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明細書 :破骨細胞が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5979658号 (P5979658)
公開番号 特開2013-047201 (P2013-047201A)
登録日 平成28年8月5日(2016.8.5)
発行日 平成28年8月24日(2016.8.24)
公開日 平成25年3月7日(2013.3.7)
発明の名称または考案の名称 破骨細胞が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤
国際特許分類 A61K  31/132       (2006.01)
A61P  19/08        (2006.01)
A61P  19/10        (2006.01)
A61P  19/02        (2006.01)
A61P   5/24        (2006.01)
FI A61K 31/132
A61P 19/08
A61P 19/10
A61P 19/02
A61P 5/24
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2011-238455 (P2011-238455)
出願日 平成23年10月31日(2011.10.31)
優先権出願番号 2011162787
優先日 平成23年7月26日(2011.7.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月28日(2014.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】米田 幸雄
【氏名】檜井 栄一
【氏名】山本 朋未
【氏名】家崎 高志
【氏名】石浦 遼
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】鶴見 秀紀
参考文献・文献 特表2006-502081(JP,A)
Journal of Clinical Investigation ,1989年,83(4),pp.1356-1362
Journal of Poultry Science,2005年,Vol.42,No.1,pp. 56-63
調査した分野 A61K 31/132
A61P 5/24
A61P 19/02
A61P 19/08
A61P 19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
スペルミンまたはスペルミジンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤であって、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患が閉経後骨粗鬆症である、予防剤及び/又は治療剤。
【請求項2】
in vitroで用いられる、スペルミンまたはスペルミジンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖の阻害剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤、特に骨粗鬆症又は関節炎の予防剤及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、生体の支持組織であると同時に、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収が絶えず繰り返されている動的組織である。通常は、骨形成と骨吸収のバランスが保たれており、骨形成と骨吸収のサイクルは骨のリモデリングと呼ばれる。骨芽細胞と破骨細胞の機能バランスに異常が生じると、この動的平衡状態が破綻し、様々な骨疾患を引き起こす。骨のリモデリングの異常に起因する骨疾患としては、例えば、閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイド治療による骨粗鬆症等の骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形関節炎、関節炎、変形性腰椎症、全身性エリテマトーデス、糖尿病における骨減少症、慢性腎不全における骨密度低下、骨大理石症等を挙げることができる。
【0003】
正常な骨組織の発達及びリモデリングにおいて重要な役割を担う破骨細胞は、造血系の幹細胞に由来し、単球・マクロファージ系の前駆細胞から分化する巨細胞である。破骨細胞は、前述の骨粗鬆症における骨量減少のほか、関節炎や慢性関節リウマチにおける骨関節破壊、及び悪性腫瘍の骨転移などの病態に重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献1及び2)。
【0004】
日本では厚生労働省などによると、日本国内の骨粗鬆症患者は高齢女性を中心に年々増加しており、自覚症状のない未受診者を含めると、推計で1100万人超に上る。また、アメリカ合衆国では3000万人に症状が現れていると考えられている。骨粗鬆症は、骨の変形、骨性の痛み、さらに骨折の原因となる。骨折は一般に強い外力が加わった場合に起こるが、骨粗鬆症においては日常生活程度の負荷によって骨折が引き起こされてしまう。骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質(QOL)を著しく低下させるため問題である。
【0005】
また、慢性関節リウマチなどの関節炎は、進行性であり、関節の変形、強直などの関節障害を来し、効果的な治療が施されずに進行すれば、重症の身体障害にいたることも多い。従来、関節炎の治療には、副腎皮質ホルモンなどのステロイド剤、アスピリン、ピロキシカムやインドメサシンなどの非ステロイド系抗炎症剤等が用いられているが、これらの薬剤は重篤な副作用があり、長期の使用が困難であったり、消炎効果が不十分であったり、あるいは既に発症している関節炎に対しては有効ではない等といった問題点がある。
