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明細書 :電解質メモリ素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5717096号 (P5717096)
公開番号 特開2013-030527 (P2013-030527A)
登録日 平成27年3月27日(2015.3.27)
発行日 平成27年5月13日(2015.5.13)
公開日 平成25年2月7日(2013.2.7)
発明の名称または考案の名称 電解質メモリ素子
国際特許分類 H01L  27/105       (2006.01)
H01L  27/28        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  45/00        (2006.01)
H01L  49/00        (2006.01)
H01L  51/30        (2006.01)
G11C  13/00        (2006.01)
FI H01L 27/10 448
H01L 27/10 449
H01L 45/00 Z
H01L 49/00 Z
H01L 29/28 250Z
G11C 13/00 230
G11C 13/00 235A
請求項の数または発明の数 23
全頁数 20
出願番号 特願2011-163951 (P2011-163951)
出願日 平成23年7月27日(2011.7.27)
審査請求日 平成26年7月15日(2014.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】中野 匡規
【氏名】畑野 敬史
【氏名】小野 新平
【氏名】岩佐 義宏
【氏名】渋谷 圭介
【氏名】川崎 雅司
【氏名】十倉 好紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100130960、【弁理士】、【氏名又は名称】岡本 正之
審査官 【審査官】加藤 俊哉
参考文献・文献 特開2006-032898(JP,A)
特開2010-232562(JP,A)
特開2010-232657(JP,A)
特開2010-092971(JP,A)
米国特許出願公開第2004/0245582(US,A1)
国際公開第2007/026509(WO,A1)
調査した分野 H01L 27/105
G11C 13/00
H01L 27/28
H01L 45/00
H01L 49/00
H01L 51/05
H01L 51/30
特許請求の範囲 【請求項1】
二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層が一の面の上に形成された基板を含む第1基体であって、該基板は、該メモリ層の面の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第1電極部と、該第1電極部から離間され該メモリ層の面の別の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第2電極部とを有している、第1基体と、
該第1基体に対向する面の上に第3電極部を有する対向基板を含む第2基体と、
互いに対向して配置されている前記第1基体と該第2基体とに挟まれ、前記第1電極部と前記第2電極部との間において前記メモリ層に近接している電解質層と
を備えており、
前記電解質層は、前記第1電極部または前記第2電極部のいずれかまたは両方と前記第3電極部との間に印加された電圧に応じた電界を前記メモリ層に作用させて前記メモリ層の電気抵抗を変化させるものであり、
前記第1電極部と前記第2電極部とを通じ前記メモリ層の電気抵抗の状態が読み出され
メモリ素子。
【請求項2】
二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層が一の面の上に形成された基板を含む第1基体であって、該基板は、該メモリ層の面の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第1電極部と、該第1電極部から離間され該メモリ層の面の別の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第2電極部と、該メモリ層から電気的に分離されて前記基板の前記一の面の側に位置している第3電極部とを有している、第1基体と、
対向基板を含む第2基体と、
互いに対向して配置されている前記第1基体と該第2基体とに挟まれ、前記第1電極部と前記第2電極部との間において前記メモリ層に近接し、前記第3電極部に近接している電解質層と
を備えており、
前記電解質層は、前記第1電極部または前記第2電極部のいずれかまたは両方と前記第3電極部との間に印加された電圧に応じた電界を前記メモリ層に作用させて前記メモリ層の電気抵抗を変化させるものであり、
前記第1電極部と前記第2電極部とを通じ前記メモリ層の電気抵抗の状態が読み出され
メモリ素子。
【請求項3】
前記メモリ層の組成が
1-x2-δ
であり、ここで、AはW、Zr、Nb、Mo、Hf、およびTaからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0≦x≦0.1の一の数であり、δは0≦δ≦0.1の一の数である
請求項1または請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項4】
前記基板が、二酸化バナジウムの結晶構造と同じ、または二酸化バナジウムの結晶構造に近い結晶構造を有する材料である
請求項1または請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項5】
前記基板の結晶構造がルチル構造である
請求項4に記載のメモリ素子。
【請求項6】
前記基板が、二酸化チタン(TiO)、二酸化錫(SnO)、またはこれらの固溶体からなるルチル構造の物質である
請求項5に記載のメモリ素子。
【請求項7】
前記基板の結晶構造が二酸化バナジウムに近い結晶構造であり、
前記基板が、酸化アルミニウム(Al)、二酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(Ti)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化セリウム(Ce)から選択される一の物質またはこれらから選択される少なくとも二の物質の固溶体からなる物質である
請求項4に記載のメモリ素子。
【請求項8】
前記対向基板が、二酸化シリコン(SiO)を含む無機ガラス、または、高分子膜材料である
請求項1または請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項9】
前記電解質層がイオン性液体を含むものである
請求項1または請求項2に記載のメモリ素子。
【請求項10】
前記電解質層が、
イオン性液体を含む電解質と、
水(HO)、非水系低分子溶媒群、および高分子溶媒群からなる溶媒群から選択される少なくとも1種の溶媒と
からなるものである
請求項9に記載のメモリ素子。
【請求項11】
前記電解質層がイオン性液体からなるものである
請求項9に記載のメモリ素子。
【請求項12】
前記電解質層が、
リチウム(Li)イオン、ナトリウム(Na)イオンを含むカチオン分子群から選択される少なくとも1種のカチオン分子と、
アニオン分子群から選択される少なくとも1種のアニオン分子と
を含むものである
請求項9に記載のメモリ素子。
【請求項13】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ピペリジニウム系、ピロリジニウム系、ピラゾリウム系、およびホスホニウム系のいずれか一の分子群である
請求項12に記載のメモリ素子。
【請求項14】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記イミダゾリウム系の分子群であり、
該イミダゾリウム系の分子群が、
1,3-ジメチルイミダゾリウム(C)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(C11)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム(C13)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(C15)、1-ヘキル-3-メチルイミダゾリウム(C1019)、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム(C1223)、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム(C1427)、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム(C1631)、1-メチル-3-テトラデシルイミダゾリウム(C1835)、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウム(C2039)、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウム(C2243)、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム(C12)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C13)、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム(C15)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C17)、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C1121)、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム(C11)、1-アリル-3-エチルイミダゾリウム(C13)、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウム(C1017)、1,3-ジアリルイミダゾリウム(C13)、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム(C1113)、1-(2-ハイドロケシル)-3-メチルイミダゾリウム(C11)、および1,3-ジデシル-2-メチルイミダゾリウム(C2447
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項15】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記ピリジニウム系の分子群であり、
該ピリジニウム系の分子群が、
1-エチルピリジニウム(C10N)、1-プロピルピリジニウム(C12N)、1-ブチルピリジニウム(C14N)、1-ヘキシルピリジニウム(C1118N)、1-エチル-3-メチルピリジニウム(C12N)、1-エチル-4-メチルピリジニウム(C12N)、1-プロピル-3-メチルピリジニウム(C14N)、1-プロピル-4-メチルピリジニウム(C14N)、1-ブチル-2-メチルピリジニウム(C1016N)、1-ブチル-3-メチルピリジニウム(C1016N)、1-ブチル-4-メチルブチルピリジニウム(C1016N)、N-(3-ハイドロキシプロピル)ピリジニウム(C12NO)、および1-エチル-3-ハイドロキシメチルピリジニウム(C12NO)
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項16】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記アンモニウム系の分子群であり、
該アンモニウム系の分子群が、
テトラメチルアンモニウム(C12N)、テトラエチルアンモニウム(C20N)、テトラプロピルアンモニウム(C1228N)、テトラブチルアンモニウム(C1636N)、テトラヘキシルアンモニウム(C2452N)、トリエチルメチルアンモニウム(C18N)、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム(C16N)、ブチルトリメチルアンモニウム(C18N)、エチルジメチルプロピルアンモニウム(C18N)、トリブチルメチルアンモニウム(C1330N)、メチルトリオクチルアンモニウム(C2554NO)、2-ハイドロケシルアンモニウム(CN)、コリン(C14NO)、およびN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メソケシル)アンモニウム(C20NO)
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項17】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記ピペリジニウム系の分子群であり、
該ピペリジニウム系の分子群が、
1-メチル-1-プロピルピペリジニウム(C20N)、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム(C1022N)、および1-メソケシル-1-メチルピペリジニウム(C1022NO)
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項18】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記ピロリジニウム系の分子群であり、
該ピロリジニウム系の分子群が、
1-1-ジメチルピロリジニウム(C14N)、1-エチル-1-メチルピロリジニウム(C16N)、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム(C18N)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム(C20N)、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム(C1124N)、および1-メソケシル-1-メチルピロリジニウム(C18NO)
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項19】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記ピラゾリウム系の分子群であり、
該ピラゾリウム系の分子群が、
1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C15)、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C17)および1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C1019
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項20】
前記イオン性液体の前記カチオン分子群が前記ホスホニウム系の分子群であり、
該ホスホニウム系の分子群が、
テトラメチルホスホニウム(C12P)、テトラエチルホスホニウム(C20P)、テトラプロピルホスホニウム(C1228P)、テトラブチルホスホニウム(C1636P)、テトラオクチルホスホニウム(C3268P)、トリエチルペンチルホスホニウム(C1126P)、トリエチルオクチルホスホニウム(C1432P)、トリブチルメチルホスホニウム(C1330P)、トリイソブチルメチルホスホニウム(C1330P)、トリブチルエチルホスホニウム(C1432P)、トリブチルテトラデキルホスホニウム(C2656P)、およびトリヘキシルテトラデキルホスホニウム(C3268P)
のいずれか一の群である
請求項13に記載のメモリ素子。
【請求項21】
前記イオン性液体の前記アニオン分子群が、
ブロマイド(Br)、クロライド(Cl)、アイオダイド(I)、テトラフルオロボレイト(BF)、過塩素(ClO)、ヘキサフルオロホスフェイト(PF)、フォルメイト(HCO)、アセテイト(CHCO)、デカノネイト(C19CO)、トリカノメタン((CN)C)、ラクテイト(C)、ジカナミド((CN)N)、トリフルオロアセテイト(CFCO)、トリフルオロメチルサルフォネイト(CFSO)、ペルフルオロブタンサルホネイト(CSO)、ノナフルオロブタンサルホニルイミド((CSON)、フルオロサルフォニルイミド((FSON)、トリフルオロメチルサルフォニルイミド((CFSON)、ペンタフルオロエタンスホニルイミド(CFCFSON)、チオカネイト(SCN)、ハイドロゲンサルフェイト(HSO)、ノナフルオロブタンスルフォニルイミド((CSON)、メタンサルフオネイト(CHSO)、メチルサルフエイト(CHOSO)、n-ブチルサルフェイト(n-COSO)、エチルサルフェイト(COSO)、n-ヘキシルサルフェイト(n-C13OSO)、n-オクチルルサルフェイト(n-C17OSO)、2-(2-メソキセスオキシイ)、エチルサルフェイト(CH(OCOSO)、p-トルエンスルフオネイト(CS)、ドデシルベンゼンサルフォネイト(C1629SO)、2,2,4-トリメチルペンチルホスフィネイト(C1634P)、ジカナマイド((CN)N)、ジハイドロジェンホスフェイト(HPO)、ジエチルフォスフェイト((CO)PO)、トリフルオロホスフェイト((CPF)、オクサレイト(2-)-オーオーボレイト(CBO)、およびジメチルホスフエイト((CHPO
のいずれか一の群である
請求項12に記載のメモリ素子。
【請求項22】
前記溶媒群が前記非水系低分子溶媒群であり、
該非水系低分子溶媒群が、
プロピレンカーボネート((PC)C)、エチレンカーボネート(C)、ジエチルカーボネート(C10)、ジメチルカーボネート(C)、γ—ブチロラクトン(C)、スルホラン(CS)、N,N-ジメチルホルムアミド(CNO)、ジメチルスルホキシド(COS)、およびアセトニトリル(CHCN)
のいずれか一の群である
請求項10に記載のメモリ素子。
【請求項23】
前記溶媒群が前記高分子溶媒群であり、
該高分子溶媒群が、
ポリエチレンオキシド([CH-CH-O])、ポリメチルメタクリレート([CH-C(CH)(COOCH)])、ポリアクリロニトリル([CH-CH(CN)])、ポリフッ化ビニリデン([CF-CH)、およびポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体([(CF-CH-(CF-CF(CF))1-x
のいずれか一の群である
請求項10に記載のメモリ素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はメモリ素子に関する。さらに詳細には、本発明は、電解質を用い二酸化バナジウム系材料の電気抵抗を制御するメモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機デバイスとして有機発光デバイスが実用に供されている。これを突破口にして低電圧駆動、低消費電力、形状が柔軟な特性を有するなどの利点が認められ有機デバイスの開発が急速に進みつつある。現在、有機デバイスとして発光デバイス以外に電界効果型トランジスタなどの発明が提案されている(例えば、特許文献1「有機電界効果トランジスタ」、特許文献2「有機トランジスタの製造方法」)。またイオン性液体を使った有機デバイスも提案されている(例えば、特許文献3「イオン性液体組成物及びそれを用いた電気化学デバイス」)。これらの文献に開示されるものはいずれも、スイッチ機能を有するトランジスタ機能をもったデバイスであり、メモリ機能を有していない。その一方、イオン性液体を使用したメモリ機能をもった電子デバイスも提案されている(例えば、特許文献4「電子デバイス」)。また、上述した有機発光デバイスにイオン性液体を用いることも提案されている(例えば、非特許文献1"Long-Lifetime Polymer Light-Emitting Electrochemical Cells")。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第4666633号公報
【特許文献2】特許2010-272634号公報
【特許文献3】特開2006-196390号公報
【特許文献4】特開2006-257149号公報
【0004】

