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明細書 :光通信システム,光送信機,光受信機および方法ならびにこれらで用いる光相関器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4977899号 (P4977899)
登録日 平成24年4月27日(2012.4.27)
発行日 平成24年7月18日(2012.7.18)
発明の名称または考案の名称 光通信システム,光送信機,光受信機および方法ならびにこれらで用いる光相関器
国際特許分類 H04J  14/06        (2006.01)
H04J  14/04        (2006.01)
H04J  14/00        (2006.01)
H04J  13/18        (2011.01)
H04B   1/707       (2011.01)
G02F   1/01        (2006.01)
FI H04B 9/00 F
H04J 13/00 210
H04J 13/00 400
G02F 1/01 C
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2010-519129 (P2010-519129)
出願日 平成21年7月3日(2009.7.3)
国際出願番号 PCT/JP2009/062567
国際公開番号 WO2010/002041
国際公開日 平成22年1月7日(2010.1.7)
優先権出願番号 2008174235
優先日 平成20年7月3日(2008.7.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年11月8日(2010.11.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】塙 雅典
個別代理人の代理人 【識別番号】100080322、【弁理士】、【氏名又は名称】牛久 健司
【識別番号】100104651、【弁理士】、【氏名又は名称】井上 正
【識別番号】100114786、【弁理士】、【氏名又は名称】高城 貞晶
審査官 【審査官】岡 裕之
参考文献・文献 特開2007-88859(JP,A)
国際公開第2006/130742(WO,A1)
塙 雅典 外4名,SSFBG型光相関器を用いたOCDMループバック伝送のBER特性,2008年電子情報通信学会総合大会講演論文集,2008年 3月 5日,通信2,p.387,B-10-104
岡村 康弘 外2名,FBG型符号可変符号器・復号器を用いた光符号分割多重の一検討,電子情報通信学会技術研究報告,2004年 6月11日,Vol.104, No.126,pp.61-66,OCS2004-50
調査した分野 H04J 14/00
G02F 1/01
H04B 1/707
H04J 13/18
H04J 14/04
H04J 14/06
特許請求の範囲 【請求項1】
光送信機と光受信機を含み,
光送信機は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,この符号語によって送信すべき光信号を光学的にエンコードする光相関器を含み,
光受信機は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,受信する光信号をその符号語によって光学的にデコードする光相関器を含み,
上記光送信機または上記光受信機の上記光相関器が,
光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が上記の割当てられた符号語の振幅にあわせて調節され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記の割当てられた符号語の隣接要素間位相差にあわせてすべてのブラッグ・グレーティング間において等しくなるように調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,
入力光信号を上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を取り出す光サーキュレータとを備えている,
光通信システム。
【請求項2】
最大N個の光送信機を含み,各光送信機の光相関器にはそれぞれ異なる符号語が割当てられ,
最大N個の光受信機を含み,各光受信機の光相関器にはそれぞれ異なる符号語が割当てられている,
請求の範囲第1項に記載の光通信システム。
【請求項3】
m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,この符号語によって送信すべき光信号を光学的にエンコードする光相関器を含み,
上記光相関器が,
光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が上記の割当てられた符号語の振幅にあわせて調節され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記の割当てられた符号語の隣接要素間位相差にあわせてすべてのブラッグ・グレーティング間において等しくなるように調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,
入力光信号を上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を取り出す光サーキュレータとを備えている,
光送信機。
【請求項4】
m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,受信する光信号をその符号語によって光学的にデコードする光相関器を含み,
上記光相関器が,
光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が上記の割当てられた符号語の振幅にあわせて調節され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記の割当てられた符号語の隣接要素間位相差にあわせてすべてのブラッグ・グレーティング間において等しくなるように調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,
入力光信号を上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を取り出す光サーキュレータとを備えている,
光受信機。
【請求項5】
上記光相関器から出力される光相関信号を光電変換して電気信号を出力する光電変換回路と,この光電変換回路の出力電気信号から,上記光相関器に割当てられた符号語以外の複素直交符号の符号語によって符号化されて生じた多重干渉信号の通過を低減する低域通過フィルタとをさらに備えた請求の範囲第4項に記載の光受信機。
【請求項7】