近年高齢化に伴い、関節炎や骨粗鬆症等の骨疾患が注目されており、QOL向上のために骨疾患の予防や治療に大きな関心が寄せられている。
【0006】
ポリアミンは、2つ以上の第1級アミノ基を有する脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物であり、その生理作用が注目されている。ポリアミンの主な生理作用としては、種々の核酸合成系への促進作用、タンパク質合成系の活性化、活性酸素の消去等が知られているが、ポリアミンが破骨細胞の分化・増殖に関与していることはこれまでに報告されていない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】Woodhouse, E. C., Cancer, 80(8Suppl), pp.1529-1537, 1997
【非特許文献2】Paleolog, E. M., J. Rheumatol., 35, pp.917-919, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の新規な予防剤及び/又は治療剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリアミンが破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対して阻害作用を有することに着目し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ポリアミンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤。
2.ポリアミンが、第一級アミノ基を5つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物である、前項1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
3.ポリアミンが、スペルミンまたはスペルミジンから選択される少なくとも1種以上の化合物である、前項1又は2に記載の予防剤及び/又は治療剤。
4.ポリアミンが破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、前項1~3のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
5.ポリアミンによる破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用が、ポリアミンが、Receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)によるNuclear factor-κB(NF-κB)の活性化を抑制することによるものである、前項4に記載の予防剤及び/又は治療剤。
6.破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患が、骨粗鬆症又は関節炎である前項1~5のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
7.骨量減少の予防及び/又は治療のために用いる、前項1~6のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
8.ポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害剤。
9.前項8に記載の阻害剤を含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、経口投与用製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の新規な予防剤及び/又は治療剤は、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有している。本発明の予防剤及び/又は治療剤は、特に骨粗鬆症における骨量減少の抑制のためや、関節炎の重症化抑制のために用いることができる。また本発明の予防剤及び/又は治療剤によれば、関節炎における浮腫発症を遅延させることもできる。本発明の予防剤及び/又は治療剤は、破骨細胞の細胞生存率に影響することがなく、また骨芽細胞の分化、増殖、細胞生存率に影響することもなく、細胞毒性が軽減化されたものである。さらに本発明の予防剤及び/又は治療剤は、経口投与された場合にマウスの子宮重量を増大させることがないため、副作用が軽減化されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】卵巣摘出(OVX)により誘導される骨減少が、スペルミジン(SPD)またはスペルミン(SPM)の経口投与により抑制されることを示す図である(実施例1)。 8週齢メスddYマウスの卵巣を摘出し、その後28日間、SPDもしくはSPMを0.3 mMまたは3mMで経口投与した(シャム手術-非投与群(sham-none)、n=12;シャム手術-3 mM SPD投与群(sham-SPD 3 mM)、 n=4;シャム手術-3 mM SPM投与群(sham-SPM 3 mM)、n=4;卵巣摘出手術-非投与群(OVX-none)、n=12;卵巣摘出手術-0.3 mM SPD投与群(OVX-SPD 0.3 mM)、n=6;卵巣摘出手術-3 mM SPD投与群(OVX-SPD 3 mM)、n=6;卵巣摘出手術0.3 mM SPM投与群(OVX-SPM 0.3 mM)、n=6;卵巣摘出手術-3 mM SPM投与群(OVX-SPM 3 mM)、n=6)。Aは子宮重量の結果を示し、BおよびCはVon Kossa染色による脊椎骨のBV/TVの測定結果を示す。Von Kossa染色の代表的な写真をCに示し、定量的データをBに示す。**はP<0.01でのシャム手術群の値に対する有意差、#はP<0.05、##はP<0.01での、種々の条件下の卵巣摘出マウス群において得られた値に対する有意差を示す。2+蓄積量の測定を行った結果を示す。
