TOP > 国内特許検索 > 二本鎖核酸の製造方法 > 明細書

明細書 :二本鎖核酸の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5713286号 (P5713286)
公開番号 特開2012-183024 (P2012-183024A)
登録日 平成27年3月20日(2015.3.20)
発行日 平成27年5月7日(2015.5.7)
公開日 平成24年9月27日(2012.9.27)
発明の名称または考案の名称 二本鎖核酸の製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
請求項の数または発明の数 13
全頁数 38
出願番号 特願2011-048342 (P2011-048342)
出願日 平成23年3月4日(2011.3.4)
審査請求日 平成25年12月6日(2013.12.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】沖 昌也
【氏名】内田 博之
【氏名】畑中 彬良
【氏名】舟越 稔
個別代理人の代理人 【識別番号】100080791、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 一
【識別番号】100125070、【弁理士】、【氏名又は名称】土井 京子
【識別番号】100136629、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 光宜
【識別番号】100121212、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弥栄子
【識別番号】100122688、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 健二
【識別番号】100117743、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 美由紀
【識別番号】100163658、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 順造
審査官 【審査官】木原 啓一郎
参考文献・文献 Methods in Enzymology,2002年,Vol.350,p.445-469
FEMS Microbiology Letters,2011年10月10日,Vol.325, No.2,p.140-147
調査した分野 C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
相同的組換えによって、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性を有する二本鎖核酸の製造方法であって、
当該二本鎖核酸が、
(A)当該標的部位又は標的領域の5’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列、
(B)第一の目的ヌクレオチド配列、
(C)選択マーカー、
(D)第二の目的ヌクレオチド配列、及び
(E)当該標的部位又は標的領域の3’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一である、
センス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸であり、
方法が以下の工程を含む、二本鎖核酸の製造方法:
(i)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び
15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)からなる第一のプライマー
を用いて核酸伸長反応を行い、
(A)のヌクレオチド配列、(B)のヌクレオチド配列及び(C)のヌクレオチド配列を5’側から、(A)、(B)、(C)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列が隣接している、
第一の一本鎖核酸を合成すること;
(ii)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び
15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E)のヌクレオチド配列の相補配列が隣接している)からなる第二のプライマー
を用いて核酸伸長反応を行い、
(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)、(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)、及び(C)のヌクレオチド配列の相補配列(C’)を、5’側から、(E’)、(D’)、(C’)の順で含み、
(E’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列が隣接している、
第二の一本鎖核酸を合成すること;
(iii)第一の一本鎖核酸と第二の一本鎖核酸とを混合し、核酸伸長反応を行うことにより、当該二本鎖核酸を得ること;及び
(iv)(iii)で得た二本鎖核酸からなる鋳型、第一のプライマー、及び第二のプライマーを用いてPCR反応を行い、当該二本鎖核酸を増幅すること。
【請求項2】
標的部位又は標的領域が、標的遺伝子のコード領域内に存在する、請求項1記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項3】
目的ヌクレオチド配列が、ポリペプチド残基をコードしており、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列がインフレームで連結されており、且つ/又は(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列がインフレームで連結されている、請求項2記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項4】
当該二本鎖核酸が、
(F)発現制御配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(F)、(D)、(E)の順で更に含み、
(F)のヌクレオチド配列は(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結されているセンス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸であり、
工程(i)及び(ii)において用いられる、環状DNAが当該発現制御配列を更に含み、当該発現制御配列は目的ヌクレオチド配列と作動可能に連結されており、
第二の一本鎖核酸が、(F)のヌクレオチド配列の相補配列(F’)を、5’側から、(E’)、(D’)、(F’)、(C’)の順で更に含み、(F)のヌクレオチド配列が(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結される様式で(F’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列とが連結されている、
請求項3に記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項5】
当該ポリペプチド残基がタグを含む、請求項3又は4記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項6】
選択マーカーが、肯定的選択及び否定的選択の双方が可能な選択マーカーである、請求項1記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項7】
選択マーカーがオロチジン-5’-リン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子である、請求項6記載の二本鎖核酸の製造方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体の製造方法:
(i)請求項1~7のいずれか1項に記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を製造すること;
(ii)(i)で得た二本鎖核酸により宿主細胞を形質転換すること;
(iii)(ii)で得た形質転換体から、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を選択すること;
(iv)(iii)で得た形質転換体を培養し、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列との間で、分子内相同的組換えを引き起こすこと;
(v)(iv)の培養物から、当該分子内相同的組換えを起こした形質転換体を選択し、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を得ること。
【請求項9】
以下を含む、請求項1記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を合成するためのキット:
(i)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNA、
(ii)15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii)15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)が隣接している)。
【請求項10】
以下を含む、請求項4記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を合成するためのキット:
(i’)当該選択マーカー、当該目的ヌクレオチド配列及び当該発現制御配列を含み、当該発現制御配列は目的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、環状DNA、
(ii’)15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii’)15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)が隣接している)。
【請求項11】
(ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で離れているか、隣接しているか、又は重複している、請求項9又は10記載のキット。
【請求項12】
(ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で隣接しているか、又は重複している、請求項11記載のキット。
【請求項13】
(ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で重複している、請求項12記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、形質転換に用いる二本鎖核酸の製造方法、当該製造方法に用いるキット、及び当該二本鎖核酸を用いた形質転換体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在までに、多くの生物においてそのゲノム配列が既に解読され公開されている。このゲノム情報を利用して、細胞内のゲノム配列中の目的の部位を人為的に改変すること、例えば形質転換体を作製することは、様々な生命現象の解明において重要な手段の一つとなっている。
【0003】
形質転換体は、宿主細胞内にDNAなどの核酸分子を導入し、ゲノム配列を改変することによって作製される。所望の形質転換体を作製するために、細胞内で起こる相同的組換え現象を利用した多くの方法が開発されている。従来より、クローニングしたDNA配列を改変して形質転換する方法、PCRにより増幅したDNA断片を用いて形質転換する方法、Cre-loxPシステムを用いて形質転換する方法などが知られている(非特許文献1及び2)。更に、目的の部位における相同組換え効率を高めるために、ゲノム配列中の目的の部位に二本鎖切断を生じさせる方法なども知られている(特許文献1及び2)。
【0004】
特定のアミノ酸配列からなるタグ(エピトープタグ、アフィニティー精製用タグなど)は、遺伝子の発現や機能を解明するために様々な生物における研究に利用されている。所望のタグをコードするヌクレオチド配列を、上記形質転換方法などにより目的の遺伝子にインフレームで挿入することで、タグの付加されたタンパク質を発現する形質転換体を作製することができる。
【0005】
相同組換えにより目的とする形質転換体を作製しようとする場合、標的遺伝子のプロモーター領域などへの不要なDNA配列の挿入により、遺伝子発現への影響が生じ、当該遺伝子本来の機能を解析することが困難になる場合がある。これを回避するために、目的の配列以外の不要なDNA配列(例えば選択マーカーなど)を染色体から除去しようとすると、あらかじめ複雑な構造の形質転換用DNA断片を作製しておく必要がある。具体的には、このような形質転換用DNA断片は、相同的組換えを起こすために必要な配列及び選択マーカーの他に、互いに相同な2つの配列を選択マーカーの両側に含んでいなければならない。その作製には通常煩雑なクローニング操作が必要となるため、迅速な研究開発の妨げとなっていた。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特表2007-501626号
【特許文献2】特表2009-502170号
【0007】

