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明細書 :波力発電システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5858376号 (P5858376)
公開番号 特開2013-002410 (P2013-002410A)
登録日 平成27年12月25日(2015.12.25)
発行日 平成28年2月10日(2016.2.10)
公開日 平成25年1月7日(2013.1.7)
発明の名称または考案の名称 波力発電システム
国際特許分類 F03B  13/14        (2006.01)
FI F03B 13/14
請求項の数または発明の数 11
全頁数 13
出願番号 特願2011-136156 (P2011-136156)
出願日 平成23年6月20日(2011.6.20)
審査請求日 平成26年6月18日(2014.6.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】重松 孝昌
【氏名】脇本 辰郎
【氏名】吉岡 真弥
【氏名】加藤 健司
個別代理人の代理人 【識別番号】100168583、【弁理士】、【氏名又は名称】前井 宏之
審査官 【審査官】冨永 達朗
参考文献・文献 特開2006-257898(JP,A)
特開2005-054724(JP,A)
実開昭59-013677(JP,U)
特開2004-332716(JP,A)
特開昭61-237885(JP,A)
実開平07-043974(JP,U)
調査した分野 F03B 13/14
F04C 2/344
F04C 15/00
特許請求の範囲 【請求項1】
防波堤と、
前記防波堤に設けられた水車と、
前記水車の回転と連動して回転する回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って発電を行う発電機と
を備え、
前記防波堤には、スリットおよび前記スリットと連絡した遊水室が設けられており、
前記水車は前記スリットおよび前記遊水室のうちの少なくとも一方に設けられており、
前記スリットの水平方向に沿った長さは前記スリットの垂直方向に沿った長さよりも短く、
前記回転軸は垂直方向に沿って配置されている、波力発電システム。
【請求項2】
前記水車は、前記スリットを介して前記遊水室に流入する水の流れおよび前記スリットを介して前記遊水室から流出する水の流れの両方に応じて回転可能なように構成されている、請求項1に記載の波力発電システム。
【請求項3】
前記水車は、前記回転軸を回転させる複数の水車部を含む、請求項1または2に記載の波力発電システム。
【請求項4】
前記複数の水車部のそれぞれは水車翼を有しており、
前記複数の水車部の前記水車翼は、前記回転軸に対して異なる位置に配置されている、請求項3に記載の波力発電システム。
【請求項5】
前記複数の水車部は、第1水車翼を有する第1水車部と、前記第1水車翼に対してほぼ120°異なる位置に配置された第2水車翼を有する第2水車部と、前記第2水車翼に対してほぼ120°異なる位置に配置された第3水車翼を有する第3水車部とを含む、請求項4に記載の波力発電システム。
【請求項6】
前記スリットの水平方向に沿った長さは、前記遊水室の水平方向に沿った長さよりも短い、請求項1から5のいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項7】
前記スリットの水平方向に沿った長さおよび垂直方向に沿った長さは、前記水車の水平方向に沿った長さおよび垂直方向に沿った長さと対応している、請求項1からのいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項8】
前記水車はサボニウス型水車を含む、請求項1からのいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項9】
前記防波堤は、前記スリットの設けられた前面を有しており、
前記スリットの水平方向に沿った長さは、前記防波堤の前面のうちの前記スリットの設けられていない部分の水平方向に沿った長さの半分以下である、請求項1からのいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項10】
前記防波堤には、複数のスリットと、前記複数のスリットとそれぞれと連絡した複数の遊水室が設けられており、
前記波力発電システムは、前記複数のスリットに対応した複数の水車をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の波力発電システム。
【請求項11】
前記複数のスリット、前記複数の遊水室および前記複数の水車は、水平方向に配置されている、請求項1から10のいずれかに記載の波力発電システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、波力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油などの化石燃料の枯渇、および、地球温暖化に代表されるような環境対策が深刻な問題として認識されるようになり、環境への影響の少ない再生可能エネルギー(自然エネルギー)を利用した発電が注目を集めている。これらのうち波力発電は、地球表面の7割もの領域を覆う海において発生する波力を利用するものであり、有力なエネルギー源として着目されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、ジャイロ装置を備えた波力発電システムが記載されている。特許文献1の波力発電システムでは、波浪の揺れに応じて浮体が揺動し、発電機が駆動されて電力が発生する。