m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が上記の割当てられた符号語の振幅にあわせて調節され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記の割当てられた符号語の隣接要素間位相差にあわせてすべてのブラッグ・グレーティング間において等しくなるように調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,
入力光信号を上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を取り出す光サーキュレータと,
を備えた光相関器。
【請求項8】
上記標本化ブラッグ・グレーティングが標本化光ファイバ・ブラッグ・グレーティングである,請求の範囲第7項に記載の光相関器。
【請求項9】
上記標本化ブラッグ・グレーティングの光導波路の全体に物理量を加えることにより,隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差またはブラッグ反射波長を等しく変化させ,かつこれらを相互に等しい所望の値に保つ物理量印加手段をさらに備えた,請求項7または8に記載の光相関器。
【請求項10】
光送信側において,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,送信すべき光信号を表わす光波からN個の光波を生成し,これらのN個の光波の時間軸上で隣接するものの間に,割当てられた符号語によって規定される等しい位相差を生じさせるように,送信すべき光信号を光学的にエンコードして送出し,
受信側において,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,この符号語が,受信光信号をエンコードした符号語と同一の場合には強い自己相関を表わす光信号を出力し,異なる場合には自己相関出力と比べて弱い相互相関を表わす光信号を出力する光相関器を用いて,受信光信号を割当てられた符号語によって光学的にデコードし,
上記光相関器から出力される光相関信号を光電変換して電気信号を得,この電気信号から,低減通過フィルタによって,上記光相関器に割当てられた符号語以外の複素直交符号の符号語によって符号化されて生じた多重干渉信号を低減する,
光通信方法。
【請求項14】
光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が,m行n列の要素がexp(2πj(m-1)(n-1)/N)(jは虚数単位)であるN×Nの正方行列の各行を符号語とする符号長Nの複素直交符号の符号語の一つの振幅にあわせて調整され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記複素直交符号の符号語の一つの隣接要素間位相差にあわせてすべてのブラッグ・グレーティング間において等しくなるように調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,入力光信号を光サーキュレータによって上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を上記光サーキュレータによって取り出す機構とを備えた光相関器について,物理量印加手段を用いて上記標本化ブラッグ・グレーティングの光導波路の全体に物理量を加えることにより,隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差またはブラッグ反射波長を等しく変化させ,かつこれらを相互に等しい所望の値に保つことにより,上記光相関器において上記複素直交符号の一符号語を,同じ正方行列の異なる行から得られる他の符号語に切り替える符号切り替え方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,光通信システムに関し,特に光符号分割多重通信(Optical Code Division Multiplexing)(OCDM)方式または光符号分割多元接続(Optical Code Division Multiple Access)(OCDMA)方式を用いた光通信システム,そのための光送信機および光受信機,光通信方法,光送信方法および光受信方法,ならびにそれらで用いる光相関器に関する。
【背景技術】
【0002】
符号分割多重通信/符号分割多元接続では,符号の直交性を利用して多重通信/多元接続を実現する。これらの方式では直交符号が一種の鍵として機能し,直交符号によって符号化された信号は同じ直交符号によって復号された場合に得られる自己相関信号によってのみ受信可能で,異なる直交符号で復号された場合に得られる相互相関信号では受信不可能となる。この技術は電気通信においては携帯電話や無線LAN用の多元接続方式として広く実用されている。
一方,光ファイバ通信システムに上記の符号分割多重通信/符号分割多元接続技術を適用した光符号分割多重(OCDM)/光符号分割多元接続(OCDMA)技術の研究開発が近年盛んに行われている。OCDM/OCDMAでは光学的符号化/復号化技術が用いられることが多く,光学的処理に適した直交符号が求められる。OCDM/OCDMAでも,電気通信で一般に用いられている搬送波の二つの位相状態(例:0,π)で符号を表現するゴールド符号や二値アダマール符号が使用されている。しかし,ゴールド符号で相互相関信号(すなわち多重/多元接続時の他チャネルからの干渉)を低減するには符号長を長くとる必要がある。また二値アダマール符号では相互相関信号のサイドローブが低減できない符号組合せが存在し,すべての多重/多元チャネルを同期させた同期式OCDM/OCDMAにしか使用できない。これらの問題の解決を目指し,搬送波の四つの位相状態(例:0,π/2,π,3π/2)で符号を表現する四値符号の利用が検討されている。たとえば次の文献を参照。
1.P.C.Teh,M.Ibsen,H.Lee,P.Petropoulos,D.J.Richardson,“Demonstration of a Four-Channel WDM/OCDM System Using 255-Chip 320-Gchip/s Quartern ary Phase Coding Gratings”,IEEE PHOTONICS TECNOLOGY LETTERS,vol.14,no.2,2002.
2.H.Sotobayashi,W.Chujo,K.Kitayama,“1.6b/s/Hz 6.4-Tb/s PSK-OCDM/WDM(4OCDM×40WDM×40Gb/s)Transmission,“Experiment Using Optical Heard Thresholding”,IEEE PHOTONICS TECNOLOGY LETTERS,vol.14,no.2,2002.
3.S.Boztas,R.Hammons,and P.V.Kumar,“4-phase sequences with nearoptimum correlation properties,”IEEE Trans.Inform.Theory,vol.38,pp.1101-1113,May 1992.