【非特許文献1】Yan Shao, Guillermo C. Bazan, and Alan J. Heeger,"Long-Lifetime Polymer Light-Emitting Electrochemical Cells", Adv.Mater. 19, 365 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献4に開示される電子デバイスにおいて、メモリ機能を担う材料は導電性高分子層である。この場合のメモリ特性は揮発性メモリ機能で、不揮発性メモリ機能を有していない。メモリ機能として利用される状態は、0Vから0.5Vの高抵抗状態と0.5Vから1Vの低抵抗状態である。そして、このような特性をメモリ機能として利用する場合、電圧を0Vすなわち電源を遮断すると、低抵抗から高抵抗に状態が遷移するために、メモリ内容を保持することができない。このため、特許文献4に開示される電子デバイスでは、メモリ機能を保持するために、SRAMメモリ素子のように一定の電圧を印加しづけなければならない不便さがある。
【0006】
本発明は、上述した問題の少なくともいずれかを解決することを課題とする。本発明は、有機デバイスの基本デバイス構造と同じ構造を用いて、低電圧駆動、低消費電力特性メモリ機能を付加した有機メモリデバイスを提供することにより、各種の電子機器の高度化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者らは、不揮発性メモリ機能を実現する要件に着目した。不揮発性メモリ機能を実現するためには、ある閾値以上の正電圧で低抵抗状態が発生し、電圧0Vでも低抵抗状態が保持され、ある閾値以下の負電圧で高抵抗状態が発生し、二つの閾値電圧間では抵抗値を一定に保つ、というヒステリシス特性を示すことが必須である。このヒステリシス特性を実現するために、二酸化バナジウムを有するメモリ層と電解質とを用いる本発明を創出した。
【0008】
すなわち、本発明のある態様においては、二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層が一の面の上に形成された基板を含む第1基体であって、該基板は、該メモリ層の面の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第1電極部と、該第1電極部から離間され該メモリ層の面の別の一部を覆い該メモリ層に接している第2電極部とを有している、第1基体と、該第1基体に対向する面の上に第3電極部を有する対向基板を含む第2基体と、互いに対向して配置されている前記第1基体と該第2基体とに挟まれ、前記第1電極部と前記第2電極部との間において前記メモリ層に近接している電解質層とを備えるメモリ素子が提供される。
【0009】
また本発明のある態様においては、二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層が一の面の上に形成された基板を含む第1基体であって、該基板は、該メモリ層の面の少なくとも一部を覆い該メモリ層に接している第1電極部と、該第1電極部から離間され該メモリ層の面の別の一部を覆い該メモリ層に接している第2電極部と、該メモリ層から電気的に分離されて前記基板の前記一の面の側に位置している第3電極部とを有している、第1基体と、対向基板を含む第2基体と、互いに対向して配置されている前記第1基体と該第2基体とに挟まれ、前記第1電極部と前記第2電極部との間において前記メモリ層に近接し、前記第3電極部に近接している電解質層とを備えるメモリ素子が提供される。
【0010】
本発明の各態様において、「電解質層」とは、溶媒となる媒体(液体に加え、高分子媒体も含む)に電解質が溶解または分散されたものや、イオン性液体などを含む。この電解質層はメモリ機能を有する二酸化バナジウムに大きな電界印加効果をもたらすために用いる。また、本出願全般に、「からなる」とはそれにより特定される少なくとも1種の物質または組成を主たる成分として有しており、該組成が本願発明の趣旨を逸脱しない範囲において不純物を含みうる趣旨である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいずれかの態様によれば、二酸化バナジウムと電解質とを利用したメモリ素子を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のある実施形態における典型的なメモリ素子の構造を示す模式的断面図である。
【図2】本発明のある実施形態における別の典型的なメモリ素子の構造を示す模式的断面図である。
【図3】本発明のある実施形態におけるメモリ素子の模式的断面図に、メモリ素子として動作させる場合の例示の電気結線を示した図である。
【図4】本発明のある実施形態におけるメモリ素子の第1電極部と第3電極部の間に電圧を印加した際の第1電極部と第2電極部の間の電気抵抗の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。

