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明細書 :ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4815610号 (P4815610)
登録日 平成23年9月9日(2011.9.9)
発行日 平成23年11月16日(2011.11.16)
発明の名称または考案の名称 ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体
国際特許分類 C07K  16/18        (2006.01)
C12P  21/08        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
G01N  33/577       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI C07K 16/18
C12P 21/08
C12N 5/00 101
C12Q 1/04
G01N 33/577 B
G01N 33/53 Y
請求項の数または発明の数 14
微生物の受託番号 IPOD FERM BP-10475
全頁数 29
出願番号 特願2007-501565 (P2007-501565)
出願日 平成18年1月31日(2006.1.31)
国際出願番号 PCT/JP2006/301505
国際公開番号 WO2006/082798
国際公開日 平成18年8月10日(2006.8.10)
優先権出願番号 2005025153
優先日 平成17年2月1日(2005.2.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年11月26日(2008.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】川原 浩一
【氏名】中山 仁
【氏名】倉津 純一
【氏名】中村 英夫
【氏名】築城 裕正
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】清水 晋治
参考文献・文献 川原浩一、外2名,ミクログリアにおけるNO誘導性アポトーシスと小胞体ストレス,日本薬理学雑誌,2004年,Vol.124,No.6,p.399-406
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-19/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)
SwissProt/PIR/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
ラットI型ミクログリアを特異的に認識し、認識する抗原の分子量が約50~70kDaであり、さらに還元剤の存在下で抗原との反応性を失うことを特徴とする、受託番号FERM BP-10475を有するハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体。
【請求項2】
ラットII型ミクログリアと反応しない、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識する、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
ヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)と反応しない、請求項1から3の何れかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
ラットニューロン、ラットアストロサイト、末梢のマクロファージ、マウスI型ミクログリア、及びマウスII型ミクログリアとはほとんど反応しないことを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項6】
受託番号FERM BP-10475を有する、請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項7】
ラットI型ミクログリアを含む免疫原で免疫された哺乳動物の免疫細胞と哺乳動物のミエローマ細胞とを融合して得られる、請求項に記載のハイブリドーマ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のハイブリドーマを培養する工程、及び該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取し精製する工程を含む、請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項9】
請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ラットI型ミクログリアの検出方法。
【請求項10】
少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、請求項に記載のラットI型ミクログリアの検出方法。
(a)請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【請求項11】
請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
【請求項12】
少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、請求項11に記載のヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
(a)請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【請求項13】
請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を含む、ラットI型ミクログリアを検出するためのキット。
【請求項14】
請求項1から5の何れかに記載のモノクローナル抗体を含む、ヒト・オリゴデンドログリオーマを検出するためのキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。より詳細には、本発明は、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体、該抗体を産生するハイブリドーマ、並びに該抗体を用いるラットI型ミクログリアの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳神経系はバイオサイエンス最後のフロンティアとして、多くの人の興味を引いている。脳は身体の一臓器にすぎないが、その働きは外界からの情報を集め、処理し、適格な判断の後に筋肉という効果器を用いて発声や行動という形で指令する。さらに身体中に張り巡らされた交感神経系と副交感神経系を介して、内分泌系、血管系等の様々な調節を行っている。このような脳神経系は、主としてニューロンとグリアという 2 種類の性質の異なる細胞からなっている。情報の流れの主役と考えられているのはニューロンであるが、最近はグリア細胞が脳の機能発現に大きく関わっており、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア等のグリア細胞の障害が脳機能障害を引き起こすことも明らかとなっており、その重要性が注目されている。
【0003】
21世紀に入り医療技術の格段の進歩により、世界的にも高齢化がますます進んでいく傾向にある中、生命科学における最大の課題の一つは、いかにして老化していく脳を守るかという問題である。その中にあって従来の老年期痴呆の主要原因であった血管性痴呆が内科的治療法および予防法の発達により減少したため、アルツハイマー病(Alzheimer's disease : AD)が老年期痴呆の中心になりつつある。AD は脳の老化に伴い発病する難治性の神経変性疾患であるが、近年日本人のライフスタイルの欧米化により発症年齢が若年化している傾向があること、また看護に大きな負担をかけることから、医学的のみならず社会的にも重要な問題となっている。このような現状からも、AD 治療法の確立および治療薬の開発は最も待望されている課題の一つである。AD 患者の脳内で神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度の低下が認められており、現在 AD 治療薬としてアセチルコリン分解酵素阻害剤が実用化されている。これらの治療薬は認知・記憶障害などの臨床症状には有効であるが、あくまで対症療法薬でありAD 病態の進行を阻止することは期待できない。このため現在、AD の病因を解明するとともに、根治性のある治療法の確立を目的とした多くの研究が世界中で精力的に行われている。
【0004】
AD の病理所見としては脳の萎縮やシナプスの減少に加え、老人斑や神経原繊維変化という異常な構造物が認められる。老人斑や血管アミロイドの形で蓄積するアミロイドβペプチド (Aβ) は、40~42 のアミノ酸からなる不溶性のペプチドである 。Aβはアミロイド前駆体タンパク質 (amyloid precursor protein : APP) からプロテアーゼによる 2 段階の切断を受けて生成され、細胞外に分泌される。Aβの沈着はAD に対する疾患特異性が極めて高いことや、細胞死や神経原繊維変化の出現に先行して生じる AD 最初期の変化であることから、Aβの沈着が AD の病因に深く関わっているとする「アミロイド仮説」は現在多くの研究者の支持を受けている 。
【0005】
