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明細書 :X線分配装置およびX線分配システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5751665号 (P5751665)
公開番号 特開2012-181111 (P2012-181111A)
登録日 平成27年5月29日(2015.5.29)
発行日 平成27年7月22日(2015.7.22)
公開日 平成24年9月20日(2012.9.20)
発明の名称または考案の名称 X線分配装置およびX線分配システム
国際特許分類 G21K   1/02        (2006.01)
G21K   1/00        (2006.01)
G21K   1/06        (2006.01)
FI G21K 1/02 R
G21K 1/00 X
G21K 1/06 B
G21K 1/06 K
請求項の数または発明の数 15
全頁数 19
出願番号 特願2011-044376 (P2011-044376)
出願日 平成23年3月1日(2011.3.1)
審査請求日 平成26年3月3日(2014.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】田中 義人
【氏名】伊藤 基巳紀
【氏名】澤田 桂
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
審査官 【審査官】鳥居 祐樹
参考文献・文献 特開2004-294168(JP,A)
特開2000-206061(JP,A)
特表平11-502933(JP,A)
特開平07-104099(JP,A)
調査した分野 G01N 23/00-23/227
G21K 1/00- 3/00
G21K 5/00- 7/00
H05G 1/00- 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも小さく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
X線源からのX線ビームを通過させる開口であって、開口径がキャピラリの入射端の径以下である開口を有し、キャピラリ束の入射端に対向して配置された遮蔽板と、
X線源からのX線ビームに対して垂直な方向に遮蔽板を変位させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置。
【請求項2】
キャピラリ束のキャピラリの前記一端の開口面がX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に線状に配列されたキャピラリ群を含み、
遮蔽板は、キャピラリの前記一端の外径以下の幅の相互に交差する2本の線状の開口部を有し、
遮蔽板の2本の線状の開口部が共に、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して交差する方向に延在し、
駆動部が、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して垂直な方向に、遮蔽板を変位させることを特徴とする請求項1に記載のX線分配装置。
【請求項3】
遮蔽板の2本の線状の開口部の一方が、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して垂直な方向に延在することを特徴とする請求項2に記載のX線分配装置。
【請求項4】
X線源からのX線ビームに対して垂直な方向における遮蔽板の位置と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部による遮蔽板の変位を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載のX線分配装置。
【請求項5】
X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であってキャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも小さく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
X線源からのX線ビームを通過させる開口であって、開口径がキャピラリの入射端の径以下である開口をそれぞれ有し、開口の位置または数が異なる複数の遮蔽板と、
前記複数の遮蔽板のいずれか1つを、キャピラリ束の入射端に対向する所定位置に配置する駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置。
【請求項6】
遮蔽板と、前記所定位置に前記遮蔽板を配置したときにX線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部による前記所定位置への遮蔽板の配置を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項5に記載のX線分配装置。
【請求項7】
X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも大きく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
キャピラリ束をX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に変位させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置。
【請求項8】
X線源からのX線ビームに対して垂直な方向におけるキャピラリ束の位置と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つを経由して供給される供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部によるキャピラリ束の変位を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項7に記載のX線分配装置。
【請求項9】
X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも大きく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
キャピラリ束をX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に変位させるとともに、キャピラリ束をX線源からのX線ビームを含む平面内で回動させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置。
【請求項10】
X線源からのX線ビームに対して垂直な方向におけるキャピラリ束の位置およびX線源からのX線ビームを含む平面内でのキャピラリ束の角度と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つを経由して供給される供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部によるキャピラリ束の変位および回動を制御する制御部を備えることを特徴とする請求項9に記載のX線分配装置。
【請求項11】
キャピラリ束に含まれる全てのキャピラリが、50cm以上の曲率半径を有することを特徴とする請求項1、5、7および9のいずれか1項に記載のX線分配装置。
【請求項12】
遮蔽板の開口が、キャピラリの前記一端の外径以下の直径の円形であることを特徴とする請求項1または5に記載のX線分配装置。
【請求項13】
湾曲したキャピラリの前記一端から所定距離までの部分が直線状であり、