【0004】
また、特許文献2には、消波堤を利用した波力発電装置が記載されている。特許文献2の波力発電装置では、消波堤に設けられた透水孔内に回転翼が設けられており、透水孔内を通過する水流のエネルギーを利用して発電が行われる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2008-231967号公報
【特許文献2】特開平7-252816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、船舶の航行安全や漁場確保の観点から、海洋に構造物を設置することが厳しく制限されている場合、特許文献1に開示された波力発電システムを設置できないことがある。また、特許文献2に開示された波力発電装置では、波力を有効に利用しておらず、十分な発電を行うことができない。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に設置可能で、かつ、効率的に発電を行う波力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による波力発電システムは、防波堤と、前記防波堤に設けられた水車と、前記水車の回転と連動して回転する回転軸と、前記回転軸の回転に伴って発電を行う発電機とを備え、前記防波堤には、スリットおよび前記スリットと連絡した遊水室が設けられており、前記水車は前記スリットおよび前記遊水室のうちの少なくとも一方に設けられている。
【0009】
ある実施形態において、前記水車は、前記スリットを介して前記遊水室に流入する水の流れおよび前記スリットを介して前記遊水室から流出する水の流れの両方に応じて回転可能なように構成されている。
【0010】
ある実施形態において、前記水車は、前記回転軸を回転させる複数の水車部を含む。
【0011】
ある実施形態において、前記複数の水車部のそれぞれは水車翼を有しており、前記複数の水車部の前記水車翼は、前記回転軸に対して異なる位置に配置されている。
【0012】
ある実施形態において、前記複数の水車部は、第1水車翼を有する第1水車部と、前記第1水車翼に対してほぼ120°異なる位置に配置された第2水車翼を有する第2水車部と、前記第2水車翼に対してほぼ120°異なる位置に配置された第3水車翼を有する第3水車部とを含む。
【0013】
ある実施形態において、前記スリットの水平方向に沿った長さは、前記遊水室の水平方向に沿った長さよりも短い。
【0014】
ある実施形態において、前記スリットの水平方向に沿った長さは、前記スリットの垂直方向に沿った長さよりも短い。
【0015】
ある実施形態において、前記スリットの水平方向に沿った長さおよび垂直方向に沿った長さは、前記水車の水平方向に沿った長さおよび垂直方向に沿った長さと対応している。
【0016】
ある実施形態において、前記回転軸は垂直方向に沿って配置されている。
【0017】
ある実施形態において、前記水車はサボニウス型水車を含む。
【0018】
ある実施形態において、前記防波堤は、前記スリットの設けられた前面を有しており、前記スリットの水平方向に沿った長さは、前記防波堤の前面のうちの前記スリットの設けられていない部分の水平方向に沿った長さの半分以下である。
【0019】
ある実施形態において、前記防波堤には、複数のスリットと、前記複数のスリットとそれぞれと連絡した複数の遊水室が設けられており、前記波力発電システムは、前記複数のスリットに対応した複数の水車をさらに備える。
【0020】
ある実施形態において、前記複数のスリット、前記複数の遊水室および前記複数の水車は、水平方向に配置されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、容易に設置可能で、かつ、波力発電を効率的に行う波力発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による波力発電システムの実施形態を示す模式図である。
【図2】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、本実施形態の波力発電システムにおける防波堤の上面からみた模式的な断面図、側面からみた模式的な断面図、および、模式的な正面図である。
【図3】本実施形態の波力発電システムにおける水車の模式的な上面図である。
【図4】(a)および(b)はそれぞれ本実施形態の波力発電システムにおける水車の模式的な上面図および側面図である。
【図5】(a)は本実施形態の波力発電システムにおける水車を上面からみた模式的な断面図であり、(b)は(a)の波力発電システムを側面からみた模式的な断面図であり、(c)は(a)の波力発電システムの模式的な正面図である。
【図6】(a)は本実施形態の波力発電システムにおける防波堤を備えた造波水槽を示す模式図であり、(b)は(a)に示した造波水槽内における水流の速度ベクトルを表した模式図である。
【図7】(a)本実施形態の波力発電システムにおける動力を測定するための動力計測システムを示す模式図であり、(b)は(a)のA-A’断面の模式図である。
【図8】(a)~(d)は液面変位h、角速度ω、トルクTおよび動力Pのそれぞれの時間変化を示すグラフである。
【図9】(a)は平均トルクTに対する平均角速度ωおよび平均動力Pの変化を示すグラフであり、(b)は波形勾配γに対する最大平均動力Pamaxの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明による波力発電システムの実施形態を説明する。だだし、本発明は以下の実施形態に限定されない。

