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明細書 :薬物排出抑制剤、抗菌活性増強剤、及び抗癌活性増強剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5935201号 (P5935201)
公開番号 特開2012-224561 (P2012-224561A)
登録日 平成28年5月20日(2016.5.20)
発行日 平成28年6月15日(2016.6.15)
公開日 平成24年11月15日(2012.11.15)
発明の名称または考案の名称 薬物排出抑制剤、抗菌活性増強剤、及び抗癌活性増強剤
国際特許分類 A61K  31/4196      (2006.01)
A61K  31/085       (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  31/04        (2006.01)
FI A61K 31/4196
A61K 31/085
A61P 43/00 105
A61P 43/00 121
A61P 31/04
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2011-091645 (P2011-091645)
出願日 平成23年4月18日(2011.4.18)
審査請求日 平成26年3月7日(2014.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
発明者または考案者 【氏名】藤田 憲一
個別代理人の代理人 【識別番号】100158366、【弁理士】、【氏名又は名称】井戸 篤史
審査官 【審査官】光本 美奈子
参考文献・文献 特開2004-238375(JP,A)
辰巳 美紀他,日本農芸化学会大会講演要旨集,2010年,Vol.2010,p.16
Kubo I, et al.,J. Agric. Food Chem.,2001年,Vol.49,p.5750-5754
Fujita K, et al.,Phytotherapy research,2007年,Vol.21,p.47-51
Kubo I, et al.,J. Agric. Food Chem.,1993年,Vol.41,p.2447-2450
Kubo I, et al.,Journal of Natural Products,1994年,Vol.57, No.1,p.9-17
Amber K, et al.,Phytomedicine,2010年,Vol.17,p.921-925
Lage H.,International journal of antimicrobial agents,2003年,Vol.22,p.188-199
Labialle S, et al.,Biochemical Pharmacology,2002年,Vol.64,P.943-948
GERK PM, et al.,J pharmacol exp ther,2002年,Vol.302, No.2,p.407-415
Young SC, et al.,Arch toxicol,2006年,Vol.80,p.319-327
Anuchapreeda S, et al.,Biochemical pharmacology,2002年,Vol.64,p.573-582
Bachmeier BE, et al.,Cell physiol biochem,2007年,Vol.19,P.137-152
辰巳 美紀他,日本生物工学会大会講演要旨集,2010年,Vol.62nd,p.142
Kubo I, et al.,J Sci Food Agric,2008年,Vol.88,p.242-247
調査した分野 A61K 31/00~31/80
A61P 1/00~43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
アネトール、及びプロピルアニソールからなる群から選ばれる1又は複数を含有する薬物排出ポンプPDR5遺伝子の発現抑制によるフルコナゾールの抗菌活性増強剤
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数を含有する薬物排出抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物による感染症の予防や治療のために数多くの抗菌剤が使用されている。抗菌剤の使用量増加に伴って抗菌剤に対する耐性を有する微生物が多く出現しており、非常に問題となっている。微生物は、生体外に薬物を排出する薬物排出ポンプを得ることで薬物耐性を獲得することが知られている。また、薬物排出ポンプは、腫瘍細胞上に存在することも知られており、腫瘍細胞が抗癌剤に対する耐性を獲得する原因にもなっている。薬物耐性を有する微生物や癌の治療のため、これまで、数多くの薬物排出ポンプの阻害剤が開発されてきた(特許文献1~特許文献4参照)。
【0003】
一方、フェニルプロパノイド等、植物を由来とする化合物は、さまざまな薬理活性を有することから、フェニルプロパノイドを含有する薬剤の開発が数多く行われている。例えば、脂肪細胞分化促進剤、該促進剤を含有する糖尿病治療剤(特許文献5参照)、視覚機能障害の予防又は治療剤(特許文献6参照)、核外移行シグナルを含有するタンパク質の核外移行阻害剤(特許文献7参照)、皮膚基底膜賦活用組成物(特許文献8参照)等である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-322054号公報
【特許文献2】特表2008-546729号公報
【特許文献3】特表2008-502720号公報
【特許文献4】特表2008-500965号公報
【特許文献5】特開2010-202536号公報
【特許文献6】特開2008-266318号公報
【特許文献7】特開2008-044886号公報
【特許文献8】特開2007-077169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで開発されてきた薬物排出ポンプ阻害剤は、効果や安全性の面で十分なものは得られていなかった。そこで、本発明は、微生物や腫瘍細胞等に対する薬物排出抑制効果を有し、同時に高い安全性を有する、薬物排出抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数を含有する薬物排出抑制剤を提供する。
【0007】
また、別の本発明の薬物排出抑制剤では、含有されるフェニルプロパノイド又はフェニルプロパノイド誘導体、が、一般式(1)(一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、又は、炭素数2~10のアルキニル基であり、それぞれ置換基を含んでいてもよい。また、一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、又は、炭素数1~10のアルコキシ基であり、それぞれ置換基を含んでいてもよい。)で表される。
【0008】
【化1】
JP0005935201B2_000002t.gif