キャピラリ束の全てのキャピラリの前記一端から所定距離までの部分が、平行に配置されていることを特徴とする請求項1、5および7のいずれか1項に記載のX線分配装置。
【請求項14】
請求項4または6に記載のX線分配装置と、
X線源からのX線ビームがX線分配装置のキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先と
を含むことを特徴とするX線分配システム。
【請求項15】
X線分配装置の制御部は、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して同時に供給される1つ以上の供給先を1つのグループとして、複数のグループを記憶しておき、各グループに含まれるすべての供給先にX線ビームが同時に供給されるように、駆動部を制御することを特徴とする請求項14に記載のX線分配システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置、およびX線分配装置を含むX線分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射光施設では、光速近くにまで加速した電子から、偏向電磁石やアンジュレータと呼ばれる装置によって、きわめて強度の高い放射光X線を発生させて、物理学、化学、材料工学、生物学、医学などの様々な分野における種々の研究に利用している。放射光施設は少数しか存在しないため、1つのX線源(偏向電磁石やアンジュレータ)から得られる放射光X線を多くの研究に共用することが望ましい。このため、ビームラインと呼ばれる放射光X線ビームの進路に、研究用の装置が複数配置されている。
【0003】
X線は透過性がきわめて高いため、X線ビームを偏向させるための素子は限られている。X線ビームを偏向させる数少ない素子の1つに、X線キャピラリレンズがある(たとえば特許文献1)。X線キャピラリレンズは、複数のキャピラリを束ねた素子であり、キャピラリの中央の空気とその周囲の樹脂などの媒質との界面での全反射を利用してX線を伝播させるもので、各キャピラリを同一点に向うように湾曲させることによって、複数のキャピラリに入射したX線ビームを微小な照射範囲内に収束させることができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-40992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射光施設のビームラインにおいて、複数の装置の中の1つの装置でX線ビームを利用している時は、他の装置でX線ビームを利用することはできない。このため、装置ごとに時間をずらしてX線ビームを利用しており、研究に対する時間的な制約が存在するのが現状である。
【0006】
放射光X線のように特に強度の高いX線を必要としない用途では、卓上型などの小型のX線源が使用される。しかし、その場合でも、X線ビームの進路を変えることが困難なため、複数の用途でX線ビームを利用するには大きな制約がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、X線源からのX線ビームを2以上の場所に供給することが可能なX線分配装置およびX線分配システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも小さく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
X線源からのX線ビームを通過させる開口であって、開口径がキャピラリの入射端の径以下である開口を有し、キャピラリ束の入射端に対向して配置された遮蔽板と、
X線源からのX線ビームに対して垂直な方向に遮蔽板を変位させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置である。
【0009】
本発明はまた、キャピラリ束のキャピラリの前記一端の開口面がX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に線状に配列されたキャピラリ群を含み、遮蔽板は、キャピラリの前記一端の外径以下の幅の相互に交差する2本の線状の開口部を有し、遮蔽板の2本の線状の開口部が共に、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して交差する方向に延在し、駆動部が、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して垂直な方向に、遮蔽板を変位させることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記構成においてさらに、遮蔽板の2本の線状の開口部の一方が、キャピラリ群の前記一端の開口面の配列方向に対して垂直な方向に延在することを特徴とする。
【0011】
本発明はまた、X線源からのX線ビームに対して垂直な方向における遮蔽板の位置と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部による遮蔽板の変位を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であってキャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも小さく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
X線源からのX線ビームを通過させる開口であって、開口径がキャピラリの入射端の径以下である開口をそれぞれ有し、開口の位置または数が異なる複数の遮蔽板と、
前記複数の遮蔽板のいずれか1つを、キャピラリ束の入射端に対向する所定位置に配置する駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置である。
【0013】
本発明はまた、遮蔽板と、前記所定位置に前記遮蔽板を配置したときにX線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部による前記所定位置への遮蔽板の配置を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明は、X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも大きく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
キャピラリ束をX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に変位させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置である。
【0015】
本発明はまた、X線源からのX線ビームに対して垂直な方向におけるキャピラリ束の位置と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つを経由して供給される供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部によるキャピラリ束の変位を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明は、X線源からのX線ビームを分配するX線分配装置であって、
湾曲したキャピラリを含む複数のキャピラリから成るキャピラリ束であって、キャピラリの一端は、その径がX線ビームの径よりも大きく、相互に隣接して配置されて、X線源からのX線ビームが入射する入射端を成し、キャピラリの他端は、相互に向きが異なるように配置されて、X線ビームが出射する出射端を成すキャピラリ束と、
キャピラリ束をX線源からのX線ビームに対して垂直な方向に変位させるとともに、キャピラリ束をX線源からのX線ビームを含む平面内で回動させる駆動部とを備えることを特徴とするX線分配装置である。