4.L.C.Tran,J.Seberry,B.J.Wysocki,T.A.Wysocki,T.Xia,and Ying Zhao,″Complex Orthogonal Sequences from Amicable Hadamard Matrices,″IEEE 59th Vehicular Technology Conference,Vol.3,pp.1490-1493,May 2004
文献1では,文献2で提案されたA系列群(family A sequence)と呼ばれる四値符号(A系列群符号)をOCDMに適用し,符号長255のA系列群への符号化/復号化を超格子構造ファイバ型回折格子(SSFBG)によって行うOCDMシステムについて報告している。しかし,SSFBGは作成時にそのデバイス構造が固定されてしまうため,A系列群符号を用いる場合にはA系列一つに対してSSFBGを一つ作成する必要がある。またA系列群符号で符号系列数を多くとるためには(すなわち多重/多元チャネル数を増加させるためには)長い符号長が必要となり,SSFBG型符号器/復号器を小型化することが困難となる。事実,文献1で利用されているSSFBG型符号器/復号器は全長が80mmある。
文献3でも符号長3の四値符号がOCDM用直交符号として利用されているが,符号体系は示されていない。また文献4では,二値アダマール符号を変換して多値アダマール符号を得るための計算機探索が報告されているが,体系的に符号を得ることができないため,ある符号長において取得可能な最大符号系列数や,最大相互相関値など,実用上大切な情報を得ることが困難である。また変換行列は発見的探索アルゴリズムで求める必要があり,符号長が長くなるにつれて多項式時間内に探索を終えることが困難になる。
このように,光処理による符号化/復号化に適し,相互相関値が低く抑えられる,OCDM/OCDMA用多値直交符号体系は現存していない。
【発明の開示】
【0003】
この発明は,OCDM/OCDMAシステムにおける光処理による符号化/復号化(エンコード/デコード)に適し,かつ相互相関値を低く抑えることができる直交符号を用いた光通信システム,光送信機,光受信機,光通信方法,光送信方法,光受信方法およびこれらで用いる光相関器を提供するものである。
この発明はまた,符号化/復号化の両方に適した汎用型の光相関器を提供する。
この発明はさらに,光受信機において符号多重干渉を低減方法できるようにすることを目的とする。
この発明による光通信システムは,上記光送信機と光受信機を含む。光送信機は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,この符号語によって送信すべき光信号を光学的にエンコードする光相関器を含む。上記受信機は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,受信する光信号をその符号語によって光学的にデコードする光相関器を含む。
上記光通信システムは,最大N個の光送信機と最大N個の光受信機を含み,各光送信機の光相関器にはそれぞれ異なる符号語が割当てられ,各光受信機の光相関器には対応する光送信機の光相関器に割当てられたものと同じ符号語が割当てられている。
光送信機において光信号をエンコードするときに用いられた符号語と同じ符号語が割当てられて光受信機において,強い自己相関光信号が得られ,異なる符号語が割当てられた光受信機においては非常に弱い相互相関光信号が得られるので,光信号を多重化して送信しても,特定の光受信機においてのみ対応する光送信機から送信されたデータが復号(デコード)されることになる。このようにして,OCDMまたはOCDMA方式による光通信が実現する。
この発明による光送信機は,光相関器を含み,この光相関器は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,送信すべき光信号を表わす光波からN個の光波を生成し,これらのN個の光波の時間軸上で隣接するものの間に,割当てられた符号語によって規定される位相差を生じさせるものである。これによって送信すべき光信号がエンコードされる。
一実施態様ではN個の光波はN個の光パルスの列であり,各光パルスの搬送波位相状態が光送信機に割当てられた複素直交符号の符号語の要素の偏角と対応しておりOCDM/OCDMA用光直交符号を表わす。
この発明による光受信機は光相関器を含み,この光相関器は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,この符号語が,受信光信号をエンコードした符号語と同一の場合には強い自己相関を表わす光信号を出力し,異なる場合には自己相関出力と比べて弱い相互相関を表わす光信号を出力するものである。
光受信機はさらに,上記光相関器から出力される光相関信号を光電変換して電気信号を出力する光電変換回路と,この光電変換回路の出力電気信号から,上記光相関器に割当てられた符号語以外の複素直交符号の符号語によって符号化されて生じた多重干渉信号を低減(遮断)する低域通過フィルタとをさらに備える。これによって,所望以外の複素直交符号によって符号化された多重干渉信号を低減することができる。すなわち,光符号分割多重干渉低減が実現する。
