体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3