【0017】
本発明はまた、X線源からのX線ビームに対して垂直な方向におけるキャピラリ束の位置およびX線源からのX線ビームを含む平面内でのキャピラリ束の角度と、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つを経由して供給される供給先との対応関係を記憶しておき、入力された供給先にX線ビームが供給されるように、前記対応関係に基づいて、駆動部によるキャピラリ束の変位および回動を制御する制御部を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明はまた、キャピラリ束に含まれる全てのキャピラリが、50cm以上の曲率半径を有することを特徴とする。
【0019】
本発明はまた、湾曲したキャピラリの前記一端から所定距離までの部分が直線状であり、キャピラリ束の全てのキャピラリの前記一端から所定距離までの部分が、平行に配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明はさらに、X線分配装置と、X線源からのX線ビームがX線分配装置のキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して供給される1つ以上の供給先とを含むX線分配システムである。
【0021】
本発明はまた、X線分配システムにおいて、X線分配装置の制御部は、X線源からのX線ビームがキャピラリ束に含まれるキャピラリの1つ以上を経由して同時に供給される1つ以上の供給先を1つのグループとして、複数のグループを記憶しておき、各グループに含まれるすべての供給先にX線ビームが同時に供給されるように、駆動部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
開口を有する遮蔽板を含む本発明のX線分配装置によれば、X線源からの太い径のX線ビームの一部を、キャピラリ束に含まれる複数のキャピラリのうちの任意のキャピラリに選択的に入射させて、そのキャピラリ内での全反射によってX線ビームを導くことが可能である。キャピラリには、湾曲したキャピラリが含まれており、異なるキャピラリに入射したX線ビームは、異なる場所に分配される。複数のキャピラリによって同時に複数の場所にX線ビームを分配することも可能である。
【0023】
キャピラリ束をX線ビームに対して垂直方向に変位させる本発明のX線分配装置によれば、X線源から供給される細い径のX線ビームを、任意のキャピラリに選択的に入射させて導くことが可能である。
【0024】
キャピラリ束をX線ビームに対して垂直方向に変位させるとともに、キャピラリ束をX線源からのX線ビームを含む平面内で回動させる本発明のX線分配装置では、X線源から供給される細い径のX線ビームを、任意のキャピラリに選択的に入射させて導くことが可能である上、キャピラリ束を回動させることによって、キャピラリから出射するX線ビームの向きを調節することが可能である。
【0025】
全てのキャピラリの曲率半径を50cm以上とすると、X線ビームが全反射する条件を成立させることが容易である。また、全てのキャピラリの一端から所定距離までの部分が平行に配置されている構成では、X線源からのX線ビームに対するキャピラリ束の向きの設定が容易である。
【0026】
本発明のX線分配システムによれば、X線源からの単一のX線ビームを複数のX線ビームに分割して、複数の分配先に同時に供給することが可能である。このX線分配システムを放射光施設のビームラインに備えることで、X線源であるアンジュレータで発生させたX線ビームを複数の研究装置で同時に利用することが可能になって、X線ビームを用いる研究に対する時間的制約が軽減され、また、放射光施設の利用効率が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図2】第1の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束および遮蔽板それぞれの正面図である。
【図3】第1の実施形態のX線分配装置の遮蔽板を変位させるための構成を模式的に示す図である。
【図4】第1の実施形態のX線分配装置におけるX線源からのX線ビームの供給先の指定方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図6】第2の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束および遮蔽板それぞれの正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図8】第3の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束ならびに遮蔽板および保持部それぞれの正面図である。
【図9】第3の実施形態のX線分配装置の遮蔽板を選択的に所定位置に配置するための構成を模式的に示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図11】第4の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束および遮蔽板それぞれの正面図である。
【図12】第4の実施形態のX線分配装置における遮蔽板の位置とキャピラリ束から出射するX線ビームの関係の2つの例を示す図である。
【図13】本発明の第5の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図14】第5の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束の正面図である。
【図15】第5の実施形態のX線分配装置のキャピラリ束を変位させるための構成を模式的に示す図である。
【図16】第1~第5の実施形態のX線分配装置で採用し得る他のキャピラリ束を模式的に示す側面図である。
【図17】本発明の第6の実施形態のX線分配装置の光学構成を模式的に示す側面図である。
【図18】第6の実施形態のX線分配装置に含まれるキャピラリ束の正面図である。
【図19】第6の実施形態のX線分配装置のキャピラリ束を変位および回動させるための構成を模式的に示す図である。
【図20】本発明の第7の実施形態のX線分配システムの構成を模式的に示す図である。
【図21】第6の実施形態のX線分配装置を使用した実施例におけるパラメータを説明する図である。
【図22】第6の実施形態のX線分配装置を使用した実施例における、分配されたX線ビームの位置および強度を示す図である。
【図23】第6の実施形態のX線分配装置を使用した実施例における、キャピラリ束の変位量と分配先の位置との関係、およびキャピラリ束の回動量と分配先の位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の実施形態のX線分配装置10の光学構成を図1の側面図に模式的に示す。X線分配装置10は、キャピラリ束11および遮蔽板13を有する。キャピラリ束11はガラスまたは樹脂で作製されている。キャピラリ束11を成す個々のキャピラリ12は、中空の内部に存在する空気と、その周囲のガラスまたは樹脂材料との屈折率の差による両者の界面での全反射によって、X線源から入射するX線ビーム5を中空の内部で伝播させる。なお、図示したように、X線源からのX線ビーム5の進行方向をz方向、z方向に垂直な1方向をx方向、z方向およびx方向に垂直な方向をy方向とする。

