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明細書 :厚さ測定装置及び厚さ測定プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4802081号 (P4802081)
公開番号 特開2008-111738 (P2008-111738A)
登録日 平成23年8月12日(2011.8.12)
発行日 平成23年10月26日(2011.10.26)
公開日 平成20年5月15日(2008.5.15)
発明の名称または考案の名称 厚さ測定装置及び厚さ測定プログラム
国際特許分類 G01B   7/06        (2006.01)
FI G01B 7/06 M
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2006-295315 (P2006-295315)
出願日 平成18年10月31日(2006.10.31)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】佐藤 勇輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
審査官 【審査官】中川 康文
参考文献・文献 特開昭56-145305(JP,A)
特開昭57-076451(JP,A)
特開昭57-082749(JP,A)
特開昭58-017354(JP,A)
特開昭59-075146(JP,A)
特開昭60-131404(JP,A)
特開昭61-096401(JP,A)
特開昭61-292230(JP,A)
特開平03-189503(JP,A)
特開平05-231810(JP,A)
特開平07-218474(JP,A)
特開平08-152302(JP,A)
特開平08-233538(JP,A)
特開平10-078336(JP,A)
特許第3384803(JP,B2)
特開2002-141339(JP,A)
特開2002-181508(JP,A)
特開2002-340508(JP,A)
特開2003-106805(JP,A)
特開2004-301857(JP,A)
米国特許出願公開第2005/0024047(US,A1)
特開2005-201778(JP,A)
特開2006-058154(JP,A)
特開2006-208312(JP,A)
特表2007-501509(JP,A)
調査した分野 G01B 7/00~7/34
G01D 5/00~5/252;5/39~5/62
特許請求の範囲 【請求項1】
測定対象物の厚さを測定する厚さ測定装置であって、
鋼材に渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れを検出する位相遅れ検出部と、
前記位相遅れ検出部の検出結果に基づいて前記鋼材の厚さを測定する厚さ測定部とを備え、
前記位相遅れ検出部は、検波位相90°付近における出力電圧がゼロに近い領域で前記渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出すること、
を特徴とする厚さ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の厚さ測定装置において、
前記厚さ測定部は、前記渦電流信号の位相遅れと前記鋼材の厚さとの相関関係と、前記位相遅れ検出部が検出した前記渦電流信号の位相遅れとに基づいて、前記鋼材の厚さを測定すること、
を特徴とする厚さ測定装置。
【請求項3】
測定対象物の厚さを測定するための厚さ測定プログラムであって、
鋼材に渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れを検出する位相遅れ検出手順と、
前記位相遅れ検出手順における検出結果に基づいて前記鋼材の厚さを測定する厚さ測定手順とをコンピュータに実行させ、
前記位相遅れ検出手順は、検波位相90°付近における出力電圧がゼロに近い領域で前記渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出する手順を含むこと、
を特徴とする厚さ測定プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の厚さ測定プログラムにおいて、
前記厚さ測定手順は、前記渦電流信号の位相遅れと前記鋼材の厚さとの相関関係と、前記位相遅れ検出手順において検出した前記渦電流信号の位相遅れとに基づいて、前記鋼材の厚さを測定する手順を含むこと、
を特徴とする厚さ測定プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象物の厚さを測定する厚さ測定装置及び厚さ測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の厚さ測定装置は、鋼材の上面にレーザ光を照射しこの上面からの反射光を受光して鋼材の上面までの距離を測定する第1の反射型レーザ変位計と、鋼材の下面にレーザ光を照射しこの下面からの反射光を受光して鋼材の下面までの距離を測定する第2の反射型レーザ変位計と、第1の反射型レーザ変位計を上部で支持し第2の反射型レーザ変位計を下部で支持するC形フレームと、第1及び第2の反射型レーザ変位計の測定結果に基づいて鋼材の厚さを演算する演算処理装置などを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の厚さ測定装置では、C形フレームの上部と下部との間の間隙部に鋼材が位置するようにこのC形フレームを移動させて、第1及び第2の反射型レーザ計からレーザ光を鋼材の上面と下面とにそれぞれ照射し、第1及び第2の反射型レーザ計の出力信号に基づいて演算処理装置が鋼材の厚さを測定している。