【図5】SPDまたはSPMがNF-κB転写因子活性を制御することを示す図である(実施例4)。 Aは、RAW264.7細胞を、NF-κBのレポータープラスミドにより一過的に形質転換し、1~10 μMのSPDもしくはSPMの存在下で、50 ng/mlのRANKLとともに培養したときの、ルシフェラーゼ活性の測定結果を示す。**はP < 0.01でのRANKLとポリアミンの両方の非存在下で得られたコントロール値に対する有意差を示す。#はP < 0.05、##はP < 0.01での50 ng/ml RANKLのみの存在下で得られた値に対する有意差を示す。Bは、RAW264.7細胞をSPD、SPM、RANKL、SPD+RANKLもしくはSPM+RANKLにより5分間処理し、細胞溶解物を調製し、その後種々の抗体を用いてイムノブロッティングを行った結果を示す。3回の独立した実験で得られた結果を表す代表的な写真を掲載する。
【図6】コラーゲン誘導関節炎(Collagen induced arthritis:CIA)動物モデルを用いたSPDとSPMの効果確認実験のプロトコルを表す図である(実施例5)。
【図7】CIA動物モデルにSPDもしくはSPMを経口投与した場合の、体重に対する影響を確認した結果を示す図である(実施例5)。
【図8】CIA動物モデルにSPDもしくはSPMを経口投与した場合の、軟骨における各種mRNAの発現量に対する影響を確認した結果を示す図である(実施例5)。*はP < 0.05、**はP < 0.01での、normalで得られた値に対する有意差を示す。#はP < 0.05でのCIAで得られた値に対する有意差を示す。
【図9】CIA動物モデルにSPDもしくはSPMを経口投与した場合の、関節滑液における各種mRNAの発現量に対する影響を確認した結果を示す図である(実施例5)。*はP < 0.05でのnormalで得られた値に対する有意差を示す。#はP < 0.05でのCIAで得られた値に対する有意差を示す。
【図10】CIA動物モデルにSPDもしくはSPMを経口投与した場合の、足の容積を確認した結果(左図)と、足の浮腫の程度をスコア化した結果(右図)を示す図である(実施例5)。*はP < 0.05、**はP < 0.01での、各日数のnormalで得られた値に対する有意差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において「ポリアミン」とは、2つ以上の第1級アミノ基を有する脂肪族炭化水素の総称で生体内に普遍的に存在する天然物である。本発明において「ポリアミン」とは、ポリアミンの種々の誘導体および種々の塩を含む。現在、20種類以上のポリアミンが見出されており、例えば、1,3-ジアミノプロパン、プトレシン、カダベリン、カルジン、スペルミジン、ホモスペルミジン、アミノプロピルカダベリン、テルミン、スペルミン、テルモスペルミン、カナバルミン、アミノペンチルノルスペルミジン、N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン、ホモスペルミン、カルドペンタミン、ホモカルドペンタミン、カルドヘキサミン、ホモカルドヘキサミンなどが挙げられる。本発明において好ましいポリアミンは、第一級アミノ基を5つ以上有するポリアミンであり、特に好ましくはスペルミジン(SPD)、スペルミン(SPM)である。

【0014】
「スペルミジン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、3つの第一級アミノ基を有する脂肪族炭化水素化合物である。「スペルミン」は代表的なポリアミンの一つで生物体内に普遍的に存在する一般的な天然物であり、4つの第一級アミノ基を有する脂肪族炭化水素化合物である。

【0015】
本発明は、ポリアミンを有効成分とする破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤を包含する。

【0016】
本発明における「破骨細胞」とは、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物を含む脊椎動物の破骨細胞であれば特に限定されない。破骨細胞は、骨の表面に密着し、活性化に伴い酸や種々のプロテアーゼ等を分泌することにより骨吸収能を示す。破骨細胞は活性化及び/又は増殖することにより、骨や軟骨の破壊を促進することが知られている。本発明でいう「破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖」とは、細胞が形態的に破骨細胞の性質を示すように分化形成されること、または、その形態学的な変化を経て活性化され骨吸収作用を示すように分化形成されること、形態学的または作用的に破骨細胞の性質を示す細胞が増殖することを含む概念である。

【0017】
ポリアミンは、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖を抑制することにより、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患を予防及び/又は治療し得る。本発明における「抑制」とは「阻害」と同意義で用いられ、本発明における「破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖の抑制」とは前駆破骨細胞が「破骨細胞」に分化し、その結果破骨細胞が増殖することを100%抑制(阻止)する場合と、100%阻止しなくても前駆破骨細胞が本来有する破骨細胞への分化能を低減させる場合の両方を含む。破骨細胞への分化及び/又は増殖は、破骨細胞の特徴である多核細胞の形成を観察することにより測定することができる。破骨細胞への分化及び/又は増殖は、破骨細胞のマーカーである酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色法を用いることや、破骨細胞のマーカー遺伝子、例えば、Ctsk、Calcr、Acp5、Mmp9、DC-STAMP(Tm7sf4)等のmRNA発現量を測定することにより確認することができるが、これらに限定されない。