【0024】
図1に、本実施形態の波力発電システム10の模式図を示す。波力発電システム10は、防波堤20と、防波堤20に設けられた水車30と、水車30の回転に連動して回転する回転軸40と、回転軸40の回転に伴って発電を行う発電機50とを備えている。水車30は波によって形成される往復流に応じて回転する。水車30の回転に伴って回転軸40が回転し、回転軸40の回転に伴い発電機50が発電を行う。本明細書の以下の説明において、水車30、回転軸40および発電機50を併せて発電ユニット60と呼ぶことがある。

【0025】
防波堤20には、スリット20sおよび遊水室20tが設けられており、遊水室20tはスリット20sと連絡(連続)している。スリット20sは、防波堤20の前面(沖側)に設けられている。このため、スリット20sおよび遊水室20tの設けられた防波堤20に対して波が衝突する場合、スリット20s近傍で発生する渦によって波のエネルギーが消散し、消波が行われる。

【0026】
本実施形態の波力発電システム10において、水車30は、遊水室20t内に設けられているか、または、スリット20sおよび遊水室20tにまたがって設けられている。あるいは、スリット20sの厚さが水車30と比べて比較的大きい場合、水車30は、スリット20sに設けられていてもよい。このように、水車30はスリット20sおよび遊水室20tのうちの少なくとも一方に設けられている。

【0027】
波力発電システム10では、防波堤20に向かってくる波がスリット20sに到達すると、スリット20sおいて水流の方向が揃えられるとともに水流の速度が加速される。水車30はこのような水流によって回転し、発電機50は水車30および回転軸40の回転に伴って発電を行う。このため、波力発電システム10は、波力を利用して発電を効率的に行うことできる。なお、一般に、発電出力は水流速度の3乗に比例するため、水流の加速により、発電出力を効率的に増大させることができる。防波堤20の前面において、スリット20sの水平方向に沿った長さに対して壁部分の水平方向に沿った長さの比率が大きいほどスリット20sを介して流れる水流の速度を大きくすることができる。例えば、防波堤20の前面において、壁部分とスリット20sの水平方向の長さの比率が2:1の場合、スリット20sを介して流れる水流の速度は約3倍となり、発電出力を約27倍にすることができる。

【0028】
また、スリット20sを介して遊水室20tに流入した水は、その後、スリット20sを介して遊水室20tから流出する。本実施形態の波力発電システム10では、水車30はスリット20sを介して遊水室20tから流出する水の流れも利用して発電を行うことができる。

【0029】
例えば、発電機50は、防波堤20の上に設けられている。図1に示した波力発電システム10では、水車30、回転軸40および発電機50を設置する構造物として防波堤20を利用しており、このような波力発電システム10の防波堤20として既存の防波堤を利用することができる。船舶の航行安全や漁場確保の観点から、海洋に構造物を設置することが厳しく制限されていることがあるが、この場合でも、防波堤20とは別に海域を占有する構造物や浮体を設けなくてもよく、既存の防波堤を利用可能であるため、波力発電システム10を設置するための許認可を得やすい。特に、国土面積に対して長大な海岸線を有する日本では、波力発電システム10を用いる意義が大きい。また、波力発電システム10は防波堤20を利用して設置されるため、波力発電システム10の部品点数を低減させ、発電システムの重量およびコストを抑制できる。

【0030】
防波堤20は陸地と連続していてもよく、あるいは、防波堤20は陸地とは連続することなく海域に単離していてもよい。ただし、防波堤20は、海岸線に比較的近い箇所に設置されることが好ましい。この場合、防波堤20には、ほぼ一定方向に進行する波が衝突し、水車30はこの波を効率的に利用して回転するため、発電を効率的に行うことができる。また、波力発電システム10を海岸線に近い場所に設置した場合、送電を比較的容易に行うことができる。

【0031】
なお、図1に示したように、正面方向から見た場合、スリット20sは矩形状を有している。このようにスリット20sが単純な形状を有している場合、水面にほぼ平行でかつ波の進行方向にほぼ垂直な方向に縮流が生成されるため、縮流生成時の損失を低減できると考えられる。また、スリット20sの水平方向に沿った長さは、遊水室20tの水平方向に沿った長さよりも短いことが好ましく、これにより、消波を適切に行うとともに遊水室20tにおいて衝突する波のエネルギーを低減させることができる。なお、ここで、水平方向は、波が実質的にない状態における水面に沿った方向に相当する。

