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明細書 :二酸化炭素の水素還元用触媒及び二酸化炭素の水素還元方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5392812号 (P5392812)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 二酸化炭素の水素還元用触媒及び二酸化炭素の水素還元方法
国際特許分類 B01J  23/46        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
C07C   1/12        (2006.01)
C07C   9/04        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 23/46 301M
B01J 37/02 301P
C07C 1/12
C07C 9/04
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 8
全頁数 20
出願番号 特願2008-278243 (P2008-278243)
出願日 平成20年10月29日(2008.10.29)
優先権出願番号 2007282290
優先日 平成19年10月30日(2007.10.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年10月7日(2011.10.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】阿部 孝之
【氏名】田口 明
個別代理人の代理人 【識別番号】100110858、【弁理士】、【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
特許請求の範囲 【請求項1】
粉末状の担体にナノ粒子が分散担持された二酸化炭素の水素還元用触媒であって、
前記ナノ粒子のうち90%以上は粒径が10nm未満の粒子であり、
前記ナノ粒子は、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ag、Ir及びPtからなる群から選択される少なくとも一の金属粒子であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項2】
内部の断面形状が多角形を有する真空容器を、前記断面に対して略垂直方向を回転軸として回転又は振り子動作させることにより、該真空容器内の粉末状の担体を攪拌、回転あるいは振り子動作させながらスパッタリングを行うことで、該粉末状の担体の表面にナノ粒子が分散担持された二酸化炭素の水素還元用触媒であって、
前記ナノ粒子は、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ag、Ir及びPtからなる群から選択される少なくとも一の金属粒子であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項3】
請求項2において、前記ナノ粒子のうち90%以上は粒径が10nm未満の粒子であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記粉末状の担体は、その径が0.1~30μmであり、その材料がアルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカ-アルミナ、ゼオライト、リン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一の酸化物、あるいは前記少なくとも一の酸化物を含む材料からなることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項5】
請求項2又は3において、前記スパッタリングを行う際の前記担体の温度が室温~200℃の範囲であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記水素還元用触媒は、メタン、メタノール又は一酸化炭素の製造に活性を示す触媒であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元用触媒。
【請求項7】
二酸化炭素と水素を含有するガスを触媒に接触させて前記二酸化炭素を還元する二酸化炭素の水素還元方法において、
前記触媒は、粉末状の担体にナノ粒子が分散担持されたものであり、
前記ナノ粒子のうち90%以上は粒径が10nm未満の粒子であり、
前記ナノ粒子は、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Pd、Ag、Ir及びPtからなる群から選択される少なくとも一の金属粒子であることを特徴とする二酸化炭素の水素還元方法。
【請求項8】