【0009】
また、別の本発明の薬物排出抑制剤では、含有されるフェニルプロパノイド又はフェニルプロパノイド誘導体が、アネトール、エストラゴール、プロピルアニソール、チャビコール、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる1又は複数である。
【0010】
また、別の本発明の薬物排出抑制剤では、フェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数が薬物排出ポンプ遺伝子の発現を抑制する。
【0011】
さらに、本発明の抗菌活性増強剤は、上記の薬物排出抑制剤を含有する。さらに、本発明の抗癌活性増強剤は、上記の薬物排出抑制剤を含有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、薬物排出ポンプ遺伝子の発現を抑制することが可能であり、菌や細胞による薬物排出を抑制することができる。また、本発明により抗菌剤や抗癌剤を細胞内に長く留まらせることができ、結果として抗菌剤や抗癌剤の活性を増強させ、抗菌剤や抗癌剤の使用量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明が含有するフェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数の薬物排出抑制能を示す図面である。
【図2】本発明が含有するフェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数の抗菌活性増強能を示す図面である。
【図3】本発明が含有するフェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数の抗菌活性増強能を示す図面である。
【図4】本発明が含有するフェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数の薬物排出抑制能及び抗菌活性増強能を示す図面である。
【図5】本発明が含有するフェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数の抗菌活性増強能を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の薬物排出抑制剤は、フェニルプロパノイド、フェニルプロパノイド誘導体、及び、それらの塩からなる群から選ばれる1又は複数を含有する。フェニルプロパノイドとは、芳香環と炭素を含む側鎖とを有する有機化合物、又はその誘導体をいう。フェニルプロパノイドは、植物に多く含まれる天然物である。本発明では、これらフェニルプロパノイドの中でも、モノマーであるモノフェニルプロパノイドを用いることが好ましい。

【0015】
本発明に用いられるフェニルプロパノイドは、例えば、アネトール、エストラゴール、プロピルアニソール、チャビコール、オイゲノール、イソオイゲノール、プロピルベンゼン、サフロール、バニリン、ケイ皮酸、シンナムアルデヒド、クマリンやその誘導体、ヒドロキシケイ酸類、モノリグノール類、フラボノイド類、イソフラボノイド類、スチルベンやその誘導体、ポリフェノール類等のうち、微生物や細胞等に対する薬物排出抑制活性を有するものが挙げられる。

【0016】
ヒドロキシケイ酸類としては、例えば、クマル酸、フェルラ酸、α—シアノ—4—ヒドロキシケイ皮酸、シナピン酸、キコル酸、コーヒー酸、カフタル酸、クータル酸(Coutaric acid)、ファータル酸(Fertaric acid)等が挙げられる。