【0029】
個々のキャピラリ12は、その一端12aにおける外径が十数μm、内径が約10μmであり、長さが約5cmである。キャピラリ12には、湾曲しているものと湾曲していないものとが含まれている。湾曲したキャピラリ12であっても、一端12aから所定距離までの部分は、湾曲しておらず直線状である。また、湾曲している部分は、他端12bに近づくにつれて、外径、内径ともに徐々に細くなっている。さらに、全てのキャピラリ12の一端12aから他端12bまでのあらゆる部分は、曲率半径が50cm以上である。このように、キャピラリ12の曲率半径を最小でも50cmとすることによって、キャピラリ12の一端12aから他端12bまでのどの部位においても、内部の界面に対するX線の入射角を臨界角よりも大きくすること、つまり全反射の条件を成立させることが可能になる。

【0030】
全てのキャピラリ12は、一端12aを揃えて(z方向の位置をほぼ同じにして)、直線状の部分が相互に平行になるように隣接して配置されている。キャピラリ12の一端12aは、X線源からのX線ビーム5に対するキャピラリ束11の入射端11aを成す。キャピラリ12の他端12bも、揃えて配置されており、キャピラリ束11の出射端11bを成しているが、向きが相互に異なっている。したがって、キャピラリ12内部を伝播して他端12bから出射するX線ビーム6の進行方向は、キャピラリ12ごとに異なる。

【0031】
図2の(a)に、キャピラリ束11の正面図を示す。本実施形態のX線分配装置10では、キャピラリ束11のキャピラリ12は、一端12aの開口面がx方向に1次元に配列されている。キャピラリ束11は、中央に配置された全体的に直線状のキャピラリに関して、x方向において対称である。なお、X線源からのX線ビーム5に対するキャピラリ束11の位置は、x方向、y方向、z方向全てにおいて、固定である。

【0032】
キャピラリ12の配列方向(x方向)におけるキャピラリ束11の入射端11aの大きさは、約3mmであり、平行ビームであるX線源からのX線ビーム5の直径とほぼ同じである。X線分配装置10は、X線源からのX線ビーム5の一部を個々の分配先に導くもので、太い径のX線ビーム5を供給するX線源と組み合せて使用するのに、適している。

【0033】
図2の(b)に、遮蔽板13の正面図を示す。遮蔽板13は、開口14を1つのみ有している。開口14は円形であり、個々のキャピラリ12の一端12aにおける外径以下の直径を有している。遮蔽板13は、X線源からのX線ビーム5を吸収する材料(たとえば鉛)で作製されており、開口14のみがX線ビーム5を通過させ得る。遮蔽板13は、図1に示したように、キャピラリ束11の入射端11aに対向するように配置され、キャピラリ束11の入射端11aのうち、開口14に臨む部位以外をX線ビーム5から遮蔽する。

【0034】
遮蔽板13は、キャピラリ束11の入射端11aに対向する位置において、X線源からのX線ビーム5に対して垂直で、キャピラリ12の一端12aの配列に平行な方向(つまり、x方向)に、変位し得るように保持されている。遮蔽板13を変位させることで、X線源からのX線ビーム5が開口14を通過して入射するキャピラリ12が変化する。キャピラリ12の他端12bの向きが異なっているので、キャピラリ束11から出射するX線ビーム6の方向は変化する。これにより、X線源からのX線ビーム5が分配されて、異なる場所に供給される。

【0035】
遮蔽板13を変位させるためのX線分配装置10の構成を図3に示す。X線分配装置10は、遮蔽板13を保持するステージ15、ステージ15をx方向に変位させるモータ16、およびモータ16を制御する制御部17を備えている。制御部17は、演算装置17a、記憶装置17b、表示装置17cおよび入力装置17dを含むコンピュータシステムである。

【0036】
記憶装置17bは、x方向における遮蔽板13の位置と、遮蔽板13の開口14に一端12aが臨むキャピラリ12との対応関係を記憶しており、さらに、すべてのキャピラリ12の他端12bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度を記憶している。X線ビーム6のz方向に対する角度で供給先は定まるので、記憶装置17bは、x方向における遮蔽板13の位置と、X線源からのX線ビーム5がキャピラリ束11の1つのキャピラリ12によって供給される供給先との対応関係を記憶していることになる。演算装置17aは、入力装置17dを介して使用者から指示された供給先にX線源からのX線ビーム5が供給されるように、記憶装置17bが記憶している対応関係に基づき、モータ16によるステージ15の変位を制御する。

【0037】
X線源からのX線ビーム5の供給先の指定方法を図4に示す。X線ビーム5の供給先は、キャピラリ束11の出射端11bからのz方向の距離Lと、X線ビーム6が出射するキャピラリ12の他端12bの中心からx方向の距離αとで規定される。使用者は、入力装置17dを介して距離Lと距離αを入力することによって、供給先を指定する。

【0038】
演算装置17aは、入力された距離Lと距離αを用いてθ=arctan(α/L)の演算を行い、出射するX線ビーム6のz方向に対する角度が、算出された角度θに最も近いキャピラリ12を見出し、そのキャピラリ12の一端12aに開口14が対向するように、記憶している対応関係に基づいて、モータ16によるステージ15の変位を制御する。これにより、所望の位置へのX線ビーム5の供給がなされる。距離Lと距離αとを入力することに代えて、供給先の番号を入力するようにしてもよい。この場合、記憶装置17bは、さらに、供給先の番号と、その供給先に向うX線ビーム6のz方向に対する角度との対応関係を、記憶しておくことになる。

【0039】
なお、本実施形態においては、短いキャピラリ12でキャピラリ束11を構成し、キャピラリ12の他端12bから、大きく離れた位置にX線ビーム6を分配するようにしている。したがって、キャピラリ束11と分配先との間に、障害物が存在してはならない。キャピラリ束11に含まれる各キャピラリ12を長くして、分配先の直前にキャピラリ12の他端12bが位置するようにしてもよい。この場合、障害物を避けるように湾曲させたキャピラリを使用することが可能である。また、本実施形態では、個々のキャピラリ12の径が一定ではないキャピラリ束11を使用しているが、径が一端12aから他端12bまで一定のキャピラリでキャピラリ束を構成してもよい。