【0003】

【特許文献1】特開平8-233538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の厚さ測定装置では、第1及び第2の反射型レーザ計を鋼材に対して位置決めするためにC形フレームを駆動する駆動装置が必要になり、装置が大型化し複雑になってしまう問題点がある。また、従来の厚さ測定装置では、鋼材に対して第1及び第2の反射型レーザ計を正確に位置決めすることが困難であり、鋼材の厚さを高精度に測定することができない問題点がある。さらに、従来の厚さ測定装置では、一対の反射型レーザ計を使用して鋼材の厚さを測定する必要があり、装置が高価になってしまう問題点がある。
【0005】
この発明の課題は、安価で簡単に測定対象物の厚さを測定することができる厚さ測定装置及び厚さ測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、測定対象物(S1,…,SN)の厚さ(t0,…,tn)を測定する厚さ測定装置であって、鋼材に渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)を検出する位相遅れ検出部(7a)と、前記位相遅れ検出部の検出結果に基づいて前記鋼材の厚さを測定する厚さ測定部(7f)とを備え、前記位相遅れ検出部は、検波位相90°付近における出力電圧がゼロに近い領域で前記渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出することを特徴とする厚さ測定装置(1)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の厚さ測定装置において、前記厚さ測定部は、前記渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)と前記鋼材(S1,…,SN)の厚さ(t0,…,tn)との相関関係と、前記位相遅れ検出部が検出した前記渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)とに基づいて、前記鋼材の厚さ(t0,…,tn)を測定することを特徴とする厚さ測定装置である。
【0008】
請求項3の発明は、測定対象物(S1,…,SN)の厚さ(t0,…,tn)を測定するための厚さ測定プログラムであって、鋼材に渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)を検出する位相遅れ検出手順(S500)と、前記位相遅れ検出手順における検出結果に基づいて前記鋼材の厚さを測定する厚さ測定手順(S600)とをコンピュータに実行させ、前記位相遅れ検出手順は、検波位相90°付近における出力電圧がゼロに近い領域で前記渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出する手順を含むことを特徴とする厚さ測定プログラムである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項に記載の厚さ測定プログラムにおいて、前記厚さ測定手順は、前記渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)と前記鋼材(S1,…,SN)の厚さ(t0,…,tn)との相関関係と、前記位相遅れ検出手順において検出した前記渦電流信号の位相遅れ(φ0,…,φn)とに基づいて、前記鋼材の厚さ(t0,…,tn)を測定する手順を含むことを特徴とする厚さ測定プログラムである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によると、安価で簡単に測定対象物の厚さを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置を概略的に示す構成図である。図2は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の渦電流検出部を概略的に示す回路図である。図3は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の位相検波部の信号処理を模式的に示す波形図であり、図3(A)は基準信号発生部が出力する基準信号の波形を示し、図3(B)は移相用信号発生部が出力する移相用信号の波形を示し、図3(C)は移相部が出力する移相用信号の波形を示す。ここで、図3に示す縦軸は、出力電圧(V)であり、横軸は時間(sec)である。
【0018】