【0018】
破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖のメカニズムとして、Receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)によりNuclear factor-κB(NF-κB)を活性化することにより、NF-κBの経路が刺激され、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が促進されることが知られている。RANKLは、TNFスーパーファミリーに属する膜結合型蛋白であり、骨芽細胞などの破骨細胞形成支持細胞の表面上に発現し、細胞接触を介して前駆細胞にシグナルを伝達し、破骨細胞への分化を誘導する。関節リウマチ等においては、滑膜線維芽細胞におけるRANKLの発現が、関節における骨軟骨破壊に重要な役割を果たしていると考えられている。RANKLにより刺激される経路として、上述のNF-κBの経路以外に、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)やプロテインキナーゼB(Akt)を介した経路も報告されている。NF-κBを構成するp100とp105のノックアウトマウスが骨大理石症を呈することから、NF-κBの経路が、破骨細胞の分化に必須と考えられている。本発明においてポリアミンは、RANKLによるNF-κBの経路の刺激を抑制し、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖を抑制することが新規に見出された。ポリアミンがNF-κB経路を選択的に阻害することから、本発明の治療剤及び/又は予防剤は阻害経路選択性を有しており、より有効に破骨細胞の分化及び/又は破骨細胞の増殖を抑制することが可能であると考えられる。

【0019】
ポリアミンは、破骨細胞の細胞生存率には実質的に影響を与えない。また、骨芽細胞の分化、増殖、生存率に対しても、実質的に影響を与えないものである。すなわちポリアミンは細胞毒性を実質的に有さないものである。また、ポリアミンは生体に投与された場合でも子宮重量を増大させることがなく、副作用が軽減化されたものである。

【0020】
本発明において、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患としては、例えば、閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイド治療による骨粗鬆症等の骨粗鬆症、関節炎又は悪性腫瘍などを挙げることができるが、これらの疾患に限定されることはない。なお、本明細書では慢性関節リウマチ、変形関節炎等の関節炎を伴う疾患を「関節炎」と称する。特に好適には、本発明の予防剤及び/又は治療剤は、閉経後骨粗鬆症や関節炎に用いられる。また本発明の予防剤及び/又は治療剤は、骨粗鬆症における骨量減少の抑制や、関節炎における関節の骨軟骨破壊の進行を抑制し重症化を予防するために用いることができる。さらに本発明の予防剤及び/又は治療剤によれば、関節炎における浮腫発症を遅延させることもでき、有用である。

【0021】
本発明の予防剤及び/又は治療剤は、有効成分であるポリアミンを単独で投与してもよいが、他の有効成分や、医薬の製造に通常用いられる1種又は2種以上の製剤用添加物(例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、分散化剤、又は香料など)と混合して、医薬組成物として調製して用いてもよい。本発明の予防剤及び/又は治療剤は、常法により、液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ドライシロップ剤、チュアブル剤等の経口投与用の医薬組成物として調製することができる。また、注射剤や坐剤などの非経口投与用の医薬組成物として調製してもよい。本発明の予防剤及び/又は治療剤におけるポリアミンの濃度は、1nM~100μM、好ましくは100nM~10μMであることが好ましい。

【0022】
本発明の予防剤及び/又は治療剤の投与量は特に限定されず、患者の体重、性別、及び年齢等の条件、予防又は治療の目的、対象疾患の種類、投与経路などの条件に応じて適宜選択できる。標準的には、成人1日当たり約10mg~約10gを、経口的または非経口的に1日1回~数回にて投与すればよい。

【0023】
本発明の予防剤及び/又は治療剤の投与経路は特に限定されず、経口投与又は非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣
内投与、患部への局所投与、皮膚投与等)のいずれの投与経路により投与してもよい。好ましくは本発明の予防剤及び/又は治療剤は、経口投与されることが好ましく、経口投与用製剤として調製される。本発明の経口投与用製剤は、医薬品としてだけではなく、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に関与する疾患の予防及び/又は治療を目的とした医薬部外品として提供することもでき、例えば、容器詰ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とし、できるだけ摂取し易い形態として提供するのが好ましい。

【0024】