請求項7において、前記二酸化炭素を還元する際は、大気圧下で且つ200℃以下の温度において還元反応を行うことを特徴とする二酸化炭素の水素還元方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低温で動作する二酸化炭素の水素還元用触媒及び二酸化炭素の水素還元方法に関するものである。特には、大気圧下で且つ200℃以下で二酸化炭素を高い転化率で水素化する触媒及びその触媒を用いた二酸化炭素の水素還元方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は,産業革命以前の約280ppmから1994年には358ppmにまで増加してきた。このCO2の増加は大部分が人間の活動、特に化石燃料の燃焼などに由来すると考えられている。これにより引き起こされる気候変動は地球上の全生態系に大きな影響を与えることが危惧されている。
【0003】
CO2の排出抑制のために種々の技術が検討されている。CO2の排出抑制には,燃料転換、省エネルギー、自然エネルギーの使用など、CO2排出量そのものを抑える方法と、大気中のCO2や発電所、製鉄所、化学工場などから排出されるCO2を固定する方法の二つの方法がある。しかしながら、省エネルギーなどによる排出量削減のみではCO2増加を抑制するには不十分であることから、生物の利用や化学的反応あるいは物理的手法を利用し生成した二酸化炭素を積極的に固定化あるいは他の物質へ変換する技術が必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係る実施の形態による多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。この多角バレルスパッタ装置は、粉末状の担体(例えば微粒子)の表面に、該微粒子より粒径の小さいナノ粒子(ここでのナノ粒子とは粒径がnmオーダーの粒子をいう)を乾式法であるスパッタリング法で分散担持させるための装置である。
【0022】
多角バレルスパッタ装置は、粉末状の担体(粉体試料)3にナノ粒子を高分散担持させる真空容器1を有しており、この真空容器1は直径200mmの円筒部1aとその内部に設置された断面が多角形のバレル(例えば、六角型バレル)1bとを備えている。ここで示す断面は、重力方向に対して略平行な断面である。なお、本実施の形態では、六角形のバレル1bを用いているが、これに限定されるものではなく、六角形以外の多角形のバレルを用いることも可能である。
【0023】
真空容器1には回転機構(図示せず)が設けられており、この回転機構により六角型バレル1bを矢印のように回転又は振り子動作させることで該六角型バレル1b内の粉末状の担体(粉体試料)3を攪拌、回転あるいは振り子動作させながら担持処理を行うものである。前記回転機構により六角型バレルを振り子動作又は回転させる際の回転軸は、ほぼ水平方向(重力方向に対して垂直方向)に平行な軸である。また、真空容器1内には円筒の中心軸上にスパッタリングターゲット2が配置されており、このターゲット2は角度を自由に変えられるように構成されている。これにより、六角型バレル1bを振り子動作又は回転させながら担持処理を行う時、ターゲット2を粉体試料3の位置する方向に向けることができ、それによってスパッタ効率を上げることが可能となる。なお、本実施の形態のスパッタリングターゲット2は、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも一の金属又は該金属を含む材料からなるターゲットを用いる。
【0024】
真空容器1には配管4の一端が接続されており、この配管4の他端には第1バルブ12の一方側が接続されている。第1バルブ12の他方側は配管5の一端が接続されており、配管5の他端はターボ分子ポンプ(TMP)10の吸気側に接続されている。ターボ分子ポンプ10の排気側は配管6の一端に接続されており、配管6の他端は第2バルブ13の一方側に接続されている。第2バルブ13の他方側は配管7の一端に接続されており、配管7の他端はポンプ(RP)11に接続されている。また、配管4は配管8の一端に接続されており、配管8の他端は第3バルブ14の一方側に接続されている。第3バルブ14の他方側は配管9の一端に接続されており、配管9の他端は配管7に接続されている。
【0025】
本装置は、真空容器1内の粉体試料3を加熱するためのヒータ17を備えている。また、本装置は、真空容器1内の粉体試料3に振動を加えるためのバイブレータ18を備えている。また、本装置は、真空容器1の内部圧力を測定する圧力計19を備えている。また、本装置は、真空容器1内に窒素ガスを導入する窒素ガス導入機構15を備えていると共に真空容器1内にアルゴンガスを導入するアルゴンガス導入機構16を備えている。また、本装置は、ターゲット2と六角型バレル1bとの間に高周波を印加する高周波印加機構(図示せず)を備えている。
【0026】
上記実施の形態によれば、六角型バレルを振り子動作又は回転させることで粉末状の担体自体を攪拌、混合でき、更にバレルを六角型とすることにより、粉末状の担体を重力により定期的に落下させ、バレル壁面に衝突させることができる。このため、攪拌効率を飛躍的に向上させることができ、粉体を扱う時にしばしば問題となる水分や静電気力による粉体の凝集を防ぐことができる。つまり振り子動作や回転動作により攪拌と、凝集した粉末状の担体の粉砕を同時かつ効果的に行うことができる。したがって、粉末状の担体に、粒径がnmオーダーのナノ粒子を担持することが可能となる。具体的には、粒径が30μm以下の担体でもその表面にナノ粒子を担持することが可能となる。なお、担体に担持させるものを薄膜ではなくナノ粒子にすることは、スパッタリング条件(例えば、スパッタリング時間、ACパワー等)を適切な条件とすることで可能となる。