【0014】
<第1実施形態>
[1 メモリ素子としての動作]
[1-1 メモリ素子の構成]
図1および図2に、本実施形態において提供されるメモリ素子の典型的な二つの構成を示す。これらのうち、図1は、本実施形態におけるメモリ素子の典型的な一態様であるメモリ素子1000を示す模式的断面図である。メモリ素子1000は、第1基体10Aと、第2基体20Aと、第1基体10Aおよび第2基体20Aに挟まれている電解質層30とを備えている。第1基体10Aは基板12を有しており、その基板12の一の面12Sには、二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層100Aが形成されている。

【0015】
基板12は、第1電極部110Aと第2電極部120Aとを有している。第1電極部110Aは、メモリ層100Aの面102Aの少なくとも一部を覆いメモリ層100Aに接している。また、第2電極部120Aは、第1電極部110Aから離間されており、メモリ層100Aの面102Aの別の一部を覆いメモリ層100Aに接している。これに対し、第1基体10Aと対向して配置されている第2基体20Aは対向基板22を有しており、この対向基板22には、第1基体10Aに対向する面の上に第3電極部230Aが形成されている。

【0016】
電解質層30は、第1基体10Aと第2基体20Aとに挟まれている配置において、第1電極部110Aと第2電極部120Aとの間の領域104Aにおいてメモリ層100Aに近接している。また、電解質層30には、第3電極部230Aも近接している。ここで、電解質層30は、最も典型的には、イオン性液体32が選択される。なお、「近接している」とは、全く他の層を介さずに直接接しているもののほか、実質的に直接接している状態と同様の効果を維持して、何らかの極薄い層を介在させながら近くに配置されていることを含んでいる。