グリア細胞のひとつである「ミクログリア」は、マクロファージ様の性質を持つ中枢神経系の細胞である。その存在は 1919 年の Hortega の発見にさかのぼるが、細胞の機能や起源については今日なお不明な点が残されている。脳の損傷時や AD、パーキンソン病などに代表される神経変性疾患、多発性硬化症、脳梗塞、ウイルス感染や脳腫瘍などの病態時にミクログリアが活性化することが見出され、病態との関連が注目されてきた。たとえば AD においては、広範囲にわたりミクログリアが活性化され、炎症性サイトカイン (IL-1β、IL-6、TNF-αなど) や一酸化窒素 (NO) を産生・放出する。これらの因子が周囲の細胞に作用して、脳内炎症の誘発や Aβの産生と凝集をさらに促進し、神経細胞の変性や細胞死を引き起こすといわれている(Eikelenboom P, Bate C, Van Gool WA, Hoozemans JJ, Rozemuller JM, Veerhuis R, Williams A (2002) Neuroinflammation in Alzheimer's disease and prion disease. Glia 40:232-239)。また最近の培養系を用いた実験から、Aβがミクログリアを病的に活性化しうること、その結果ミクログリアが細胞障害性を発揮することがわかってきた(Meda L, Cassatella MA, Szendrei GI, Otvos L, Jr., Baron P, Villalba M, Ferrari D, Rossi F (1995) Activation of microglial cells by beta-amyloid protein and interferon-gamma. Nature 374:647-650;McDonald DR, Brunden KR, Landreth GE (1997) Amyloid fibrils activate tyrosine kinase-dependent signaling and superoxide production in microglia. J Neurosci 17:2284-2294;及びBarger SW, Harmon AD (1997) Microglial activation by Alzheimer amyloid precursor protein and modulation by apolipoprotein E. Nature 388:878-881)。一方で、不溶化凝集した Aβで刺激したミクログリアから、増殖を促す M-CSF やケモタキシスを誘導するケモカイン類 (IL-8、MCP-1 など) や補体成分 (C3) が産生・放出され、細胞膜上の補体レセプターの発現が上昇する。脳内では、これらの分子によりミクログリアの増殖と老人斑への集積がおこる。老人斑の周辺に活性化ミクログリアが集積していることが以前から報告されており(McGeer PL, Itagaki S, Boyes BE, McGeer EG (1988) Reactive microglia are positive for HLA-DR in the substantia nigra of Parkinson's and Alzheimer's disease brains. Neurology 38:1285-1291)、AD においてもミクログリアが病因に深くかかわっていると疑われている (Giulian D (1999) Microglia and the immune pathology of Alzheimer disease. Am J Hum Genet 65:13-18)。しかし最近になって、老人斑近傍に集積したミクログリアは貪食能が活性化されており凝集 Aβを除去する可能性が指摘されている (Bard F, Cannon C, Barbour R, Burke RL, Games D, Grajeda H, Guido T, Hu K, Huang J, Johnson-Wood K, Khan K, Kholodenko D, Lee M, Lieberburg I, Motter R, Nguyen M, Soriano F, Vasquez N, Weiss K, Welch B, Seubert P, Schenk D, Yednock T (2000) Peripherally administered antibodies against amyloid beta-peptide enter the central nervous system and reduce pathology in a mouse model of Alzheimer disease. Nat Med 6:916-919;及びWyss-Coray T, Lin C, Yan F, Yu GQ, Rohde M, McConlogue L, Masliah E, Mucke L (2001) TGF-beta1 promotes microglial amyloid-beta clearance and reduces plaque burden in transgenic mice. Nat Med 7:612-618)。
【0006】
活性化ミクログリアの細胞特性は、増殖能や移動能、貪食能、抗原提示能の亢進に加え、TGF-β、TNF-α、活性酸素やNOなどの神経障害性物質、サイトカイン類、ケモカイン類およびNGF、BDNF、GDNF などの神経栄養因子のように様々な生理活性物質を産生・分泌することである(Raivich G, Bohatschek M, Kloss CU, Werner A, Jones LL, Kreutzberg GW (1999) Neuroglial activation repertoire in the injured brain: graded response, molecular mechanisms and cues to physiological function. Brain Res Brain Res Rev 30:77-105;及びHanisch UK (2002) Microglia as a source and target of cytokines. Glia 40:140-155)。さらには末梢血から脳内に浸潤してきた免疫系細胞と相互作用して免疫反応を調節するとともに周囲のニューロンやグリア細胞にも作用し、炎症や病変部の細胞死または組織修復に重要な役割を担うと考えられている。
【0007】
このように脳内ミクログリア細胞は、ニューロンの傷害および保護の二面性を持つと考えられているが、その機能およびメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。ミクログリアは多様な作用を示すが、その作用もこれまでは主にミクログリアがマクロファージ様の細胞であるとのとらえ方で説明されてきた。しかし、ミクログリアは脳内において形態的にも機能的にも分化しており、もはや単なるマクロファージといったとらえ方だけでは説明できない。澤田らは、ミクログリアにおける二面性はミクログリアが単一のものではなく、複数の亜集団から成ることによると提唱している (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388;及びKatoh Y, Niimi M, Yamamoto Y, Kawamura T, Morimoto-Ishizuka T, Sawada M, Takemori H, Yamatodani A (2001) Histamine production by cultured microglial cells of the mouse. Neurosci Lett 305:181-184)。すなわち、単一のミクログリアが二面性を示すのではなく、性質の異なるヘテロな細胞集団がそれぞれの作用を示すという考えである。しかしながら、このヘテロ細胞群としての存在とニューロンに対する二面的機能の関連性およびそのメカニズムに関しては、ほとんど明らかになっていない。このような現状から、ニューロンだけではなく、ミクログリアを含めたグリア細胞の機能解明は必須である。
【0008】
ところで、医学生物学研究に欠くことのできないツールの一つにモノクローナル抗体がある。特に血球細胞に関しては、リンパ球の膜抗原に対するモノクローナル抗体によって、そのサブセットの解析が飛躍的に進んだ。単球・マクロファージには、異なる成熟段階を経るものや分化や活性化状態の異なった様々な細胞群があり、さらに肝の Kupffer 細胞などのように臓器特異的に分化したマクロファージも存在する。すなわち、単球・マクロファージ系細胞を認識するといわれるモノクローナル抗体には、様々な反応を示すものが含まれているとともに、他系統の細胞との交叉を示す抗体も多く存在する。
【0009】
ミクログリアは他のグリアとは異なり、幼弱期の脳に侵入した骨髄由来の単球を起源とする説が有力である。これを裏付けるようにマクロファージと共通したいくつかのマーカータンパク質を発現していることが知られている (Nakajima K, Kohsaka S (1998) [Microglia: function in the pathological state]. No To Shinkei 50:5-16)。しかし、先にも述べたようにミクログリアはマクロファージと同等の見方では説明できない例も少なくない。それにもかかわらず、現在汎用されているミクログリア用モノクローナル抗体といわれるものは、2、3 の例を除いては腹腔マクロファージや脾細胞を抗原として作製されたものである (Austyn JM, Gordon S (1981) F4/80, a monoclonal antibody directed specifically against the mouse macrophage. Eur J Immunol 11:805-815;Springer T, Galfre G, Secher DS, Milstein C (1979) Mac-1: a macrophage differentiation antigen identified by monoclonal antibody. Eur J Immunol 9:301-306;及びMcKnight AJ, Gordon S (1998) Membrane molecules as differentiation antigens of murine macrophages. Adv Immunol 68:271-314)。したがって、ミクログリアの詳細な機能の解析にはミクログリアを抗原としたモノクローナル抗体を作製することが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ミクログリアを抗原としたラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することを解決すべき課題とした。本発明はまた、上記モノクローナル抗体を用いてラットI型ミクログリアを特異的に検出する方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、澤田らの開発した mixed glial culture 法 (Suzumura et al., 1987; Sawada et al., 1990) に従ってラット初代培養ミクログリアを行い、type-1、type-2 ミクログリアを分離しこれらを抗原として抗体を作製した。本発明者らはさらに、得られたモノクローナル抗体の性質をウェスタンブロット及び蛍光染色により解析し、2 つの異なるサブタイプのミクログリアを識別しうるかを調べ、ラットI型ミクログリアを特異的に認識する抗体を取得することに成功した。さらに得られた抗体は、ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識し、ヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)と反応しないことも分かった。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0012】
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその断片。