【0040】
本発明の第2の実施形態のX線分配装置20の光学構成を図5の側面図に模式的に示す。X線分配装置20は第1の実施形態のX線分配装置10に類似しているが、キャピラリ束21が複数のキャピラリ22をx方向およびy方向に2次元に配列して成る点、および、遮蔽板23が2つの開口24を有している点で相違している。図6に、キャピラリ束21および遮蔽板23の正面図を示す。キャピラリ束21の入射端21aは、1辺が約3mmの正方形である。

【0041】
X線分配装置20においては、開口24を通過してキャピラリ束21に入射するX線ビームが2本になり、同時に2つの位置にX線ビームを分配することが可能である。なお、遮蔽板23の開口24の数は3以上であってもよい。

【0042】
X線分配装置20においても、遮蔽板23を変位させることによって、X線ビームを伝播させるためのキャピラリ22を選択することが可能である。X線分配装置20においては、遮蔽板23を、x方向のみならず、y方向にも変位させることが可能である。遮蔽板23を変位させるための構成は、図3に示したものに類似しており、遮蔽板を保持するステージがx方向およびy方向の双方に変位可能である点でのみ、相違している。また、X線源からのX線ビーム5を使用者によって指定された供給先に供給する方法も、第1の実施形態と類似している。本実施形態では、制御部の記憶装置は、すべてのキャピラリ12の他端12bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度のみならずx方向またはy方向に対する角度も記憶することになる。

【0043】
本発明の第3の実施形態のX線分配装置30の光学構成を図7の側面図に模式的に示す。X線分配装置30は、キャピラリ束31、6つの遮蔽板33、および遮蔽板33を保持する保持部35を有する。図8の(a)に、キャピラリ束31の正面図を示す。キャピラリ束31は、第2の実施形態のX線分配装置20におけるキャピラリ束21と同様に、複数のキャピラリ32をx方向およびy方向に2次元に配列して構成されている。

【0044】
図8の(b)に、遮蔽板33および保持部35の正面図を示す。保持部35は、正六角形の保持板35aと、保持板35aをその中心の周りに回転し得るように支持する支持部35bより成る。遮蔽板33は、保持板35aの縁に取り付けられており、保持板35aと共に回転する。保持板35aの回転によって、6つの遮蔽板33のうちのいずれか1つが、キャピラリ束31の入射端31aに対向する所定位置に選択的に配置される。

【0045】
6つの遮蔽板33には、それぞれ1つ以上の開口34が設けられている。開口34の位置および/または数は、遮蔽板33ごとに異なっている。したがって、異なる遮蔽板33をキャピラリ束31の入射端31aに対向する所定位置に配置することで、X線源からのX線ビーム5の分配先を変えることができる。なお、6つの遮蔽板33に、少なくとも1つの開口34の位置が同じである2つ以上の遮蔽板が含まれるようにしてもよい。このようにすると、所定位置に配置する遮蔽板33を変えることによって、X線源からのX線ビーム5の分配先を一部のみ変更しながら、X線ビーム5が継続して分配される分配先が存在するようにすることが可能になる。

【0046】
6つの遮蔽板33のいずれか1つを選択的に所定位置に配置するためのX線分配装置30の構成を、図9に示す。X線分配装置30は、前述の保持部35の保持板35aを回転させるモータ36、およびモータ36を制御する制御部37を備えている。制御部37は、演算装置37a、記憶装置37b、表示装置37c、入力装置37dを含むコンピュータシステムである。

【0047】
記憶装置37bは、遮蔽板33と、遮蔽板33がキャピラリ束31の入射端31aに対向する所定位置にあるときの開口34に臨むキャピラリ32との対応関係を記憶しており、さらに、すべてのキャピラリ32の他端32bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度およびx方向に対する角度を記憶している。つまり、記憶装置37bは、x方向における遮蔽板33の位置と、X線源からのX線ビーム5がキャピラリ束31の1つ以上のキャピラリ32によって供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶している。演算装置37aは、入力装置37dを介して使用者から指示された供給先にX線源からのX線ビーム5が供給されるように、記憶装置37bが記憶している対応関係に基づき、モータ36による保持板35aの回転量を制御して、入射端31aに対向する所定位置に存在する遮蔽板33を切替える。使用者は、2以上のキャピラリ32を指定することができる。なお、遮蔽板の数ならびに遮蔽板に設ける開口の位置および数に制限はない。

【0048】
本発明の第4の実施形態のX線分配装置40の光学構成を図10の側面図に模式的に示す。X線分配装置40は、キャピラリ束41および遮蔽板43を有する。キャピラリ束41および遮蔽板43の正面図を図11に示す。キャピラリ束41は、第1の実施形態のX線分配装置10におけるキャピラリ束10と同様に、キャピラリ42の一端42aの開口面がx方向に1次元に並ぶように配列されている。遮蔽板43は、相互に交差する2つの直線部44a,44bを含む開口44を有している。

