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明細書 :層状化合物及び超伝導体並びにそれらの製造方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5440879号 (P5440879)
登録日 平成25年12月27日(2013.12.27)
発行日 平成26年3月12日(2014.3.12)
発明の名称または考案の名称 層状化合物及び超伝導体並びにそれらの製造方法。
国際特許分類 C01G   1/00        (2006.01)
C01G  49/10        (2006.01)
FI C01G 1/00 ZAAS
C01G 49/10
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2010-520839 (P2010-520839)
出願日 平成21年7月9日(2009.7.9)
国際出願番号 PCT/JP2009/062500
国際公開番号 WO2010/007929
国際公開日 平成22年1月21日(2010.1.21)
優先権出願番号 2008184843
優先日 平成20年7月16日(2008.7.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年1月20日(2011.1.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】柳 博
【氏名】神谷 利夫
【氏名】松石 聡
【氏名】金 聖雄
【氏名】尹 錫奎
【氏名】平松 秀典
【氏名】平野 正浩
【氏名】野村 尚利
【氏名】神原 陽一
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】延平 修一
参考文献・文献 特開2007-320829(JP,A)
国際公開第2006/098432(WO,A1)
岡田宏成 他,オキシニクタイド化合物LaFe(O1-xFx)とSmFeAsOの圧力効果,第49回高圧討論会講演要旨集 高圧力の科学と技術,日本高圧力学会,2008年11月 1日,第18巻 特別号,Page 166
D.JOHRENDT et al.,Pnictide Oxides:A New Class of High-Tc Superconductors,Angewandte Chemie International Edition,2008年 6月16日,Vol.47, No.26,Pages4782-4784
神原陽一 他,Fe系層状超伝導体LaOFePの電気伝導特性と磁性,日本物理学会講演概要集,日本物理学会,2007年 8月21日,第62巻第2号(第62回年次大会)第3分冊,Page609(22pWH-14)
調査した分野 C01G 1/00-23/08