【0017】
本実施形態においては、別の典型的なメモリ素子も提供される。図2は、本実施形態における別の典型的なメモリ素子2000の構造を示す模式的断面図である。メモリ素子2000も、第1基体10Bと、第2基体20Bと、第1基体10Bおよび第2基体20Bに挟まれている電解質層30とを備えている。メモリ素子1000とメモリ素子2000の端的な相違点は、メモリ素子2000においては、第1電極部110Bと第2電極部120Bと第3電極部130Bが、一方の基板である第1基体10Bの基板12に対して形成されていることである。

【0018】
第1基体10Bの基板12は、その一の面12Sに二酸化バナジウムを主成分とするメモリ層100Bが形成されている。第1基体10Bの基板12は、第1電極部110Bと第2電極部120Bと第3電極部130Bを有している。第1電極部110Bは、メモリ層100Bの面102Bの少なくとも一部を覆いメモリ層100Bに接している。また、第2電極部120Bは、第1電極部110Bから離間されメモリ層100Bの面102Bの別の一部を覆いメモリ層100Bに接している。さらに、第3電極部130Bは、メモリ層100Bから電気的に分離されて基板12の面12Sの側に位置している。一方、第2基体20Bとなる対向基板22には動作に必須の電極は形成されていなくてよい。第1基体10Bと第2基体20Bは互いに対向して配置されている。そして、電解質層30は、第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間の領域104Bにおいてメモリ層100Bに近接するとともに、第3電極部130Bにも近接している。

【0019】
第3電極部130Bをメモリ層100Bから電気的に分離するためには、一つには、十分な距離だけ相互に離間される。例えば、領域12R1と領域12R2との間に、分離領域12Qが形成される。さらに電気的絶縁性を高めるためには、例えば電気的絶縁壁140を設けることも有用である。この電気的絶縁壁140は、電解質層30の連通を妨げないように、例えば高さや形状が調整される。また、第3電極部130Bの配置は、メモリ層100Bから電気的に分離されて基板12の面12Sの側とされ、電解質層30に近接している限り、必ずしも面12Sに接して形成されることは要さない。また、第3電極部130Bは、例えば十分に厚い絶縁膜を介してメモリ層100Bに積層されているものとすることができる。

【0020】
メモリ素子1000の構造とメモリ素子2000の構造は、任意に選択することが可能である。メモリ素子1000の構造は、メモリ層100A、第1電極部110A、第2電極部120Aを形成する基板または基体と、第3電極部230Aを形成する基板または基体とを別のものとすることができ、例えば集積度を高める利点を有する。これに対し、メモリ素子2000の構造は、一の基体上に、メモリ層100B、第1電極部110B、第2電極部120B、第3電極部130Bを構成することができるため、第2基体20B上に第3電極を形成する加工工程がなくなり、メモリ素子を駆動する回路との接続が容易となる利点を有する。これらの別々の特質のため、メモリ素子を搭載するデバイス(集積回路など)の作製の容易性や、特に基板を複数採用する場合の位置合わせ精度など、各種の技術要因を勘案してメモリ素子1000とメモリ素子2000の構造は任意に選択することが可能である。

【0021】
[1-2 メモリ素子の動作]
メモリ素子1000およびメモリ素子2000を典型例とする本実施形態のメモリ素子の動作は、次のとおりである。メモリ素子としてメモリ素子2000(図2)を例に、図3および図4を参照して説明する。図3は、メモリ素子2000の模式的断面図に、メモリ素子として動作させる場合の例示の電気結線を示した図である。また、図4は、メモリ素子2000の第1電極部110Bと第3電極部130Bとの間への電圧を印加した際の、第1電極部110Bと第2電極部120Bの間の電気抵抗の変化を示すグラフである。メモリ素子2000の電気特性は、図3に示した結線により測定することが可能である。電圧の基準を第1電極部110Bとする。そして、第1電極部110Bの電位から見た第2電極部120Bへの印加電圧波形をV1(V)とし、その電圧V1が、電圧印加手段42により制御される。同様に、第1電極部110Bの電位から見た第3電極部130Bへの印加電圧波形をV2(V)とし、その電圧V2が、電圧印加手段44により制御される。

【0022】
メモリ動作の説明の前に、メモリ層100Bの示す電気抵抗の測定法について説明する。メモリ層100Bの示す電気抵抗を測定するためには、第1電極部110Bと第2電極部120Bとに接続された電圧印加手段42と電流測定手段52とを用いる。第3電極部130Bがある電圧V2となっている時点での第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間の抵抗値を測定することを考える。このため、電圧印加手段42により第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間に電圧V1を印加し、そのときに二酸化バナジウムのメモリ層100Bに流れる電流を電流測定手段52により測定する。図4は、メモリ素子2000の実施例(詳細は、後述する)を測定対象として、電圧印加手段42の電圧V1と電流測定手段52による電流の実測値から算出された電気抵抗値を縦軸にプロットしている。そして、図4の横軸は、電圧V2の値をプロットしている。

【0023】
メモリ素子2000のメモリ層100Bの電気抵抗は、図4に示すように、電圧V2の値に対して明瞭なヒステリシスを示し、繰り返し動作によりヒステリシスループを描く。例えば1.5V以上の正の電圧V2を第3電極部130Bに印加することにより、第1電極部110Bと第2電極部120Bの間におけるメモリ層100Bの抵抗値を、図4の紙面上右側の矢印により明示したように、高抵抗の状態から、低抵抗の状態へと変化させることができる。つまり、この例においては、電圧V2を0Vから出発し正の3.0Vまで増加させる。その間、約1.5V程度までは高抵抗となっているが、1.5Vを越すと電気抵抗の低下が見られる。そして、3.0Vまで電気抵抗は減少を続ける。次に、電圧V2を正の3.0Vから0Vを越して負の3Vまで低下させる。すると、約-2.0V程度までは低抵抗状態が維持されるが、それよりも電圧V2の電位を負にすると、今度は電気抵抗が増大し始める。そして、-3.0Vまでその電気抵抗は増加し続け、図4の紙面上左側の矢印により明示したように、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移してゆく。そして再び電圧V2を0V付近とすると、初期状態に近い高抵抗状態を再現することが可能となる。

【0024】
図4からは、メモリ素子2000のメモリ層100Bの高抵抗状態と低抵抗状態が、100倍を超す高い抵抗比を示すことも読み取ることができる。この場合、熱などの擾乱が存在する場合にも高い精度で電気抵抗を読み取ることが可能であり、かつ読み取りエラーが起こる可能性は低くなる。