【0049】
開口44の直線部44a,44bの幅(延在方向に垂直な方向の寸法)は、個々のキャピラリ42の一端42aにおける外径以下である。開口44は、一方の直線部44aが、キャピラリ42の配列方向に対して垂直なy方向に延在するように設けられており、他方の直線部44bは、直線部44aに対して鋭角を成している。直線部44aおよび直線部44bは、キャピラリ束40の入射端41aに同時に対向する。

【0050】
遮蔽板43をx方向および/またはy方向に変位させることで、開口44を通じてX線源からのX線ビーム5が入射するキャピラリ42が変化する。このとき、遮蔽板43を、キャピラリ42の配列方向に対して垂直な方向(y方向)にのみ変位させると、一端42aが一方の直線部44aに臨むキャピラリ42は変化しないが、一端42aが他方の直線部44bに臨むキャピラリ42は変化する。これにより、図12に示すように、X線ビーム6が出射するキャピラリ42の一方のみを変えて、分配先を一方のみ変化させることが可能である。なお、直線部44a,44bの交点が入射端41aに対向する状態では、X線源からのX線ビーム5の分配先は1つのみになる。

【0051】
遮蔽板43を変位させるための構成は、図3に示した構成と類似したものになる。本実施形態においては、記憶装置は、x方向およびy方向における遮蔽板43の位置と、開口44の直線部44a,44bに臨むキャピラリ42との対応関係と、すべてのキャピラリ42の他端42bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度を記憶しておく。つまり、記憶装置は、x方向およびy方向における遮蔽板43の位置と、X線源からのX線ビーム5がキャピラリ束41の1つ以上のキャピラリ42によって供給される1つ以上の供給先との対応関係を記憶しておく。演算装置は、使用者から指定された供給先にX線源からのX線ビーム5が供給されるように、記憶装置が記憶している対応関係に基づき、モータによるステージの変位を制御する。

【0052】
なお、開口44の一方の直線部44aを、他方の直線部44bと同様に、キャピラリ42の配列方向に斜交する方向に延在させてもよい。このような配置では、X線源からのX線ビーム5の分配先を両方とも変化させることができる。また、開口44が3つ以上の直線部を有する構成としてもよく、直線部が交差しない構成としてもよい。

【0053】
本発明の第5の実施形態のX線分配装置50の光学構成を図13の側面図に模式的に示す。X線分配装置50は、キャピラリ束51を有しているが、遮蔽板を有しておらず、X線源から供給される細い径のX線ビーム5を分配する。キャピラリ束51の正面図を図14に示す。キャピラリ束51は、個々のキャピラリ52をx方向に1次元に配列して成る。

【0054】
X線分配装置50においては、キャピラリ束51をキャピラリ52の配列方向であるx方向に変位させることによって、X線源からのX線ビーム5が入射するキャピラリ52を変化させて、分配先を変える。キャピラリ束51をx方向に変位させるための構成を図15に示す。X線分配装置50は、キャピラリ束51を保持するステージ55、ステージ55をx方向に変位させるモータ56、およびモータ56を制御する制御部57を備えている。制御部57は、演算装置57a、記憶装置57b、表示装置57cおよび入力装置57dを含むコンピュータシステムである。

【0055】
記憶装置57bは、x方向におけるキャピラリ束51の位置と、X線源からのX線ビーム5に一端52aが対向するキャピラリ52との対応関係を記憶しており、さらに、すべてのキャピラリ52の他端52bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度を記憶している。つまり、記憶装置57bは、x方向におけるキャピラリ束51の位置と、キャピラリ束51の1つのキャピラリ52によってX線源からのX線ビーム5が供給される供給先との対応関係を記憶している。演算装置57aは、入力装置57dを介して使用者から指示された供給先にX線源からのX線ビーム5が供給されるように、記憶装置57bが記憶している対応関係に基づき、モータ56によるステージ55の変位を制御する。

【0056】
なお、上記の第1~第5の実施形態のX線分配装置10~50においては、出射する複数のX線ビームを1点に収束させる方向に湾曲しているキャピラリ束を使用しているが、図16に示すように、出射するX線ビームを発散させる方向に湾曲しているキャピラリ束71を使用してもよい。また、キャピラリ束に含まれるキャピラリの湾曲方向を個別に相違させてもよい。

【0057】
本発明の第6の実施形態のX線分配装置60の光学構成を図17の側面図に模式的に示す。X線分配装置60は、第5の実施形態のX線分配装置50と同様に、キャピラリ束61を有しているが、遮蔽板を有しておらず、X線源から供給される細い径のX線ビーム5を分配する。

【0058】
キャピラリ束61の正面図を図18に示す。キャピラリ束61は、個々のキャピラリ62をx方向に1次元に配列して成る。キャピラリ束61のキャピラリ62のうち、中央に位置する直線状のもの以外のキャピラリは、一端62aから他端62bまで一様な曲率半径で湾曲している。外側に位置するキャピラリ62ほど曲率半径は小さいが、最も外側のキャピラリ62の曲率半径は50cm以上である。キャピラリ束61の長さ(z方向の寸法)は約5cmであり、キャピラリ束61の入射端61aの大きさ(x方向の寸法)は約3mmである。個々のキャピラリ62の一端62aにおける外径は約10μmである。