特許請求の範囲 【請求項1】
化学式AF(TM)Pn(ただし、AがCa,Srの少なくも一種であり、TMがNi又
はFeであり、PnがP,As,Sbの少なくとも1種である。)で示され、ZrCuS
iAs型(空間群P4/nmm)の結晶構造を有することを特徴とする層状化合物。
【請求項2】
請求項1記載の層状化合物に3価の陽イオンとしてLa,Nd,又はGdイオンをA元素
に対して8~30原子%ドープしたことを特徴とする超伝導体。
【請求項3】
請求項1記載の層状化合物に2価の陰イオンとしてOをA元素に対して5~40原子%ド
ープしたことを特徴とする超伝導体。
【請求項4】
原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、及びA元素のフッ素化合
物粉末を混合し、混合粉末を不活性雰囲気又は真空中、900~1200℃で焼結するこ
とを特徴とする請求項1に記載の層状化合物の製造方法。
【請求項5】
原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、A元素のフッ素化合物粉
末、及び3価の陽イオンとしてLa,Nd,又はGdイオンの元素粉末又は3価の陽イ
オンの元素のフッ素化合物粉末を混合し、混合粉末を不活性雰囲気又は真空中、900~
1200℃で焼結することを特徴とする請求項に記載の超伝導体の製造方法。
【請求項6】
原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、A元素のフッ素化合物粉
末を混合し、さらに、A元素の酸化物粉末を追加して混合し、混合粉末を不活性雰囲気又
は真空中、900~1200℃で焼結することを特徴とする請求項に記載の超伝導体の
製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属元素であるNi又はFeを骨格構造に有する層状化合物及び該化合物
からなる超伝導体並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温超電導体(ペロブスカイト型銅酸化物)が発見されて以来、室温超伝導体を目指した
材料の研究開発が活発に行われ、超伝導転移温度(Tc)が100Kを超える超伝導化合物
が見出された。
【0003】
ペロブスカイト型銅酸化物の超伝導発現機構についても理解が進んでいる(例えば、非特
許文献1、2)。また、銅以外の遷移金属イオンを含む化合物、又は新規化合物として、
SrRuO(Tc=0.93K)(非特許文献3)、二ホウ化マグネシウム(Tc=
39K)(非特許文献4、特許文献1)、Na0.3CoO2・1.3HO(Tc=5
K)(非特許文献5、特許文献2,3)などが新たに見出された。
【0004】
伝導帯バンド幅に比べて、伝導電子間の相互作用が大きな強相関電子系化合物は、d電子
の数が特定の値の場合に、高い超伝導転移温度を有する超伝導体となる可能性が高いこと
が知られている。強相関電子系は、遷移金属イオンを骨格構造に有する層状化合物で実現
されている。こうした層状化合物の多くは、電気伝導性はモット絶縁体で、電子のスピン
同士には、反平行に配列しようとする、反強磁性相互作用が作用している。
【0005】
しかし、例えば、ペロブスカイト型銅酸化物であるLaCuOでは、La3+イオン
サイトにSr2+イオンを添加したLa2-xSrCuOにおいて、xの値が0.0
5から0.28の範囲では、金属伝導を示す遍歴電子状態となり、低温で超伝導体状態が
観測され、x=0.15で最高のTc=40Kが得られている(非特許文献6)。
【0006】
最近、本発明者らは、Feを主成分とする新しい強電子相関化合物、LaOFeP及びL
aOFeAsが超電導体であることを見出し、特許出願した(特許文献4,非特許文献7
)。強電子相関系では、d電子の数が特定の値のとき、金属伝導を示す遍歴電子状態とな
り、温度を低温にすると、ある特定温度(超伝導転移温度)以下で、超伝導状態へ転移す
る。さらに、この超伝導体の転移温度は伝導キャリアの数によって5Kから40Kまで変
化する。また、Hg、GeNbなどの旧来の超電導体が、結晶格子の熱揺らぎ(格子振
動)に基づく電子対(クーパー対)が、超伝導発生機構(BCS機構)とされているのに
対して、強電子相関系での超伝導は、電子スピンの熱揺らぎに基づく電子対が、超伝導発
生機構とされている。
【0007】
本発明者らは、さらに、強電子相関化合物であるLn(TM)OPn化合物[Lnは、Y
及びランタノイド元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho
,Er,Tm、Yb,Lu)の少なくとも一種であり、TMは、遷移金属元素(Fe,R
u,Os,Ni,Pd,Pt)の少なくとも一種であり、Pnは、プニコゲン元素(N,
P,As,Sb)の少なくとも一種である。]からなる超伝導体を見出し、特許出願した
(特許文献5、非特許文献8~10)。
【0008】
また、本発明者らは、A(TM)(Pn)化合物 [Aは、長周期型周期表の2族元素
の少なくとも1種、TMは、Fe,Ru,Os,Ni,Pd,Ptから選ばれる遷移金属
元素の少なくとも1種、Pnは、長周期型周期表の15族元素(プニコゲン元素)の少な
くとも1種である。]で、超伝導体を見出し、特許出願した(特許文献6、非特許文献11
)。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】津田惟雄、那須奎一郎、藤森敦、白鳥紀一 改訂版「電気伝導性酸化物」,pp.350~452,裳華房,(1993)
【非特許文献2】前川禎通,応用物理,Vol.75,No.1,pp.17-25,(2006)
【非特許文献3】Y.Maeno, H.Hashimoto,K.Yoshida, S.Nishizaki, T.Fujita, J.G.Bednorz, F.Lichtenberg, Nature,372,pp.532-534(1994)
【非特許文献4】J.Nagamatsu, N. Nakagawa, T. Muranaka,Y.Zenitani, J.Akimitsu,Nature,410,pp.63-64,(2001)
【非特許文献5】K.Takada, H.Sakurai,E.Takayama-Muromachi, F.Izumi,R.A.Dilanian,T.Sasaki, Nature,422,pp.53-55,(2003)
【非特許文献6】J.B.Torrance et al., Phys.Rev.,B40,pp.8872-8877,(1989)
【非特許文献7】Y.Kamihara et al.,J.Am.Chem.Soc.,128(31),pp.10012-10013,(2006)
【非特許文献8】T. Watanabe et al.,Inorg.Chem.,46(19),pp.7719-7721,(2007)
【非特許文献9】Y.Kamihara et al.,J.Am.Chem.Soc.,130(11),pp.3296-3297,(2008)
【非特許文献10】H.Takahashi et al.,Nature,453,pp.376-378(2008)
【非特許文献11】柳 博 他、2008年春季第55回応用物理学関係連合講演会予稿集、288頁、2008年3月27日
【0010】