に示す測定対象物Sは、図1に示す厚さ測定装置1によって厚さが測定される対象物である。測定対象物Sは、例えば、山形鋼、H形鋼などの形鋼の一種である鋼材などを組み立てて電車線路の支持物を構成する鉄柱などである。
【0019】
厚さ測定装置1は、測定対象物Sの厚さを測定する装置である。厚さ測定装置1は、測定対象物Sに渦電流を発生させて渦電流信号の位相遅れを検出し、この渦電流信号の位相遅れに基づいて測定対象物Sの厚さを測定する。厚さ測定装置1は、図1に示すように、基準信号発生部2と、渦電流検出部3と、移相用信号発生部4と、移相部5と、位相検波部6と、演算処理部7などを備えている。
【0020】
基準信号発生部2は、基準信号を発生する手段である。基準信号発生部2は、例えば、図3(A)に示すように、所定の周波数の交流信号(基準信号)を発生し、この交流信号を入力信号として渦電流検出部3に入力させる交流発振器などの発振部である。基準信号発生部2は、渦電流検出部3が渦電流を正確に検出可能なように、図3(A)に示すような変動しない連続波の交流信号を渦電流検出部3に出力する。
【0021】
図1に示す渦電流検出部3は、測定対象物Sに発生する渦電流を検出する手段であり、測定対象物Sに発生させた渦電流を検出する相互誘導型コイルを使用した検出コイルなどである。渦電流検出部3は、図2に示すように、励磁コイル3a,3bと、誘導コイル3c,3dと、可変抵抗器3e,3fと、出力端子3g,3hなどを備えている。励磁コイル3a,3bは、測定対象物Sに渦電流が発生するように磁界を発生させるコイルであり、励磁コイル3aは測定対象物Sに対向して配置されており、励磁コイル3bは励磁コイル3aと直列に接続されて空心状態で使用される。誘導コイル3c,3dは、測定対象物Sに渦電流が発生したときに電磁誘導作用によって起電力を発生するコイルであり、可変抵抗器3e,3fにブリッジ接続されている。誘導コイル3cは、測定対象物Sに対向して配置されており、誘導コイル3dは空心状態で使用される。誘導コイル3c,3dには、基準信号発生部2が出力する交流電流(励磁電流)が流れる。可変抵抗器3e,3fは、抵抗値を調整可能な抵抗器であり、測定対象物Sに励磁コイル3a及び誘導コイル3cが対向していないときに、ブリッジの出力がゼロになるように零点調整される。出力端子3g,3hは、測定対象物Sに発生する渦電流に対応する誘導起電力を出力する端子であり、出力端子3g,3h間には誘導出力の差分が出力される。渦電流検出部3は、励磁コイル3a,3bに基準信号発生部2から励磁電流を流すと、励磁コイル3a,3bが誘導磁界を発生して測定対象物Sに渦電流が流れ、この渦電流に対応する誘導出力を出力端子3g,3hから位相検波部6に出力する。
【0022】
図1に示す移相用信号発生部4は、移相用信号を発生する手段である。移相用信号発生部4は、例えば、図3(B)に示すように基準信号発生部2が発生する交流信号に同期した所定のパルス幅のパルス信号を発生し、このパルス信号を入力信号として移相部5に入力させる発振部である。移相用信号発生部4は、基準信号発生部2が出力する交流信号が正であるときには移相用信号を発生し、基準信号発生部2が出力する交流信号が負であるときには移相用信号を発生しない。
【0023】
図1に示す移相部5は、移相用信号発生部4が発生する移相用信号の位相をずらす手段である。移相部5は、例えば、図3(C)に示すように、移相用信号発生部4が発生する移相用信号の位相を所定の検波位相(例えば90°)ずらした移相用信号を発生し、この移相用信号を参照信号として位相検波部6に入力させる移相器などである。移相部5は、図3(C)に示すように、基準信号発生部2が出力する基準信号に同期してゲートを開閉する。
【0024】
図1に示す位相検波部6は、渦電流検出部3が出力する渦電流信号を位相検波する手段である。位相検波部6は、例えば、移相部5が出力する移相用信号に基づいて、渦電流検出部3が出力する渦電流信号(誘導コイル3c,3dの発生する誘導出力の差分)を位相検波し、位相検波信号(直流信号)に変換して出力する。位相検波部6は、図3(C)に示すように、移相部5がゲートを開けている時間(ゲート開時間)だけ、渦電流検出部3が出力する渦電流信号を位相遅れ検出部7aに出力する。位相検波部6は、渦電流信号の発生変化を捉えやすいように検波位相0°のときに最大出力が得られ、余弦波に比例した信号を位相遅れ検出部7aに出力する。
【0025】
図1に示す演算処理部7は、位相検波部6が出力する渦電流信号を所定の演算処理する手段である。演算処理部7は、例えば、位相検波部6が出力する渦電流信号の位相遅れを検出し、この位相遅れに基づいて測定対象物Sの厚さを測定する。演算処理部7は、測定対象物Sの厚さを測定するための厚さ測定プログラムに従って所定の処理を実行するパーソナルコンピュータなどである。演算処理部7は、位相遅れ検出部7aと、位相遅れ情報記憶部7bと、検波位相情報記憶部7cと、検波位相設定部7dと、相関関係情報記憶部7eと、厚さ測定部7fと、測定結果記憶部7gと、測定結果出力部7hと、プログラム記憶部7iと、制御部7jなどを備えている。
【0026】