この発明は,さらに,送信すべき光信号を表わす光波からN個の光波を生成し,これらのN個の光波の時間軸上で隣接するものの間に,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語によって規定される位相差を生じさせるように構成された光相関器を提供している。
上記の光相関器は次に示すような標本化ブラッグ・グレーティングを用いて実現することができる。すなわち,この発明は光相関器を提供しており,この光相関器は,m行n列の要素がexp[2πj(m-1)(n-1)/N](jは虚数単位)であるN×Nの正方行列のいずれかの行によって表わされる符号長Nの複素直交符号の符号語が割当てられ,光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が上記の割当てられた符号語の振幅にあわせて調節され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記の割当てられた符号語の隣接要素間位相差にあわせて調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,入力光信号を上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を取り出す光サーキュレータとを備える。
上記標本化ブラッグ・グレーティングは一実施態様では,標本化光ファイバ・ブラッグ・グレーティングである。標本化ブラッグ・グレーティングの光導波路は光ファイバでもよいし,平面光導波路でもよい。
上記複素直交符号によるすべての,または多くの符号語を実現できる汎用の光相関器は,上記標本化ブラッグ・グレーティングの光導波路の一部または全体に物理量を加えることにより,隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差またはブラッグ反射波長を変化させ,かつこれらを所望の値に保つ物理量印加手段をさらに備えている。
印加する物理量の調整によって光波の位相差またはブラッグ反射波長を所望の値に変化させることができる。
このような汎用の相関器,すなわち符号の切り替えは,1×Nの光分波器とN本の並列光導波路とN×1の光合波器を有し,N本の並列光導波路のうちの一つの導波路を基準とする他の並列光導波路の伝搬遅延時間差が所望の上記複素直交符号の先頭パルスと他のパルスの時間差に対応し,かつ並列光導波路より出力される各光パルスの搬送波位相が所望の上記複素直交符号の先頭パルスと他のパルスの位相差に対応するように調節された光相関器を用い,上記光相関器に入射される光信号の搬送波波長に対して光相関器の動作波長を移動させることでも得られる。
この発明はさらに,上記光通信システム,上記光送信機,上記光受信機等を用いた光通信方法,光送信方法,光受信方法等も提供している。さらにこの発明は,光相関器における符号切り替え方法を提供している。
この発明による符号切り替え方法は,光導波路内に一定間隔で直列に配置された複数のブラッグ・グレーティングを有し,これらのブラッグ・グレーティングの反射率が,m行n列の要素がexp(2πj(m-1)(n-1)/N)(jは虚数単位)であるN×Nの正方行列の各行を符号語とする符号長Nの複素直交符号の符号語の一つの振幅にあわせて調整され,かつ隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差が上記複素直交符号の符号語の一つの隣接要素間位相差にあわせて調整された標本化ブラッグ・グレーティングと,入力光信号を光サーキュレータによって上記標本化ブラッグ・グレーティングに導き,上記標本化ブラッグ・グレーティングから出力される反射光波を上記光サーキュレータによって取り出す機構とを備えた光相関器を用い,上記標本化ブラッグ・グレーティングの光導波路の一部または全体に物理量を加えることにより,隣接するブラッグ・グレーティングによって反射される光波の位相差またはブラッグ反射波長を変化させ,かつこれらを所望の値に保つことにより,上記光相関器において上記複素直交符号の一符号語を,同じ正方行列の異なる行から得られる他の符号語に切り替えるものである。
以上のように,この発明によると,光処理による符号化/復号化に適し相互相関値が低く抑えられるOCDM/OCDMA用複素直交符号を用いた通信システム,光送信機,光受信機,光相関器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
第1A図は複素直交符号の一例(N=4の場合)を示すものであり,第1B図は複素平面を示し,第1C図は複素直交符号の各符号語が表わす位相差を示す。
第2図は複素直交符号の他の例(N=8の場合)を示すものである。
第3図は光符号分割多重方式ないしは光符号分割多元接続方式による通信システムを示すブロック図である。
第4図は標本化ファイバ・ブラッグ・グレーティング(SFBG)の構成を模式的に示すものである。
第5図はSFBGの入力短光パルスと出力反射パルスとを示すものである。
第6図は符号語とそれによる搬送波の隣接FBGによる反射光波間位相差を示す波形図である。
第7A図は,背景技術にあげた二相アダマール符号を用いた場合の相関波形の計算例を示し,第7B図は複素直交符号を用いた場合の相関波形の計算例を示すものである。