【特許文献1】特開2002-211916号公報
【特許文献2】特開2004-262675号公報
【特許文献3】特開2005-350331号公報
【特許文献4】特開2007-320829号公報
【特許文献5】特願2008-035977(WO2009/104611)
【特許文献6】特願2008-082386(特開2009-234847号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
超伝導技術の応用を飛躍的に広げるために、室温超伝導体の発見が強く望まれている。層
状ペロブスカイト型銅酸化物において、転移温度が100Kを超える高温超電導体が見出
されているが、まだ、室温超伝導体は見出されていない。室温超伝導体を開発するための
一つの方策は、ペロブスカイト型銅酸化物に代えて、遷移金属元素を骨格構造に有する新
しい層状化合物群を見出し、電子濃度、格子定数などの物質パラメータを、転移温度の高
温化を目指して最適化し、高温超電導体を実現し得る化合物組成を発見することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、AF(TM)Pnで示される層状化合物において、超伝導体を実現した。
本発明の超伝導体は、化学式AF(TM)Pnで示される非酸化物系層状化合物によって
提供される。この化学式中Aは、長周期型周期表の2族元素であるCa,Srの少なくと
も1種、Fは、フッ素イオン、TMは、Ni又はFeであり、Pnは、長周期型周期表の
15族元素(プニコゲン元素:pnictogen)であるP,As,Sbの少なくとも1種であ
る。
【0013】
前記層状化合物に3価の陽イオンをドープすることにより、AF層に電子を発生させるこ
とができ、さらに、該電子は、(TM)Pn層に移動する。また、前記層状化合物のFサ
イトに2価の陰イオンをドープすることにより、ホールが発生し、該ホールは、(TM)
Pn層に移動し、該層のホール濃度を変化させる。
【0014】
すなわち、本発明は、(1)化学式AF(TM)Pn(ただし、AがCa,Srの少なく
も一種であり、TMがNi又はFeであり、PnがP,As,Sbの少なくとも1種であ
る。)で示されることを特徴とする層状化合物、である。
【0015】
この層状化合物は、ZrCuSiAs型(空間群P4/nmm)の結晶構造を有する。
【0016】
また、本発明は、()上記(1)の層状化合物に3価の陽イオンとしてLa,Nd,又
はGdイオンをA元素に対して8~30原子%ドープしたことを特徴とする超伝導体、で
ある。
【0017】
また、本発明は、()上記(1)の層状化合物に2価の陰イオンとしてOをA元素に対
して5~40原子%ドープしたことを特徴とする超伝導体、である。
【0018】
また、本発明は、()原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、
及びA元素のフッ素化合物粉末を混合し、混合粉末を不活性雰囲気又は真空中、900~
1200℃で焼結することを特徴とする上記(1)の層状化合物の製造方法、である。
【0019】
また、本発明は、()原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、
元素のフッ素化合物粉末、及び3価の陽イオンとしてLa,Nd,又はGdイオンの元
素粉末又は3価の陽イオンの元素のフッ素化合物粉末を混合し、混合粉末を不活性雰囲
気又は真空中、900~1200℃で焼結することを特徴とする上記()の超伝導体の
製造方法、である。
【0020】
また、本発明は、()原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の粉末、
A元素のフッ素化合物粉末を混合し、さらに、A元素の酸化物粉末を追加して混合し、混
合粉末を不活性雰囲気又は真空中、900~1200℃で焼結することを特徴とする上記
)の超伝導体の製造方法、である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、公知の高温超伝導体と異なり、特定の遷移金属を含むプニクタイドからなる新
しい化合物群のTc=20K超の第2種超伝導体を提供する。この化合物超伝導体は、原
料に酸化物を含まないので、焼成雰囲気の湿度に対する許容度が大きく、また、原料を混
合して該化合物を合成する際に焼成温度を低くでき、さらに、高圧合成法によらないでも
該化合物を合成できるので安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の超伝導体を提供する層状化合物の結晶構造のモデル図である。
【図2】実施例1の合成例1で得られた焼結体のX線回折パターンである。
【図3】実施例1の合成例1で得られた焼結体の電気抵抗の温度変化を示すグラフである。
【図4】実施例1の合成例1で得られた焼結体の磁気帯磁率の温度変化を示すグラフである。
【図5】実施例1で得られた非ドープ及びLaをドープした焼結体の電気抵抗の温度変化を示すグラフである。
【図6】実施例1で得られたLaを10原子%ドープした焼結体の磁化率の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、本発明の超伝導体を提供するAF(TM)Pnで示される層状化合物の結晶構造
モデルを示す。AF(TM)Pnで示される化合物は、伝導層の(TM)Pn層と絶縁層
のAF層とが交互に重なる構造である。AF層から(TM)Pn層に、一部電子が移動し
ており、AF層はプラスに、(TM)Pn層はマイナスに帯電しており、両層間はイオン
結合している。(TM)Pn層は、(TM)(Pn)4四面体が陵結合した構造であり、
2次元性が強い。