【0027】
また、本実施の形態では、真空容器1の外側にヒータ17を取り付けており、このヒータ17により六角型バレル1bを200℃まで加熱することができる。このため、真空容器1の内部を真空にする際、ヒータ17で六角型バレルを加熱することにより、該六角型バレル内の水分を気化させ排気することができる。したがって、粉体を扱う時に問題となる水を六角型バレル内から除去することができるため、粉体の凝集をより効果的に防ぐことができる。また、粉末状の担体にナノ粒子を担持又は被覆する際、ヒータ17で六角型バレルを加熱することにより、スパッタリングを行う際の粉末状の担体3の温度を200℃まで加熱することができる。
【0028】
また、本実施の形態では、真空容器1の外側にバイブレータ18を取り付けており、このバイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えることができる。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集(この場合はバレル壁面への凝集・付着)をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0029】
尚、上記実施の形態では、バイブレータ18により六角型バレル内の粉体3に振動を加えているが、バイブレータ18の代わりに、又は、バイブレータ18に加えて、六角型バレル内に種々の形状を有する補助部材(例えば棒状部材)を収容した状態で該六角型バレルを振り子動作または回転させることにより、粉体3に振動を加えることも可能である。これにより、粉体を扱う時に問題となる凝集・付着をより効果的に防ぐことが可能となる。
【0030】
(実施例1)BS-Ru-0.16/α-Al23
図1に示す多角バレルスパッタ装置を用いて粉末状の担体3にナノ粒子を担持することにより、水素による二酸化炭素の還元反応用触媒を作製する方法について説明する。
【0031】
まず、六角型バレル1b内に12.0gのα-Al23からなる粉末状の担体(粉体試料)3を導入する。この担体3の粒径は18μmである。また、ターゲット2にはRuを用いた。
【0032】
次いで、ターボ分子ポンプ10を用いて六角型バレル1b内を9.0×10-4 Pa以下に減圧した。その後、アルゴンガス供給機構16により六角型バレル1b内にArガスを導入する。この際の六角型バレル内の圧力は1.0Paである。そして、回転機構により六角型バレル1bを角度75°、4.2rpmで振り子動作させることで、六角型バレル内の凝集した粉体試料(α-Al23)3を撹拌、粉砕させた。その際、ターゲットは粉体試料の位置する方向に向けられる。その後、バレルを振り子動作させたまま、RF発振器などの高周波印加機構によりターゲット2と六角型バレル1bとの間に100Wの高周波を印加することで、粉体試料3の表面にRuナノ粒子を室温で15分間スパッタリングにより高分散担持させる。
【0033】
このようにして粉末状の担体3の表面にナノ粒子を高分散担持することができる。これにより得られたナノ粒子が担持された粉末状の担体は、水素による二酸化炭素の還元反応用触媒となる。この還元反応用触媒は、メタン、メタノール、一酸化炭素の製造に活性を示す触媒である。
【0034】
ICP測定より粉末状の担体3へのRu担持量は0.16 wt%と見積もられた。図2に調製した試料の低倍率FE-SEM写真、及び対応する領域におけるRu元素のEDSマッピング写真を示す。図2によれば、α-Al23表面全面にわたってRu元素が分布していることが分かる。
【0035】
図3に調製した試料の高倍率FE-SEM写真を示した。α-Al23表面にはRuナノ粒子が高分散で担持されていることが確認される。
【0036】
図4は、図3に示した調製試料に担持されたRuナノ粒子の粒度分布を示す図である。Ruナノ粒子の平均粒子径は約5.5nmであり、全粒子の90%以上が粒子径3nm以上10nm未満の間に存在している。従って,粒子径のそろったRuナノ粒子が高分散担持されていることが確認された。
【0037】
(実施例2)BS-Ru-5.0/α-Al23
RF高周波出力200W、スパッタリング時間を4時間とする以外は実施例1と同様の方法により試料調製を行った。ICP測定よりRu担持量は4.95wt%と見積もられた。高倍率FE-SEM観察からRu微粒子の平均粒子径を求めたところ9.8nmであった。
【0038】
(比較例1)IW-Ru-0.16/α-Al23
[Frigyes Solymosi, Andras Erdohelyi, Maria Kocsis,
Journal of Chemical Society, Faraday Transactions 1, 77 (1981) 1003.]