第8A図,第8B図,第8C図,第8D図は,実施例で用いた符号長4の複素直交符号の,4つの符号語に対応するSFBGの反射スペクトルを,数値シミュレーションの計算結果によって示すものである。
第9図は汎用タイプの光相関器の構成を模式的に示すものである。
第10A図,第10B図,第10C図,第10D図は,実施例で用いた符号長4の複素直交符号の符号語cに対応するSFBGを,熱電素子によって加熱した場合の反射スペクトルを,実デバイスの実測結果によって示したものである。
第11図は,多重干渉を低減できる受信機の装置構成を示すものである。
第12図は,N=16における自己相関波形と相互相関波形の周波数帯域幅に対する累積エネルギーの計算例を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
この発明の光符号分割多重(OCDM)方式または光符号分割多元接続(OCDMA)方式による光通信で用いられる符号は,m行n列の各要素が,
JP0004977899B2_000002t.gifで表わされるN×Nの正方行列の各行を符号語とする符号長Nの複素直交符号である。
N=4の場合の複素直交符号を与える正方行列の例が第1A図に表わされている(これを式(2)とする)。各行c,c,c,cがそれぞれ複素直交符号による符号語である(明細書においては,ci(i=1~N)の上につけるバーを省略する)。各符号の意味は第1B図に示す複素平面において理解できるであろう。
N=8の場合の複素直交符号を与える正方行列の例が第2図に示されている(これを式(3)とする)。各行c~cがそれぞれ複素直交符号による符号長8の符号語である。
第3図は上記の符号語を用いた通信システムの例を示している。最大N台の送信機と最大N台の受信機との間で(最大Nチャネル),データの送受信が可能である。すなわち,送信側では,異なるN個の複素直交符号c~c(c:i=1~N)でそれぞれ送信すべき光信号(データ)を符号化(エンコード)し,受信側では受信光を対応する複素直交符号で復号化(デコード)してデータを取り出す。多重化された送信光信号を,複素直交符号の直交性によってそれぞれに分離することができる。
各送信機3i(i=1~N)において,レーザ・ダイオード(レーザ光源)15から一定時間間隔で繰り返すきわめてパルス幅の狭いパルス・レーザ光(光パルス列)が発生する。この一連のパルス・レーザ光は,強度(振幅)変調器(インテンシティ・モジュレーター:IM)16において,送信すべきデータDによって強度変調される。データ変調は強度変調に限られない。たとえば差動位相変調(DPSK)なども用いることができる。強度変調器16の出力光信号は,エンコーダ10(後述する光相関器)において,それに割り当てられた複素直交符号語cを用いてエンコード(符号化)される。
N台の送信機31~3Nから出力されるエンコードされた光信号はコンバイナー30により多重化され,光ネットワーク50に送出される。
受信側において,光ネットワーク50を経て到来する多重化された光信号は,パワー・スプリッタ40によってN個の同じ光信号に分割され,それぞれ受信機4iに入力する。
各受信機4iはデコーダ20(後述する光相関器)を含み,このデコーダ20には,N個の複素直交符号語のうちの特定のものcがそれぞれ割り当てられている。受信機4iに入力した光信号はエンコーダ20において,それに割り当てられた複素直交符号語を用いてデコード(復号化)される。したがって,光信号が多重化されていても,特定の光受信機4iにおいては,その光受信機4iに割当てられた符号語ciと同じ符号語ciを用いて光送信機3iでエンコードされた光信号についてのみ高い自己相関信号が得られ,他の光送信機でエンコードされた光信号については低い相互相関信号となるので,対応する特定の光送信機3iから送信された光信号のみが取り出される。
デコーダから出力される光相関信号は,フォトダイオード(光検出器)25により電気相関信号に変換され,さらに,光電変換により得られた電気相関信号は電気低域通過フィルタ50に与えられる。この電気低域通過フィルタ50において,その受信機4iに割り当てられた複素直交符号以外の複素直交符号によるエンコードによって生じた多重干渉信号が低減(遮断)される。
すなわち,電気低域通過フィルタ26の遮断周波数は,送信機3iのエンコーダ10(光相関器)に入力する光パルス列の繰り返し周波数と同程度以上で,かつ後述するSFBG11の隣接するサブFBG間の間隔によって定まる隣接FBG反射光波間の時間間隔Tsの逆数で与えられる周波数に比べて十分に低く調整される必要がある。
第4図は上述のエンコーダ10またはデコーダ20内の光相関器で用いられる標本化ファイバ・ブラッグ・グレーティング(Sampled Fiber Bragg Grating:以下SFBGという)を模式的に示すものである。このSFBG11は符号長4の複素直交符号の符号語の一つに対応している。
一般にファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)は,光ファイバのコア部に周期的な屈折率変調(変化)を与えて回折格子を形成したファイバ型のデバイスである。このファイバ内に光を入射すると,
λBragg=2neffΛ ‥‥式(4)