【0025】
メモリ素子2000を1ビット分の2状態を記憶するメモリ素子とする場合の典型的な動作は、次のようなものである。まず、高抵抗状態を“0”、低抵抗状態を“1”に割り当て、“1”の書き込み動作をセット操作、“0”の書き込み動作をリセット操作とする。セット操作は、まず、第1電極部110Bからみた第3電極部130Bの電位つまり電圧V2を正にして十分に高い電圧を印加し、その後に電圧V2を0ボルト付近に戻す。これにより、その後は電圧V2を印加しなくても、低抵抗状態“1”が維持される。リセット操作は、今度は電圧V2を十分に高い負の電圧にし、その後電圧V2を0ボルト付近に戻せばよい。図4のグラフのヒステリシスループには、このセット・リセットの操作において状態が遷移する様子を併記している。そして、読み出し動作であるリード操作は、例えばメモリ層100Bの状態に影響しない程度の電圧を第1電極部110Bと第2電極部120Bの間に印加し、それにより生じる第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間の電流を読み取れば良い。電圧印加手段42(図3)と同様に接続される電圧印加手段と電流測定手段52と同様に接続される電流測定手段を用いれば、読み出し動作が可能となる。なお、図示しないものの、メモリ層100Bの状態に影響しない程度の微弱な電流を第1電極部110Bと第2電極部120Bの間に流し、それにより生じる第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間の電位差を読み取ることにより読み出し動作を行なうことも可能である。このように、図4に示したメモリ層100Bの特性により、メモリ素子2000を不揮発性メモリとして使用することが可能となる。なお、ここでの説明には、原理的な動作を説明する目的で2状態(2値)の動作を例示した。しかし、本実施形態にて提供されるメモリ素子の動作は2状態の書き込みおよび読み出し動作のみに限定されるものではない。

【0026】
次に、メモリ素子2000においてこのような大きな抵抗変化が生じる原理について説明する。メモリ層100Bを基準にしてプラス数ボルト程度の直流電圧が第3電極部130Bに印加される。すると、イオン性液体32中の正イオンがメモリ層100Bの面102B近傍に移動し、同面102Bに非常に高い面密度の正イオンが蓄積される。その結果、その正電荷を打ち消す負電荷がメモリ層100B表面に誘起され、メモリ層100Bの材質である二酸化バナジウムの電子相が絶縁体相から金属相に相転移を起こし、メモリ層100Bは抵抗が減少した低抵抗状態に遷移する。この遷移は、斜方晶から正方晶へと結晶系が変化する構造相転移を伴ったものであるため容易に元に戻ることはない。つまり、電圧印加を解除しても、低抵抗状態は持続される。次に、メモリ層100Bを基準にしてマイナス数ボルト程度の直流電圧が第3電極部130Bに印加されるとその時はじめて、メモリ層100Bは再び高抵抗状態に遷移する。そして、その転移に伴ってメモリ層100Bの結晶系は元の結晶系つまり斜方晶に転移する。この際に作用するのは、イオン性液体32とメモリ層100Bとの界面に誘起される非常に高い面密度の負のイオンである。この高抵抗状態への遷移においても、結晶系が変化する構造相転移を伴ったものであるため容易に元に戻らず、高抵抗状態は電圧印加を解除しても維持される。

【0027】
[2 メモリ素子の作製方法]
次に、メモリ素子2000を例に、本実施形態のメモリ素子の作製方法について説明する。基板12としては、例えば二酸化チタンなどの基板を採用することができる。また、対向基板22は、例えばガラスなどを採用することができる。

【0028】
メモリ層100Bは二酸化バナジウム(VO)を主成分とする膜である。第3電極部130Bとしては、例えば任意の金属膜を採用する。メモリ層100Bや第3電極部130Bは、基板12の面12Sの上に任意の形成方法により形成する。ここで、メモリ層100Bは、基板12の領域12R1にのみ形成されている。このため、例えば適当なマスクによりメモリ層100Bが形成される領域を領域12R1のみに制限し、またフォトリソグラフィー工程によってパターニングすることにより、メモリ層100Bの領域を制限する。そして、同様に適当な手段により、第3電極部130Bもパターニングして形成する。メモリ層100Bや第3電極部130Bの形成方法は、例えば、パルスレーザー堆積法(PLD)や、分子線エピタキシー法(MBE)、化学気相成長堆積法(CVD)、スパッタ法、ゾルゲル法、熱蒸着法、電子線蒸着法などとすることもできる。メモリ層100Bや第3電極部130Bが形成された第1基体10Bと、第2基体20Bとなる対向基板22とは、互いに対向させて、図示しない絶縁性のスペーサーやシール材などにより電解質層30のための薄層空間を形成するようにして固定する。なお、メモリ層100Bと第3電極部130Bとの間の薄層空間を保つための絶縁性のスペーサーとしては樹脂球やレジストなどが好適である。

【0029】
第1基体10Bと第2基体20Bの間の薄層空間には、電解質層30を導入する。典型的な電解質層30は、イオン性液体32である。イオン性液体32として採用可能なイオン性液体は、典型的には、アニオンとカチオンのみからなる常温で融解している塩である。なお、本出願において、「イオン性液体(ionic liquid)」とは、イオン液体や常温溶融塩(room temperature molten salt)とも呼ばれる、室温においても液体として存在する塩をいう。こうして作製されたメモリ素子2000においては、電圧印加手段42、電圧印加手段44および電流測定手段52と接続し適当な電圧を印加することによって、例えば図4に示したように電気抵抗を高抵抗および低抵抗状態の間で遷移させることが可能となる。こうして、図2に示した構造のメモリ素子2000が作製される。

【0030】
メモリ素子2000を例に説明した上記作製方法は、適切な変更によって、メモリ素子1000の作製のためにも適用することが可能である。

【0031】
[3 メモリ素子としての利点]
メモリ素子1000やメモリ素子2000のメモリ素子はいくつかの利点を有している。一つは、上述したように、これまでにない構成のメモリ素子が実現されている点である。しかも、不揮発性記憶が実現されているため、記憶保持動作のためには特段の電力は消費しない。さらに、上述したように、高抵抗状態と低抵抗状態との抵抗比は十分に高く、書き込み動作のための電圧も高々数ボルト程度にすぎない。加えて、電流ではなく電圧で書き込みを行うため、書き込み動作に伴う消費電力は原理的にはゼロである。このため、メモリ素子1000やメモリ素子2000は、電子機器に一般に要求される特性を兼ね備えたものとなっている。