本発明は、ポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖の阻害剤に関するものである。本発明の阻害剤は、in vivoまたはin vitroのいずれで用いられてもよい。本発明の阻害剤において、有効成分であるポリアミンの濃度は、特に限定されず、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖を阻害し得る量であればよい。好ましくはポリアミンの濃度は、1nM~100μMであり、より好ましくは100nM~10μMである。本発明の阻害剤は、上述の予防剤及び/又は治療剤と同様の手法により、経口投与用製剤として調製されてもよい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお本実施例は金沢大学動物実験指針に基づいて行った。
【実施例】
【0026】
まず、以下の実施例1~4において用いた実験方法の手順と、材料について説明する。
(卵巣摘出(OVX)手術と骨の組織形態学的解析)
ddYマウスを、標準的な12:12明暗周期でケージ内において、飼料と飲水は自由に摂取できるようにして、飼育した。 8週齢のマウスを、 ペントバルビタール(50 mg/kg)の腹腔内注射により麻酔した。Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って、無菌下でOVX手術と、シャム手術(卵巣摘出疑似手術)を行った。OVXマウスに0.3 mMもしくは3 mMの濃度で飲水に溶解したSPDもしくはSPMを、毎日、経口投与した。マウスを、手術28日後に骨頭摘出により屠殺し、その後大腿骨、脛骨、脊椎骨に解剖して、10%ホルマリンもしくは70%エタノールにより固定した。骨の組織形態学的解析を、Kajimura et al., J Exp Med 208: 841-851 (2011)に記載の方法に従って、脱灰されていない脊椎骨について行った。 簡単に説明すると、脊椎骨を10%ホルマリンで固定し、種々の濃度のエタノールにより脱水し、標準的なプロトコールに従って、メチルメタクリレート樹脂に包埋した。組織体積に対する骨体積の割合(BV/TV)は、Von Kossa染色により測定した。骨形成速度(Bone formation rate:BFR)は、カルセイン二重標識法により解析した。カルセインは3日間の間隔を開けて2度マウスに注射され、その後最後の注射から2日後にマウスを屠殺した。骨芽細胞と破骨細胞のパラメーターはそれぞれ、トルイジンブルーもしくは酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)により染色し解析した。解析は、Osteomeasure Analysis System (Osteometrics, Atlanta, GA) を用いて、Parfitt et al., J Bone Miner Res 2: 595-610 (1987)に記載の方法に従って行った。
【実施例】
【0027】
(破骨細胞の培養とTRAP染色)
初代培養破骨細胞を、Hinoi et al., Am J Pathol 170: 1277-1290 (2007)の方法に従って、骨髄から調製した。かかる初代培養骨芽細胞(マウス骨髄単球から破骨細胞へ分化させた細胞)を、20 ng/mlのマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と、20 ng/mlのReceptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)の存在下で、5日間連続して培養した。前駆破骨細胞 RAW264.7細胞を、20 ng/ml RANKL存在下で、4日間連続して培養した。TRAP染色については、培養した細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10%ホルマリンと、エタノール-アセトン(50:50; v/v)により固定した。その後、細胞を50 mmol/Lの酒石酸ナトリウムの存在下で、基質としてのリン酸ナフトールAS-MXと、色素としてのfast red violet LB saltを含む酢酸緩衝液(pH5.0)中でインキュベートした。5個以上の核を有するTRAP陽性細胞を、TRAP陽性多核細胞(MNCs)として評価した。
【実施例】
【0028】
(細胞生存率の測定)
培養した細胞をPBSで洗浄し、0.5 mg/mlの3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide(MTT)でインキュベートし、その後ウェルにイソプロピルアルコール中の0.04 M HClを添加し、ホルマザンを溶解するため混合物を懸濁した。懸濁物を酵素免疫定量法のリーダーで、波長550 nmにおける吸光度を測定した。
【実施例】
【0029】
(リアルタイム定量的RT-PCR)
トータルRNAを細胞から抽出し、逆転写酵素と、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成した。cDNA試料を、各遺伝子に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR解析(MX3005P instrument:Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)の鋳型として使用した。 遺伝子の発現量は、内部標準として36b4遺伝子の発現量を用いて、各試料について補正した。
【実施例】
【0030】
(骨芽細胞の培養と、アルカリホスファターゼ(ALP)活性とCa2+蓄積量の測定)