(2) ラットII型ミクログリアと反応しない、(1)に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【0013】
(3) ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識する、(1)または(2)に記載のモノクローナル抗体またはその断片。
(4) ヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)と反応しない、(1)から(3)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片。
【0014】
(5) 認識する抗原の分子量が約50~70kDaであり、さらに還元剤の存在下で抗原との反応性を失うことを特徴とする、(1)から(4)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片。
(6) ラットニューロン、ラットアストロサイト、末梢のマクロファージ、マウスI型ミクログリア、及びマウスII型ミクログリアとはほとんど反応しないことを特徴とする、(1)から(5)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片。
(7) 受託番号FERM BP-10475を有するハイブリドーマが産生する、モノクローナル抗体またはその断片。
【0015】
(8) (1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(9) ラットI型ミクログリアを含む免疫原で免疫された哺乳動物の免疫細胞と哺乳動物のミエローマ細胞とを融合して得られる、(8)に記載のハイブリドーマ。
(10) 受託番号FERM BP-10475を有するハイブリドーマ。
【0016】
(11) (8)から(10)の何れかに記載のハイブリドーマを培養する工程、及び該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取し精製する工程を含む、(1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体の製造方法。
【0017】
(12) (1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ラットI型ミクログリアの検出方法。
(13) 少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、(12)に記載のラットI型ミクログリアの検出方法。
(a)(1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【0018】
(14) (1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
(15) 少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む、(14)に記載のヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法。
(a)(1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【0019】
(16) (1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片を含む、ラットI型ミクログリアを検出するためのキット。
(17) (1)から(7)の何れかに記載のモノクローナル抗体またはその断片を含む、ヒト・オリゴデンドログリオーマを検出するためのキット。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
ミクログリアは、中枢神経系に観察されるアストロサイト、オリゴデンドロサイトと並ぶグリア細胞のひとつであり、全グリア細胞の5%前後を占める(Kreutzberg GW (1996) Microglia: a sensor for pathological events in the CNS. Trends Neurosci 19:312-318.)。その存在は1919年のHortegaの発見にさかのぼるが、細胞の機能や起源については今日なお不明な点が残されている。正常脳では小型の細胞体に長い分岐した突起をもつ形態(ramified form)をとっているが、脳の傷害時あるいは損傷時には静止型ミクログリアは速やかに反応し、その性質を大いに変化させる。これがミクログリアの活性化である。活性化ミクログリアは突起を縮退させて細胞体が大きく丸くなり、脳の発生期に見られたアメボイドミクログリアに近い形態を示すようになる。この変化は脳内の他のどの細胞よりもすばやく劇的である。活性化されたミクログリアは、強い移動能を示し、変性した細胞を取り除く貪食細胞として働くほか、BDNFやNGFなどの神経成長因子を産生し、神経保護作用を示すことが知られている(Sawada M, Suzumura A, Marunouchi T (1995) Cytokine network in the central nervous system and its roles in growth and differentiation of glial and neuronal cells. Int J Dev Neurosci 13:253-264.;Nakajima K, Kohsaka S (2001) Microglia: activation and their significance in the central nervous system. J Biochem (Tokyo) 130:169-175.;及びSalimi K, Moser K, Zassler B, Reindl M, Embacher N, Schermer C, Weis C, Marksteiner J, Sawada M, Humpel C (2002) Glial cell line-derived neurotrophic factor enhances survival of GM-CSF dependent rat GMIR1-microglial cells. Neurosci Res 43:221-229.)。一方、活性化ミクログリアは細胞傷害因子である酸素ラジカルやTNF-αやIL-1β、一酸化窒素(NO)等をも放出し病原体や腫瘍細胞を攻撃するが、これが周囲のニューロンにかえって傷害的に働く可能性も示唆されてきた(Meda L, Cassatella MA, Szendrei GI, Otvos L, Jr., Baron P, Villalba M, Ferrari D, Rossi F (1995) Activation of microglial cells by beta-amyloid protein and interferon-gamma. Nature 374:647-650.)。近年、この細胞障害性をもった活性化ミクログリアが神経疾患の病因にかかわっているのではないかと疑われるようになってきた。このようにミクログリアは善と悪の二面性をもつ細胞であると考えられている。
【0021】
澤田らは、ミクログリアの示す二面性はミクログリアが単一のものではなく、複数の亜集団からなることによると提唱している。GM-CSF 依存的に増殖するが、発現しているタンパク質が異なる数種のミクログリア株化細胞を樹立し、その一つの細胞株である 6-3 は細胞障害性の強いミクログリア (type-1 ミクログリア) で、他のマウス由来ミクログリア細胞株では認められない CD40 が発現しているという (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388.)。このように各細胞株により発現するタンパク質やタンパク質の発現レベルが異なっており、それはミクログリアが単一ではない複数の亜集団であることを強く示唆している。しかしながら、ミクログリアサブタイプのそれぞれの機能については、ほとんど明らかになっていない。
【0022】
そこで本発明者らは、初代培養ラットミクログリアを細胞傷害性の強い type-1 ミクログリアと、細胞保護的な性格の強い type-2 ミクログリアに分離し、それらを免疫抗原としたモノクローナル抗体を作製し、得られた抗体が 2 種のサブタイプを識別できることを確認することに成功した。
【0023】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について説明する。
1.本発明のモノクローナル抗体
本発明のモノクローナル抗体は、ラットI型ミクログリアを特異的に認識することを特徴とする。本発明において、「ラットI型ミクログリアを特異的に認識する」とは、ラットI型ミクログリアを認識してこれと反応するが、ラットII型ミクログリアとは反応しないか、ラットI型ミクログリアとの反応性と比較して、ラットII型ミクログリアとの反応性が有意に低いことを意味する。
【0024】
さらに好ましくは、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識することを特徴とする。本発明において、「ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識する」とは、ヒト・オリゴデンドログリオーマを認識してこれと反応するが、ヒト・グリオブラストーマとは反応しないか、ヒト・オリゴデンドログリオーマとの反応性と比較して、ヒト・グリオブラストーマとの反応性が有意に低いことを意味する。
【0025】
本発明のモノクローナル抗体の一例としては、認識する抗原の分子量が約50~70kDaであり、さらに還元剤の存在下で抗原との反応性を失うことを特徴とするモノクローナル抗体が挙げられる。
【0026】
また、本発明のモノクローナル抗体の一例としては、ラットニューロン、ラットアストロサイト、末梢のマクロファージ、マウスI型ミクログリア、及びマウスII型ミクログリアとはほとんど反応しないことを特徴とするモノクローナル抗体が挙げられる。
【0027】
本発明のモノクローナル抗体の一例としては、本明細書の実施例に記載したモノクローナル抗体9F5が挙げられる。モノクローナル抗体9F5を産生するハイブリドーマは、受領番号FERM AP-20353(受託番号FERM P-20353)として、2005年(平成17年)1月5日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566))に寄託されており、2005年(平成17年)12月9日付けで、FERM BP-10475として、国際寄託に移管されている。
【0028】
本明細書で抗体と言う場合、全長の抗体だけではなく抗体の断片も包含する意味で使用される。即ち、本発明によれば、ラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体の断片が提供される。抗体の断片とは、機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)2、Fab’などが挙げられる。