【0032】
スリット20sの水平方向に沿った長さは、防波堤20の前面のうちのスリット20sの設けられていない部分の水平方向に沿った長さの半分以下であることが好ましい。また、スリット20sの水平方向に沿った長さは、スリット20sの垂直方向に沿った長さよりも短いことが好ましい。このようなスリット20sは縦長スリットとも呼ばれる。また、ここで、垂直方向は、重力の方向と平行な方向に相当する。

【0033】
ここでは、スリット20sの垂直方向に沿った長さは、スリット20sの水平方向に沿った長さよりも大きく、また、水車30の垂直方向に沿った長さは水車30の水平方向に沿った長さよりも大きい。このように、スリット20sの水平方向および垂直方向に沿った長さが水車30の水平方向および垂直方向に沿った長さと対応することにより、スリット20sにおいて加速された水流を水車30の回転運動に効率的に変換することができる。例えば、スリット20sの水平方向および垂直方向に沿った長さは、水車30の水平方向および垂直方向に沿った長さとほぼ等しいことが好ましい。あるいは、スリット20sの水平方向および垂直方向に沿った長さは、水車30の水平方向および垂直方向に沿った長さよりも若干大きくてもよい。

【0034】
以下、図2を参照して、波力発電システム10における防波堤20を説明する。図2(a)に防波堤20の上面からみた模式的な断面図を示し、図2(b)に防波堤20の側面からみた模式的な断面図を示し、図2(c)に防波堤20の模式的な正面図を示す。

【0035】
例えば、スリット20sを正面方向から見た場合、スリット20sの水平方向に沿った長さは、スリット20sの垂直方向に沿った長さよりも短い。例えば、スリット20sの水平方向に沿った長さは約50cmであり、スリット20sの垂直方向に沿った長さは約400cmである。また、遊水室20tの水平方向に沿った長さは約170cmであり、遊水室20tの垂直方向に沿った長さは約600cmである。

【0036】
また、スリット20sおよび遊水室20tはそれぞれほぼ直方体形状であることが好ましい。これにより、スリット20sの大きさを比較的大きくしても防波堤20の強度が適切に保持されるとともに、スリット20sの厚さ(波の進行方向に沿った長さ)が比較的短い場合でも、水流を効率的に加速させることができる。さらに、直方体形状のスリット20sおよび遊水室20tの設けられた防波堤20は、比較的簡便に作製できる。また、図2では図示していないが、上述したように、水車30はスリット20sおよび遊水室20tにまたがって配置されてもよい。

【0037】
波力発電システム10では、遊水室20t内の水はスリット20s以外から流入および流出せず、スリット20sを介して遊水室20tに流入した水は、遊水室20tにおいて反射され、反射された水も水車30(図1)の回転に利用される。ここでは、防波堤20は、スリット20sの設けられた前面と、背面と、下面と、側面を有している。また、必要に応じて防波堤20は上面を有してもよい。遊水室20tは、防波堤20の前面、背面、下面および側面(さらに必要に応じて上面)によって規定される。この場合、防波堤20の前面にのみ開口部(スリット20s)が設けられる一方で、背面、下面および側面には開口部が設けられず、スリット20sを介して遊水室20tに流入した水は、遊水室20tにおいて反射され、反射された水も水車30(図1)の回転に利用される。

【0038】
なお、図1に示した水車30は、スリット20sを介して遊水室20tに流入する水の流れおよびスリット20sを介して遊水室20tから流出する水の流れの両方に応じて回転可能なように構成されていることが好ましい。また、図1では、回転軸40が垂直方向に延びるように配置されており、水流に伴い、水車30は水平方向に回転する。回転軸40の一部が水面の上に位置していることにより、発電機50を水中に沈めることなく回転軸40と発電機50との接続を容易に行うことができる。例えば、水車30としてサボニウス型水車が用いられる。

【0039】
図3に、水車30の模式的な上面図を示す。図3に示した水車30はサボニウス型水車である。水車30は2枚の水車翼30wを有している。水車翼30wは回転軸40の周囲に配置されている。波は、正弦波的な往復流を生成するため、回転方向が水流の方向に依存しないサボニウス型水車を用いることが好ましい。なお、図3には、サボニウス型水車を示したが、水車30としてダリウス型水車またはジャイロミル型水車を用いてもよい。