【非特許文献1】Methods in Enzymology, vol. 194, 281-301 (1991)
【非特許文献2】Methods in Enzymology, vol. 350, 445-469 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、染色体上の標的部位又は標的領域に目的とする配列のみが挿入された形質転換体を簡便に作製するための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、選択マーカー及び目的のヌクレオチド配列(タグをコードするヌクレオチド配列など)を含む単純な1つのプラスミドを鋳型として2種類のプライマーを用いてセンス鎖及びアンチセンス鎖を別々に合成した後、それらを混合し、二本鎖DNAを増幅することで、簡便に形質転換用DNA断片を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下を提供するものである。
[1]相同的組換えによって、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性を有する二本鎖核酸の製造方法であって、
当該二本鎖核酸が、
(A)当該標的部位又は標的領域の5’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列、
(B)第一の目的ヌクレオチド配列、
(C)選択マーカー、
(D)第二の目的ヌクレオチド配列、及び
(E)当該標的部位又は標的領域の3’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一である、
センス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸であり、
方法が以下の工程を含む、二本鎖核酸の製造方法:
(i)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び
15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)からなる第一のプライマー
を用いて核酸伸長反応を行い、
(A)のヌクレオチド配列、(B)のヌクレオチド配列及び(C)のヌクレオチド配列を5’側から、(A)、(B)、(C)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列が隣接している、
第一の一本鎖核酸を合成すること;
(ii)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び
15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E)のヌクレオチド配列の相補配列が隣接している)からなる第二のプライマー
を用いて核酸伸長反応を行い、
(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)、(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)、及び(C)のヌクレオチド配列の相補配列(C’)を、5’側から、(E’)、(D’)、(C’)の順で含み、
(E’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列が隣接している、
第二の一本鎖核酸を合成すること;
(iii)第一の一本鎖核酸と第二の一本鎖核酸とを混合し、核酸伸長反応を行うことにより、当該二本鎖核酸を得ること;及び
(iv)(iii)で得た二本鎖核酸からなる鋳型、第一のプライマー、及び第二のプライマーを用いてPCR反応を行い、当該二本鎖核酸を増幅すること。
[2]標的部位又は標的領域が、標的遺伝子のコード領域内に存在する、[1]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[3]目的ヌクレオチド配列が、ポリペプチド残基をコードしており、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列がインフレームで連結されており、且つ/又は(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列がインフレームで連結されている、[2]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[4]当該二本鎖核酸が、
(F)発現制御配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(F)、(D)、(E)の順で更に含み、
(F)のヌクレオチド配列は(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結されているセンス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸であり、
工程(i)及び(ii)において用いられる、環状DNAが当該発現制御配列を更に含み、当該発現制御配列は目的ヌクレオチド配列と作動可能に連結されており、
第二の一本鎖核酸が、(F)のヌクレオチド配列の相補配列(F’)を、5’側から、(E’)、(D’)、(F’)、(C’)の順で更に含み、(F)のヌクレオチド配列が(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結される様式で(F’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列とが連結されている、
[3]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[5]当該ポリペプチド残基がタグを含む、[3]又は[4]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[6]選択マーカーが、肯定的選択及び否定的選択の双方が可能な選択マーカーである、[1]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[7]選択マーカーがオロチジン-5’-リン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子である、[6]に記載の二本鎖核酸の製造方法。
[8]以下の工程を含む、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体の製造方法:
(i)[1]~[7]のいずれかに記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を製造すること;
(ii)(i)で得た二本鎖核酸により宿主細胞を形質転換すること;
(iii)(ii)で得た形質転換体から、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を選択すること;
(iv)(iii)で得た形質転換体を培養し、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列との間で、分子内相同的組換えを引き起こすこと;
(v)(iv)の培養物から、当該分子内相同的組換えを起こした形質転換体を選択し、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を得ること。
[9]以下を含む、[1]に記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を合成するためのキット:
(i)当該選択マーカー及び当該目的ヌクレオチド配列を含む環状DNA、
(ii)15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii)15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)が隣接している)。
[10]以下を含む、[4]に記載の二本鎖核酸の製造方法により二本鎖核酸を合成するためのキット:
(i’)当該選択マーカー、当該目的ヌクレオチド配列及び当該発現制御配列を含み、当該発現制御配列は目的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、環状DNA、
(ii’)15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii’)15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)が隣接している)。
[11](ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で離れているか、隣接しているか、又は重複している、[9]又は[10]に記載のキット。
[12](ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で隣接しているか、又は重複している、[11]に記載のキット。
[13](ii)又は(ii’)の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)又は(iii’)の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とが、目的ヌクレオチド配列上で重複している、[12]に記載のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二本鎖核酸の製造方法によれば、従来のような煩雑な操作を行なうことなく、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性を有する二本鎖核酸を簡便に作製することができる。また本発明の形質転換体の製造方法によれば、染色体上の所望の部位に目的のヌクレオチド配列のみが挿入された形質転換体を簡便に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、形質転換用二本鎖核酸作製の手順を示す。
【図2】図2は、発現制御配列を更に含む形質転換用二本鎖核酸作製の手順を示す。
【図3】図3は、形質転換体作製の手順を示す。
【図4】図4は、選択マーカーと3xFLAG-6xGLYを含むプラスミドpAG60-3xFLAG-6xGLYの制限酵素地図を示す。
【図5】図5は、形質転換用DNA断片の電気泳動の結果を示す。レーン1:マーカー(λ-StyI);レーン2:PCR産物(#510+#511);レーン3:PCR産物(#539+#540)。
【図6】図6は、3xFLAGが挿入されたURM1遺伝子産物の発現を確認するウェスタンブロッティングの結果を示す。レーン1:YPH499;レーン2:3xFLAG-URA3-3xFLAG-URM1;レーン3:3xFLAG-URM1。
【図7】図7は、発現制御配列(ADH1 promoter+開始コドン)のPCRによる増幅の結果を示す。レーン1:マーカー(λ-StyI);レーン2:PCR産物。
【図8】図8は、選択マーカー、3xFLAG-6xGLY及び発現制御配列(ADH1 promoter+開始コドン)を含むプラスミドpAG60-3xFLAG-6xGLYの制限酵素地図を示す。
【図9】図9は、形質転換用DNA断片の電気泳動の結果を示す。レーン1及び8:マーカー(λ-StyI);レーン2:PCR産物(プライマーセット(a));レーン3:PCR産物(プライマーセット(b));レーン4:PCR産物(プライマーセット(c));レーン5:PCR産物(プライマーセット(d));レーン6:PCR産物(プライマーセット(e));レーン7:PCR産物(プライマーセット(f))。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.二本鎖核酸の製造方法
本発明は、相同的組換えによって、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性を有する二本鎖核酸の製造方法(以下、本発明の二本鎖核酸製造方法ともいう)を提供する。

【0014】
本明細書において、二本鎖核酸とは、センス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイズした二本鎖領域を有する核酸分子であり、DNA、RNA、又はRNAとDNAのキメラ分子であり得るが、好ましくはDNAである。なお「核酸分子」と「ポリヌクレオチド」とは互換的に使用される。

【0015】
「組換え」とは、2つのポリヌクレオチド間で遺伝子情報が交換されるプロセスを意味する。「相同的組換え」とは、2つのポリヌクレオチド配列が相同的である場合の組換えを言う。相同的とは、2つのポリヌクレオチド配列が、規定された長さについて少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、85%以上、90%以上、より好ましくは95%以上、更により好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の配列同一性を有することを言う。2つのポリヌクレオチド配列の同一性は、例えば相同性解析プログラムBLAST等を用い、デフォルト条件にて計算することができる。

【0016】
「染色体上の標的部位又は標的領域」は、染色体上のヌクレオチド配列中の、目的ヌクレオチド配列が挿入される所望の2つのヌクレオチドの間の部位又は領域を意味する。当該2つのヌクレオチドは、隣接していても、1以上のヌクレオチドを挟んで離れていてもよい。2つのヌクレオチドが隣接している場合、染色体上のヌクレオチド配列が欠失することなく目的ヌクレオチド配列が挿入される。2つのヌクレオチドが1以上のヌクレオチドを挟んで離れている場合、当該1以上のヌクレオチドと置き換わって目的ヌクレオチド配列が挿入される。

【0017】
染色体上の標的部位又は標的領域は、本発明に係る二本鎖核酸を用いて、相同的組換えにより第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入し得る部位又は領域である限り、染色体上のどこに存在してもよく、染色体上の遺伝子(コード領域及び当該遺伝子の発現調節に関わる配列を含む)内に存在してもよい。この場合、当該遺伝子を標的遺伝子とも言う。標的遺伝子の機能解析を行なう観点から、染色体上の標的部位又は標的領域は、標的遺伝子のコード領域内に存在することが好ましい。標的領域の長さは、本発明に係る二本鎖核酸を用いて、相同的組換えにより第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入し得る限り、特に限定されないが、当該技術分野においては、通常1~数十kbp、好ましくは1~数kbp程度の長さの領域であれば、相同的組換えにより、所望の配列と置き換えることが可能であることが知られている。染色体(特に標的遺伝子)への影響を少なくする観点から、標的領域は短いことが好ましく、例えば、1000bp以下、500bp以下、250bp以下、100bp以下であり得る。最も好ましくは、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列は染色体上の標的部位に挿入される。

【0018】
「目的ヌクレオチド配列」は、染色体上の標的部位又は標的領域に挿入することが意図された任意のヌクレオチド配列であってよい。本発明の方法により製造される二本鎖核酸は、相同的な2つの目的ヌクレオチド配列を含み、一方を第一の目的ヌクレオチド配列、他方を第二の目的のヌクレオチド配列と呼ぶ。目的ヌクレオチド配列の長さは、特に限定されないが、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列とが分子内相同的組換えを起こすのに十分な長さであることが好ましく、例えば、10、15、20、25、又は30ヌクレオチド長以上である。また目的ヌクレオチド配列の長さは、一本鎖核酸又は二本鎖核酸の合成しやすさの観点から、5,000ヌクレオチド長以下であることが好ましく、例えば4,000、3,000、2,000、1,000、500、250、100、50、又は30ヌクレオチド長以下である。ここで「分子内相同的組換え」とは、1つの核酸分子内で起こる相同的組換えをいう。

【0019】
第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列とは同一又は実質的に同一である。本明細書において「同一」とは、ヌクレオチド配列が完全に一致すること(100%一致)をいう。実質的に同一とは、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列とが、ヌクレオチド配列中に1~数個のヌクレオチドの欠失、置換、挿入、又は付加を含むことをいう。欠失、置換、挿入、又は付加されるヌクレオチドの数は、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列が分子内相同的組換えを起こす限り特に限定されないが、例えば1~約5個、3個、2個又は1個であり得る。

【0020】
目的ヌクレオチド配列は、分子内相同的組換えを起こすこと以外の、他の機能を有していてもよい。このような他の機能を有する配列としては、例えば、ポリペプチド残基をコードするヌクレオチド配列、それ自体が機能を有するヌクレオチド配列などが挙げられる。

【0021】
目的ヌクレオチド配列がポリペプチド残基をコードするヌクレオチド配列である場合、当該ポリペプチド残基はタグであることが好ましい。タグとは、目的のタンパク質に遺伝子工学的に結合させることにより、その抗原性、他の物質との親和性、蛍光性、酵素活性などの性質に基づき当該タンパク質の検出、定量、精製などに利用されるものをいう。主にその抗原性が利用されるタグとしては、例えばFLAGタグ、V5タグ、T7タグ、Strep-tagII、RGS-6xHisタグ、Sタグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、HSVタグ、HAタグなどが挙げられる。主に他の物質との親和性が利用されるタグとしては、例えば6xHisタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質などが挙げられる。主にその蛍光性が利用されるタグとしては、例えば緑色蛍光タンパク質、DsRedなどが挙げられる。主にその酵素活性が利用されるタグとしては、例えばβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼなどが挙げられる。

【0022】
それ自体が機能を有するヌクレオチド配列としては、酵素の認識配列(制限酵素の認識配列、Creリコンビナーゼの認識配列(loxP)など)、プロモーター、エンハンサーなどのヌクレオチド配列が挙げられる。