位相遅れ検出部7aは、測定対象物Sに渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れを検出する手段である。位相遅れ検出部7aは、位相検波部6が出力する位相検波信号(渦電流信号)の位相遅れを検出する。位相遅れ検出部7aは、渦電流信号を所定の検波位相(例えば90°近傍の検波位相)で検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出し、この位相遅れを位相遅れ情報として制御部7jに出力する。位相遅れ検出部7aは、鋼材の材質のような種類の異なる複数の測定対象物Sの厚さを測定する場合には、これらの測定対象物S毎に対応する検波位相で渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れを検出する。
【0027】
図4は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の位相遅れ検出部の出力する位相検波信号を模式的に示す波形図である。
図4に示す縦軸は、渦電流信号の出力電圧(V)であり、横軸は角度(°)である。図4に示す実線の波形W0,…,W3は、それぞれ測定対象物Sが厚さt0,…,t3(t0<t<t<t)である場合に、検波位相90°で検波したときのときの出力電圧を示し、二点鎖線の波形W1,…,W3はそれぞれ測定対象物Sが厚さt1,…,t3である場合に、検波位相0°で検波したときの出力電圧を示す。φ0,…,φ3(φ0)は、それぞれ測定対象物Sが厚さt0,…,t3である場合に、検波位相90°で検波したときの出力電圧の位相遅れを示す。図4に示すように、検波位相0°で渦電流信号を検波したときには、図中二点鎖線で示すように厚さt0,…,t3が厚くなるほど出力電圧の信号レベルが低くなっているが出力電圧に位相遅れはない。一方、検波位相90°で渦電流信号を検波したときには、図中実線で示すように厚さt0,…,t3が厚くなるほど出力信号の信号レベルが低くなるとともに位相遅れφ0,…,φ3が大きくなっており、厚さt0,…,t3に応じて位相遅れφ0,…,φ3が生じている。このため、検波位相90°近傍で検波したときには、測定対象物Sの厚さt0,…,t3に応じて出力電圧の信号レベルと位相とが変化しており、検波位相90°近傍で検波した渦電流信号の位相遅れφ0,…,φ3を検出することによって、測定対象物Sの厚さt0,…,t3を測定可能である。
【0028】
図5は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置において検波位相0°及び検波位相70°のときの鋼材厚さと出力電圧との関係を示すグラフである。図6は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置において検波位相90°付近のときの鋼材厚さと出力電圧との関係を示すグラフである。図7は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の渦電流検出部周辺における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【0029】
図5及び図6に示す縦軸は、渦電流信号の出力電圧 (V)であり、横軸は測定対象物Sの鋼材厚さ(mm)であり、測定対象物Sとして使用した鋼材は一般構造用圧延鋼の山形鋼である。図7に示す縦軸は、磁束密度比であり、渦電流検出部3の誘導コイル(検出コイル)3c,3dの直近の磁束密度を基準としたときの誘導コイル3c,3dの周辺の磁束密度の比率である。横軸は、渦電流検出部3の誘導コイル3c,3dからの距離(mm)である。図5に示すグラフは、励磁周波数6Hz、位相検波0°及び位相検波70°のときの鋼材厚さと出力電圧との関係を表している。図5に示すように、位相検波0°のときには鋼材厚さと出力電圧との間に相関関係は認められないが、位相検波70°のときには鋼材厚さ8mmまで鋼材厚さと出力電圧との間に僅かに相関関係が認められる。
【0030】
図6に示すグラフは、検波位相90°付近で出力電圧がゼロに近い領域で検波し、鋼材厚さに対応して位相遅れ分のみを出力した結果を表している。図6に示すように、位相検波90°のときには、鋼材厚さが厚くなるに従って出力電圧が低下しており、鋼材厚さと出力電圧との間に明確に相関関係が認められる。このため、検波位相70°~90°のときには鋼材厚さを測定可能であり、特に検波位相90°のときには鋼材厚さを正確に測定可能であると考えられる。
【0031】
図7に示すグラフは、渦電流検出部3の誘導コイル3c,3dの周辺の磁束密度をガウスメータで測定した結果を示すグラフである。図7に示すように、誘導コイル3c,3dから15mm離れると誘導コイル3c,3dによる磁束密度の影響がなくなることから、誘導コイル3c,3dから15mm離れた部位では鋼材の形状が測定に影響しないと考えられる。
【0032】
図1に示す位相遅れ情報記憶部7bは、位相遅れ検出部7aの検出結果を記憶する手段である。位相遅れ情報記憶部7bは、例えば、図4に示すように測定対象物S毎の位相遅れφ0,…,φ3を位相遅れ情報として記憶するメモリなどである。
【0033】