0.023gのRuCl3・3H2Oを約10ミリリットルの純水に完全に溶解させる。得られた溶液に5.0gのα-Al23を含浸し、十分撹拌した後に80℃で約16時間乾燥させる。その後、空気中で昇温速度:2℃/分で350℃まで加熱し、この温度で8時間焼成した。続いて試料をH2流通下で300℃、2時間還元処理した。ここで得られた試料のRuの担持量は0.16wt%に相当する。
【0039】
図5に調製した試料の低倍率FE-SEM写真、及び対応する領域におけるRu元素のEDSマッピング写真を示す。EDS写真より、Ruがα-Al23表面に偏在していることが確認された。
【0040】
図6に調製した試料の高倍率FE-SEM写真を示した。α-Al23表面のRu粒子は凝集し、結晶粒を形成していることが確認された。
【0041】
図7は図6に示した調製試料に担持されたRu微粒子の粒度分布を示す図である。Ru微粒子の平均粒子径は約15.7nmであった。また,粒子径は7~40nmと非常に広範囲に及んでいる。この事から、含浸法で調製するRu担持α-Al23はRu粒子の凝集が避けられず、かつ粒子径の制御が不可能であることが分かった。
【0042】
(比較例2)IW-Ru-5.0/α-Al23
RuCl3・3H2Oの使用量を0.63gとした以外は、比較例1と同様の操作によって試料を得た。高倍率FE-SEM観察によってRu粒子の平均粒子径を求めたところ14.9nmであり、粒子径は7~40nmと非常に広範囲に及んでいた。比較例1,2から含浸法ではRuの粒子径の制御が困難であることが確認された。
【0043】
(実施例3)CO2水素還元反応速度
CO2の水素還元反応はパイレックス(登録商標)ガラス製固定床流通式反応装置を用いて行った。実施例1,2及び比較例1,2それぞれで調製した触媒約1.0gを内径10mmのガラス反応管に充填する。Ar気流中で系内の空気を置換した。引き続き、ガスをCO2(7.0%)/H2(28.2%)/Ar(バランス)に切り換え、ガス流速14.2ミリリットル/分で反応ガスを導入した。室温から250℃まで順次昇温し、下記式(1)のような反応をさせ、所定温度でサンプリングを行った。生成物の分析はオンラインガスクロマトグラフにより行った。生成物は主にCH4、H2Oであった。
【0044】
CO+4H → CH+2HO ・・・(1)
【0045】
表3にSEM観察から求めたRu平均粒子径、水素還元反応に用いた触媒量(1.0g)、及び担持量から求めたRuナノ粒子の表面積と、Ruナノ粒子を球と仮定して算出したRu表面原子数を算出し、各反応温度における単位時間あたりのCH4生成量からターンオーバー数を求めた結果を示した。
【0046】
【表3】
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【0047】
実施例1、2と比較例1、2のターンオーバー数を比較すると、明らかな反応速度の向上が見られる。表面積の違いを考慮して比較例の触媒量を3倍に増やしてターンオーバー数を求めても明らかに実施例の試料の方が反応速度が大きかった。これはRuのナノ粒子化によりRuナノ粒子の表面上での真の反応速度が変化していることに起因する。この反応速度の増大については現状では以下のように考えている。
【0048】
上記実施例では、担体に担持された全Ruナノ粒子の90%以上が10nm未満の粒子径を有し、且つ担体に高分散されて担持している。このため、担体表面に担持されたRuナノ粒子の相互間隔を非常に小さいものとし、且つこのような非常に小さい相互間隔を担体の表面全体に形成することができる。そして、担持されたRuナノ粒子上で式(1)の反応が生じる。この反応は反応熱が発生する発熱反応であるため、発生した熱が、近くにあるRuナノ粒子に伝わると考えられ、その結果、この近くにあるRuナノ粒子と伝わった熱とによって上記式(1)の反応が促進されると考えられる。このように上記式(1)の反応が連鎖的に起こることで、200℃という低温でも表3に示すようにCH生成速度であるターンオーバー数を大きくすることができたものと考えられる。