【0023】
目的ヌクレオチド配列がポリペプチド残基をコードする配列である場合、当該ポリペプチド残基にリンカーが付加されるよう、リンカーをコードする配列が目的ヌクレオチド配列に含まれていてもよい。本明細書において、リンカーとは、当該ポリペチド残基の配列と標的遺伝子にコードされるポリペプチドの配列との間に介在するポリペプチド配列をいう。リンカーは、目的ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド残基及び標的遺伝子にコードされるポリペプチドの立体構造を乱さなければ、目的ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド残基のN末端、C末端の一方又は両方に付加してもよい。リンカーとしては、例えば6xGLY(6つの連続するグリシン残基からなるポリペプチド配列)、トロンビン認識部位、エンテロキナーゼ認識部位、Factor Xa 認識部位などが挙げられる。

【0024】
「選択マーカー」とは、形質転換などの実験において、形質転換体を非形質転換体から選別するのに用いられるDNAを意味する。選択マーカーとしては通常、薬剤耐性遺伝子や栄養要求性遺伝子などのような肯定的選択(当該選択マーカーを有する細胞が、それを有さない細胞よりも増殖において有利になることを利用して、当該選択マーカーを有する細胞を選択すること)が可能な選択マーカーが使用される。選択マーカーは形質転換などの実験に用いる宿主細胞に応じて適宜選択される。大腸菌において機能する選択マーカーとしては、例えばAmp、Tet、Cm、Km、Spc、Hyg、Gm、Rif、Zeocin、Blasticidinなどが挙げられるが、これらに限定されない。酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて機能する選択マーカーとしては、例えばURA3、TRP1、SUP4、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、KANMX、AUR1-C、CYH2、CAN1、PDR4及びhphMXなどが挙げられるが、これらに限定されない。哺乳類細胞において機能する選択マーカーとしては、例えばZeocin、Blasticidin、Hyg、Neomycinなどが挙げられるが、これらに限定されない。

【0025】
選択マーカーは、宿主細胞の染色体上の遺伝子との間での相同組換えを防ぐ目的で、宿主細胞とは異なる種由来のDNAであってもよい。例えば、宿主細胞がSaccharomyces cerevisiaeである場合、Candida albicansのURA3遺伝子を選択マーカーとすることができる。

【0026】
染色体に一旦挿入された選択マーカーを分子内相同的組換えにより染色体上から除去する場合には、否定的選択(当該選択マーカーを有する細胞が、それを有さない細胞よりも増殖において不利になることを利用して、当該選択マーカーを有さない細胞を選択すること)が可能な選択マーカーを利用することができる。そのような選択マーカーとしては、薬剤感受性遺伝子などが挙げられる。肯定的選択が可能な選択マーカーと否定的選択が可能な選択マーカーとを含む2以上の選択マーカーを用いることにより、或いは肯定的選択及び否定的選択の双方が可能な選択マーカーを用いることにより、肯定的選択及び否定的選択の両方を実現することができるが、肯定的選択及び否定的選択の双方が可能な選択マーカーを用いることが好ましい。このような肯定的選択及び否定的選択の双方が可能な選択マーカーは、当該分野において公知であり、例えばSaccharomyces cerevisiaeにおけるURA3、LYS2、CYH2、CAN1、TRP1、LYS5、FCY1などが挙げられるが、これらに限定されない。様々な生物種において利用可能であることから、Saccharomyces cerevisiaeにおけるURA3などのようなオロチジン-5’-リン酸脱炭酸酵素をコードする遺伝子を選択マーカーとすることが好ましい。このような否定的選択が可能な選択マーカーを使用することにより、分子内相同的組換えにより選択マーカーが染色体上から除去された細胞を効率よく選択することができる。

【0027】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸は、具体的には以下の構成を有する:
(A)染色体上の標的部位又は標的領域の5’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列、
(B)第一の目的ヌクレオチド配列、
(C)選択マーカー、
(D)第二の目的ヌクレオチド配列、及び
(E)当該標的部位又は標的領域の3’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一である、
センス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸。

【0028】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸のセンス鎖は、両末端に染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列((A)のヌクレオチド配列及び(E)のヌクレオチド配列)を有する。染色体の二本鎖のうち、いずれをセンス鎖としてもよいが、標的部位又は標的領域が染色体上の遺伝子(コード領域及び当該遺伝子の発現調節に関わる配列を含む)内に位置する場合、当該遺伝子のセンス鎖を染色体上のセンス鎖とすることができる。

【0029】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸に含まれるこれらの部分ヌクレオチド配列は、当該二本鎖核酸を用いて細胞を形質転換する際に、染色体上のヌクレオチド配列と相同的組換えを起こす。これにより、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性が当該二本鎖核酸に付与される。(A)のヌクレオチド配列及び(E)のヌクレオチド配列の長さは、相同的組換えを起こすのに十分な長さであればよく、当業者であれば宿主細胞に応じて適宜選択することができる。宿主細胞が酵母の場合は、(A)のヌクレオチド配列及び(E)のヌクレオチド配列の長さは、通常15bp以上、好ましくは30bp以上であれば相同的組換えに十分である(例えばNucleic Acids Research, 1995, Vol. 23, No. 14 2799-2800を参照)。相同的組換えの効率は、相同的組換えを起こすポリヌクレオチドの長さが長いほど効率が高くなるので、相同的組換え効率の向上の観点からは、(A)のヌクレオチド配列及び(E)のヌクレオチド配列の長さは、長いほど好ましい。しかしながら、プライマー合成の容易さの観点から、(A)のヌクレオチド配列及び(E)のヌクレオチド配列の長さは、通常250bp以下、好ましくは100bp以下である。

【0030】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸において、(A)及び(E)のヌクレオチド配列は、染色体上の標的部位又は標的領域のそれぞれ5’側及び3’側に隣接する。染色体上の標的部位又は標的領域を挟む2つの部分のいずれを5’側(又は3’側)とするかは、上記のように定めた染色体上のセンス鎖を基準にして決定される。(A)のヌクレオチド配列が「標的部位又は標的領域の5’側に隣接する」とは、(A)のヌクレオチド配列の3’末端のヌクレオチドが、標的部位又は標的領域を挟む2つのヌクレオチドのうち5’側のヌクレオチドに相当することを意味する。(E)のヌクレオチド配列が「標的部位又は標的領域の3’側に隣接する」とは、(E)のヌクレオチド配列の5’末端のヌクレオチドが、標的部位又は標的領域を挟む2つのヌクレオチドのうち3’側のヌクレオチドに相当することを意味する。

【0031】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸において、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接している。2つのヌクレオチド配列が隣接しているとは、2つのヌクレオチド配列が、その間に追加のヌクレオチドが存在することなく連続していることを意味する。

【0032】
染色体上の標的部位又は標的領域が、標的遺伝子のコード領域内に存在する場合、標的遺伝子にコードされるタンパク質にポリペプチド残基が挿入されるように、二本鎖核酸を設計することができる。この場合、当該ポリペプチド残基をコードするヌクレオチド配列を目的ヌクレオチド配列とし、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列とをインフレームで連結し、且つ/又は(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列とをインフレームで連結する。

【0033】
またこの場合、当該ポリペプチド残基は、タグ(FLAGタグ、V5タグ、T7タグ、Strep-tagII、RGS-6xHisタグ、Sタグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、HSVタグ、HAタグ、6xHisタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、緑色蛍光タンパク質、DsRed、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼなど)を含むことが好ましい。

【0034】
目的ヌクレオチド配列がポリペプチド残基をコードする配列である場合、当該ポリペプチド残基にリンカー(例えば6xGLY、トロンビン認識部位、エンテロキナーゼ認識部位、Factor Xa 認識部位など)が付加されるよう、リンカーをコードする配列が目的ヌクレオチド配列に含まれていてもよい。リンカーは、目的ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド残基及び標的遺伝子にコードされるポリペプチドの立体構造を乱さなければ、目的ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド残基のN末端、C末端の一方又は両方に付加してもよい。

【0035】
本発明の方法により製造される二本鎖核酸のセンス鎖上の(C)のヌクレオチド配列は、選択マーカーのセンス鎖(即ち、タンパク質をコードする鎖)であっても、その相補鎖であってもよい。

【0036】
(B)又は(D)のヌクレオチド配列と(C)のヌクレオチド配列との間のヌクレオチド配列は、本発明の二本鎖核酸製造方法において用いられる環状DNA由来の配列である。その長さは、一本鎖核酸又は二本鎖核酸の合成の容易さの観点から、短いほど好ましく、通常2,500ヌクレオチド長以下である。最も好ましくは0ヌクレオチド長であり、この場合(B)又は(D)のヌクレオチド配列と(C)のヌクレオチド配列とは隣接する。

【0037】
以上の構成を有する二本鎖核酸は、以下の工程(i)~(iv)を含む本発明の二本鎖核酸製造方法により製造することができる。尚、図1には本発明の二本鎖核酸製造方法の模式図を示す。

【0038】
工程(i)
まず、前記選択マーカー及び前記目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び第一のプライマーを用いて核酸伸長反応を行い、前記(A)のヌクレオチド配列、前記(B)のヌクレオチド配列及び前記(C)のヌクレオチド配列を5’側から、(A)、(B)、(C)の順で含み、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列が隣接している、第一の一本鎖核酸(好ましくは、DNA)を合成する。

【0039】
鋳型となる環状DNAは、前記選択マーカー及び前記目的ヌクレオチド配列を含む限り、それら以外の配列(バックボーン)は任意の配列であってよい。増幅し易さや取り扱い易さの観点から、環状DNAはプラスミドであることが好ましい。また環状DNAの大きさは、一本鎖核酸又は二本鎖核酸の合成の容易さの観点から、小さいほど好ましく、通常10kbp以下、好ましくは5kbp以下である。このような環状DNAは、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)等に記載されているような自体公知の遺伝子工学的技術により作製することができる。