初代培養骨芽細胞(マウス頭蓋骨から調製した細胞)を、Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って、連続的に酵素によって消化する方法により、1日齢もしくは2日齢のマウスの頭蓋冠から調製した。前駆骨芽細胞 MC3T3-E1細胞を、分化用カクテル(50 μg/ml アスコルビン酸および5 mM β-グリセロフォスフェート)の存在下で培養した。ALP活性およびCa2+蓄積量はUno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って測定した。簡単に説明すると、骨芽細胞を0.1% Triton X-100により可溶化し、可溶化物中のALP活性を基質としてp-ニトロフェノールリン酸を用いて測定した。可溶化物を、16.24時間塩酸により処理し、20,000 × gで遠心し、市販のキットを用いて上清のCa2+蓄積量を測定した。
【実施例】
【0031】
(ルシフェラーゼアッセイ)
細胞をレポーターベクターにより形質転換した。その後細胞の可溶化物を調製し、ルミノメーター(ATTO, Tokyo, Japan)により特定の基質を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。形質転換効率は、Renilla luciferaseの活性を測定することにより補正した。
【実施例】
【0032】
(イムノブロッティングアッセイ)
培養した細胞を、1% Nonidet P-40を含む溶解バッファー中に可溶化した。試料をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、ニトロセルロース膜に転写し、Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従ってイムノブロッティングアッセイを行った。定量は、ImageJを用いてデンシトメトリーにより行った。
【実施例】
【0033】
(データ解析)
結果は全て平均±S.E.で示し、統計学的有意差はtwo-tailedおよびunpairedのStudentのt検定、またはBonferroni/Dunnettのpost hoc検定による一元配置分散分析(one-way analysis of variance ANOVA)により検定した。
【実施例】
【0034】
(材料)
PUT、SPD、SPM、カルセイン、ナフトールAS-MXリン酸、fast red violet Lurina-Bertani saltは、Sigma(St. Louis, MO, USA)より購入した。組み換えマウスM-CSF、組み換えマウスRANKLはR&D Systems International(Minneapolis, MN, USA)から購入した。以下の抗体はすべて Cell Signaling Technology (Danvers, MA, USA)から購入した:抗グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH))抗体、抗リン酸化p65抗体、抗p65抗体、抗リン酸化κB阻害因子(IκB)抗体、抗IκB抗体。二重ルシフェラーゼアッセイシステムおよびRNase不含DNaseはPromega(Madison, WI, USA)から購入した。pNF-κB-LucはStratagene(La Jolla, CA, USA)より得た。M-MLV逆転写酵素はInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)より得た。THUNDERBIRD SYBR qPCR Mixは東洋紡績株式会社(TOYOBO)(Osaka, Japan)より得た。ISOGENおよびcalcium C-testキットは、和光純薬工業株式会社(WAKO)(Osaka, Japan)より得た。他の化合物は、高純度の市販品を用いた。
【実施例】
【0035】
(実施例1)OVX誘導骨減少と破骨細胞活性化に対するSPDとSPMの阻害効果の確認
SPDもしくはSPMのいずれかを、卵巣摘出マウス(閉経後モデルマウス)に、経口投与した。その後、組織形態学的パラメータに加えて、組織体積に対する骨体積の割合(BV/TV)を測定した。
【実施例】
【0036】
OVXでは劇的に子宮の重量が減少したが、SPDもしくはSPM投与群では、OVXにより誘導される子宮重量の減少に影響を与えなかった(図1A)。これらの実験の条件下では、シャム手術マウス群に比べて、卵巣摘出マウス群の脊椎の海綿骨におけるBV/TVの著しい減少が見られた(図1B,C)。SPDもしくはSPMのいずれかの投与は、卵巣摘出マウスの海綿骨のBV/TVの減少を有意に抑制し、一方、シャム手術マウス群では全く影響が見られなかった(図1B,C)。
【実施例】
【0037】
SPDおよびSPMの骨減少への予防的効果の細胞レベルでのメカニズムを明らかにするために、組織形態学的な解析を脊椎について行った。
【実施例】
【0038】
卵巣摘出マウスでは、骨表面に対する破骨細胞表面の割合(Oc.S/BS)は優位に増加しており、骨周囲長さに対する骨芽細胞数の割合(N.ob/B.Pm)と、脊椎骨における骨形成速度(BFR)は著しく上昇していた(図2A~C)。SPDもしくはSPMのいずれかの卵巣摘出マウスへの投与は、脊椎におけるOc.S/Bの有意な増加を防ぐが(図2A)、N.ob/B.PmおよびBFR等の骨芽細胞に関するパラメータの顕著な上昇には影響を与えなかった(図2B,C)。BV/TVの結果によれば、シャム手術群へのSPDもしくはSPMの投与による組織形態学な影響は見られなかった(図2A~C)。
【実施例】
【0039】
SPDもしくはSPMのいずれかの経口投与が、in vivoで卵巣摘出マウスにおいて、骨芽細胞に影響を与えることなく、破骨細胞の関与するパラメータOc.S/BSSの増加を有意に抑制することが確認された。
【実施例】
【0040】
(実施例2)SPDおよびSPMの、RANKL誘導破骨細胞分化の阻害効果