【0024】
また、(TM)の3d電子は遍歴性が大きく、自由イオンに比べて、磁気モーメントが著
しく減少している。2次元性が強いこと及び磁気モーメントが減少していることは、超伝
導発現に有利に作用する。AF層にフッ素イオンが含まれているために、化学当量比組成
を作りやすい。また、Aは、2価の金属(陽)イオンであるので、Aの一部をLa3+
ど3価の陽イオンで置換することで、容易に電子を発生させることができる。また、Fサ
イトに2価の陰イオンとしてOをドープすることで、容易にホールを発生させることがで
きる。

【0025】
化学式AF(TM)Pnで示される化合物の長周期型周期表の2族元素のAとしては、B
e,Mg,Ca,Sr,Ba,Raが挙げられる。これらの2族元素のなかで、Ca,S
r及びそれらの混晶は、両金属の電気陰性度の差から電子を発生することができ、また、
全組成領域で混晶を形成する点で好ましい。TMは遷移金属元素を意味し、Fe,Ru,
Os,Ni,Pd,Ptの遷移金属元素は、d電子数が偶数で、磁気モーメントをほぼ零
にできるという共通の特徴を有しているが、Fe,Niは、主量子数が、最小(3)であ
り、電子の有効質量が大きくならない点でTM元素として好ましい。

【0026】
Pnは、長周期型周期表の15族元素、すなわち、N,P,As,Sb,Biであり、こ
れらの元素はプニコゲン元素と言われる。Pnとしては、P,As,Sbの少なくとも1
種が好ましい。化学式AF(TM)Pnで示される化合物の具体例としては、SrFFe
As,CaFFeAs,(SrCa)FFeAs等が挙げられる。

【0027】
また、化学式AF(TM)Pnで示される化合物のA金属サイトに3価の陽イオンをドー
プすることにより、AF層に電子が発生し、該電子が(TM)Pn層に移動する。(TM
)Pn層の電子濃度が閾値を超えると超伝導状態が発生する。超伝導状態が出現する3価
陽イオンの濃度は、A金属に対して8~30原子%程度、好ましくは10~20原子%程
度であり、15原子%程度で超伝導転移温度(Tc)が最も高い温度となる。

【0028】
3価の陽イオンとしては、長周期型周期表の3族元素のSc、Y及びランタノイド(原子
番号57~71)元素イオンが挙げられる。ランタノイド元素の中でも、La,Nd,G
dはA金属イオンとイオン半径が近い点で好ましい。具体的化合物として、例えば、Sr
FFeAs:La,SrFFeAs:Nd,(SrCa)FFeAs:Gd,Sr(FO
)FeAs等が挙げられる。さらに、3価の陽イオンとして、長周期型周期表の13族元
素のB,Al,Ga,In,Tl元素イオンも使用できる。

【0029】
逆に、Fイオンを2価の陰イオンで置換した場合、例えば、酸素で置換したSr(FO)
FeAs等では、AF層にホールが発生し、該ホールは、(TM)Pn層に移動する。(
TM)Pn層のホール濃度が閾値を超えると超伝導状態が発生する。超伝導状態が出現す
る2価の陰イオンの濃度は、A金属に対して5~40原子%程度、好ましくは10~30
原子%程度であり、20原子%程度で超伝導転移温度(Tc)が最も高い温度となる。