【0040】
第一のプライマーは、15ヌクレオチド長以上である前記(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び前記(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)からなる。該核酸は好ましくはDNAである。(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列は、5’末端のヌクレオチドを含む限り、(B)のヌクレオチド配列の全長を上限として15ヌクレオチド長以上、好ましくは18ヌクレオチド長以上、より好ましくは20ヌクレオチド長以上の任意の長さの配列であってよい。

【0041】
核酸伸長反応は、DNAポリメラーゼなどの酵素、dNTPなどの基質、及びバッファーなどのその他の試薬を用いて、自体公知の方法により行なうことができる。DNAポリメラーゼは、好ましくはPCRに用いることの可能な耐熱性DNAポリメラーゼである。耐熱性DNAポリメラーゼは、Ex Taq(タカラバイオ株式会社製)、KOD(東洋紡績株式会社製)などとして市販されており、容易に入手可能である。この核酸伸長反応により、上記環状DNAの鋳型にアニールした第一のプライマーの3’末端に、鋳型に相補的な態様で連続的に核酸が付加することにより、第一の一本鎖核酸が合成される。

【0042】
核酸伸長反応は、耐熱性DNAポリメラーゼを使用するPCRにおいて一般的に使用される温度サイクル条件で数サイクル(例えば1~10サイクル)の反応を行うこともできる。しかしながら所要時間の短縮、酵素の安定性の観点から、核酸伸長反応は1サイクルであることが好ましい。

【0043】
第一の一本鎖核酸において、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接している。また(B)のヌクレオチド配列と(C)のヌクレオチド配列の間の配列は、鋳型である前記環状DNAにおける目的ヌクレオチド配列の3'末端と選択マーカーの5'末端との間の配列と一致する。

【0044】
(C)のヌクレオチド配列よりも3’側の部分は、第一の一本鎖核酸に(C)のヌクレオチド配列まで含まれていれば、下記に詳述する工程(iii)において、第一の一本鎖核酸は第二の二本鎖核酸とアニールできるため、第一の一本鎖核酸に必ずしも含まれていなくてもよい。当該3’側の部分が含まれている場合、当該3’側の部分は、鋳型である前記環状DNAにおける選択マーカーの3’側の配列と一致する。当該3’側の部分は最長で、環状DNA中の目的ヌクレオチド配列の5’末端に隣接するヌクレオチドまでであり、それより短い任意の長さであってよい。工程(i)で合成される第一の一本鎖核酸は、特定の長さの当該3’側の部分を有する一本鎖核酸であっても、様々な長さの当該3’側の部分を有する一本鎖核酸の混合物であってもよい。

【0045】
工程(ii)
前記選択マーカー及び前記目的ヌクレオチド配列を含む環状DNAからなる鋳型、及び第二のプライマーを用いて核酸伸長反応を行い、前記(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E')、前記(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D')、及び前記(C)のヌクレオチド配列の相補配列(C')を、5’側から、(E’)、(D’)、(C’)の順で含み、(E’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列が隣接している、第二の一本鎖核酸(好ましくは、DNA)を合成する。

【0046】
工程(ii)は、工程(i)とは独立して(即ち、別々のチューブで)行われる。工程(i)の反応液中には、工程(ii)で用いられる第二のプライマーが存在しないことが好ましく、工程(ii)の反応液中には、工程(i)で用いられる第一のプライマーが存在しないことが好ましい。

【0047】
鋳型とする環状DNAは、工程(i)で使用されるものと同一の環状DNAを使用する。

【0048】
第二のプライマーは、15ヌクレオチド長以上である前記(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び前記(E’)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)のヌクレオチド配列が隣接している)からなる。該核酸は好ましくはDNAである。(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列は、5’末端のヌクレオチドを含む限り、(D’)のヌクレオチド配列の全長を上限として15ヌクレオチド長以上、好ましくは18ヌクレオチド長以上、より好ましくは20ヌクレオチド長以上の任意の長さの配列であってよい。

【0049】
核酸伸長反応は、工程(i)において説明した方法で行なうことができるが、同一の方法を用いなくてもよい。工程(iii)において、工程(i)の反応液と工程(ii)の反応液とをそのまま混合する場合には、工程(ii)の核酸伸長反応は、工程(i)と同一のDNAポリメラーゼを用いた方法を用いることが好ましい。上記環状DNAの鋳型にアニールした第二のプライマーの3’末端に、鋳型に相補的な態様で連続的に核酸が付加することにより、第二の一本鎖核酸が合成される。

【0050】
第二の一本鎖核酸において、(E’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列は隣接している。(D’)のヌクレオチド配列と(C’)のヌクレオチド配列の間の配列は、鋳型である前記環状DNAにおける目的ヌクレオチド配列の相補配列の3'末端と選択マーカーの相補配列の5'末端との間の配列と一致する。

【0051】
また、(C’)のヌクレオチド配列よりも3’側の部分は、第二の一本鎖核酸に(C’)のヌクレオチド配列まで含まれていれば、下記に詳述する工程(iii)において、第二の一本鎖核酸は第一の二本鎖核酸とアニールできるため、第二の一本鎖核酸に必ずしも含まれていなくてもよい。当該3’側の部分が含まれている場合、当該3’側の部分は、鋳型である前記環状DNAにおける選択マーカーの相補配列の3’側の配列と一致する。当該3’側の部分は最長で、環状DNA中の目的ヌクレオチド配列の相補配列の5’末端に隣接するヌクレオチドまでであり、それより短い任意の長さであってよい。工程(ii)で合成される第二の一本鎖核酸は、特定の長さの当該3’側の部分を有する一本鎖核酸であっても、様々な長さの当該3’側の部分を有する一本鎖核酸の混合物であってもよい。

【0052】
工程(iii)
次いで、工程(i)で合成した第一の一本鎖核酸と工程(ii)で合成した第二の一本鎖核酸とを混合し、核酸伸長反応を行なう。各一本鎖核酸を、工程(i)又は工程(ii)の反応液から単離又は精製した後、混合してもよいし、工程(i)の反応液と工程(ii)の反応液とをそのまま混合してもよい。

【0053】
「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された一本鎖核酸の純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、工程(i)又は(ii)で合成した一本鎖核酸の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。一本鎖核酸の単離又は精製は、自体公知の方法により行なうことができる。

【0054】
第一の一本鎖核酸と第二の一本鎖核酸とは、等モルで混合されることが好ましい。核酸伸長反応は、工程(i)に記載したDNAポリメラーゼなどの酵素、dNTPなどの基質、及びバッファーなどのその他の試薬を用いて、自体公知の方法により行なうことができる。核酸伸長反応は、耐熱性DNAポリメラーゼを使用する核酸伸長反応において一般的に使用される温度条件で通常1サイクル行なうが、PCRにおいて一般的に使用される温度サイクル条件で数サイクルの反応を行ってもよい。

【0055】
一本鎖核酸を単離又は精製した後に混合した場合には、核酸伸長反応に使用する酵素、基質、及びその他の試薬は新たに追加する必要がある。操作の簡便さの観点からは、工程(i)と(ii)とで同一の酵素、基質、及びその他の試薬を使用し、工程(i)の反応液と工程(ii)の反応液とをそのまま混合し、それらに含まれる酵素、基質、及びその他の試薬をそのまま利用して核酸伸長反応を行なうことが好ましい。

【0056】
核酸伸長反応は、少なくとも第一の一本鎖核酸の(C)のヌクレオチド配列と第二の一本鎖核酸の(C’)のヌクレオチド配列とがアニールし、それぞれの核酸の3’末端に、鋳型に相補的な態様で連続的に核酸が付加されることにより進行する。その結果、第一の一本鎖核酸の3’末端には、第二の一本鎖核酸に相補的な配列(その3’末端は(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列とが5'側からこの順で隣接した配列である)が付加され、第二の一本鎖核酸の3’末端には、第一の一本鎖核酸に相補的な配列(その3’末端は(B)のヌクレオチド配列の相補配列(B’)と(A)のヌクレオチド配列の相補配列(A’)とが5’側からこの順で隣接した配列である)が付加される。

【0057】
以上の核酸伸長反応により、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)のヌクレオチド配列を、5’側からこの順で含み、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一であるセンス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸を得ることができる。

【0058】
工程(iv)
工程(iii)で得た二本鎖核酸からなる鋳型、第一のプライマー、及び第二のプライマーを用いてPCR反応を行い、当該二本鎖核酸を増幅する。

【0059】
PCR反応は、工程(i)において説明した核酸伸長反応を行なうための酵素、基質、及びその他の試薬を用いて、自体公知の方法により行なうことができる。工程(iii)で得た二本鎖核酸は単離又は精製した後、鋳型として使用してもよいし、工程(iii)の反応液をそのまま使用してもよい。工程(iii)で得た二本鎖核酸を単離又は精製した場合には、PCR反応に必要な酵素(耐熱性DNAポリメラーゼ)、基質(dNTPs)、及びその他の試薬並びに第一のプライマー及び第二のプライマーを新たに追加する必要がある。工程(iii)の反応液をそのまま工程(iv)において使用した場合には、当該反応液に含まれる酵素、基質、及びその他の試薬並びに第一のプライマー及び第二のプライマーを利用してPCR反応を行なうこともできる。

【0060】
増幅した二本鎖核酸は、形質転換における不純物除去の観点から、単離又は精製されることが好ましい。単離又は精製された二本鎖核酸の純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、工程(iv)で増幅した二本鎖核酸の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。二本鎖核酸の単離又は精製は、自体公知の方法により行なうことができる。

