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明細書 :細胞内脂肪球イメージング方法、イメージング用蛍光剤およびイメージング蛍光剤製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5493149号 (P5493149)
公開番号 特開2011-252786 (P2011-252786A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成23年12月15日(2011.12.15)
発明の名称または考案の名称 細胞内脂肪球イメージング方法、イメージング用蛍光剤およびイメージング蛍光剤製造方法
国際特許分類 G01N  21/78        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
C09K  11/54        (2006.01)
C09K  11/08        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
FI G01N 21/78 C
G01N 21/64 F
G01N 21/64 E
C09K 11/54 CPB
C09K 11/08 Z
G01N 33/48 P
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2010-126562 (P2010-126562)
出願日 平成22年6月2日(2010.6.2)
審査請求日 平成25年5月1日(2013.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】秋吉 英雄
【氏名】藤田 恭久
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】谷垣 圭二
参考文献・文献 国際公開第2008/066138(WO,A1)
特表2009-531332(JP,A)
OBULIRAJ Senthilkumar et al,ZnO Nanoparticles for Bio-imaging Applications,ナノ学会大会講演予稿集,2007年 5月21日,Vol.5th,252
調査した分野 G01N 21/78
C09K 11/08
C09K 11/54
G01N 21/64
G01N 33/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させて得ることを特徴とする、細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤製造方法。
【請求項2】
酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする請求項1に記載の細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤製造方法。
【請求項3】
蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させた液を用いて細胞内脂肪球をイメージングすることを特徴とする細胞内脂肪球イメージング方法。
【請求項4】
酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする請求項3に記載の細胞内脂肪球イメージング方法。
【請求項5】
蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させたことを特徴とする細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤。
【請求項6】
酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする請求項5に記載の細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛系蛍光技術に関し、特に、細胞内脂肪球のイメージング方法、イメージング用蛍光剤およびイメージング用蛍光剤製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣由来の動脈硬化症や肥満(メタボリックシンドローム)に関して脂肪細胞の基礎的な研究が進められつつある。ここで、細胞内の脂肪球(脂肪滴)の染色には、色素染色法であるオイルレッドO染色、ズダン染色法などが知られている。また、脂肪球の染色に加えて、細胞核やアクチン等を同時に観察することが求められる場合があり、これを実現するために、蛍光抗体法を取り入れた蛍光イメージング技術が有効とされている。
【0003】
現在のところ、蛍光イメージングを実現する脂肪球染色キットとしては、プライマリーセル社製による製品が唯一知られており、これによれば、脂肪球部分が蛍光波長503nmで発光して観察可能となる。
【0004】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
従来の脂肪球蛍光イメージング技術は、蛍光剤を反応させるために要する時間が30分程度かかり、迅速な染色ないし蛍光観察ができないという問題点があった。また、安全性については、眼鏡や手袋の保護具が必要であり、人体への接触を避ける必要があり操作性に劣るという問題点があった。また、価格も高額であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許4072620号
【0006】

【非特許文献1】http://www.primarycell.com/hanbai/hoka_keikou.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、解決しようとする問題点は、安価に供給でき、染色時間も短く、安全性の高い脂肪球イメージング技術を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させて得ることを特徴とする、細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤製造方法である。

【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のイメージング用蛍光剤製造方法において、酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする

【0010】
請求項3に記載の発明は、蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させた液を用いて細胞内脂肪球をイメージングすることを特徴とする細胞内脂肪球イメージング方法である。

【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の細胞内脂肪球イメージング方法において、酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする

【0012】
請求項5に記載の発明は、蛍光発光する酸化亜鉛粒子を濃度60%~70%のイソプロピルアルコール溶液に分散させたことを特徴とする細胞内脂肪球のイメージング用蛍光剤である。

【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のイメージング用蛍光剤において、酸化亜鉛粒子の粒径が1nm~5μmであることを特徴とする

【0014】
以上の発明において、酸化亜鉛粒子は、脂肪球を良好にイメージングすべく1nm~5μm程度の粒径が好適であるが、蛍光発光をするものであれば特に限定されない。このような酸化亜鉛粒子は、例えば、本出願人が権利者である特許文献1にかかる公報に開示するように、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスを雰囲気ガスとし、その中でアーク放電を用いて亜鉛を加熱して蒸発させ、亜鉛蒸発量が過多となり酸素欠損の存在する粒子とならないように亜鉛蒸発量を抑制することにより得ることができる。