検波位相情報記憶部7cは、各測定対象物Sに対応する検波位相を記憶する手段である。検波位相情報記憶部7cは、例えば、測定対象物Sが鋼材であるときに各鋼材の種類に対応する最適な検波位相を検波位相情報として記憶するメモリなどである。
【0034】
検波位相設定部7dは、渦電流信号を検波するときの検波位相を測定対象物Sに応じて設定する手段である。検波位相設定部7dは、例えば、測定対象物Sが鋼材であるときに、この鋼材の種類に応じて検波位相を設定し、鋼材毎の検波位相を検波位相情報として制御部7jに出力する。検波位相設定部7dは、図示しない入力部によって測定対象物Sの種類などが入力されるとこの測定対象物Sの種類を検索キーとして検波位相情報記憶部7cを検索し、この測定対象物Sに対応する検波位相を選択する。
【0035】
図8は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の相関関係情報記憶部のデータ構造を模式的に示す図である。
相関関係情報記憶部7eは、渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnと測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnとの相関関係を記憶する手段である。相関関係情報記憶部7eは、例えば、図8に示すように、測定対象物S1,…,SN毎に位相遅れφ0,…,φnと厚さt0,…,tnとの相関関係を相関関係情報として記憶している。
【0036】
図1に示す厚さ測定部7fは、位相遅れ検出部7aの検出結果に基づいて測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを測定する手段である。厚さ測定部7fは、位相遅れ情報検出部が検出した渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnと、相関関係情報記憶部7eが記憶する相関関係情報とに基づいて、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを測定し、この測定結果を厚さ測定情報として制御部7jに出力する。
【0037】
測定結果記憶部7gは、厚さ測定部7fの測定結果を記憶する手段である。測定結果記憶部7gは、例えば、厚さ測定部7fが測定した測定対象物S1,…,SN毎の厚さt0,…,tnを記憶するメモリなどである。
【0038】
測定結果出力部7hは、厚さ測定部7fの測定結果を出力する手段である。測定結果出力部7hは、厚さ測定装置1と外部装置を接続してこれらの間で種々の情報を入出力させるインタフェース(I/O)回路などである。測定結果出力部7hは、厚さ測定部7fが測定した測定対象物S1,…,SN毎の厚さt0,…,tnを表示装置又は印刷装置などの外部装置に出力する。
【0039】
プログラム記憶部7iは、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを測定するための厚さ測定プログラムを記憶する手段である。プログラム記憶部7iは、情報記録媒体から読み取った厚さ測定プログラムや、電気通信回線を通じて取り込まれた厚さ測定プログラムなどを記憶するメモリである。
【0040】
制御部7jは、厚さ測定装置1の種々の動作を制御する手段(中央処理部(CPU))である。制御部7jは、プログラム記憶部7iから厚さ測定プログラムを読み出して厚さ測定装置1に所定の処理を指令し実行させる。制御部7jは、例えば、基準信号発生部2に基準信号を発生させたり、移相用信号発生部4に移相用信号を発生させたり、移相部5に所定の検波位相ずらした移相用信号を発生させたり、位相遅れ情報記憶部7bに位相遅れ情報の記憶を指令したり、検波位相情報記憶部7cから検波位相情報を読み出して検波位相設定部7dに出力したり、検波位相設定部7dが出力する検波位相情報を移相部5に出力したり、相関関係情報記憶部7eから相関関係情報を読み出して厚さ測定部7fに出力したり、厚さ測定部7fに測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnの測定を指令したり、測定結果記憶部7gに厚さ測定情報を記憶させたり、測定結果出力部7hに厚さ測定情報を出力させたりする。制御部7jには、図1に示すように、基準信号発生部2、移相用信号発生部4、移相部5、位相遅れ検出部7a、位相遅れ情報記憶部7b、検波位相情報記憶部7c、検波位相設定部7d、相関関係情報記憶部7e、厚さ測定部7f、測定結果記憶部7g、測定結果出力部7h及びプログラム記憶部7iなどが相互に通信可能なようにバスなどの通信手段によって接続されている。
【0041】
次に、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の動作を説明する。
図9は、この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。以下では、制御部7jの動作を中心として説明する。
図9に示すステップ(以下、Sという)100において、図1に示す制御部7jが厚さ測定プログラムを読み込む。図示しない電源スイッチがONすると厚さ測定装置1に電力が供給されて、プログラム記憶部7iから厚さ測定プログラムを制御部7jが読み込み演算処理部7に一連の処理を開始させる。