【0061】
以上の工程を含む本発明の製造方法により、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列を挿入する活性を有する二本鎖核酸を簡便に且つ短時間で作製することができ、遺伝子の機能解析を迅速に進めることができる点で有用である。

【0062】
本発明の方法により製造される上記二本鎖核酸により形質転換を行い、標的遺伝子にコードされるタンパク質(以下、標的タンパク質とも言う)に目的ヌクレオチドにコードされるポリペプチド残基を挿入しようとする場合、当該標的遺伝子が必須遺伝子だと、通常は形質転換体作製の過程で一旦当該必須遺伝子が破壊されるため細胞が生育できず、目的とする形質転換体を得ることができない。このような場合、発現制御配列を上記二本鎖核酸に更に含めることで、目的とする形質転換体を得られることがある。例えば、当該ポリペプチド残基と当該タンパク質の挿入部位からC末端側の部分とが連結された融合タンパク質が当該発現制御配列により発現し、当該融合タンパク質が全長の当該タンパク質の機能を代替できる場合には、形質転換体作製の過程で細胞が生育できるため、目的とする形質転換体を得ることができる。

【0063】
従って、一実施形態において、本発明の方法により製造される二本鎖核酸は、
(A)当該標的部位又は標的領域の5’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列、
(B)第一の目的ヌクレオチド配列、
(C)選択マーカー、
(D)第二の目的ヌクレオチド配列、
(E)当該標的部位又は標的領域の3’側に隣接し、相同的組換えを起こすのに十分な長さを有する、染色体上のセンス鎖の部分ヌクレオチド配列、及び
(F)発現制御配列
を、5’側から、(A)、(B)、(C)、(F)、(D)、(E)の順で含み、
(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、
(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一であり、
(F)のヌクレオチド配列は(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結されているセンス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸であり得る。

【0064】
「作動可能に連結されている」とは、そのように記載される構成要素がそれらの通常の機能を果たすように配列される、要素の配置をいう。例えば、ヌクレオチド配列に作動可能に連結された所定の制御配列(例えばプロモーターなど)は、そのヌクレオチド配列からの遺伝子発現をもたらすことができる。制御配列は、ヌクレオチド配列からの遺伝子発現を指揮するよう機能する限り、その配列と連続的である必要はない。例えば、翻訳されないが転写はされる介在配列が、制御配列とヌクレオチド配列との間に存在し得るが、制御配列は、それでもなおヌクレオチド配列に「作動可能に連結された」とみなされ得る。

【0065】
「発現制御配列」とは、本明細書で使用される場合、それらが作動可能に連結されているヌクレオチド配列からの遺伝子発現に影響を与えるために必要なヌクレオチド配列をいう。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後事象、及び/又は翻訳を制御し得る配列である。発現制御配列としては、例えば、適切な転写の開始に関わる配列(例えば、プロモーター及びエンハンサー配列);細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質安定性を増強する配列;所望される場合、タンパク質分泌を増強する配列(例えば分泌シグナル配列);及びこれらの組合せが挙げられる。本発明の方法により製造される二本鎖核酸に含まれる発現制御配列は、少なくともプロモーター配列を含むことが好ましい。

【0066】
「プロモーター」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。プロモーターは、誘導性プロモーター(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、補因子、調節タンパク質などにより誘導される)、抑制可能なプロモーター(このプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、補因子、調節タンパク質などにより抑制される)及び構成的プロモーターを含み得る。本発明の方法により製造される二本鎖核酸に含まれる発現制御配列は、それを含めることによって、本発明の形質転換体製造方法(後述)により目的の形質転換体を得ることができる限り、いずれのタイプのプロモーターを含んでもよい。

【0067】
発現制御配列に含まれるプロモーターは、形質転換の宿主細胞において機能する限り特に限定されない。例えば、宿主細胞が酵母Saccharomyces cerevisiaeである場合、GAL1、GAL10、PHO5、ADH1、PGK、及びGPDなどのプロモーターを選択することができる。例えば、宿主細胞が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどを選択することができる。例えば、宿主細胞が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどを選択することができる。

【0068】
上記二本鎖核酸により形質転換された宿主細胞において、(F)の発現制御配列により(D)のヌクレオチド配列とインフレームで連結された標的遺伝子の部分配列が発現し、その発現が野生型の標的遺伝子の機能を、少なくとも部分的に相補する。このような相補が起こる限り、目的ヌクレオチド配列にコードされるポリペプチド残基の挿入部位は、標的タンパク質の任意の部位であってよいが、N末端に近いほど好ましい(例えば、N末端から1~50番目の残基のN末端側)。

【0069】
この実施形態における構成を有する二本鎖核酸は、鋳型として用いる環状DNAが発現制御配列を必ず含むこと以外は前記工程(i)及び(ii)と同様の工程(i’)及び(ii’)、並びに工程(iii’)及び(iv’)を含む方法により製造することができる。尚、図2には本実施形態の二本鎖核酸製造方法の模式図を示す。

【0070】
工程(i’)
前記選択マーカー、前記目的ヌクレオチド配列及び前記発現制御配列を含み、当該発現制御配列とポリペプチド残基をコードしている目的ヌクレオチド配列とが作動可能に連結されている環状DNAからなる鋳型、及び前記第一のプライマーを用いて核酸伸長反応を行い、前記(A)のヌクレオチド配列、前記(B)のヌクレオチド配列及び前記(C)のヌクレオチド配列を5’側から、(A)、(B)、(C)の順で含み、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列が隣接している、第一の一本鎖核酸(好ましくは、DNA)を合成する。第一のプライマーは、前記工程(i)と同じプライマーを用いることができるが、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列とがインフレームで連結されていることが好ましい。工程(i’)は、鋳型となる環状DNAが異なる点を除き、前記工程(i)と同様に行うことができる。

【0071】
工程(ii’)
前記選択マーカー、前記目的ヌクレオチド配列及び前記発現制御配列を含み、当該発現制御配列とポリペプチド残基をコードしている目的ヌクレオチド配列とが作動可能に連結されている環状DNAからなる鋳型、及び前記第二のプライマーを用いて核酸伸長反応を行い、前記(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E')、前記(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D')、前記(F)のヌクレオチド配列の相補配列(F’)及び前記(C)のヌクレオチド配列の相補配列(C')を、5’側から、(E’)、(D’)、(F')、(C’)の順で含み、(E’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列が隣接しており、(F)のヌクレオチド配列が(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結される様式で(F’)のヌクレオチド配列と(D’)のヌクレオチド配列とが連結されている、第二の一本鎖核酸(好ましくは、DNA)を合成する。第二のプライマーは、前記工程(ii)と同じプライマーを用いることができるが、(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列と(E)のヌクレオチド配列とがインフレームで連結される様式で、(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と(E’)のヌクレオチド配列が連結されていることが好ましい。工程(ii’)は、鋳型となる環状DNAが異なる点を除き、前記工程(ii)と同様に行うことができる。

【0072】
工程(iii’)
次いで、工程(i’)で合成した第一の一本鎖核酸と工程(ii’)で合成した第二の一本鎖核酸とを混合し、核酸伸長反応を行なう。各一本鎖核酸を、工程(i’)又は工程(ii’)の反応液から単離又は精製した後、混合してもよいし、工程(i’)の反応液と工程(ii’)の反応液とをそのまま混合してもよい。工程(iii’)は、工程(i’)で合成した第一の一本鎖核酸と工程(ii’)で合成した第二の一本鎖核酸とを用いる点を除き、前記工程(iii)と同様に行うことができる。工程(iii’)の核酸伸長反応により、(A)、(B)、(C)、(F)、(D)及び(E)のヌクレオチド配列を、5’側からこの順で含み、(A)のヌクレオチド配列と(B)のヌクレオチド配列は隣接しており、(D)のヌクレオチド配列と(E)のヌクレオチド配列は隣接しており、(B)のヌクレオチド配列と(D)のヌクレオチド配列は同一又は実質的に同一であり、(F)のヌクレオチド配列は(D)のヌクレオチド配列に作動可能に連結されているセンス鎖と、その相補鎖とからなる二本鎖核酸を得ることができる。

【0073】
工程(iv’)
工程(iii’)で得た二本鎖核酸からなる鋳型、第一のプライマー、及び第二のプライマーを用いてPCR反応を行い、当該二本鎖核酸を増幅する。工程(iv’)は、前記工程(iv)と同様に行うことができる。

【0074】
以上の工程を含む本発明の方法により製造される二本鎖核酸により形質転換を行なうことで、標的遺伝子が必須遺伝子であっても、標的遺伝子にコードされるタンパク質に目的ヌクレオチドにコードされるポリペプチド残基が挿入された形質転換体を得ることができる。このような二本鎖核酸を簡便に且つ短時間で作製することができる点で本発明の方法は有用である。

【0075】
2.形質転換体の製造方法
本発明は、以下の工程(i)~(v)を含む、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体の製造方法を提供する(以下、本発明の形質転換体製造方法ともいう)。尚、図3には本発明の形質転換体製造方法の模式図を示す。

【0076】
工程(i)
まず、上記1に記載の本発明の二本鎖核酸製造方法により二本鎖核酸を合成する。

【0077】
工程(ii)
次いで、工程(i)で得た二本鎖核酸により宿主細胞を形質転換する。

【0078】
形質転換対象である宿主細胞は、工程(i)で得た二本鎖核酸に含まれる選択マーカーによる肯定的選択が可能であれば、特に限定されない。例えば選択マーカーとして栄養要求性遺伝子を使用する場合、宿主細胞は当該栄養要求性を有するものが用いられる。また例えば選択マーカーとして薬剤耐性遺伝子を使用する場合、宿主細胞は当該薬剤に対する感受性を有するものが選択される。