【0015】
この方法により得られる酸化亜鉛粒子は、条件を最適化することにより室温で375nm付近の強い蛍光を示す。また、亜鉛の蒸発量の制御により可視光で発光する酸化亜鉛粒子の生成も可能である。また、この方法によれば、亜鉛純度が純度99.99%以下の亜鉛を用いても製造できるため、本発明の蛍光剤を安価に提供することも可能となる。
【0016】
なお、蛍光剤は、さらに他の成分を含むことを妨げない。すなわち、ここでは必須成分ないし主成分を規定したものであり、脂肪球の蛍光イメージングを妨げないのであれば、適宜必要に応じて他の成分を含んでいても良いものとする。
【0017】
また、本発明は、イソプロピルアルコール水溶液濃度が60%~70%であると特に脂肪球の蛍光イメージングに適していることを発見したことによる発明である。なお、濃度が90%を超えると脂肪球がほぼ溶出してしまい、濃度が40%未満であると蛍光強度が相対的に小さくなり効率的な蛍光観測ができなくなるので、40%以上90%以下、好ましくは50%以上80%以下であって、特に好ましい濃度が60%以上70%以下の範囲である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、安価な酸化亜鉛粒子を用いることができるため、蛍光剤等を安価に供給でき、染色時間も短く、また、原料そのものの安全性が高いため蛍光剤等としても安全性の高い脂肪球イメージング技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】酸化亜鉛粒子のイソプロピルアルコール分散液の蛍光スペクトルを示した図である。
【図2】アカミミガメの肝細胞内の脂肪球がオイルレッドOにより染色されている様子を示した光学顕微鏡写真である。
【図3】アカミミガメの肝細胞内の脂肪球の蛍光イメージング結果を表した蛍光顕微鏡写真である。
【図4】トラフグの肝細胞内の脂肪球がオイルレッドOにより染色されている様子を示した光学顕微鏡写真である。
【図5】トラフグの肝細胞内の脂肪球の蛍光イメージング結果を表した蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<イソプロピルアルコール中の酸化亜鉛の蛍光特性>
まず、イソプロピルアルコール100%液に、特許文献1に示す本願発明者により先に技術開発された酸化亜鉛粒子(約100nmの単分散粒子)の分散液を作成し、これの蛍光特性を調べた。

【0021】
図1(a)は、蛍光顕微鏡の波長365nmの励起光を用いた発光スペクトルである。ここで、励起フィルタBP360-370nm,吸収フィルタBA420-460nm,ダイクロックミラー400nmとした。図1(b)は、共焦点レーザー用の波長405nmの励起光を用いた発光スペクトルである。何れも、可視光でも観察可能であることが確認できる。

【0022】
<予備実験1>
まず、アカミミガメの肝臓を使用して、肝細胞内に脂肪球があることを確認した。具体的には、門脈より4%パラホルムアルデヒドを環流して化学固定し、マイクロスライサーにて30μmの切片を作成した。これを、一般的な中性脂質の脂溶性染料であるオイルレッドOによる染色後、光学顕微鏡によって肝細胞内の脂肪球の局在を確認した。

【0023】
図2は、肝細胞内の脂肪球の染色結果の様子を示した光学顕微鏡写真である。図中のHは、肝細胞の核であって、その周囲に赤色に染色された脂肪球が多数確認できる。

【0024】
<実験1>
アカミミガメの肝細胞の脂肪球の存在および分布の様子がわかったので、次に、本発明の蛍光剤により蛍光イメージングが可能であるかを検討した。まず、イソプロピルアルコール100%液に、本願発明者により先に技術開発された酸化亜鉛粒子(特許文献1)の飽和溶液を作成した。これに水を添加して60%溶液の蛍光剤を作成した。

【0025】
予備実験1と同様に準備した肝臓の切片を60%イソプロピルアルコール水溶液に1分間浸し、その後、37度の蛍光剤に5分間浸漬して脂肪球に酸化亜鉛粒子を定着させた。次に60%イソプロピルアルコール水溶液で切片を2分間洗浄し、さらに蒸留水で1分間洗浄した。

【0026】
これをスライドグラスに載せ、グリセリンを滴下後、カバーガラスをかけて封入した。これを蛍光顕微鏡で観測した。このとき、励起波長365nmの紫外光を照射して、390nm~420nmを透過するフィルタを用いて蛍光を観測した。図3は、蛍光イメージング結果を表した蛍光顕微鏡写真である。図示したように脂肪球部分が蛍光を発しており、その様相は予備実験1で染色された結果と同じであることが確認できる。以上により、本発明の蛍光剤によれば、従来の30分程度かかる反応ステップを5分程度と著しく短縮でき、簡便に脂肪球を蛍光イメージングできることが確認できた。