【0029】
F(ab’)2、Fab’とは、イムノグロブリンを、蛋白分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)で処理することにより製造されるもので、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体断片である。
さらに、本明細書で抗体の断片と言う場合には、該抗体をコードする遺伝子由来の抗原結合部位を含む蛋白質も包含するものとする。
【0030】
例えば、IgG1をパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fab’という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
【0031】
また、本発明のモノクローナル抗体は、固相担体などの不溶性担体上に固定された固定化抗体として使用したり、標識物質で標識した標識抗体として使用することができる。このような固定化抗体や標識抗体は全て本発明の範囲内である。
【0032】
固定化抗体とは、不溶性担体に物理的吸着あるいは化学的結合等によって坦持された状態にある抗体を言う。これらの固定化抗体は、試料(例えば、血漿等の体液試料、培養上清あるいは遠心上清等)中に含まれる抗原を検出、定量、分離または精製するために用いることができる。抗体を固定化するのに使用できる不溶性担体としては、例えば、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂あるいはナイロン樹脂等からなるプラスチックや、ガラス等に代表されるような水に不溶性の物質からなるプレート、試験管若しくはチューブ等の内容積を有するもの、ビーズ、ボール、フィルター、あるいはメンブレン等、並びに(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体あるいは多孔性シリカ系担体等のようなアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体を挙げることができる。
【0033】
標識抗体とは、標識物質で標識された抗体を意味し、これらの標識抗体は、試料(例えば、血漿等の体液試料、培養上清あるいは遠心上清等)中に含まれる抗原(即ち、ラットI型ミクログリアに特異的な抗原)を検出または定量するために用いることができる。本発明で用いることができる標識物質は、抗体に物理的結合又は化学的結合等により結合させることによりそれらの存在を検出可能にするものであれば特に限定されない。標識物質の具体例としては、酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジンあるいは放射性同位体等が挙げられ、より具体的には、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ-ス-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、3H、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、または化学発光物質が挙げられる。標識物質と抗体との結合法は、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法又は過ヨウ素酸法等の公知の方法を用いることができる。
【0034】
ここで、放射性同位体及び蛍光物質は単独で検出可能なシグナルをもたらすことができるが、酵素、化学発光物質、ビオチン及びアビジンは、単独では検出可能なシグナルをもたらすことができないため、さらに1種以上の他の物質と反応することにより検出可能なシグナルを生じる。例えば、酵素の場合には少なくとも基質が必要であり、酵素活性を測定する方法(比色法、蛍光法、生物発光法あるいは化学発光法等)に依存して種々の基質が用いられる。また、ビオチンの場合には少なくともアビジンあるいは酵素修飾アビジンを反応させるのが一般的である。必要に応じてさらに該基質に依存する種々の発色物質が用いられる。
【0035】
2.本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ
本発明は、上記した本発明のラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにも関する。本発明のモノクローナル抗体は当該ハイブリドーマを用いて製造することができる。
【0036】
以下、本発明のラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製方法を説明する。
【0037】
先ず、哺乳動物をラットI型ミクログリア細胞で免疫することによって、動物体内で抗体産生細胞を調製する。哺乳動物の種類は特に限定されないが、一般的にはマウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ等が挙げられ、好ましくはマウス、ラット等のげっ歯類であり、より好ましくはマウスである。マウスの例として、A/J系統、BALB/C系統、DBA/2系統、C57BL/6系統、C3H/He系統、SJL系統、NZB系統、CBA/JNCrj系統のマウスが挙げられる。BALB/C系統のマウスは、ハイブリドーマ作製時に同系統の骨髄腫由来細胞株が確立しているので好ましい。
【0038】
免疫に用いるラットI型ミクログリア細胞は、細胞自体を用いてもよいし、細胞抽出物を用いることもできる。
免疫前に、ラットI型ミクログリア細胞は、免疫応答を増強させるためにアジュバントと混合してもよい。アジュバントの例としては、油中水型乳剤(例えば、不完全フロイントアジュバント)、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤、リポソーム、水酸化アルミニウムゲル、シリカアジュバント、粉末ベントナイト、およびタピオカアジュバントの他に、BCG、Propionibacterium acnesなどの菌体、細胞壁およびトレハロースダイコレート(TDM)などの菌体成分;グラム陰性菌の内毒素であるリポ多糖体(LPS)およびリピドA画分;β-グルカン(多糖体);ムラミルジペプチド(MDP);ベスタチン;レバミゾールなどの合成化合物;胸腺ホルモン、胸腺ホルモン液性因子およびタフトシンなどの生体成分由来のタンパク質またはペプチド性物質;ならびにそれらの混合物(例えば、完全フロイントアジュバント)などが挙げられる。これらのアジュバントは、投与経路、投与量、投与時期などに依存して免疫応答の増強または抑制に効果を示す。さらにアジュバントの種類によって、抗原に対する血中抗体産生、細胞性免疫の誘導、免疫グロブリンのクラスなどに差が認められる。それゆえ、目的とする免疫応答に応じて、アジュバントを適切に選択することが好ましい。アジュバンドによる処理方法は当該分野で公知である。
【0039】
哺乳動物の免疫は、当該分野で公知の方法に従って行われる。例えば、抗原であるラットI型ミクログリア細胞は、哺乳動物の皮下、皮内、静脈、または腹腔内に注射する。免疫応答は、免疫される哺乳動物の種類および系統によって異なるので、免疫スケジュールは、使用される動物に合わせて適宜設定する。抗原投与は、最初の免疫後に、何回か繰り返し行う。追加免疫は、例えば、最初の免疫から4週間後、6週間後、および半年後に行うことができる。
【0040】
免疫後、哺乳動物から採血し、得られた血液をラットI型ミクログリア結合活性の存在についてアッセイすることにより、哺乳動物の体内でラットI型ミクログリア細胞に対する抗体が産生されていることを確認する。アッセイ法としては、酵素免疫測定法(ELISA法)、放射免疫アッセイ法(RIA)、蛍光抗体法等の公知の方法が挙げられる。
【0041】
ラットI型ミクログリア結合性抗体の産生を確認後、特異抗体産生能のある免疫細胞を細胞融合に適した状態にするために、ブースト(免疫原の追加注射)を行うことができる。ブーストで投与するラットI型ミクログリア細胞の量は特には限定されないが、最初に免疫した量の約4~5倍程度が好ましい。ブーストは、一般的には、免疫原と不完全フロイントアジュバントとのエマルジョンを用いて行うことができる。投与経路は、皮下、皮内、静脈、または腹腔内等から適宜選択される。
【0042】
最終免疫後、免疫した哺乳動物から脾臓細胞を摘出し、骨髄腫由来の細胞株と細胞融合する。細胞融合には、増殖能力の高い細胞株を用いることが好ましく、また骨髄腫由来の細胞株は、融合する脾臓細胞の由来する哺乳動物と適合性があることが好ましい。マウスの骨髄腫由来の細胞株としては、P3X63-Ag8.653、Sp2/O-Ag14、FO・1、S194/5.XX0 BU.l、P3/NS1/1-Ag4-1などが挙げられる。
【0043】
細胞融合は、当該分野で公知の方法に従って行われる。細胞融合法の例として、例えば、ポリエチレングリコール法、センダイウイルスを用いた方法、電流を利用する方法などが挙げられる。
得られた融合細胞は、当該分野で公知の条件に従って増殖させることができる。産生される抗体の結合能に基づいて、所望の融合細胞を選択する。
【0044】
融合細胞から産生される抗体の結合能は、当該分野で公知の方法に基づいてアッセイすることができる。本発明においては、ラットI型ミクログリアに特異的かつ高い結合能を有する抗体を産生する融合細胞を得るために、ラットI型ミクログリアに対する結合能に基づく選別を利用して、目的の細胞株をクローニングする。抗体の結合能は、抗体産生の確認に関して上述したのと同様に、ELISA法、RIA法、蛍光抗体法などの方法を用いてアッセイすることができる。簡便で感度が高いことから、ELISA法が好ましい。
【0045】
融合細胞のクローニングは、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。クローニング法としては、限界希釈法、軟寒天法などが挙げられ、操作が容易で再現性が高いことから、限界希釈法が好ましい。細胞融合により得られた多くの融合細胞の中から、効率よく有用な細胞を選択するために、細胞選別は、クローニングの初期の段階から行うことが好ましい。このようにして、望ましい結合能を有する抗体を産生する融合細胞株を最終的に選別することができる。
【0046】
上記のようにして選別されたモノクローナル抗体産生細胞株を大量培養することにより、ラットI型ミクログリアに対して特異的なモノクローナル抗体を大量に産生することができる。モノクローナル抗体産生細胞株の大量培養方法として、インビボおよびインビトロでの培養が挙げられる。インビボでの大量培養の例としては、哺乳動物の腹腔内に融合細胞を注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法が挙げられる。インビトロでの培養では、融合細胞を培地中で培養し、抗体を培地中に産生させる。
【0047】