というブラッグ条件を満たす特定の波長(ブラッグ波長)の光を強く反射(回折)する。ここでΛはFBGにおける屈折率変調の周期,neffはファイバのコア部の有効(実効)屈折率である。この回折格子を以下ではサブFBGという。
SFBGは,複数個のサブFBGを光ファイバ内に,離散的に(すなわち間隔をあけて),直列に(光ファイバの軸方向に)配置したものである。第4図に示すSFBG11は符号長4の複素直交符号の符号語の一つに対応するものであるから4つのサブFBGが設けられている。これらの4つのサブFBGを,図中の符号として,それぞれ光の入出力端から(第4図の左端から)FBG1,FBG2,FBG3,FBG4とする(これらを総括して呼ぶとき,または特定のものを代表的に示すときには単にFBGまたはFBGi(i=1~4)ということにする)。
サブFBGiの長さをそれぞれLgi(i=1~4),隣接する2つのサブFBGiとFBG(i+1)との間の間隙部(非FBG部)の長さをLsi(i=1~3),隣接する2つのサブFBGiからサブFBG(i+1)までの長さ(隣接するサブFBG間の間隔)をLi(i+1)(i=1~3)(Li(i+1)=Lgi+Lsi),各FBGiの反射率をRiとする。これらの長さLgi,長さLsi,間隔Li(i+1),反射率Riを総括して単にLg,Ls,L,Rということがある。
第5図は符号長4の光相関器の構成例を示している。SFBG11に加えて,SFBG11に入射光を導くとともにSFBG11からの反射光を取り出す3ポート光サーキュレータ12が設けられている。
SFBG11の光入出力端を3ポート光サーキュレータ12のポートP2に接続し,光サーキュレータ12のポートP1に短光パルスを一つ入射すると,この短光パルスはSFBG11に入力し,そのコア部内を伝搬しながら各FBGで順次反射(ブラッグ回折)し,光サーキュレータ12のポートP2に入力するから,光サーキュレータ12のポートP3から,時間間隔Tsの4つの短光パルスの列が取り出される。各FBGの反射率Rが非常に小さければ(1≪R),出力短光パルス列における4つのパルスの強度の差は非常に小さい。
上記時間間隔Tsは隣接するサブFBG間の間隔Lを用いて,次式で与えられる。
Ts≒2ncoreL/c ‥‥式(5)
ここでcは光速,ncoreは間隙部のコアの有効(実効)屈折率である。
光サーキュレータ12のポートP1に入射する短光パルスのパルス幅は,式(5)で定まる反射光パルス列の時間間隔Tsと同等か,より短いことが望ましい。
SFBG11のサブFBGの反射率R1,R2,R3,R4は,単一短光パルスの入射に対して等しい,もしくはほぼ等しい,またはいずれか一つの符号語の振幅にあわせた強度のパルスのパルス列が出力されるように調整されている必要がある。
SFBG11のサブFBGの反射率Rは,上記のように非常に小さければ,単一短光パルスの入射に対して,式(2)で表わされる(第1A図に示される)複素直交符号における符号語の一つを表わすように調整されているといえる。他の調整の方法としては(パルス列の各パルスの強度を等しく,またはほぼ等しくするためには),SFBG11の入出力端から遠くなるにしたがいFBGの反射率を高く設定することがある(R1<R2<R3<R4)。
SFBG11内の隣接するサブFBG間の位相差は,単一短光パルスの入射に対して,隣接するサブFBGによって反射される2つの短光パルス間の搬送波の位相差が,式(2)で表わされる(第1A図に示される)複素直交符号の符号語の一つの,隣接する要素間の位相差に一致するように調整されている必要がある。この点について以下に説明する。
SFBG11内にその入出力端(第5図の左端)から入射した光波について,隣接するサブFBGのうちの前段のFBGiで反射して入出力端に戻る反射光波と,後段のFBG(i+1)で反射して入出力端に戻る反射光波との間の光路差は近似的に次式で与えられる。
2ncoreL ‥‥式(6)
上記2つの反射光波(搬送波)の位相差(第4図にΔφ12,Δφ23,Δφ34等で表わされている)がブラッグ波長λBraggにおいて0であるためには,式(6)で表わされる光路差がブラッグ波長λBraggの正の整数倍であればよい。
上記2つの反射波(搬送波)の位相差がブラッグ波長λBraggにおいてπ/2であるためには,式(6)で表わされる光路差がブラッグ波長λBraggの(4k+1)/4(kは0または正の整数)倍であればよい。
上記2つの反射波(搬送波)の位相差がブラッグ波長λBraggにおいてπであるためには,式(6)で表わされる光路差がブラッグ波長λBraggの(2k+1)/2(kは0または正の整数)倍であればよい。
上記2つの反射波(搬送波)の位相差がブラッグ波長λBraggにおいて3π/2であるためには,式(6)で表わされる光路差がブラッグ波長λBraggの(4k+3)/4(kは0または正の整数)倍であればよい。
符号長4の光相関器(エンコーダ10およびデコーダ20のいずれにおいても)についていうと,たとえば光送信機3iおよび光受信機4iの光相関器は,i=1の場合には(符号語c),隣接する2つのFBGで反射する上記の2つの反射波(搬送波)の位相差が0となるように,i=2の場合には(符号語c)π/2となるように,i=3の場合には(符号語c)πとなるように,i=4の場合には(符号語c)3π/2となるように,式(6)で表わされる光路差があらかじめ調整されている。