【0079】
宿主細胞としては、例えば、原核細胞(大腸菌、枯草菌など)及び真核細胞(下等真核細胞(酵母、糸状菌など)及び高等真核細胞(哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など))が挙げられる。宿主細胞は、好ましくは真核細胞であり、より好ましくは下等真核細胞であり、更により好ましくは酵母細胞(Saccharomyces属、Candida属、Schizosaccharomyces属、Pichia属、Yarrowia属、Hansenula属、Kluyveromyces属などの細胞)であり、最も好ましくはSaccharomyces cerevisiaeである。

【0080】
二本鎖核酸による宿主細胞への形質転換は、公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、細菌(大腸菌、枯草菌など)の場合は、プロトプラスト法(Mol. Gen. Genet., 168, 111(1979))やコンピテント法(J. Mol. Biol., 56, 209(1971))などによって、酵母細胞の場合は、スフェロプラスト方法(Proc. Natl. Acad. Sci. 75, 1929-1933(1978)、Mol. Cell. Biol., 5, 3376(1985))、酢酸リチウム法(Agric. Biol. Chem., 48, 341(1984))、エレクトロポレーション(Appl. Microbiol. Biotechnol. 21, 336-339(1985)、Methods Enzymol. 194, 182-187(1991))などによって、動物細胞の場合は、Grahamの方法(Virology, 52, 456(1973))、リポフェクション、エレクトロポレーションなどによって、昆虫細胞の場合は、Summersらの方法(Mol. Cell. Biol. 3, 2156-2165(1983))などによって、植物細胞の場合は、プロトプラスト法(EMBO J., 3, 2717-2722(1984);Mol. Gen. Genet., 199, 169-177(1985);Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 5824-5828(1985);及びNature, 338, 274-276(1989))、エレクトロポレーション(Plant Cell, 4, 1495-1505(1992))、マイクロインジェクション(Plant Cell Rep., 9, 415-418(1990))などによって、それぞれ形質転換することができるが、これらに限定されない。

【0081】
工程(iii)
次いで、工程(ii)で得た形質転換体から、相同組換えにより、染色体上の標的部位又は標的領域に、第一の目的ヌクレオチド配列、選択マーカー及び第二の目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を選択する。このような選択は通常、使用した選択マーカーによる肯定的選択によって行なう。例えば、選択マーカーとして栄養要求性遺伝子を使用した場合、形質転換した細胞を当該栄養を含まない選択培地で培養し、増殖した細胞を選択する。また薬剤耐性遺伝子を使用した場合、形質転換した細胞を宿主細胞の増殖を阻害する濃度で当該薬剤を含む選択培地で培養し、増殖した細胞を選択する。選択培地には、宿主に応じて公知の組成の培地を使用することができる。

【0082】
上記肯定的選択に加えて、相同的組換えにより、染色体上の標的部位又は標的領域にのみ目的ヌクレオチド配列及び選択マーカーが挿入されたことを他の方法により更に確認してもよい。このような確認は、形質転換体のゲノムDNAを抽出し、自体公知の技術、例えば、サザンハイブリダイゼーション、PCR法、DNA配列決定などで分析することにより行なうことができる。これにより、形質転換に使用した二本鎖核酸が染色体上の目的とする場所以外の場所に挿入された形質転換体を排除することができ、以降の工程において取り扱う形質転換体の数を減らすことができる。

【0083】
工程(iv)
工程(iii)で得た形質転換体を培養し、第一の目的ヌクレオチド配列と第二の目的ヌクレオチド配列との間で、分子内相同的組換えを引き起こさせる。当該分子内相同的組換えは、形質転換体を培養することにより自然に起こる。培地、培養条件などは、宿主に応じて適宜設定することができるが、分子内相同的組換えを起こした形質転換体は選択マーカーを失うため、形質転換前の宿主細胞が増殖可能である必要がある。

【0084】
工程(v)
工程(iv)の培養物から、当該分子内相同的組換えを起こした形質転換体を選択し、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列が挿入された形質転換体を得る。当該分子内相同的組換えは、細胞を培養することにより自然に起こり得るが、その効率は一般的には極めて低い。そのためこのような選択は通常、使用した選択マーカーの有する性質に基づく否定的選択により行なう。例えば、Saccharomyces cerevisiaeやCandida albicansのURA3を選択マーカーとして使用した場合には、URA3を有する形質転換体は5-FOA(5-fluoroorotic acid)の存在下では増殖できないため、工程(iv)の培養物を5-FOA(及びウラシル)を含む培地に移して培養することにより、分子内相同的組換えを起こしてURA3を失った形質転換体のみを増殖させ、選択することができる。またこのような否定的選択は、工程(iv)の培養時に行なってもよい。

【0085】
また上記否定的選択に加えて、分子内相同的組換えにより、選択マーカーが失われ、染色体上の標的部位又は標的領域に目的ヌクレオチド配列のみが挿入されたことを他の方法により更に確認してもよい。このような確認は、形質転換体のゲノムDNAを抽出し、自体公知の技術、例えば、サザンハイブリダイゼーション、PCR法、DNA配列決定などで分析することにより行なうことができる。

【0086】
以上のように製造された形質転換体は、染色体上の標的部位又は領域以外の領域は改変されていないため、これを用いればより厳密な機能解析を行なうことができる。このような形質転換体を簡便に製造することができる点で本発明の形質転換体の製造方法は有用である。

【0087】
3.二本鎖核酸を合成するためのキット
更に本発明は、以下の(i)~(iii)を含む、本発明の方法により二本鎖核酸を合成するためのキットを提供する:
(i)前記選択マーカー及び前記目的ヌクレオチド配列を含む環状DNA、
(ii)15ヌクレオチド長以上である前記(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び前記(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii)15ヌクレオチド長以上である前記(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び前記(E’)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)のヌクレオチド配列が隣接している)。

【0088】
構成要素(i)は本発明の二本鎖核酸製造方法の工程(i)及び(ii)における環状DNAに相当し、それらの説明を構成要素(i)に適用することができる。

【0089】
また本発明のキットに含まれる構成要素(ii)及び(iii)は、それぞれ本発明の二本鎖核酸製造方法の工程(i)及び(ii)における第一のプライマー及び第二のプライマーに相当する。従ってそれらの説明を、構成要素(ii)及び(iii)に適用することができる。

【0090】
更に本発明は、以下の(i’)~(iii’)を含む、本発明の方法により前記発現制御配列を更に含む二本鎖核酸を合成するためのキットを提供する:
(i’)当該選択マーカー、当該目的ヌクレオチド配列及び当該発現制御配列を含み、当該発現制御配列は目的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、環状DNA、
(ii’)15ヌクレオチド長以上である(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列、及び(A)のヌクレオチド配列を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(A)のヌクレオチド配列が隣接している)、及び
(iii’)15ヌクレオチド長以上である(D)のヌクレオチド配列の相補配列(D’)の5’末端部分配列、及び(E)のヌクレオチド配列の相補配列(E’)を含む核酸(但し、当該部分配列の5’側に(E’)が隣接している)。

【0091】
構成要素(i’)は本発明の二本鎖核酸製造方法の工程(i’)及び(ii’)における環状DNAに相当し、それらの説明を構成要素(i’)に適用することができる。

【0092】
また本発明のキットに含まれる構成要素(ii’)及び(iii’)は、それぞれ本発明の二本鎖核酸製造方法の工程(i’)における第一のプライマー及び工程(ii’)における第二のプライマーに相当する。従ってそれらの説明を、構成要素(ii’)及び(iii’)に適用することができる。

【0093】
(ii)(又は(ii’))の核酸及び(iii)(又は(iii’))の核酸の3’側の部分は、同一の目的ヌクレオチド配列(即ち(B)のヌクレオチド配列及び(D)のヌクレオチド配列)のそれぞれセンス鎖及びその相補鎖の部分配列である。これら2つの部分配列は、互いに相補的な部分を含まなくても含んでもよい。即ち、(ii)(又は(ii’))の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)(又は(iii’))の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とは、目的ヌクレオチド配列上で離れていてもよく、例えば、500、250、100、50、40、30、20、15、10、5、又は1ヌクレオチドまで離れていてもよい。(ii)(又は(ii’))の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)(又は(iii’))の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とは、目的ヌクレオチド配列上で隣接していてもよい。また、(ii)(又は(ii’))の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)(又は(iii’))の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の相補配列とは、目的ヌクレオチド配列上で重複していてもよく、例えば、1、5、10、15、20、30、40、50、100、250、500ヌクレオチド、又は目的ヌクレオチド配列の全長まで重複していてもよい。二本鎖を形成する2つの一本鎖核酸を確実に合成するという観点から、(ii)(又は(ii’))の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列と、(iii)(又は(iii’))の核酸における(D)のヌクレオチド配列の相補配列の5’末端部分配列の相補配列とは、隣接又は重複していることが好ましく、重複していることがより好ましい。

【0094】
或いは、目的ヌクレオチド配列の長さから、(ii)(又は(ii’))の核酸における(B)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の長さと、(iii)(又は(iii’))の核酸における(D’)のヌクレオチド配列の5’末端部分配列の長さとの合計を引いた値(X)は、一態様において、500以下、250以下、100以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、5以下、1以下である。一態様において、Xは0以下である。一態様において、Xは0未満であり、例えば、-1以下、-5以下、-10以下、-15以下、20以下、-30以下、-40以下、-50以下、-100以下、-250以下、又は-500以下である。なお、Xの下限値は、理論上、当該目的ヌクレオチド配列の全長×(-1)である。

【0095】
また本発明のキットには、一本鎖核酸を合成する工程、二本鎖核酸を合成・増幅する工程に必要な試薬であって、本発明の製造方法を実施する上で必要なものを含んでいてもよい。試薬としては特に限定されず、核酸精製試薬、DNAポリメラーゼなどの酵素、dNTP、塩化マグネシウム水溶液、バッファーなどの酵素反応試薬などが挙げられる。