大量培養により得られた腹水または培養上清から、当該分野で公知の方法を用いて、本発明のモノクローナル抗体を精製することができる。精製のためには、例えば、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などが適宜組み合わせて用いられる。本発明の抗体は、好ましくは、約90%の純度、好ましくは約95%の純度、より好ましくは約98%の純度となるように精製することができる。
【0048】
3.本発明のモノクローナル抗体を用いたラットI型ミクログリア又はヒト・オリゴデンドログリオーマの検出
本発明はさらに、本発明のモノクローナル抗体またはその断片を用いて免疫アッセイを行うことを特徴とする、ラットI型ミクログリア又はヒト・オリゴデンドログリオーマの検出方法にも関する。この方法は、好ましくは、少なくとも下記(a)及び(b)の工程を含む。
(a)本発明のモノクローナル抗体またはその断片と試料とを反応させる工程;及び
(b)工程(a)で形成した抗原抗体複合体と、検出のための標識抗体とを反応させる工程;
【0049】
なお、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識することができるので、ヒトにおけるオリゴデンドログリオーマの検出又は診断のために使用することができる。
【0050】
本発明の検出及び/又は定量法は、抗体を用いるアッセイ、即ち免疫アッセイであれば、いずれの方法でもよく、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法、酵素抗体法、蛍光抗体法、免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応又はウエスタンブロット法等が挙げられる。
【0051】
本発明の検出及び/又は定量法に供される試料は特に限定されず、ラットI型ミクログリア又はヒト・オリゴデンドログリオーマが含まれる可能性のある生体試料であれば特に限定されない。
【0052】
本発明の検出法を酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法又は発光免疫測定法等の標識抗体を用いた免疫測定法により実施する場合には、サンドイッチ法又は競合法により行うこともでき、サンドイッチ法の場合には固相化抗体及び標識抗体のうち少なくとも1種が本発明のモノクローナル抗体であればよい。
【0053】
固相担体としては、固定化抗体に関連して不溶性担体の具体例として本明細書中上記したものを使用できる。また、標識物質も標識抗体に関連して本明細書中上記したものを使用できる。
【0054】
測定の操作法は公知の方法(日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ-技術と応用-」,臨床病理刊行会,1983年,石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年,北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年)により行うことができる。
【0055】
例えば、固相化抗体と試料を反応させ、同時に標識抗体を反応させるか、又は洗浄の後に標識抗体を反応させて、固相化抗体-抗原-標識抗体の複合体を形成させる。そして未結合の標識抗体を洗浄分離して、結合標識抗体の量より試料中の抗原量を測定することができる。具体的には、酵素免疫測定法(ELISA)の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射線量を測定する。発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
【0056】
本発明の検出及び/又は定量法を免疫比濁法、ラテックス凝集反応、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応又は粒子凝集反応等の免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液又はグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
【0057】
抗体を固相担体に感作させて用いる場合には、固相担体としては、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル類ポリマー、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、赤血球、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子を使用することができる。
【0058】
この感作の方法としては、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの方法の併用等の公知の方法を使うことができる。測定の操作法は公知の方法により行うことができるが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と抗体、又は試料と固相担体に感作させた抗体を反応させ、エンドポイント法又はレート法により、透過光や散乱光を測定する。
【0059】
また、目視的に測定する場合には、プレートやマイクロタイタープレート等の容器中で、試料と固相担体に感作させた抗体を反応させ、凝集の状態を目視的に判定する。なお、目視的に測定する代わりにマイクロプレートリーダー等の機器を用いて測定を行ってもよい。
【0060】
4.本発明のモノクローナル抗体を用いるラットI型ミクログリア又はヒト・オリゴデンドログリオーマの検出のためのキット
本発明のキットは、本発明により提供されるラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその断片を含むものであり、好ましくはラットI型ミクログリアに加えてヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に認識するモノクローナル抗体またはその断片を含むものである。ここで言うモノクローナル抗体またはその断片としては、本明細書中上記した固定化抗体や標識抗体でもよい。
【0061】
例えば、本発明により提供されるラットI型ミクログリアを特異的に認識するモノクローナル抗体を一次抗体として使用する場合、本発明のキットには、抗原抗体結合反応により形成された複合体を検出するための二次抗体を含めてもよい。本発明のキットには、該キットを効率的かつ簡便に利用できるようにするために、これら抗体以外に種々の補助剤を含めてもよい。補助剤としては、例えば固体状の二次抗体を溶解させるための溶解剤、不溶化担体を洗浄するために使用される洗浄剤、抗体の標識物質として酵素を使用した場合に酵素活性を測定するための基質、その反応停止剤などの免疫学的測定試薬のキットとして通常使用されるものが挙げられる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
(A)実験方法
(1)細胞培養
(1-1)初代培養ラットミクログリアの調製法
ラットミクログリアの調製法は、澤田らの方法 (Suzumura A, Mezitis SG, Gonatas NK, Silberberg DH (1987) MHC antigen expression on bulk isolated macrophage-microglia from newborn mouse brain: induction of Ia antigen expression by gamma-interferon. J Neuroimmunol 15:263-278;及びSawada M, Suzumura A, Yamamoto H, Marunouchi T (1990) Activation and proliferation of the isolated microglia by colony stimulating factor-1 and possible involvement of protein kinase C. Brain Res 509:119-124) に従った。詳しい手順を以下に示す。
【0063】
(1-1-1)ラット脳初代培養系の調製
ラット新生仔 (Wistar系ラット、生後0~2日、14~20 匹) をはさみで断頭した。頭部をはさみで切り、脳を摘出した。脳を冷 PBS 中に浮遊させ、実体顕微鏡下で先細ピンセットを使って髄膜をはがし、Mi medium (MEMに終濃度 5 μg/ml insulin、0.2%glucose、10%FCS、100 U/ml penicillin、および 100μg/ml streptomycinを加えた培地)中に回収した。10 mlメスピペットで10~12回懸濁した。1,200 rpm、4 ℃で 5 分間遠心後、上清を吸引除去した。Mi medium 15 mlを加え、2~3回再懸濁した。1,200 rpm、4 ℃で 5 分間遠心後、上清を吸引除去した。Mi mediumを適量加え、細胞懸濁液とした。75 cm2プラスチックボトル (Greiner) に2.5ボトル/brainとなるように細胞懸濁液を播種した。37 ℃、5%CO2を含む大気下で培養を開始した。2日目に最初の培地交換を行い、9日目に2回目、以後3日毎に培地を交換した。
【0064】
(1-1-2)type-1(I型)ミクログリア細胞の分離・培養
14~16 日間培養した初代培養ボトルを振盪した(150 rpm、1 h、37 ℃)。浮遊細胞を含む培養液をバクテリア用100 mm dish (Falcon 1001) に移し、CO2インキュベーター内に静置した。30分後、培地を除去し非付着性の細胞を取り除いた。付着性の細胞を10 ml の培地で1回洗った。回収されるミクログリアはボトルあたり約3~4×106 cellsであり、その純度はほぼ100%であった。ミクログリアの培養には、Mi mediumを用いた。細胞数は、4~5×106 cells/dishずつ、100 mm dish (Falcon 1001) に播種し、37 ℃、5%CO2を含む大気下で培養を行った。
【0065】
(1-1-3)type- 2(II型)ミクログリア細胞の分離・培養
16~18 日間培養した初代培養ボトルの上清を吸引除去後、PBS で 1 回洗い、5 mM EDTA/PBS を加え、10~20 分間静置した。全ての浮遊細胞を回収し、1,200 rpmで 5 分間遠心後、上清を吸引除去した。Mi mediumを適量加え細胞懸濁液とし、バクテリア用 100 mm dish (Falcon、 1001) に移し、CO2 インキュベーター内に静置した。30 分後、培地を除去し非付着性の細胞を取り除いた。付着性の細胞を10 ml の培地で 2~3 回洗った。回収されるミクログリアはボトルあたり約 3~4×106 cellsであり、その純度はほぼ 90%であった。ミクログリアの培養には、Mi mediumを用いた。細胞数は、4~5×106 cells/dishずつ、100 mm dish (Falcon 1001) に播種し、37 ℃、5%CO2 を含む大気下で培養を行った。