言い換えれば、担体に担持された全Ruナノ粒子の90%以上が10nm未満の粒子径を有し、且つ担体に高分散されて担持させることが本発明のCO還元の低温化をもたらしたと考えている。なお、RuのかわりにCoやNiをα-Alに担持した試料(BS-Co-2.5/α-Al2O3やBS-Ni-1.4/α-Al2O3)のCO還元速度もRu担持試料と同等の結果が得られている(表3参照)。
【0049】
(実施例4)BS-Ru-0.75/TiO2-1
TiO2(3.0 g,粒子径0.2 μm以下,TiO2-1)を用い、RF高周波出力100W、スパッタリング時間を25分とする以外は実施例1と同様の方法により試料調製を行った。ICP測定によりTiO2-1へのRu担持量は0.75wt%と見積もられた。
【0050】
図8(A),(B)に実施例4で調製した試料(BS-Ru-0.75/TiO2-1)のTEM写真を示す。図8によれば、TiO2-1表面全体にわたってRu粒子が分布していることが分かる。なお、バレルを回転させずに調製した試料のTEM写真を図8(C)に示す。Ruが担持されていない担体がほとんどであり、また少量担持されたRu粒子の粒径も10nm~20nmと大きいことがわかる。この事は、高分散担持の触媒形成にはバレルを回転できる本バレルスパッタリング法の使用が不可欠であることを示している。
【0051】
図9は図8に示した調製試料(BS-Ru-0.75/TiO2-1)に担持されたRuナノ粒子の粒度分布を示す図である。Ruナノ粒子の平均粒径は約2.5 nmであり、全粒子の約90%が粒子径5 nm以下に存在している。したがって、粒子径のそろったRuナノ粒子が担持されていることが確認された。
【0052】
(実施例5)BS-Ru-0.49/TiO2-2
TiO2(3.0 g,粒子径7μm以下,TiO2-2)を用い,RF高周波出力100W、スパッタリング時間を50分とする以外は実施例1と同様の方法により試料調製を行った。ICP測定によりTiO2-2へのRu担持量は0.49wt%と見積もられた。
【0053】
(比較例3) IW-Ru-0.70/TiO2-1
0.1293 gのRuCl3・3H2Oを約5ミリリットルの純水に完全に溶解させる。得られた溶液に5.0 gのTiO2を含浸し、十分撹拌した後に80℃で約16時間乾燥させる。その後、空気中で昇温速度:2℃/分で350℃まで加熱し、この温度で8時間焼成した。続いて試料をH2流通下で400℃、2時間還元処理した。ICP測定よりRu担持量は0.70 wt%と見積もられた。
【0054】
図10(A),(B)に調製した試料(IW-Ru-0.70/TiO2-1)のTEM写真を示した。
【0055】
図11は図10に示した比較例3の調製試料(IW-Ru-0.70/TiO2-1)に担持されたRuナノ粒子の粒度分布を示す図である。Ruナノ粒子の平均粒子径は約9.5 nmであった。また、粒子径は2~28 nmと非常に広範囲に及んでいる。この事から、含浸法で調製するRu担持TiO2-1はRu粒子の成長が避けられず、かつ粒子径の制御が不可能であることが明らかである。
【0056】
(実施例6)CO2水素還元反応
実施例4,5及び比較例3で得た試料を用い、実施例3の手法において大気圧下で、室温~200℃の範囲におけるCO2の水素化反応を行った。実施例4,5及び比較例3それぞれで調製した触媒約1.0 gを内径10 mmのガラス反応管に充填する。Ar気流中で系内の空気を置換した。引き続き,ガスをCO2(7.0%)/H2(28.2%)/Ar(バランス)に切り換え,ガス流量14.2ミリリットル/分で反応ガスを導入し、室温から200℃まで順次昇温した。
【0057】
図12は、実施例4,5及び比較例3で得た試料によるメタン化反応を行った結果を示す図である。