【0032】
[4 メモリ素子の高機能化]
以上に説明した本実施形態のメモリ素子1000やメモリ素子2000は、上述した各利点を保ち種々の改良または変形を行なうことが可能である。特に、メモリ層100A(100B)や電解質層30については、様々な高機能化を行なうことが可能である。以下、その構成について説明する。なお、以下に説明する高機能化は、いずれも、メモリ素子1000とメモリ素子2000の双方に対して適用される。ここでは、理解を助ける趣旨のみに基づいてメモリ素子2000(図2)の構造に基づいて説明する。

【0033】
[4-1 メモリ層の高機能化]

【0034】
本実施形態のメモリ素子2000におけるメモリ層100Bは二酸化バナジウムを主成分として有している。しかし、二酸化バナジウムに金属元素または非金属を添加してその制御電圧によるメモリ特性を変えることができる。この場合、添加物元素をAと表示して、メモリ層100Bの組成をA1-x2-δと表現できる。ただし、xは0≦x≦0.1の一の数であり、δは0≦δ≦0.1の一の数である。

【0035】
例えば、Aがタングステン(W)である場合、そのメモリ閾値電圧、すなわち、図4
により説明した低抵抗状態と高抵抗状態の相互の遷移を起こさせる電圧の絶対値が低電圧となるように調節することが可能である。しかも、タングステン濃度を調整することによりメモリ閾値電圧の範囲をある範囲で設定することが可能となる。このため、Aがタングステンである場合には、メモリ制御のための電圧V2の電圧を広い電圧範囲から選択しうる利点が生じる。

【0036】
なお、本実施形態において、添加物元素Aは、タングステンのみに限定されるものではない。メモリ制御を容易にするために、例えば、Zr、Nb、Mo、Hf、Taなどを添加することが有用である。これらはタングステンと同様に電圧V2の範囲を調整するために用いられる。

【0037】
メモリ層100Bである二酸化バナジウムが形成される基板12は、各種の材質を採用することが可能である。典型的には、基板12が二酸化バナジウムと同じ結晶構造のルチル構造を備える材料から選択され、また、二酸化バナジウムに近い結晶構造を備える材料からも選択される。ここで、「同じ結晶構造」とは、結晶構造が同種であることを含む。また、「近い結晶構造」とは、点群として指定される結晶構造は異なるものの格子整合すること、あるいは、格子定数が異なるもののコヒーレントな結晶成長がある程度可能であること、のいずれも含む。このルチル構造を有する物質は、二酸化チタン(TiO)、二酸化錫(SnO)、またはこれらの固溶体からなる物質とすることができる。二酸化バナジウムと同じまたは近い結晶構造を有する材料に対しては、二酸化バナジウムの形成が容易となる利点がある。

【0038】
上述した二酸化バナジウムに近い結晶構造を有している基板12を採用するメモリ素子2000においては、その基板12の材料として、酸化アルミニウム(Al)、二酸化シリコン(SiO)、酸化チタン(Ti)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化セリウム(Ce)から選択される一の物質またはこれらから選択される少なくとも二の物質の固溶体からなる物質を用いてもよい。これらの物質または固溶体を用いれば、二酸化バナジウムの形成が容易となる利点がある。

【0039】
また、メモリ素子2000において第2基体20Bに含まれる対向基板22を、二酸化シリコン(SiO)を含む無機ガラス、または、高分子膜材料とすることも可能である。メモリ素子2000においては対向基板22には二酸化バナジウムが形成されないため、対向基板22の材質の選択範囲は広く、イオン性液体32等の電解質層30を保持する機能に適するこれらの材質は特に好適である。

【0040】
[4-2 電解質層の高機能化]
メモリ素子2000における電解質層30はイオン性液体を含むものとすることができる。すなわち、電解質層30は、イオン性液体を含む電解質と、水(HO)、非水系低分子溶媒群、および高分子溶媒群からなる溶媒群から選択される少なくとも1種の溶媒とからなるものとすることができる。また、電解質層30は、イオン性液体からなるものとすることができる。イオン性液体は、室温で液体形状を保持するととともに、100℃以上の高温においても、化学的に安定であるなどの実用上優れた特性を有するため、メモリ素子2000の電解質層30として好適である。また電解質層はイオン性液体を溶媒中に溶解または分散させた電解質でもよい。また、この場合、溶媒に高分子材料を用いれば、スピンコートした後に固化させることも可能であり、土手などの構造を形成する必要もなくなることは、実用上、重要なメリットをもっている。なお、本出願全般に「溶媒」は、必ずしも高い流動性を示すものには限定されない。

【0041】
さらに、電解質層30をリチウム(Li)イオン、ナトリウム(Na)イオンを含むカチオン分子群から選択される少なくとも1種のカチオン分子と、アニオン分子群から選択される少なくとも1種のアニオン分子とを含むものとすることができる。カチオン種とアニオン種との組み合わせは自由であり、多くの組み合わせの電解質が考えられる。