【0066】
(1-2)ラット腹腔および滲出性腹腔マクロファージの初代培養
ラット腹腔マクロファージの調製は、徳永らの方法 (徳永ら、1997) に従って行い、Wistar 系ラットの雄を使用した。滲出性マクロファージを採取するための刺激物質として、4.05% チオグリコレート培地をオートクレーブし、一ヵ月以上室温放置して茶褐色になったものを使用した。このチオグリコレート培地を、ラット腹腔に 7 ml 注射して 4 日後に腹腔マクロファージを採取した。
【0067】
ジエチルエーテルで麻酔したラットを脱血後、腹腔内に冷 PBS を注入し、腹部をよく揉んだ後 PBS を遠心管に回収した。1,000 rpm、4 ℃で 5 分間遠心し、適当な細胞数になるようにディッシュに播種した。37 ℃、5%CO2 を含む大気下で1 時間静置培養し、マクロファージを付着させた。培養ディッシュを 80 rpm、30 秒振盪し、培地と浮遊細胞を除去し、温 PBS で洗浄した。非付着細胞が除かれるまで、1~3 回この洗浄操作をくり返し行った。
【0068】
(1-3)ミエローマ P3U1細胞培養法
細胞培養は37 ℃、5%CO2 を含む大気下で行った。P3U1 細胞は、10%FCS、100 U/ml penicillin、および100μg/ml streptomycin 含むRPMI1640 で培養した。必要に応じて、培養上清を吹き付け細胞を剥離して回収し、継代や保存を行った。
【0069】
(2)マウス抗初代培養ラットミクログリアモノクロナール抗体の作製
(2-1)免疫抗原の調製
免疫抗原には初代培養ラットミクログリアを用いた。すなわち、上記で分離したtype-1ミクログリア (抗原 a) とtype-1 をLPS (0.1μg/ml) で刺激した LPS 活性化 type-1 ミクログリア (抗原 b) および、type-2 ミクログリア (抗原 c) とtype-2 を IL-4 (5 ng/ml) で刺激した IL-4 活性化 Type-2 ミクログリア (抗原 d) である。これらの細胞を、冷 PBS で 3 回洗浄後、セルスクレイパーを用いて剥離し回収した。細胞数を計数し、遠心して上清を除去し、-80 ℃で凍結保存した。
【0070】
(2-2)免疫
常法に従った。上記(2-1)で得られた抗原とフロイント完全アジュバンド (FCA) を 1 : 1 量でよく混ぜ合わせ、油中水型エマルジョンとした。これを (BALB/c、雌、6 週齢) の腹腔に注射した。免疫量は 1 匹あたり細胞数で、初回は 1×107 cells、2 回目以降は 5×106 cellsずつ2 週間おきに合計 5~8 回免疫した。なお、2 回目以降の免疫は、免疫補助剤をフロイント不完全アジュバンド (FIA) に変えて行い、最終免疫は免疫補助剤なしで行った。
【0071】
(2-3)抗体価の測定
初代培養ラットミクログリアを抗原とするELISA 法により行った。プレート (Falcon、96 ウェル フレキシブルアッセイプレート) に、コーティングバッファー (0.1 M sodium carborate、pH 9.6) に溶解した抗原 (2.5μg/ml) 50μl を各ウェルに加え、4 ℃、一晩でプレートに吸着させた。2%スキムミルク (100μl/well) で、室温、2 時間ブロッキングした。洗浄バッファー (0.1%Tween20-TBS、100μl/well) で3 回洗浄後、洗浄バッファーで各段階に希釈した抗血清 (50μl/well) を加えて室温、 2 時間反応させた。反応後、洗浄バッファーで 3 回洗浄し、洗浄バッファーで1000 倍に希釈したHRP 標識ヤギ抗ラット IgG (50μl/well) を加えて、室温、2 時間反応させた。洗浄バッファーで3 回洗浄後、o-phenylenediamin 溶液 (0.4mg/ml、0.1%H2O2、citrate/phosphate buffer、pH 5.0、50 μl/well) を加えて発色させた。反応は 6 N H2SO4 (50μl/well) を加えて停止させ、吸光度 490 nm をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0072】
(2-4)細胞融合
富山らの方法 (富山朔二、安東民衛 (1987) 単クローン抗体実験マニュアル、講談社、8-84) に従った。最終免疫から 3 日後、マウスをジエチルエーテルで麻酔して、心臓穿針により採血、開腹して脾臓を摘出した。回収した脾臓細胞は、マウスミエローマ P3U1 細胞とポリエチレングリコールを用いて存在比10 : 1 で細胞融合し、適当な枚数の 96 ウェルプレートに播種した。融合 1 週間から 10 日後に免疫抗原に用いたミクログリアを抗原として ELISA 法によりスクリーニングを行った。スクリーニングには、融合した抗体産生ハイブリドーマ細胞の培養上清を一次抗体として用いた。スクリーニングで陽性を示したウェルについて、常法に従い限界希釈法でクローニングを行った。クローニング後 10 日から 2 週間で、type-1ミクログリア細胞でスクリーニングを行い、type-1ミクログリア 細胞との反応性の差が大きなハイブリドーマを単クローン化した。
【0073】
(3)ウエスタンブロット解析
(3-1)タンパクの抽出
細胞に 5 倍量の lysis buffer を加え、4 ℃で 30 分間インキュベーションした後、10,000 rpm、 4 ℃、5 分間冷却遠心し、上清をタンパク抽出液として回収した。
【0074】
Lysis buffer
20 mM Hepes-NaOH (pH 7.4)
150 mM NaCl
1 mM EDTA
1% Triton X-100
0.5% sodium deoxycholate
0.1% SDS
10 mM sodium fluoride
2 mM sodium orthovanadate
1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride
1 μg/ml pepstatin A
1 μg/ml leupeptin
10 μg/ml soybean trypsin inhibitor
【0075】
タンパク質の定量は、Bradford法 (Bradford MM (1976) A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Anal Biochem 72:248-254) あるいはBCA法 (Smith PK, Krohn RI, Hermanson GT, Mallia AK, Gartner FH, Provenzano MD, Fujimoto EK, Goeke NM, Olson BJ, Klenk DC (1985) Measurement of protein using bicinchoninic acid. Anal Biochem 150:76-85) に従った。試薬は、Bradford protein assay (Bio-Rad、Herculese、USA) あるいは BCA protein assay kit (Pierce Chemical Co.) を用いた。検量線は BSA を用いて作成した。
【0076】
(3-2)ウエスタンブロット法
タンパク抽出液をsampling bufferに1:1で混ぜて、sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis (SDS-PAGE) (Laemmli, 1970) により分離した。
【0077】
SDS sampling buffer
10 mM Tris-HCl (pH 7.6)
1% (w/v) SDS
20 mM dithiothreitol
4 mM EDTA
2%(w/v) sucrose
【0078】
SDS-PAGE終了後、セミドライ・ブロッティング装置(日本エイド-・NA- 1512)を用いてニトロセルロース膜 (Protran) あるいはPVDF膜 (Millipore Corp.) に電気的 (0.9 mA/cm2、2.5時間) に転写した。
【0079】
検出方法は、ECLキット (Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, USA) の付属のプロトコールに従い行った。すなわち、転写した膜をブロッキング液 (2~5% non-fat skim milk を含む TBS 溶液) で1~2時間インキュベーションした後、一次抗体反応、二次抗体反応を行った。最後に、化学発光基質 ECL試薬と反応させ、発光を冷却型 CCD カメラにより画像を取得し、定量をおこなえるLAS 1000 plus (Fuji Photo Film Co.) を用いて解析を行った。
【0080】
各タンパク質のウェスタンブロッティングで用いた抗体、およびその希釈濃度を以下に示す。
β-actin の検出
一次抗体:Anti-β-actin mouse monoclonal antibody (Sigma; 1:1000 dilution in TBS-Tween20)
二次抗体:Horseradish peroxidase-conjugated goat anti-mouse IgG (H+L) (Zymed Laboratories Inc. ; 1: 5000 dilution in 0.5% skim milk/TBS-Tween20)
【0081】
CD40 の検出
一次抗体:Anti-CD40 goat polyclonal antibody (Santa Cruz; 1:1000 dilution in TBS-Tween20)
二次抗体:Horseradish peroxidase-conjugated goat anti-goat IgG (H+L) (Zymed Laboratories Inc. ; 1: 5000 dilution in 0.5% skim milk/TBS-Tween20)
【0082】
CD86 の検出
一次抗体:Anti-rat B7-2 goat polyclonal antibody (Genzyme Techne; 1:1000 dilution in TBS-Tween20)
二次抗体:Horseradish peroxidase-conjugated rabbit anti-goat IgG (H+L) (Zymed Laboratories Inc. ; 1: 5000 dilution in 0.5% skim milk/TBS-Tween20)
【0083】
(4)混合グリア細胞の免疫蛍光染色(図7)