【0042】
S200において、検波位相が設定されているか否かを制御部7jが判断する。図8に示す測定対象物S1,…,SNの種類などが図示しない入力部から制御部7jに入力されると、この測定対象物S1,…,SNに対応する検波位相を検波位相情報記憶部7cから検波位相設定部7dが抽出して、この検波位相を検波位相情報として設定して制御部7jに出力する。検波位相設定部7dから検波位相情報が入力したと制御部7jが判断したときにはS300に進む。一方、検波位相設定部7dから検波位相情報が入力しなかったと制御部7jが判断したときには、例えば図示しない表示装置に検波位相を設定するように注意を喚起するための表示を、測定結果出力部7hを通じて制御部7jが指令し、検波位相設定部7dから検波位相情報が入力するまで制御部7jが判断を繰り返す。
【0043】
S300において、基準信号の発生を基準信号発生部2に制御部7jが指令する。その結果、図3(A)に示すような基準信号を基準信号発生部2が渦電流検出部3に出力し、図2に示す励磁コイル3a,3bに基準信号が流れて測定対象物Sに渦電流が発生する。測定対象物Sに渦電流が発生すると誘導コイル3c,3dに起電力が発生し、渦電流検出部3から位相検波部6に渦電流信号が入力する。
【0044】
S400において、移相用信号の発生を移相用信号発生部4に制御部7jが指令する。その結果、図3(B)に示すような移相用信号を移相用信号発生部4が移相部5に出力し、図3(C)に示すように検波位相設定部7dが設定した検波位相(例えば90°)ずらした移相用信号を移相部5が位相検波部6に出力する。その結果、移相部5が出力する移相用信号に基づいて、渦電流検出部3が出力する渦電流信号を位相検波部6が位相検波し、移相部5がゲートを開けているゲート開時間だけ、渦電流検出部3が出力する渦電流信号を位相検波部6が位相遅れ検出部7aに出力させる。
【0045】
S500において、位相遅れφ0,…,φnの検出を位相遅れ検出部7aに制御部7jが指令する。例えば、図4に示すように、検波位相90°で渦電流信号を検波すると、図中実線で示す波形W0,…,W3で示すように厚さt0,…,t3に応じて位相遅れφ0,…,φ3が生じる。その結果、測定対象物Sの厚さt0,…,t3を測定するために、位相検波部6が出力する渦電流信号の位相遅れφ0,…,φ3を位相遅れ検出部7aが検出して、この位相遅れφ0,…,φ3を位相遅れ情報として制御部7jに出力し、この位相遅れ情報が位相遅れ情報記憶部7bに記録される。
【0046】
S600において、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnの測定を厚さ測定部7fに制御部7jが指令する。図2に示す測定対象物S1,…,SNの種類などが図示しない入力部から制御部7jに入力されると、この測定対象物S1,…,SNに対応する相関関係情報を相関関係情報記憶部7eから制御部7jが読み出して厚さ測定部7fに出力する。また、位相遅れ情報記憶部7bから位相遅れ情報を制御部7jが読み出して厚さ測定部7fに出力する。その結果、位相遅れ情報と相関関係情報とを厚さ測定部7fが参照して測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを測定し、この測定結果が厚さ測定情報として制御部7jに出力され、この厚さ測定情報が測定結果記憶部7gに記録される。
【0047】
この発明の実施形態に係る厚さ測定装置及び厚さ測定プログラムには、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、測定対象物S1,…,SNに渦電流を発生させたときに、この渦電流の時間変化を表す渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnを位相遅れ検出部7aが検出し、この位相遅れ検出部7aの検出結果に基づいて測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを厚さ測定部7fが測定する。このため、簡単な構成の厚さ測定装置1によって測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを容易に測定することができる。
【0048】
(2) この実施形態では、渦電流信号を所定の検波位相で検波したときのこの渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnを位相遅れ検出部7aが検出する。このため、渦電流信号の信号レベルがゼロに近くなる領域で渦電流信号を検波して、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnに対応して位相遅れ分みを出力させ、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを精度よく測定することができる。特に、渦電流信号を検波位相90°で検波したときには、図4に示すように渦電流信号の位相遅れφ0,…,φ3と測定対象物Sの厚さt0,…,t3との相関関係が明確になって、測定対象物Sの厚さt0,…,t3を精度よく測定することができる。