【0040】
なお、水車30は複数の水車部を有してもよい。例えば、水車30は、2つの水車部を有してもよく、あるいは、3以上の水車部を有してもよい。

【0041】
図4に、本実施形態の波力発電システム10における水車30の一例を示す。図4(a)に水車30の模式的な上面図を示し、図4(b)にこの水車30の模式的な側面図を示す。図4に示した水車30は、同一の回転軸40を回転させる水車部30a、30b、30cを有している。同一の回転軸40に沿って水車部30a、30b、30cは垂直方向に配置されている。

【0042】
水車部30a、30b、30cは、それぞれ、水車翼30aw、30bw、30cwを有している。回転軸40から分離された場合、水車部30a、30b、30の水車翼30aw、30bw、30cwはそれぞれ同様の形状を有している。水車部30a、30b、30cの水車翼30aw、30bw、30cwは、回転軸40に対して固定された状態で、回転軸40に対して異なる位置に配置されている。水車翼30bwは、水車翼30awに対してほぼ120°異なる位置に配置されており、水車翼30cwは、水車翼30awおよび水車翼30bwのそれぞれに対してほぼ120°異なる位置に配置されている。なお、本明細書において水車部30a、30b、30cをそれぞれ第1水車部30a、第2水車部30b、第3水車部30cと呼ぶことがあり、水車翼30aw、30bw、30cwをそれぞれ第1水車翼30aw、第2水車翼30bw、第3水車翼30cwと呼ぶことがある。

【0043】
このように、水車翼30aw、30bw、30cwが回転軸40に対して異なる位置に配置されていることにより、回転を滑らかにすることができる。なお、ここでは、水車30は3つの水車部30a、30b、30cを有していたが、本発明はこれに限定されない。水車30の水車翼30wが回転軸40に対して滑らかにほぼ360°回転するように構成されていてもよい。

【0044】
また、上述した説明では、スリット20sの水平方向の長さはスリット20sの垂直方向の長さよりも短く、スリット20sは縦長であったが、本発明はこれに限定されない。スリット20sの水平方向の長さはスリット20sの垂直方向の長さよりも長く、スリット20sは横長であってもよい。

【0045】
なお、実際の海面の高さは、潮の満ち引きや気象状況に応じて時刻に応じて変動する。一般的な気象状況の場合には任意の時刻において水車30の少なくとも一部が海面下に存在するように水車30が配置されることが好ましい。また、防波堤20には、スリット20sおよび遊水室20tが複数設けられ、スリット20sおよび遊水室20tの少なくとも一方に水車30が配置されることが好ましい。

【0046】
図5を参照して本実施形態の波力発電システム10を説明する。図5(a)に波力発電システム10の水車30を上面からみた模式的な断面図を示し、図5(b)に波力発電システム10を側面からみた模式的な断面図を示し、図5(c)に波力発電システム10の模式的な正面図を示す。

【0047】
図5に示した波力発電システム10では、複数のスリット20s、複数の遊水室20tおよび複数の水車30は水平方向に配置されている。複数の水車30は、複数のスリット20sに対応して配置されている。ここでは、発電機50は、防波堤20の上面の裏面(遊水室20tの内部上面)に取り付けられている。また、複数の遊水室20tは互いに連絡していてもよい。

【0048】
このような波力発電システム10では、複数の発電ユニット60を容易に設置させることができ、発電ユニット60の設置数に応じて所望の発電量を得ることができる。例えば、防波堤20の長さ1kmあたりに数百個の発電ユニット60を設置することができ、1個の発電ユニット60から、数百Wの発電量を得ることができる。

【0049】
以下に、図6を参照して、防波堤20のスリット20sを介して流れる水の流れを説明する。図6(a)に示すように、スリット20sおよび遊水室20tを有する防波堤20を備える造波水槽Vを用意する。

【0050】
防波堤20に向かって進行する波を造波水槽V内で発生させる。図6(b)は、造波水槽V内で発生した波が防波堤20のスリット20sを介して遊水室20tに流入したときの水深0.8mの水平面内の速度ベクトルを矢印で示している。このような速度ベクトルはシミュレーションで求めことができる。図6(b)から、スリット20sを通過する際に、水の流れが加速されることが理解される。なお、ここでは図示していないが、防波堤20内の水車30は、防波堤20の遊水室20tにおいて水の流れの速い位置に配置される。