【0030】
また、本発明の層状化合物は、原料として、A元素の粉末、TM元素の粉末、Pn元素の
粉末、及びA元素のフッ素化合物粉末、好ましくは無機フッ化物粉末を混合し、混合粉末
を不活性雰囲気又は真空中で加熱焼結してAF(TM)Pnの多結晶焼結体を合成するこ
とにより製造できる。例えば、SrFFeAsの合成では、Sr,Fe,As,SrF
の各粉末をSr:F:Fe:Asの原子比が1:1:1:1:となるように乾式混合し、
混合物を不活性雰囲気又は真空中、900~1200℃で、24~48時間程度加熱して
焼結する。原料及び焼成雰囲気中に水分が含まれていると異相が多くなるので、水分は可
能な限り除去することが必要である。焼結により密度80%程度の焼結体が得られる。焼
結体中には、50μm角程度の薄片単結晶が多く含まれている。

【0031】
焼結は、比較的低温で仮焼成し、温度を上げて焼結すると異相を少なくすることができる
点で好ましい。また、超伝導性のある完全なAF(TM)Pnの相にするためには、焼結
体を一度粉砕して粉末にし、これを再度焼結すると単一相を得ることができる点で好まし
い。焼結反応式は、下記のように示される。
Sr+2Fe+2As+SrF→2SrFFeAs

【0032】
本発明の層状化合物に3価陽イオンとしてLa,Nd,又はGdイオンをドープするには
3価の陽イオンの元素の金属粉末又は3価の陽イオンの元素のフッ化物、例えば、
LaF、をA金属に対して3価陽イオンのLaが8~30原子%程度となるように原
料粉末に追加し、混合して上記と同じ加熱反応プロセスを行なえばよい。

【0033】
本発明の層状化合物に2価の陰イオンとしてOをドープするには、A元素の酸化物粉末を
原料粉末に追加し、混合して上記と同じ加熱反応プロセスを行なえばよい。例えば、A金
属がCaの場合、CaO粉末を、Ca金属に対して2価陰イオンのOが5~40原子%程
度となるように原料粉末に追加する。
【実施例1】
【0034】
次に、実施例により、本発明を詳細に説明する。
<SrFFeAsの合成例1>
Sr(粒径10~500μm)、Fe(粒径1~100μm)、As(粒径1~100μ
m)、SrF(粒径1~100μm)の各粉末をSr:F:Fe:Asの原子比が1:
1:1:1:となるように酸素濃度0.1ppm未満、湿度0.01%程度のグローブボ
ックス中で乳鉢を用いて乾式混合した。約1gの混合物を真空中、400℃で12時間仮
焼し、次いで、1000℃で12時間加熱して焼結した。焼結体を粉砕して粒径5~10
0μmの粉末とし、得られた粉末を封管し、真空中、1000℃で12時間焼結した。
【実施例1】
【0035】
得られた焼結体は、図2に示すX線回折(XRD)パターンから、SrFFeAsである
ことが示された。図3に、上記で得られたSrFFeAsの電気抵抗を、銀ペーストで電
極を形成し、四端子法により、2Kから300Kの範囲で測定した結果を示す。また、図
4に、磁気帯磁率の温度変化を示す。170K付近に電気抵抗の低下が見られるが超伝導
状態が確認できない。
【実施例1】
【0036】
<LaドープSrFFeAsの合成>
Laを上記合成例1の原料混合粉末に対して、La金属粉末(粒径10~500μm)を
、Sr金属に対して5原子%、10原子%、20原子%ドープした3種類の混合粉末を作
成し、上記合成例1と同じ条件で焼成し、3種類のSrFFeAs:La焼結体を合成し
た。
【実施例1】
【0037】
図5に、上記で得られたLaドープSrFFeAs焼結体の電気抵抗を、銀ペーストで電
極を形成し、四端子法により、2Kから300Kの範囲で測定した結果を示す。Laを1
0原子%及び20原子%含む試料では、30K付近で、急激な電気抵抗の低下が確認でき
た。また、図6に、Laを10原子%ドープしたSrFFeAs焼結体の磁化率の温度変
化を示す。この焼結体は、超伝導転移温度が約30Kであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の非酸化物系層状化合物は、従来の酸化物超伝導体とは異なり、原料に酸化物を含
まないために、焼成雰囲気の湿度に対して強く、かつ焼成温度が低いために製造が容易な
Tc=20K超の第2種超伝導体を提供することができる。この超伝導体は、循環型冷凍
機と組み合わせて、小型モータ線材、NMR—CT用磁石などへの用途がある。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5