SPDもしくはSPMの骨吸収をする破骨細胞の細胞分化および成熟に対する影響を確認した。前駆破骨細胞のRAW264.7細胞を、RANKLの存在下で、1 nMから1μMのSPD、SPM、またはPUTとともに、4日間培養し、その後TRAP染色および、TRAP陽性の多核細胞(MNC)の数を計数した。
【実施例】
【0041】
SPDもしくはSPMの添加は、それぞれ100 nMもしくは10 nMを超えた濃度で、濃度依存的に、TRAP陽性の多核細胞の数を著しく減少させた(図3A、B)。
【実施例】
【0042】
破骨細胞分化の阻害において、細胞生存率が関与するかを確認するために、RAW264.7細胞をRANKLの存在下でSPDもしくはSPMと共に培養し、MTTアッセイを行った。
【実施例】
【0043】
H2O2への暴露は、RAW264.7細胞においてMTT活性を著しく減少させたが、SPDもしくはSPMによる処理では、MTT活性の減少は見られなかった(図3A,B)。さらに、ヨードプロピジウム陽性細胞は、SPDもしくはSPMで処理したRAW264.7細胞には全く見られなかった。1 nMから1 μMの濃度のPUTはTRAP陽性MNCの数と同様に細胞生存率に影響しなかった(図3C)。 さらに、SPDもしくはSPMのいずれかの添加は、RANKL誘導破骨細胞分化を有意に阻害したが、初代培養破骨細胞(マウス骨髄単球から破骨細胞へと分化させた細胞)およびRAW264.7細胞の細胞生存率には影響を与えなった。
【実施例】
【0044】
さらに上記と同様にして細胞を培養した後、細胞からRNAを抽出し、各種遺伝子発現の解析を行った。
【実施例】
【0045】
1μMのSPDもしくはSPMで処理した場合は、数種の破骨細胞マーカー遺伝子(Ctsk、Calcr、Acp5、Mmp9、DC-STAMPとして知られるTm7sf4)のmRNA発現量が著しく減少していた(図3D)。
【実施例】
【0046】
(実施例3)天然ポリアミンの細胞生存率、骨芽細胞の分化・成熟への影響の確認
天然ポリアミンの骨芽細胞への機能を確認するために、前駆骨芽細胞のMC3T3-E1細胞を、10 nMから1μMのSPD、SPMまたはPUTと共に、分化カクテルの存在下で、28日までの種々の期間、培養をした。その後、MTT活性により細胞生存率を確認し、ALP活性により細胞分化度を確認し、Ca2+の蓄積量により細胞成熟度を確認した。
【実施例】
【0047】
図4A~Cにおいてみられるように、これらの化合物はいずれも、どの濃度においても、MC3T3-E1細胞の細胞生存率、ALP活性に影響を与えなかった(図4A~C)。また、これらの化合物はいずれも、骨芽細胞の成熟度(Ca2+蓄積量)に影響を与えなかった(図4D)。さらに、これらの3つのポリアミンの継続的な処理は、初代培養骨芽細胞におけるALP活性およびCa2+蓄積量に影響しなかった。
【実施例】
【0048】
(実施例4)SPDおよびSPMによる、破骨細胞におけるNF-κBの転写因子活性の阻害効果の確認
RANKLは、NF-κBの活性化を介した細胞内シグナル伝達経路を刺激することにより、破骨細胞の分化を促進することが知られている。SPDもしくはSPMによる破骨細胞分化阻害のメカニズムの検討のため、前駆破骨細胞のRAW264.7細胞をpNF-κB-Luc(5個のNF-κB結合配列を含むルシフェラーゼレポータープラスミド)により、一過的形質転換をした。RANKLの存在下で、SPDもしくはSPMにより処理を行い、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【実施例】
【0049】
50 ng/mlでRANKLを添加した場合は、形質転換された細胞においてルシフェラーゼ活性が3倍になった。RANKLの存在下で、1μMより高い濃度のSPDもしくはSPMを添加した場合は、RANKLによるルシフェラーゼ活性の上昇を有意に阻害した(図5A)。
【実施例】
【0050】
さらに破骨細胞におけるRANKLにより開始されるシグナル伝達経路に対するSPDもしくはSPMの影響を確認した。RANKLの存在に関わらず、SPDもしくはSPMのいずれかによる処理は、p65およびIκBのリン酸化に影響しなかった。図5Bは5分間処理を行った場合の写真である。すなわちSPDやSPMは、NF-κBのシグナルを制御するIκBや、p65(NF-kB構成因子の一つ)には影響しなかった。
【実施例】
【0051】
さらにERK、JNK、もしくはAktのリン酸化に対するSPDもしくはSPMの影響を確認したところ、RANKLの存在に関わらず影響は見られなかった。RANKLにより開始されるシグナル伝達経路として、NF-κBを介した経路以外に、ERKやJNK、Aktを介した経路が知られているが、SPDおよびSPMは、ERK等を介した経路には影響を与えないことがわかった。
【実施例】
【0052】
(実施例5)コラーゲン誘導関節炎(Collagen induced arthritis:CIA)動物モデルにおける、浮腫増大とRANKL発現量増加に対する、SPDとSPMの阻害効果の確認
CIA動物モデルにSPDまたはSPMを経口投与し、体重、足の容積、軟骨または関節滑液におけるRANKL等の発現量を測定した。
【実施例】
【0053】
(CIA動物モデルの作製とSPDまたはSPMの経口投与)
ルイス(Lewis)ラット(雌)を、標準的な12:12明暗周期でケージ内において、飼料と飲水は自由に摂取できるようにして、飼育した。 図6に示すように、8週齢のラットに、実験開始0日目、7日目、14日目に、Type IIコラーゲンと、完全フロイントアジュバントの混合物であるエマルジョンを、ラットの背中あるいは尾部付近に皮内投与した(コラーゲン1mg/mL(最終濃度)を0.5mL投与)。また、実験開始0日目から28日目まで、3 mMの濃度で飲水に溶解したSPDもしくはSPMを、毎日、同じラットに経口投与した(各々CIA+SPDラット、もしくはCIA+SPMラットと称する)。コントロールとして、SPDおよびSPMを溶解していない飲水を与えたラットを、関節炎を呈しているCIA動物モデル(CIAラット)とした。また、コラーゲンを皮内投与していないラットを正常(Normal)ラットとした。正常ラットには、SPDおよびSPMを溶解していない飲み水を与えた。実験開始0日目から28日目まで、7日間ごとに各ラットの体重を測定した。実験開始28日目に、CIAラットから軟骨または関節滑液を採取した。