【0017】
また、モノリグノール類としては、例えば、コフェニルアルコール、シナピルアルコール、p-クマリルアルコール等が挙げられる。また、フラボノイド類としては、例えば、フラボン、カルコン、カテキン等が挙げられる。また、イソフラボノイド類としては、例えば、イソフラボン等が挙げられる。また、スチルベン誘導体としては、レスべラトロール、フィロズルチン等が挙げられる。

【0018】
さらに、本発明では、一般式(1)で表されるフェニルプロパノイドを用いることが好ましい。一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、又は、炭素数2~10のアルキニル基であり、それぞれ置換基を含んでいてもよい。アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、直鎖状、分岐状、又は環状であり得る。また、一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、又は、炭素数1~10のアルコキシ基であり、それぞれ置換基を含んでいてもよい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、又は環状であり得る。

【0019】
また、式(1)における置換基は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリル基、ビニル基、エーテル基、エステル基、フェニル基、アリール基、ベンジル基、ベンゾイル基、ナフチル基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アシル基、アセチル基、アルデヒド基、アミノ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジ基、シアノ基、アジド基、チオール基、スルホ基等が挙げられる。R、R、及びRは、1又は複数の置換基を含んでいてもよい。

【0020】
より好ましくは、一般式(1)中、Rは炭素数1のアルキル基であり、Rは、炭素数3のアルキル基、炭素数3のアルケニル基、又は、炭素数3のアルキニル基であり、Rは、水素、炭素数1のアルキル基、又は、炭素数1のアルコキシ基である。ここで、炭素数1のアルコキシ基は、メトキシ基であることがさらに好ましい。

【0021】
一般式(1)の具体例として、一般式(2)~一般式(5)を示すが、一般式(1)はこれらに限定されるものではない。一般式(2)はアネトール、一般式(3)はエストラゴール、一般式(4)はプロピルアニソール、一般式(5)はチャビコール、一般式(6)はオイゲノールをそれぞれ表す。

【0022】
【化2】
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【0023】
【化3】
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【0024】
【化4】
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【0025】
【化5】
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【0026】
【化6】
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【0027】
本発明の薬物排出抑制剤は、微生物や細胞の薬物排出ポンプ遺伝子の発現を抑制することで、その薬物排出能を抑制する。薬物排出ポンプとしては、P糖タンパク質等を含むABCトランスポーター、RND型排出ポンプ等が挙げられる。本発明の薬物排出抑制剤は、これら薬物排出ポンプの全部又は一部の遺伝子の発現を抑制すると考えられる。

【0028】
また、本発明の抗菌活性増強剤は、微生物に対して使用される抗菌剤の効果を増強するために用いられる。本発明により、微生物の薬物排出ポンプによる抗菌剤排出を抑制することができるためである。薬物耐性を有する微生物に抗菌作用を与える他、耐性を有しない微生物に対しても本発明を用いることで抗菌剤の使用量を低減することができる。本発明の抗菌活性増強剤と抗菌剤とは同時に、又は連続して服用されることが望ましい。