初代培養で得られたミクログリア細胞はポリ-L-リジンコーティングしたラブ テック II チャンバースライド (Nunc) に播種した。培養上清を除去し、4%paraformaldehyde で 10 分間、37 ℃の CO2 インキュベーターに静置して細胞を固定した。4%paraformaldehyde を除き、PBS で軽くリンスして 0.05%Triton X-100/PBS を加え、10 分間室温で放置した。PBS で 1 回洗浄し、2.5%BSA/PBSを加え、30 分間室温でブロッキングした。2.5%BSA/PBS を除去し、2.5% BSA/PBSで希釈した一次抗体を低温室で 16 時間反応させた。PBS で 2 回洗浄後 0.05% Triton X-100/PBS で希釈した二次抗体を、室温で 1 時間反応させた。反応後、PBS で2 回洗い、標本を封入して共焦点レーザー顕微鏡 (FLUOVIEW、Olympus、Tokyo)で観察した(図7)。
【0084】
(5)組織染色(図8)
(i)生後1日目(P1)ラット脳の固定(PFA灌流)
P1ラットをジエチルエーテルで麻酔した。臓器を傷つけないようにハサミ、ピンセットで腹部の皮を剥ぎ、肋骨を除き、心臓をむき出しにした。実体顕微鏡下、眼科ハサミで右心房付近に切り穴をあけた(血液の逃げ道となる)。左心室に翼状針を刺し4% paraformaldehyde (PFA)を2ml流した。断頭し脳を取り出し4% PFA中に浮遊させた(4℃、一晩)。
【0085】
(ii)クライオプロテクト
4%PFAで固定を行ったサンプルをPBSで1回洗った。 サンプルを10%ショ糖(10%ショ糖/PBS)に漬けた(4℃、5~6時間)。20%ショ糖(20%ショ糖/PBS)に漬けた(4℃、一晩)。
【0086】
(iii)組織切片の作製
クライオプロテクトをした組織サンプルをPBSで1回洗った。サンプルのサイズにあった適当な容器(アルミ箱等)にOCT compoundを入れ、それにサンプルの水気を切って浸した。-80℃ディープフリーザーに入れ凍結させた(30 分)。サンプルを-20℃に設定したLeica(凍結ミクロトーム)に入れ、組織切片を作製し、プレパラートに貼り付けた。
【0087】
(iv)染色
プレパラートにはり付けた組織切片の周囲をDAKOPENで囲った。4%PFAを切片にのせ固定した(室温、15分)。4%PFAを捨てPBSで2回洗った(震盪機上5分)。ブロッキングバッファー(10%normal goat serume、10% BSA、0.1%NaN3、0.1%TritonX-100/PBS)をのせブロッキングした(室温、30分)。ブロッキングバッファーを捨てPBSで2回洗った(震盪機上5分)。1次抗体を抗体希釈液(10%BSA、0.1%NaN3、0.1%TritonX-100/PBS)で希釈し、切片にのせた(湿潤箱内、4℃、一晩)。1次抗体を捨て、PBSで1回洗った(震盪機上、10分)。2次抗体を、Hoechst 33258(8μg/ml)を含む抗体希釈液で希釈し、切片にのせた(湿潤箱内、室温、1時間、遮光)。2次抗体を捨て、0.1%Triton-X/PBSで1回洗った(震盪気上、10分)。PBSで2回洗った(震盪機上5分)。精製水で1回洗った(震盪機上5分)。水気を切りFluorescent mounting mediumをのせカバーガラスをのせた。蛍光顕微鏡で観察した。
【0088】
用いた抗体を以下に示す。
1次抗体:KM9F5培養上清
2次抗体:Cy3 conjugated affinity purified anti-mouse IgG (H+L)[goat](ROCKLAND ; 10%BSA , 0.1%NaN3 及び0.1%TritonX-100を含むPBS中で1:200に希釈)
【0089】
1次抗体:Anti Iba1 rabbit polyclonal antibody(Wako ; 10%BSA , 0.1%NaN3 及び0.1%TritonX-100を含むPBS中で1:200に希釈)
2次抗体:Alexa fluor 488 goat anti-rabbit IgG (H+L)(Molecular Probes ; 10%BSA , 0.1%NaN3 及び0.1%TritonX-100を含むPBS中で1:400に希釈)
【0090】
(6)組織染色法(図9及び図10)
ヒトグリオーマの組織標本は、熊本大学医学薬学研究部脳神経外科学分野において手術による脳腫瘍の摘出や、バイオプシーを受けた患者から得られたものである。サンプルを摘出後、4%PFA中に浮遊させ、固定した。OCT compoundを用いてクライオプロテクトをしたあと、ミクロトームで5μmの切片を切り出し、プレパラートにはり付けた。0.3%methanolic hydrogen peroxideで内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害した後、一次抗体 (KM9F5培養上清)と反応させた (4℃、一晩)。VECTASTAIN Elite ABC standardキット(Vector社)を用いて、マニュアルに従い、発色を行った。基質は、0.05 % diaminobenzine tetrahydrochlorideを用いた。Hematoxylinを用いて対比染色を行った。
【0091】
(B)実験結果
(1)免疫抗原の調製
抗原には初代培養ラットミクログリアを用いた。澤田らの方法に従い、ラット新生仔より脳細胞懸濁液を調製し、75 cm2 フラスコに播種した。37 ℃、5%CO2を含む大気下で培養し、14 日目に type-1、16 日目にtype-2 ミクログリアを分離、回収した (図1)。図1で見るように、検鏡標品では細胞数の違いはあるが、サブタイプ間の形態的な違いは特には認められなかった。
【0092】
これらのミクログリアがサブタイプとして分離されていることを確認するために、type-1 ミクログリアのみに発現しているというCD40、またtype-1 の方が type-2 よりも発現量が高いといわれる CD86 (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388.) をウェスタンブロット法で調べた (図2)。CD40 はtype-1 ミクログリアのみに発現しているはずだが、type-2 でもごくわずかに検出された。これは、type-1 ミクログリアがtype-2 ミクログリアにわずかに混入してしまったためと考えられる。CD86 の発現は予想どおり type-1 ミクログリアが 2 倍程高かった。したがって、2 つのミクログリアサブタイプは実質的に十分な分離ができているとみなした。以後の実験は、このように分離されたtype-1、type-2 ミクログリアを用いて行った。
【0093】
サブタイプ分離後さらに、type-1 は炎症性刺激である LPS で 24 時間、type-2 は抗炎症性サイトカイン Interleukin-4 (IL-4) で 6 日間処理した (図3)。
【0094】
Type-1 ミクログリアは LPS 刺激により、やや丸くアメボイド型のミクログリアに近い形態へと変化した。一方、 IL-4 処理したtype-2 ミクログリアは、細胞が増殖し、無刺激時に比べ細く長い突起をのばしていた。これらの形態変化の観察から、type-1 では傷害性が、type-2 では保護的な性質が強まった活性化型に誘導されたとみなした。無刺激の type-1、type-2 ミクログリアを静止型とし、刺激誘導した活性化型と併せて 4 種類の細胞を抗原として用いた。
【0095】
(2)免疫
調製した4 種類の免疫抗原を、常法に従いマウスの腹腔に免疫した。免疫補助剤としてフロイント完全アジュバンド、次いでフロイント不完全アジュバンドを用い、2 週間ごとに免疫した。抗血清の力価の測定を、それぞれの免疫原のミクログリア (2.5μg/ml) を抗原とした ELISA 法により行った (図4) 。コントロールとして、免疫していないマウスの血清を用いた。
【0096】
Type-1 ミクログリアを免疫したマウスでは速やかな抗体力価の上昇がみられたのに対して、type-2 ミクログリアを抗原としたマウスではなかなか力価が上昇しなかった。Type-1 ミクログリアは細胞傷害性の強い細胞であり、MHC クラス II や補体レセプターなどを多く細胞膜に提示しており、CD40 や CD86などタンパク質の発現レベルも高いと考えられる。したがって免疫原として考えた場合、異物として認識されうるタンパク質が多く発現している状態である。一方、type-2 ミクログリアはどちらかといえばおとなしい細胞で、type-1 と比較すると発現しているタンパク質レベルが低い傾向にあると考えられる。そのため、同じミクログリアでも免疫応答が異なっていたと考えられる。逆にいえば、type-1 ミクログリアと type-2 ミクログリアはやはり異なった細胞であり、ミクログリアが複数の亜集団からなるという仮説を裏付ける結果であると考えた。
【0097】
(3)細胞融合および ELISA 法によるモノクローナル抗体の反応性の検討
最終免疫は免疫補助剤なしで行った。最終免疫から 3 日後、脾臓の B 細胞とマウスミエローマ P3U1 とをポリエチレングリコールを用いて細胞融合を行い、適当な枚数の 96 ウェルプレートに播種した。合計 4 回の細胞融合を行い、融合率はおよそ 98%であった。以下常法に従い、スクリーニングおよびクローニングを行い、ミクログリアを認識する複数のモノクローナル抗体を樹立した。図5は免疫抗原として用いた 4 種の細胞に対する各クローンの反応性を、ELISA 法により調べたものである。得られたモノクローナル抗体の中でも、(i) type-1 に対する特異性が高い 9F5、(ii) type-1、type-2 の両方に強い反応性を示す 11F1、(iii) type-2 に対する特異性が高い 6D5 の 3 種のクローンは、ミクログリアおよびサブタイプの解析に有用な抗体であると考えられる。
【0098】
(4)ウェスタンブロット法によるクローンの解析
上記(3)の検討の結果、type-1 に対する特異性が高かった 9F5 の反応性をウェスタンブロット法により解析した (図6)。その結果、9F5 はtype-2 ミクログリアとは全く反応せず、type-1 ミクログリア対して特異的に反応するということが分かった (図6A)。抗原はおよそ50~70 kDa であり、還元剤である DTT(+) の条件で反応性を失うことから、抗原タンパクの三次元的な立体構造を認識していることが考えられる。
【0099】
続いて、ニューロンやアストロサイトなどの中枢神経系細胞、末梢のマクロファージ、およびマウスミクログリア細胞 6-3 (type-1 ミクログリア)、Ra2 (type-2 ミクログリア) に対する反応性を調べた (図6B)。すると大変興味深いことに、9F5 は中枢のニューロンやアストロサイトのみならず、末梢のマクロファージにもほとんど反応しないことが示された (lane 6~13)。すなわち、中枢のtype-1 ミクログリア選択的に反応することが分かった。また、9F5 抗原はバンドがややスミアーになっていることから、糖鎖の修飾を受けている可能性がある。
【0100】
(5)I型ミクログリア特異的抗体 9F5 による細胞染色および組織染色
9F5 により mixed glia の細胞染色および脳の組織染色を行い、ミクログリアのマーカータンパク質である Iba1 に対する抗体と比べ、9F5 抗体のミクログリアに対する反応性を解析した。
