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明細書 :透明導電薄膜用ターゲット材およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5429752号 (P5429752)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年2月26日(2014.2.26)
発明の名称または考案の名称 透明導電薄膜用ターゲット材およびその製造方法
国際特許分類 C23C  14/34        (2006.01)
C04B  35/46        (2006.01)
C04B  35/64        (2006.01)
FI C23C 14/34 A
C04B 35/46 Z
C04B 35/64 E
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2010-126581 (P2010-126581)
出願日 平成22年6月2日(2010.6.2)
審査請求日 平成25年5月1日(2013.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】北川 裕之
【氏名】山田 容士
【氏名】久保 衆伍
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化チタン粉末にホウ素単体粉末またはホウ化チタン粉末を混合して焼結し、ホウ素のドープされた酸化チタン透明薄膜形成に際して使用するスパッタ用ターゲット材を製造するターゲット材製造方法。
【請求項2】
酸化チタンに対するホウ素の添加量を10mol%以下としたことを特徴とする請求項1に記載のターゲット材製造方法。
【請求項3】
焼結をパルス通電焼結によりおこなうことを特徴とする請求項1または2に記載のターゲット材製造方法。
【請求項4】
請求項1~3に記載の製造方法により得られるルチル型結晶のターゲット材であって、単位格子の体積が62.5×10-3nm~63.0×10-3nmであることを特徴とする透明導電薄膜用ターゲット材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電薄膜用ターゲット材に関し、特に、ITOに代替可能な酸化チタン系透明導電薄膜を工業的に形成可能なターゲット材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(プラズマディスプレイパネル)やELパネルなどに適用するために、透明電極の研究開発が進んでいる。実際、ITOやZnOの研究開発が進められITOを用いたものは製品化されている。
【0003】
一方で、ITOの原料であるInは希少金属であり、資源枯渇問題が深刻化しつつある。また、Inの健康への影響も指摘されている。このため、ITO代替の素材が求められている。
【0004】
ここで、ITOは10-4[Ω・cm]あるいはそれ以下の電気抵抗率を有するという導電性があるため、代替素材も同等の以上の性質を持つことが一つの要求値とされる。また、ZnOは耐湿性に劣りこれを応用した製品の製造工程に制約が生じやすい。
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ホウ素を添加(ドープ)したアナターゼ型酸化チタンを先に発明した(引用文献1)。この酸化チタンは、導電性についてはITOとほぼ同程度であり、また、耐湿性も有し、ITOやZnOよりも優れる特性を有するものである。
【0006】
ところで、引用文献1では、酸化チタンターゲットにホウ素チップを載置したものを用い、RFスパッタにより薄膜形成をおこなっている。従って、ホウ素チップの減少に従って、酸化チタンとホウ素の蒸発割合が異なって来たり、ホウ素チップが相対的に早くなくなってしまったりするので、工業的に量産しにくく、また、均質な製品品質を保ちにくいという問題点があった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2010-013309号公報
【0008】

【非特許文献1】一杉 太郎ほか「ガラス状におけるNbドープ二酸化チタン薄膜の透明伝導性」セラミックス 42(2007)No.1 pp32~36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、解決しようとする問題点は、ITOと同等以上の導電性を有する透明な酸化チタン系薄膜を工業的に製造するのに適したターゲット材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、酸化チタン粉末にホウ素単体粉末またはホウ化チタン粉末を混合して焼結し、ホウ素のドープされた酸化チタン透明薄膜形成に際して使用するスパッタ用ターゲット材を製造するターゲット材製造方法である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、酸化チタンに対するホウ素の添加量を10mol%以下としとことを特徴とする請求項1に記載のターゲット材製造方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、焼結をパルス通電焼結によりおこなうことを特徴とする請求項1または2に記載のターゲット材製造方法である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3に記載の製造方法により得られるルチル型結晶のターゲット材であって、単位格子の体積が62.5×10-3nm~63.0×10-3nmであることを特徴とする透明導電薄膜用ターゲット材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ITOと同等の導電性を有する透明な酸化チタン系薄膜を工業的に製造するのに適したターゲット材を提供することができ、従って、品質の良い酸化チタン系透明導電薄膜を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】二次イオン質量分析結果を添加原料ごとに示したグラフである。
【図2】ホウ素の添加量と単位格子の体積との関係を添加原料ごとに示したグラフである。
【図3】電気抵抗率と単位格子の体積との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、目的とする薄膜が酸化チタン(TiO)系であって「酸化」物であるため、これにドープする元素であるB(ホウ素)も通常は酸化物(B)の形態で混合添加すれば好適に含浸していき、良好なターゲット材を得られるものと当業者は想定する。実際、ITOも酸化スズを酸化インジウムに添加混合することによりそのターゲット材が製造される。また、本発明とは異なるアプローチであるものの、Nbをドープした酸化チタンのターゲット材についても酸化ニオブが用いられている。