図12に示すように、比較例3におけるメタン生成は120℃から認められた。一方、実施例4におけるメタン生成は60℃から認められた。実施例4におけるメタン生成温度は実施例3におけるそれに対し60℃低温側にシフトしていることが確認された。メタン生成の低温化は触媒表面へのCO2吸着の低温化を意味する。実際に赤外吸収スペクトルの結果からRu上に吸着したCO種あるいはCHO種の存在が60℃付近から認められた。この事は、CO2のCOへの解離吸着及びその後の水素化が低温化していることを示す。この低温化については粒径が非常に小さいRuナノ粒子のナノ効果によると現在考えている。また、実施例4では反応温度160℃においてCO2転化率は100%に達した。また、実施例5におけるメタン生成は100℃から認められ,実施例3におけるそれに対し20℃低温側にシフトしていることが確認された。また、実施例5では、反応温度200℃においてCO2転化率は100%に達した。尚、メタンへの選択率は100%であった。
【0058】
図12の結果より、バレルスパッタリング法で調製した試料では、200℃以下におけるCO2の水素還元に有効であることが確認された。
【0059】
TEM観察から求めたRuの平均粒子径、水素還元反応に用いた触媒量(1.0g)、及び担持量から求めたRuナノ粒子の表面積と、Ruナノ粒子を球と仮定して算出したRu表面原子数をまとめた。このRu表面原子数と、各反応温度における単位時間あたりのCH4生成量からターンオーバー数(CH4生成量(個)/Ru表面原子数(個))を求めたものを表4に示した。
【0060】
【表4】
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【0061】
表4の結果においても表3の結果と同様にターンオーバー数の向上が確認された。また、Al担体よりTiO担体の方が触媒特性が向上しており、担体による活性の影響があることもわかった。
【0062】
(実施例7)CO2水素還元反応
実施例4で得た試料を用い、実施例3の手法において、反応ガス(CO2(7.0%)/H2(28.2%)/Ar(バランス))の流速を10.5,14.2,29.0,69.6 ミリリットル/分で反応ガスを流し、各流速において室温~200℃の範囲におけるCO2の水素化反応を行った。
【0063】
図13は、実施例4で得た試料を用いて反応ガス流速を変化させてメタン化反応を行った結果を示す図である。
図13に示すように、反応ガス流速10.5ミリリットル/分、14.2ミリリットル/分、29.0ミリリットル/分、69.6 ミリリットル/分それぞれにおいて、メタン(CH4)生成温度はそれぞれ60℃、60℃、60℃、80℃であり、ほとんど変化が認められなかった。
【0064】
また、図12,13の結果より、バレルスパッタリング法で調製した試料では、メタン化反応は比較的低温で反応が進行することに特徴があるが、100~200℃の範囲では反応温度の上昇に伴って収率が著しく向上することが分かる。
【0065】
(実施例8)
実施例4で得た試料を用い、反応温度80℃、140℃、180℃における触媒活性の経時変化を観察した。反応装置、反応ガス組成は実施例5と同様である。
【0066】
図14に80℃、140℃、180℃それぞれにおけるCO2転化率の時間変化を示した。各温度とも反応時間24時間後もCO2転化率は一定であった。図14の結果より、バレルスパッタリング法で調製した試料では、 CO2の水素還元において活性劣化を示さず、長寿命であることが確認された。以上の結果から、多角バレルスパッタリング法を用いてナノ金属担持触媒を調製し、その触媒を用いることでCOの水素還元が大きく低温化することを世界で初めて見出した。また、その理由について「ナノ領域での効果」が関与していることを示した。
【0067】
(参考例3)
(比較試料:Graetzel試料の調製)
既にGratzelらによって類似した触媒のCO2水素化触媒の報告例がある(K.Ravindranathan Thampi, John Kiwi, Michael Gratzel, Nature 327 (1987) 506.)。ここではその触媒との差異を調べた。触媒の調製法は上記論文に従って、下記の手順で行った。