【0059】
キャピラリ束61は、キャピラリ62の配列方向であるx方向に変位可能であり、また、矢印Aで示したように、z方向およびx方向に垂直なy方向に平行で、キャピラリ束61の中心を通る軸を中心として、回動可能である。キャピラリ束61をx方向に変位させることで、X線源からのX線ビーム5が入射するキャピラリ62を変化させることが可能である。また、キャピラリ束61を、y軸に平行な軸の周りに回転させることにより、つまり、X線源からのX線ビーム5を含む面内で回転させることにより、個々のキャピラリ62の他端62b近傍部位の向き(z方向に対する角度)を調節することが可能になり、分配先を精密に設定することができる。

【0060】
さらに、この回動によって、隣接する2つのキャピラリ62の一方のみが、入射したX線に対する全反射の条件を満たすようにすることも可能であり、X線源からのX線ビーム5が隣接する2つのキャピラリ62に跨って入射した場合でも、一方のキャピラリ62のみがX線ビームを伝播させるようにすることができる。したがって、所望の分配先のみに、X線ビーム5を分配することが可能である。

【0061】
キャピラリ束61を変位させ回動させるための構成を図19に示す。X線分配装置60は、キャピラリ束61を保持し、y方向に平行でキャピラリ束61の中心を通る軸の周りに回動可能なスイベルステージ65、スイベルステージ65をx方向に変位させるモータ66a、スイベルステージ65をy方向に平行な軸の周りに回動させるモータ66b、ならびにモータ66aおよびモータ66bを制御する制御部67を備えている。制御部67は、演算装置67a、記憶装置67b、表示装置67cおよび入力装置67dを含むコンピュータシステムである。

【0062】
記憶装置67bは、x方向におけるキャピラリ束61の位置およびy軸に平行な軸の周りのキャピラリ束61の角度と、X線源からのX線ビーム5に一端62aが対向するキャピラリ62との対応関係を記憶しており、さらに、すべてのキャピラリ32の他端32bから出射するX線ビーム6の、z方向に対する角度を記憶している。つまり、記憶装置37bは、x方向におけるキャピラリ束61の位置およびy軸に平行な軸の周りのキャピラリ束61の角度と、キャピラリ束61の1つのキャピラリ62によってX線源からのX線ビーム5が供給される供給先との対応関係を記憶している。記憶装置67bは、また、入射したX線ビームが全反射の条件(臨界角以上の入射角)を満たし得る個々のキャピラリ62の回動量を記憶している。

【0063】
演算装置67aは、入力装置67dを介して使用者から指示された供給先付近にX線ビーム6を導き得るいくつかのキャピラリ62を、記憶装置67bが記憶している対応関係に基づいて見出し、それらのキャピラリ62の中から、X線ビーム6が供給先に厳密に達するように回動量を調節することが可能なものを選出する。そして、選出したキャピラリ62にX線源からのX線ビーム5が入射し、かつ、そのキャピラリ62から供給先にX線ビームが達するように、モータ66aによるスイベルステージ65の変位を制御し、モータ66bによるスイベルステージ65の回動を制御する。

【0064】
なお、キャピラリ62を1次元に配列したキャピラリ束61に代えて、キャピラリ62を2次元に配列したキャピラリ束を用いることも可能である。その場合、スイベルステージ65としては、x方向とy方向の双方にキャピラリ束変位させ、かつ、y方向に平行な軸のみならず、x方向に平行な軸の周りにもキャピラリ束を回動させるものを使用し、モータ66a,66bに対応するもう1組のモータを備える。キャピラリ束の変位および回動の制御も、2方向について行う。

【0065】
本発明の第7の実施形態であるX線分配システムの構成を図7に模式的に示す。X線分配システム100は、X線分配装置110と、X線分配装置110からX線ビームが供給される供給先120を含む。

【0066】
X線分配装置110は、X線源からのX線ビーム5を同時に複数のX線ビーム6として分配するもので、たとえば、第2~第4の実施形態のX線分配装置20,30,40である。X線分配装置110は、キャピラリ束111、遮蔽板113、駆動部116および制御部117を含む。キャピラリ束111、遮蔽板113および制御部117の構成および機能は、第2~第4の実施形態で説明したとおりである。駆動部116は、遮蔽板113をキャピラリ束111に対して変位させる、あるいは複数の遮蔽板113の1つをキャピラリ束111に対向する所定位置に配置するもので、たとえば前述のモータ36である。

【0067】
供給先120は複数存在し、いくつかのグループ121にまとめられている。個々のグループ121に含まれるすべての供給先120には、X線分配装置110からの複数のX線ビーム6が同時に供給される。1つのグループ121に含まれる供給先120には、たとえば、X線ビームによって対象物に処理を施す実験装置、X線ビームによって対象物の特性を測定する測定装置、X線ビーム自体の状況を監視するビームモニタなどが含まれる。なお、異なるグループ121に同一の供給先120(たとえばビームモニタ)が含まれてもよい。