【0029】
また、本発明の抗癌活性増強剤は、癌に対して使用される抗癌剤の効果を増強するために用いられる。本発明により、癌細胞の薬物排出ポンプによる抗菌剤排出を抑制することができるためである。抗癌剤に対する耐性を有する癌細胞に抗癌作用を与える他、耐性を有しない癌細胞に対しても本発明を用いることで抗癌剤の使用量を低減することができる。本発明の抗癌活性増強剤と抗癌剤とは同時に、又は連続して服用されることが望ましい。
【実施例】
【0030】
さらに、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
1.本発明の薬物排出抑制能の検証
フェニルプロパノイド及び/又はその塩としてアネトールを含有する薬物排出抑制剤の薬物排出抑制能の検証を行った。Saccharomyces cerevisiaeの薬物耐性に関与するABCトランスポーターのうちpleiotropic drug resistance(PDR)遺伝子群に着目し、本発明の薬物排出抑制剤がPRD5の発現に与える影響を検証した。薬物耐性に関与するABCトランスポーターであるPDR5、及びその転写因子であるPDR1、PDR3の発現量をRT-PCRを用いて調べた。
【実施例】
【0032】
[方法]
培養液としてMalt液体培地20 mlを含む三角フラスコにS. cerevisiae ATCC 7754株を懸濁し30℃で16 時間振盪培養した。さらに、Malt液体培地100 mlに、(1)1mlのN,N—ジメチルホルムアミド、(2)312.5μMのアネトールを溶解した1mlのN,N—ジメチルホルムアミド、(3)125μMのドデカノールを溶解した1mlのN,N—ジメチルホルムアミド、(4)312.5μMのアネトール及び125μMのドデカノールを溶解した1mlのN,N—ジメチルホルムアミド、をそれぞれ添加し、30℃で24時間嫌気培養した。
【実施例】
【0033】
600
nmでの濁度が5になるようにS.
cerevisiae ATCC 7754株を遠心分離し集菌し、β—メルカプトエタノールを含む緩衝液に懸濁した。30℃で10分間静かに撹拌しながらインキュベートし、スフェロプラストを調製した。調整したスフェロプラストからRNeasy(登録商標、株式会社キアゲン)を用いてRNAを抽出し、逆転写PCRによりPDR1、PDR3、及びPDR5の各遺伝子の発現量を比較した。
【実施例】
【0034】
[結果]
電気泳動で得られた写真を図1に示す。ドデカノールの存在下で培養したS. cerevisiae(3)は、対照(1)やアネトールの存在下で培養したもの(2)と比べて、PDR1、PDR3、及びPDR5の各遺伝子の発現量が増大した。一方で、アネトールとドデカノールとの存在下で培養したもの(4)は、上記の各遺伝子の発現量が抑制されていた。したがって、本発明に含有されるフェニルプロパノイドは、薬物排出ポンプの遺伝子の発現を抑制することによる、薬物排出抑制活性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0035】
2.本発明の抗菌活性増強能の検証
2.1.Candida
albicansに対する抗菌活性増強能の検証
フェニルプロパノイド及び/又はその塩として、アネトールを含有する抗菌活性増強剤のCandida albicansに対する抗菌活性増強能の検証を行った。Candida
albicansに対する抗菌剤であるフルコナゾールを用い、0μM、100μM、200μM、及び400μMの各濃度のアネトール存在下におけるフルコナゾールの最小生育阻害濃度(以下、「MIC」とも呼称する。)を測定した。
【実施例】
【0036】
[方法]
アネトール又はフルコナゾールは、N,N—ジメチルホルムアミドに溶解して用いた。Malt液体培地3 mlに、アネトール及び/又はフルコナゾールを溶解したN,N—ジメチルホルムアミドを終濃度1%となるように加え、600 nmでの濁度が0.1になるようにCandida albicans IFO 1061株を懸濁した。30℃で培養し24時間後、培養液100μlずつサンプリングして96穴ウェルに移して、595 nmでの培養液の濁りを測定し、生育阻害濃度を決定した。
【実施例】
【0037】
[結果]
結果を図2に示す。フルコナゾール単独での最小阻害濃度は2500ng/mlであった。一方で、100μMのアネトール存在下では、フルコナゾールの抗菌活性が増強され、最小阻害濃度は250ng/mlとなった。以上のことから、本発明の薬物排出抑制剤、又は本発明の抗菌活性増強剤により、抗菌剤の使用量が低減できる可能性が示唆された。
【実施例】
【0038】