0.2048 gのRuCl3・3H2Oを200 mLの0.1M HClに完全に溶解させ一晩静置する。この溶液に1.996 gのTiO2を加え、0.1M KOHでpH 4.5に調整する。その後、溶液を60℃に加温し、0.1M KOHを用いて溶液のpHを4.5に保持したまま5時間撹拌する。さらに溶液を沸騰しながら溶媒を蒸発させ、得られた固体を170℃で20時間、続けて375℃で18時間焼成する。得られた固体を200 mLの純水に加え懸濁し、11時間撹拌させた後、濾過・水洗する。この操作を5回繰り返した後、得られた固体を110℃で一晩乾燥した。続いて試料をH2流通下で220℃、1時間還元してRu/TiO2-Gを得た。ここで得られた試料のRu担持量は3.60 wt%に相当する。TEM観察よりRuの平均粒子径は5.2 nmと見積もられた。
【0068】
(実施例9)
(温度変化)
図15は、多角バレルスパッタリング法を用いて調製したTiO2担体上のRu担持量0.75 wt%試料(BS-Ru-0.75/TiO2-1)(1.0 g)、及びRu/TiO2-G試料0.21 gを未担持TiO2 0.79 gで希釈した試料について、各反応温度におけるCO2メタン化反応結果を示す。なお、図12の温度依存性を示した図より温度範囲を広く取っている。さらに図12に示した含浸法で調製した試料(IW-Ru-0.70/TiO2-1)(1.0 g)も一緒に図示した。IW-Ru-0.70/TiO2-1、Ru/TiO2-Gではそれぞれ120、80℃からメタン生成が認められた。これに対し、BS-Ru-0.75/TiO2-1ではメタン生成は60℃から認められ、IW-Ru-0.70/TiO2-1、Ru/TiO2-Gよりもそれぞれ60、20℃低温にシフトしていることが明らかである。また、IW-Ru-0.70/TiO2-1、Ru/TiO2-Gでは反応温度380、240℃においてCO2収率は100%に達するに対し、BS-Ru-0.75/TiO2-1では160℃と80~220℃低温にシフトしている。このことはIW-Ru-0.70/TiO2-1あるいはRu/TiO2-Gよりバレルスパッタリングで調製した試料の方が活性が高いことを示している。
【0069】
(実施例10)
(バッチ)
内容積およそ35 mLの反応管に実施例9と同量の触媒を充填し、室温(25℃)あるいは40℃で所定時間反応を行った(図16)。所定時間反応後、生成物をガスクロマトグラフで分析し、CH4生成量を見積もった。IW-Ru-0.70/TiO2-1では反応温度25℃および40℃においてCH4の生成は認められなかった。一方、Ru/TiO2-Gでは25℃、1時間からCH4の生成が確認でき、その生成速度は0.002 μmol/min・gと見積もられた。また、反応温度40℃では、生成速度は0.01 μmol/min・gであった。これに対し、BS-Ru-0.75/TiO2-1では、25℃、5分においてCH4の生成が確認され、生成速度は0.04 μmol/min・g であった。また、40℃における生成速度は0.11 μmol/min・g であった。
【0070】
(実施例11)
(粒子径依存)
BS-Ru-0.75/TiO2-1の粒子径(平均粒子径2.5 nm)を変化させた試料を下記の方法で調製した。
BS-Ru-0.75/TiO2-1をH2ガス流通下で500℃、3時間加熱処理した。処理試料のTEM観察よりRuの平均粒子径は3.4 nmと見積もられた。
BS-Ru-0.75/TiO2-1をH2ガス流通下で700℃、3時間加熱処理した。処理試料のTEM観察よりRuの平均粒子径は5.0 nmと見積もられた。
BS-Ru-0.75/TiO2-1をH2ガス流通下で800℃、3時間加熱処理した。処理試料のTEM観察よりRuの平均粒子径は6.4 nmと見積もられた。
【0071】
(実施例12)