Type-1 特異的抗体 9F5 を用いて mixed glia の細胞染色を行った (図7)。 9F5 が反応する細胞を赤、Iba1 抗体が反応する細胞を緑で示す。
【0101】
9F5 では Iba1 抗体に比べて染色されるミクログリアが明らかに少なかった。Iba1 抗体がほとんどすべてのミクログリアと反応するのに対し、9F5 は type-1 ミクログリアのみを特異的に認識しているためだと考えられる。しかしながら今回の結果では、9F5 陽性のミクログリアはミクログリア全体の割合から考えるとかなり少ないようだ。Type-1 はtype-2 に比べもともとの存在比が低いとも考えられる。あるいは、9F5 が認識する抗原タンパク質は type-1 ミクログリアの一部のミクログリアにのみ発現していると考えた。もしそうであるならば、ミクログリアは 2 つのサブタイプで構成されているのではなく、さらに多くの細胞亜集団として存在しているかもしれない。図7Bは 9F5 で染色したミクログリアの像を拡大して示す。染色されているのは核の周囲の粒状のもので、リソゾームと思われる。すなわち、9F5 抗原はリソゾームに存在している可能性がある。
【0102】
次に、ラット新生仔 (生後 1 日目) の脳切片を用いた組織染色を行った (図8)。9F5 が反応する細胞を赤 (A,C,E)、Iba1 が反応する細胞を緑で示す (B,D,F)。またヘキスト染色により核を青く染め、細胞が存在している領域を示している。
【0103】
脳組織の第4脳室や海馬においても、Iba1 抗体に比べて 9F5 は染色される細胞数が明らかに少なかった (図8)。9F5 が反応する細胞は、初代培養系の細胞においても、またここで示した脳組織においてもIba1 抗体が反応する細胞と比べて少ないことが示された。すなわち、9F5 はミクログリアの一部の細胞群に対してのみ反応する。9F5 はミクログリアが複数の亜集団から細胞群であるという澤田らの仮説を支持するともいうべき抗体であり、また type-1 ミクログリアを選択的に認識することからミクログリアサブタイプの解析に有用なツールとなることが期待される。
【0104】
また、ヒト・オリゴデンドログリオーマとヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)について9F5の反応性を調べた結果、9F5はヒト・オリゴデンドログリオーマとは反応するが(図9)、ヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)とは反応しないことが分かった(図10)。
【0105】
(C)実施例のまとめ
ミクログリアは、正常脳では小型の細胞体に長い分岐した突起をもつ形態(ramified form)をとっているが、脳の傷害時あるいは損傷時には、静止型ミクログリアは速やかに活性化しその性質を大いに変化させる。活性化されたミクログリアは強い移動能を示し貪食細胞として働くほか、BDNFなどの神経成長因子を産生し神経保護作用を示すことが知られている(Sawada M, Suzumura A, Marunouchi T (1995) Cytokine network in the central nervous system and its roles in growth and differentiation of glial and neuronal cells. Int J Dev Neurosci 13:253-264;Nakajima K, Kohsaka S (2001) Microglia: activation and their significance in the central nervous system. J Biochem (Tokyo) 130:169-175;及びSalimi K, Moser K, Zassler B, Reindl M, Embacher N, Schermer C, Weis C, Marksteiner J, Sawada M, Humpel C (2002) Glial cell line-derived neurotrophic factor enhances survival of GM-CSF dependent rat GMIR1-microglial cells. Neurosci Res 43:221-229)。その反面、細胞傷害因子である酸素ラジカルや IL-1β、NO を放出し、周囲のニューロンに傷害的に働く可能性も示唆されてきた(Meda L, Cassatella MA, Szendrei GI, Otvos L, Jr., Baron P, Villalba M, Ferrari D, Rossi F (1995) Activation of microglial cells by beta-amyloid protein and interferon-gamma. Nature 374:647-650)。このようにミクログリアは善と悪の二面性をもつ細胞であると考えられている。
【0106】
ミクログリアの示す二面性は、ミクログリアが単一のものではなく複数の亜集団からなることによると澤田らは提唱している (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388:及びKatoh Y, Niimi M, Yamamoto Y, Kawamura T, Morimoto-Ishizuka T, Sawada M, Takemori H, Yamatodani A (2001) Histamine production by cultured microglial cells of the mouse. Neurosci Lett 305:181-184)。すなわち、単一のミクログリアが二面性を示すのではなく、性質の異なるヘテロな細胞集団がそれぞれの作用を示すという考えである。しかしながら、このヘテロ細胞群がそれぞれどのように機能しているかについてほとんど明らかになっていない。ミクログリアの二面性をより詳細に解析するためには、ミクログリアサブタイプを識別する抗体が必要であると考えた。
【0107】
このような背景の下、本発明者らは初代培養ラットミクログリアを細胞傷害性の type-1 ミクログリアと細胞保護的な type-2 ミクログリアに分離し、それらを免疫抗原としたモノクローナル抗体を作製し、サブタイプを識別しうるか調べた。常法に従い、マウスを用いてモノクローナル抗体を作製し、ミクログリアに反応する複数のクローンを得た。免疫抗原として用いた 4 種のミクログリアに対する反応性を比較し、(i) type-1 に対する特異性が高い 9F5に注目して解析した。
【0108】
ウェスタンブロット解析の結果、9F5 はtype-1 ミクログリアに特異的に反応することが示された。また、9F5について、細胞染色と組織染色によりさらに解析した。9F5 とミクログリアのマーカータンパク質といわれる Iba1 に対する抗体を用いて、ミクログリアに対する反応性を比較した。ラット Mixed glia の細胞染色、ラット新生仔の脳切片を用いた組織染色では、Iba1 抗体に比べて、9F5 では染色される細胞数が明らかに少なかった。9F5 がtype-1 ミクログリアだけに反応するのに対し、Iba1 はミクログリアおよび脳血管マクロファージなどとも反応するためだと考えられる。
【0109】
本発明で作製したモノクローナル抗体 9F5 はミクログリアが複数の亜集団からなるという仮説を支持する抗体である。9F5 は type-1 ミクログリアを特異的に認識する、すなわち、中枢における神経細胞やグリア系細胞、末梢のマクロファージとも反応しない。Type-1 ミクログリアのマーカータンパク質の一つとして、すでに Kanzawa らにより明らかにされた CD40 がある (Kanzawa T, Sawada M, Kato K, Yamamoto K, Mori H, Tanaka R (2000) Differentiated regulation of allo-antigen presentation by different types of murine microglial cell lines. J Neurosci Res 62:383-388)。CD40 は、B 細胞に発現される重要な分子で、T 細胞と B 細胞との密接な相互作用に関与しており、単球・マクロファージにも発現している。したがって、CD40 はミクログリアサブタイプを識別することは可能でも、脳血管マクロファージなどと区別することはできないと考えられる。それに対し、9F5 は末梢のマクロファージとは全く反応しないことから、中枢神経・グリア細胞系では type-1 ミクログリアを選択的に認識し、その局在や機能変化に伴う出現の推移の解析に有用であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のモノクローナル抗体を用いることにより、ラットI型ミクログリアやヒト・オリゴデンドログリオーマを特異的に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、初代ラットミクログリア細胞を示す。
【図2】図2は、ラットI型及びII型ミクログリア細胞におけるCD40及びCD86の免疫ブロット分析を示す。
【図3】図3は、LPS及びIL-4で各々刺激したI型及びII型ミクログリア細胞を示す。
【図4】図4は、ELISAによる対応する抗原に対する抗血清の滴定を示す。
【図5】図5は、モノクローナル抗体と、LPS及びIL-4で各々刺激したI型及びII型ミクログリア細胞との反応性を示す。
【図6】図6は、ウエスタンブロットによる9F5反応性分子の同定を示す。A図: 1:LPSで刺激したI型ミクログリア 2:I型ミクログリア 3:IL-4で刺激したII型ミクログリア 4:II型ミクログリア、B図 1:マウスミクログリアMG5 2:6-3(マウスI型ミクログリア様) 3:Ra2(マウスII型ミクログリア様) 4:ラットI型ミクログリア 5:LPSで刺激したラットI型ミクログリア 6:ラットII型ミクログリア 7:IL-4で刺激したラットII型ミクログリア 8:ラットニューロン 9:ラットアストロサイト 10:マウスマクロファージRAW264.7 11:ラット腹腔マクロファージ 12:LPSで刺激したラット腹腔マクロファージ 13:チオグリコレートで刺激したラット滲出性腹膜マクロファージ(1~7:ミクログリア 10~13:マクロファージ)
【図7】図7は、9F5とIba1による混合グリア細胞の免疫染色を示す。
【図8】図8は、9F5とIba1によるラット新生仔脳切片の免疫染色を示す。
【図9】図9は、9F5によるヒト・オリゴデンドログリオーマ(症例 21歳)の免疫染色を示す。
【図10】図10は、9F5によるヒト・グリオブラストーマ(膠芽腫)(症例 72歳)の免疫染色を示す。
図面
【図4】
0
【図1】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9