また、同様の方法で、他のフェニルプロパノイド及び/又はその塩の検証を行った。結果を図3に示す。アネトールと同様に、プロピルアニソール及びオイゲノールに、薬物排出抑制による抗菌活性増強能がみられた。したがって、本発明の薬物排出抑制剤、又は本発明の抗菌活性増強剤により、抗菌剤の使用量が低減できる可能性が示唆された。
【実施例】
【0039】
2.2.Saccharomyces
cerevisiaeに対する抗菌活性増強能の検証
さらに、フェニルプロパノイド及び/又はその塩として、アネトールを含有する抗菌活性増強剤のSaccharomyces cerevisiaeに対する抗菌活性増強能の検証を行った。Saccharomyces cerevisiaeに対する抗菌剤であるドデカノールを用い、ドデカノールの抗菌活性の増強効果を、経時的に測定した。
【実施例】
【0040】
[方法]
アネトール又はフルコナゾールは、N,N—ジメチルホルムアミドに溶解して用いた。Malt液体培地に、(1)312.5μMアネトール、(2)250μMドデカノール、(3)312.5μMアネトール及び250μMドデカノール、になるようにそれぞれ添加した。コントロールは、N,N-ジメチルホルムアミドのみを添加した。振盪培養して得られたSaccharomyces cerevisiae ATCC 7754株を、600 nmでの濁度が0.1になるように懸濁した。コロニーカウント法により、培養4時間後、8時間後、24時間後、(3)についてはさらに48時間後、72時間後の細菌数を測定した。
【実施例】
【0041】
[結果]
結果を図4に示す。250μMドデカノール単独では、一時的に抗菌効果が見られるものの、培養4時間後から細菌数の増加がみられた。これは、薬物排出ポンプが発現しドデカノールに耐性を有する細菌が出現したことが原因として考えられる。また、312.5μMアネトール単独では抗菌効果はほとんどみられない。一方で、250μMドデカノール、312.5μMアネトールの共存在下では、ドデカノールの抗菌活性が増強されて細菌数が速やかに減少し、72時間まで細菌数の増加はみられなかった。以上のことから、本発明の抗菌活性増強剤により、抗菌剤の抗菌活性が増強されることが示された。
【実施例】
【0042】
また、同様の方法で、他のフェニルプロパノイド及び/又はその塩の検証を行った。アネトールと同様に、エストラゴール、プロピルアニソール、及びオイゲノールに薬物排出抑制による抗菌活性増強能がみられた。
【実施例】
【0043】
【表1】
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【実施例】
【0044】
2.3.Salmonella
entericaに対する抗菌活性増強能の検証
フェニルプロパノイド及び/又はその塩として、アネトールを含有する抗菌活性増強剤のSalmonella entericaに対する抗菌活性増強能の検証を行った。Salmonella entericaに対する抗菌剤であるトリデカノールを用い、0μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、及び200μg/mlの各濃度のアネトール存在下におけるトリデカノールの最小生育阻害濃度(以下、「MIC」とも呼称する。)を測定した。
【実施例】
【0045】
[方法]
アネトール又はトリデカノールは、N,N—ジメチルホルムアミドに溶解して用いた。NYG液体培地にアネトール又はトリデカノールを含むN,N—ジメチルホルムアミドを添加した。600 nmでの濁度が0.1になるようにSalmonella enterica subsp. enteric
(Salmonella choleraesuis) ATCC 35640株を懸濁した。37℃で16時間培養し、100μlずつを96穴ウェルに移して、595 nmでの培養液の濁りを測定し、生育阻害濃度を決定した。
【実施例】
【0046】
[結果]
結果を図5に示す。アネトールの非存在下におけるトリデカノールの最小生育阻害濃度は50 μg/mlであったが、アネトールの量が多くなるにつれてトリデカノールの抗菌活性が増強され、最小生育阻害濃度が低下した。例えば、100μg/mlのアネトール存在下におけるトリデカノールの最小生育阻害濃度は1.56μg/mlであった。以上のことから、本発明の薬物排出抑制剤、又は本発明の抗菌活性増強剤により、抗菌剤の使用量が低減できる可能性が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、薬物排出抑制剤や、抗菌活性増強剤、抗癌活性増強剤に利用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4