【0096】
本発明のキットは、本発明の二本鎖核酸製造方法の実施を容易にするため有用である。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例等に何ら制約されるものではない。また本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
【実施例】
【0098】
実施例1
非必須遺伝子URM1に3xFLAGをコードする配列をインフレームで挿入するための形質転換用DNA断片の調製
一本鎖DNA合成の鋳型となるプラスミドベクターは、以下の手順に従って構築した。
(1)タグと6xGLY(6個の連続するグリシン)とが連結されたアミノ酸配列をコードするDNA断片を得るために、表1に示す組合せのオリゴヌクレオチドを合成した。
【実施例】
【0099】
【表1】
JP0005713286B2_000002t.gif
【実施例】
【0100】
(2)合成したオリゴヌクレオチドの5’末端をT4 kinase(ニッポンジーンより購入)でリン酸化後、アニーリングし、pAG60プラスミドベクター(Euroscarf社より購入)のSacIサイトとSpeIサイトの間に挿入した。
これにより、以下の10種類のプラスミドベクターを作製した:
pAG60-3xFLAG-6xGLY(pFOM310)(3xFLAGタグをコードする配列を含む);
pAG60-FLAG-6xGLY(pFOM311)(1xFLAGタグをコードする配列を含む);
pAG60-V5-6xGLY(pFOM319)(V5タグをコードする配列を含む);
pAG60-T7-6xGLY(pFOM312)(T7タグをコードする配列を含む);
pAG60-Strep-tag-6xGLY(pFOM314)(Strep-tagIIをコードする配列を含む);
pAG60-RGS-6xHis-6xGLY(pFOM315)(RGS-6xHisタグをコードする配列を含む);
pAG60-S-tag-6xGLY(pFOM318)(Sタグをコードする配列を含む);
pAG60-MYC-6xGLY(pFOM313)(Mycタグをコードする配列を含む);
pAG60-VSV-6xGLY(pFOM316)(VSV-Gタグをコードする配列を含む);及び
pAG60-HSV-6xGLY(pFOM317)(HSVタグをコードする配列を含む)。
一例として、pAG60-3xFLAG-6xGLYの制限酵素地図を図4に示す。
【実施例】
【0101】
酵母Sacchromyces cerevisiaeのURM1/YIL008W遺伝子に3xFLAGをコードする配列をインフレームで挿入するための形質転換用断片は、以下の方法で調製した。
尚、下記の2種類のプライマーセット(#510と#511、又は#539と#540)を用いて、2種類のDNA断片を合成した。
フォワードプライマー#510:
TACT AAAACGAGAT AGGTTAATAG CAAAATCGGG ATGGTA gac tac aaa gac cat gac gg(配列番号21)(大文字はURM1遺伝子 に由来し、小文字は3xFLAGに由来する)
リバースプライマー#511:
AAATAGCATCAAGTCCACCTAGAAACTCCACTTTCACGTT tcc acc ccc gcc tcc ccc ct(配列番号22)(大文字はURM1遺伝子に由来し、小文字は6xGLYに由来する)
フォワードプライマー#539:
TGATTTCTGATACTAAAACGAGATAGGTTAATAGCAAAATCGGGATGGTAgactacaaagaccatgacgg(配列番号23)(大文字はURM1遺伝子に由来し、小文字は3xFLAGに由来する)
リバースプライマー#540:
TGTTTTCCAAAAATAGCATCAAGTCCACCTAGAAACTCCACTTTCACGTTtccacccccgcctcccccct(配列番号24)(大文字はURM1遺伝子に由来し、小文字は6xGLYに由来する)
【実施例】
【0102】
(1)pAG60-3xFLAG-6xGLY、フォワードプライマー及び他の試薬を、表2に示すForward primer mixtureの組成で混合した後、核酸伸長反応を行ない、第一の一本鎖DNAを合成した。核酸伸長反応試薬としてはTaKaRa EX Taq(タカラバイオ株式会社製)を使用した。反応条件は以下の通りである:94℃、2分→(94℃、30秒→55℃、30秒→72℃、1分)×30サイクル→72℃、1分→4℃。
【実施例】
【0103】
【表2】
JP0005713286B2_000003t.gif
【実施例】
【0104】
(2)同様に、pAG60-3xFLAG-6xGLY、リバースプライマー及び他の試薬を、表2に示すReverse primer mixtureの組成で混合した後、核酸伸長反応を行ない、第二の一本鎖DNAを合成した。
【実施例】
【0105】
(3)(1)及び(2)の反応液を混合し、TaKaRa EX Taq(5 units/μlを1μl)追加した後、以下の条件でPCRを行ない、二本鎖DNAを増幅させた:(94℃、1分→65℃、30秒→72℃、5分)×35サイクル。
【実施例】
【0106】
PCR後の各反応液について、1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、増幅した二本鎖DNAのサイズを調べた。結果を図5に示す。PCR産物(#510+#511)(レーン2)及びPCR産物(#539+#540)(レーン3)のいずれについても、予想サイズ(それぞれ4168 bp及び4188 bp)付近にバンドが検出され、目的とする二本鎖DNAが正確に増幅されたことが示された(レーン2及び3)。
【実施例】
【0107】
実施例2
3xFLAGが挿入されたURM1遺伝子産物を発現する形質転換体の作製
実施例1で増幅したPCR産物(#539+#540)を用いて、酢酸リチウム法により定法に従ってSaccharomyces cerevisiae YPH499(MATa ura3-52 lys2-801_amber ade2-101_ochre trp1-Δ63 his3-Δ200 leu2-Δ1)(九州大学、西本研究室より供与)を形質転換した。形質転換後の酵母細胞を、ウラシルを含まない選択用寒天培地(CAA寒天培地、1 Lの組成:20 g Agar(和光純薬)、6.7 g Yeast Nitrogen base w/o Amino acid(Difco)、20 g Bacto casamino acid(Difco)、20 g グルコース(和光純薬)、20 mg アデニン(和光純薬)、20 mg ヒスチジン(和光純薬)、30 mg ロイシン(和光純薬)、30 mg リシン(和光純薬)、20 mg メチオニン(和光純薬)、20 mg トリプトファン(和光純薬))上に塗布し、コロニーが形成されるまで30℃でインキュベートした。コロニーを形成したウラシル非要求性株を、形質転換用断片が染色体に組み込まれた株として選択した。次いで、染色体に組み込まれたURA3遺伝子をループアウトにより脱落させるために、ウラシル非要求性株を、5-FOAを含む選択用寒天培地(5-FOA寒天培地、1 Lの組成:20 g Agar(和光純薬)、7 g Yeast Nitrogen base w/o Amino acid(Difco)、1 g 5-フルオロオロチン酸(和光純薬)、20 g グルコース(和光純薬)、30 mg アデニン(和光純薬)、20 mg ヒスチジン(和光純薬)、40 mg ロイシン(和光純薬)、40 mg リシン(和光純薬)、20 mg メチオニン(和光純薬)、30 mg トリプトファン(和光純薬)、40 mg ウラシル(和光純薬))上に塗布し、コロニーが形成されるまで30℃でインキュベートした。
得られた酵母株について、ウェスタンブロッティング法により3xFLAGが挿入されたURM1遺伝子産物の発現を確認した。ウェスタンブロッティングは、ANTI-FLAG M2 Monoclonal Antibody-Alkaline Phosphatase Conjugate(SIGMA)、及び検出試薬としてCDP-Star, ready-to-use(Roche)を用いて、定法に従って行なった。結果を図6に示す。5-FOA寒天培地上で形成されたコロニーから選択された形質転換体(レーン3)では、14 kDaのバンドが検出され、3xFLAGが挿入されたURM1遺伝子産物が発現していることが確認された。親株であるYPH499(レーン1)及び5-FOAによる選択前の形質転換体3xFLAG-URA3-3xFLAG-URM1(レーン2)においては、14 kDaのバンドは検出されなかった。
以上の結果から、本発明の方法により作製された形質転換用断片を用いて、目的ヌクレオチド配列を染色体上の非必須遺伝子に挿入することができることが示された。
【実施例】
【0108】
実施例3
必須遺伝子PGK1/YCR012Wに3xFLAGをコードする配列をインフレームで挿入するための形質転換用DNA断片の調製
PGK1/YCR012W遺伝子は必須遺伝子である。必須遺伝子をターゲットとして実施例2と同様な形質転換用断片で1倍体を形質転換した場合、URA3遺伝子挿入時にターゲット遺伝子の発現を止めてしまい形質転換体が得られない。そこで、URA3遺伝子挿入時にもターゲット遺伝子が発現できるようにADH1 promoter+開始コドンを挿入した新たなプラスミドを構築した。
ADH1 promoter+開始コドンの増幅は、下記プライマー及び鋳型、並びに他の試薬を表3に示す組成で混合し、PCR法にて行った。反応条件は以下の通りである:94℃、2分→(94℃、30秒→55℃、30秒→72℃、1分)×30サイクル→72℃、1分→4℃。
フォワードプライマー225-pGBK-RC(ADH1pro)-F
AGCACgagctcTTCGTTGCTTGCATGCAACTTCT(配列番号25)(小文字はSacI認識部位を示す)
リバースプライマー1329-ADH1pro+ATG-Rv
GCTTCgagctcCATGTTGATTGTATGCTTGGTATA(配列番号26)(小文字はSacI認識部位を示す)
テンプレートDNA
pGBK-RC(Ito.T et al.(2000) PNAS 97:1143-1147)
【実施例】
【0109】
【表3】
JP0005713286B2_000004t.gif
【実施例】
【0110】
PCR産物の増幅をアガロースゲル電気泳動により確認した後(図7、レーン2)、SacI制限酵素処理後、同じくSacI処理して更にCIP(Alkaline Phosphatase(Calf intestine)、ニッポンジーン)処理した以下の各プラスミドに挿入した:
pAG60-3xFLAG-6xGLY(pFOM310)、
pAG60-FLAG-6xGLY(pFOM311)、
pAG60-MYC-6xGLY(pFOM313)、
pAG60-RGS-6xHis-6xGLY(pFOM315)。
ADH1 promoter+開始コドンの挿入は、Sequence法にて確認した。