【0042】
特に、イオン性液体のカチオン分子群については、イミダゾリウム系、ピリジニウム系、アンモニウム系、ピペリジニウム系、ピロリジニウム系、ピラゾリウム系、およびホスホニウム系のいずれか一の分子群とすることが好適である。これらのカチオン分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0043】
さらに、イオン性液体のカチオン分子群をイミダゾリウム系の分子群とし、そのイミダゾリウム系の分子群を、1,3-ジメチルイミダゾリウム(C)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(C11)、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム(C13)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム(C15)、1-ヘキル-3-メチルイミダゾリウム(C1019)、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム(C1223)、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム(C1427)、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム(C1631)、1-メチル-3-テトラデシルイミダゾリウム(C1835)、1-ヘキサデシル-3-メチルイミダゾリウム(C2039)、1-オクタデシル-3-メチルイミダゾリウム(C2243)、1,2,3-トリメチルイミダゾリウム(C12)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C13)、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム(C15)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C17)、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム(C1121)、1-アリル-3-メチルイミダゾリウム(C11)、1-アリル-3-エチルイミダゾリウム(C13)、1-アリル-3-ブチルイミダゾリウム(C1017)、1,3-ジアリルイミダゾリウム(C13)、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウム(C1113)、1-(2-ハイドロケシル)-3-メチルイミダゾリウム(C11)、および1,3-ジデシル-2-メチルイミダゾリウム(C2447)のいずれか一の群とすることができる。これらのイミダゾリウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0044】
また、イオン性液体のカチオン分子群をピリジニウム系の分子群とし、そのピリジニウム系の分子群を、1-エチルピリジニウム(C10N)、1-プロピルピリジニウム(C12N)、1-ブチルピリジニウム(C14N)、1-ヘキシルピリジニウム(C1118N)、1-エチル-3-メチルピリジニウム(C12N)、1-エチル-4-メチルピリジニウム(C12N)、1-プロピル-3-メチルピリジニウム(C14N)、1-プロピル-4-メチルピリジニウム(C14N)、1-ブチル-2-メチルピリジニウム(C1016N)、1-ブチル-3-メチルピリジニウム(C1016N)、1-ブチル-4-メチルピリジニウム(C1016N)、N-(3-ハイドロキシプロピル)ピリジニウム(C12NO)、および1-エチル-3-ハイドロキシメチルピリジニウム(C12NO)のいずれか一の群とすることができる。これらのピリジニウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0045】
加えて、イオン性液体のカチオン分子群をアンモニウム系の分子群とし、そのアンモニウム系の分子群を、テトラメチルアンモニウム(C12N)、テトラエチルアンモニウム(C20N)、テトラプロピルアンモニウム(C1228N)、テトラブチルアンモニウム(C1636N)、テトラヘキシルアンモニウム(C2452N)、トリエチルメチルアンモニウム(C18N)、N,N,N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム(C16N)、ブチルトリメチルアンモニウム(C18N)、エチルジメチルプロピルアンモニウム(C18N)、トリブチルメチルアンモニウム(C1330N)、メチルトリオクチルアンモニウム(C2554NO)、2-ハイドロケシルアンモニウム(CN)、コリン(C14NO)、およびN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メソケシル)アンモニウム(C20NO)のいずれか一の群とすることができる。これらのアンモニウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0046】
イオン性液体のカチオン分子群をピペリジニウム系の分子群とし、そのピペリジニウム系の分子群を、1-メチル-1-プロピルピペリジニウム(C20N)、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム(C1022N)、および1-メソケシル-1-メチルピペリジニウム(C1022NO)のいずれか一の群とすることができる。これらのピペリジニウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0047】
イオン性液体のカチオン分子群をピロリジニウム系の分子群とし、そのピロリジニウム系の分子群を、1-1-ジメチルピロリジニウム(C14N)、1-エチル-1-メチルピロリジニウム(C16N)、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム(C18N)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム(C20N)、1-ヘキシル-1-メチルピロリジニウム(C1124N)、および1-メソケシル-1-メチルピロリジニウム(C18NO)のいずれか一の群とすることができる。これらのピロリジニウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0048】
イオン性液体のカチオン分子群をピラゾリウム系の分子群とし、そのピラゾリウム系の分子群を、1-エチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C15)、1-プロピル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C17)および1-ブチル-2,3,5-トリメチルピラゾリウム(C1019)のいずれか一の群とすることができる。これらのピラゾリウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0049】
イオン性液体のカチオン分子群をホスホニウム系の分子群とし、そのホスホニウム系の分子群を、テトラメチルホスホニウム(C12P)、テトラエチルホスホニウム(C20P)、テトラプロピルホスホニウム(C1228P)、テトラブチルホスホニウム(C1636P)、テトラオクチルホスホニウム(C3268P)、トリエチルペンチルホスホニウム(C1126P)、トリエチルオクチルホスホニウム(C1432P)、トリブチルメチルホスホニウム(C1330P)、トリイソブチルメチルホスホニウム(C1330P)、トリブチルエチルホスホニウム(C1432P)、トリブチルテトラデキルホスホニウム(C2656P)、およびトリヘキシルテトラデキルホスホニウム(C3268P)のいずれか一の群とすることができる。これらのホスホニウム系の分子群から選択されるカチオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0050】
イオン性液体のアニオン分子群を、ブロマイド(Br)、クロライド(Cl)、アイオダイド(I)、テトラフルオロボレイト(BF)、過塩素(ClO)、ヘキサフルオロホスフェイト(PF)、フォルメイト(HCO)、アセテイト(CHCO)、デカノネイト(C19CO)、トリカノメタン((CN)C)、ラクテイト(C)、ジカナミド((CN)N)、トリフルオロアセテイト(CFCO)、トリフルオロメチルサルフォネイト(CFSO)、ペルフルオロブタンサルホネイト(CSO)、ノナフルオロブタンサルホニルイミド((CSON)、フルオロサルフォニルイミド((FSON)、トリフルオロメチルサルフォニルイミド((CFSON)、ペンタフルオロエタンスホニルイミド(CFCFSON)、チオカネイト(SCN)、ハイドロゲンサルフェイト(HSO)、ノナフルオロブタンスルフォニルイミド((CSON)、メタンサルフオネイト(CHSO)、メチルサルフエイト(CHOSO)、n-ブチルサルフェイト(n-COSO)、エチルサルフェイト(COSO)、n-ヘキシルサルフェイト(n-C13OSO)、n-オクチルルサルフェイト(n-C17OSO)、2-(2-メソキセスオキシイ)、エチルサルフェイト(CH(OCOSO)、p-トルエンスルフオネイト(CS)、ドデシルベンゼンサルフォネイト(C1629SO)、2,2,4-トリメチルペンチルホスフィネイト(C1634P)、ジカナマイド((CN)N)、ジハイドロジェンホスフェイト(HPO)、ジエチルフォスフェイト((CO)PO)、トリフルオロホスフェイト((CPF)、オクサレイト(2-)-オーオーボレイト(CBO)、およびジメチルホスフエイト((CHPO)のいずれか一の群とすることができる。これらのアニオン分子群から選択されるアニオンを用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0051】
溶媒群を非水系低分子溶媒群とし、その非水系低分子溶媒群を、プロピレンカーボネート((PC)C)、エチレンカーボネート(C)、ジエチルカーボネート(C10)、ジメチルカーボネート(C)、γ—ブチロラクトン(C)、スルホラン(CS)、N,N-ジメチルホルムアミド(CNO)、ジメチルスルホキシド(COS)、およびアセトニトリル(CHCN)のいずれか一の群とすることができる。これらの非水系低分子溶媒群から選択される溶媒を用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持することができる。

【0052】
溶媒群を高分子溶媒群とし、その高分子溶媒群を、ポリエチレンオキシド([CH-CH-O])、ポリメチルメタクリレート([CH-C(CH)(COOCH)])、ポリアクリロニトリル([CH-CH(CN)])、ポリフッ化ビニリデン([CF-CH)、およびポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体([(CF-CH-(CF-CF(CF))1-x)のいずれか一の群とすることができる。これらの高分子溶媒群から選択される溶媒を用いると、イオン性液体を良好な電離状態に保持する溶媒としての作用を維持しつつ、メモリ素子から流動性の高い部材を除くことができる。

【0053】
そして、上述した各高機能化の手法は、メモリ素子2000(図2)のみならず、メモリ素子1000(図1)に対しても同様に適用することが可能であり、また、その場合にも同様の効果を示すものである。