【0049】
(3) この実施形態では、測定対象物S1,…,SN毎に対応する検波位相で渦電流信号を検波したときのこの渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnを位相遅れ検出部7aが検出する。このため、例えば、測定対象物S1,…,SNに応じて検波位相を切り替えることによって、測定対象物S1,…,SNの材質などに応じて適切な検波位相で渦電流信号を検波し、測定対象物S1,…,SN毎に厚さt0,…,tnを精度よく測定することができる。
【0050】
(4) この実施形態では、渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnと測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnとの相関関係と、位相遅れ検出部7aが検出した渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnとに基づいて、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを厚さ測定部7fが測定する。このため、測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを短時間に簡単に測定することができる。
【0051】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
例えば、この実施形態では、測定対象物Sとして山形鋼などの鋼材を例に挙げて説明したが、鉄道車両が走行するレールのレール頭部とレール底部とを繋ぐレール腹部などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、渦電流信号を所定の検波位相で検波したときのこの渦電流信号の位相遅れφ0,…,φnに基づいて測定対象物S1,…,SNの厚さt0,…,tnを測定しているが、この渦電流信号の信号レベルと位相遅れφ0,…,φ3とに基づいて測定対象物Sの厚さt0,…,t3を測定することもできる。この場合には、渦電流信号の信号レベル又は位相遅れφ0,…,φ3の少なくとも一方を任意に選定する選択部を厚さ測定装置1が備えるように構成することができる。さらに、この実施形態では、基準信号発生部2と移相用信号発生部4とを厚さ測定装置1がそれぞれ別個に備えているが、基準信号発生部2が発生する基準信号を移相用信号発生部4に入力させて、この基準信号に基づいて移相用信号発生部4が移相用信号を発生するように構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置を概略的に示す構成図である。
【図2】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の渦電流検出部を概略的に示す回路図である。
【図3】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の位相検波部の信号処理を模式的に示す波形図であり、(A)は基準信号発生部が出力する基準信号の波形を示し、(B)は移相用信号発生部が出力する移相用信号の波形を示し、(C)は移相部が出力する移相用信号の波形を示す。
【図4】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の位相遅れ検出部の出力する位相検波信号を模式的に示す波形図である。
【図5】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置において検波位相0°及び検波位相70°のときの鋼材厚さと出力電圧との関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置において検波位相90°付近のときの鋼材厚さと出力電圧との関係を示すグラフである。
【図7】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の渦電流検出部周辺における磁束密度の測定結果を示すグラフである。
【図8】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の相関関係情報記憶部のデータ構造を模式的に示す図である。
【図9】この発明の実施形態に係る厚さ測定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 厚さ測定装置
2 基準信号発生部
3 渦電流検出部
3a,3b 励磁コイル
3c,3d 誘導コイル
3g,3h 出力端子
4 移相用信号発生部
5 移相部
6 位相検波部
7 演算処理部
7a 位相遅れ検出部
7b 位相遅れ情報記憶部
7c 検波位相情報記憶部
7d 検波位相設定部
7e 相関関係情報記憶部
7f 厚さ測定部
7g 測定結果記憶部
7h 測定結果出力部
7i プログラム記憶部
7j 制御部
S,S1,…,SN 測定対象物
0,…,tn 厚さ
φ0,…,φn 位相遅れ
0,…,W3 波形
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8