【実施例】
【0054】
(リアルタイム定量的RT-PCR)
トータルRNAを細胞から抽出し、逆転写酵素と、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成した。cDNA試料を、各遺伝子(TNF-α、IL-1β、RNAKL、MMP13、Col II、Col X)に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR解析(MX3005P instrument:Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)の鋳型として使用した。 遺伝子の発現量は、内部標準として36b4遺伝子の発現量を用いて、各試料について補正した。
【実施例】
【0055】
(CIA動物モデルの足の容積の測定)
各種ラットの足(後肢)の容積を、足容積測定試験装置を用いて測定した。関節炎発症の基準を用いて4段階で評価(0:変化なし、1:足指の腫脹、2:足指および足裏の腫脹、3:足全体の腫脹、4:重度の腫脹)することにより、足の容積のスコア化を行った。
【実施例】
【0056】
(データ解析)
結果は全て平均±S.E.で示し、統計学的有意差はtwo-tailedおよびunpairedのStudentのt検定、またはBonferroni/Dunnettのpost hoc検定による一元配置分散分析(one-way analysis of variance ANOVA)により検定した。
【実施例】
【0057】
(材料)
SPD、SPMは、Sigma(St. Louis, MO, USA)より購入した。ルイス(Lewis)ラットは
Charles Riverから購入した。M-MLV逆転写酵素はInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)より得た。THUNDERBIRD SYBR qPCR Mixは東洋紡績株式会社(TOYOBO)(Osaka, Japan)より得た。他の化合物は、高純度の市販品を用いた。
【実施例】
【0058】
各種ラットの体重を測定した結果を図7に示す。SPDもしくはSPMを投与していないCIAラットでは、既報のとおり(Trentham et al., J. Exp. Med. 1977)体重減少が認められた。SPDもしくはSPMを投与した場合も同様に、体重減少が認められた。
【実施例】
【0059】
各種ラットから実験開始28日目に採取した軟骨における、各種mRNA発現量を確認した結果を図8に示す。SPDもしくはSPMを投与していないCIAラットでは、TNF-αおよびRANKLの発現量が増大しており、IL-1βの発現量が減少していた。MMP13、Col II、Col Xの発現量については有意な変化は認められなかった。SPDおよびSPMを投与した場合、TNF-α発現量の増大、IL-1β発現量の減少には影響が認められなかったが、SPMを投与した場合においてのみ、RANKL発現量の増大の抑制が認められた。なお、MMP13、Col II、Col XについてもSPDもしくはSPMを投与による影響は認められなかった。
【実施例】
【0060】
各種ラットから採取した関節滑液における、各種mRNA発現量を確認した結果を図9に示す。SPDもしくはSPMを投与していないCIAラットでは、TNF-αおよびRANKLの発現量が増大しており、IL-1βの発現量には有意な差は認められなかった。SPDおよびSPMを投与した場合、TNF-α発現量の増大、IL-1β発現量には有意な変化が認められなかったが、RANKL発現量の増大の抑制が認められた。
関節炎では、SPDまたはSPMがRANKL発現量の増大を抑制することにより、破骨細胞の分化及び/又は増殖を抑制し、関節の骨・軟骨破壊の進行を抑制し得ると考えられた。
【実施例】
【0061】
各種ラットの足の容積(浮腫)を測定した結果を図10に示す。ラットの足の容積(左図)では、既報のとおり足の容積が増大していた。SPMを投与した場合は実験開始14日後に、足の容積の増大の抑制が認められた。また、ラットの足の浮腫の程度をスコア化したところ(右図)、SPMを投与した場合は実験開始14日後および21日後に、足の浮腫程度の減弱が認められた。関節炎による足の浮腫発症が、SPMにより遅延されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の新規な予防剤及び/又は治療剤は、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有しており、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患(例えば、骨粗鬆症、関節炎、慢性関節リウマチ、又は悪性腫瘍など)の予防及び/又は治療のための医薬として有用である。本発明の予防剤及び/又は治療剤は、特に骨粗鬆症における骨量減少の抑制、関節炎における骨関節破壊や重症化の抑制、又は悪性腫瘍の骨転移の予防及び/又は治療のために用いることができる。本発明の予防剤及び/又は治療剤によれば、関節炎における浮腫発症を遅延させることもできる。また、本発明の予防剤及び/又は治療剤は、経口投与用製剤として調製することができ、タブレット剤や飲料の形態で医薬部外品として使用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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