作製したプラスミドを以下のように命名した:
pAG60-ADH1pro-3xFLAG-6xGLY(pFOM358)、
pAG60-ADH1pro-FLAG-6xGLY(pFOM359)、
pAG60-ADH1pro-MYC-6xGLY(pFOM360)、
pAG60-ADH1pro-RGS-6xHis-6xGLY(pFOM361)。
一例として、pAG60-ADH1pro-3xFLAG-6xGLY(pFOM358)の制限酵素地図を図8に示す。
【実施例】
【0111】
作製した上記のプラスミドを鋳型として用い、下記プライマーセットを用いて、以下の方法で形質転換用断片を調製した。
(a)標的遺伝子GCN5/YGR252W、鋳型pAG60-MYC-6xGLY(pFOM313)
フォワードプライマー1301-GCN5-MYC-F
CGCCCAAAAGTCTTCAGTTAACTCAGGTTCGTATTCTACATTAGATGGTCGAGCAGAAACTCATCTCAGA(配列番号27)(下線はGCN5遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1302-GCN5-6xGLY-Rv
CGGGATCCGTCGTAGCTCCATCCAAGTGATCCTCTTCAATCTGATGTTTTGTTCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号28)(下線はGCN5遺伝子に由来する配列を示す);
(b)標的遺伝子RPT5/YOR117W、鋳型pAG60-ADH1pro-3xFLAG-6xGLY(pFOM358)
フォワードプライマー1326-RPT5_Pro-3xFLAG-F
TATAGAGGTGAGAACAAATTGGAAAGTTTTGATTTTAGTTTAAGATGGCCGACTACAAAGACCATGACGG(配列番号29)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1325-6xGLY-Rpt5(3rdaa)-Rv
GATCTAATTCATCGTCTCCTGGTAAAGTTTGAGCATCCAATTCTTCCAAGGTTCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号30)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す);
(c)標的遺伝子RPT5/YOR117W、鋳型pAG60-ADH1pro-MYC-6xGLY(pFOM360)
フォワードプライマー1327-RPT5_Pro-MYC-F
TATAGAGGTGAGAACAAATTGGAAAGTTTTGATTTTAGTTTAAGATGGCCGAGCAGAAACTCATCTCAGA(配列番号31)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1325-6xGLY-Rpt5(3rdaa)-Rv
GATCTAATTCATCGTCTCCTGGTAAAGTTTGAGCATCCAATTCTTCCAAGGTTCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号32)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す);
(d)標的遺伝子RPT5/YOR117W、鋳型pAG60-ADH1pro-RGS-6xHis-6xGLY(pFOM361)
フォワードプライマー1328-RPT5_Pro-RGS-6xHis-F
TATAGAGGTGAGAACAAATTGGAAAGTTTTGATTTTAGTTTAAGATGGCCCGTGGTTCTCATCATCACCA(配列番号33)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1325-6xGLY-Rpt5(3rdaa)-Rv
GATCTAATTCATCGTCTCCTGGTAAAGTTTGAGCATCCAATTCTTCCAAGGTTCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号34)(下線はRPT5遺伝子に由来する配列を示す);
(e)標的遺伝子PGK1/YCR012W、鋳型pAG60-ADH1pro-3xFLAG-6xGLY(pFOM358)
フォワードプライマー1299-PGK1-3xFLAG-F
CATCAAGGAAGTAATTATCTACTTTTTACAACAAATATAAAACAATGTCTGACTACAAAGACCATGACGG(配列番号35)(下線はPGK1遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1298-PGK1-6xGLY-Rv
AGACACGCTTGTCCTTCAAGTCCAAATCTTGGACAGACAACTTTGAAGATAATCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号36)(下線はPGK1遺伝子に由来する配列を示す);
(f)標的遺伝子PGK1/YCR012W、鋳型pAG60-ADH1pro-MYC-6xGLY(pFOM360)
フォワードプライマー1300-PGK1-MYC-F
CATCAAGGAAGTAATTATCTACTTTTTACAACAAATATAAAACAATGTCTGAGCAGAAACTCATCTCAGA(配列番号37)(下線はPGK1遺伝子に由来する配列を示す)
リバースプライマー1298-PGK1-6xGLY-Rv
AGACACGCTTGTCCTTCAAGTCCAAATCTTGGACAGACAACTTTGAAGATAATCCACCCCCGCCTCCCCC(配列番号38)(下線はPGK1遺伝子に由来する配列を示す)。
【実施例】
【0112】
(1)鋳型、フォワードプライマー及び他の試薬を、表4に示すForward primer mixtureの組成で混合した後、核酸伸長反応を行ない、第一の一本鎖DNAを合成した。反応条件は以下の通りである:(94℃、3分→10℃、1分→68℃、5分)×1サイクル。
【実施例】
【0113】
【表4】
JP0005713286B2_000005t.gif
【実施例】
【0114】
(2)同様に、鋳型、リバースプライマー及び他の試薬を、表4に示すReverse primer mixtureの組成で混合した後、核酸伸長反応を行ない、第二の一本鎖DNAを合成した。
【実施例】
【0115】
(3)(1)及び(2)の反応液を混合し、以下の条件でPCRを行ない、二本鎖DNAを増幅させた:(94℃、30秒→64℃、30秒→72℃、4分)×40サイクル→(72℃、7分)×1サイクル。
【実施例】
【0116】
PCR後の各反応液について、1%アガロースゲルを用いて電気泳動を行い、増幅した二本鎖DNAのサイズを調べた。結果を図9に示す。プライマーセット(a)-(f)を用いて得られた各反応液(それぞれレーン2-7)において、予想サイズ(それぞれ4116 bp、4608 bp、4536 bp、4530 bp、4608 bp及び4530 bp)付近にバンドが検出され、目的とする二本鎖DNAが正確に増幅されたことが示された。
【実施例】
【0117】
得られた二本鎖DNAを用いて、実施例2と同様に形質転換体を作製することができる。形質転換体からゲノムDNAを抽出し、これを鋳型として、下記プライマーセットを用いてPCRを行い、染色体上のPGK1、GCN5又はRPT5遺伝子領域を増幅させることで、目的の形質転換体が得られたことを確認できる。
PGK1増幅用フォワードプライマー1312-PGK1(-329)-F:CTATGATGCCCACTGTGATCTCCAGA(配列番号39)
PGK1増幅用リバースプライマー1313-PGK1(in380)-Rv:TCTTCGATGTGGTAACGCAAGTTTTCCAAC(配列番号40)
GCN5増幅用フォワードプライマー1375-GCN5(-340)-F:AAGACATGTAGTGCGCTGTATGGAAAAG(配列番号41)
GCN5増幅用リバースプライマー1376-GCN5(+334)-Rv:CTTTAGTATTATCATTATTCACCACCCTAAACTC(配列番号42)
RPT5増幅用フォワードプライマー1330-RPT5(-337)-F:GAGACGAGTGCAATTAGTGGCTGATAC(配列番号43)
RPT5増幅用リバースプライマー1331-RPT5(in360)-Rv:CTTGACTACAGCAGCTTTGCCAACAG(配列番号44)
これらのプライマーセットを用いた場合、PGK1、GCN5及びRPT5について、それぞれ709+(目的ヌクレオチド配列の長さ)bp、674+(目的ヌクレオチド配列の長さ)bp、及び697+(目的ヌクレオチド配列の長さ)bpの断片がそれぞれ増幅される。
さらに得られた形質転換体について、ウェスタンブロッティング法でタグの付加されたタンパク質の検出を行なうことにより、目的の形質転換体が得られたことを確認できる。FLAGタグが付加されたPGK1タンパク質の検出には、ANTI-FLAG M2 monoclonal Antibody-Perooxidase Conjugate(SIGMA)を用いる。Mycタグが付加されたPGK1タンパク質及びMycタグが付加されたGCN5タンパク質の検出は、Anti c-Myc, Monoclonal Antibody, Peroxidase Conjugated (和光純薬)を用いて行なう。His-tagが付加されたRPT5の検出は、Anti 6xHistidine, Monoclonal Antibody (和光純薬)と抗マウスIgG(H+L), ウサギ, F(ab’)2, ペルオキシダーゼ結合(和光純薬)を用いて検出する。予想されたサイズのタンパク質が検出された場合、目的の形質転換体が得られたことを確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の二本鎖核酸製造方法により、従来のような煩雑な操作を行なうことなく、染色体上の標的部位又は標的領域のみを改変するための二本鎖核酸を簡便に作製することができる。また本発明の形質転換体の製造方法により、染色体上の所望の部位に目的のヌクレオチド配列のみが挿入された形質転換体を簡便に作製することができる。これらの本発明の方法は、形質転換体を利用する食品・医薬等の分野において利用可能である。
【配列表フリ-テキスト】
【0119】
[配列番号1]~[配列番号20]、及び[配列番号27]~[配列番号38]
タグと6xGLYとが連結されたアミノ酸配列をコードするDNA断片を得るためのオリゴヌクレオチド。
[配列番号21]~[配列番号24]
一本鎖DNA合成及びPCRのためのプライマー。
[配列番号25]、[配列番号26]、及び[配列番号39]~[配列番号44]
PCRプライマー。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8