【0054】
[5 実施例]
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することかできる。したがって、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。また説明のため、実施形態において説明した図面を適宜参照する。

【0055】
[5-1 実施例1]
実施例1として、図2に示す構造のメモリ素子2000を作製した。基板12として二酸化チタン基板(TiO、株式会社信光社製)を用い、その基板の一方の領域12R1にパルスレーザー堆積法(PLD法)とフォトリソグラフィーを組み合わせることにより、メモリ層100Bとして二酸化バナジウム(VO)の薄膜を形成した。この成膜の際の基板12の温度は390℃とし、酸素分圧10mTorr(約1.3Pa)の真空下で、10nm厚の二酸化バナジウム薄膜を形成した。メモリ層100Bの面102Bの上に、第1電極部110Bと第2電極部120Bとして、膜厚10nmのチタンと膜厚50nmの金の積層構造を電子線蒸着法で形成した。また、分離領域12Qの領域だけ離れた12R2に、第3電極部130Bとして、膜厚10nmのチタンと膜厚50nmの金の積層構造を電子線蒸着法により形成した。さらに、分離領域12Qの範囲に、電気的絶縁壁140をレジストにより形成した。

【0056】
電解質層30としてイオン性液体32を採用した。イオン性液体32はカチオン群から選択される1種のカチオン分子と、アニオン群から選択される1種のアニオン分子とを組み合わせたものとした。具体的には、カチオン分子として、アンモニウム系であるN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メソケシル)アンモニウム(C20NO、DEME(略称))を、またアニオン分子として、トリフルオロメチルサルフォニルイミド((CFSON、TFSI(略称))を含み、これらを組み合わせたDEME-TFSIイオン性液体(株式会社関東化学社製)を用いた。

【0057】
次にイオン性液体32としてDEME-TFSIイオン性液体をメモリ層100Bの面102B、第1電極部110Bおよび第2電極部120Bの一部、さらに第3電極部130Bを覆うように滴下し、第2基体20Bを第1基体10Bに対向させることで、所定の厚みの薄層空間にイオン性液体32が配置されたメモリ素子2000のサンプルを得た。

【0058】
作製した実施例1のメモリ素子2000のサンプルに、図3に示すように電圧印加手段42、電圧印加手段44、電流測定手段52を接続し、第1電極部110Bを基準として、第3電極部130Bの電圧を上昇させながら、第1電極部110Bと第2電極部120Bとの間の電流電圧特性から電気抵抗を算出した。その結果、図4の測定結果を得た。こうして、メモリ素子2000により、高抵抗状態と低抵抗状態の間の遷移を利用して、不揮発性メモリを提供しうることを確認した。

【0059】
[5-2 実施例2]
次に、実施例2として、図1に示した構造のメモリ素子1000を作製した。基板材料などは実施例1と同じである。実施例1と同様、基板12の面12Sに、PLD法により、メモリ層100Aを形成した。メモリ層100Aの面102Aの上に、第一電極部110Aと第二電極部120Aとして、膜厚10nmのチタンと膜厚50nmの金の積層構造を電子線蒸着法で形成した。また、対向基板22としてガラスを用い、第3電極部230Aとして、膜厚10nmのチタンと膜厚50nmの金の積層構造を電子線蒸着法で形成した。次に、実施例1と同様にDEME-TFSIイオン性液体を第1基体10Aと第2基体20Aとの間隙に配置した。具体的には、第1基体10Aのメモリ層100Aと第1電極部110Aおよび第2電極部120Aの一部を覆うようにDEME-TFSIイオン性液体を滴下し、次に、第2基体20Aを第3電極部230Aの面を第1基体10Aに対向させて配置した。この結果、所定の厚みの薄層空間にイオン性液体32が配置されたメモリ素子1000のサンプルを得た。実施例2として作製したメモリ素子1000においても、図3と同様に電圧印加手段42、電圧印加手段44、電流測定手段52を接続した。そして、第1電極部110Aを基準に第3電極部230Aに電圧V2を電圧印加手段44により印加しながら、第1電極部110Aと第2電極部120Aとの間の電流電圧特性を測定し、抵抗値を得た。その結果、図4に示したメモリ素子1000のものと同様に、明瞭なヒステリシス特性を伴う高抵抗および低抵抗状態が観察され、これらの互いの間も電圧V2により遷移可能であった。

【0060】
[6 変形例・用途]
以上述べてきたように、本実施形態において提供されるメモリ素子の典型例であるメモリ素子1000およびメモリ素子2000は、高い実用性を誇るメモリ素子といえる。本実施形態において提供されるメモリ素子は、様々な用途への適用可能性を秘めている。例えば、電解質は色素を組み込んだ有機材料とすることも可能であるが、これは発光素子となる。電解質を両側から電極で挟めば、電池として機能するし、コンデンサー素子としての作用も有する。電解質や二酸化バナジウム以外の適切な材料を選べばメモリ機能を有さない、通常のスイッチがオン、オフするスイッチ素子が作製される。本実施形態において提供されるメモリ素子に、これらの電解質発光素子、電解質トランジスタ素子を組み合わせれば、電子素子機能の役割を担ういわば電解質素子群を構成することが可能となる。ひいては、電解質素子からなる回路網を構築することも可能となる。そのような電解質素子を用いる回路網では、一つには、電解質の形状の柔軟性から、曲面構造をもった回路網が製作可能となる。さらにもう一つ、基体に高分子樹脂などを採用すれば、柔軟な構造をもったフレキシブル回路網も製作可能となる。前者すなわち曲面構造をもった回路網を利用すれば、例えば自動車のフロントガラスに道路情報などを表示する機能を与えることが可能となる。一方、後者すなわち柔軟な構造をもったフレキシブル回路網を利用すれば、例えば丸めて持ち運べるフレキシブルデイスプレイや、様々な色調に変化する光る布や衣装、カーテンなど、まったく新しい価値を創造することが可能となる。

【0061】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の実施形態、実施例および変形例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、二酸化バナジウムと電解質とを利用したメモリ素子が提供され、メモリ素子を用いる機器の生産に寄与する。
【符号の説明】
【0063】
1000、2000 メモリ素子
10A、10B 第1基体
12 基板
12S 面
12R1、12R2 領域
12Q 分離領域
20A、20B 第2基体
22 対向基板
30 電解質層
32 イオン性液体
100A、100B メモリ層
102A、102B 面
104A、104B 領域
110A、110B 第1電極部
120A、120B 第2電極部
130B、230A 第3電極部
140 電気的絶縁壁
42、44 電圧印加手段
52 電流測定手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3