【0068】
X線分配装置110の制御部117は、前述のように、遮蔽板113の位置または所定位置に配置される遮蔽板113と、X線ビーム5がキャピラリ束111によって供給される供給先120との対応関係を記憶しており、1つのグループ121に含まれるすべての供給先に、X線ビーム6が同時に供給されるように、駆動部116による遮蔽板113の変位または遮蔽板113の所定位置への配置を、制御する。換言すれば、1つのグループ121には、キャピラリ束111によってX線ビーム6が同時に供給される供給先のみが含まれる。なお、供給先120のグループ分けは、遮蔽板113に基づいて、あらかじめ行われている。

【0069】
本X線分配システム100では、使用者は、個々の供給先120の位置を指定するのではなく、供給先120のグループ121のグループ番号、グループ名称、実験名称、プロジェクト名称等を指定する。したがって、供給先120の切り替えが極めて容易である。本X線分配システム100を照射光施設のX線ビームラインに採用することで、複数の研究装置でX線ビームを同時に利用することが可能になって、研究に対する時間的制約が軽減され、また、照射光施設の利用効率が大きく向上する。しかも、運用が容易である。
【実施例】
【0070】
第6の実施形態のX線分配装置60を用いてX線ビームを分配し、分配先におけるX線ビームの強度を測定した。測定は、図21に示すように、キャピラリ束61をx方向にΔx(mm)だけ変位させ、キャピラリ束61の中心を通りy軸に平行な軸の周りにキャピラリ束61をθy(゜)だけ回動させて、キャピラリ束61の出射端61bからのz方向の距離がL(mm)の平面上に、X線検出器を配置して、分配されたX線ビームの強度を検出することにより行った。パラメータΔx、θyおよびLを表1に示す。なお、X線源からのX線ビーム5の波長は0.1nmであり、その直径は約200μmである。
【実施例】
【0071】
[表1]
測定 キャピラリ束 キャピラリ束 分配先までの
番号 変位量Δx(mm) 回動量θy(゜) 距離L(mm)
M1 -1.5 -1.58 20
M2 -1.5 -1.58 45
M3 -0.5 -0.54 45
M4 -0.5 -0.54 20
M5 0.5 0.54 20
M6 0.5 0.54 45
M7 1.5 1.66 45
M8 1.5 1.66 20
【実施例】
【0072】
測定番号M1~M8の測定結果を図22に示す。図22において、横軸は、分配先のx方向の位置を表しており、縦軸は、各位置でのX線ビームの相対強度を表す。なお、図22においてM0と記したピークは、測定系からキャピラリ束61を取り除き、距離Lが20mmの位置で、X線源からのX線ビーム5を直接測定したものである。
【実施例】
【0073】
変位量Δxおよびθyがそれぞれ同一の測定(M1,M2/M3,M4/M5,M6/M7,M8)においては、距離Lの違いにかかわらず、ピーク幅およびピーク高さに大きな差異がない。これより、キャピラリ62を出射したX線ビーム6は、あまり発散することなく、ほぼ平行ビームとして分配されることが判る。
【実施例】
【0074】
図22に示した測定結果を、キャピラリ62の変位量Δxと分配先の位置(x方向距離)との関係、およびキャピラリ62の回動量θyと分配先の位置(x方向距離)との関係として表した図を、図23に示す。図23の(a)に示すように、分配先のx方向の位置は、変位量Δxに比例しており、また、図23の(b)に示すように、分配先のx方向の位置は、回動量θyにも比例している。(a),(b)のどちらにおいても、z方向の距離Lが大きいほど直線の傾きは大きくなっており、これは、キャピラリ62からのz方向の距離が大きいほど、X線ビームが大きく分離されることを示している。
【実施例】
【0075】
本実施例より、第6の実施形態のX線分配装置60によって、X線源からのX線ビーム5を確実に分配し得ることが判る。また、遮蔽板またはキャピラリ束の変位のみを含み、したがって原理的に第6の実施形態よりも簡単な第1~第5の実施形態のX線分配装置10,20,30,40,50によっても、X線源からのX線ビーム5を分配し得ることが理解される。
【符号の説明】
【0076】
5,6 X線ビーム
10,20,30,40,50,60 X線分配装置
11,21,31,41,51,61,71 キャピラリ束
11a,21a,31a,41a,51a,61a,71a 入射端
11b,21b,31b,41b,51b,61b,71b 出射端
12,22,32,42,52,62 キャピラリ
12a,22a,32a,42a,52a,62a 一端
12b,22b,32b,42b,52b,62b 他端
13,23,33,43 遮蔽板
14,24,34,44 開口
44a,44b 直線部
15,55 ステージ
65 スイベルステージ
35 保持部
35a 保持板
35b 支持部
16,36,56,66a,66b モータ
17,37,57,67 制御部
17a,37a,57a,67a 演算装置
17b,37b,57b,67b 記憶装置
17c,37c,57c,67c 表示装置
17d,37d,57d,67d 入力装置
100 X線分配システム
110 X線分配装置
111 キャピラリ束
113 遮蔽板
116 駆動部
117 制御部
120 供給先
121 供給先グループ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22