このような符号語とSFBG11から出力される4つの短光パルスの列の搬送波との関係が第6図に示されている。破線で示すのは搬送波の包絡線であり,この包絡線をその強度のみで示すと第5図に示す4つの短光パルス列となる。太い実線で示す搬送波は,それらの位相のずれを分りやすく示すために,周波数をわざわざ低く(波長を長く)して描いてある。符号語に対応して搬送波の位相差が各FBG間において0,π/2,π,3π/2となっていることが理解されよう。第1C図は各符号語に対応する位相差Δφ12,Δφ23,Δφ34をマトリクスの形で表現したものである。
各送信機3iに設けられるエンコーダ10内の相関器(第5図に示す構成)から出力される光相関信号においては,各送信機3i(i=1~N:ここではN=4)に割当てられている符号語に対応する位相差が短光パルス列の隣接する2つのパルスの搬送波間に生じていることになる。
受信機4iに設けられるデコーダ20内の相関器(第5図に示す構成)においては,入力する光相関信号(受信光信号)を生成した符号語と,その受信機4iに割当てられている符号語との相関波形を表わす光信号が光サーキュレータ12のポートP3から出力されることになる。
光送信機における符号語と,受信機のデコーダの光相関器のSFBG11に割当てられた符号語が同一の場合には,サーキュレータ12から取り出される光信号は,その符号語の自己相関波形となり,二つの符号語が異なる場合には,二つの符号語の相互相関波形となる。
第7A図は,従来用いられてきた二相アダマール行列から得られたN=4の実数直交符号における相関波形を示している。
第7B図は,N=4の複素直交符号の4つの符号語のうち二つの符号語の組み合わせによって得られる相関波形を示している。
いずれも,図の対角要素は自己相関波形,非対角要素は相互相関波形である。
第7A図の二相アダマール行列の相関波形では,自己相関波形の形状が二種類に大別できるとともに,第3行第4列と第4行第3列の符号語の組み合わせにおいて,相互相関波形に高いピークが見て取れる。第1行第3列,第2行第4列,第3行第1列,第4行第2列の相互相関波形も,自己相関波形のピークの1/4程度の高めのピークを有している。
これに対し,第7B図のこの発明の実施例による複素直交符号の相関波形では,いずれの符号語の組み合わせにおいても,相互相関波形のピークが低く抑えられている。
N=4の場合の相互相関波形のピークの最大値は,二相アダマール符号では自己相関波形の9/16(56.25%),この発明の実施例による複素直交符号では2/16(12.5%)となる。
符号長がより長い場合(Nが4より大きい場合),この相互相関値の最大値の差は拡大し,この発明による複素直交符号の利用による相互相関低減効果がより顕著となる。
第8A図から第8D図は,N=4の複素直交符号の4つの符号語に対応するように反射光波間位相差が調整されたSFBGの反射スペクトル(レーザ光は単一波長とはいえ,実際には若干の波長の分布が存在する)の計算例を表している。
縦軸は反射量で単位はdB(デシベル),横軸は中心波長に対する波長ずれを中心波長で正規化した位相差として表した量で,単位はrad/s(ラジアン毎秒)である。
これらの図に示す4つの反射スペクトルは,間隔が2π rad/sの高いピークと,そのピークに対して±0.5π rad/s,±1.0π rad/s,±1.5π rad/sの位置に反射率の谷を有している。
4つの反射スペクトルの差異は中心波長(ブラッグ波長)に対する相対的なピーク位置の差異だけである。
符号語cに対しては(第8A図),中心波長(ブラッグ波長)と,反射スペクトルのピーク波長が一致し,他の符号語c~cでは(第8B図~第8D図),反射スペクトルがそれぞれ0.5π rad/sずつ長波長側に移動し,それぞれ異なる反射率の谷が中心波長(ブラッグ波長)と一致する。
光符号分割多重用光相関器として用いることができる帯域幅は±π rad/sであり,光サーキュレータを介してSFBGに入射する短光パルス信号の帯域幅はこれと同等,あるいはそれ以上である必要がある。
上述のように,光送信機3iと光受信機4iの光相関器SFBG11において,対応する光送,受信機に同一の符号語に応じた位相差を搬送波に生じさせるような光路差をあらかじめ設定しておけばよい。上記の反射光波間位相差の調整は,サブFBG間の間隙部の長さの精密な調整,間隙部への紫外線照射,熱,応力の印加等により行うことができる。
第9図は上述したすべての符号語が設定可能な汎用的な光相関器の構成例を示している。この光相関器はエンコーダおよびデコーダの両方に適用可能である。
この光相関器はSFBG11における隣接するサブFBG間の光波の位相差(光路長)を熱光学効果で制御するための熱電素子13を備えている。この熱電素子13によりSFBG11の全体を加熱または冷却する。
すなわち,熱電素子13はSFBG11と接触して配置されており,熱電素子13に印加する電流量によってSFBG11の温度を調整し,熱光学効果によりSFBG11のコア内の屈折率ncoreを変化させるので,式(5)の時間間隔Tsと式(6)の光路差が調整される。同時にSFBG11内のサブFBGの実効屈折率neffも変化するため,式(4)のブラッグ波長も変化する。このようにして,所望の符号語を設定することが可能となる。