【0017】
しかしながら、実際に酸化ホウ素を酸化チタンに添加混合して得られたターゲット材は、後述するように、たとえば電気抵抗率については、無添加の場合より悪くなるという結果であった。一般的にターゲット材の性質はそのまま転写されて成膜が進むため、ホウ素が酸化チタンにドープされた工業用のターゲット材は製造困難であることがわかった。

【0018】
更に、技術常識として、膜質は、高周波(RF)スパッタによる成膜より、直流(DC)スパッタによる成膜の方が良い傾向にあることが知られている。ここで、DCスパッタを用いる場合はターゲット材そのものに導電性が要求されるが、上述したように酸化ホウ素を添加混合したターゲット材は導電性に劣り、DCスパッタ法を事実上採用できないという難点がある。

【0019】
本発明は、本願発明者が鋭意検討の結果、これらの問題点を解決すべく成された発明である。実験は次の通りとした。
まず、ターゲット材の作製については、低温、短時間で高密度焼結体が得られるパルス通電焼結法を採用することとした。これは、パルス通電とした方が、空隙率が少なくなり、空間的にも均質なターゲット材とすることができるためである。

【0020】
酸化チタンの原料粉末に混合する原料粉末として、金属ホウ素(B)、ホウ化チタン(TiB)を採用した。また、酸化ホウ素(B)を混合したものも比較例として作製した。添加量は、金属ホウ素を添加する場合は、TiO-1mol%B(全体を100molとしたときの金属ホウ素Bの添加量が1molであるもの:以下表記方法おなじ)、TiO-5mol%B、ホウ化チタンの場合は、TiO-0.5mol%TiB、TiO-1mol%TiB、酸化ホウ素の場合は、TiO-1mol%B、TiO-5mol%Bとした。なお、焼結は真空中で行い、焼結温度1200℃で10分間保持した。

【0021】
まず、パルス通電焼結法により、ホウ素が酸化チタンに均質にドープされているかを評価した。評価は、二次イオン質量分析法によった。結果を図1に示す。図において、横軸は、焼結体表面からの距離であり、縦軸は検出されたホウ素の信号強度をチタンの信号強度で除して規格化してある。

【0022】
図から明らかなように、金属ホウ素を添加した場合であってもホウ化チタンを添加した場合であっても、ホウ素の信号強度は深さ方向に一定である。このことから、ホウ素が酸化チタンに均一にドープされていることが確認できる。一方、酸化ホウ素を添加した場合は、信号強度の値が小さくノイズも大きなことから、ほとんどドープされていないことが確認できる。

【0023】
また、二次イオン質量分析法の測定結果から、ホウ素の添加mol%と単位格子当たりの体積の関係を求めた。結果を図2に示す。図から明らかなように、金属ホウ素を添加した場合であってもホウ化チタンを添加した場合であっても、添加量に応じて体積が直線的に増えていることがわかる。よって、これらの添加原料を用いた場合には、添加mol%を調製することにより、所望のドープ量のターゲット材を得ることができるといえる。一方、酸化ホウ素の場合は、ほとんどドープされていないことが確認できた。

【0024】
なお、透明性の観点からBドープ量は10mol%以内であることが好ましい。これは、透明伝導膜の目安としては、通常の200nm程度の薄膜の場合、キャリア濃度の許容範囲は1.5×1021cm-3程度までとされるからである。Bドープ量が5mol%であるとキャリア濃度は1.7×1021cm-3となる。一方で、膜厚が100nm以下の極薄膜での応用の場合は、キャリア濃度の上限が拡大され、このときはBドープ量を10mol%まで増やしても必要な透明性は確保することができる。さらに、図2から、ターゲット材の単位格子(ルチル型)の体積は62.5×10-3nm~63.0×10-3nmであることが好ましいといえる。

【0025】
次に、得られた焼結体の電気抵抗率を測定した。結果を、図3に示す。図では、300Kにおける電気抵抗率を縦軸に、単位格子の体積を横軸としてプロットしている。図から、単位格子の体積が増加すると、すなわち、Bのドープ量に応じて、電気抵抗率は減少していくことが確認できる。金属ホウ素Bやホウ化チタンを用いたターゲット材の電気抵抗率は、ホウ素の添加量が1mol%以上であると10-3[Ω・cm]程度となって、これで成膜した透明薄膜も同程度の導電性となる。従って、本発明はITOと同等以上の性質を持つ薄膜を形成可能なターゲット材であることがわかる。なお、酸化ホウ素の場合は、かえって抵抗率が上昇していることがわかった。

【0026】
最後に、TiO-0.5mol%TiB、TiO-5mol%Bの二つの原料を用いてパルス通電焼結法により、直径100mm、厚み5mmのターゲット材を作製した。これらの焼結体の密度を求めたところ、理論密度に対する相対密度が98%にも達し、良好な焼結体であることを確認した。また、結晶形はルチル型であった。

【0027】
次に、これらのターゲット材を用いて、実際にRFスパッタ法にて成膜実験をおこなったところ、電気抵抗率は、10-3[Ω・cm]程度の透明性を有するアナターゼ型の酸化チタン薄膜が得られることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、ITO代替の透明電極等を製造できる工業用途向けのターゲット材を製造することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2