図17は各Ruを担持したTiO2触媒についてRuの平均粒子径によるメタン生成開始温度の変化を示したものである。Ru平均粒子径がおよそ6 nm以上ではメタン生成開始温度はおよそ120℃でほぼ一定であるが、6 nm以下ではメタン生成開始温度は直線的に低下することがわかる。一方、160℃における単位時間あたりのメタン生成速度(TON、生成したCH4分子数/表面Ru原子数)は、Ru平均粒子径がおよそ6 nm以上では0.1×102(s-1)でほぼ一定であるのに対し、6 nm以下では直線的に増大することがわかる。これより明らかにRuナノ粒子によるナノ効果が6 nm以下で発現しているといえる。
【0072】
尚、本発明は上記実施の形態及び上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、粉末状の担体にナノ粒子を高分散担持する条件を適宜変更することも可能である。また、粉末状の担体としては、例えば、カーボン、あるいはアルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカ-アルミナ、ゼオライト、リン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一の酸化物、あるいは前記少なくとも一の酸化物を含む材料からなるものを用いることも可能である。また、粉末状の担体に担持又は被覆されるナノ粒子は、例えば、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも一の金属粒子又は該金属粒子を含む材料粒子であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る実施の形態による多角バレルスパッタ装置の概略を示す構成図である。
【図2】調製した試料の低倍率FE-SEM写真、及び対応する領域におけるRu元素のEDSマッピング写真である。
【図3】調製した試料の高倍率FE-SEM写真である。
【図4】図3に示した調製試料に担持されたRu微粒子の粒度分布を示す図である。
【図5】調製した試料の低倍率FE-SEM写真、及び対応する領域におけるRu元素のEDSマッピング写真である。
【図6】調製した試料の高倍率FE-SEM写真である。
【図7】図6に示した調製試料に担持されたRu微粒子の粒度分布を示す図である。
【図8】(A),(B)は、実施例4で調製した試料(BS-Ru-0.75/TiO2-1)のTEM写真であり、(C)はバレルを回転せずに調製した試料のTEM写真である。
【図9】図8に示した調製試料(BS-Ru-0.75/TiO2-1)に担持されたRuナノ粒子の粒度分布を示す図である。
【図10】(A),(B)は、比較例3で調製した試料(IW-Ru-0.70/TiO2-1)のTEM写真である。
【図11】図10に示した調製試料(IW-Ru-0.70/TiO2-1)に担持されたRuナノ粒子の粒度分布を示す図である。
【図12】実施例4,5及び比較例3で得た試料によるメタン化反応を行った結果を示す図である。
【図13】実施例4で得た試料を用いて反応ガス流速を変化させてメタン化反応を行った結果を示す図である。
【図14】実施例4で得た試料を用い、反応温度80℃、140℃、180℃におけるCO2転化率の時間変化を示す図である。
【図15】実施例9の Ru担持TiO2触媒のCO2メタン化活性を示す図である。
【図16】バッチ式反応におけるCH4生成量の経時変化を示す図である。
【図17】Ru平均粒子径とCH4生成開始温度及び160℃におけるTONの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1…真空容器
1a…円筒部
1b…六角型バレル
2…ターゲット
3…微粒子(粉体試料)
4~9…配管
10…ターボ分子ポンプ(TMP)
11…ポンプ(RP)
12~14…第1~第3バルブ
15…窒素ガス導入機構
16…アルゴンガス導入機構
17…ヒータ
18…バイブレータ
19…圧力計
図面
【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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