【0027】
<予備実験2>
次に、異なる分布を示す脂肪球であってもイメージングが可能であるかを検討するため、トラフグの肝臓の脂肪球の染色をおこなうこととした。具体的には、トラフグの肝臓の門脈より4%パラホルムアルデヒドを環流して化学固定し、マイクロスライサーにて30μmの切片を作成した。これを、一般的な中性脂質の脂溶性染料であるオイルレッドOによる染色後、光学顕微鏡によって肝細胞内の脂肪球の局在を確認した。

【0028】
図4は、肝細胞内の脂肪球の染色結果の様子を示した光学顕微鏡写真である。図から明らかなように、アカミミガメの様相とは異なり大脂肪球(脂肪球)が肝小葉内にびまん性に多数存在し、これが赤色に染色されていることが確認できる。

【0029】
<実験2>
トラフグの肝細胞の脂肪球の存在および分布の様子がわかったので、次に、本発明の蛍光剤により、このようなびまん性の脂肪球でも蛍光イメージングが可能であるかを検討することとした。実験1と同様に酸化亜鉛粒子を分散させた60%イソプロピルアルコール水溶液の蛍光剤を作成した。

【0030】
実験1と同様に蛍光剤を反応させた後洗浄等をおこない、同じく同様に蛍光観察した。図5は、蛍光イメージング結果を表した蛍光顕微鏡写真である。なお、実験2では白黒写真による撮影とした。図から明らかなように、脂肪球部分の発光の様子は予備実験2の光学顕微鏡の観測結果と同様の様相であり適正に蛍光イメージングされていることが確認できた。
以上から、本発明の蛍光剤は、脂肪球であれば、その粗密や分布に依存せず好適にイメージングできるものであることがわかった。

【0031】
次に、他の溶媒による蛍光イメージングの可能性を検討した。試験片としては、予備実験2および実験2と同様のトラフグの肝臓細胞を用いた。
<実験3>
実験1,2と同じ酸化亜鉛粒子を、DMSO(ジメチルスルホキシド)60%水溶液に溶解したものを蛍光剤とし、実験2と同様の手順で肝臓切片に反応させた。これを蛍光顕微鏡で観察したが蛍光は観測されなかった。なお、結果は黒一色の写真であるので図示を省略する。

【0032】
<実験4>
実験1,2と同じ酸化亜鉛粒子を、100%イソプロピルアルコールに飽和分散させたもの(希釈なし)を蛍光剤とし、実験2と同様の手順で肝臓切片に反応させた。これを蛍光顕微鏡で観察したが蛍光は観測されなかった。なお、結果は黒一色の写真であるので図示を省略する。これは、アルコール濃度が高いため、脂質が溶出してしまったものと考えられた。

【0033】
<実験5>
他のアルコールを溶媒とすることとし、エチルアルコール、Tブチルアルコールを用いた酸化亜鉛粒子分散液を作成し、実験2と同様の手順で肝臓切片に反応させた。これを蛍光顕微鏡で観察したが蛍光は観測されなかった。なお、結果は黒一色の写真であるので図示を省略する。

【0034】
以上の結果から、酸化亜鉛粒子は、驚くべきことに、イソプロピルアルコールを媒介とした場合に、特異的に細胞内脂肪球への結合能力が発揮されることがわかった。

【0035】
<実験6>
次に、イソプロピルアルコール水溶液の好適な濃度を検討することとした。酸化亜鉛粒子を100%イソプロピルアルコールに飽和分散させたものを希釈して、50%希釈液、55%希釈液、75%希釈液、80%希釈液を調整した。これを上述の実験と同様な手法により、アカミミガメの肝臓切片を用いた実験をおこなった。蛍光観察をおこなったところ55%液と75%液では、微弱ながら観察が可能であったが、細胞内の十分な脂肪球の情報が得られないレベルであった。なお、50%液と80%液は、今回の励起波長では蛍光観察されなかった。以上から、濃度は60~70%とすることとした。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、生物・医学的な研究のみならず食品加工分野にも応用が可能であり、食品の品質管理および食品中の脂質の分布域を観察する利用法を挙げることができる。具体的には、乳製品、食肉、魚肉、加工食品などの工場では安全性が特に重要視される背景のもと、脂質の測定にはFT-IRなどの高価な装置が導入されている。しかしながら、脂質の分布の測定にはMRIを使用すれば、短時間で測定可能であるが、非常に高価な装置で管理が難しいなどの問題があり、工場では用いられてこなかった。本発明によれば簡便に分布や割合などを蛍光観察できるという利点を有する。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4