【0051】
ここで、図7~図9を参照して、波力発電システム10の動力を測定した結果を説明する。図7は、小型の波力発電システム10において発電機50の代わりに動力検出器150を配置した動力計測システム110を示す。動力計測システム110では、防波堤20、水車30および回転軸40に加えて、回転軸40による回転のトルクおよび回転速度を測定する動力検出器150と、増幅器160と、制御器170と、波高計180a、180bとが設けられている。動力検出器150は、摩擦によって回転軸40に負荷を加えた状態で、回転軸40のトルクおよび回転角速度を測定する。ここでは、制御器170としてパーソナルコンピュータを用いている。

【0052】
また、ここでは、防波堤20は、大阪南港に設置されている防波堤をモデルとし、その約1/12のサイズに作製しており、防波堤20のスリット20sの水平方向の長さ、スリット20sの厚さおよび間隔は、それぞれ、42mm、42mm、142mmである。このような防波堤20が造波水槽内に設置される。造波水槽において、波の進行方向に直交する方向に沿った長さは500mmであり、波の進行方向に沿った長さは20mであり、水は深さ417mmまで入っている。

【0053】
水車30は、防波堤20のスリット20sおよび遊水室20tをまたいで配置されており、スリット20s付近に形成される往復流に応じて水車30は回転する。水車30としてサボニウス型水車が用いられる。ここでは、水車30の直径および長さはそれぞれ35mmおよび130mmである。また、ここでは、水車30は、3つの水車部130a、130b、130cを有している。3つの水車部130a、130b、130cは、それぞれの水車翼を回転軸に対して互いに120°ずらして配置されており、これにより、滑らかな回転が実現する。

【0054】
波高計180aは、防波堤20から前方(沖側)に60mmの位置に配置されており、波高計180bは、防波堤20から前方(沖側)に5mの位置に配置されている。

【0055】
造波装置は、表1に示すような条件で波を発生する。波高Hは波の振幅の2倍であり、波形勾配γは、波長λおよび波高Hを用いてH/λと表される。
【表1】
JP0005858376B2_000002t.gif

【0056】
図8(a)~図8(d)に、液面変位h、角速度ω、トルクTおよび動力Pのそれぞれの時間変化を示す。造波形成前の液面変位hはゼロである。また、ここでは、周期Cは1.44秒であり、波形勾配γは0.03となるように波を形成している。

【0057】
スリット20s近傍における液面変位hが大きい時に、スリット20sを介して遊水室20tに水が流入し、小さい時にスリット20sを介して遊水室20tから水が流出する。図8(a)~図8(d)から、液面変位hの絶対値が大きく、強い流出入の流れがある時に角速度W、トルクTおよび動力Pが大きい値を示す一方で、液面変位hが0付近ではこれらの値は小さく、これにより、水車30は間欠的な回転運動を示していることがわかる。

【0058】
図9(a)に、平均トルクTに対する平均角速度ωおよび平均動力Pの時間変化を示す。平均トルクT、平均角速度ωおよび平均動力Pは、摩擦負荷トルクを変更して図8を参照して上述したのと同様にデータを取得し、トルク、角速度、動力の時間平均値を求めたものである。

【0059】
図9(a)から理解されるように、平均トルクTが増大する場合、平均角速度ωは単調に減少する一方、平均動力Pは一旦増大した後に減少する。ここでは、平均トルクTが74.7μNmの場合に平均動力Pは最大値955μWを示す。一般的にサボニウス水車では、水車の周速度が流速とほぼ同じになった時に効率が最大となることが知られており、動力最大時の水車の周速度もおよそこの条件を満足している。

【0060】
図9(b)に、波形勾配γに対する最大平均動力Pamaxの変化を示す。ここでは、周期Cを1.15秒および1.44秒で固定したまま、波形勾配γを変化させて最大平均動力Pamaxを同様に求めている。図9(b)から、最大平均動力Pamaxは波形勾配γとともに増大することがわかる。これは波動による流動の速度が大きくなったためと考えられる。また、周期Cの増加により、最大平均動力Pamaxは幾分増大する傾向があることが分かる。以上に示したように、スリット20sを往復する水流により、動力が適切に取得されることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、設置の容易な波力発電システムを用いて波力発電を効率的に行うことができる。本発明の波力発電システムは、港湾部の一般住宅や、漁業施設・船舶航行支援施設への電力供給を好適に行うことができる。また、本発明の波力発電システムは、離島などの送電困難地域における電力供給源として用いることができ、あるいは、災害時等に通常の送電線が使用できなくなった場合における発電システムとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 波力発電システム
20 防波堤
20s スリット
20t 遊水室
30 水車
40 回転軸
50 発電機

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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