第10A図から第10D図は,N=4の複素直交符号の符号語cに対応するように反射光波間位相差が調整されたSFBGにおいて,そのブラッグ波長を熱電素子で調整したときの反射スペクトルの実測例を表している。第10A図から第10D図中の破線は,第8A図から第8D図に示した計算例である。
全てのサブFBGが同じ熱量を受け取る場合,全てのサブFBGのブラッグ波長が同じ波長だけ調整されるため,符号語cに対応する反射スペクトルが長波長側に移動する。
熱電素子13に印加する電流量を,加熱による反射スペクトルの移動量が第8A図から第8D図の各符号語に対する反射スペクトルのピーク波長の移動量と一致するように調整した場合,加熱前のブラッグ波長を中心とした帯域幅±π rad/sの反射スペクトル実測例は,反射スペクトル計算例とほぼ一致する。
このように,複素直交符号を光符号分割多重用直交符号として用いる場合,光相関器を実現するSFBGのサブFBGにおける反射光波間位相差を厳密に調整する代わりに,全てのサブFBGのブラッグ波長を調整することで,光相関器が対応する複素直交符号を動的に切り替えることが可能となる。
上記ブラッグ波長の動的切り替えは,上記実施例のように,熱電素子などを用いた熱光学効果によって実現することもできるし,SFBG全体への張力または応力の印加によっても実現できる。
上記の複素直交符号の動的切り替えは,SFBGのサブFBG間反射光波間位相差を,サブFBG間隙部への熱,応力の印加等によって調整することでも実現できる。
また,上記複素直交符号の動的切り替えは,全てのサブFBG間に等しい長さのYbイオン添加ファイバなどを挿入した場合には,上記ファイバの添加物イオンを励起する波長の光を波長多重カプラを介して信号光と合波して入射し,上記ファイバ内における光励起屈折率変化を利用することによっても実現できる。
第11図は,第3図に示す光受信機の構成を具体的に示すもので,第9図に示す構成の光相関器が用いられている。この光相関器から取り出される光相関信号を光検出器25によって光電変換し,光電変換で得られた電気相関信号を電気低域通過フィルタ26に通すことにより,この光相関器に割当てられた複素直交符号以外の複素直交符号によって符号化された多重干渉信号を低減(遮断)することができる。第11図は光符号分割多重干渉低減方法の実施例の装置構成を示すものである。
電気低域通過フィルタ26の遮断周波数は,上述したように,符号化用光相関器に入力される光パルス列の繰り返し周波数と同程度以上で,SFBG11の隣接するサブFBG間隔Lsによって定まる隣接FBG反射光波間の時間間隔Tsの逆数で与えられる周波数に比べて十分に低く調整される必要がある。
第12図は,N=16の複素直交符号における正規化自己相関波形(実線)と正規化相互相関波形(点線)の周波数帯域幅に対する累積エネルギーを示した計算例である。いずれの累積エネルギーも,各波形のエネルギーで正規化されている。
N=16の複素直交符号では,相互相関波形はN-1=15通りあるため,破線の相互相関波形に対する累積エネルギーは15本重ねて表示されている。
このとき,符号化用光相関器に入力された光パルス列の繰り返し周波数は1GHz,サブFBG間隔Lsによって定まる時間間隔Tsは50psであり,その逆数で与えられる周波数は20GHzである。
実線の自己相関波形の累積エネルギーが1GHzでほぼ飽和しているのに対し,破線の相互相関波形の多くはより高い周波数において累積エネルギーが上昇し飽和している。
この実施例では,電気低域通過フィルタ26の遮断周波数を1GHz前後(図中点線)に調整することによって,元々原理的に小さい相互相関成分を各符号語に対してさらに1.5dBから2dB抑圧可能となり,特に非同期多重時の多重干渉を影響を大幅に低減可能となる。
上記実施例では,N=4,N=8,N=16の複素直交符号が示されているが,符号長Nはこれらに限らない。一例としては2のべき乗がある。Nは4以上が好ましい。
上記実施例では,ブラッグ・グレーティングが光ファイバのコア内に形成されたファイバ・ブラッグ・グレーティングが用いられているが,平面光導波路にブラッグ・グレーティングが形成されたものをSFBGに代えて用いることもできる。
または,SFBG11と光サーキュレータ12の代わりに,1×Nの光分波器とN本の並列光導波路とN×1の光合波器を有し,N本の並列光導波路のうちの一つの導波路を基準とする他の並列光導波路の伝搬遅延時間差が,所望の上記複素直交符号の先頭パルスと他のパルスの時間差に対応し,かつ並列光導波路より出力される各光パルスの搬送波位相が所望の上記複素直交符号の先頭パルスと他のパルスの位相差に対応するように調節された光相関器を用いることもできる。
このときの光分波器,並列光導波路,光合波器は,光ファイバ型素子で実現することもできるし,平面光導波路型素子として実現することもできる。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7A】
8
【図7B】
9
【図8A】
10
【図8B】
11
【図8C】
12
【図8D】
13
【図9】
14
【図10A】
15
【図10B】
16
【図10C】
17
【図10D】
18
【図11】
19
【図12】
20